説明

薬剤特性が改善された矯味物質を含有する薬剤製剤

本発明は改善された薬剤特性を有する矯味剤を含有する薬剤製剤に関し、そして、その製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、薬剤特性が改善された矯味物質を含有する薬剤製剤、およびその製造方法に関する。
【0002】
薬剤製剤において矯味剤を使用することは、獣医学の分野でますます重要になっている。この矯味剤は、固形薬剤形態を動物、特にイヌまたはネコに投与することを容易にすることを意図している。たとえば、トリガロールバイオパルP(Trigarol Bayopal P(登録商標))(Haarmann und Reimer GmbH, Hoelzminden, D)またはアーティフィシャルビーフフレーバー(Artificial Beef Flavor)(Pharma Chemie, Syracuse, Nebraska, USA)のような市場で利用可能な矯味剤は、薬剤の錠剤特性に不利益な影響を与えてきた。すなわち、たとえば、錠剤の硬度(錠剤の硬度の決定は、たとえば、Bauer, Kurt H.; Froemming, Karl-Heinz; Fuehrer, Claus: Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie, 6th revised and corrected edition 1999に述べられている)が低下し、あるいは錠剤の安定性について放出または錠剤の硬度の悪化によって悪影響が及ぼされる。こうした変化は、薬剤製品の品質に不利益をもたらすことになる。
【0003】
Botzolakis、HarrisおよびNesbittは、Pharm. Res. (5, No. 10, Suppl. S253, 1988)およびEP−A0345787またはUS04910023中で、不快な味がする活性成分を持っている製剤およびそうした製品の製法について説明している。この場合は、不快な味がする、吸湿性の活性成分を水に懸濁し、コロイド二酸化ケイ素と一緒に乾燥している。これにより、心地よい味の、吸湿性のより少ない錠剤になる。
【0004】
動物に投与するのに好適な固形薬剤製剤が満たすべき要件は、多種多様である:
−良好な動物の受容性、最もよい場合は自発的な摂取
−良好な貯蔵安定性、特に水を吸収する傾向が低いこと
−良好な力学的特性、特に錠剤硬度
−良好な崩壊および放出特性。
【0005】
矯味剤を添加することによって、受容性を増加させることができる。これに関連して今日まで存在する問題点は、こうした矯味剤によって、相当する固形製剤の薬剤特性の悪化がもたらされることである。
【0006】
驚くべきことに、比較的大量のコロイド二酸化ケイ素(colloidal silicon dioxide)を添加することによって、矯味剤の不利な影響が弱められるか、あるいは完全に取り除かれ、その結果生じる固形薬剤製剤は、上記のすべてのクライテリアで良好かあるいはかなり良好な特性を示すことが、今や見出された。コロイド二酸化ケイ素は、味マスキングのための最新技術で提案されているが、矯味剤の効果にほとんど影響を及ぼさないことは、この関連で注目すべきことである。
【0007】
それゆえ、本発明は、活性薬剤成分、矯味剤および完成製剤全重量を基準として少なくとも1.5重量%のコロイド二酸化ケイ素を含んでなる固形薬剤製剤に関する。
【0008】
本発明の薬剤製剤は、通常、0.001〜90重量%の量で活性薬剤成分を含んでなる。
【0009】
適切な活性薬剤成分は、一般に、獣医学における慣習となっているすべての成分である。例としては:キノロン抗生物質、および癌を処置する薬剤、特にMMP阻害剤を挙げることができる。
【0010】
キノロン抗生物質としては、とりわけ、次の文書に説明されており:US4670444(Bayer AG)、US4472405(Riker Labs)、US4730000(Abbott)、US4861779(Pfizer)、US4382892(Daiichi)、US4704459(Toyama)、キノロン抗生物質の特定の例としては:シプロフロキサシン、エンロフロキサシン、イバフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、ビンフロキサシン、ダノフロキサシン、マルボフロキサシン、ベノフロキサシン、オフロキサシン、オルビフロキサシン、トスフロキサシン、テマフロキサシン、ピペミド酸、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、レボフロキサシン、フレロキサシンを挙げることができる。別の好適なキノロン抗生物質としては、WO97/31001に述べられている化合物、特に、式:
【化1】

