説明

薬剤原料の移送装置

【課題】移動容器と薬剤製造用機器とを連結するファンネルの清掃時において薬剤原料の飛散を最小限に抑える。
【解決手段】移動容器24の下端開口部とファンネル20の上端開口部とを連結し、移動容器24に収容した薬剤原料102をファンネル20に自重落下させ、薬剤原料102をファンネル20の下方に接続した薬剤製造用機器36に移送するようにした薬剤原料の移送装置において、移動容器24をファンネル20から離反させた状態でファンネル20の内面に液体を噴霧可能な液体噴霧手段26を設けたことを特徴とする。液体噴霧手段26は移動容器24と切り替ってファンネル20の上方に移動・接近し、ファンネルの上端開口部に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤原料の移送装置に係り、特に医薬品製造工場において薬剤製造用機器に薬剤原料を供給する場合に好適な薬剤原料の移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造工場では、液状、粉粒状の薬剤原料を扱っている。これらの薬剤原料の中には薬理活性が非常に高く、これを吸込んだ健常者の人体に重大な悪影響を及ぼすものがある。このため、医薬品製造工場では、薬剤原料が大気中に放出されることを防止するために、各工程をクリーンエリアと呼ばれる密閉清浄空間内で行うことが一般に行われている。しかしながら、クリーンエリア設備には多大なコストが必要なため、製造工程のすべてを共通の巨大なクリーンエリアに収容することは困難である。そこで、各工程を個別の小さなクリーンエリアで行うとともに、各工程を結ぶ輸送ルートをクリーンエリア外の外部エリアに設け、この輸送ルートに薬剤原料を収容した移動容器を移動させることによって、各工程での薬剤原料の受け渡しを行う方法が採用されつつある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5はこの種の移送装置の概略断面図であり、(1)は移送前の状態、(2)は移送時の状態を示している。フロア1を境として階下側はクリーンエリア2、階上側は外部エリア3とされている。クリーンエリア2には薬剤製造用機器4は固定配置され、外部エリア3には移動容器5が移動自在に配置されている。薬剤製造用機器4の薬剤原料受入口6の直上位置には、フロア1を貫通してファンネル7が配置されている。ファンネル7の上端開口部にはスライド弁8が設けられており、薬剤原料の移送時以外はファンネル7の上端開口部はスライド弁8によって閉止されている。移動容器5下部の薬剤原料排出口には開閉弁9が取り付けられ、下端開口部にはスライド弁10が設けられている。薬剤原料の移送時以外は開閉弁9やスライド弁10は閉止されている。
【0004】
上記構成の移送装置において、移動容器5に収容した薬剤原料11を薬剤製造用機器4に移送する場合には、移動容器5を図示しない移動機構によって外部エリア3に移動させ、(1)に示したようにファンネル7の直上位置に接近させる。次いで(1)に示した状態から、移動容器5を少し下降させることによってスライド弁8とスライド弁10とを当接させる。次いで(2)に示したようにスライド弁8とスライド弁10とを開放することによって移動容器5とファンネル7とを連通させる。次いで開閉弁9を開放すると、移動容器5内の薬剤原料11が自重落下により、ファンネル7と薬剤原料受入口6を介して薬剤製造用機器4に移送される。移送が終了すると、上記とは逆の順序によって移動容器5をファンネル7から引き離し、一連の移送操作が完了する。
【0005】
通常、薬剤製造用機器4は多品種の薬剤原料を取り扱う。このため、品種を切り替える場合には、コンタミ防止の観点から薬剤製造用機器4の内部に残留・付着した切り替え前の薬剤原料を取り除き、清掃する必要がある。この際、ファンネル7の内面にも切り替え前の薬剤原料が付着しているため、ファンネル7の内面についても清掃する必要がある。
