説明

薄膜ガスセンサ

【課題】消費電力の増加を極力抑え、ガス感知層が温度により影響される事態を排するとともに目的ガスに感応するようにして、周囲環境による影響を受けないようにした薄膜ガスセンサを提供する。
【解決手段】ガス感知層が目的ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動して温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して目的ガス濃度を算出し、また、ガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動して温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して一酸化炭素ガス濃度を算出し、温度による影響を排した薄膜ガスセンサとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池駆動を念頭においた低消費電力型の薄膜ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にガスセンサは、ガス漏れ警報器などの用途に用いられており、ある特定ガス、例えば、一酸化炭素(CO)、メタンガス(CH)、プロパンガス(C)、メタノール蒸気(CHOH)等に選択的に感応するデバイスであり、その性格上、高感度、高選択性、高応答性、高信頼性、低消費電力が必要不可欠である。
【0003】
ところで、家庭用として普及しているガス漏れ警報器には、都市ガス用やプロパンガス用の可燃性ガス検知を目的としたもの、燃焼機器の不完全燃焼ガス検知を目的としたもの、または、両方の機能を合わせ持ったものなどがあるが、いずれもコストや設置性(ガス検知が必要であるが電源供給不能の箇所である点)の問題から普及率はそれほど高くない。そこで、普及率の向上を図るべく、設置性の改善、具体的には、電池駆動によるガス漏れ警報器としてコードレス化することが望まれている。
【0004】
ガス漏れ警報器の電池駆動を実現するためにはガスセンサの低消費電力化が最も重要である。しかしながら、接触燃焼式や半導体式のガスセンサを動作させるためには、ガスセンサのガス感知膜を400℃〜500℃の高温に加熱する必要があり、この加熱が電力を消費する要因である。SnOなどの粉体を焼結して作製したガス感知膜によるガスセンサでは、スクリーン印刷等の方法を用いてガス感知膜の厚みを可能な限り薄くしてガス感知膜の熱容量を小さくしているが、薄膜化には限界があって充分に薄くできない。このため、電池駆動するにはガス感知膜の熱容量が大きすぎることとなり、これを高温に加熱するには大きい電力が必要で電池の消耗が大きくなってしまい、ガス感知膜を電池駆動するガスセンサは実用化が困難であった。
【0005】
そこで、微細加工プロセスにより高断熱・低熱容量のダイアフラム構造として、実用上許容しうる低消費電力の薄膜ガスセンサが開発実用化されて現在に至っている。続いてこのような薄膜ガスセンサについて説明する。
図12は、従来技術の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。図13は、薄膜ガスセンサの回路ブロック図である。
この従来技術の薄膜ガスセンサは、シリコン基板(以下Si基板)1、熱絶縁支持層2、ヒーター層3、電気絶縁層4、ガス感知層5を備える。熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層2a、CVD−Si層2b、CVD−SiO層2cの三層構造となっている。また、ガス感知層5は、詳しくは、接合層5a、感知層電極5b、感知層5c、第一ガス選択燃焼層5dを備える。この感知層5cはアンチモンが添加された二酸化スズ層(以下、Sb−doped SnO層)であり、第一ガス選択燃焼層5dはパラジウム(Pd)または白金(Pt)を触媒として担持したアルミナ焼結材(以下、触媒担持Al焼結材)である。そして、図13で示すように、ヒーター層3およびガス感知層5(詳しくは感知層電極5bを介して感知層5c)は、駆動・処理部6に接続されている。同様な先行技術が出願されていることが本発明者によって確認されている。
【0006】
この従来技術の薄膜ガスセンサは、様々な気体成分と接触することにより酸化物半導体である感知層5cの電気抵抗(感知層抵抗)が変化する現象を利用している。300〜400℃程度に加熱された金属酸化物半導体は導電率がガス濃度により変化する特性を持ち、空気中では酸素を吸着して高抵抗化するが可燃性ガス中では可燃性ガスを吸着して低抵抗化する。
【0007】
詳しくは、Sb−doped SnO層などのn型金属酸化物半導体であって300〜400℃程度に加熱された感知層5cは、空気中では粒子表面に酸素などを活性化吸着するが、酸素は電子受容性が強くて負電荷吸着するため、酸化物半導体粒子表面に空間電荷層が形成され導電率が低下して高抵抗化し、また、可燃性ガスなどの電子供与性の還元性気体が吸着して燃焼反応が起こると表面吸着酸素が消費され、酸素に捕獲されていた電子が半導体内にもどされ、電子密度が増加して導電率が増大して低抵抗化する、というものである。
【0008】
この感知層5cは、多様なガスの検知が可能である反面、特定のガスを選択的に検知することは困難であった。
そこでガス感知層5は、電気絶縁層4、接合層5a、一対の感知層電極5b,5b、および、Sb−doped SnO層である感知層5cの表面を、触媒担持Al焼結材で構成された第一ガス選択燃焼層5dが覆う構造としている。
このようにガス感知層5は、感知層5cの全体を触媒を担持した焼結材で構成された第一ガス選択燃焼層5dで覆うように構成したため、検知する目的ガスよりも酸化活性の強いガスを燃焼させ、検知する目的ガス(特にメタンやプロパン)のみの感度を向上させるとともに、そのセンサ部の大きさや膜厚、ダイアフラム径との比などを工夫することで、検知したい目的ガスのガス選択性を高め、消費電力の低減化を可能とする。
【0009】
このような薄膜式ガスセンサでは、目的ガスとしてCH,C等の可燃性ガスの検知を行う場合にも低消費電力化を実現するため、ヒーター層3の駆動方式を工夫している。この点について図を参照しつつ説明する。図14は、High+Off方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図、図15は、High+Off+Low+Off方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図である。
【0010】
High+Off方式では、特に目的ガスとしてCH,C等の可燃性ガス濃度の検出で用いられるものであり、ヒーター層3に図14で示すような電流による駆動信号を流してヒーター層3のヒーター温度を一定期間(例えば0.05〜0.5s)にわたり、高温状態(High状態:400〜500℃)に保持し、その後一定期間にわたりヒーター層3に駆動信号を流さない状態(Off状態)として、検出時以外では不要な電力の消費を抑止する。そして、このようなHigh+Offによる駆動を所定の周期(例えば30秒周期)で繰り返し、ヒーター層3を間歇駆動している。
【0011】
この方式ではHigh状態でガス検知を行うものであり、ガス検知では感知層電極5bを介して感知層5cの感知層抵抗を測定し、その変化からCH,C等の可燃性ガス濃度を検出する。これは、ヒーター温度が高温の時に第一ガス選択燃焼層5dにおいて、CO,H等の還元性ガスその他の雑ガスを燃焼させ、不活性なCH,C等の可燃性ガスが第一ガス選択燃焼層5dを透過して拡散し、感知層5cに到達して感知層5cのSnOと反応し、SnOの抵抗値が変化することを利用してガス機器などのガス漏れ時に発生するCH,C等の可燃性ガスの濃度を検出するものである。
【0012】
