薬物嗜癖および行動嗜癖を治療するためのイブジラストの使用
本発明は、薬物嗜癖および行動嗜癖を含めた嗜癖を治療するためのイブジラストの使用を対象とする。特にイブジラストは、嗜癖と関連するドーパミンが媒介する報酬を減少させ、嗜癖性薬物使用または嗜癖的行動を中止した後の離脱症候群を治療するために、使用される。本発明の1つの実施形態において、対象の側坐核のドーパミン放出を抑制する方法であって、イブジラストの有効量を対象に投与するステップを含む方法が、提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府の支援を受けた研究もしくは開発に関する宣言)
本発明は、the National Institute of Drug AbuseからのNIH助成金DA017670およびDA015642の下で支援を受けて行われた。したがって、米国政府は、本発明に対し一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、薬物嗜癖および行動嗜癖を治療する方法に関する。特に、本発明は、嗜癖性薬物および嗜癖的行動に反応して、対象が体験する報酬感と関連する側坐核におけるドーパミンの放出を抑制するために、オピエート依存などの嗜癖を、(本明細書においてAV411とも称する)イブジラストで治療する方法に関する。さらに、嗜癖性薬物使用または嗜癖的行動を中止した後の離脱症候群を治療するために、イブジラストを使用することができる。イブジラストは、オピエート離脱症候群を軽減し、オピエート耐性および離脱現象と関連している可能性があるオピエート誘発性の脳グリア細胞活性化を減弱させることが特に示されている。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
特定の薬物および強迫的行動の嗜癖性は、中枢神経系におけるドーパミンが媒介する強化/報酬経路の興奮と関連している(非特許文献1;非特許文献2)。通常ドーパミンは、哺乳動物が摂食およびセックスなどの生存に重要な行動を行うように動機付けるように機能する。しかし嗜癖を有する対象においては、ドーパミンは不適応行動を誘発させる。嗜癖を有する対象は、悪影響を経験するにも関わらず、ある物質を使用するか、ある行動を繰り返し行わざるを得ないように感じる。事実上全ての依存性薬物および強迫的行動は、哺乳動物の側坐核における細胞外ドーパミン濃度を増加させることが示されてきた。
【0004】
依存性薬物は、強迫的な薬物欲求および薬物探索行動によって特徴付けられるドーパミンが媒介する依存症を誘発する。世界保健機構(WHO)は、嗜癖性薬物を9つのグループに分類した。1.アルコール、2.アンフェタミン、3.バルビツレート、4.マリファナ、5.コカイン、6.幻覚剤、7.カート、8.オピエート、および9.有機溶剤である。ドーパミン経路の調節不全もまた、過度の食事、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、およびコンピュータ使用などの強迫的行動嗜癖と関連している(非特許文献3;Comingsら(1997年)2号:44〜56頁;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;および非特許文献12)。
【0005】
さらに、離脱症候群に伴う身体的および精神的依存は、嗜癖性薬物の使用および強迫的行動と関連する場合が多い。離脱は、薬物使用または強迫的行動の減少または中止による身体および行動上の症状の出現と定義される。行動の強化および報酬を媒介する通常の機序を侵害する、物質の連続使用または嗜癖的行動の繰返しに応答して中枢神経系で起きている変化を離脱は反映し、耽溺している個人が、重大な社会的、法律的、身体的および職業的影響にもかかわらず、薬物摂取または強迫的行動の繰返しを続けることの動機を与える。離脱の身体症状には、激しい欲求、被刺激性、不安、神経不安、不穏状態、集中力欠如、意識朦朧、不眠、振戦、空腹感の増大および体重増加、あくび、発汗、流涙、鼻漏、瞳孔散大、骨、背中および筋肉の痛み、立毛、ホットフラッシュおよびコールドフラッシュ、悪心、嘔吐、下痢、体重減少、熱、ならびに血圧、脈拍および呼吸数の増加が含まれ得る。
【0006】
オピオイド離脱症候群の管理は、未だ対処されていない臨床上の必要性として長い間認識されてきた。慢性疼痛は、世界中で3人に1人を超える成人を苦しめている。モルヒネなどのオピオイド化合物は、慢性疼痛の管理のための最前線の治療法である。慢性疼痛は、定義上何ヶ月(および患者の生命の残りまで)も持続するため、モルヒネおよび同様の化合物は、その上慢性的に与えられる場合がある。オピオイドは反復投与によって依存性を誘発するため、これは恐ろしい問題であり、患者が通常に機能するためにオピオイドの継続的投与が必要であることを意味する。オピオイドが中断された場合、およびオピオイドの連続的用量の間に一時的な遅れがあった場合も、患者は離脱に陥る。
