説明

薬剤分包装置の制御方法

【課題】薬剤の飛散を抑制してコンタミネーションを確実に抑制することのできる薬剤分包装置の制御方法を提供する。
【解決手段】薬剤供給部から薬剤を受容れるためのホッパーと、ホッパーの開口部から薬剤が供給された分包紙を加熱して分包するためのシール装置と、シール装置から伝わる熱によって加熱されるホッパーを冷却するための冷却用ファンとを備えた薬剤分包装置の制御方法であって、ホッパーから薬剤を分包紙に供給してシール装置で分包紙をシールするようにした分包動作中には冷却用ファンを回転させるファンモータの駆動を停止し、分包動作以外の所定の動作中には、ファンモータを駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤分包装置の制御方法に関し、より詳しくは、薬剤分包装置において、そのホッパーを冷却するための冷却部(冷却用ファン)の駆動のタイミングの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薬剤分包装置では、薬剤供給部からホッパーに投入された薬剤を、ホッパーの開口部から分包紙に供給し、シール装置によって分包紙を加熱して一包ずつの分包とするように動作する。
シール装置はヒータの熱によって分包紙をシールするものであり、このシール装置は、分包動作の必要上からホッパーの近傍に配置されている。したがって、シール装置からの熱がホッパーに伝わり易い。そうすると、例えば融点の低い薬剤(散薬)を分包する場合では、その薬剤がホッパーに付着し易くなる。そこで、従来からホッパーを冷却すべくホッパーの近傍に冷却用ファンを配置して、この冷却用ファンで空気の流れを発生させてホッパー温度の上昇を抑制している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−315704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の薬剤分包装置では、冷却用ファンを常時的に駆動して、ホッパーを冷却している。しかしながら、分包動作中にホッパーの冷却のために空気の流れを発生させてしまうと、ホッパーから分包紙に薬剤が供給される途中や、ホッパーからの薬剤を受けた分包紙がシールされる前に、その薬剤が飛散してコンタミネーションの要因となってしまう懸念があった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、薬剤の飛散を抑制してコンタミネーションを確実に抑制することのできる薬剤分包装置の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬剤供給部から薬剤を受容れるためのホッパーと、該ホッパーの開口部から薬剤が供給された分包紙を加熱して分包するためのシール装置と、該シール装置から伝わる熱によって加熱されるホッパーを冷却するための冷却用ファンとを備えた薬剤分包装置の制御方法であって、前記ホッパーから薬剤を分包紙に供給してシール装置で分包紙をシールするようにした分包動作中には前記冷却用ファンを回転させるファンモータの駆動を停止し、分包動作以外の所定の動作中には、該ファンモータを駆動させることを特徴としている。
【0007】
上記方法において、シール装置によって分包紙を加熱することで分包紙をヒートシールして、分包紙を一包ずつに分包することができる。
分包動作中には、薬剤供給部からホッパーに受容れられている薬剤を分包紙に供給するよう動作し、シール装置によって分包紙を一包ずつに順次且つ間欠的に分包するが、このとき冷却用ファンのファンモータはその駆動を停止しているから冷却用ファンが回転せず冷却用ファンによる空気の流れが発生することがなく、したがって薬剤がホッパーから開放されて分包紙に至って分包される薬剤が飛散し易い環境までの間で、薬剤の不要な飛散を効果的に抑制することができ、分包動作以外の所定の動作中には、ファンモータを駆動させて冷却用ファンを回転させるから、冷却用ファンによる空気の流れによってシール装置からの熱がホッパーに伝わりにくくなって、ホッパーの加熱を防止(ホッパーを冷却)することができ、ホッパーに薬剤が融着することを効果的に抑制することができ、したがってコンタミネーションを効果的に抑制することができる。
なお、分包動作中では、分包紙をホッパーのある上流側からシール装置のある下流側へ間欠的に移動させつつ、ホッパーから分包紙に対して一包分の薬剤を順次且つ間欠的に供給し、シール装置により分包紙を一包ずつ順次シールするという動作が、連続して行われる。
【0008】
本発明の薬剤分包装置の制御方法では、分包動作が終了した後には清掃装置を駆動してホッパーの清掃動作を実行するようにし、分包動作以外の所定の動作のうち少なくとも前記清掃動作中には、ファンモータを駆動させることを特徴としている。
【0009】
本発明の薬剤分包装置の制御方法では、分包動作および清掃動作が終了して次の分包動作が開始するまで薬剤分包装置を待機状態とし、該待機状態中にファンモータを駆動させることを特徴としている。
この方法によれば、ファンモータを清掃動作中の駆動に連続して駆動させている。
【0010】