また、High+Off+Low+Off方式では、先の可燃性ガス濃度に代えて不完全燃焼時に発生する一酸化炭素(CO)の濃度の検出で用いられるものであり、ヒーター層3に図15で示すような電流による駆動信号を流してヒーター層3のヒーター温度を一定期間(例えば0.05〜0.5s)にわたり、高温状態(High状態:400〜500℃)に保持して触媒の酸化作用により、感知層5cの表面に付着したガスを一旦燃焼させてクリーニングし、その後一定期間にわたりヒーター層3に駆動信号を流さない状態(Off状態)としてセンサ温度が常温になっている間に感知層5cの表面にCOを付着させ、続いて低温状態(Low状態:50〜150℃)に保持して常温中に吸着したCOと感知層5cのSnOとの反応によって、SnOの抵抗値が変化することを利用してガス機器などの不完全燃焼時に発生するCOの濃度を検出する。その後一定期間にわたりヒーター層3に駆動信号を流さない状態(Off状態)として、検出時以外では不要な電力の消費を抑止する。そして、このようなHigh+Off+Low+Off方式による駆動を所定の周期(例えば150秒周期)で繰り返し、ヒーター層3を間歇駆動している。
同様な先行技術が、特許文献1(特開2003−270185号公報)が開示されている。
【0013】
図14のHigh+Off方式による可燃性ガス濃度の検出や、図15のHigh+Off+Low+Off方式で不完全燃焼時のCOのガス濃度検出をともに行う場合、可燃性ガス濃度の検出用のセンサと、不完全燃焼時のCOのガス濃度検出用のセンサと、をそれぞれ別途準備し、それぞれ別にヒータ駆動することとなる。
【0014】
一方、一台のセンサで可燃性ガス濃度の検出と不完全燃焼時のCOガス濃度の検出とを行えるようにしたいという要請もある。この場合、ヒータ駆動形式を工夫することで対応が可能となる。この点について図を参照しつつ説明する。図16は、High+Low方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図、図17は、High+Low+Off方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図である。
図16で示すHigh+Low方式では、可燃性ガス濃度と不完全燃焼時に発生するCOの濃度の検出とを行う機能を有するものであり、ヒーター層3に図16で示すような電流による駆動信号を流してヒーター層3のヒーター温度を一定期間(例えば0.05〜0.5s)にわたり、高温状態(High状態:400〜500℃)に保持して触媒の酸化作用により、感知層5cの表面に付着したガスを一旦燃焼させてクリーニングしつつ不活性なCH,C等の可燃性ガスを検知し、その後一定期間(数秒から数10秒)にわたり低温状態(Low状態:50〜150℃)に保持して感知層5cの表面にCOを十分に付着させてこのCOと感知層5cのSnOとの反応によって、SnOの抵抗値が変化することを利用してガス機器などの不完全燃焼時に発生するCOの濃度を検出する。
同様な先行技術が、特許文献2(特開2000−193623号公報)に開示されている。
【0015】
また、図17で示すHigh+Low+Off方式は、図16で示すHigh+Low方式と同様に可燃性ガス濃度と不完全燃焼時に発生するCOの濃度の検出とを両方行う機能を有するものであるが、ガス警報器を乾電池などのバッテリーで駆動する場合には、センサの平均消費電力を最小限に抑制したいという強い要請に応えるものであり、図17で示すように、一旦、ヒーター層3のヒーター温度を短い一定期間(例えば、0.05s〜0.5sと短くするが、薄膜ガスセンサは小型で熱容量が低く断熱性に優れているため、温度時定数が50ms以下と短く、High状態を50〜500msに短くしても感知層5cの温度を400〜500℃に上昇させることができる)にわたり高温状態(High状態:400〜500℃)に保持して触媒の酸化作用により、感知層5cの表面に付着したガスを一旦燃焼させてクリーニングしつつ不活性なCH,C等の可燃性ガスを検知し、低温状態(Low状態:約100℃)に降温してCOのガス検知を行い、その後一定期間ヒーター層3に駆動信号を流さない状態(OFF状態)として、検出時以外では不要な電力の消費を抑止する。そして、このようなHigh+Low+Offによる駆動を所定の周期(例えば30秒周期)で繰り返し、ヒーター層3を間歇駆動している。同様な先行技術が、特許文献3(特開2005−83840号公報)に開示されている。
【0016】
また、特許文献4(特開2005−134311号公報)には、特に図示しないが、薄膜ガスセンサの温度特性を利用して、ヒータの温度をHigh+Medium+Low+Offに所定の周期(例えば30秒周期)で繰り返し、CO,H,CHを検出するアルゴリズムについての提案である。ただし、この方式では、センサLow温度を高温(450℃)にしたときのCHの選択性は良い(大気中、CO100ppm中、H1000ppm中の抵抗値に比べて、CH4000ppm中の感知層抵抗値が一桁以上低い)のに比べて、センサLow温度を中温(240℃)、低温(120℃)にしたときの選択性が悪い。すなわち、センサLow温度を中温にしたときは、大気中、CO100ppm中の抵抗値に比べて、H1000ppm中、CH4000ppm中の感知層抵抗値がともに一桁以上低い。
【0017】
すなわち、感知層抵抗値の変化だけからはCHとHとの区別がつかない。さらに、センサLow温度を低温にしたときは、大気中の抵抗値に比べて、COで100ppm中、Hで1000ppm中、CHで4000ppm中の感知層抵抗値がともに一桁以上低い。すなわち、感知層抵抗値の変化だけからは、CO,CH,Hの区別がつかない。
このため、特許文献4では、センサLow温度を高温、中温、低温にしたときの感知層抵抗値の測定結果から、CO,CH,Hのうち、どのガスが存在するかを認識するアルゴリズムを提案しているが、このままでは検出したガスの濃度を推定するまでに至らない、というものであった。
薄膜ガスセンサの駆動方式はこのようなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003−270185号公報
【特許文献2】特開2000−193623号公報
【特許文献3】特開2005−83840号公報
【特許文献4】特開2005−134311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記のような薄膜ガスセンサでは、感知層抵抗が環境により影響されることが、本発明者による研究・試験の過程で知見された。続いて、このような環境により変化する感知層抵抗について検討する。図18は、High+Low+Off方式による感知層の温度−感知層抵抗特性図である。図18で示す特性図は、先の図12の薄膜ガスセンサを、図17のようなHigh+Low+Off方式で30秒周期で駆動し、特にHigh状態を450℃で一定に200msの間保持した後に、500msの間Low状態に保持するものである。このLow状態の温度を50℃から450℃に変化させて駆動した場合の、Low状態終了時の感知層抵抗の値を、Low状態の温度に対してプロットしたものである。なお、測定時の外部雰囲気温度は25℃で一定である。
【0020】
この図18のセンサ特性に示すように、Low状態(50〜150℃)の間のうち50〜120℃の区間では、CO100ppm中の感知層抵抗値に温度依存性があることが分かる。このような温度依存性があると、外部雰囲気温度が25℃から50℃に上昇した場合、ヒーター層に同じ電力を与えても薄膜ガスセンサの温度が25℃分上昇し、CO濃度が100ppmで一定であっても感知層の出力が変化してしまい、CO濃度が正確に検出できないおそれがあった。
【0021】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、消費電力の増加を極力抑え、ガス感知層が温度により影響される事態を排するとともに目的ガスに感応するようにして、周囲環境による影響を受けないようにした薄膜ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
このような本発明の請求項1に係る薄膜ガスセンサは、
貫通孔を有するSi基板と、
この貫通孔の開口部に張られるダイアフラム様の熱絶縁支持層と、
熱絶縁支持層上に設けられるヒーター層と、
熱絶縁支持層およびヒーター層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
電気絶縁層上に設けられる一対の感知層電極と、一対の感知層電極を渡されるように設けられる感知層と、感知層の表面に設けられ、第一の触媒を担持した焼結材の第一ガス選択燃焼層と、感知層と第一ガス選択燃焼層との間に設けられ、第二の触媒を含む薄膜半導体の第二ガス選択燃焼層と、を有するガス感知層と、
ヒーター層に接続される駆動部と、
ガス感知層に接続される処理部と、
を備え、
駆動部は、