【特許文献1】特開平6−321360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ファンネル7を清掃するために、ファンネル7の上端開口部に設けたスライド弁8を開放すると、ファンネル7の内側が外部エリア3に曝露される。その結果、ファンネル7の内面に付着している薬剤原料の一部が外部エリア3に飛散することによって外部エリア3が薬剤原料によって汚染されると共に、清掃のためにファンネル7に近づいた作業員などが薬剤原料を吸い込む。薬剤原料が粉体であり、かつ薬理活性が強いほどこのような薬剤原料の飛散による健康被害の危険性が増大する。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改善し、ファンネルの清掃時において薬剤原料の飛散を最小限に抑えることができる薬剤原料の移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る薬剤原料の移送装置は、移動容器をファンネルの上方に移動・接近させ、前記移動容器の下端開口部と前記ファンネルの上端開口部とを連結し、前記移動容器に収容した薬剤原料をファンネルに自重落下させ、該薬剤原料を前記ファンネルの下方に接続した薬剤製造用機器に移送するようにした薬剤原料の移送装置において、前記移動容器を前記ファンネルから離反させた状態で前記ファンネルの内面に液体を噴霧可能な液体噴霧手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
上記構成の薬剤原料の移送装置は、前記液体噴霧手段が前記移動容器と切り替って前記ファンネルの上方に移動・接近し、前記ファンネルの上端開口部に連結可能とされたことが望ましい。
【0010】
また、前記移動容器の下端開口部、前記ファンネルの上端開口部及び前記液体噴霧手段にはそれぞれスライド弁が配設されており、前記移動容器の下端開口部又は前記液体噴霧手段を前記ファンネルの上端開口部に連結するには、相互のスライド弁が重なった状態で一体的に開閉することが望ましい。また、前記液体噴霧手段は、噴霧用の液体を保持したタンクと、前記タンク内の気圧を上げる昇圧機構と、前記タンク内の液体を前記ファンネルの内面に噴霧する液体噴霧管と、前記液体噴霧管に配設された自動開閉弁とを具備したことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る薬剤原料の移送装置によれば、薬剤製造用機器での品種を切り替える際に、コンタミ防止のためファンネルの内面を清掃する場合でも、ファンネルに液体噴霧手段を連結し、ファンネルの内面に付着した薬剤原料を液体噴霧手段によって洗い流すか、又は湿潤することができる。このため、ファンネルの清掃時において薬剤原料の飛散を最小限に抑えることができる。のみならず、噴霧した液体をそのまま薬剤製造用機器側に落とし込んで、薬剤製造用機器の清掃に利用することもできる。したがって、薬剤原料による環境汚染を防止すると共に、清掃のためにファンネルに近づいた作業員などが薬剤原料を吸い込んで健康被害を受ける危険性を低くすることができる。
【0012】
また、液体噴霧手段は、移動容器と切り替ってファンネルの上方に移動・接近し、ファンネルの上端開口部に連結可能とされている。このため、医薬品製造工場にファンネルを有した薬剤製造用機器が多数、配置されている場合には、これらの薬剤製造用機器に対して移動容器と液体噴霧手段とを切り替えつつ、1基の液体噴霧手段を共用して効率の良い運用を図ることができる。
【0013】
さらに、移動容器の下端開口部、ファンネルの上端開口部及び液体噴霧手段にはそれぞれスライド弁が配設されており、移動容器の下端開口部又は液体噴霧手段をファンネルの上端開口部に連結する時には、相互のスライド弁が重なった状態で一体的に開閉するようになっている。このため、移動容器の下端開口部に設けたスライド弁や液体噴霧手段に設けたスライド弁には個別の開閉駆動源が不要であり、構成の簡便化を図ることができる。また、液体噴霧手段は、噴霧用の液体を保持したタンクと、タンク内の気圧を上げる昇圧機構と、タンク内の液体をファンネルの内面に噴霧する液体噴霧管と、液体噴霧管に配設された自動開閉弁とを具備している。このため、ポンプなどの液体昇圧手段を用いない簡便な構成で液体をファンネルの内面に噴霧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る薬剤原料の移送装置の実施形態を示す断面図である。本実施形態の移送装置は、大別してファンネル20を具備した連結部22と移動容器24と液体噴霧手段26とによって構成されている。連結部22と移動容器24の構造やその連結機構は特許文献1に開示された移送装置と同様であり、連結部22は、階下のクリーンエリア28と階上の外部エリア30とを仕切るフロア32に配置される。