本発明の薬剤分包装置の制御方法では、分包動作以外の所定の動作である薬剤供給部からホッパーに薬剤を供給している供給動作中には、ファンモータを駆動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薬剤分包装置の制御方法によれば、薬剤が飛散し易い分包動作中には冷却用ファンは回転していないから、薬剤の飛散を抑制することができ、しかも分包動作中以外の所定の動作中にはファンモータを駆動することで、シール装置からの熱がホッパーに伝わるのを抑制するから、コンタミネーションを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る薬剤分包装置の制御方法を説明する。図1は本発明の実施形態を示す薬剤分包装置の制御フローチャート、図2は制御ブロック図、図3は薬剤分包装置の一部を示す上方からの概略斜視図、図4は冷却用ファンの配置を示す斜視図、図5および図6は冷却用ファンの配置を示す一部破断図である。
【0013】
先ず、図3ないし図6に基づいて、本発明の実施形態に係る薬剤分包装置1の概略構成を説明する。
薬剤分包装置1は、縦軸2回りに回転自在な回転板3と、回転板3の環状凹溝4に薬剤5を供給するための薬剤供給部としてのフィーダ6と、フィーダ6から環状凹溝4に供給された薬剤5を一包分ずつ切出すべく横軸7回りに回転自在な切出装置8と、切出装置8で切出された薬剤5を受容れるよう配置構成されたホッパー10と、ホッパー10の下端開口部11から落下するようにして供給される薬剤5を受容れる分包紙12を、熱融着により一包ずつに分包するシール装置13と、ホッパー10の清掃を行う清掃装置14と、ホッパー10の過熱を防止するための冷却用ファン15とを備えている。
【0014】
ホッパー10は、その上部を開放しており、回転板3の径方向外方位置で且つ下方に配置されることで、切出装置8から切出される薬剤5を受容れることが可能とされている。
ホッパー10とシール装置13との位置関係としては、ホッパー10が分包紙12の流れ方向上流側にあり、シール装置13がホッパー10の下端開口部11に対して分包紙12の流れ方向下流側に配置されている。
冷却用ファン15は、ホッパー10下端開口部11に対してその前方に配置されている。換言すれば、ホッパー10とシール装置13と冷却用ファン15との位置関係を、正面視(背面視でも同様)に投影した場合に、冷却用ファン15はホッパー10とシール装置13との間にある配置となっている。
このような冷却用ファン15の配置により、冷却用ファン15からの気流の一部がホッパー10の側面に直接的に当たり、また気流の一部はシール装置13側へ流れるようにして、ホッパー10へシール装置13からの熱が伝わりにくくしている。
【0015】
また、電源スイッチ16、分包動作開始スイッチ17からの信号に応じて、回転板3の回転駆動部18、フィーダ6の振動駆動部20、切出装置8の切出駆動部21、ホッパー10の下端開口部11を開閉するバルブ22の開閉駆動部23、シール装置13のヒータ部24、清掃装置14の清掃駆動部25、冷却用ファン15を回転させる冷却駆動部27(ファンモータ)の駆動を制御する制御装置28が設けられている。
すなわち、制御装置28の入力側に電源スイッチ16および分包動作開始スイッチ17が接続され、制御装置28の出力側に回転駆動部18、振動駆動部20、切出駆動部21、開閉駆動部23、ヒータ部24、清掃駆動部25、冷却駆動部27が接続されている。
【0016】
次に、上記構成の薬剤分包装置1において、その駆動制御方法を、図1および図2に基づいて説明する。
電源スイッチ16がオン(ON)されると、制御装置28は冷却駆動部27に駆動信号を出力するとともに、ヒータ部24に通電を開始する〔ステップ1〕。これによって、シール装置13が加熱されるとともに、冷却用ファン15が回転してこれによって発生する気流でホッパー10が加熱されるのを防止する。
続いて作業者により分包動作開始スイッチ17がオンされると、制御装置28は振動駆動部20および回転駆動部18に駆動信号を出力する〔ステップ2〕。これによって、フィーダ6が振動し回転板3が縦軸2回りに回転して、その環状凹溝4の周方向全域に亘って薬剤5が振撒かれる振撒き動作が開始される。
振撒き動作が終了して振動駆動部20と回転駆動部18が停止した信号が制御装置28に入力されると、続いて制御装置28は冷却駆動部27に駆動停止信号を出力する〔ステップ3〕。すなわち電源スイッチ16がオンされた時点から振撒き動作が終了するまで、冷却用ファン15は回転していて、シール装置13からホッパー10に熱が伝わるのを防止している。
続いて制御装置28は、回転駆動部18、切出駆動部21および開閉駆動部23にそれぞれオン,オフ信号を繰返し出力する〔ステップ4〕。すなわち、回転板3が縦軸2回りに間欠的に回転し、切出装置8が横軸7回りに間欠的に回転し、バルブ22がホッパー10の下端開口部11を開閉する動作を繰返し、分包紙12を上流側から下流側へ送りつつシール装置13によって一包ずつヒートシールにより分包される。
このような一連の動作を繰返す分包動作が終了した信号が制御装置28に入力されると、制御装置28は清掃駆動部25に駆動信号を出力する〔ステップ5〕。すなわち、分包動作中では冷却用ファン15はその回転を停止していて冷却用ファン15による気流の発生がないから、薬剤5が飛散し易い状態にある分包動作中においてその飛散を効果的に抑制することができる。
清掃駆動部25の駆動によるホッパー10の清掃が終了した信号が制御装置28に出力されると、制御装置28は再び冷却駆動部27に駆動信号を出力する〔ステップ6〕。これにより冷却用ファン15の回転による気流が発生して、分包動作中にシール装置13の熱がホッパー10に伝わって加熱されていたホッパー10が冷却される。