ガス感知層が目的ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する目的ガス検知駆動手段と、
ガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する一酸化炭素ガス検知駆動手段として機能し、
かつ、目的ガス検知駆動手段としてn回連続して機能した後に、一酸化炭素ガス検知駆動手段として機能するものであり、
処理部は、
目的ガス検知温度駆動により温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して目的ガス濃度を算出する目的ガス濃度算出手段と、
一酸化炭素ガス検知温度駆動により温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して一酸化炭素ガス濃度を算出する一酸化炭素ガス濃度算出手段として機能することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項2に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
目的ガス検知駆動手段ではHigh+Off駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動手段ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動手段と一酸化炭素ガス検知駆動手段とが連続して全体をHigh+Off+Low+Off駆動とし、
High駆動時にガス感知層が可燃性ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Low駆動時にガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項3に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
目的ガス検知駆動手段ではHigh+Medium+Off(常温)駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動手段ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動手段と一酸化炭素ガス検知駆動手段とが連続して全体をHigh+Medium+Off+Low+Off駆動とし、
High駆動時にガス感知層が可燃性ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Medium駆動時にガス感知層が水素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Low駆動時にガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項4に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
目的ガス検知駆動手段ではHigh+Medium1+Medium2+Off(常温)駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動手段ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動手段と一酸化炭素ガス検知駆動手段とが連続して全体をHigh+Medium1+Medium2+Off+Low+Off駆動とし、
High駆動時にガス感知層がクリーニング温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Medium1駆動時にガス感知層が可燃性ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Medium2駆動時にガス感知層が水素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Low駆動時にガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項5に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
一酸化炭素ガス検知駆動手段は、多段ステップ状の一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であり、
一酸化炭素ガス濃度算出手段は、一酸化炭素ガス検知温度駆動により温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して一酸化炭素ガス濃度を算出する手段であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項6に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
一酸化炭素ガス検知駆動手段は、ランプ状の一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であり、
一酸化炭素ガス濃度算出手段は、一酸化炭素ガス検知温度駆動により所定期間毎にガス感知層の感知層抵抗の値を算出して一酸化炭素ガス濃度を算出する手段であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項7に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記感知層は、Sb(アンチモン)を添加したSnOによる層であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項8に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記第一ガス選択燃焼層は、Pd(パラジウム)を触媒として担持したAl焼結材による層であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項9に係る薄膜ガスセンサは、
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記第二ガス選択燃焼層は、Pt(白金)を添加したSnOによる層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
以上のような本発明によれば、消費電力の増加を極力抑え、ガス感知層が温度により影響される事態を排するとともに目的ガスに感応するようにして、周囲環境による影響を受けないようにした薄膜ガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。
【図2】薄膜ガスセンサの回路ブロック図である。
【図3】特別駆動方式による感知層の温度−感知層抵抗特性図である。
【図4】特別駆動方式による感知層の温度−感知層抵抗特性図である。
【図5】特別駆動方式による感知層の温度−感知層抵抗特性図である。
【図6】ヒーター層の他の駆動方式を説明する駆動パターン図である。
【図7】ヒーター層の他の駆動方式を説明する駆動パターン図である。
【図8】ヒーター層の他の駆動方式を説明する駆動パターン図である。
【図9】薄膜ガスセンサの回路ブロック図である。
【図10】ヒーター層の駆動方式を説明する駆動パターン図である。
【図11】ヒーター層の他の駆動方式を説明する駆動パターン図である。
【図12】従来技術の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。
【図13】薄膜ガスセンサの回路ブロック図である。
【図14】High+Off方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図である。
【図15】High+Off+Low+Off方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図である。
【図16】High+Low方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図である。
【図17】High+Low+Off方式によるヒーター層温度の時間特性を説明する説明図である。