【0015】
フロア32の貫通部34にはファンネル20が縦状に配置されファンネル20の上端が外部エリア30側に、下端がクリーンエリア28側に臨んでいる。ファンネル20の下端には薬剤製造用機器36が接続している。ファンネル20の上端開口部には鍔状のフランジ38が形成され、このフランジ38の下面とフロア32との間には膨脹ガスケット40が介装されている。膨脹ガスケット40には図示しないエア源が接続しており、内部の空気圧を上げると膨脹ガスケット40は膨脹して、ファンネル20が少量、引き上がる。逆に、内部の空気圧を下げると膨脹ガスケット40は収縮して、ファンネル20が少量、引き下がる。ファンネル20の上端開口部を塞ぐようにしてスライド弁42が設けられている。
【0016】
外部エリア30側にはファンネル20の上部を覆うようにして包囲体44が配置されている。包囲体44の上面には挿入口46と、この挿入口46を開閉するシャッタ48が設けられている。シャッタ48は包囲体44の外部に装備したシリンダ50によって開閉される。前記したスライド弁42は包囲体44の内部に装備したシリンダ52によって開閉される。包囲体44には高性能フィルタを通過させたクリーンな空気を取り込み可能な空気取込孔54が複数個、形成されている。また、包囲体44の一端には空気吸引口56が設けられている。空気吸引口56は吸引ファン58に接続している。したがって、吸引ファン58を駆動すると空気吸引口56を介して包囲体44内の空気が排気され、排気量に見合った量の空気が複数の空気取込孔54から包囲体44内に流入し、包囲体44内部の換気が行われる。
【0017】
移動容器24は架台60にホッパー状の容器62を搭載したものであり、図示しない移動機構によって外部エリア30内を移動し、ファンネル20の直上位置に接近することができる。容器62の下部にはバタフライ弁66を備えた排出口64が設けられ、バタフライ弁66を開放することにより、容器62内に収容した薬剤原料を排出口64から自重落下によって排出することができる。排出口64の下端開口部にはフランジ68が設けられ、このフランジ68に対して摺動自在にスライド弁70が装着されている。なお、前記したファンネル20側のスライド弁42は適所に複数の凸部72を有しており、この凸部72と芯が一致するようにスライド弁70には複数の凹部74が形成されている。また、排出口64の上部外周には鍔76が設けられている。
【0018】
液体噴霧手段26は架台78にタンク80とボンベ84とを搭載したものであり、移動容器24と同様に図示しない移動機構によって外部エリア30内を移動し、ファンネル20の直上位置に接近することができる。タンク80は噴霧用の液体82を張り込んだ密閉タンクであり、タンク80内はボンベ84から供給される高圧気体によって、0.5MPa程度に昇圧されている。タンク80の底部には液体噴霧管86が接続している。液体噴霧管86はその途中に自動開閉弁88を備え、下端に噴霧ノズル90を有する。したがって、自動開閉弁88を開放すると、タンク80内で高圧に保持された噴霧用の液体82が噴霧ノズル90から噴霧される。タンク80を支持している架台78からは液体噴霧管86を囲むようにして短管92が垂下している。この短管92の下端に形成されたフランジ94に摺動自在なスライド弁96が装着されている。スライド弁96にも前記したスライド弁70と同様に、ファンネル20側のスライド弁42に形成された凸部72と芯が一致するように、複数の凹部98が形成されている。
【0019】