のプラドフロキサシン(8−シアノ−1−シクロプロピル−7−((1S,6S)−2,8−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸)を挙げることができる。
【0011】
好ましいキノロン抗生物質は、一般には、式(I)および(II):
【化2】

【化3】

(式中、
Aは、窒素または=C−Rであり、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、ニトロまたはメチルであり、
Bは、
【化4】

であり、
そして、
は、水素、所望により、ヒドロキシルまたはメトキシ基によって置換されていてもよい、1〜4個の炭素原子を有する分枝または非分枝状のアルキル基であり、
は、水素、メチルまたはフェニルであり、
は、水素またはメチルであり、
は、アミノ、アルキル基中に1または2個の炭素原子を有するアルキル−またはジアルキルアミノ、アミノメチル、アルキル基中に1または2個の炭素原子を有するアルキル−またはジアルキルアミノメチルであり、
は、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、シクロプロピル、2−フルオロエチル、ビニル、メトキシ、4−フルオロフェニルまたはメチルアミノであり、
は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、およびシクロヘキシル、ベンジル、2−オキソプロピル、フェナシルおよびエトキシカルボニルメチルであり、
は、水素、メチルまたはエチルであり、
Zは、酸素、メチルまたはフェニルによって置換されている窒素、および−CH−である)
によって説明されるものおよびその薬学的に使用できる塩である。
【0012】
好ましい活性成分は、式(Ia):
【化5】

(式中、Bは、
【化6】

であり、
そして
A、R、R、RおよびRは、上記に示されている意味を有する)
のキノロンカルボン酸およびその誘導体である。
【0013】
特に好ましい活性成分は、式(Ia):
【化7】

(式中、Rは、水素、1〜4個の炭素原子を有しているアルキル、およびベンジル、2−オキソプロピル、フェナシルおよびエトキシカルボニルメチルであり、
Bは、
【化8】

であり、
は、水素、メチルまたはエチルであり、
は、水素またはメチルであり、
は、水素またはメチルであり、そして、
Aは、上記で示されている意味を有する)
のキノロンカルボン酸およびその誘導体である。
【0014】
活性成分として次のキノロンカルボン酸およびその誘導体に特に言及することができる:
1−シクロプロピル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(1−ピペラジニル)キノリン−3−カルボン酸(シプロフロキサシン)、1−シクロプロピル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(4−メチル−1−ピペラジニル)キノリン−3−カルボン酸、1−シクロプロピル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(4−エチル−1−ピペラジニル)キノリン−3−カルボン酸(エンロフロキサシン)、1−エチル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(4−メチル−1−ピペラジニル)キノリン−3−カルボン酸、1−エチル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(1−ピペラジニル)キノリン−3−カルボン酸、1−エチル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(1−ピペラジニル)−1,8−ナフチリジン−3−カルボン酸、9−フルオロ−3−メチル−10−(4−メチル−1−ピペラジニル)−7−オキソ−2,3−ジヒドロ−7H−ピリド[1,2,3−de]−1,4−ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、およびその薬学的に使用できる塩およびこうした化合物のメチルおよびエチルエステル。
【0015】
エンロフロキサシンおよびプラドフロキサシン、およびその薬学的に使用できる塩は、特に格別好ましく使用される。
【0016】
言及することができる薬学的に使用できる塩は、生理学的に許容される酸付加塩、および塩基との塩である。この塩は、公知であるか、あるいは公知の方法に準じて調製することができる。
【0017】
引用しうる酸の例としては:塩酸、硫酸、リン酸、たとえば、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸、エンボン酸(embonic acid)のような有機酸を挙げることができる。
【0018】
好ましいものとしては、塩酸、酢酸、乳酸、エンボン酸を挙げることができる。
【0019】
塩基との塩の例としては、基となるカルボン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、銀およびグアニジン塩がある。言及できる好適な塩基の例としては、NaOH、KOH、Ca(OH)、アンモニアのような無機塩基、モノ−、ジ−、トリアルキルアミンのようなアミン、エタノールアミンのような置換アミン、モルホリン、ピペラジンのような環状アミン、アルギニン、リシン、コリン、N−メチルグルカミンのような塩基性アミノ酸、のような有機塩基がある。
【0020】
次の塩基が好ましい:NaOH、KOH、エタノールアミン、リシン、N−メチルグルカミン。
【0021】
次の塩基が特に好ましい:NaOH、KOH。
【0022】
活性成分または塩の薬学的に許容される溶媒和物、特に水和物なども同様に使用することができる。
【0023】
活性成分は、公知であるか、あるいは、公知の方法に準じて調製することができる。
【0024】
好適なMMP阻害剤は、WO96/15096に詳細に述べられており、このドキュメントに明確に言及されている。ここに開示されている化合物の中では、基本ビフェニル構造を有している化合物が好ましい;引用できる特に好ましい例は、化合物タノマスタット(tanomastat)である:
【化9】

