説明

薬液供給システム

【課題】構成の簡素化を図りながら、水頭圧の影響を自動的に低減させることが可能な薬液供給システムを提供すること。
【解決手段】薬液供給ポンプ10において、一対のボディ11,12内には容積可変部材としてのダイアフラム13が収容されており、このダイアフラム13によってポンプ室14と作動室15とが区画形成されている。作動室15には電空レギュレータ30が接続されている。コントローラ60は、薬液の吸引を開始する場合には作動室15内の圧力を大気圧に設定するとともに、その状態で吸引バルブ23を開状態とする。そして、薬液タンク27の水頭圧によりポンプ室14に薬液が流入してくることで変動する作動室15内の圧力を、圧力センサ52を通じて読み取り、その読み取った圧力に基づいて電空レギュレータ30を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室内の容積変化により薬液の吸引又は吐出を行う薬液供給ポンプを用いて薬液を供給する薬液供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の薬液使用工程においては、フォトレジスト液等の薬液を半導体ウェハに所定量ずつ塗布するために、例えば特許文献1のような薬液供給システムが提案されている。
【0003】
この特許文献1の薬液供給システムでは、薬液タンク内に収容された薬液を吸引するとともにその吸引した薬液を半導体ウェハに向けて所定量ずつ塗布するための薬液供給ポンプが設けられている。当該薬液供給ポンプについて詳細には、薬液を充填するためのポンプ室と、作動エアが流通する作動室と、を仕切るようにダイアフラムを有しており、作動室にレギュレータからエアを供給してダイアフラムをポンプ室側に変形させて、薬液を吐出させる。また、薬液供給ポンプには真空源が接続されており、当該真空源により薬液供給ポンプに負圧を付与することで、ポンプ室の容積を大きくし、薬液を吸引するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−46284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、薬液タンク内に収容されている薬液の液面レベルは薬液を吐出していくことに伴って変化し、そうすると薬液タンク内の水頭圧が変化する。例えば水頭圧が大きく変化した場合、薬液を薬液供給ポンプに吸引する場合における吸引時間が大きく変化し、結果的に、薬液供給ポンプに薬液を吸引するのに要する時間が大きく変動してしまうことが懸念される。
【0006】
これに対して、薬液タンクに対して液面センサや重量センサを設け、水頭圧の変化を直接的に検出し、その検出結果に応じて薬液供給ポンプにおける吸引動作を制御する構成も考えられる。しかしながら、本構成においては、薬液タンク側及び薬液供給ポンプ側のそれぞれについてシステムの変更を行う必要が生じ、既存のシステムからの変更箇所が多くなってしまう。
【0007】
また、ニードル弁を薬液供給ポンプよりも薬液タンク側の位置に設け、絞り量を都度手動で調整し、水頭圧の影響を低減させるようにすることも考えられるが、この場合、水頭圧の影響を自動的に低減させることはできない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、構成の簡素化を図りながら、水頭圧の影響を自動的に低減させることが可能な薬液供給システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及び作用効果について記載する。
【0010】
第1の発明の薬液供給システムは、薬液タンクから薬液が充填されるポンプ室、及び容積可変部材により前記ポンプ室から仕切られてなる作動室を有し、当該作動室内の作動気体の圧力に応じて前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプと、前記作動室に付与する気体圧力を吸引用圧力にすることで前記ポンプ室に薬液を吸引させる圧力調整手段と、前記ポンプ室に通じる吐出通路側に設けられる吐出側開閉弁が閉状態であって、前記ポンプ室に通じる吸引通路側に設けられる吸引側開閉弁が閉状態である状況において、前記ポンプ室への薬液の充填を開始する場合に前記吸引側開閉弁を開状態に切り換える切換制御手段と、前記吸引側開閉弁が開状態とされて前記ポンプ室への薬液の流入が開始された場合に、前記作動室に連通する空間又は前記作動室の気体圧力を検出する圧力検出手段と、当該圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御する吸引制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本構成によれば、吸引側開閉弁が開状態とされた場合の圧力検出手段の検出結果に基づいて、圧力調整手段により作動室に付与される吸引用圧力が制御されるため、吸引用圧力の付与が薬液タンクの水頭圧を考慮して行われるようにすることが可能となる。また、圧力検出手段は、作動室に連通する空間又は作動室内の気体圧力を検出するものであるため、薬液の流通経路において薬液供給ポンプよりも上流側や下流側にて構成の変更を要しない。また、吸引側開閉弁を開状態とした際の圧力検出手段における検出結果に基づいて吸引用圧力の設定圧を決定する構成であるため、上記のような制御を薬液の吸引が行われる過程に即して行うことが可能となる。
【0012】
第2の発明の薬液供給システムは、第1の発明の薬液供給システムにおいて、前記吸引制御手段は、前記吸引側開閉弁が開状態とされて前記ポンプ室への薬液の流入が開始された場合の前記圧力検出手段の検出圧力が低いほど、その後の薬液の吸引に際しての吸引用圧力の設定圧も低い設定圧となるようにするものであることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、水頭圧が低いほど吸引用圧力の設定圧も低くなるため、水頭圧が低くなったとしても薬液の吸引に要する時間が極端に長時間化してしまわないようにすることが可能となる。つまり、水頭圧と、ポンプ室から吸引通路側に付与される実際の吸引圧力との差圧が、水頭圧が変動したとしても一定又は概ね一定となるように制御されるため、薬液の吸引に要する時間が極端に長時間化してしまわないようにすることが可能となる。
【0014】