【図18】High+Low+Off方式による感知層の温度−感知層抵抗特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、ヒータの駆動方法を工夫することにより、1つの薄膜ガスセンサを用いて、CO(一酸化炭素ガス)とCH(目的ガス)と両方のガスを低消費電力で検出しようとするものである。なお、ガス漏れにより発生するCHは頻繁に監視・検出する必要があるが、不完全燃焼により発生するCOはCHに比較すると、その検出間隔は長くてもかまわない。すなわち、CHは例えば30secおきに検出しなければならないが、COは150secおきの検出でもかまわない。
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態の薄膜ガスセンサについて図を参照しつつ説明する。図1は本形態の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。図2は薄膜ガスセンサの回路ブロック図である。
本形態の薄膜ガスセンサは、シリコン基板(以下Si基板)1、熱絶縁支持層2、ヒーター層3、電気絶縁層4、ガス感知層5を備える。熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層2a、CVD−Si層2b、CVD−SiO層2cの三層構造となっている。また、ガス感知層5は、詳しくは、接合層5a、感知層電極5b、感知層5c、第一ガス選択燃焼層5d、第二ガス選択燃焼層5eを備える。この感知層5cはアンチモンが添加された二酸化スズ層(以下、Sb−doped SnO層)であり、第一ガス選択燃焼層5dはパラジウム(Pd)を触媒として担持したアルミナ焼結材(以下、Pd担持Al焼結材)であり、第二ガス選択燃焼層5eは白金が添加された二酸化スズ層(以下、Pt−doped SnO層)である。そして、図2で示すように、ヒーター層3およびガス感知層5(詳しくは感知層電極5bを介して感知層5c)は、駆動・処理部6に接続されている。駆動・処理部6は、本発明の駆動部と処理部とを一体に構成したものであり、例えばCPU(Central ProccessingUnit)である。
【0035】
ガス感知層5は、Sb−doped SnO層である感知層5cの表面全体を、第二ガス選択燃焼層5eが覆い、さらに電気絶縁層4、接合層5a、一対の感知層電極5b,5b、感知層5cおよび第二ガス選択燃焼層5eの表面を、Pd担持Al焼結材で構成された第一ガス選択燃焼層5dが覆う構造としている。
【0036】
そして本形態では図1の薄膜ガスセンサを、特別駆動方式で駆動することで、一酸化炭素濃度検出(CO濃度検出)の温度依存性・感度を改善するものである。この点について以下説明する。この特別駆動方式とは、特にセンサLow温度が略200℃以下ではHigh+Off+Low+Off駆動し、また、センサLow温度が略200℃を超えるとHigh+Low+Off駆動する、というものである。このうち略200℃以下ではHigh+Off+Low+Off方式によりLow状態でガス濃度を検出するとCOの選択性が向上し、また温度依存性が改善することが、本発明者の研究・試験の過程で知見されている。この点について図を参照しつつ説明する。図3,図4,図5は、特別駆動方式による感知層の温度−感知層抵抗特性図である。
【0037】
この特別駆動方式の温度−感知層抵抗特性図は、詳しくは、センサLow温度が略200℃以下の温度特性ではHigh+Off+Low+Off駆動(High状態を450℃で一定に200msの間保持してからOff状態とし、その後にLow状態を200℃で一定に500msの間保持してからOff状態とする駆動)を、30秒周期で行った場合の、Low状態終了時の感知層抵抗を、センサLow温度に対してプロットするものであり、また、センサLow温度が200℃を超える温度特性ではHigh+Low+Off駆動(High状態を450℃で一定に200msの間保持し、450℃から200℃に変化させてLow状態を200℃で一定に500msの間保持する駆動)を、30秒周期で行った場合の、Low状態終了時の感知層抵抗の値を、センサLow温度に対してプロットしたものである。
【0038】
このような特別駆動方式では、図3で示すように、センサLow温度が100℃以下の領域で、CO100ppm中の抵抗値がほぼ一定、つまり感知層抵抗の温度依存性が目立たなくなっており、温度依存性が改善されていることが分かる。これは従来技術の図18で示した温度−感知層抵抗特性図のセンサLow温度が100℃以下の領域と比較しても明らかである。
【0039】
さらに、この特別駆動方式では、図3で示すように、センサLow温度が100℃以下の領域で、COの選択性が向上している、つまり大気中、H1000ppm中、CH4000ppm中の感知層抵抗に比べて、CO100ppmの感知層抵抗の値が一桁以上低くなっている。これは従来技術の図18で示した温度−感知層抵抗特性図のセンサLow温度が100℃以下の領域における感知層抵抗の値が大差ないことと比較しても明らかである。
【0040】
このような挙動を示す理由として、次のような現象が挙げられる。すなわち、図1に断面構造を示した薄膜ガスセンサをHigh+Off+Low+Off駆動すると、まずHigh状態で第一ガス選択燃焼層5dおよび第二ガス選択燃焼層5eの触媒酸化作用によって雑ガスに対するクリーニング性能が向上し、さらに続くOff状態でのCOの吸着が促進され、COが十分にSnO表面に吸着された結果、続くLow状態でCOと感知層5cのSnOとの反応によるSnOの抵抗値変化が大きくなるためと考えられる。
【0041】
さらに、CO濃度を変化させた場合の実験結果を図4に示す。薄膜ガスセンサを、特別駆動方式で駆動する(上記のセンサLow温度が略200℃以下ではHigh+Off+Low+Off駆動し、また、センサLow温度が略200℃を超えるとHigh+Low+Off駆動する)と、CO濃度の違いによってOff時のCO吸着量に差が生じ、その結果、センサLow温度が150℃以下ではセンサLow時のSnOの抵抗値がCO濃度によって異なる。
【0042】
なお、センサLow温度が150℃を超える温度では、Off時に吸着した還元性ガスであるCOは、第一ガス選択燃焼層5d、第二ガス選択燃焼層5eの作用で燃焼し始めるので、COの濃度依存性がなくなり、さらにセンサLow温度が230℃を超える温度では還元性ガスであるCOは第一ガス選択燃焼層5d、第二ガス選択燃焼層5eの作用で完全に燃焼しきって、SnOの感知層抵抗は大気中の値とほぼ等しくなっている。
【0043】
次に、CH濃度を変化させた場合の実験結果を図5に示す。薄膜ガスセンサを、特別駆動方式で駆動する(上記のセンサLow温度が略200℃以下ではHigh+Off+Low+Off駆動し、また、センサLow温度が略200℃を超えるとHigh+Low+Off駆動する)と、センサLow温度が350℃を超える付近からSnOの感知層抵抗がCH濃度によって異なってくる。これは、センサLow温度が350℃を超えると、第一ガス選択燃焼層5d、第二ガス選択燃焼層5eでHは燃焼し始めるが(COはさらに低温から燃焼し始める)、不活性ガスであるCHはセンサLow温度が350℃を超えても完全に燃焼しきることなく感知層5cに到達してSnOと反応し、SnOの抵抗値変化が大きくなるためと考えられる。
【0044】
なお、センサLow温度が450℃の場合は、High温度とセンサLow温度が等しくなり、パルス状にHigh温度を与えるHigh+Off駆動の場合になり、図5の特性を有する薄膜ガスセンサではHigh+Off駆動でもCH濃度を確実に検出できる。
本発明は、以上に述べた図1の薄膜ガスセンサを用いて、1つの薄膜ガスセンサでガス漏れと不完全燃焼を同時に検出するようなヒータ駆動方法を採用した薄膜ガスセンサを提供しようとするものである。
【0045】
続いて各部構成について説明する。
Si基板1はシリコン(Si)により形成され、貫通孔を有するように形成される。
熱絶縁支持層2はこの貫通孔の開口部に張られてダイアフラム様に形成されており、Si基板1の上に設けられる。
【0046】
熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層2a、CVD−Si層2b、CVD−SiO層2cの三層構造となっている。
