説明

薄紙印刷方法及びオフセット輪転印刷機

【課題】
坪量40g/m 以下の薄紙を、オフセット輪転印刷機で、印刷用紙の破損や印刷物表面のしわの発生せず、安定して効率よく薄紙の印刷を可能にする印刷方法及び薄紙印刷を可能にするオフセット輪転印刷機を提供する。
【解決手段】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、使用するガイドローラの少なくとも一を印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にする、乾燥部に乾燥用温風ないし熱風の吸引側に乾燥用温風ないし熱風の遮蔽板を吸引側に設ける、給紙部に紙粉除去装置を設ける、折機部の折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにする。また、印刷開始時は胴−水−インキの順番で開始し、印刷終了時にはインキ−水−胴の順番に停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット輪転印刷機で薄紙を印刷する薄紙印刷方法及び薄紙印刷を可能にするオフセット輪転印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット輪転印刷機は、印刷用紙を供給する給紙部、給紙部から印刷部に印刷用紙を受け渡すインフィールド部、実際に印刷を行う印刷部、インキ、水分等を乾燥する乾燥部、印刷した紙(印刷物)を折り束ね単位毎の印刷物にまとめる折機部から構成されている。このオフセット輪転印刷機で薄紙を印刷しようとすると色々な問題が生じる。例えば、JISに定義されている坪量40g/m 以下の薄紙を印刷しようとすると、紙が薄いので引っ張り強度が小さく、そのため印刷用紙が破損しやすく、また、しわになりやすい。従って、従来のオフセット輪転印刷機で坪量40g/m 以下の薄紙を印刷しようとすると、印刷用紙の破損、蛇行やしわが原因で大量の印刷を安定して効率よく行うことはできないとされる。
【0003】
厚紙から薄紙までの印刷を可能にする発明として、特開2000−62143号公報(特許文献1)には、薄紙から厚紙まで兼用することができる枚葉印刷機の印刷胴が記載され、特開平5−16475号公報(特許文献2)には、種々の厚さの用紙に対して、安定な印刷品質が得られ、かつ高い信頼性が得られる連続用紙印刷装置が記載され、また、特開2002−307656号公報(特許文献3)には、排紙方法の異なる薄紙及び厚紙のいずれにも対応することのできるシリンダー型スクリーン印刷機の排紙グリッパー機構が記載されている。しかしながら、本願発明が目的とする、坪量40g/m 以下の薄紙をオフセット輪転印刷機で印刷する技術に関しては、これら先行技術には記載されていなし、全く知られていないのが実情である。
【0004】
【特許文献1】特開2000−62143号公報
【特許文献2】特開平5−16475号公報
【特許文献3】特開2002−307656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、坪量40g/m 以下の薄紙を、オフセット輪転印刷機で、印刷用紙の破損や印刷物表面のしわの発生せず、安定して効率よく薄紙の印刷が可能な印刷方法及び薄紙印刷を可能にするオフセット輪転印刷機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、オフセット輪転印刷機で薄紙を印刷する薄紙印刷方法及び薄紙の印刷を可能にするオフセット輪転印刷機である。
【0007】
まず、オフセット輪転印刷機で薄紙を印刷する薄紙印刷方法に関して説明する。給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、使用するガイドローラの少なくとも一を印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にすることを特徴とする薄紙の印刷方法である。ガイドローラは、印刷用紙の搬送を容易にするために、オフセット輪転印刷機の各箇所に設けられている。これら多数設けられているガイドローラの少なくとも一を、印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にするのである。オフセット輪転印刷機に設けられるガイドローラすべてにつき、印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にすることもできるし、そのうちの1個ないし複数個につき肉厚にすることができる。肉厚にするガイドローラは、特に、インフィールド部、冷却部及び/又は折機部において装着されるガイドローラを肉厚にするのが好ましい。インフィールド部、冷却部及び折機部に設けられるガイドローラすべてにつき、印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にすることもできるし、インフィールド部、冷却部又は折機部に設けられるガイドローラの一部につき肉厚にすることもできる。また、後述するように、インフィールド部、冷却部又は折機部の特定のガイドローラを肉厚にすることもできる。
【0008】
