説明

薬剤注出工具セット

【課題】コーキングガンを使用することが困難な状況においても、カートリッジに封入された充填剤、鳥類忌避剤等の薬剤を注出することが可能な薬剤注出工具セットを提供すること。
【解決手段】薬剤注出工具セット10は、棒状の押圧部材81と、他端がカートリッジCを挿入可能に開放された筒状部33を有する保持体31、及び、保持体31に接続する保持棒61であって、筒状部33の中心軸A1と保持棒の長さ方向L1とが略平行になるように保持体31に接続する保持棒61を備えるカートリッジ保持部材21と、により構成され、筒状部33は、カートリッジCの中心軸A2と筒状部33の中心軸A1とが略一致するようにカートリッジCを着脱可能に保持することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジに封入された充填剤、鳥類忌避剤等の薬剤を注出することが可能な薬剤注出工具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、台所まわり、洗面所、浴室、外壁等の目地止めや防水処理に、コーキング剤やシーリング剤等の充填剤が多用されている。
【0003】
また、カラス、鳩等の鳥類が物理的又は化学的に忌避する成分が含有された鳥類忌避剤が徐々に使用されてきている。例えば、カラスはハンガーのような金属材料を利用して電柱の腕金や送電用の鉄塔等に巣を作ることがある。そのような金属材料が電線や送電線に触れると、広範囲な停電を引き起こす可能性があるため、鳥類忌避剤を電柱の腕金や送電用の鉄塔等に塗布することによって、カラスの営巣を防止している。
【0004】
ところで、上記充填剤、鳥類忌避剤等の薬剤を効率的かつ容易に注出させるための補助具として、例えば図4に示すような、薬剤が封入されたカートリッジCをカートリッジホルダー311に装着し、カートリッジC内に設けられた押圧板C1を後方から押圧することによって、カートリッジCの先端に設けられたノズルC2から薬剤を注出させるコーキングガン301が種々提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9年−150104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業者が入って作業することが不可能な狭い場所、例えば、直径の小さい配管の奥に薬剤を注出させたい場合、目標とする場所に薬剤を注出させようとしても、コーキングガン301を配管に入れることができない可能性がある。仮に、コーキングガン301を配管内に入れることができたとしても、薬剤を注出させたい場所が配管の奥にあり、コーキングガン301のノズルC2が薬剤を注出させたい場所に届かない可能性がある。
【0006】
また、従来、鳥類の営巣防止に鳥類忌避剤を電柱の腕金や送電用の鉄塔等に塗布する作業は、作業者が、電気用ゴム手袋を着用し、コーキングガン301を直接把持して注出作業を行う直線活線工法で行われていた。しかしながら、直接活線工法は、例えば、コーキングガン301の金属部分が電線に接触することによって短絡を起こす場合がある。このため、直接活線工法に替わって、いわゆる、ヤットコと言われるような間接活線工具(補助具)を使用する間接活線工法が行われるようになってきている。しかし、把持部が略C状であるヤットコのような間接活線工具ではコーキングガン301を把持することは困難であり、ましてや、間接活線工具によってコーキングガン301を操作して鳥類忌避剤を電柱の腕金や送電用の鉄塔等に注出させることは、熟練者であっても困難であった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、コーキングガンを使用することが困難な状況においても、カートリッジに封入された充填剤、鳥類忌避剤等の薬剤を注出することが可能な薬剤注出工具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 一端が薬剤を封入した円筒状のカートリッジの底部を押圧して、前記カートリッジの先端部から前記薬剤を注出することが可能な棒状の押圧部材と、前記カートリッジを着脱可能に保持することが可能な略筒状の筒状部であって、前記先端部が貫通可能な開口部が形成された側壁を一端に有し、他端が前記カートリッジを挿入可能に開放された筒状部を有する保持体、及び、前記保持体に接続する保持棒であって、前記筒状部の中心軸と前記保持棒の長さ方向とが略平行になるように前記保持体に接続する保持棒を備えるカートリッジ保持部材と、により構成され、前記筒状部は、前記カートリッジの中心軸と前記筒状部の中心軸とが略一致するように前記カートリッジを着脱可能に保持することが可能である薬剤注出工具セット。
【0009】
(1)の発明によれば、保持体は円筒状のカートリッジを保持する略筒状の筒状部を有する。この筒状部は、カートリッジの先端部が貫通可能な開口部が形成された側壁を一端に有し、他端がカートリッジを挿入可能に開放され、カートリッジの中心軸と筒状部の中心軸とが略一致するようにカートリッジを着脱可能に保持する。また、保持棒は、筒状部の中心軸と保持棒の長さ方向とが略平行になるように保持体に接続する。したがって、カートリッジが保持体に保持された場合は、筒状部の中心軸に略一致するカートリッジの中心軸と保持棒の長さ方向とは平行となる。
【0010】