【0025】
薬学的に許容される塩、水和物なども同様に使用することができる。
【0026】
本発明によって使用される矯味剤は、特別に調製される蛋白質、脂肪および炭水化物の混合物から構成される。Haarmann & ReimerのトリガロールバイオパルP(Trigarol Bayopal P(登録商標))、およびPharma Chemie(Syracuse, Nebraska, USA)のアーティフィシャルビーフフレーバー(Artificial Beef Flavor(登録商標))が特に言及されうる。この矯味剤は、完成製剤(finished formulation)全重量を基準として1〜40重量%、好ましくは、2.5〜30重量%、特に4〜20重量%の量で、本発明の薬剤製剤中で使用される。
【0027】
コロイド二酸化ケイ素は、たとえば、欧州薬局方(Ph.Eur., SILICA, COLLOIDAL ANHYDROUS)または米国薬局方(USP, Colloidal Silicon dioxide)に述べられている。商業製品の例としては、アエロジル(Aerosil)(Degussa)、ジソルブロル(Dissolvurol)またはエンテロ−テクノサル(Entero-Teknosal)がある。
【0028】
本発明の固形薬剤製剤は、完成製剤全重量を基準として少なくとも1.5重量%のコロイド二酸化ケイ素を含んでおり、完成製剤全重量を基準として好ましくは、少なくとも2.5重量%、特に好ましくは少なくとも4重量%のコロイド二酸化ケイ素を含有する。本発明の固形薬剤製剤は、通常、15重量%以下、好ましくは10重量%以下のコロイド二酸化ケイ素を含有する。上述した範囲内で、コロイド二酸化ケイ素の矯味剤に対する重量比は1:4から1:1まででコロイド二酸化ケイ素を処理することが、特に有利であることが判明している。
【0029】
矯味剤をコロイド二酸化ケイ素および一つまたはそれ以上の活性成分および薬学的に通常の賦形剤と一緒に顆粒化(granulated)する本発明の固形薬剤製剤を製造する方法がまた見出された。本発明の製造方法の適切な変形は、次の通りである:
−矯味剤とコロイド二酸化ケイ素を混合物に(すなわち、他の成分からなる顆粒に)添加し、必要に応じて、たとえば0.5〜2mmのメッシュ幅のふるいを通して選別した後、2〜30分間適切な容器中で固形成分を混和する。
−水、または水と、たとえば、デンプン(トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、馬鈴薯デンプン)、加工デンプン(アルファー化デンプン(pregelatinized starch)、ヒドロキシエチルデンプン)、ゼラチン、トラガカントゴム、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)またはポリビニルピロリドンから成る結合剤溶液を用いて矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共に水性の顆粒とし(顆粒化)、こうした顆粒を混合物(すなわち、他の成分からなる顆粒に)または別の顆粒に添加する。
−矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共にアルコールによって顆粒化(alcoholic granulation)(たとえば、エタノールによる顆粒化)し、こうした顆粒を混合物または別の顆粒に添加する。
−矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共に、別の結合剤を用いて顆粒化(造粒)し、こうした顆粒を混合物または別の顆粒(granulation)に添加する。
−多くの場合、たとえば、増量剤、崩壊剤または結合剤のような別の賦形剤を添加し、矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共に、活性成分の顆粒(granulation)に添加する。
【0030】
顆粒化は、その後にたとえば流動層(fluidized bed)または棚型乾燥器(tray dryer)中で40〜120℃の入気温度で乾燥する湿式造粒として、高速攪拌機(high-speed mixer)によって行うか、あるいはたとえば、流動層造粒装置中での造粒として行うことができる。
【0031】
本発明の薬剤製剤は、獣医学、たとえば、家畜管理および家畜飼育における用途に適している。こうした製剤は、農業および飼育用家畜、動物園、研究室および実験動物、愛玩動物に投与することができる。
【0032】