ガイドローラを肉厚にするに際して、テープを巻き付けることにより肉厚にすることができる。また、ガイドローラの肉厚の程度は0.5〜2mmにするのが好ましい。
【0009】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の乾燥部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、乾燥用温風ないし熱風の吸引側に乾燥用温風ないし熱風の遮蔽板を設ける。遮蔽板は、乾燥用温風ないし熱風の吸気側に設けることが重要である。
【0010】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の給紙部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、紙粉除去装置を設ける。この紙粉除去装置は、供給される印刷用紙に空気を吹き付けると共に吸気することにより紙紛を除去する装置を好適に使用することができる。
【0011】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の折機部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにする。勿論、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面全面を梨地仕上げにすることもできる。これは折胴表面において、印刷用紙の滑りを改善するものである。更に、給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の折機部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分に表面摩擦抵抗の小さいテープ状のものを貼る。これにより、折胴の印刷用紙の端部が当たる周辺部分表面の摩擦が低くなり、折胴表面における印刷用紙の滑りが改善される。
【0012】
薄紙の印刷においては、印刷の開始時、終了時の印刷方法が、印刷用紙の破損、しわ発生、蛇行等に大きく影響を与える。この観点から、給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、印刷を開始する際に、胴着−水−インキの順番で印刷を開始する。また、給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、印刷を終了する際に、インキ−水−胴着の順に停止するのである。
【0013】
更に、オフセット輪転印刷機で薄紙の印刷を開始する際に、乾燥部はオフの状態で印刷速度を所定速度に高め、その状態で乾燥部をオンにし、しかる後に、胴着−水−インキの順番で印刷を開始することが好ましく、また、印刷を終了する際には、インキ−水−胴着の順に停止し、しかる後に印刷速度を減速し停止させることが好ましい。
【0014】
次に、薄紙の印刷を可能にするオフセット輪転印刷機に関して説明する。即ち、給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、インフィールド部、冷却部及び/又は折機部に、少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にしたガイドローラを備えたことを特徴とするオフセット輪転印刷機である。ガイドローラの肉厚の程度は0.5〜2mmとするのが好まし。インフィールド部、冷却部及び/又は折機部に装備されるガイドローラの全てについて、印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にしてもよいし、一部のガイドローラについて肉厚にしてもよいし、特定のガイドローラを肉厚にしてもよい。
【0015】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の乾燥部において、乾燥用温風ないし熱風の吸引側に乾燥用温風ないし熱風の遮蔽板を設けたことを特徴とするオフセット輪転印刷機である。
【0016】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の給紙部において紙粉除去装置を設けたことを特徴とするオフセット輪転印刷機である。そして、紙粉除去装置は、供給される印刷用紙に空気を吹き付けると共に吸気することにより紙紛を除去する装置とすることができる。
【0017】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の折機部において、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにした折胴を設けたことを特徴とするオフセット輪転印刷機である。梨地仕上げにする部位は、基本的には、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の印刷用紙の端部が当たる周辺部分であるが、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面全面であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、坪量40g/m 以下の薄紙を、オフセット輪転印刷機で、印刷用紙の破損や印刷物表面にしわが発生せず、安定して効率よく大量に印刷することができる。