また、作業者は、カートリッジの中心軸と押圧部材の長さ方向とが略一致するように、すなわち、保持棒の長さ方向と押圧部材の長さ方向とが略平行になるように、カートリッジの底部を押圧部材で押圧することができるので、カートリッジの底部に押圧部材の力が最も作用し、カートリッジより薬剤を注出させることができる。また、保持棒の長さ方向と押圧部材の長さ方向とが略平行になるときは、保持棒と押圧部材との間の距離が最も短くすることができる。したがって、本発明によれば、薬剤注出工具セットの全体の大きさを最も小さくして、カートリッジに封入された薬剤を注出することが可能であるので、カートリッジに封入された薬剤を注出する場所が狭く作業が困難な場所でも、カートリッジに封入された薬剤を注出することができる。
【0011】
(2) 前記筒状部は、前記カートリッジの外周面と当接して前記カートリッジを着脱可能に保持することが可能な弾性部材を前記筒状部の内周面に有する請求項(1)記載の薬剤注出工具セット。
【0012】
(2)の発明によれば、筒状部は、カートリッジの外周面と当接してカートリッジを着脱可能に保持することが可能な弾性部材を筒状部の内周面に有する。したがって、カートリッジは保持体により一層保持されて、例えば、カートリッジの先端を上に向けて行う作業でもカートリッジが脱落することがなく作業を行うことができる。
【0013】
(3) 前記保持棒及び前記押圧部材は、作業者が把持することが可能な把持部を有し、前記把持部は、少なくとも一部が絶縁体で構成されている(1)又は(2)記載の薬剤注出工具セット。
【0014】
(3)の発明によれば、保持棒及び押圧部材が有する把持部は、少なくとも一部が絶縁体で構成されている。したがって、(2)に記載された薬剤注出工具セットは、間接活線工法に使用する間接活線工具(補助具)として使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薬剤注出工具セットの全体の大きさを最も小さくして、カートリッジに封入された薬剤を注出することが可能であるので、カートリッジに封入された薬剤を注出する場所が狭く作業が困難な場所でも、カートリッジに封入された薬剤を注出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一例を示す実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明における薬剤注出工具セットを示す正面図である。図2は、本発明における薬剤注出工具セットを示す部分斜視図である。図3は、本発明における薬剤注出工具セットを使用して配管内に薬剤を注出する方法を説明する図である。
【0018】
[薬剤注出工具セット]
図1から図3に示すように、薬剤注出工具セット10は、カートリッジ保持部材21及び押圧部材81を備える。
【0019】
カートリッジ保持部材21は、保持体31及び保持棒61を有する。
【0020】
ここで、カートリッジCは、コーキング剤、鳥類忌避剤等の薬剤が封入されている。カートリッジCは、押圧板C1を押圧すると先端部であるノズルC2から薬剤が注出される構造を有する。
【0021】
保持体31は、略筒状の筒状部33と、筒状部33の外周面から外側に向けて突出する台形状の突片35と、を有する。
【0022】
筒状部33は、カートリッジCを着脱自在に保持する部材であり、側壁41を一端に有し、他端がカートリッジCを挿入可能に開放されている。また、筒状部33は、カートリッジCの中心軸A2と筒状部33の中心軸A1とが略一致するようにカートリッジCを着脱可能に保持することが可能に形成されている。
【0023】
さらに、筒状部33は、カートリッジCの外周面C3と当接してカートリッジCを着脱可能に保持することが可能な弾性部材34を筒状部33の内周面に有する。したがって、カートリッジCは保持体31により一層保持されて、例えば、カートリッジCのノズルC2を上に向けて行う作業でもカートリッジCが脱落することがなく作業を行うことができる。
【0024】
側壁41には、筒状部33の中心軸A1が通過する位置にノズルC2が貫通可能な開口部37が形成されている。つまり、側壁41に形成されている開口部37の位置は、筒状部33の中心軸A1が通過する位置に限定されるのではなく、カートリッジCのノズルC2の位置によって変更してもよい。
【0025】
突片35は、保持棒61の先端部63に接続する。なお、突片35は、台形状であるが、台形状に限定されるわけではなく、例えば、矩形状、円弧状、三角形状等の他の形状であってもよい。また、突片35を設けずに、筒状部33と先端部63とが直接接続するようにしてもよい。
【0026】
保持棒61は、回転不可能に突片35に固定された先端部63、及び、この先端部63の雌ネジ(図示せず)と螺合する雄ネジ65aが一端に形成された棒状の絶縁性部材65を含む。保持棒61の先端部63と保持体31の突片35とは、筒状部33の中心軸A1と保持棒61の絶縁性部材65の長さ方向L1とが略平行になるように接続する。なお、先端部63と絶縁性部材65とは螺合するので、絶縁性部材65の長さを変更することができる。
【0027】
絶縁性部材65は、吸湿性の少ないエポキシ樹脂系強化プラスチック(FRP)からなる絶縁性筒状体である。絶縁性部材65には、降雨時対策として所定の間隔で、水切鍔67及び限界鍔69とが配設されている。水切鍔67は降雨時対策として水切りのために配設されている。絶縁性部材65の一端に形成された雄ネジ65aと水切鍔67との間の表面には、撥水性に優れたチューブ(図示せず)が配設されている。限界鍔69は、限界鍔69と絶縁性部材65の他端との間を作業者が把持することができる把持部として認識するために配設されたもので、水切鍔67と同様に軟質の合成ゴム製である。