第3の発明の薬液供給システムは、第1又は第2の発明の薬液供給システムにおいて、前記容積可変部材の位置を検出する位置検出手段を備え、前記切換制御手段は、前記位置検出手段の検出結果が、前記容積可変部材の位置が薬液の吸引が完了した位置となったことに対応した結果となった場合に、開状態から閉状態に切り換わるように前記吸引側開閉弁を制御するものであり、前記吸引制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御することで、各回の吸引動作において前記容積可変部材の位置が前記完了した位置となるまでに要する時間が一定となるようにするものであることを特徴とする。
【0015】
位置検出手段の検出結果に基づいて吸引動作が完了したか否かを判定するようにすることで、吸引動作の完了を判定するために時間の計測などを要しない。この場合に、吸引用圧力の設定圧は薬液タンクの水頭圧に応じて決定され、各回の吸引動作において容積可変部材の位置が吸引完了に対応した位置となるまでに要する時間が一定となるように制御される。これにより、上記のように位置検出に基づき吸引動作が完了したか否かを判定する構成において、各回の吸引動作時間の一定化を図ることが可能となる。
【0016】
第4の発明の薬液供給システムは、第1乃至第3のいずれか1の発明の薬液供給システムにおいて、前記圧力調整手段は、前記作動室への吐出用圧力の付与を阻止又は許容する第1開閉弁と、前記作動室への前記吸引用圧力の付与を阻止又は許容する第2開閉弁と、を備え、前記吸引制御手段において前記吸引用圧力の設定圧を決定するための前記圧力検出手段における圧力の検出が完了するまでは、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁の両方を閉状態として、前記作動室に連通された空間及び当該作動室が閉空間となるようにするものであることを特徴とする。
【0017】
本構成によれば、検出用圧力に設定されている状況で吸引側開閉弁が開状態となった際に、作動室内の気体圧力の変動を直接的に検出することが可能となる。
【0018】
第5の発明の薬液供給システムは、第1乃至第4のいずれか1の発明の薬液供給システムにおいて、前記吐出側開閉弁が閉状態であって前記吸引側開閉弁が閉状態である状況において、前記切換制御手段により前記吸引側開閉弁が開状態とされた際の前記ポンプ室への薬液の流入に伴う圧力の変動を前記圧力検出手段において検出可能とするような検出用圧力に、前記圧力調整手段の設定圧を制御する検出用制御手段を備え、前記吸引制御手段は、前記検出用圧力に設定されている状況で前記吸引側開閉弁が開状態とされて前記ポンプ室への薬液の流入が開始された場合における前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御するものであることを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、薬液供給ポンプに吸引用圧力が積極的に付与されている場合に水頭圧の影響を検出しようとする構成に比べ、水頭圧の影響を直接的に読み取ることが可能となり、水頭圧の変動に即した吸引用圧力の設定を良好に行うことが可能となる。
【0020】
第6の発明の薬液供給システムは、第5の発明の薬液供給システムにおいて、前記検出用圧力は、前記吸引側開閉弁が開状態となった際に前記薬液タンクの水頭圧により前記ポンプ室への薬液の流入を可能とする圧力であることを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、水頭圧の変動を圧力検出結果から読み取る場合において、他の影響による圧力の変動の発生を抑えることが可能となり、水頭圧の変動を直接的に読み取ることが可能となる。
【0022】
第7の発明の薬液供給システムは、第1乃至第6のいずれか1の発明の薬液供給システムにおいて、前記圧力調整手段は、前記吸引制御手段により決定された前記吸引用圧力の設定圧と、前記圧力検出手段により検出された実圧力との偏差に基づいて、当該実圧力が前記設定圧となるように前記作動室に付与する圧力を調整するものであることを特徴とする。
【0023】
本構成によれば、吸引用圧力の実圧力を設定圧にフィードバック制御するために利用される圧力検出手段を利用して、水頭圧の影響を低減させることが可能となる。よって、構成の簡素化が図られる。
【0024】
第8の発明の薬液供給システムは、薬液タンクから薬液が充填されるポンプ室、及び容積可変部材により前記ポンプ室から仕切られてなる作動室を有し、当該作動室内の作動気体の圧力に応じて前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプと、前記作動室に付与する気体圧力を吸引用圧力にすることで前記ポンプ室に薬液を吸引させる圧力調整手段と、前記ポンプ室に薬液が流入する場合における前記作動室の容積減少量に対して一義的に定まる作動量を、前記作動室へと通じる前記作動気体の流通経路側又は前記薬液供給ポンプにて検出する作動量検出手段と、当該作動量検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御する吸引制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
本構成によれば、作動室の容積の減少量に対して一義的に定まる作動量に基づいて、薬液の吸引に際しての吸引用圧力の設定圧が決定されるため、当該吸引用圧力の設定圧を薬液タンクの水頭圧の影響を考慮したものとすることが可能となる。また、上記作動量を検出する作動量検出手段は、作動室へと通じる作動気体の流通経路側又は薬液供給ポンプに設けられているため、薬液の流通経路において薬液供給ポンプよりも上流側や下流側にて構成の変更を要しない。また、上記のように水頭圧の影響を低減するための吸引用圧力の設定圧の決定を、薬液の吸引が行われる過程に即して行うことが可能となる。
【0026】
第9の発明の薬液供給システムは、第8の発明の薬液供給システムにおいて、前記吸引制御手段は、前記ポンプ室に薬液が吸引される場合に、前記容積可変部材の変位速度を基準変位速度とするための基準値を設定するとともに、当該基準値と、前記作動量検出手段による検出結果から求めた数値との偏差に基づいて、当該求めた数値が前記基準値となるように前記圧力調整手段により調整される吸引用圧力の設定圧を制御するものであることを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、薬液タンクの水頭圧の変化に対して吸引用圧力の設定圧を追随させることが可能となる。
【0028】