【0007】
オピオイドは幅広い脳、脊髄および体組織に作用するため、オピオイドの作用および結果として起こる離脱の総体症状は様々である。離脱の兆候は一般に、オピオイドの作用の反対である。例えば、モルヒネは便秘をもたらし、離脱は下痢をもたらす。モルヒネは深部体温を下げ、離脱はそれを上げる。モルヒネは鎮静作用をもたらし、離脱は動揺をもたらす。離脱のさらなる兆候には、疼痛の増加、瞳孔散大、鳥肌、あくび、痙攣、筋肉痛、不穏状態、極めて強い不安、不眠、悪心および嘔吐、発汗、流涙、頻脈、ならびに血圧の上昇が挙げられる。
【0008】
あいにくにも、疼痛の減少はオピオイドが投与される理由であるが、本来の疼痛愁訴の領域において疼痛がオピオイドによって制御されないだけでなく、触覚刺激および温度刺激に対して全身が今や非常に敏感になり、通常の痛くない刺激を痛いと誤って解釈するように、離脱の間に疼痛は劇的に元に戻る。軽く触れることが痛みを伴う。暖かさおよび冷たさが痛みを伴う。(他の離脱の総体症状と共に)このように日常の感覚が、脅かすような疼痛に変わることによって、米国のみで何百万人もの人の生活が日常的に破壊されている。これによって、慢性的なオピオイド摂取者、オピオイドを中止する必要のある患者、および非合法な薬物使用から脱することを妨げ得る離脱症候群を避けることが望みである回復中の麻薬常用者において多大な苦痛が生じている。
【0009】
オピオイドのさらなる用量が不足する離脱の治療法が現在のところないという事実により問題は複雑となる。常用者は承知しているが、薬物のさらなる用量は問題を何ら解決せず、薬物の効果がまた再び減少するまでむしろ問題を隠すだけである。患者および常用者を離脱から切り抜けさせる現在のアプローチは、「禁断症状」、鎮静、および鎮痛を含めて悲惨なものである。「解毒」は、集中治療などの厳密な監視下にある環境において、全身麻酔またはベンゾジアゼピン鎮静作用下でナルトレキソン(オピオイド受容体アンタゴニスト)によって誘発される場合が多い。ナルトレキソンは、約6日間続く症状を伴う急性離脱を誘発する。健康な患者にのみ考慮される。ヒトを離脱から救い出す他の現在用いられている方法には、パラセタモールなどの非ステロイド性抗炎症薬、メトクロプラミドなどの制吐剤、ロペラミドなどの止瀉薬、不安および動揺を減少させるためのジアゼパム、不安、発汗、ならびに心拍数および血圧の変化を減少させるためのクロニジンの投与が含まれる。
【0010】
オピオイド離脱のための改善された治療の開発において、モルヒネを含めたオピオイドは、ニューロンのみに影響を与えるのではないことを考慮することが重要である。様々な脳および脊髄領域におけるオピオイド反応性ニューロンは、疼痛を抑え、深部体温を下げ、ホルモン放出を変化させ、その他(オピオイドの古典的作用)である一方、オピオイドは、グリアと称される非神経細胞タイプ(ミクログリア、星状細胞、オリゴデンドロサイト)にも影響を与えることが最近見出された。モルヒネおよび他のオピオイドは、グリアを活性化する。グリア特異的活性化マーカーの上方制御からも明らかなように、この活性化は繰り返されるオピオイド投与に伴って増大する。このようなグリア活性化がモルヒネ耐性の一因となることは、グリア阻害剤をモルヒネと共に同時投与することによりモルヒネ耐性の進行を乱すという知見によって裏付けられる。グリア活性化の減少は、モルヒネ耐性の進行を乱すための治療的なアプローチとして有用であり得るという結果になる。非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19。
【0011】
オピオイドが誘導する進行性グリア活性化によって、グリアによる炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン−1(IL−1)、腫瘍壊死因子(TNF)、およびインターロイキン−6(IL−6)を含めた神経興奮性物質の放出をもたらす。炎症誘発性または抗炎症性物質のモルヒネとの同時投与を伴う実験によって示されるように、これらの神経興奮性物質は、モルヒネなどのオピオイドの鎮痛作用を打ち消し、離脱の総体症状を促進する。例えば、それ自体では行動への影響がない用量で、IL−1をマウスの脳脊髄液に注入すると、全身性モルヒネの鎮痛効果を遮断する。同様に、モルヒネおよび(IL−1が作用を発揮するのを妨げる)IL−1受容体アンタゴニスト、またはモルヒネおよび(炎症誘発性サイトカインの産生、放出および効力を下方制御する)抗炎症性サイトカインIL−10の脊髄送達は、モルヒネ鎮痛の程度および期間を増加させる。実際、モルヒネ鎮痛が確立し、次いでそれが消失すると、IL−1受容体アンタゴニストを注入することによって強力な鎮痛を急速に回復させることができる。これは、鎮痛の消失が、モルヒネの鎮痛効果の消失によるよりはむしろ疼痛を増大させる炎症誘発性サイトカインの活性によってもたらされることを示している。