図2は上記移送容器24による薬剤原料の移送状況を示した断面図である。移送にあたっては、図1に示した状態から、まず移動容器24をファンネル20の直上位置まで移動・接近させる.次に包囲体44のシャッタ48を開き、包囲体44の挿入口46を開放する。次に移動容器24を下降させ、移動容器24の脚100がフロア32の上面に着地するまで、容器62の排出口64を挿入口46から包囲体44内に挿入する。図2(1)は包囲体44への排出口64の挿入が完了した状態を示している。この状態では移動容器24の全荷重は脚100を介してフロア32に支持するとともに、排出口64の鍔76が包囲体44の挿入口46を塞ぐ。この時点で包囲体44の空気取込孔54からクリーンな空気を包囲体44内に流入させる。これと同時に、吸引ファン58を駆動して包囲体44内の空気を排気し、包囲体44内をクリーンな状態にする。また、排出口64側のスライド弁70とファンネル20側のスライド弁42とが重なる。この際にスライド弁42上面の凸部72がスライド弁70の凹部74と嵌合し、両者が一体化する。
【0020】
したがって、図2(1)に示した状態から、包囲体44内のシリンダ52を作動させ、スライド弁42を図示の位置から右側に引くと、スライド弁42とスライド弁70が重なった状態で一体的に開く。これらのスライド弁42、70が抜け出ると、排出口64側のフランジ68下面とファンネル20側のフランジ38上面との間には隙間が生じる。したがって、膨脹ガスケット40を膨脹させてファンネル20を引き上げ、隙間を解消することによって、移動容器24とファンネル20との連結が完了する。次いで排出口64に設けたバタフライ弁66を開放する。図2(2)はこの時の状況を示しており、容器62に収容した薬剤原料102がファンネル20側に自重落下し、ファンネル20の下端に接続した薬剤製造用機器36に移送される。薬剤原料102の移送が終了すると、上記の操作とは逆の順序によって移動容器24をファンネル20から離反させ、図1に示した状態に戻す。
【0021】
通常、薬剤製造用機器36は多品種の薬剤を取り扱う。このため、品種を切り替える場合には、コンタミ防止の観点から薬剤製造用機器36の内部に残留・付着した切り替え前の薬剤原料を取り除き、清掃する必要がある。この際、ファンネル20の内面にも切り替え前の薬剤原料が付着しているため、ファンネル20の内面についても清掃する必要がある。この清掃時に液体噴霧手段26が利用される。図3は液体噴霧手段26の利用状況を示した断面図である。
【0022】
清掃にあたっては、図1に示した状態から、まず液体噴霧手段26をファンネル20の直上位置まで移動・接近させる.次に包囲体44のシャッタ48を開き、包囲体44の挿入口46を開放する。次に液体噴霧手段26を下降させ、液体噴霧手段26の脚104がフロア32の上面に着地するまで、短管92を挿入口46から包囲体44内に挿入する。図3(1)は包囲体44への短管92の挿入が完了した状態を示している。この状態では液体噴霧手段26の全荷重は脚104を介してフロア32に支持するとともに、短管92の支持部材106が包囲体44の挿入口46を塞ぐ。また、短管92側のスライド弁96とファンネル20側のスライド弁42とが重なる。この際にスライド弁42上面の凸部72がスライド弁96の凹部98と嵌合し、両者が一体化する。
【0023】
したがって、図3(1)に示した状態から、包囲体44内のシリンダ52を作動させ、スライド弁42を図示の位置から右側に引くと、スライド弁42とスライド弁96が重なった状態で一体的に開く。これらのスライド弁42、96が抜け出ると、短管92側のフランジ94下面とファンネル20側のフランジ38上面との間には隙間が生じる。したがって、膨脹ガスケット40を膨脹させてファンネル20を引き上げ、隙間を解消することによって、液体噴霧手段26とファンネル20との連結が完了する。
【0024】
次いで液体噴霧管86に設けた自動開閉弁88を開放する。図3(2)はこの時の状況を示しており、タンク80に収容した噴霧用の液体82が噴霧ノズル90からファンネル20の内面に向けて噴霧される。液体82の噴霧によってファンネル20の内面に付着していた薬剤原料を洗い流すことができる。噴霧ノズル90としては液体噴霧管86の先端に複数個の充円錐型ノズルを角度を変えて取り付けた構造のものが、少量の噴霧用液体でもファンネル20の内面を万遍なく、かつ均一に洗浄することができ、特に好ましい。噴霧が終了すると、上記の操作とは逆の順序によって液体噴霧手段26をファンネル20から離反させ、図1に示した状態に戻す。
【0025】