第10の発明の薬液供給システムは、第8又は第9の薬液供給システムにおいて、前記ポンプ室に通じる吸引通路側に設けられる吸引側開閉弁を、前記ポンプ室に薬液を吸引する場合に開状態となるように制御するとともに、前記容積可変部材の位置が薬液の吸引が完了した位置となった場合に閉状態となるように制御する切換制御手段を備え、前記作動量検出手段は、前記作動量として前記容積可変部材の位置を検出するものであって、前記切換制御手段において前記容積可変部材の位置が薬液の吸引が完了した位置となったことを把握する場合に用いられる位置検出手段であることを特徴とする。
【0029】
本構成によれば、吸引動作が完了したことを判断するために利用される位置検出手段を利用して、水頭圧の影響を低減させることが可能となる。よって、構成の簡素化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施の形態における薬液供給システムの概略を示す構成図である。
【図2】同実施の形態における吸引用処理を示すフローチャートである。
【図3】同実施の形態における吸引に要する時間が一定となる様子を説明するタイムチャートである。
【図4】第2の実施の形態における薬液吸引時の演算処理を示すブロック図である。
【図5】同実施の形態における吸引に要する時間が一定となる様子を説明するタイムチャートである。
【図6】第3の実施の形態における電空レギュレータに関する回路を示す回路説明図である。
【図7】同実施の形態における薬液吸引時の演算処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、半導体装置等の製造ラインにて使用される薬液供給システムについて具体化しており、当該システムの基本的構成を図1に基づいて説明する。
【0032】
図1の薬液供給システムでは、薬液の吸引及び吐出を行うための薬液供給ポンプ10を備えている。薬液供給ポンプ10は、左右2つに分割されるボディ11,12を有しており、これら各ボディ11,12には各々対向する面に凹部が形成されている。各ボディ11,12の間には、容積可変部材として、可撓性膜よりなるダイアフラム13が介在され、当該ダイアフラム13の周縁部が両ボディ11,12にて挟持されている。この場合、各ボディ11,12の凹部間がダイアフラム13の仕切領域13aにより仕切られ、一方のボディ11側の凹部と仕切領域13aとの間にポンプ室14が形成され、他方のボディ12側の凹部と仕切領域13aとの間に作動室15が形成されている。
【0033】
上記一方のボディ11には、ポンプ室14に連通する吸引ポート16と吐出ポート17とが形成されており、吸引ポート16に吸引配管21が接続され、吐出ポート17に吐出配管22が接続されている。吸引配管21には吸引側開閉弁である吸引バルブ23が設けられており、吸引バルブ23は電磁弁24の通電状態に応じて開閉される。また、吐出配管22には吐出側開閉弁である吐出バルブ25が設けられており、吐出バルブ25は電磁弁26の通電状態に応じて開閉される。例えば、吸引バルブ23及び吐出バルブ25は、空気圧力により開閉操作されるエアオペレートバルブで構成されており、電磁弁24,26の通電状態に応じて各バルブ23,25に作用する空気圧力が調節され、それに伴い各バルブ23,25が開閉される。
【0034】
吸引配管21は、ポンプ室14に向けてレジスト液等の薬液を供給するための吸引通路を構成するものであり、薬液タンク27内に貯留された薬液が吸引配管21を通じてポンプ室14に供給される。これにより、ポンプ室14内に薬液が充填される。この場合、薬液タンク27内に貯留されている薬液の量に応じて、薬液タンク27側からポンプ室14側に向けた薬液の水頭圧が変動する。また、吐出配管22は、ポンプ室14内に充填された薬液を吐出するための吐出通路を構成するものであり、ポンプ室14から排出される薬液が吐出配管22を通じて薬液吐出ノズル28に供給される。
【0035】
上記他方のボディ12には、作動室15に連通する給排ポート18が形成されており、この給排ポート18に、圧力調整手段として設けられた電空レギュレータ30が接続されている。電空レギュレータ30は、作動室15内に正圧を付与する正圧付与手段及び負圧を付与する負圧付与手段を構成するものである。
【0036】
詳細には、電空レギュレータ30の給気ポート31は供給配管32を介して供給源33に接続されているとともに、電空レギュレータ30の排気ポート34は排気配管35を介して負圧発生源としての真空発生源36に接続されている。電空レギュレータ30において給気ポート31からつながる給気通路37は、第1開閉弁としての給気用電磁弁43を介して、電空レギュレータ30の出力ポート41へとつながる出力通路42に連通されている。また、電空レギュレータ30において排気ポート34からつながる排気通路38は、第2開閉弁としての排気用電磁弁44を介して、上記出力通路42に連通されている。
【0037】
給気用電磁弁43及び排気用電磁弁44は、電空レギュレータ30に設けられた演算回路46により開閉が制御される。給気用電磁弁43が開状態とされると、供給源33において圧縮された作動エアが出力ポート41を通じて薬液供給ポンプ10の作動室15に供給され、結果的に作動室15に対して吐出用圧力として正圧が付与される。一方、排気用電磁弁44が開状態とされると、出力ポート41を介して作動室15に対して吸引用圧力として負圧が付与され、当該作動室15の作動エアが吸引される。
【0038】
上記構成により、作動室15内に負圧が付与されている状態では、ダイアフラム13の仕切領域13aは作動室15側の凹部に向けて撓み変形する。これにより、ポンプ室14内の容積が増加する。この撓み変形が行われる場合に、吸引バルブ23を開弁させるとともに吐出バルブ25を閉弁させることにより、吸引配管21を通じてポンプ室14内に薬液が吸引される。
【0039】
一方、作動室15内に正圧が付与されている状態では、ダイアフラム13の仕切領域13aがポンプ室14側の凹部(図1において二点鎖線にて示す位置)に向けて撓み変形する。これにより、ポンプ室14の容積が減少する。この撓み変形が行われる場合に、吸引バルブ23を閉弁させるとともに吐出バルブ25を開弁させることにより、ポンプ室14内に充填されている薬液が吐出配管22を通じて排出される。
【0040】