【0012】
他のオピオイドの活性もまた、グリア活性化によって妨げられ得る。グリアおよび炎症誘発性サイトカインは、少なくとも部分的に非古典的オピオイド受容体を介して、メタドンの鎮痛効果を損なうことが研究により示されている(非特許文献20)。これらの結果は、グリアおよび炎症誘発性サイトカインは、メタドン離脱、およびおそらく同様に他のオピオイドからの離脱に関与していることを示唆する。オピオイド間の交差耐性は、オピオイドで慢性疼痛を治療する全ての試みを妨げるグリアの疼痛促進系の活性化によって説明し得るため、これらのデータはまた、グリア活性化の臨床上の意義を拡大させる。
【非特許文献1】Abbott(2002年)Nature419号:872〜874頁
【非特許文献2】Montagueら(2004年)Nature431号:760〜767頁
【非特許文献3】Comingsら(2000年)Prog.Brain Res.126号:325〜341頁
【非特許文献4】Blumら(2000年)J.Psychoactive Drugs32号suppl:i〜iv、1〜112頁
【非特許文献5】Potenza(2001年)Semin.Clin.Neuropsychiatry6号:217〜226頁
【非特許文献6】Gianoulakis(1998年)Alcohol Health Res.World22号:202〜210頁
【非特許文献7】Bowirratら(2005年)Am.J.Med.Genet.B Neuropsychiatr.Genet.132号:29〜37頁
【非特許文献8】Di Chiara(2005年)Physiol.Behav.86号:9〜10頁
【非特許文献9】Frankenら(2005年)Appetite45号:198〜201頁
【非特許文献10】Wangら(2004年)J.Addict Dis.23号:39〜53頁
【非特許文献11】Aamodt(1998年)Nature Med.4号:660頁
【非特許文献12】Koeppら(1998年)Nature393号:266〜268頁
【非特許文献13】Watkins, L.R.ら(2005年)Trends in Neuroscience28号:661〜669頁
【非特許文献14】Gul, H.ら(2000年)Pain89号:39〜45頁
【非特許文献15】Johnston, I.N.ら(2004年)J.Neurosci.24号:7353〜65頁
【非特許文献16】Raghavendra, V.ら(2002年)J.Neurosci22(22)号:9980〜89頁
【非特許文献17】Raghavendra, V.ら(2004年)Neuropsychopharmacology29(2)号:327〜34頁
【非特許文献18】Shavit, Y.ら(2005年)Pain115号:50〜59頁
【非特許文献19】Song, P.およびZhao, Z.Q.(2001年)Neurosci.Res.39号:281〜86頁
【非特許文献20】Watkins, L.R.ら(2005年)Trends Neurosci.28号:661〜669頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
要約すれば、オピオイドはグリアを興奮させ、それは次にオピオイドの作用に対抗する(炎症誘発性サイトカインなどの)神経興奮性物質を放出し、オピオイド処置の中止に伴う離脱症候群を生じさせる。このようなグリア活性化を抑制する化合物は、オピオイド離脱を治療する有益で新規な治療法であろう。
【0014】
薬物嗜癖および行動嗜癖を治療する改良された化合物、組成物、および方法に対する必要性が存在する。特に、常用者の欲求と関連するドーパミンが媒介する「報酬」を減弱させまたは止め、薬物使用または強迫的行動の中止後の離脱症候群の症状を軽減する薬物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
1つの態様によれば、本発明は、イブジラストの有効量を対象に投与するステップを含む、対象の側坐核のドーパミン放出を抑制する方法を提供する。
【0016】
特定の実施形態では、対象は嗜癖を有する。特定の実施形態では、嗜癖は薬物嗜癖、例えば、オピエート、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、カンナビノイド、アルコール、またはニコチン嗜癖である。他の実施形態では、嗜癖は行動嗜癖、例えば、摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、またはコンピュータ使用嗜癖である。
