説明

薄片製造装置及び薄片製造方法

【課題】 標本ブロックから薄片を効率よく製造することができ、切断した薄片に皺が生じにくい薄片製造装置を提供すること。
【解決手段】 標本ブロックAを保持し、モータ14で駆動されて往復動する標本ホルダ6と、標本ホルダ6の前方に設置され、標本ホルダ6が往動した時、標本ブロックAを薄切りするミクロトームナイフ7とから成るミクロトーム装置1、ミクロトームナイフ7の刃先部前面にアルコール水溶液を噴霧する噴霧装置2、ミクロトームナイフ7の前下方に設置された液体槽3、ミクロトームナイフ7の刃先部と液体槽3との間に設けられ、ミクロトームナイフ7で薄切りされた薄片の連続体Cを液体槽3へ間欠的に移送する移送装置4、及び、液体槽3内に薄片が進入する端部から他端部に向けて流れる表層水流を発生させる水流発生装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を顕微鏡で観察したり検査するために、組織包理ブロックをスライスして多数の薄片を製造する薄片製造装置及び薄片製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パラフィン包理した動物標本等をスライスするために用いられるミクロトームは、組織染色標本作製機器として最も主要な装置である。
一般的なミクロトームは、組織包理ブロックを支持する標本ホルダと、ミクロトームナイフを支持するナイフホルダとを、手動で相対的に往復移動させ、移動の途中で組織包理ブロックの先端がミクロトームナイフの刃先を通過して、多数の薄片を連続してスライスするようになっている。
スライスされた薄片は、ミクロトームナイフから取り上げて液体上に浮かべ、顕微鏡のスライドガラスを液体に沈めてから薄片と共に持ち上げ、平坦な薄片をスライドガラスの表面に貼り付ける。
【0003】
しかし、ミクロトームの操作には経験や熟練が必要であり、特に、組織包理ブロックにミクロトームナイフの先端が接してから切り進む薄切操作には熟練を要する。
この際、最も問題になる現象は、包理組織と金属ナイフとのスライス摩擦によって生ずる静電気に起因する薄片の皺である。この皺が少ない伸展した薄片をいかにして作成するかが、ミクロトームによる薄片製造の最重要課題であるといっても過言ではない。
皺を解消するには、薄切中の薄片に息を吹き付けて静電気を除去したり、筆や濡れ紙によって薄切中のパラフィン膜を手作業で引き延ばしていたが、このような方法は完璧ではなく、熟練が必要であるばかりか、大きな組織標本に対する皺の解消ははなはだ難しい状況にある。
【0004】
また、連続して薄切りされた薄片を伸展状態でスライドガラスへ貼り付けるには、経験に基づく専門技能が必要であり、薄片製造の一連の作業工程には、多大な労力と時間だけでなく、細心の注意が要求される。
例えば、手動操作するミクロトームで、ニジマス稚魚標本(体長2.5cm、体幅4mm程度にトリミング)から厚さ4マイクロメーターの薄片を製造し、スライドガラスに貼り付けるには、スライドガラスの総数が約1000枚であって、4日〜5日の作業日数を要した。しかも、標本ブロックが大きいため、皺が伸びないパラフィン切片もかなり生じた。
【0005】
従来、切断刃から液体槽への薄片の移送を、切断刃から離れている液体槽へと流れる液体により行う薄片製造装置が知られている(特許文献1参照)。
この薄片製造装置によれば、人手によって薄片を液体槽へ移す必要が無く、流体により個々の薄片に伸張効果が引き起こされる。しかし、液体が流れる流路を形成するため、装置の構造が複雑になり、液体槽内においては、薄片が方向性もなく漂っているだけなので、スライドガラスに貼り付ける作業が面倒であった。
【0006】
また、ミクロトームによりスライスされた切片を、間欠駆動する無端状の搬送帯によって連続して水槽へ搬送する切片採取装置が公知である(特許文献2参照)。