ここで、出力通路42には当該出力通路42から分岐させて検出通路51が設けられ、当該検出通路51には圧力検出手段としての圧力センサ52が設けられている。この圧力センサ52によって出力通路42内のエア圧力が検出され、その圧力検出信号が演算回路46に出力される。また、演算回路46は、後述するコントローラ60から、設定圧の指令の情報を含む調整指令信号を入力する。そして、演算回路46は、その調整指令信号から読み取られる設定圧と上記圧力検出信号から求められる実際の圧力との偏差量に基づき、出力通路42における作動エアの圧力が調整指令信号の設定圧にしたがった圧力となるように給気用電磁弁43と排気用電磁弁44とを開状態とする時間をそれぞれ制御する。これにより、出力ポート41内における作動エアの圧力が設定圧に調圧される。
【0041】
薬液供給ポンプ10において上記給排ポート18が設けられたボディ12には、略円柱状をなすロッド53が収容されている。ロッド53は、一端がダイアフラム13の仕切領域13aに連結され、他端にセンサマグネット54が装着されている。そして、ボディ12には、センサマグネット54の磁気を検出可能な位置検出センサ55が位置検出手段として取り付けられている。位置検出センサ55は、ロッド53の移動に伴ってセンサマグネット54にて生じる磁界の変化を検出し、ロッド53の位置、すなわち仕切領域13aの位置に対応した位置検出信号をコントローラ60に出力する。
【0042】
コントローラ60は、CPUや各種メモリ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置であり、薬液供給ポンプ10による薬液の吸引及び吐出の状態を制御する。コントローラ60には、本システム全体を統括して管理する図示しない管理コンピュータから吸引指令信号及び吐出指令信号が入力されるとともに、位置検出センサ55から位置検出信号が入力される。そして、コントローラ60は、都度入力される信号に基づいて電磁弁24,26を通電又は非通電の状態として吸引バルブ23と吐出バルブ25との開閉状態を制御する。また、電空レギュレータ30に対して上記調整指令信号を出力して当該電空レギュレータ30の状態を制御する。このとき特に、コントローラ60は、薬液供給ポンプ10において薬液の吸引に要する時間が薬液タンク27の水頭圧に依存することなく一定となるように電空レギュレータ30の状態を制御する。
【0043】
次に、コントローラ60にて実行される吸引用処理の内容を、図2のフローチャートを参照しながら説明する。当該吸引用処理は、管理コンピュータからコントローラ60に吸引指令信号が入力された場合に起動される。また、以下の説明では、圧力センサ52の検出圧力が推移していく様子を示すタイムチャートである図3を参照しながら、吸引用処理が実行されることによる作用も説明する。
【0044】
先ずステップS1では、検出用の圧力設定処理を実行する。当該検出用の圧力設定処理では、電空レギュレータ30の圧力センサ52の検出結果を利用して薬液タンク27の水頭圧を推定することが可能なように、薬液供給ポンプ10に付与する圧力を検出用の圧力とするための設定圧を電空レギュレータ30に指示する。この検出用圧力は、水頭圧の想定される最小圧力よりも小さい圧力であることが好ましい。具体的には、検出用圧力は大気圧であり、ステップS1では、作動室15の圧力を大気圧とするための調整指令信号を演算回路46に出力する。そして、圧力センサ52からの圧力検出信号が大気圧に対応したものとなるまでステップS2にて待機する。
【0045】
図3のt1のタイミングに示すように圧力センサ52の検出結果が大気圧となった場合には、ステップS3にて閉空間の設定処理を実行する。具体的には、給気用電磁弁43及び排気用電磁弁44の両方を閉状態とすることを指令する調整指令信号を演算回路46に出力する。これにより、薬液供給ポンプ10の作動室15だけでなく、当該作動室15に連通するエア配管45及び出力通路42も閉空間となる。つまり、作動エアに連通される空間及び作動室15内が閉空間となる。
【0046】
その後、ステップS4にて、吸引バルブ23を開状態とする。ちなみに、吸引バルブ23を開状態とする直前ではダイアフラム13の仕切領域13aはポンプ室14側の凹部寄りに位置している。
【0047】
吸引バルブ23を開状態とすることにより、薬液供給ポンプ10の作動室15内がほぼ大気圧の状態であったとしても薬液タンク27の水頭圧により吸引配管21内の薬液が押されて、薬液供給ポンプ10のポンプ室14内に流入する。この場合、作動室15内の作動エアが電空レギュレータ30側に押されるため、図3におけるt1〜t2の期間に示すように、圧力センサ52において検出されている圧力が上昇する。そして、t2のタイミングにて、圧力センサ52の検出圧は最大値(正圧側のピーク値)となる。この最大値となった検出圧が今回の水頭圧に対応している。
【0048】
吸引用処理(図2)では、ステップS4にて吸引バルブ23を開状態とした後は、ステップS5にて、圧力センサ52の検出圧が下降を開始するまで待機する。そして、下降を開始した場合には、ステップS6にて、吸引用圧力の導出処理を実行する。
【0049】
吸引用圧力の導出処理では、その時点における圧力センサ52の検出圧を水頭圧の推定圧として利用して、今回の吸引動作における吸引用圧力の設定圧、具体的には負圧の設定圧を導出する。具体的には、圧力センサ52の検出圧に対応させて負圧の設定圧が設定されたデータテーブルが予め記憶されており、今回取得した検出圧に対応した負圧の設定圧をそのデータテーブルから読み出す。但し、これに限定されることはなく、水頭圧の基準推定圧に対応させて基準設定圧が予め記憶されているとともに、圧力センサ52の検出圧と上記基準推定圧との比率分を上記基準設定圧に対して補正することで負圧の設定圧を算出する構成としてもよい。ステップS6にて導出する吸引用圧力の設定圧は、電空レギュレータ30において設定可能な吸引用の圧力範囲(すなわち、負圧の圧力範囲)のいずれかの圧力となっている。
【0050】
ステップS6にて導出した吸引用圧力の設定圧の情報は、ステップS7にて、調整指令信号として演算回路46に出力する。これにより、演算回路46では、その負圧の設定圧となるように作動室15に付与する負圧を調整する。具体的には、演算回路46は、図3においてt2〜t3の期間にて示すように、その設定圧に向けて負圧の付与が除々に行われるように排気用電磁弁44を制御し、その後にt3〜t4の期間にて示すように、付与する負圧を設定圧の状態に概ね維持するように排気用電磁弁44を制御する。
【0051】