4色をはじめとする多色両面印刷においても、印刷用紙の破損や印刷物表面にしわが発生せず、安定して効率よく大量に印刷することができる。坪量40g/m 以下の薄紙を、オフセット輪転印刷機で印刷することは従来極めて困難なものであったが、本発明により、坪量40g/m 以下の薄紙を、オフセット輪転印刷機で初めて安定して効率よく大量に印刷することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施形態に基づいて説明する。オフセット輪転印刷機1は、図1に示したように、給紙部2、インフィールド部3、印刷部4、乾燥部5、冷却部6及び折機部7から構成されている。給紙部2は、巻き取り8及びそのスペア9並びに紙供給量と印刷用紙の張力のバランスをとる緩衝体であるダンサー9からなる。インフィールド部3は、給紙部2から給紙された印刷用紙を印刷部4に送る部分である。印刷部4は、実際に印刷を行うところである。印刷すべき色の数に応じて印刷ユニットが設けられる。図1においては、四色印刷を前提にしているので、4台の印刷ユニット10、11、12、13から構成されている。印刷物に必要とされる色数に応じた印刷ユニットが配置される。印刷された印刷用紙は、水分やインキを含むので、乾燥部5にて乾燥する。印刷された印刷用紙の乾燥は、温風ないし熱風を印刷紙に吹き付けて行う。乾燥された印刷用紙は、冷却部6で冷却され、折機部7で印刷された印刷用紙は折られ、裁断され印刷物単位毎に束ねられ、複数の印刷物単位に結束される。ここで印刷物単位というのは、例えば、8枚、16枚からなる印刷物のユニットのことである。
【0020】
オフセット輪転印刷機で印刷可能な印刷用紙の厚さは、概ね坪量40g/mを越えるものである。40g/m 以下の薄紙を印刷しようとすると、印刷用紙の破損、しわの発生や印刷用紙の蛇行が起こり、実際には印刷は極めて困難である。印刷用紙が破損しないまでも、印刷用紙の偏り、蛇行が起こり、しわが発生し、所謂商品としての価値がないものとなる。オフセット輪転印刷機には、印刷用紙を供給し搬送するために多数のガイドローラを使用しているが、薄紙印刷の場合、これらガイドローラ上で印刷用紙が偏ったり、蛇行したりして、しわが発生することが多い。また、乾燥部5において印刷用紙が乾燥のための熱風又は温風の吸引側に寄り、しわ発生、破損の原因になっている。折機部においては、フォーマで印刷用紙が浮き、折り精度が不良になる、16枚物の印刷時には二度切りが起こりソーメン状の切れ端が発生するという問題がある。更に、印刷の開始時、終了時に印刷用紙の破損が発生しやすいという問題がある。
【0021】
これらの問題を解決して初めて40g/m 以下の薄紙を、オフセット輪転印刷機で安定して効率よく印刷することができる。40g/m 以下の薄紙は、多くの場合紙粉を含んでおり、この紙粉が印刷用紙の破損やしわの発生に関与していることが多い。この事実に基づき、ダンサー9(図1参照)の入り口にウエブクリーナ14即ち、紙紛除去装置を設けた。ウエブクリーナ14は、供給される印刷用紙に空気を吹き付けて印刷用紙に付着している紙粉を除去し、同時に除去した紙粉を吸引する機構を有するものである。即ち、印刷用紙に付着する紙粉を空気を吹き付けて除去し、除去した紙粉を吸引するのである。印刷用紙の厚さが厚い場合は、わずかな量の紙粉は印刷用紙の破損やしわの発生にはさほど影響を及ぼさないが、印刷用紙の厚さが薄くなるとわずかの量の紙粉が印刷用紙の破損やしわの発生に原因になるのである。このウエブクリーナ14は、静電気防止の効果もあり、これが印刷用紙の破損やしわの発生の防止に一役担っていると考えられる。
【0022】
ガイドローラ上における印刷用紙の破損やしわの発生は、印刷用紙がローラ上で張力の大きい方向に引きずられて蛇行することが原因と考えられるので、ローラ上における印刷用紙に掛かる張力が大きく偏らないようにすることが求められる。本発明者は、ローラ上の印刷用紙の端部が接触する部位周辺の厚みを若干大きくする(肉厚にする)ことにより、この問題が低減することを見いだした。即ち、図2(a)に示すように、印刷用紙52の端部がローラ51に接触している周辺部位53、53’を肉厚にすることにより、ローラ上における印刷用紙の破損やしわの発生が減少するのである。ローラ51の肉厚にする部位53、53’は実際にローラを作成するときに肉を盛ることでも実現できるし、ローラのこの部位に、テープを巻き付けても実現することができる。
【0023】
オフセット輪転印刷機には、印刷用紙の搬送のために多数のガイドローラが設けられている。これら多数設けられているガイドローラのうち少なくとも一のガイドローラにつき、印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にする。オフセット輪転印刷機に設けられているガイドローラすべてにつきその印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にしてもよいし、一部のガイドローラについて肉厚にしてもよい。特に、印刷用紙の破損、しわや蛇行が発生しやすいガイドローラについて肉厚にするのが効果的である。一般的には、インフィールド部、冷却部、折機部に装着されるガイドローラにおいて、印刷用紙の破損、しわや蛇行が発生しやすいので、インフィールド部、冷却部、折機部に装着されるガイドローラを肉厚にするのが効果的である。インフィールド部、冷却部、折機部に設けられるガイドローラのすべてにつき、印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にすることもできるし、インフィールド部、冷却部又は折機部に設けられるガイドローラの一部につき肉厚にすることもできるし、また、インフィールド部、冷却部又は折機部の特定のガイドローラを肉厚にすることもできる。
