説明

薄板状材料切断装置

【課題】低い回転数で高トルクが得られ、かつ、小さな設置スペースしか必要としない回転駆動装置を備えた刃物回転方式の薄板状材料切断装置を提供する。
【解決手段】互いに対向する刃先5,6を有する2つの刃部8,9を備え、刃部8,9はフレーム7内に設けられており、少なくとも一方の刃部8は、他方の刃部9に向かって鉛直方向に移動可能であり、刃部8,9が設けられたフレーム7は、薄板状材料切断装置1の基台フレーム14内部に設けられた回動駆動装置15によって、薄板状材料2の走行方向に直交する基準位置から、鉛直軸16回りに両回転方向に所定の角度でもって回動可能であり、フレーム7を回動させるための回動駆動装置15は、ギヤレスで構成されているとともに、ロータがフレーム7を直に駆動する永久磁石同期モータ17を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルから解かれた薄板状材料、特に金属帯、薄葉紙、プラスチック、紙、カートン、複合材料等、を切断するための薄板状材料切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の積層された金属薄板からなるトランスコアの製造装置においては、コイルから解かれた(巻き出された)前記金属薄板を切断する上下一対の切断刃を備えた薄板状材料切断装置が設けられる(例えば、特許文献1参照)。このようなトランスコアの製造装置において使用される薄板状材料切断装置の中には、前記金属薄板を斜めに切断することが可能な刃部回動方式のものがある。この刃部回動方式の薄板状材料切断装置は、互いに対向する刃先を有する2つの刃部を備え、該刃部はフレーム内に設けられており、少なくとも一方の刃部は、他方の刃部に向かって鉛直方向に移動可能である。前記刃部が設けられたフレームは、前記薄板状材料切断装置の基台フレーム内部に設けられた回動駆動装置によって、薄板状材料の走行方向に直交する基準位置から、鉛直軸回りに両回転方向に所定の角度でもって回動可能である。
【0003】
このような既知の薄板状材料切断装置では、高トルクと比較的低い回転数とが得られる回動駆動装置として、ゼロバックラッシュの伝達ギヤを有する同期サーボ駆動装置が一般的に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−205517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来の薄板状材料切断装置では、前記高トルク且つ低回転数という要求特性の実現にはギヤが必要になるために、装置全体の設置スペースが増大するだけでなく、製造、組立及び運用の相対的なコストアップを招く。その上、システムに関連する劣化がギヤにおいて生じるために、その修理や交換が必要になる。このため、前記製造装置は当然ながら長期間にわたって停止され、製造の遅れが生じてしまう。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的低い回転数において高トルクが得られる一方で、より小さな設置スペースしか必要としない回動駆動装置を備え、且つ、より少ない組立工程しか必要とせず、しかも、全運用期間におけるコストが低減されるような刃部回転方式の薄板状材料切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に記載の薄板状材料切断装置により達成される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態については、従属クレームに記述される。
【0009】
本発明に係る薄板状材料切断装置における、フレームを回動させるための回動駆動装置は、ギヤレスで構成されているとともに、ロータが前記フレームを直に駆動する永久磁石同期モータを備えている。この永久磁石同期モータにより、薄板状材料切断装置に必要とされる高トルクと比較的低い回転数とが、伝達ギヤなしに得ることが可能になる。したがって、高効率化を達成することができる。また、永久磁石同期モータの寸法は、同期サーボ駆動装置よりも大きいが、ギヤがないことにより、スペースが節約されるとともに回動駆動装置の組立及び管理作業が大幅に低減される。その上、回動駆動装置全体として非常に低騒音である。
【0010】
例えば、マイターカットを形成するべくトランスコア用の金属薄板の端部を斜めに切断するために、フレーム及び回動駆動装置の回動角度は、可変であって、該回動駆動装置を制御する制御ユニットにて自由にプログラム可能であることが好ましい。
【0011】
また、一方の刃部は、鉛直方向に案内され且つフレームの側面部材間に配設された刃部取付用ビームに取り付けられていることが好ましい。この一方の刃部又は刃部取付用ビームを鉛直方向に移動させるために、該刃部取付用ビームの中央部に対して駆動力を作用させる刃部駆動装置を設けてもよい。この刃部駆動装置は、サーボモータと該サーボモータにより駆動されるボールねじとを有していることが好ましい。
【0012】
また、他方の刃部は、フレームにおける下部横架部材に常時固定されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る薄板状材料切断装置の正面図である。
【図2】回動するフレーム及び刃部を示す、薄板状材料切断装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて好ましい実施形態についてより詳しく説明する。
【0015】
図1及び図2に簡略化されて図示された薄板状材料切断装置1は、薄板状材料2、特に金属帯、薄葉紙、プラスチック、紙、カートン、複合材料等、を切断するためのものであって、例えば、複数の積層された方向性トランス用ストリップの金属薄板3からなるトランスコアの製造装置において使用される。この製造装置においては、薄板状材料2が、少なくとも1つ以上のコイル(図示を省略)から連続して解かれ(巻き出され)、この解かれた(巻き出された)薄板状材料2が、薄板状材料切断装置1によって、金属薄板3の所望の寸法及び形状に切断され、この切断された金属薄板3が、移送用ローラー及びベルトを含む搬送装置により移送されて、1つ又は複数の載置台(図示を省略)上に積み重ねられる。
【0016】