ここで、上記導出処理にて導出される吸引用圧力の設定圧は、水頭圧の推定圧がいずれであっても、その水頭圧と、ポンプ室14から吸引配管21側に付与される実際の吸引圧力との差圧が、一定又は概ね一定となるように設定されている。詳細には、上記導出処理にて導出される吸引用圧力の設定圧は、水頭圧の推定圧がいずれであっても、ダイアフラム13の仕切領域13aの位置が、吸引完了に対応した位置となるまでに要する時間が一定又は概ね一定となるように設定されている。
【0052】
より詳細には、仕切領域13aの変位速度が概ね一定となるまでに要する加速度及びその過渡期に要する時間(図3のt2〜t3の期間)が、水頭圧の推定圧がいずれであっても一定又は概ね一定となり、さらには仕切領域13aの変位速度が概ね一定となった場合の当該変位速度が水頭圧の推定圧がいずれであっても一定又は概ね一定となるように、上記導出処理にて導出される吸引用圧力が設定されている。このように吸引用圧力が設定されることにより、図3において一点鎖線で示すように水頭圧の推定圧が低い場合の方が、実線で示すように水頭圧の推定圧が高い場合よりも上記吸引用圧力の設定圧は低く、結果として、薬液タンク27の水頭圧が変動していたとしても、薬液の吸引に要する時間はTで一定となる。
【0053】
吸引用処理(図2)では、ステップS7の処理を実行した後はステップS8にて薬液の吸引が完了するまで待機する。詳細には、位置検出センサ55の検出結果に基づいて、仕切領域13aが作動室15側の凹部寄りの所定位置、具体的には吸引量が所定量となることに対応した予め定められた位置となったことを特定するまで待機する。薬液の吸引が完了している場合には、ステップS9にて吸引バルブ23を閉状態とした後に、本吸引用処理を終了する。
【0054】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0055】
水頭圧が低下すると薬液タンク27側から薬液供給ポンプ10に向けて薬液を押し出す力が弱まるため、作動室15に付与される吸引用圧力が一定であるとすると、薬液の吸引が完了するのに要する時間が後側の吸引動作ほど長時間化し、薬液の吸引に要する時間が変動してしまう。これに対して、薬液の吸引を開始する場合には先ず水頭圧を推定し、その推定した水頭圧に基づいて、仕切領域13aの変位速度が各吸引動作回において一定となるように吸引用圧力が設定される。これにより、吸引に要する時間を自動的に一定なものとすることが可能となる。
【0056】
また、水頭圧の影響を検出するために作動室15に付与する圧力を、吸引用圧力よりも大気圧側の検出用の圧力、具体的には大気圧に設定し、その大気圧に設定した状況でポンプ室14への薬液の充填を開始させ、その際の圧力センサ52における圧力の検出結果に基づいて今回の吸引動作における吸引用圧力を決定する構成である。これにより、薬液供給ポンプ10に吸引用圧力が積極的に付与されている場合に水頭圧の影響を検出しようとする構成に比べ、水頭圧の影響を直接的に読み取ることが可能となり、水頭圧の変動に即した吸引用圧力の設定を良好に行うことが可能となる。
【0057】
また、薬液の吐出動作が行われた後であって吸引バルブ23が閉状態である状況で上記のような検出用の圧力の設定が行われるとともに、薬液の吸引動作を開始させるべく吸引バルブ23が開状態とされた場合における圧力センサ52の検出結果に基づいて吸引用圧力の設定圧を決定する構成であるため、薬液供給ポンプ10において薬液の吸引が行われる過程に即しながら、吸引用圧力の設定圧を決定することが可能となる。
【0058】
また、水頭圧の推定を行うために圧力センサ52の検出結果が取得される期間では、給気用電磁弁43及び排気用電磁弁44はいずれも閉状態に維持され、作動室15及び当該作動室15に連通された空間は閉空間とされる。これにより、水頭圧の影響を直接的に読み取ることが可能となり、水頭圧の変動に即した吸引用圧力の設定を良好に行うことが可能となる。
【0059】
また、このような水頭圧の影響を直接的に読み取ることは、圧力センサ52における検出結果に基づいて吸引用圧力を設定していることからも実現できる。特に、圧力センサ52は演算回路46において設定圧に対する実際の圧力のフィードバック制御を行うために用いられるものであるため、当該圧力センサ52を利用して吸引用圧力を設定することで、既存の薬液供給システムに対するハード構成の変更点が少なくて済む。
【0060】
なお、電空レギュレータ30の演算回路46に代えて、電空側コントローラを設けて、当該電空側コントローラにて吸引用処理のうち、検出用の圧力設定処理や、吸引用圧力の導出処理を実行するようにしてもよい。
【0061】
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、薬液の吸引動作において薬液タンク27の水頭圧の影響を受けないようにするための構成が上記第1の実施の形態と異なっている。以下、その相違する構成について説明する。
【0062】
本実施の形態における薬液供給システムは、図1に示したものと基本的に同様となっている。但し、吸引用圧力の設定圧を決定する際に圧力センサ52の検出結果を利用することなく、代わりに、位置検出センサ55の検出結果を利用する。
【0063】
図4は、コントローラ60における薬液吸引時の演算処理の内容を示す。なお、以下の演算処理は薬液吸引時において比較的短い間隔で繰り返し実行される。
【0064】
目標変位速度読出部B1は、管理コンピュータからの吸引指令信号に基づき、ダイアフラム13の仕切領域13aを吸引用に変位させる場合における変位速度の目標値を、コントローラ60の不揮発性メモリから読み出す。なお、目標変位速度が複数パターン記憶されており、いずれの目標変位速度を利用するかの指令が吸引指令信号に基づき行われる構成としてもよい。
【0065】
実変位速度算出部B2は、位置検出センサ55からの位置検出信号に基づいてその都度の仕切領域13aの位置の履歴を記憶するとともに、当該履歴の情報から仕切領域13aの変位量を算出する。そして、その算出した変位量の時間微分に基づき、仕切領域13aの実際の変位速度を算出する。
【0066】
偏差算出部B3は、目標変位速度と実変位速度との差を算出する。吸引用圧力算出部B4は、実変位速度を目標変位速度にフィードバック制御するための吸引用の操作量である吸引用圧力の設定圧の情報を算出する。この算出された吸引用圧力の設定圧の情報は、調整指令信号として電空レギュレータ30の演算回路46に出力される。演算回路46では、この調整指令信号に基づいて排気用電磁弁44を制御して、仕切領域13aの実変位速度が目標変位速度となるようにする。
【0067】