農業および飼育用家畜には、たとえば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、スイギュウ、ロバ、ウサギ、ファロージカ、トナカイのような哺乳類、たとえば、ミンク、チンチラ、アライグマのような毛皮を持つ動物、たとえば、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒル、ハト、のような鳥、および家および動物園で飼育する鳥類が含まれる。生産用および観賞魚もまた含まれる。
【0033】
研究室および実験動物には、マウス、ラット、モルモット、ゴールデンハムスター、イヌおよびネコが含まれる。
【0034】
愛玩動物には、イヌおよびネコが含まれる。
【0035】
本発明の固形薬剤製剤は、好ましくは錠剤である。しかしながら、粉末剤、プレミックスまたは濃縮物、顆粒、ペレット、ボリ(boli)、カプセル、エアゾール剤および吸入剤のような他の固形製剤もまた適切である。
【0036】
本発明の固形薬剤製剤は、たとえば下記に詳述する担体および賦形剤のような、更に薬学的に許容される添加剤および賦形剤を含有することができる。
【0037】
言及することができる担体は、生理学的に許容される不活性な固形物のすべてである。無機および有機物質がこうしたものとして使用される。無機物質の例としては、塩化ナトリウム、炭酸カルシウムのような炭酸塩、重炭酸塩、酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、リン酸塩(phosphates)がある。
【0038】
有機物質の例としては、蔗糖、乳糖、マンニトール、セルロース、粉乳のようなヒトおよび動物用食品類、動物用ミール(animal meals)、粉末化および粉砕穀物、デンプンがある。
【0039】
賦形剤としては、動物に使用することが認められており、溶液または懸濁液で使用できる、たとえば、アスコルビン酸、トコフェロールのような酸化防止剤、着色剤(colours)がある。
【0040】
更に、好適な賦形剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ベントナイトのような滑沢剤および流動促進剤(glidants)、デンプン、およびデンプン誘導体のような崩壊促進物質、クロスカルメロースナトリウムまたは架橋ポリビニルピロリドン、たとえば、デンプン(トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、馬鈴薯デンプン)、加工デンプン(アルファー化デンプン、ヒドロキシエチルデンプン)、ゼラチン、トラガカントゴム、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)またはポリビニルピロリドンのような結合剤、および微結晶セルロースのような乾燥結合剤がある。
【0041】
図面
図1は、標準品と比較して実施例1から4の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
図2は、実施例2、5および6、および標準品の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
図3は、実施例7から11の場合の曲げ強度[N]を示す。
図4は、7日の期間にわたる実施例20から23の場合の水吸収[%]を示す。
図5は、実施例20から23の場合の錠剤硬度の低下[%]を示す。
図6は、実施例20および27から30の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
図7は、実施例20および27から30の場合の崩壊時間[分]の破砕[N]に対する抵抗依存性を示す;許容される崩壊時間の上限が示されている。この時間は、錠剤のすべてが、常に必要な限度に適合していることを保証するために欧州薬局方によって必要とされる15分という上限よりはるかに低くあるべきである。この理由のため、10分より少ない崩壊時間が許容できるものであると判断される。
図8は、湿度の高い条件のもとで8週間保管した後の実施例28および30の場合の錠剤からの放出速度を示す。放出された活性成分のパーセンテージが、時間と対比してプロットされている。
図9は、様々な方法で調製された実施例28の組成の錠剤の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
図10は、様々な方法で調製された実施例30の組成の錠剤の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
【0042】
実施例
I.エンロフロキサシン錠剤
【化10】