しかし、この装置では、切片をスライスする際に、発生する静電気によって切片が切断刃から大きな抵抗を受け、この結果、切片に皺がよりやすく、また、水槽内で切片を整然と移動させる手段を備えていないため、切片がバラバラになって、スライドガラスへ貼り付ける操作が面倒である。
【0007】
【特許文献1】特許第3271767号公報
【特許文献2】特開平5−273094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、標本ブロックから薄片を効率よく製造することができ、切断した薄片に皺が生じにくい薄片製造装置及び薄片製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄片製造装置は、標本ブロックを保持し、モータで駆動されて往復動する標本ホルダと、該標本ホルダの前方に設置され、標本ホルダが往動した時、前記標本ブロックを薄切りするミクロトームナイフとから成るミクロトーム装置、前記ミクロトームナイフの刃先部前面に向かってアルコール水溶液を噴霧する噴霧装置、前記ミクロトームナイフの前下方に設置された液体槽、前記ミクロトームナイフの刃先部と前記液体槽との間に設けられ、前記ミクロトームナイフで薄切りされた薄片の連続体を前記液体槽へ間欠的に移送する移送装置、及び、前記液体槽内に、前記薄片が進入する端部から他端部に向けて流れる表層水流を発生させる水流発生装置を備える。
【0010】
前記液体槽の他端部上方において、液体表面に臨む位置に、前記連続体を切断する薄片切り離し装置を設けても良い。
前記表層水流は、前記液体槽の中央部において、前記薄片が進入する端部から他端部に向けて流れ、前記液体槽の両側部において、他端部から前記薄片が進入する端部に向けて流れる循環流とすることもある。
この場合、前記液体槽の両側寄りに、該液体槽の内部を、その前後両端部を除いて中央部と側部とに区画する水流調節板がそれぞれ設置され、前記側部の液体表面に、他端部から薄片が進入する端部に向けて圧縮空気を吹き付けることにより、前記循環流を形成しても良い。
【0011】
前記ミクロトーム装置が、前端部を下にして傾斜した基台の上面に設置され、前記基台の傾斜角度を可変としても良い。
前記移送装置は、前記ミクロトームナイフの刃先部から前記液体槽に向かって延びるポリテトラフルオロエチレン製の傾斜路と、該傾斜路の下端に設置された間欠送りローラとから構成しても良いし、搬送面が前記ミクロトームナイフの刃先部から前記液体槽に向かって移動するよう循環するポリテトラフルオロエチレン製の案内ベルトとしても良い。
アルコール水溶液は、濃度2%〜10%のイソプロピルアルコール水溶液とすることがある。
前記噴霧装置のノズル及びミクロトームナイフの上方に排気装置を設置するのが望ましい。
【0012】
本発明の薄片製造方法は、標本ホルダで保持された標本ブロックを、モータで駆動して往復動させ、該標本ホルダの前方に設置したミクロトームナイフの刃先部前面に向かってアルコール水溶液を噴霧し、前記標本ブロックが往動した時、前記ミクロトームナイフによって前記標本ブロックを薄切りし、次いで、前記ミクロトームナイフで薄切りされた薄片の連続体を、前記ミクロトームナイフの前下方に設置された液体槽へ間欠的に移送し、さらに、前記液体槽内に発生した表層水流によって、前記薄片の連続体を、進入した端部から他端部に向けて移送し、前記液体槽の他端部において、連続体の先頭に位置する薄片をスライドガラスの表面に貼り付けた後、先頭の薄片を連続体から切り離す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薄片製造装置によれば、ミクロトームナイフでスライスされる薄片にアルコール水溶液を吹き付けて、摩擦によって発生する静電気を除去するので、薄片がミクロトームナイフの刃先部から大きな抵抗を受けて皺がよるのを防ぐことができ、液体槽へ進入した薄片は、表層水流でさらに伸展される。