ここで、コントローラ60では、位置検出センサ55の検出結果に基づいて、仕切領域13aが作動室15側の凹部寄りの所定位置、具体的には吸引量が所定量となることに対応した位置であって予め定められた位置となったことを検知した場合に薬液の吸引動作が完了したとして吐出動作を開始させる。この場合に、上記のように仕切領域13aの実変位速度が目標変位速度となるようにされるため、結果的に薬液の吸引に要する時間が一定となる。
【0068】
なお、上記のようなフィードバック制御を通じた調整指令信号の出力は、1回の吸引動作において複数回に亘って繰り返し行われる。また、目標変位速度読出部B1、実変位速度算出部B2、偏差算出部B3及び吸引用圧力算出部B4が本実施の形態における負圧制御手段に相当する。
【0069】
次に、図5のタイムチャートを参照しながら、吸引に要する時間が一定となる様子を説明する。図5(a)は薬液供給ポンプ10の動作状況を示し、図5(b)は薬液タンク27の水頭圧を示し、図5(c)は薬液供給ポンプ10の作動室15内に付与されている圧力を示す。
【0070】
t1のタイミングで薬液供給システムがON状態となることにより、薬液供給ポンプ10では薬液の吸引動作と薬液の吐出動作とが交互に繰り返される。この場合、t3〜t4の期間、及びt7〜t8の期間では吐出動作を行うために作動室15に正圧が付与されるが、吐出動作から吸引動作に切り換わる場合の過渡期であるt4〜t5の期間、及びt8〜t9の期間では、吸引動作となった際に急激な圧力低下を生じさせないようにするために、除々に圧力が低下される。そして、吸引動作が開始されるタイミングでは作動室15が大気圧となる。但し、当該タイミングでは、ダイアフラム13の仕切領域13aは依然としてポンプ室14側の凹部寄りに位置している。
【0071】
t1〜t2の期間、t5〜t6の期間、及びt9〜t10の期間では、それぞれ薬液の吸引動作が行われるが、当該吸引動作が行われる度に薬液タンク27内の薬液量が減少していくため、薬液タンク27の水頭圧も低下していく。そして、水頭圧が低下すると薬液タンク27側から薬液供給ポンプ10に向けて薬液を押し出す力が弱くなる。これに対して、既に説明したように、ダイアフラム13の仕切領域13aの位置を位置検出センサ55により検出することに基づくフィードバック制御により、仕切領域13aの変位速度が一定となるように吸引用圧力の設定圧が調整される。したがって、後側の吸引動作ほど作動室15に付与される吸引用圧力は負圧側に低くなっており、つまり、水頭圧と、ポンプ室14から吸引配管21側に付与される実際の吸引圧力との差圧が、一定又は概ね一定となるようになっており、結果的に吸引に要する時間はTで一定となっている。
【0072】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0073】
水頭圧が低下すると薬液タンク27側から薬液供給ポンプ10に向けて薬液を押し出す力が弱まるため、作動室15に付与される吸引用圧力が一定であるとすると、薬液の吸引が完了するのに要する時間が後側の吸引動作ほど長時間化し、吸引に要する時間が変動してしまう。これに対して、吸引動作中においてダイアフラム13の仕切領域13aの位置が位置検出センサ55により検出されるとともに、当該位置検出センサ55の検出結果に基づいて、仕切領域13aの変位速度が一定となるように吸引用圧力の設定圧が調整される。これにより、吸引に要する時間を自動的に一定なものとすることが可能となる。
【0074】
また、位置検出センサ55の検出結果に基づく実変位速度と、予め定められた目標変位速度との偏差に対応した調整指令信号の出力は、吸引動作時において繰り返し実行されるため、薬液タンク27の水頭圧の変化に対して吸引用圧力の設定圧を追随させ易くなるとともに、吸引用圧力の設定圧の追随を薬液の吸引動作中において行うことが可能となる。
【0075】
また、位置検出センサ55は、仕切領域13aの位置が薬液の吸引が完了した位置となったか否か、すなわち吸引動作が完了したか否かをコントローラ60にて特定するために利用されるものであるため、当該位置検出センサ55の検出結果を利用して吸引用圧力を設定することで、既存の薬液供給システムに対するハード構成の変更点が少なくて済む。
【0076】
<第3の実施の形態>
本実施の形態では、薬液の吸引動作において薬液タンク27の水頭圧の影響を受けないようにするための構成が上記第1の実施の形態と異なっている。以下、その相違する構成について説明する。
【0077】
本実施の形態における薬液供給システムは、図1に示したものと基本的に同様となっている。但し、吸引用圧力の設定圧を決定する際に圧力センサ52の検出結果を利用することなく、さらに電空レギュレータ30の構成が異なっている。
【0078】
具体的には、図6に示すように、電空レギュレータ30の排気通路38の途中位置に流量センサ71が設けられている。流量センサ71が設けられていることにより、薬液供給ポンプ10の作動室15に吸引用圧力を付与して当該作動室15内の作動エアを吸引した際の当該作動エアの流量を検出することが可能となり、結果的に吸引用圧力を付与した際の作動室15の容積変化を把握することが可能となる。また、電空レギュレータ30には演算回路46に代えて、CPUや各種メモリ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成された電空側コントローラ72が設けられており、流量センサ71の検出結果は流量検出信号として電空側コントローラ72に入力される。そして、当該電空側コントローラ72にて、システム側のコントローラ60からの吸引指令信号の入力に基づき、吸引動作時における吸引用圧力の設定圧が決定される。
【0079】
図7は、電空側コントローラ72における薬液吸引時の演算処理の内容を示すブロック図である。
【0080】
目標変位速度読出部B11は上記第2の実施の形態における目標変位速度読出部B1と同様に、目標変位速度を読み出す。実変位速度算出部B12は、流量センサ71からの流量検出信号に基づいてダイアフラム13の仕切領域13aの変位量を算出する。そして、その算出した変位量の時間微分に基づき、仕切領域13aの実際の変位速度を算出する。
【0081】
偏差算出部B13は、目標変位速度と実変位速度との差を算出する。吸引用圧力算出部B14は、実変位速度を目標変位速度にフィードバック制御するための吸引用の操作量である吸引用圧力の設定圧の情報を算出する。そして、その算出された設定圧に基づいて排気用電磁弁44を制御し、仕切領域13aの実変位速度が目標変位速度となるようにし、結果的に吸引に要する時間が一定となるようにする。