洗い流した薬剤原料(洗浄済み液)は、そのまま薬剤製造用機器36側に落とし込むことができ、薬剤製造用機器36を清掃する際に一緒に処理処分する。なお、洗い流した薬剤原料(洗浄済み液)を薬剤製造用機器36側に落とし込むことが不都合である時には、ファンネル20の下端を薬剤製造用機器36から切り離しておき、この洗浄済み液を適当な受容器に導くようにしてもよい。
【0026】
又は、上述した液体噴霧管86による液体82の噴霧量を微量に抑え、ファンネル20の内面に付着している薬剤原料が湿潤する程度にすることもできる。薬剤原料を湿潤させた場合には、洗浄済み液が発生しないので上記のような洗浄済み液を薬剤製造用機器36側に落とし込むか、受容器に導く操作が不要になる。湿潤した薬剤原料が内面に付着しているファンネル20については、作業員がこのファンネル20を取り外して、別途、作業環境のよい洗浄室に持ち込んで洗浄する。ファンネル20内面の薬剤原料は湿潤しているので、ファンネル20を取り外し、持ち運ぶ際に飛散することがなく、作業員の安全を確保することができる。洗浄済みのファンネル20は復帰させ、再使用する。
【0027】
図4は上記移送装置が複数箇所で運用される事例を示した系統図である。医薬品製造工場はフロア32を境にして階下のクリーンエリア28と階上の外部エリア30に分かれており、クリーンエリア28には複数の薬剤製造用機器36a、36b、36c、36dが固定配置されている。外部エリア30には3基の移動容器24a、24b、24cと1基の液体噴霧手段26がそれぞれ移動自在に配置されている。薬剤製造用機器36a、36b、36c、36dにはそれぞれファンネル20が接続しており、これらのファンネル20に対して3基の移動容器24a、24b、24cと1基の液体噴霧手段26がそれぞれ移動・接近し、切り替え連結可能とされる。したがって、3基の移動容器24a、24b、24cのそれぞれに収容した薬剤原料を任意の薬剤製造用機器に切り替え連結して移送することができる。また、ある薬剤製造用機器が品種切り替えのため、ファンネル20の清掃が必要な場合には、当該ファンネル20に液体噴霧手段26を連結する。
【0028】
上述のとおり、本実施形態の薬剤原料の移送装置によれば、薬剤製造用機器36での品種を切り替える際に、コンタミ防止のためファンネル20の内面を清掃する場合でも、ファンネル20に液体噴霧手段26を連結し、ファンネル20の内面に付着した薬剤原料を液体噴霧手段26によって洗い流すか、又は湿潤することができる。このため、ファンネル20の清掃時において薬剤原料の飛散を最小限に抑えることができる。のみならず、噴霧ノズル90から噴霧した液体をそのまま薬剤製造用機器36側に落とし込んで、薬剤製造用機器36の清掃に利用することもできる。したがって、クリーンエリア28や外部エリア30での薬剤原料による汚染を防止すると共に、清掃のためにファンネル20に近づいた作業員などが薬剤原料を吸い込んで健康被害を受ける危険性を低くすることができる。
【0029】
また、液体噴霧手段26は、移動容器24と切り替ってファンネル20の上方に移動・接近し、ファンネル20の上端開口部に連結可能とされている。このため、医薬品製造工場にファンネル20を有した薬剤製造用機器36が多数、配置されている場合には、これらの薬剤製造用機器36に対して移動容器24と液体噴霧手段26とを切り替えつつ、1基の液体噴霧手段26を共用して効率の良い運用を図ることができる。
【0030】
また、液体噴霧手段26は、噴霧用の液体を保持したタンク80と、タンク80内の気圧を上げるボンベ84と、タンク80内の液体をファンネル20の内面に噴霧する液体噴霧管86と、液体噴霧管86に配設された自動開閉弁88とを具備している。このため、ポンプなどの液体昇圧手段を用いない簡便な構成で液体をファンネル20の内面に噴霧することができる。
【0031】
さらに、移動容器24の下端開口部、ファンネル20の上端開口部及び液体噴霧手段26にはそれぞれスライド弁が配設されており、移動容器24の下端開口部をファンネル20の上端開口部に連結する時又は液体噴霧手段26をファンネル20の上端開口部に連結する時には、相互のスライド弁70、42又はスライド弁96、42が重なった状態で一体的に開閉するようになっている。このため、移動容器24の下端開口部に設けたスライド弁70や液体噴霧手段26に設けたスライド弁96には個別の開閉駆動源が不要であり、構成の簡便化を図ることができる。