熱酸化SiO層2aは熱絶縁層として形成され、ヒーター層3で発生する熱をSi基板1側へ熱伝導しないようにして熱容量を小さくする機能を有する。また、この熱酸化SiO層2aはプラズマエッチングに対して高い抵抗力を示し、後述するがプラズマエッチングによるSi基板1への貫通孔の形成を容易にする。
CVD−Si層2bは、熱酸化SiO層2aの上側に形成される。
CVD−SiO層2cは、ヒーター層3との密着性を向上させるとともに電気的絶縁を確保する。CVD(化学気相成長法)によるSiO層は内部応力が小さい。
【0047】
ヒーター層3は、薄膜状のNi−Cr膜(ニッケル−クロム膜)であって、熱絶縁支持層2のほぼ中央の上面に設けられる。また、図示しない電源供給ラインも形成される。この電源ラインは、駆動・処理部6に接続される。
電気絶縁層4は、電気的に絶縁を確保するスパッタSiO層からなり、熱絶縁支持層2およびヒーター層3を覆うように設けられる。ヒーター層3と感知層電極5bとの間に電気的な絶縁を確保し、また、電気絶縁層4は感知層5cとの密着性を向上させる。
【0048】
接合層5aは、例えば、Ta膜(タンタル膜)またはTi膜(チタン膜)からなり、電気絶縁層4の上に設けられる。この接合層5aは、感知層電極5bと電気絶縁層4との間に介在して接合強度を高める機能を有している。
感知層電極5bは、例えば、Pt膜(白金膜)またはAu膜(金膜)からなり、感知層5cの感知電極となるように左右一対に設けられる。
ガス感知層5cは、Sb−doped SnO層からなり、一対の感知層電極5b,5bを渡されるように電気絶縁層4の上に形成される。
【0049】
第一ガス選択燃焼層5dは、第一の触媒であるパラジウムを担持した焼結体であり、先に説明したようにPd担持Al焼結材である。Alは多孔質体であるため、孔を通過する検知ガスがPdに接触する機会を増加させて燃焼反応を促進させる。
第二ガス選択燃焼層5eは、第二の触媒である白金を含む薄膜半導体であり、先に説明したようにPt−doped SnO層である。
そして、第二ガス選択燃焼層5eは、感知層5cの表面に設けられ、さらに第一ガス選択燃焼層5dは、電気絶縁層4、接合層5a、一対の感知層電極5b,5b、感知層5cおよび第二ガス選択燃焼層5eの表面を覆うように設けられる。
このような薄膜ガスセンサはダイアフラム構造により高断熱,低熱容量の構造としている。
【0050】
駆動・処理部6は、本発明の駆動部と処理部とを一体に構成したものであり、ヒーター層3と電気的に通電可能に接続され、また、ガス感知層電極5bを介して感知層5cと電気的に通信可能に接続される。
薄膜ガスセンサの構成はこのようなものである。
【0051】
続いて、本形態の薄膜ガスセンサの製造方法について概略説明する。
まず、板状のシリコンウェハー(図示せず)に対して熱酸化法によりその片面(または表裏両面)に熱酸化を施して熱酸化SiO膜たる熱酸化SiO層2aを形成する。
そして、熱酸化SiO層2aを形成した面にCVD−Si膜をプラズマCVD法にて堆積してCVD−Si層2bを形成する。そして、このCVD−Si層2bの上面にCVD−SiO膜をプラズマCVD法にて堆積してCVD−SiO層2cを形成する。
【0052】
さらに、CVD−SiO層2cの上面にNi−Cr膜をスパッタリング法により蒸着してヒーター層3を形成する。そして、このCVD−SiO層2cとヒーター層3との上面にスパッタSiO膜をスパッタリング法により蒸着して、スパッタSiO層である電気絶縁層4を形成する。
【0053】
この電気絶縁層4の上に接合層5a、感知層電極5bを形成する。成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行う。成膜条件は接合層(TaあるいはTi)5a、感知層電極(PtあるいはAu)5bとも同じで、Arガス(アルゴンガス)圧力1Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cm、膜厚は接合層5a/感知層電極5b=500Å/2000Åである。
【0054】
一対の感知層電極5b,5bに渡されるように電気絶縁層4の間にSb−doped SnO膜がスパッタリング法により蒸着され、感知層5cが形成される。
成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、反応性スパッタリング法によって行う。ターゲットにはSbを0.5wt%含有するSnOを用いる。成膜条件はAr+Oガス圧力2Pa、基板温度150〜300℃、RFパワー2W/cmである。感知層5cの大きさは、50ないし200μm角程度、厚さは0.2ないし1.6μm程度が望ましい。
【0055】
この感知層5cの表面には、Pt−doped SnO膜がスパッタリング法により堆積され、第二ガス選択燃焼層5eが形成される。
絶縁層4、接合層5a、一対の感知層電極5b,5b、感知層5cおよび第二ガス選択燃焼層5eを覆うように、第一ガス選択燃焼層5dが形成される。この第一ガス選択燃焼層5dは、Pd触媒を担持したアルミナ粉末(Pd/アルミナ )、シリカゾルバインダまたはアルミゾルバインダの何れかおよび有機溶剤を混合調製した印刷ペーストをスクリーン印刷で印刷し、室温で乾燥後、500℃で1時間焼き付けして形成している。第一ガス選択燃焼層5dの大きさは、感知層5cおよび第二ガス選択燃焼層5eを十分に覆えるようにする。このようにスクリーン印刷により厚みを薄くしている。
【0056】
最後にシリコンウェハー(図示せず)の裏面から微細加工プロセスとしてエッチングによりシリコンを除去して貫通孔を形成してSi基板1とし、ダイアフラム構造の薄膜ガスセンサを形成する。そして、ヒーター層3および感知層電極5bは駆動・処理部6と電気的に接続される。
薄膜ガスセンサの製造方法はこのようになる。
【0057】
続いて、このように構成された薄膜ガスセンサの駆動・処理部6による特別駆動方式について説明する。図6はヒーター層の駆動方式を説明する駆動パターン図である。
図2で示す駆動・処理部6は、ヒーター層3を駆動する場合に、図6のような駆動信号を供給して駆動する。すると、ヒーター層3のヒーター温度も追従して図6で示すようなヒーター温度となる。
【0058】
駆動・処理部6は、ガス感知層5が目的ガス検知温度(CH濃度検出温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をHigh駆動する目的ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、パルス状に高温になる期間の後端部(図6中の白丸〇)で感知層5cの感知層抵抗を測定してCH濃度を検出する目的ガス濃度算出手段として機能する。なお、期間の後端部で測定するのは、温度が安定化してから計測するというものであり、以後の説明においても同様に期間の後端部で計測するときは安定化を図るためである。
駆動・処理部6は、一定時間の休止間隔となるOff駆動を行った後に、ガス感知層5が一酸化炭素ガス検知温度(CO濃度検出温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をLow駆動する一酸化炭素ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、また、前記の温度より低温になる期間の後端部(図6中の白丸〇)で感知層の抵抗値を測定してCO濃度を検出する一酸化炭素ガス濃度算出手段として機能する。
駆動・処理部6は目的ガス検知駆動手段および目的ガス濃度算出手段として連続n回(図6の場合は5回)機能する。そして、上記のような一酸化炭素ガス検知駆動手段および一酸化炭素ガス濃度算出手段として機能し、以下このようなサイクルを繰り返す。
【0059】
この場合、目的ガス検知駆動ではHigh+Off駆動するが、一酸化炭素ガス検知駆動を行うときはLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動と一酸化炭素ガス検知駆動とが連続して全体をHigh+Off+Low+Off駆動としている。上記した作用からCOに対する感知層抵抗の温度依存性・感度を向上させている。
【0060】
このようなHigh+Off+Low+Off駆動では、ヒーター温度がCH濃度検出(High状態)となってから次のCH濃度検出(High状態)となるまでの期間が例えば30sec間隔を空けることが望ましい。またCH濃度検出駆動(High状態)は、間隔50〜500ms、温度は400℃〜500℃が望ましい。さらに、CH濃度検出からCO濃度検出までの休止期間となるOff状態は5〜20secが望ましい。またCO濃度検出駆動(Low状態)は、間隔300〜1000ms、温度は50℃〜120℃が望ましい。このように一つの薄膜ガスセンサでCHの検出を例えば30sec毎、COの検出を例えば150sec毎に行う。