【0082】
以上詳述した本実施の形態であっても、上記第1の実施の形態と同様に、薬液タンク27の水頭圧の影響を受けないようにして、吸引に要する時間を一定にすることが可能となる。また、電空レギュレータ30の構成を変更するだけでよい。
【0083】
<他の実施の形態>
本発明は上記各実施の形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施しても良い。
【0084】
上記第1の実施の形態において、作動室15の設定圧を大気圧とするとともに吸引バルブ23を開状態とした場合における圧力センサ52の正圧側のピーク値を、吸引用圧力の設定圧を決定するために利用するのではなく、例えば吸引バルブ23を開状態とした後の圧力の上昇率を算出し、その上昇率を利用して吸引用圧力の設定圧を決定するようにしてもよい。この場合、吸引用圧力の設定圧を早期に決定することが可能となるため、各回の吸引動作において要する時間を全体的に短縮することが可能となる。
【0085】
上記第1の実施の形態において、圧力センサ52の検出結果に基づいて水頭圧を推定するために設定する検出用の圧力は大気圧に限定されることはなく、薬液タンク27における薬液量の変動に伴う水頭圧の変動の度合いを読み取ることができるのであれば、所定の正圧又は所定の負圧であってもよい。但し、大気圧とした場合には、検出用圧力の設定の容易化を図ることが可能となる。つまり、電空レギュレータ30に大気開放させるためのポートと、当該ポートを出力通路に連通させる通路と、当該通路を開閉する電磁式の開閉弁とを備えた構成とした場合には、当該電磁式の開閉弁を開状態とするだけで、検出用圧力に設定することが可能となる。
【0086】
上記第1の実施の形態において、水頭圧の推定圧に従って吸引用圧力の設定圧を変動させる構成に代えて、水頭圧の推定圧が所定圧力以下となった場合には、薬液供給システムの動作を停止させる構成としてもよい。
【0087】
上記第1の実施の形態のように、作動室15に付与する圧力を検出用の圧力に設定した状態で吸引バルブ23を開放させ、その際に薬液が自身の水頭圧によりポンプ室14に流入してくることを利用して吸引用圧力の設定圧を決定するための作動量を得るという構成を、上記第2の実施の形態のように位置検出センサ55の検出結果に基づいて仕切領域13aの実変位速度を得る構成や、上記第3の実施の形態のように流量センサ71の検出結果に基づいて仕切領域13aの実変位速度を得る構成に適用してもよい。
【0088】
上記第2の実施の形態や上記第3の実施の形態において、薬液の吸引動作の過程で吸引用圧力の設定圧を連続的に変更させる構成に代えて、吸引用圧力の設定圧の変更がステップ状となるように断続的に変更させる構成としてもよい。また、目標変位速度と実変位速度との偏差に基づき吸引用圧力の設定圧を決定するのではなく、作動室15の容積変化の目標値と、位置検出センサ55や流量センサ71の検出結果に基づく容積変化の実変化値との偏差に基づき、吸引用圧力の設定圧を決定する構成としてもよい。
【0089】
上記各実施の形態において、コントローラ60や電空側コントローラ72にて、吸引用圧力の設定圧を決定するのではなく、排気用電磁弁44を開状態に保持する期間を決定する構成としてもよい。但し、排気用電磁弁44を開状態に保持する期間は、設定される吸引用圧力に対応しているため、当該構成であっても吸引用圧力の設定圧を決定していることになる。
【0090】
上記各実施の形態において、薬液供給ポンプ10は、薬液の吸引に際して負圧が付与される構成に限定されることはなく、例えばダイアフラム13を作動室15側の凹部寄りとなる位置に付勢するバネなどの付勢手段を設け、薬液の吐出時には作動室15に正圧が付与される一方、薬液の吸引時には作動室15が減圧される構成としてもよい。この場合であっても、その減圧させる設定圧を、上記各実施の形態のように薬液タンク27の水頭圧の影響を低減させるべく決定する構成とするとよい。また、例えば、薬液供給ポンプ10は、ダイアフラム13を薬液の吐出用に変位させる場合及び薬液の吸引用に変位させる場合のいずれであっても、作動室15に正圧が付与される構成としてもよい。この場合であっても、薬液の吸引時における正圧の設定圧を、上記各実施の形態のように薬液タンク27の水頭圧の影響を低減させるべく決定する構成とするとよい。
【0091】
上記各実施の形態において、薬液の吸引が完了したことを判断するための手法は、仕切領域13aの位置を検出する位置検出センサ55を利用する手法に限定されることはなく任意である。例えばダイアフラム13の仕切領域13aが吸引完了位置に配置された場合にONとなるスイッチを設け、そのスイッチがONとなったことを確認することで吸引動作が完了したと判断する構成としてもよい。また、吸引動作が完了するのに十分な吸引動作用時間が予め定められており、吸引動作を開始してからその吸引動作用時間が経過した場合に吸引動作が完了したと判断する構成としてもよい。このように吸引動作の管理が時間の計測を通じて行われる構成であったとしても、上記各実施の形態のように吸引に要する時間の一定化を図ることで、上記吸引動作用時間が経過するまでに薬液の吸引を完了することが可能となり、仮に何らかの原因で水頭圧が予想以上に低くなったとしても、薬液の吸引が未完のまま吐出動作に移行してしまうことを防止できる。
【0092】
上記各実施の形態において、薬液供給ポンプ10に設けられる容積可変部材はダイアフラム13に限定されることはなくベローズであってもよい。また、電空レギュレータ30は、負圧発生源として真空発生源36が設けられた構成に限定されることはなく、例えば供給源33から供給される圧縮気体を利用して負圧を発生させるエジェクタが設けられた構成としてもよい。また、電空レギュレータ30は比例制御式であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…薬液供給ポンプ、13…ダイアフラム、14…ポンプ室、15…作動室、23…吸引バルブ、27…薬液タンク、30…電空レギュレータ、43…給気用電磁弁、44…排気用電磁弁、46…演算回路、52…圧力センサ、55…位置検出センサ、60…コントローラ、71…流量センサ、72…電空側コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液タンクから薬液が充填されるポンプ室、及び容積可変部材により前記ポンプ室から仕切られてなる作動室を有し、当該作動室内の作動気体の圧力に応じて前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプと、