【0028】
なお、先端部63は回転不可能に突片35に固定されているが、回転可能に突片35に固定されていてもよい。また、先端部63と絶縁性部材65とは螺合するのではなく、一体的に形成されていてもよい。
【0029】
押圧部材81は、ノズルC2から薬剤を注出することが可能な棒状の部材であり、押圧棒83、及び、この押圧棒83の一端に接続する押圧ディスク85を有する。
【0030】
押圧棒83は、吸湿性の少ないエポキシ樹脂系強化プラスチック(FRP)からなる絶縁性筒状体である。降雨時対策として所定の間隔で、水切鍔87及び限界鍔89とが配設されている。水切鍔87は降雨時対策として水切りのために配設されている。押圧ディスク85と水切鍔87との間には、撥水性に優れたチューブ(図示せず)が配設されている。限界鍔89は、限界鍔89と押圧棒83の他端との間を作業者が把持することができる把持部として認識するために配設されたもので、水切鍔87と同様に軟質の合成ゴム製である。
【0031】
以上のように、保持棒61及び押圧棒83は作業者が把持することができる把持部を有し、絶縁性部材65及び押圧棒83は絶縁体で構成されている。したがって、本実施形態に係る薬剤注出工具セット10は、間接活線工法に使用する間接活線工具(補助具)として使用することができる。
【0032】
押圧ディスク85は、押圧棒83の一端に設けられており、カートリッジCの押圧板C1に当接される。
【0033】
[薬剤注出工具セットの使用方法]
次に、図3を用いて、薬剤注出工具セット10の使用方法を説明する。
【0034】
図3に示すように、配管110内の奥の領域110aに薬剤を注出する場合、作業者は、ノズルC2が領域110aに位置するように、カートリッジCが保持体31に保持された薬剤注出工具セット10を配管110内に持ち込む。次に、作業者は、限界鍔69と絶縁性部材65の他端との間の把持部、及び、限界鍔89と押圧棒83の他端との間の把持部を把持する。次に、作業者は、押圧棒83がカートリッジCの押圧板C1によって押圧されるように、押圧棒83をカートリッジC側に押圧すると、押圧板C1がノズルC2に近づくように、カートリッジCの内周面上を摺動する。したがって、作業者は、カートリッジCのノズルC2から薬剤を配管110内の奥の領域110aに注出させることが可能である。
【0035】
以上のように、薬剤注出工具セット10の全体の大きさを最も小さくして、カートリッジCに封入された薬剤を注出することが可能であるので、薬剤を注出する場所が狭く作業が困難な場所でも、薬剤を注出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明における薬剤注出工具セットを示す正面図である。
【図2】本発明における薬剤注出工具セットを示す部分斜視図である。
【図3】本発明における薬剤注出工具セットを使用して配管内に薬剤を注出する方法を説明する図である。
【図4】従来のコーキングガンを示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 薬剤注出工具セット
21 カートリッジ保持部材
31 保持体
33 筒状部
34 弾性部材
37 開口部
41 側壁
61 保持棒
63 先端部
65 絶縁性部材
81 押圧部材
83 押圧棒
85 押圧ディスク
A1 中心軸
A2 中心軸
C カートリッジ
C1 押圧板
C2 ノズル
C3 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が薬剤を封入した円筒状のカートリッジの底部を押圧して、前記カートリッジの先端部から前記薬剤を注出することが可能な棒状の押圧部材と、
前記カートリッジを着脱可能に保持することが可能な略筒状の筒状部であって、前記先端部が貫通可能な開口部が形成された側壁を一端に有し、他端が前記カートリッジを挿入可能に開放された筒状部を有する保持体、及び、前記保持体に接続する保持棒であって、前記筒状部の中心軸と前記保持棒の長さ方向とが略平行になるように前記保持体に接続する保持棒を備えるカートリッジ保持部材と、により構成され、
前記筒状部は、前記カートリッジの中心軸と前記筒状部の中心軸とが略一致するように前記カートリッジを着脱可能に保持することが可能である薬剤注出工具セット。
【請求項2】
前記筒状部は、前記カートリッジの外周面と当接して前記カートリッジを着脱可能に保持することが可能な弾性部材を前記筒状部の内周面に有する請求項1記載の薬剤注出工具セット。
【請求項3】
前記保持棒及び前記押圧部材は、作業者が把持することが可能な把持部を有し、
前記把持部は、少なくとも一部が絶縁体で構成されている請求項1又は2記載の薬剤注出工具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−126101(P2008−126101A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310795(P2006−310795)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】