これらの値は使用する薄膜ガスセンサの特性に依存して決められることは言うまでもない。図1の構造の薄膜ガスセンサで特に好適な値である。
【0061】
以上に述べた検出方法では、目的ガス検出(CH検出)は前述のHigh+Off方式で駆動して検出した場合と同等になり、図5のセンサLow温度=450℃の場合で説明したようにCH濃度を確実に検出することができる。
また、一酸化炭素検出(CO検出)は前述のHigh+Off+Low+Off方式で駆動して検出した場合と同様になり、図4のセンサLow温度=90℃付近でCO濃度を確実に検出することができる。
【0062】
続いて、他の薄膜ガスセンサの駆動・処理部による他の駆動方式について説明する。図7は、ヒーター層の他の駆動方式を説明する駆動パターン図である。なお、この駆動パターンでは図6で示したように目的ガス検知駆動手段として連続してn回機能させ、その後に一酸化炭素ガス検知駆動手段として一回機能するものであるが、目的ガス検知駆動と一酸化炭素ガス検知駆動とが連続する駆動パターンのみ図示し、繰り返しパターンの図示を省略してある。
図2で示す駆動・処理部6は、ヒーター層3を駆動する場合に、図7のような駆動信号を供給して駆動する。すると、ヒーター層3のヒーター温度も追従して図7で示すようなヒーター温度となる。
【0063】
この駆動パターンでは、目的ガス検知駆動ではHigh+Medium+Off(常温)駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動と一酸化炭素ガス検知駆動とが連続して全体をHigh+Medium+Off+Low+Off駆動としている。
駆動・処理部6は、ガス感知層5が可燃性ガス検知温度(CH濃度検出温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をHigh駆動する可燃性ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、ヒーター温度が安定しているHigh状態となる期間の後端部(図7中の白丸〇)でCH濃度を算出する可燃性ガス濃度算出手段として機能する。
駆動・処理部6は、ガス感知層5が水素ガス検知温度(H検知温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をMedium駆動する水素ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、ヒーター温度が安定しているMedium状態となる期間の後端部(図7中の白丸〇)でHの存在を検出する水素ガス検出手段として機能する。
駆動・処理部6は、一定期間のOff駆動し、さらにガス感知層5が一酸化炭素ガス検知温度(CO濃度検出温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をLow駆動する一酸化炭素ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、ヒーター温度が安定しているLow状態となる期間の後端部(図7中の白丸〇)でCO濃度を算出する一酸化炭素ガス濃度算出手段として機能する。
【0064】
このようなHigh+Medium+Off(常温)+Low+Off方式の駆動を例えば30秒毎に繰り返す。ここでは、High=450℃/0.2s、Medium=250℃/0.5s、Off=常温/9.3s、Low=90℃/0.5sとしている。さらにCH・H検出を例えば30sec毎、CO検出を例えば150sec毎に行う。
なお、これらの温度と継続時間は薄膜ガスセンサの特性により、消費電力が最小で検出感度が最大になるように選定することは言うまでもない。
【0065】
以上に述べた検出方法では、可燃ガス検出(CH検出)は前周期のOff後の、High期間の最終時点でCH濃度の検出をしているので、前述のHigh+Off方式の駆動により検出した場合と同等になり、図5のセンサLow温度=450℃の場合で説明したようにCH濃度を確実に検出することができる。
【0066】
また、ヒーター温度がMediumの期間の最終時点でHの存在を検出しているので、前述のHigh+Low+Off方式の駆動により、図5のセンサLow温度=250℃としたときの特性が得られることは明らかである。
【0067】
また、不完全燃焼検出(CO検出)は十分にCO吸着時間を取った後のLow期間の最終時点でCO濃度を検出しているので、前述のHigh+Off+Low+Off方式の駆動により、図4のセンサLow温度=90℃付近でCO濃度を確実に検出することができる。
【0068】
続いて、他の薄膜ガスセンサの駆動・処理部による他の駆動方式について説明する。図8は、ヒーター層の他の駆動方式を説明する駆動パターン図である。なお、この駆動パターンでは図6で示したように目的ガス検知駆動手段として連続してn回機能させ、その後に一酸化炭素ガス検知駆動手段として一回機能するものであるが、目的ガス検知駆動と一酸化炭素ガス検知駆動とが連続する駆動パターンのみ図示し、繰り返しパターンの図示を省略してある。
図2で示す駆動・処理部6は、ヒーター層3を駆動する場合に、図8のような駆動信号を供給して駆動する。すると、ヒーター層3のヒーター温度も追従して図8で示すようなヒーター温度となる。
【0069】
この駆動パターンでは、High+Medium1+Medium2+Off(常温)駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動と一酸化炭素ガス検知駆動とが連続して全体をHigh+Medium1+Medium2+Off+Low+Off駆動としている。
駆動・処理部6は、ガス感知層5がクリーニング温度となるように所定期間にわたりヒーター層3をHigh駆動するクリーニング駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、ガス感知層5が可燃性ガス検知温度(CH濃度検出温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をMedium1駆動する可燃性ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、ヒーター温度が安定しているMedium1状態となる期間の後端部(図8中の白丸〇)でCH濃度を算出する可燃性ガス濃度算出手段として機能する。
駆動・処理部6は、ガス感知層5が水素ガス検知温度(H検知温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をMedium2駆動する水素ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、ヒーター温度が安定しているMedium2状態となる期間の後端部(図8中の白丸〇)でHの存在を検出する水素ガス検知手段として機能する。
駆動・処理部6は、一定期間のOff駆動し、さらにガス感知層5が一酸化炭素ガス検知温度(CO濃度検出温度)となるように所定期間にわたりヒーター層3をLow駆動する一酸化炭素ガス検知駆動手段として機能する。
駆動・処理部6は、ヒーター温度が安定しているLow状態となる期間の後端部(図8中の白丸〇)でCO濃度を検出する一酸化炭素ガス濃度算出手段として機能する。
【0070】
このようなHigh+Medium1+Medium2+Off(常温)+Low+Off方式の駆動を例えば30秒毎に繰り返す。ここでは、High=450℃/0.2s、Medium1=400℃/0.5s、Medium2=250℃/0.5s、Off=常温/8.8s、Low=90℃/0.5sとしている。さらにCHの検出を例えば30sec毎、COの検出を例えば150sec毎に行う。
なお、これらの温度と継続時間は薄膜ガスセンサの特性により、消費電力が最小で検出感度が最大になるように選定することは言うまでもない。
【0071】
以上に述べた検出方法では、ヒーター温度がHigh状態で第一ガス選択燃焼層5d、第二ガス選択燃焼層5e、感知層5cのクリーニングを十分に行う。
