説明

薬液処理装置

【課題】 被液処理材10を搬送する水平な向きの複数のローラー2、4を互いに平行に搬送方向(12)に沿って配置した搬送機構8の上側及び下側に薬液スプレー部16、18を備えた薬液処理装置において、上側と下側の表面における薬液による処理速度のアンバランスを、左右のアンバランスを伴うことなくなくし、更には、隣接する薬液スプレー部から供給された薬液相互の干渉をなくす。
【解決手段】 複数のローラー2、4が上記搬送方向(12)に行くに従って側方から視て波形の軌跡を描くように高さが変化せしめられている。
更に、下側の薬液スプレー部18が、前記波形の軌跡の内の略底部(谷部)に薬液を噴射する位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬液処理装置、特に被液処理材に対してスプレーによる薬液処理(例えばエッチング)を行う液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の製造技術として、両主表面に金属層を形成したフレキシブルな基板のその両主表面の金属層上に露光、現像処理を終えたドライフィルム状のレジスト膜を形成し、そのレジスト膜をマスクとしてその両主表面上の金属層をエッチングして、基板の両主表面上に配線膜を形成するという技術がある。
その技術には、上述したところから明らかなように、レジスト膜をマスクとして基板の両主表面上の金属層をエッチングする工程が必要であり、それには量産性に富んだエッチング装置が用いられる。本願出願人はそのようなエッチング装置について、例えば特願2003−276596(特開2005−36299)等により提案をしている。
【0003】
そして、従来の薬液処理装置は、一般に、側面(側方)から視た構造が、図2に示すように、被処理基板aを搬送する複数のローラーb、b、・・・は上記搬送方向に従って直線状の略水平な軌跡を描くように配置されていた。尚、c、c、・・・は被処理基板aにエッチング液を噴射するスプレー、d、d、・・・はエッチング液、e、e、・・・はスプレーc、c、・・から噴射されたエッチング液が有効に照射されるようにローラーb、b、・・・を配置しないようにしたローラー非配置部分、fは搬送方向である。
【特許文献1】特願平11−237684(特開2001−68826)
【特許文献2】特願2003−276596(特開2005−36299)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記図2に示す背景技術によれば、次のような問題があった。
先ず、第1に、被処理基板aの上側と下側とでエッチング速度が異なり、上側のエッチング速度が極端に遅くなり、その結果、エッチング深さが不均一になるという問題があった。
即ち、被処理基板aの上側の表面のエッチング速度が下側の表面のエッチング速度よりも遅くなるという傾向があるのである。また、被処理基板aの上側の表面においても中央部と、周辺部でエッチング速度が異なり、中央部でエッチング速度が遅くなり、周辺部では速くなるという傾向がある。
【0005】
その原因は、エッチング液溜まりが生じることに起因する。即ち、エッチングをスムーズに行うには、被処理基板aの表面に噴射されてエッチングを終えたエッチング液dを迅速に被処理基板a上から排除して常に新しいエッチング液dが被処理基板a上に供給されるようにすることが必要である。
しかし、被処理基板aの上側の表面においては、上のスプレーcからのエッチング液dが処理を終えても直ぐには被処理基板aから排除されず、中央部から周辺部上に移動して外に食み出して初めて被処理基板aから排除されるという現象が生じる。但し、周辺部に噴射されたエッチング液は比較的早く被処理基板aから外側に食み出るので、溜まり時間は短く、エッチング速度は中央部よりは速い。
【0006】
それに対して、被処理基板aの下側の表面においては、下のスプレーcから上向きに噴射されたエッチング液fは被処理基板a表面上を沿って移動する動きもするが、自重によって落下するので、上側の表面における場合よりも常に新しいエッチング液dが被処理基板a上に供給されるようにできるという傾向が強く、エッチング速度は速い。
このように、エッチング速度が不均一であるという問題があったのである。
第2に、被処理基板aの両主表面上において、隣接するスプレーc・cから噴出されたエッチング液同士が干渉し合うことによってエッチング深さ等のバラツキが生じるという問題もあった。
【0007】
即ち、一つのスプレーcから噴射されたエッチング液dの一部が被処理基板a上を移動してそれと隣接するスプレーc側に向かい、そのスプレーcから噴射されて被処理基板a上を移動するエッチング液dと混ざり、干渉し合うという現象が生じる。これは、エッチング深さ等のバラツキをもたらす原因になり、好ましくはないのである。
これに対しては、例えば特開2001−68826により、被処理基板たる銅張り積層板が、凸形状になるように湾曲させてエッチング加工するという対応技術が提案されている。
【0008】