また、標本ブロックをモータで往復動させてスライスし、スライスされた薄片を移送装置で液体槽へ移送し、さらに液体槽の表層水流で整然と所定位置まで送るので、作業を中断する必要が無く、煩雑な手作業が少なくて済み、作業効率が高まるばかりか、熟練技術も必要としない。
本発明の薄片製造装置によれば、薄片を皺のない状態でスライドガラスに貼り付けることができ、しかも、ほとんどの工程が自動化されているため、多量の薄片を効率よく製造することが可能で、熟練した技術を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の薄片製造装置は、標本ブロックを保持し、モータで駆動されて往復動する標本ホルダと、標本ホルダが往動した時に標本ブロックを薄切りするミクロトームナイフとから成るミクロトーム装置を有する。ミクロトームナイフでスライスする際に発生する静電気を除去して、薄片に皺がよるのを防ぐために、ミクロトームナイフの刃先部前面に向かって噴霧装置からアルコール水溶液を噴霧する。
薄片の連続体は、移送装置によって、ミクロトームナイフの前下方に設置された液体槽へ間欠的に移送され、液体槽に進入した薄片の連続体は、液体槽の他端部に向かって流れる表層水流によって伸展状態で運ばれる。
【実施例1】
【0015】
図1〜図4は、本発明の実施例1を示す。
薄片製造装置は、図1に示すように、ミクロトーム装置1と、噴霧装置2と、液体槽3と、移送装置4と、薄片切り離し装置5とを備える。
ミクロトーム装置1は、標本ブロックAを保持する標本ホルダ6と、標本ホルダ6の前方に設置されたミクロトームナイフ7とから成り、基台8の上面に設置されている。
基台8の前端部は架台9上に載置されると共に、基台8の後端部は、架台9から起立した長さ調節支柱10の上端に取り付けられている。即ち、基台8は、その前端部を下にして(ミクロトームナイフ7側を下にして)傾斜しており、長さ調節支柱10の長さを変えることにより、基台8の傾斜角度を変更できるようになっている。基台8の傾斜角度は、ミクロトームナイフ7で標本ブロックAからスライスされた薄片Bが自然落下できる角度(30°〜60°)とする。
【0016】
ミクロトームナイフ7は、基台8の上面前部に設けられたナイフホルダ11に、刃先部を上にして着脱可能に装着される。
標本ホルダ6は、組織標本をパラフィンで包理した標本ブロックAを前方に突出するよう保持可能である。また、標本ホルダ6は、回転輪12の中心軸13に連絡され、回転輪12は伝動ベルト15を介してモータ14の出力軸に連絡されている。
そして、モータ14を作動させると回転輪12の中心軸13が回動し、中心軸13に連絡された標本ホルダ6がミクロトームナイフ7の刃先部を通過して往復動し、標本ホルダ6が往動した時、標本ホルダ6に保持された標本ブロックAの先端部分がミクロトームナイフ7によってスライスされ、薄片Bが形成されるようになっている。
【0017】
噴霧装置2は、ノズルがミクロトームナイフ7の刃先部前面に臨むよう設置され、濃度2%〜10%、望ましくは5%前後のイソプロピルアルコール水溶液等のアルコール水溶液をミクロトームナイフ7の刃先部前面及びスライスされた薄片Bに向けて噴霧し、ミクロトームナイフ7が標本ブロックAをスライスしたときの摩擦で発生する静電気を除去し、薄片Bに皺ができるのを防ぐようになっている。
また、噴霧装置2のノズル及びミクロトームナイフ7の上方には、操作者がアルコールを吸引して影響を受けないように、排気装置26を設置してある。
なお、排気装置26を通過した空気は、活性炭素濾過装置を通してから排出するのが望ましい。
【0018】
液体槽3は、ミクロトームナイフ7の前下方に設置され、その上面が開口すると共に、下面にパネルヒータ16が装着されている。そして、液体槽3に収納された水がパネルヒータ16で42℃程度に加熱される。
また、図2に示すように、液体槽3の両側寄りには、液体槽3の内部を、前後両端部を除いて中央部と両側部とに区画する水流調節板17がそれぞれ側壁と平行に設置される。さらに、液体槽3の後端部の内面中央部には、断面略く字状の水流ガイド板18が、その頂部を前方に向けて取り付けてある。