エンロフロキサシン
【0043】
表1
検討製剤:
錠剤組成[mg/錠]
【表1】

【0044】
図1に示されているように、矯味剤を添加すると、矯味剤の含有量が増加すると共に、錠剤の硬度がもたらされる。
【0045】
この錠剤の硬度は、コロイド二酸化ケイ素(たとえば、アエロジル200(Aerosil 200:登録商標))を多量添加することおよび別の賦形剤を添加することによって改善することができる(図2)。
【0046】
表2
【表2】

記述した成分量はmg/錠
【0047】
II.プラドフロキサシン錠剤
【化11】

【0048】
プラドフロキサシン(構造式)の場合の様々な製剤を選択し、矯味剤を添加した場合の錠剤特性に対する影響を試験した。
【0049】
表3
マンニトールベース製剤:
【表3】

記述した成分量はmg/錠
【0050】
錠剤フォルマット:長楕円 14×6r5[mm]
【0051】
バイオパルを添加すると、錠剤硬度が減少する(硬度降伏(hardness yield)=曲げ強度/負荷比として示されている)。矯味剤を含まない製剤と比較すると、長楕円錠剤の曲げ強度は減少する。この錠剤硬度を、コロイド二酸化ケイ素を添加することによって著しく増加させることができるが、このことは、生産(輸送、包装)並びに錠剤の投与の両面において有利な点である。
【0052】
コロイド二酸化ケイ素を含有する製剤の更なる有利な点として、湿度の高い条件下で保管する際に生じる。80%を越えた湿度で1週間保管した後、矯味剤を含有する錠剤のすべての曲げ強度は減少する。この減少は、以下の図3に示すように、多量のコロイド二酸化ケイ素を使用する実施方法に許容できる程度まで減少させることができる。
【0053】
表4
微結晶セルロースをベースとした製剤:
【表4】

記述した成分量はmg/錠
錠剤フォルマット:長楕円 14×6r5[mm]
【0054】
すでに何度も述べてきたが、錠剤の硬度を改善する原則は微結晶セルロースをベースとしたプラドフロキサシン製剤にもあてはまる。上記の表に示すように、矯味剤の添加は、特にこうした錠剤の錠剤硬度に不利益な影響を与えているが、コロイド二酸化ケイ素を添加することによってこれを避けることができる。
【0055】
乳糖と微結晶セルロースを含有するプラドフロキサシン錠剤:
次の混合物を圧縮して様々な大きさの錠剤にすることができる:
表5
【表5】

【0056】
次の大きさおよび用量を有する錠剤が可能である、たとえば:
プラドフロキサシン量 錠剤フォルマット
実施例17: 15mg 8×4r4.5[mm]
実施例18: 60mg 14×7r6 [mm]
実施例19: 120mg 18×8r6 [mm]
【0057】
小さな錠剤は、特に湿度に敏感である。実施例17からの錠剤を保護包装なしで戸外に保管すると、これらは、下記に示され、前述のプラドフラキサシン錠剤の実施例からの事実によって確認され、補充されるように、そのサイズに十分な硬度を保持している。
【0058】
表6
戸外で85%相対(rel.)湿度で15日間保管した後の錠剤硬度:
【表6】

【0059】
III.タノマスタット錠剤
【化12】

タノマスタット(Tanomastat)(構造式)は、味を最適化した様々な錠剤の形で検討された。
【0060】
表7
アーティフィシャルビーフフレーバーを含む製剤。
【表7】

記述した成分量はmg/錠
【0061】
実施例20は、比較のための矯味剤を含まない製剤である。湿度の高い条件のもとで矯味剤を含有している製剤を保管すると、下記の図4で代表的な製剤で示すように、こうした製剤は水を吸収する。このことは、コロイド二酸化ケイ素を多量添加することによって減少することができる。
【0062】
保管の間、錠剤は更に目立つ程度まで硬度を失い、このことは、市場での問題に繋がることになりうる(顧客のクレーム)。この問題はまた、発明性のある手段によって減少させることができる(図5参照)。
【0063】
実施例23に相当する製剤は、下記の実施例によって示されるように、圧縮して広い種々のサイズの錠剤にすることができる:
表8
【表8】

記述した成分量はmg/錠;錠剤フォルマット mm
【0064】
こうした製剤のすべては、湿度の高い条件下で保管する際上記に述べた有利な点を示す。
【0065】
表9
バイオパルを含有する製剤
【表9】