【0024】
ガイドローラを肉厚にするには、ガイドローラの所定部位を肉盛りするか、環状又は帯状の部材を接合し、仕上げ加工を施せばよい。肉厚部の形状は、断面形状で長方形でもよいし、台形状でもよいし、ガイドローラの中心に向かってテーパを付したテーパ状にしてもよい。肉厚部の周辺の仕上げは、角を丸めたなめらかな仕上げでもよいし、角形状を残した仕上げでもよい。
【0025】
肉厚の厚みは0.5〜2mm程度にするのがよい。ガイドローラの肉厚部位の厚みがこれより薄いと、印刷用紙の破損やしわ発生の効果が小さくなり、逆に厚みがこれより厚くなると、印刷用紙の端部が盛り上がる状態になり、しわの発生を促すので好ましくない。特に、インフィールド部、冷却部及び折機部におけるガイドローラにおいて、印刷用紙の蛇行が起こりやすく、印刷用紙の破損やしわ発生になりやすい。図1で示せば、インフィールド部の番号21、22のガイドローラ、冷却部の番号31、32、33のガイドローラ、折機部の番号41のガイドローラにおいて、特に印刷用紙の偏りが起こりやすく、印刷用紙の破損、しわの原因になる。これらのうちのガイドローラの一部又は全部について、印刷用紙が当たる周辺部分を肉厚にする。印刷用紙の厚さや印刷速度等によって、印刷用紙の破損やしわの発生するガイドローラが多少異なることがあるので、実際の印刷用紙の破損やしわの発生状況に応じて、適宜、適当なガイドローラを選んで対応するのがよい。
【0026】
乾燥部5においては、印刷された印刷用紙に温風ないし熱風を吹き付けて乾燥させる。乾燥部内では、温風ないし熱風を印刷用紙に吹き付け、印刷用紙に吹き付けた温風ないし熱風を吸引している。このため、温風ないし熱風は吸引口に向かって吸引されるので、乾燥部内では給気と吸気とのバランスがとれず、印刷用紙が吸引側に引きずられやすいという現象がある。これが、乾燥部において印刷用紙の破損やしわが発生する一因になっている。これに対して、本発明では、温風ないし熱風の遮蔽板を温風ないし熱風の吸引側に設ける。図3に示したように、温風ないし熱風がノズル56、58からそれぞれ印刷用紙54に向かって吹き付けられる。図3において、矢印は温風ないし熱風の流れる方向を示している。図3に示したように、温風ないし熱風が排出(吸引)される側に遮蔽板57を設けることにより、温風ないし熱風が遮蔽板57によりその風向きが変えられて、その結果、印刷用紙は偏らずに、真っ直ぐに進行するのである。これにより、乾燥部における印刷用紙の破損やしわを軽減することができる。
【0027】
折機部においては、フォーマ46(図1参照)で印刷用紙が浮き、印刷用紙の折り精度が不良になる、32頁物(16枚物)の印刷時には二度切りとなり印刷物にソーメン状の切れ端が発生するという問題がある。これは、例えば、16枚(32頁)物の印刷においては、鋸刃45でカットされた後、折胴42を周回してフォーマ46から供給される印刷された印刷用紙と合わさって再び鋸刃45でカットされる際に鋸刃の当たる位置がずれて、二重切り現象が起こるのである。鋸刃の刃の位置を適宜移動させることにより、この二重切りの現象を防止することは可能であるが、完全でない場合がある。このような場合には、折胴の表面の、回転方向に向かって、針から折りブレードに至る部分において、少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにすることにより、この二重切りの現象を確実に抑えることができる。印刷された印刷用紙が、折胴に完全に密着することなく送り出されるようになり二重切りの現象を防ぐことができるものと考えられる。通常、折胴の表面は鏡面仕上げとなっており、印刷された印刷用紙との密着度が高くなっており、これが二重切りの原因になっていると考えられる。また、便宜的な方法としては、表面摩擦抵抗の小さいテープ状のものを貼付することができる。例えば、布製のガムテープを折胴の表面の、回転方向に向かって、針から折りブレードに至る部分において、少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分に貼付することができる。このように、折胴と印刷物(印刷用紙)との間の摩擦抵抗を小さくすることによって、折機部における印刷用紙の破損やしわの発生を防止することができる。
【0028】