薄板状材料切断装置1は、薄板状材料2を挟むように互いに上下方向に対向する刃5,6を有する2つの刃部8,9を備えている。これら2つの刃部8,9は、フレーム7内に設けられている。少なくとも一方(上側)の刃部8(本実施形態では、一方の刃部8のみ)は、他方(下側)の刃部9に向かって鉛直方向に移動可能に構成されており、一方の刃部8が下側に移動して、他方の刃部9と協働して薄板状材料2を切断する。この切断後は、一方の刃部8が上側に移動して、元の位置に戻る。一方の刃部8は、フレーム7の側面部を構成する複数の側面部材11間に設けられた刃部取付用ビーム10に取り付けられている。この刃部取付用ビーム10は、鉛直方向に案内されて、後述の刃部駆動装置12によって鉛直方向に移動可能に構成されている。
【0017】
刃部取付用ビーム10(及び一方の刃部8)を鉛直方向(図1に示すa方向)に移動させるために、該刃部取付用ビーム10の中央部(長さ方向中央部)に対して駆動力を作用させる刃部駆動装置12が設けられている。この刃部駆動装置12は、後述の回動駆動装置15とは別の駆動装置であって、例えば、サーボモータと該サーボモータにより駆動されるボールねじとを有するものであってもよい。
【0018】
図1及び図2に示す本実施形態における他方の刃部9は、フレーム7の下部を構成する水平方向に延びる下部横架部材13に常時固定されており、鉛直方向に移動不能に形成されている。勿論、切断工程を速めるために、他方の刃部9も、一方の刃部8に向かって鉛直方向(上側)に移動可能に形成することも可能である。このために、他方の刃部9は、刃部取付用ビーム10とは別の刃部取付用ビームに取り付けられてもよい。この別の刃部取付用ビームも、鉛直方向に案内され且つフレーム7の側面部材11間に設けられるとともに、該刃部取付用ビームの中央部(長さ方向中央部)に対して駆動力を作用させる刃部駆動装置により、鉛直方向に移動可能に構成される。この刃部駆動装置も、前記刃部駆動装置12と同様に構成されていることが好ましい。
【0019】
刃部8,9が設けられたフレーム7(及び刃部8,9)は、薄板状材料切断装置1の基台フレーム14内部に設けられた回動駆動装置15によって、薄板状材料2の走行方向(図2に示すb方向)に直交する基準位置から、鉛直軸16(後述の永久磁石同期モータ17におけるロータの中心軸)回りに両回転方向に所定の角度αでもって回動可能である(図2参照)。フレーム7及び回動駆動装置15の回動角度αは、可変であって、回動駆動装置15(詳細には、後述の永久磁石同期モータ17)を制御する制御ユニットにて自由にプログラム可能であることが好ましい。例えば±60°まで設定可能である回動角度αの調節機能により、個々の要求に対応して、金属薄板3の端部で斜め方向切断の調節が可能になる。
【0020】
フレーム7及び刃部8,9を回動させる際に比較的低い回転数において高トルクを得るために、刃部8,9を含むフレーム7を回転させるための回動駆動装置15は、ギヤレスで構成されているとともに、ロータがフレーム7を直に駆動する永久磁石同期モータ17を備えている。すなわち、永久磁石同期モータ17のロータが、フレーム7(本実施形態では、下部横架部材13)に直結されている。
【0021】
本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0022】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0023】
1 薄板状材料切断装置
2 薄板状材料
5、6 刃先
7 フレーム
8、9 刃部
10 刃部取付用ビーム
11 フレームの側面部材
12 刃部駆動装置
13 フレームの下部横架部材
15 回動駆動装置
16 鉛直軸
17 永久磁石同期モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルから解かれた薄板状材料(2)を切断するための薄板状材料切断装置(1)であって、
互いに対向する刃先(5,6)を有する2つの刃部(8,9)を備え、
前記刃部(8,9)は、フレーム(7)内に設けられており、
少なくとも一方の前記刃部(8)は、他方の前記刃部(9)に向かって鉛直方向に移動可能であり、
前記刃部(8,9)が設けられた前記フレーム(7)は、前記薄板状材料切断装置(1)の基台フレーム(14)内部に設けられた回動駆動装置(15)によって、前記薄板状材料(2)の走行方向(b)に直交する基準位置から、鉛直軸(16)回りに両回転方向に所定の角度(α)でもって回動可能であり、
前記フレーム(7)を回動させるための前記回動駆動装置(15)は、ギヤレスで構成されているとともに、ロータが前記フレーム(7)を直に駆動する永久磁石同期モータ(17)を有していることを特徴とする薄板状材料切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の薄板状材料切断装置において、
前記フレーム(7)及び前記回動駆動装置(15)の前記回動角度(α)は、可変であって、制御ユニットにて自由にプログラム可能であることを特徴とする薄板状材料切断装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の薄板状材料切断装置において、
前記一方の刃部(8)は、鉛直方向に案内され且つ前記フレーム(7)の側面部材(11)間に配設された刃部取付用ビーム(10)に取り付けられていることを特徴とする薄板状材料切断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の薄板状材料切断装置において、
前記一方の刃部(8)又は前記刃部取付用ビーム(10)を鉛直方向に移動させるために、前記刃部取付用ビーム(10)の中央部に対して駆動力を作用させる刃部駆動装置(12)が設けられていることを特徴とする薄板状材料切断装置。
【請求項5】
請求項4記載の薄板状材料切断装置において、
前記刃部駆動装置(12)は、サーボモータと該サーボモータにより駆動されるボールねじとを有していることを特徴とする薄板状材料切断装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の薄板状材料切断装置において、
前記他方の刃部(9)は、前記フレーム(7)の下部横架部材(13)に常時固定されていることを特徴とする薄板状材料切断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−107197(P2013−107197A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255808(P2012−255808)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【出願人】(512302371)ハインリヒ ゲオルク ゲーエムベーハー マシーネンファブリーク (1)
【Fターム(参考)】