【0017】
特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、イブジラストは、例えば、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、舌下または他の全身的経路によって全身的に投与される。他の実施形態では、イブジラストは中枢に、例えば、くも膜下腔内に投与される。特定の実施形態では、イブジラストの複数回の治療有効用量が対象に投与される。特定の実施形態では、イブジラストは毎日の投与計画に従って投与される。特定の実施形態では、イブジラストは1日2回投与される。特定の実施形態では、イブジラストは間欠的に投与される。
【0018】
他の態様では、本発明は、それを必要としている対象にイブジラストの治療有効量を投与するステップを含む、嗜癖を治療する方法を提供する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、対象の嗜癖関連行動を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、対象における薬物への嗜癖と関連する欲求を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、対象における薬物への耐性を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、対象における薬物または嗜癖的行動に関連する刺激の誘因突出(incentive salience)を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、対象における離脱症候群の症状を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、対象における体重減少を緩和し、または解消する方法を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、対象におけるグリア細胞活性化を減少させ、または解消する方法を提供する。特定の実施形態では、ミクログリア活性化は、対象において減少し、または解消する。特定の実施形態では、星状細胞活性化は、対象において減少し、または解消する。特定の実施形態では、対象の脳において、例えば、対象の脳の中脳水道周囲灰白質または三叉神経核領域において、薬物誘発性のCD11b増加が減少する。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、対象における炎症誘発性サイトカイン発現の薬物誘発性の増加を減少させ、または解消する方法を提供する。特定の実施形態では、炎症誘発性サイトカインは、インターロイキン−1である。特定の実施形態では、炎症誘発性サイトカイン発現は、対象の脳内で減少する。特定の実施形態では、インターロイキン−1発現は、対象の脳の中脳水道周囲灰白質の背側領域において減少する。
【0027】
特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、イブジラストは全身的に、例えば、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、舌下または他の全身的経路によって投与される。他の実施形態では、イブジラストは中枢に、例えば、くも膜下腔内に投与される。特定の実施形態では、イブジラストの複数回の治療有効用量が対象に投与される。特定の実施形態では、イブジラストは毎日の投与計画に従って投与される。特定の実施形態では、イブジラストは1日2回投与される。特定の実施形態では、イブジラストは間欠的に投与される。
【0028】
特定の実施形態では、嗜癖は、薬物嗜癖、例えば、オピエート、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、カンナビノイド、アルコール、またはニコチン嗜癖である。他の実施形態では、嗜癖は、行動嗜癖、例えば、摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、またはコンピュータ使用嗜癖である。
【0029】