【0019】
液体槽3には、エアノズル19及びエアコンプレッサ20より成る水流発生装置が設置される。
液体槽3の両側部の前端部において、収納された温水内の表面近くにはそれぞれエアノズル19が後方へ向けて配置され、エアコンプレッサ20から送られた圧縮空気がエアノズル19を通して温水の表面に吹き付けている。
従って、液体槽3の内部に収納された温水の表面部には、液体槽3の両側部において前端部から後端部に向かって流れ、中央部において後端部から前端部に向かって流れるよう循環する表層水流が形成される。
【0020】
移送装置4は、図1に示すように、ミクロトームナイフ7の刃先部と液体槽3の後端部上方との間に設置され、ミクロトームナイフ7によって標本ブロックAから切り出された薄片Bの連続体Cを液体槽3の後端部へ間欠的に移送するものである。
移送装置4は、図4に示すように、ミクロトームナイフ7の刃先部から液体槽3に向かって延びる傾斜路21と、傾斜路21の下端に設置された間欠送りローラ22とから成る。傾斜路21は、薄片Bの連続体Cに加わる抵抗が少なくて済むようにポリテトラフルオロエチレン製としてあり、薄片Bの連続体Cを間欠送りローラ22まで案内する。
【0021】
間欠送りローラ22は間欠作動モータによって駆動され、標本ブロックAから薄片Bをスライスしているときに回転して、薄片Bの連続体Cを下方へ案内し、1枚の薄片Bの上下寸法(標本ブロックAの高さ)より僅かに短い長さだけ移送した後は、次の切断が開始されるまで停止する。
なお、間欠送りローラ22を回動させる間欠作動モータの作動タイミング及び回転量と、標本ブロックAを往復動させるモータ14の回転速度とは、コントローラ23によって制御されており、薄片Bが引っ張られてちぎれないように、間欠送りローラ22の送り速度は、標本ブロックAの移動速度よりもやや遅く設定されている。
【0022】
そして、間欠送りローラ22で送られた薄片Bの連続体Cは、液体槽3内にその中央部後端から進入し、表層水流に送られて液体槽3の他端部に向かって移動する。
液体槽3の他端部上方に設置された薄片切り離し装置5は、300℃程度に加熱された銅線等の電熱チップを先端に設けてあり、手動で操作して薄片切り離し装置5の先端を薄片Bの連続体Cに接触させると、その位置で連続体Cが切断される。その際、薄片Bの切り離しは瞬時に衝撃を与えることなく行われ、後方に連なる連続体Cにダメージを与えることもない。
【0023】
この薄片製造装置によって薄片Bを製造するには、モータ14を駆動して、標本ブロックAが装着された標本ホルダ6を往復させる。標本ホルダ6が往動して標本ブロックAがミクロトームナイフ7の刃先に達すると、標本ブロックAの前端部が下方からスライスされ、薄片Bが標本ブロックAから切り取られ、切り取られた薄片Bはミクロトームナイフ7の刃先に接合する。
次いで、標本ホルダ6が再び往動を開始すると、既に切り取られた薄片Bのミクロトームナイフ7の刃先に接合している部分が、次にスライスされる薄片Bの下縁で刃先から押し離されるため、スライスされた薄片Bは、ミクロトームナイフ7の刃先部前面を通過して、傾斜路21上を滑り落ちる。
なお、ミクロトームナイフ7の刃先部前面及びスライスされている薄片Bには、噴霧装置2からアルコール水溶液が吹き付けられて摩擦による静電気が除去されるので、薄片Bに大きな抵抗が働いて皺が発生するのを防ぐことができる。
【0024】
標本ホルダ6は薄片が切り取られた後もしばらく往動を継続し、下限位置に達してから復動を行って元の位置に復帰する。
また、標本ブロックAのスライスが開始されると、同時に間欠送りローラ22が作動して薄片Bを液体槽3に向かって送る。間欠送りローラ22の送り量は薄片Bの上下寸法よりも僅かに小さく、しかも、薄片Bのスライスが行われていない時は停止しているので、スライスされた薄片Bは僅かな重ね代を介して帯状につながった連続体Cとなる。