しかしながら、この技術によれば、銅張り積層板の進行方向に沿って左右にエッチング液が流れるので、上面にエッチング液が留まらないという効果を得ることができる反面において、エッチング液の供給に関して左右のアンバランスが生じやすく、左と右との間にエッチング深さのアンバランスが生じるという問題があり、得策とは言えなかった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決すべく為されたものであり、被液処理材を搬送する略水平な向きの複数のローラーを互いに平行に搬送方向に沿って配置した搬送機構と、この搬送機構の上側及び下側に設けられ上記被液処理材の上側及び下側の表面に薬液を噴射する薬液スプレー部を備えた薬液処理装置において、上側と下側の表面における薬液による処理速度のアンバランスを、左右のアンバランスを伴わないようになくし、更には、隣接する薬液スプレー部から供給された薬液相互の干渉をなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の薬液処理装置は、被液処理材を搬送する略水平な向きの複数のローラーを互いに平行に搬送方向に沿って配置した搬送機構と、この搬送機構の上側及び下側に設けられ上記被液処理材の上側及び下側の表面に薬液を噴射する薬液スプレー部を備えた薬液処理装置であって、上記複数のローラーが上記搬送方向に行くに従って側方から視て波形の軌跡を描くように高さが変化せしめられ、上記上側に設けられた薬液スプレー部は、上記波形の軌跡の内の略頂部に薬液を噴射する位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の薬液処理装置は、請求項1記載の薬液処理装置において、前記搬送機構の下側に設けられ上記被液処理材の下側表面に薬液を噴射する薬液スプレー部が、前記波形の軌跡の内の略底部(谷部)に薬液を噴射する位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の薬液処理装置によれば、複数のローラーが上記搬送方向に行くに従って側方から視て波形の軌跡を描くように高さが変化せしめられ、上記上側に設けられた薬液スプレー部は、上記波形の軌跡の内の略頂部に薬液を噴射する位置に配置されているので、上側の薬液スプレー部から噴射された薬液は上記波形の軌跡の頂部に供給されるので、その波形の軌跡に沿って迅速に被液処理材上を移動し、その被液処理材上から食み出て廃棄される。
薬液がその軌跡の下り坂の部分を迅速に流れるので、自身が噴射された薬液スプレー部の隣接薬液スプレー部近傍まで移動することは難しく、その前に被薬液処理材上から外に食み出すので、従来存在していた上記干渉は生じにくくなり、延いては、干渉による不都合を顕著に軽減することができる。
【0013】
従って、被液処理材の上側表面に噴射されてエッチングを終えたエッチング液が迅速に被液処理材上から排除されて常に新しいエッチング液が被液処理材上に供給されるという現象が生じるようにでき、上側におけるエッチング速度を速めることができる。
また、被液処理材をその搬送方向に沿って進むに従って湾曲させるようなことはしないので、エッチングに関して左右のアンバランスが生じるおそれは全くない。
以上のことから、薬液のスプレー圧力の難しい調整が必要でなくなる。
【0014】
請求項2の薬液処理装置によれば、被液処理材の下側に薬液を噴射する薬液スプレー部が、前記波形の軌跡の内の略底部に薬液を噴射する位置に配置されているので、下側の各薬液スプレー部による薬液が上記波形の軌跡の底部(谷部)に当たる。
従って、薬液がその軌跡に沿って自身が噴射された薬液スプレー部の隣接薬液スプレー部まで移動することは、上り坂になるので難しく、その前に落下してしまう傾向がある。
依って、従来存在していた上記干渉は生じにくくなり、延いては、干渉による不都合を顕著に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、実施するための最良の形態は、ローラーを搬送すべき被液処理材の下側のみならず、上側にも配置するようにした形態、即ち、上下両側にローラーを配置した形態である。
また、被液処理材は、基板の両主表面上に配線膜等形成用金属層を有し、その両主表面の金属層の表面に例えばドライフィルム状のレジスト膜(露光、現像によるパターニング済み)を形成したものや、例えばエッチングバリアを成すニッケル膜の両面に銅層を形成した三層構造の金属薄板の表面に例えばドライフィルム状のレジスト膜(露光、現像によるパターニング済み)を形成したものが典型例である。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の詳細を図示実施例に基いて説明する。
図1(A)、(B)は本発明の一つの実施例を示すもので、(A)は断面図、(B)は平面図である。
2、2、・・・は下側ローラー、4、4、・・・はこの下側ローラー2、2、・・・の上側に一定の間隔を置いて配置された上側ローラー、6、6、・・・は各ローラー2、2、・・・及び4、4、・・・の支持軸であり、水平方向を向く向きで互いに平行になるように配置されている。この下側ローラー2、2、・・・及び上側ローラー4、4、・・・により搬送機構8が構成され、この搬送機構8により被処理基板(請求項1、2の被液処理材に該当する。)10を矢印12に示す方向に搬送することができる。
【0017】
この搬送機構8は、下側ローラー2、2、・・・及び上側ローラー4、4、・・・がそれぞれ側方から視て波形の軌跡を描くように高さが変化せしめられている。14、14、・・・は搬送機構8に設けられた非ローラー配置部で、下側ローラー2、2、・・・及び上側ローラー4、4、・・・を繋ぐことによる軌跡上に位置しながら、ローラーが配置されていない。このような非ローラー配置部14、14、・・・を設けるのは、次に述べる薬液スプレー部(16、16、・・・、18、18、・・・)により噴射された薬液(例えばエッチング液)が有効に被処理基板10上に供給されるようにするためである。