記述した成分量はmg/錠
【0066】
この製剤は、バイオパルの添加によって硬度を失う。このことは、すでに他の活性成分と矯味剤の場合にも述べたごとく、コロイド二酸化ケイ素を添加することによって避けることができる(図6参照)。
【0067】
この錠剤硬度に対する不利な影響に加えて、この矯味剤はまた崩壊および放出特性の悪化を引き起こす。こうした不利な影響も、記述した発明性のある手段によって減少させることができる。
【0068】
コロイド二酸化ケイ素を含有する錠剤の崩壊性は、改善された錠剤の硬度にもかかわらず、コロイド二酸化ケイ素を含有しない、矯味剤を含有する錠剤より速い(図7)。
【0069】
湿度の高い条件の下で8週間保管した後、実施例28と30の組成に準じて、50mgの活性成分を含有する錠剤として製造された錠剤は、多量のコロイド二酸化ケイ素が組み込まれている場合は、改善された放出を示す(図8)。
【0070】
IV.イヌにおける受容性試験
実施例23と24に相当する製剤が、40匹のイヌで試験された。EP00345787またはUS04910023に述べられている味をマスキングすることと対照的に、試験製剤は、試験されたイヌの92.5%によって自発的に食べ尽くされた。但し、添加された矯味剤は、驚くべきことにその機能性を失わなかった。
【0071】
V.製造方法の影響
記述した製剤のすべてのために様々な製造方法を選択することができる:
−矯味剤とコロイド二酸化ケイ素を混合物に添加する。
−矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共に水性の顆粒とし(顆粒化)、こうした顆粒を混合物または別の顆粒に添加する。
−矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共にアルコールによって顆粒化(たとえば、エタノールによる)し、こうした顆粒を混合物または別の顆粒に添加する。
−矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共に、別の結合剤を用いて顆粒化し、こうした顆粒を混合物または別の顆粒に添加する。
−多くの場合、たとえば、増量剤、崩壊剤または結合剤のような別の賦形剤を添加し、矯味剤をコロイド二酸化ケイ素と共に、活性成分の顆粒に添加する。
【0072】
この製造方法によれば、同一の特性を有する錠剤となる。このことは、異なる顆粒化工程によって製造された実施例28の組成に相当する錠剤の硬度として、図9に示されている。
【0073】
同様に実施例30による錠剤の異なった製造方法を選択すると、実質的に同一の荷重/硬度プロファイルを有する錠剤になる(図10)。
【0074】
こうしたデータにより、矯味剤を含有する製剤中に多量のコロイド二酸化ケイ素を組み込むという原則が、選択した顆粒化または錠剤化方法とは関係なく、錠剤の薬剤特性の改善になることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、標準品と比較して実施例1から4の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
【図2】図2は、実施例2、5および6、および標準品の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
【図3】図3は、実施例7から11の場合の曲げ強度[N]を示す。
【図4】図4は、7日の期間にわたる実施例20から23の場合の水吸収[%]を示す。
【図5】図5は、実施例20から23の場合の錠剤硬度の低下[%]を示す。
【図6】図6は、実施例20および27から30の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
【図7】図7は、実施例20および27から30の場合の崩壊時間[分]の破砕[N]に対する抵抗依存性を示す。
【図8】図8は、湿度の高い条件のもとで8週間保管した後の実施例28および30の場合の錠剤からの放出速度を示す。
【図9】図9は、様々な方法で調製された実施例28の組成の錠剤の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。
【図10】図10は、様々な方法で調製された実施例30の組成の錠剤の場合の破砕[N]に対する抵抗の適用荷重[kN]依存性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤成分、矯味剤、および完成製剤全重量を基準として少なくとも1.5重量%のコロイド二酸化ケイ素を含んでなる固形薬剤製剤。
【請求項2】
活性薬剤成分としてエンロフロキサシン、エンロフロキサシン塩またはエンロフロキサシン若しくはその塩の水和物を含んでなる、請求項1に記載の固形薬剤製剤。
【請求項3】
活性薬剤成分としてプラドフロキサシン、プラドフロキサシン塩またはプラドフロキサシン若しくはその塩の水和物を含んでなる、請求項1に記載の固形薬剤製剤。
【請求項4】
矯味剤をコロイド二酸化ケイ素および一つまたはそれ以上の活性成分および薬学的に慣習的な添加剤および/または賦形剤で顆粒化する、請求項1に記載の固形薬剤製剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−510001(P2007−510001A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538719(P2006−538719)
【出願日】平成16年10月30日(2004.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012327
【国際公開番号】WO2005/044271
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】