薄片Bの連続体Cは移送装置4に送られて液体槽3の中央部後端に進入する。
【0025】
液体槽3の中央部表面には、後端部から前端部に向かう表層水流が流れているので、薄片Bの連続体Cは液体槽3の前端部に向けて移送され、この間に薄片Bは更に伸展される。
液体槽3の前端部において、スライドガラスDを水中に潜らせ、連続体Cの最も先頭に位置する薄片Bの下から持ち上げる。すると、この薄片BがスライドガラスDの表面に貼り付くので、薄片切り離し装置5を手動操作して、スライドガラスDに貼り付いた薄片Bを連続体Cから切り離す。
【0026】
この薄片製造装置によって、従来のミクロトームで試験したのと同じ標本ブロック、即ち、ニジマス稚魚の標本ブロックA(体長2.5cm、体幅4mm程度にトリミング)から厚さ4マイクロメーターの薄片Bを製造したところ、殆どの薄片Bが失敗することなく連続して伸展状態でスライスされた。
そして、約1000枚のスライドガラスDへ貼り付けた薄片Bを、約6時間で製造できた。
【実施例2】
【0027】
図5は本発明の実施例2を示す。
この薄片製造装置では、ミクロトームナイフ7の前面がその上端(刃先)を通る垂直線よりも後方に傾斜しているので、ミクロトームナイフ7でスライスされた薄片Bは垂直に落下することができる。
このため、ミクロトームナイフ7の刃先部から延びる傾斜路21を設けず、移送装置4として間欠送りローラ22をミクロトームナイフ7の刃先の直下から前方に張り出すよう設ける。
【0028】
間欠送りローラ22は、実施例1と同じく、ミクロトームナイフ7が標本ブロックAをスライスしている間は回転し、それ以外は停止している。また、間欠送りローラ22が薄片Bの連続体Cを送る送り量は、薄片Bの上下寸法よりも僅かに短い。
そして、間欠送りローラ22で移送された薄片Bの連続体Cは、液体槽3の中央部後端に進入する。
その他の構成は実施例1とほぼ同様なので、同一部分に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【実施例3】
【0029】
図6及び図7は本発明の実施例3を示す。
本実施例では、移送装置4として、間欠駆動モータで作動される案内ベルト24を設置してある。
案内ベルト24は、ポリテトラフルオロエチレン製であり、ミクロトームナイフ7によって標本ブロックAをスライスしている時に、その搬送面がミクロトームナイフ7の刃先部から液体槽3に向かって移動するよう間欠的に循環する。なお、図7に示すように、ミクロトームナイフ7及びナイフホルダ11には、案内ベルト24を通過させるためのガイド孔25が形成されている。
その他の構成は、実施例1及び実施例2とほぼ同様である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1を示す薄片製造装置の側面図。
【図2】液体槽の平面図。
【図3】液体槽の薄片送り時における平面図。
【図4】実施例1に係る移送装置の側面図。
【図5】実施例2に係る移送装置の側面図。
【図6】実施例3に係る移送装置の側面図。
【図7】実施例3に係るミクロトームナイフ、ナイフホルダ及び案内ベルトの斜視図。
【符号の説明】
【0031】
1 ミクロトーム装置
2 噴霧装置
3 液体槽
4 移送装置
5 薄片切り離し装置
6 標本ホルダ
7 ミクロトームナイフ
8 基台
9 架台
10 長さ調節支柱
11 ナイフホルダ
12 回転輪
13 中心軸
14 モータ
15 伝動ベルト
16 パネルヒータ
17 水流調節板
18 水流ガイド板
19 エアノズル
20 エアコンプレッサ
21 傾斜路
22 間欠送りローラ
23 コントローラ
24 案内ベルト
25 ガイド孔
26 排気装置
A 標本ブロック
B 薄片
C 連続体
D スライドガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本ブロックを保持し、モータで駆動されて往復動する標本ホルダと、該標本ホルダの前方に設置され、標本ホルダが往動した時、前記標本ブロックを薄切りするミクロトームナイフとから成るミクロトーム装置、前記ミクロトームナイフの刃先部前面に向かってアルコール水溶液を噴霧する噴霧装置、前記ミクロトームナイフの前下方に設置された液体槽、前記ミクロトームナイフの刃先部と前記液体槽との間に設けられ、前記ミクロトームナイフで薄切りされた薄片の連続体を前記液体槽へ間欠的に移送する移送装置、及び、前記液体槽内に、前記薄片が進入する端部から他端部に向けて流れる表層水流を発生させる水流発生装置を備えたことを特徴とする薄片製造装置。
【請求項2】
前記液体槽の他端部上方において、液体表面に臨む位置に、前記連続体を切断する薄片切り離し装置を設けた請求項1に記載の薄片製造装置。
【請求項3】
前記表層水流は、前記液体槽の中央部において、前記薄片が進入する端部から他端部に向けて流れ、前記液体槽の両側部において、他端部から前記薄片が進入する端部に向けて流れる循環流である請求項1又は2に記載の薄片製造装置。
【請求項4】
前記液体槽の両側寄りに、該液体槽の内部を、その前後両端部を除いて中央部と側部とに区画する水流調節板がそれぞれ設置され、前記側部の液体表面に、他端部から薄片が進入する端部に向けて圧縮空気を吹き付けることにより、前記循環流を形成した請求項3に記載の薄片製造装置。
【請求項5】
前記ミクロトーム装置が、前端部を下にして傾斜した基台の上面に設置され、前記基台の傾斜角度が可変である請求項1〜4のいずれかに記載の薄片製造装置。
【請求項6】
前記移送装置は、前記ミクロトームナイフの刃先部から前記液体槽に向かって延びるポリテトラフルオロエチレン製の傾斜路と、該傾斜路の下端に設置された間欠送りローラとから成る請求項1〜5のいずれかに記載の薄片製造装置。
【請求項7】
前記移送装置は、搬送面が前記ミクロトームナイフの刃先部から前記液体槽に向かって移動するよう循環するポリテトラフルオロエチレン製の案内ベルトから成る請求項1〜5のいずれかに記載の薄片製造装置。
【請求項8】
前記アルコール水溶液が、濃度2%〜10%のイソプロピルアルコール水溶液である請求項1〜7のいずれかに記載の薄片製造装置。
【請求項9】
前記噴霧装置のノズル及びミクロトームナイフの上方に排気装置を設置した請求項1〜8のいずれかに記載の薄片製造装置。
【請求項10】
標本ホルダで保持された標本ブロックをモータで駆動して往復動させ、該標本ホルダの前方に設置したミクロトームナイフの刃先部前面に向かってアルコール水溶液を噴霧し、前記標本ブロックが往動した時、前記ミクロトームナイフによって前記標本ブロックを薄切りし、次いで、前記ミクロトームナイフで薄切りされた薄片の連続体を、前記ミクロトームナイフの前下方に設置された液体槽へ間欠的に移送し、さらに、前記液体槽内に発生した表層水流によって、前記薄片の連続体を、進入した端部から他端部に向けて移送し、前記液体槽の他端部において、連続体の先頭に位置する薄片をスライドガラスの表面に貼り付けた後、先頭の薄片を連続体から切り離すことを特徴とする薄片製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−40826(P2007−40826A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225252(P2005−225252)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【特許番号】特許第3869453号(P3869453)
【特許公報発行日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(504196300)国立大学法人東京海洋大学 (83)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】