前記作動室に付与する気体圧力を吸引用圧力にすることで前記ポンプ室に薬液を吸引させる圧力調整手段と、
前記ポンプ室に通じる吐出通路側に設けられる吐出側開閉弁が閉状態であって、前記ポンプ室に通じる吸引通路側に設けられる吸引側開閉弁が閉状態である状況において、前記ポンプ室への薬液の充填を開始する場合に前記吸引側開閉弁を開状態に切り換える切換制御手段と、
前記吸引側開閉弁が開状態とされて前記ポンプ室への薬液の流入が開始された場合に、前記作動室に連通する空間又は前記作動室の気体圧力を検出する圧力検出手段と、
当該圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御する吸引制御手段と、
を備えていることを特徴とする薬液供給システム。
【請求項2】
前記吸引制御手段は、前記吸引側開閉弁が開状態とされて前記ポンプ室への薬液の流入が開始された場合の前記圧力検出手段の検出圧力が低いほど、その後の薬液の吸引に際しての吸引用圧力の設定圧も低い設定圧となるようにするものであることを特徴とする請求項1に記載の薬液供給システム。
【請求項3】
前記容積可変部材の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記切換制御手段は、前記位置検出手段の検出結果が、前記容積可変部材の位置が薬液の吸引が完了した位置となったことに対応した結果となった場合に、開状態から閉状態に切り換わるように前記吸引側開閉弁を制御するものであり、
前記吸引制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御することで、各回の吸引動作において前記容積可変部材の位置が前記完了した位置となるまでに要する時間が一定となるようにするものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液供給システム。
【請求項4】
前記圧力調整手段は、前記作動室への吐出用圧力の付与を阻止又は許容する第1開閉弁と、前記作動室への前記吸引用圧力の付与を阻止又は許容する第2開閉弁と、を備え、
前記吸引制御手段において前記吸引用圧力の設定圧を決定するための前記圧力検出手段における圧力の検出が完了するまでは、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁の両方を閉状態として、前記作動室に連通された空間及び当該作動室が閉空間となるようにするものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の薬液供給システム。
【請求項5】
前記吐出側開閉弁が閉状態であって前記吸引側開閉弁が閉状態である状況において、前記切換制御手段により前記吸引側開閉弁が開状態とされた際の前記ポンプ室への薬液の流入に伴う圧力の変動を前記圧力検出手段において検出可能とするような検出用圧力に、前記圧力調整手段の設定圧を制御する検出用制御手段を備え、
前記吸引制御手段は、前記検出用圧力に設定されている状況で前記吸引側開閉弁が開状態とされて前記ポンプ室への薬液の流入が開始された場合における前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の薬液供給システム。
【請求項6】
前記検出用圧力は、前記吸引側開閉弁が開状態となった際に前記薬液タンクの水頭圧により前記ポンプ室への薬液の流入を可能とする圧力であることを特徴とする請求項5に記載の薬液供給システム。
【請求項7】
前記圧力調整手段は、前記吸引制御手段により決定された前記吸引用圧力の設定圧と、前記圧力検出手段により検出された実圧力との偏差に基づいて、当該実圧力が前記設定圧となるように前記作動室に付与する圧力を調整するものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の薬液供給システム。
【請求項8】
薬液タンクから薬液が充填されるポンプ室、及び容積可変部材により前記ポンプ室から仕切られてなる作動室を有し、当該作動室内の作動気体の圧力に応じて前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプと、
前記作動室に付与する気体圧力を吸引用圧力にすることで前記ポンプ室に薬液を吸引させる圧力調整手段と、
前記ポンプ室に薬液が流入する場合における前記作動室の容積減少量に対して一義的に定まる作動量を、前記作動室へと通じる前記作動気体の流通経路側又は前記薬液供給ポンプにて検出する作動量検出手段と、
当該作動量検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力調整手段により前記作動室に付与される吸引用圧力を制御する吸引制御手段と、
を備えていることを特徴とする薬液供給システム。
【請求項9】
前記吸引制御手段は、前記ポンプ室に薬液が吸引される場合に、前記容積可変部材の変位速度を基準変位速度とするための基準値を設定するとともに、当該基準値と、前記作動量検出手段による検出結果から求めた数値との偏差に基づいて、当該求めた数値が前記基準値となるように前記圧力調整手段により調整される吸引用圧力の設定圧を制御するものであることを特徴とする請求項8に記載の薬液供給システム。
【請求項10】
前記ポンプ室に通じる吸引通路側に設けられる吸引側開閉弁を、前記ポンプ室に薬液を吸引する場合に開状態となるように制御するとともに、前記容積可変部材の位置が薬液の吸引が完了した位置となった場合に閉状態となるように制御する切換制御手段を備え、
前記作動量検出手段は、前記作動量として前記容積可変部材の位置を検出するものであって、前記切換制御手段において前記容積可変部材の位置が薬液の吸引が完了した位置となったことを把握する場合に用いられる位置検出手段であることを特徴とする請求項8又は9に記載の薬液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−208598(P2011−208598A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78702(P2010−78702)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】