次に、電源スイッチ16がオフ(OFF)されるまで制御装置28は冷却駆動部27に駆動信号を出力し続けるか、電源スイッチ16がオフされることなく次の分包動作のために分包動作開始スイッチ17がオンされてその分包動作のための振撒き動作が完了するまで、冷却駆動部27に駆動信号を出力し続ける。つまり、各駆動部の駆動を行っていない待機モード中でも、制御装置28は冷却駆動部27への駆動信号の出力を継続する。
一般的に、この種の薬剤分包装置1では、各駆動部の駆動を行っていない待機モード中であっても、制御装置28はシール装置13のヒータ部24に通電させるよう制御しているから、制御装置28は冷却駆動部27への駆動信号の出力を継続し冷却用ファン15を回転させることで気流を発生させてホッパー10の温度上昇を抑制するためである。
【0017】
このように、本発明の実施形態によれば、分包動作中には冷却用ファン15の回転を停止させているから、薬剤5が飛散し易い環境下にある分包動作中に冷却用ファン15の回転による気流の発生がなく、したがって薬剤5の飛散を最小限にとどめることができ、分包動作中以外の動作中には冷却用ファン15の回転によってホッパー10に向かう気流を発生させているから、シール装置13のヒータ部24に通電をしていたとしても、ホッパー10の温度上昇(過熱)を防止することができ、比較的融点の低い薬剤5を扱う場合であっても、コンタミネーションを防止することができる。
分包動作中の薬剤5の不要な飛散がないと、コンタミネーションを防止することができるばかりか、分包紙12をシール装置13でヒートシール場合に、分包紙12のシール面への薬剤5の噛込みを防止できるから、分包紙12のヒートシールを確実に、安定した形態で行うことができ、シール面の剥がれを確実に防止することができる。
【0018】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、冷却駆動部27を駆動するタイミングとして、図1の仮想線で示すように、分包動作が終了して清掃駆動部25に駆動信号を出力する前に冷却駆動部27を駆動するよう制御することも可能である。この場合では、清掃動作中にも冷却用ファン15の回転による気流が発生してホッパー10の温度上昇を抑制することになる。
【0019】
上記実施形態では、薬剤5として散薬を扱う場合の例を示した。しかしながら、この薬剤分包装置1では、薬剤分包装置1の上部に配置した不図示の錠剤タブレットから、薬剤として錠剤をホッパー10に投入して、これを一包毎に分包するよう動作させることも可能であり、このような錠剤のみの場合ではコンタミネーションの懸念はないから、冷却駆動部27の駆動制御について、これを常時的に駆動停止していてよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す薬剤分包装置の制御フローチャート
【図2】同じく制御ブロック図
【図3】同じく薬剤分包装置の一部を示す上方からの概略斜視図
【図4】同じく冷却用ファンの配置を示す斜視図
【図5】同じく冷却用ファンの配置を示す一部破断図
【図6】同じく冷却用ファンの配置を示す一部破断図
【符号の説明】
【0021】
1…薬剤分包装置、2…縦軸、3…回転板、4…環状凹溝、5…薬剤、6…フィーダ、7…横軸、8…切出装置、10…ホッパー、11…下端開口部、12…分包紙、13…シール装置、14…清掃装置、15…冷却用ファン、16…電源スイッチ、17…分包動作開始スイッチ、18…回転駆動部、20…振動駆動部、21…切出駆動部、22…バルブ、23…開閉駆動部、24…ヒータ部、25…清掃駆動部、27…冷却駆動部、28…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤供給部から薬剤を受容れるためのホッパーと、該ホッパーの開口部から薬剤が供給された分包紙を加熱して分包するためのシール装置と、該シール装置から伝わる熱によって加熱されるホッパーを冷却するための冷却用ファンとを備えた薬剤分包装置の制御方法であって、
前記ホッパーから薬剤を分包紙に供給してシール装置で分包紙をシールするようにした分包動作中には前記冷却用ファンを回転させるファンモータの駆動を停止し、分包動作以外の所定の動作中には、該ファンモータを駆動させることを特徴とする薬剤分包装置の制御方法。
【請求項2】
分包動作が終了した後には清掃装置を駆動してホッパーの清掃動作を実行するようにし、分包動作以外の所定の動作のうち少なくとも前記清掃動作中には、ファンモータを駆動させることを特徴とする請求項1記載の薬剤分包装置の制御方法。
【請求項3】
分包動作および清掃動作が終了して次の分包動作が開始するまで薬剤分包装置を待機状態とし、該待機状態中にファンモータを駆動させることを特徴とする請求項2記載の薬剤分包装置の制御方法。
【請求項4】
分包動作以外の所定の動作である薬剤供給部からホッパーに薬剤を供給している供給動作中には、ファンモータを駆動させることを特徴とする請求項1ないし請求項3記の何れかに載の薬剤分包装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−67463(P2009−67463A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240377(P2007−240377)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】