図4に基づいて説明する。折胴61は、3個の針63、65、67と3個の折りブレード62、64、66を備えた胴である。針と折りブレードは等間隔に配置されている。通常この折胴61の表面は鏡面仕上げとなっている。鏡面仕上げの表面は、印刷用紙との密着性が高いので、先に述べたように、これが印刷物二重切りの原因になっている。本願の発明においては、折胴61の表面のうち、回転方向に向かって針から折りブレードに至る部分の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにする。図4においては、折胴の回転方向に向かって針から折りブレードに至る部分68、69、70を梨地仕上げとしいる。梨地仕上げは、図4に示したように、折胴の回転方向に向かって針から折りブレードに至る部分全面を梨地仕上げにしてもよいし、印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにしてもよい。表面摩擦抵抗の小さいテープ状のものを貼付するときも、同様に、折胴の回転方向に向かって針から折りブレードに至る部分全面に貼付してもよいし、印刷用紙の端部が当たる周辺部分に貼付してもよい。尚、図4において折胴の回転方向は、図面に向かって右回りである。従って、68、69、70の部分が梨地仕上げの対象部位となる。
【0029】
以上、坪量40g/m 以下の薄紙をオフセット輪転印刷機で印刷する際に問題となる、印刷用紙の破損やしわの発生を軽減ないし防止する具体的な方法を装置について説明してきた。それぞれの方策の単独適用により、印刷用紙の破損やしわ発生が低減することはいうまでもないが、これらの方策を組み合わせることにより、その効果は一段と高めることができる。即ち、給紙部において紙粉除去装置を設け、乾燥部において吸引側に空気の遮蔽板を設け、ガイドローラをその印刷用紙の端部が当たる周辺部を肉厚にし、かつ、進行方向に向かって折胴の針から折ブレードまでの表面を梨地仕上げにし、印刷用紙との摩擦を小さくすることにより印刷用紙の破損やしわの発生を抑えることができる。更に、給紙部においてダンサー圧調整、CTI圧の調整、印刷部において突き上げ装置の微調整、紙張力の調整、折機部においてブロア圧の調整、鋸刃の位置等も印刷用紙の破損やしわ発生防止に役立つ。
【0030】
以上は、定常状態で印刷されているときにおける方策について説明してきた。定常状態に入る前の段階、即ち、印刷開始時及び印刷終了時に印刷用紙の破損やしわの発生が起こりやすいという問題がある。以下に、印刷開始時及び印刷終了時の手順について説明する。印刷開始時、印刷部において、通常印刷では、版胴からゴム胴に転写し、更に印刷用紙に転写されて印刷が行われる。即ち、印刷開始の際には、通常は、版胴にまず水、次にインキを供給し、しかる後にゴム胴(ブランケット)に転写する(胴着)という手順で行われる。この手順で、薄紙の印刷を行う場合には、水により薄紙が切断してしまうという問題がある。そこで、この順序をまず版胴をゴム胴(ブランケット)に接触せしめ(胴着)、しかる後に水−インキの順序に供給する手順をとることにより、印刷用紙の切断を起こすことなく、印刷を開始することができる。その上、印刷開始時は、印刷の速度を通常の印刷速度よりも減速して、印刷を開始するのがよく、かつ、印刷開始時は、乾燥部の温度を室温のままとし、印刷が開始されて、通常の印刷速度に達してから乾燥を開始する手順を踏むのがよい。
【0031】
また、印刷を終了する場合には、インキ−水の順に供給を停止し、しかる後に版胴を胴から脱着させ、減速するという手順をとる。通常は、水−インキの順に供給を停止した後に、版胴をゴム胴から脱着している。通常の手順で、薄紙の印刷を行うと、紙破損して、次に印刷を開始する際に、紙掛けの手間が大変なものとなる。本発明においては、インキ−水−胴の順に停止し、しかる後に印刷速度を減速し停止するという手順をとる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、坪量40g/m 以下の薄紙を、オフセット輪転印刷機で、印刷用紙の破損や印刷物表面のしわが発生せず、安定して効率よく薄紙の印刷を行うことができるようになった。印刷業界の技術レベルの向上を図るとともに、各種印刷物の提供により産業の発達に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】オフセット輪転印刷機を示す図である
【図2】ガイドローラを示す図である
【図3】乾燥部における遮蔽板を示す図である
【図4】折胴を示す図である
【符号の説明】
【0034】
1 オフセット輪転印刷機
2 給紙部
3 インフィールド部
4 印刷部
5 乾燥部
6 冷却部
7 折機部
8 スペアの巻き取り
9 ダンサー
14 ウエブクリーナ
21、22 ガイドローラ
31、32、33 ガイドローラ
41 ガイドローラ
42 折胴
43 咬胴
44 減胴
45 鋸刃
46 フォーマ
51 ガイドローラ
52、54 印刷用紙
53、53’ 肉厚部
56、58 ノズル
57 遮蔽板
61 折胴
62、64、66 折りブレード
63、65、67 針
68、69、70 梨地仕上げの部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、使用するガイドローラの少なくとも一を印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にすることを特徴とする薄紙の印刷方法。
【請求項2】
前記厚肉にするガイドローラが、インフィールド部、冷却部及び/又は折機部において装着されるガイドローラであることを特徴とする請求項1に記載の薄紙の印刷方法。
【請求項3】