可燃ガス検出(CH検出)は前周期のOff後の、medium1期間の最終時点でCH濃度の検出をしているので、前述のHigh+Low+Off駆動方式で検出した場合と同等になり、図5のセンサLow温度=400℃の場合で説明したようにCH濃度を確実に検出することができる。
【0072】
また、ヒーター温度がMedium2の期間の最終時点でHの存在を検出しているので、前述のHigh+Low+Off駆動により、図5のセンサLow温度=250℃としたときの特性が得られることは明らかである。
【0073】
また、不完全燃焼検出(CO検出)は十分にCO吸着時間を取った後のLow期間の最終時点でCO濃度を検出しているので、前述のHigh+Off+Low+Off方式の駆動により、図4のセンサLow温度=90℃付近でCO濃度を確実に検出することができる。
【0074】
以上、図7,図8で説明した駆動パターンでは、HとCHとの感度差が大きくなく、これらの区別をすることは困難である。しかし、あらかじめ前述の方法でHigh(またはMedium1)の期間の最終時点でCH濃度を検出しているので、CHが存在しないかCH濃度が低い場合には、Medium1(またはMedium2)の期間の最終時点でHの濃度まで正確に検出することはできないがHが存在することを検知可能である。
【0075】
続いて、他の薄膜ガスセンサの駆動・処理部による他の駆動方式について説明する。
薄膜ガスセンサのCOに対する特性が、図3のように少ないながらも温度依存性があるため、温度依存性が完全に除去できないような場合、すなわち、CO濃度が一定でもセンサLow温度の変化に伴って感知層抵抗値が変化する場合には、ヒーター層3に同じ電力を与えても外部雰囲気温度の影響でヒーター温度が変化し、その結果CO濃度が一定でも感知層抵抗値が変化するためCO濃度を正確に測定することができない。これは図18に示す従来技術のセンサLow温度−感知層抵抗特性でも同様であり、従来より問題となっていた点である。そこで、外部雰囲気温度を検出し、この外部雰囲気温度により補正を行う。これは上記した一酸化炭素ガス検知駆動(CO濃度検出駆動)のみ改良する形態である。
【0076】
以下、図を参照しつつ説明する。図9は薄膜ガスセンサの回路ブロック図、図10は、ヒーター層の駆動方式を説明する駆動パターン図である。なお、図7で示したようにヒーター温度がパルス状に高温になるパターンを繰り返す部分を省略してある。
図9で示す本形態の回路ブロックでは、図2で示した回路ブロックに加え、外部雰囲気温度を検出する温度センサ7を備えるようにした。そして、COの濃度検出精度を高めるため、Low状態としてヒーター温度が複数(図10の例では3段)のステップ状に変化するように制御し、それぞれのステップで温度が一定になった時点でガス感知層の抵抗値を測定する。
【0077】
まず、駆動・処理部6は、外部雰囲気温度を検出して登録する登録手段として機能する。
続いて、駆動・処理部6は、ヒーター層3を駆動する場合に、図10のような駆動信号を供給して駆動する駆動手段として機能する。すると、ヒーター層3のヒーター温度も追従して図10で示すようなヒーター温度となる。
【0078】
詳しくは、駆動・処理部6は、第一ステップでヒーター層3に与える電力を小にし、続いて温度が一定になった時点であるステップの後端のタイミングでガス感知層5の感知層抵抗を測定してCO濃度検出(1)を行う手段として機能する。そして、第二ステップでヒーター層3に与える電力を中にし、続いて温度が一定になった時点であるステップの後端のタイミングでガス感知層5の感知層抵抗を測定してCO濃度検出(2)を行う手段として機能する。そして、第三ステップでヒーター層3に与える電力を大にし、続いて温度が一定になった時点であるステップの後端部でガス感知層5の感知層抵抗を測定してCO濃度検出(3)を行う手段として機能する。
【0079】
駆動・処理部6は、予め検出した外部雰囲気温度が通常時にはヒーター層3に与える電力が中である第二ステップの後端部でのCO濃度検出(2)の結果を用いるが、外部雰囲気温度が高いときにはヒーター層3に与える電力が小である第一ステップの後端部でのCO濃度検出(1)の結果を用い、外部雰囲気温度が低いときにはヒーター層3に与える電力が大である第三ステップの後端部でのCO検知濃度検出(3)の結果を用いる判断手段として機能する。
【0080】
この際、外部雰囲気温度が通常時(例えば25℃)にはヒーター層3に与える電力を中としたときのCO濃度検出(2)の結果が予め正確に設定されており、これと比較して外部雰囲気温度が高いときには電力を低くして上昇分差し引くようにし、逆に外部雰囲気温度が低いときには電力を高くして下降分上乗せするようにする。これにより、薄膜ガスセンサのCO濃度が一定でもセンサLow温度の変化に伴って感知層抵抗値が変化する現象を補正することができる。
【0081】
以上のような薄膜ガスセンサの運転方法により、外部雰囲気温度の影響を受けやすい低温のCO検出時に、ヒーター温度がほぼ一定の時点での感知層抵抗を検出することができる。ヒーター温度の制御をより精密に行うためには、低温になる期間内でのヒーター温度のステップ数を増やせばよい。
この場合、外部雰囲気温度と検出温度との差を取り、差に応じたステップでのCO検出値を採用すれば良い。
【0082】
続いて、他の薄膜ガスセンサの駆動・処理部による他の駆動方式について説明する。先の形態と同様、薄膜ガスセンサのCOに対して温度依存性が完全に除去できないような場合、すなわち、CO濃度が一定でもセンサLow温度の変化に伴って感知層抵抗が変化する場合、外部雰囲気温度を検出し、この外部雰囲気温度により補正を行う。これは、上記した一酸化炭素ガス検知駆動(CO濃度検出駆動)のみ改良する形態である。
COの濃度検出精度を高めるため、Low状態としてヒーター温度が直線ランプ状に上昇するように制御し、所定期間が経過するごとにガス感知層の抵抗値を測定する。
【0083】
以下、図を参照しつつ説明する。図11はヒーター層の駆動方式を説明する駆動パターン図である。本形態でも図9の薄膜ガスセンサの回路ブロックを用いる。また、図6で示したようにヒーター温度がパルス状に高温になるパターンを繰り返す部分を省略してある。
【0084】
まず、駆動・処理部6は、外部雰囲気温度を検出して登録する登録手段として機能する。
続いて、駆動・処理部6は、ヒーター層3を駆動する場合に、図11のような駆動信号を供給して駆動する駆動手段として機能する。すると、ヒーター層3のヒーター温度も追従して図11で示すようなヒーター温度となる。
詳しくは、駆動・処理部6は、ヒーター層3のヒーター温度がランプ状に変化するように制御し、所定期間経過時にガス感知層5の感知層抵抗を測定してCO濃度検出(1)を行う手段として機能する。そして、ヒーター層3に与える電力を加増し続け、所定期間経過時にガス感知層5の感知層抵抗を測定してCO濃度検出(2)を行う手段として機能する。そして、ヒーター層3に与える電力を加増し続け、所定期間経過時にガス感知層5の感知層抵抗を測定してCO濃度検出(3)を行う手段として機能する。
【0085】
駆動・処理部6は、予め検出した外部雰囲気温度が通常時にはヒーター層3に与える電力が中であるCO濃度検出(2)の結果を用いるが、外部雰囲気温度が高いときにはヒーター層3に与える電力が小であるCO濃度検出(1)の結果を用い、外部雰囲気温度が低いときにはヒーター層3に与える電力が大であるCO濃度検出(3)の結果を用いる判断手段として機能する。
【0086】
この際、外部雰囲気温度が通常時(例えば25℃)にはヒーター層3に与える電力を中としたときのCO濃度(2)の結果が予め正確に設定されており、これと比較して外部雰囲気温度が高いときには電力を低くして上昇分差し引くようにし、逆に外部雰囲気が低いときには電力を高くして下降分上乗せするようにする。これにより、薄膜ガスセンサのCO濃度が一定でもセンサLow温度の変化に伴って感知層抵抗が変化する現象を補正することができる。
【0087】
以上本発明の薄膜ガスセンサについて説明した。
本発明によれば、図1に示した構造の薄膜ガスセンサのガス感知層5の温度特性を十分に生かしたヒータ駆動パターンでヒーター層3を駆動し、検出ガスとガス感知層5のSnOとの反応が十分に安定してからSnOの抵抗値を測定するようにしたので、1つの薄膜ガスセンサでCOとCHの濃度を検出することができ、さらにHが存在する場合でもそれを検知することができるようになった。