16、16、・・・は搬送装置8の上側に下向きに設けられた薬液スプレー部であり、上側の非ローラー配置部14、14、・・・に薬液20を噴射できる位置に設けられている。 18、18・・・は搬送装置8の下側に上向きに設けられた薬液スプレー部であり、下側の非ローラー配置部14、14、・・・に薬液20を噴射できる位置に設けられている。
【0018】
図1に示すような薬液処理装置によれば、下側ローラー2、2、・・・及び上側ローラー4、4、・・・が、上記搬送方向(矢印12参照)に行くに従って側方から視て波形の軌跡を描くように高さが変化せしめられており、上記上側に設けられた薬液スプレー部16、16、・・・が、上記波形の軌跡の内の略頂部にエッチング液(薬液)20を噴射する位置に配置されている。
従って、上側の薬液スプレー部16、16、・・・から噴射されたエッチング液20が上記波形の軌跡の頂部に供給されるので、矢印22に示すように波形の下り坂の軌跡に沿って迅速に被処理基板10上を迅速に移動し、その被理基板10上から食み出て廃棄される。
【0019】
従って、被処理基板10の上側表面に噴射されてエッチングを終えたエッチング液20が迅速に被処理基板10上から排除されて常に新しいエッチング液20が被処理基板10上に供給されるという現象が生じ、上側におけるエッチング速度を速めることができる。
また、薬液がその軌跡の下り坂の部分を迅速に流れるので、自身が噴射された薬液スプレー部の隣接薬液スプレー部近傍まで移動することは難しく、その前に被薬液処理材上から外に食み出すので、従来存在していた上記干渉は生じにくくなり、延いては、干渉による不都合を顕著に軽減することができる。
依って、従来存在していた、上側のエッチング速度が下側のエッチング速度より遅くなる等の問題を解決することができる。
また、被液処理材をその搬送方向に沿って進むに従って湾曲させるようなことはしないので、エッチングに関して左右のアンバランスが生じるおそれは全くない。
以上のことから、薬液のスプレー圧力の難しい調整が必要でなくなる。
【0020】
また、下側の薬液スプレー部18、18、・・・が、前記波形の軌跡の内の略底部に薬液を噴射する位置に配置されているので、下側の各薬液スプレー部18、18、・・・から噴出されたエッチング液(薬液)20が上記波形の軌跡の底部(谷部)に当たる。従って、エッチング液(薬液)がその軌跡に沿って自身が噴射された薬液スプレー部の隣接薬液スプレー部の近傍まで移動することは、上り坂になるので難しい。矢印24はその下側の薬液スプレー部18、18、・・・によるエッチング液20の流れを示しており、その矢印24による流れから明らかなように、干渉が生じる前に自重で落下する。
従って、従来存在していた上記干渉は生じにくくなり、延いては、干渉による前述の不都合を顕著に軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、被液処理材に対してスプレーによる薬液処理(例えばエッチング)を行う液処理装置、例えば、両面に配線膜形成用金属層を有する配線基板のその金属層の選択的エッチング、或いはバンプ形成用の金属層の一方の主面にエッチングバリア層を形成し、該エッチングバリア層の主表面に導体回路形成用の金属層を形成した三層構造の配線回路基板形成用部材の上記バンプ形成用金属膜のバンプを形成する選択的エッチング等に用いる薬液処理装置に産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)、(B)は本発明の一つの実施例を示すものであり、(A)は断面図、(B)は搬送機構の平面図である。
【図2】背景技術を示すところの薬液処理装置の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
2、4・・・ローラー、6・・・支持軸、8・・・搬送機構、
10・・・配線基板製造用部材、12・・・搬送方向、16、18・・・薬液スプレー部、
20・・・薬液(エッチング液)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被液処理材を搬送する略水平な向きの複数のローラーを互いに平行に搬送方向に沿って配置した搬送機構と、この搬送機構の上側及び下側に設けられ上記被液処理材の上側及び下側の表面に薬液を噴射する薬液スプレー部を備えた薬液処理装置であって、
上記複数のローラーが上記搬送方向に行くに従って側方から視て波形の軌跡を描くように高さが変化せしめられ、
上記上側に設けられた薬液スプレー部は、上記波形の軌跡の内の略頂部に薬液を噴射する位置に配置されている
ことを特徴とする薬液処理装置。
【請求項2】
前記搬送機構の下側に設けられ上記被液処理材の下側表面に薬液を噴射する薬液スプレー部が、前記波形の軌跡の内の略底部に薬液を噴射する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の薬液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−239501(P2006−239501A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56121(P2005−56121)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(598023090)株式会社ノース (9)
【出願人】(505388539)ソケットストレート,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】