前記ガイドローラにテープを巻き付けることにより肉厚にしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄紙の印刷方法。
【請求項4】
前記ガイドローラの肉厚が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の薄紙の印刷方法。
【請求項5】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の乾燥部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、乾燥用温風ないし熱風の吸引側に乾燥用温風ないし熱風の遮蔽板を設けることを特徴とする薄紙の印刷方法。
【請求項6】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の給紙部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、紙粉除去装置を設けたことを特徴とする薄紙の印刷方法。
【請求項7】
前記紙粉除去装置が、供給される印刷用紙に空気を吹き付けると共に吸気することにより紙紛を除去する装置であることを特徴とする請求項6に記載の薄紙の印刷方法。
【請求項8】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の折機部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにしたことを特徴とする薄紙の印刷方法。
【請求項9】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の折機部において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分に表面摩擦抵抗の小さいテープ状のものを貼ることにより折胴の印刷用紙の端部が当たる周辺部分表面の摩擦を低くしたことを特徴とする薄紙の印刷方法。
【請求項10】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、印刷を開始する際に、胴着−水−インキの順番で印刷を開始することを特徴とする薄紙の印刷方法。
【請求項11】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、坪量10g/m〜40g/mの薄紙を印刷するに際して、印刷を終了する際に、インキ−水−胴着の順に停止することを特徴とする記載の薄紙の印刷方法。
【請求項12】
前記オフセット輪転印刷機で薄紙の印刷を開始する際に、乾燥部はオフの状態で印刷速度を所定速度に高め、その状態で乾燥部をオンにし、しかる後に、胴着−水−インキの順番で印刷を開始することを特徴とする請求項10に記載の薄紙の印刷方法。
【請求項13】
印刷を終了する際には、インキ−水−胴着の順に停止し、しかる後に印刷速度を減速し停止させることを特徴とする請求項11に記載の薄紙の印刷方法。
【請求項14】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機において、インフィールド部、冷却部及び/又は折機部に、少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部位を肉厚にしたガイドローラを備えたことを特徴とするオフセット輪転印刷機。
【請求項15】
前記ガイドローラの肉厚が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項14に記載のオフセット輪転印刷機。
【請求項16】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の乾燥部において、乾燥用温風ないし熱風の吸引側に乾燥用温風ないし熱風の遮蔽板を設けたことを特徴とするオフセット輪転印刷機。
【請求項17】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の給紙部において紙粉除去装置を設けたことを特徴とするオフセット輪転印刷機。
【請求項18】
前記紙粉除去装置が、供給される印刷用紙に空気を吹き付けると共に吸気することにより紙紛を除去する装置であることを特徴とする請求項17に記載のオフセット輪転印刷機。
【請求項19】
給紙部、インフィールド部、印刷部、乾燥部、冷却部及び折機部からなるオフセット輪転印刷機の折機部において、折胴の回転方向に向かって針から折ブレードまでの表面の少なくとも印刷用紙の端部が当たる周辺部分を梨地仕上げにした折胴を設けたことを特徴とするオフセット輪転印刷機。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−198914(P2006−198914A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13590(P2005−13590)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(505023076)岩岡印刷工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】