【0088】
また、図6で示したようなヒーター層3の駆動パターンで電力を制御することにより、所定の時間間隔でヒーター温度がパルス状に高温になるパターンを繰り返し、該パルスのn回ごとに、一定時間の休止間隔をおいて、ヒータが前記の温度より低温になる期間を挿入しており、電力の消費を低くすることができる。
さらに、ヒーター層3が、パルス状に高温になる期間の後端部で感知層の抵抗値を測定してCH4濃度を検出し、前記の温度より低温になる期間での後端部で感知層の抵抗値を測定してCO濃度を検出する。このため、1つのセンサで、CHとCOの濃度を同時に測定することが可能になる。
【0089】
また、図7で示すように、ヒーター層3がHigh+Medium+Off(常温)+Low+Off駆動したり、または、図8で示すように、ヒーター層3が、High+Medium1+Medium2+Off(常温)+Low+Off駆動することで、1つの薄膜ガスセンサで、CH濃度、CO濃度の算出やHの有無の検知をすることが可能になる。
【0090】
また、図10のようにヒーター温度が複数のステップ状に変化するように制御したり、または、図11のようにヒーター温度がランプ状に変化するように制御して、温度を異ならせてガス感知層の抵抗値を測定する。このため、温度センサ7を用いて外部雰囲気の温度を検出して、その結果からCO検出結果を選択することにより、薄膜ガスセンサのCO検出精度を向上できる。
【符号の説明】
【0091】
1:Si基板
2:絶縁支持層
2a:熱酸化SiO
2b:CVD−Si
2c:CVD−SiO
3:ヒーター層
4:電気絶縁層
5:ガス感知層
5a:接合層
5b:感知層電極
5c:感知層(Sb−doped SnO層)
5d:第一ガス選択燃焼層(Sb−doped SnO層)
5e:第二ガス選択燃焼層(Pd担持Al焼結材)
6:駆動・処理部
7:温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するSi基板と、
この貫通孔の開口部に張られるダイアフラム様の熱絶縁支持層と、
熱絶縁支持層上に設けられるヒーター層と、
熱絶縁支持層およびヒーター層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
電気絶縁層上に設けられる一対の感知層電極と、一対の感知層電極を渡されるように設けられる感知層と、感知層の表面に設けられ、第一の触媒を担持した焼結材の第一ガス選択燃焼層と、感知層と第一ガス選択燃焼層との間に設けられ、第二の触媒を含む薄膜半導体の第二ガス選択燃焼層と、を有するガス感知層と、
ヒーター層に接続される駆動部と、
ガス感知層に接続される処理部と、
を備え、
駆動部は、
ガス感知層が目的ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する目的ガス検知駆動手段と、
ガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する一酸化炭素ガス検知駆動手段として機能し、
かつ、目的ガス検知駆動手段としてn回連続して機能した後に、一酸化炭素ガス検知駆動手段として機能するものであり、
処理部は、
目的ガス検知温度駆動により温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して目的ガス濃度を算出する目的ガス濃度算出手段と、
一酸化炭素ガス検知温度駆動により温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して一酸化炭素ガス濃度を算出する一酸化炭素ガス濃度算出手段として機能することを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
目的ガス検知駆動手段ではHigh+Off駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動手段ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動手段と一酸化炭素ガス検知駆動手段とが連続して全体をHigh+Off+Low+Off駆動とし、
High駆動時にガス感知層が可燃性ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Low駆動時にガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
目的ガス検知駆動手段ではHigh+Medium+Off(常温)駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動手段ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動手段と一酸化炭素ガス検知駆動手段とが連続して全体をHigh+Medium+Off+Low+Off駆動とし、
High駆動時にガス感知層が可燃性ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Medium駆動時にガス感知層が水素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Low駆動時にガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
目的ガス検知駆動手段ではHigh+Medium1+Medium2+Off(常温)駆動し、続いて一酸化炭素ガス検知駆動手段ではLow+Off駆動することで、目的ガス検知駆動手段と一酸化炭素ガス検知駆動手段とが連続して全体をHigh+Medium1+Medium2+Off+Low+Off駆動とし、
High駆動時にガス感知層がクリーニング温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Medium1駆動時にガス感知層が可燃性ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Medium2駆動時にガス感知層が水素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動し、Low駆動時にガス感知層が一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
一酸化炭素ガス検知駆動手段は、多段ステップ状の一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であり、
一酸化炭素ガス濃度算出手段は、一酸化炭素ガス検知温度駆動により温度が安定してからガス感知層の感知層抵抗の値を算出して一酸化炭素ガス濃度を算出する手段であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
一酸化炭素ガス検知駆動手段は、ランプ状の一酸化炭素ガス検知温度となるように所定期間にわたりヒーター層を駆動する手段であり、
一酸化炭素ガス濃度算出手段は、一酸化炭素ガス検知温度駆動により所定期間毎にガス感知層の感知層抵抗の値を算出して一酸化炭素ガス濃度を算出する手段であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記感知層は、Sb(アンチモン)を添加したSnOによる層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記第一ガス選択燃焼層は、Pd(パラジウム)を触媒として担持したAl焼結材による層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記第二ガス選択燃焼層は、Pt(白金)を添加したSnOによる層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−27752(P2011−27752A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249337(P2010−249337)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2005−202546(P2005−202546)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】