【0032】
上記実施形態では包囲体を具備していたが、本発明はこれに限定されず、包囲体を具備しない薬剤原料の移送装置にも適用することができる。液体噴霧手段はボンベを用いて噴霧用の液体を加圧する構造に限定されず、ポンプやその他の手段を用いて噴霧用の液体を加圧する構造であってもよい。また、本発明に係る液体噴霧手段は移動式に限定されず、移動容器をファンネルから離反させた状態でファンネルの内面に液体を噴霧可能であれば、固定式の構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る薬剤原料の移送装置の実施形態を示す断面図である。
【図2】移送容器24による薬剤原料の移送状況を示した断面図である。
【図3】液体噴霧手段26の利用状況を示した断面図である。
【図4】移送装置が複数箇所で運用される事例を示した系統図である。
【図5】従来技術に係る移送装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0034】
20………ファンネル、22………連結部、24………移動容器、26………液体噴霧手段、28………クリーンエリア、30………外部エリア、32………フロア、34………貫通部、36………薬剤製造用機器、38………フランジ、40………膨脹ガスケット、42………スライド弁、44………包囲体、46………挿入口、48………シャッタ、50………シリンダ、52………シリンダ、54………空気取込孔、56………空気吸引口、58………吸引ファン、60………架台、62………容器、64………排出口、66………バタフライ弁、68………フランジ、70………スライド弁、72………凸部、74………凹部、76………鍔、78………架台、80………タンク、82………(噴霧用の)液体、84………ボンベ、86………液体噴霧管、88………自動開閉弁、90………噴霧ノズル、92………短管、94………フランジ、96………スライド弁、98………凹部、100………脚、102………薬剤原料、104………脚、106………支持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動容器をファンネルの上方に移動・接近させ、前記移動容器の下端開口部と前記ファンネルの上端開口部とを連結し、前記移動容器に収容した薬剤原料をファンネルに自重落下させ、該薬剤原料を前記ファンネルの下方に接続した薬剤製造用機器に移送するようにした薬剤原料の移送装置において、前記移動容器を前記ファンネルから離反させた状態で前記ファンネルの内面に液体を噴霧可能な液体噴霧手段を設けたことを特徴とする薬剤原料の移送装置。
【請求項2】
前記液体噴霧手段は、前記移動容器と切り替って前記ファンネルの上方に移動・接近し、前記ファンネルの上端開口部に連結可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤原料の移送装置。
【請求項3】
前記移動容器の下端開口部、前記ファンネルの上端開口部及び前記液体噴霧手段にはそれぞれスライド弁が配設されており、前記移動容器の下端開口部又は前記液体噴霧手段を前記ファンネルの上端開口部に連結する時には、相互のスライド弁が重なった状態で一体的に開閉することを特徴とする請求項2に記載の薬剤原料の移送装置。
【請求項4】
前記液体噴霧手段は、噴霧用の液体を保持したタンクと、前記タンク内の気圧を上げる昇圧機構と、前記タンク内の液体を前記ファンネルの内面に噴霧する液体噴霧管と、前記液体噴霧管に配設された自動開閉弁とを具備したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の薬剤原料の移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−150136(P2008−150136A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338310(P2006−338310)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】