特定の実施形態では、イブジラストは、嗜癖を治療するための1種またはそれより多くの他の薬剤との併用療法において使用される。いくつかの実施形態では、1種またはそれより多くの薬剤は、鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、抗うつ剤、および不眠治療剤からなる群から選択される。様々な実施形態において、1種またはそれより多くの薬剤は、ブプレノルフィン、ナロキソン、メタドン、酢酸レボメタジル、L−αアセチルメタドール(LAAM)、ヒドロキシジン、ジフェノキシレート、アトロピン、クロルジアゼポキシド、カルバマゼピン、ミアンセリン、ベンゾジアゼピン、フェノジアジン、ジスルフィラム、アカンプロサート、トピラメート、オンダンセトロン、セルトラリン、ブプロピオン、アマンタジン、アミロリド、イスラジピン、チアギャビン、バクロフェン、プロプラノロール、デシプラミン、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、ドキセピン、フルオキセチン、イミプラミン、モクロベミド、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、トリプトファン、ベンラファキシン、トラゾドン、クエチアピン、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、ガバペンチン、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される。
【0030】
他の態様では、本発明は、1回またはそれより多くの用量のイブジラストを投与することによる、哺乳動物対象においてオピオイド離脱症候群を治療する方法に関する。一実施形態では対象はヒトである。
【0031】
他の実施形態では、オピオイドは、モルヒネ、メタドン、およびフェンタニルからなる群から選択される。一実施形態では、オピオイドはモルヒネである。いくつかの実施形態では、オピオイド離脱症候群は、対象におけるオピオイド投与の減少または中止によってもたらされる。他の実施形態では、オピオイド離脱症候群は、ナロキソンまたはナルトレキソンなどのオピオイドアンタゴニストの投与によってもたらされる。
【0032】
一実施形態では、イブジラストは、全身的に、例えば、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、舌下または他の全身的経路によって投与される。他の実施形態では、イブジラストは、中枢に、例えばくも膜下腔内に投与される。
【0033】
他の実施形態では、イブジラストは、オピオイド離脱の治療のための1種またはそれより多くの他の薬剤と共に併用療法において使用される。いくつかの実施形態では、1種またはそれより多くの薬剤は、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、およびベンゾジアゼピンからなる群から選択される。様々な実施形態において、1種またはそれより多くの薬剤は、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される。
【0034】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書における開示に鑑みて、当業者であれば容易に想定し得るであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当分野の技術の範囲内の、化学、生化学、および薬理学の従来の方法を用いる。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、A.L.Lehninger、Biochemistry(Worth Publishers, Inc.、現版);MorrisonおよびBoyd、Organic Chemistry(Allyn and Bacon, Inc.、現版);J.March、Advanced Organic Chemistry(McGraw Hill、現版);Remington:The Science and Practice of Pharmacy、A.Gennaro、Ed.、20版;Goodman & Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J.Griffith Hardman、L.L.Limbird、A.Gilman、10版を参照されたい。
【0036】
I 定義
本発明を説明し、特許請求することにおいて、下記の定義による下記の用語法を使用する。
【0037】
本明細書および意図する特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」「an」および「the」は、文脈が明らかにその他のことを指示しない限り、複数の指示物を含むことに留意しなくてはならない。したがって、例えば、「薬物(a drug)」という言及は、単独の薬物、および同じまたは異なる薬物の2種以上を含み、「任意選択の賦形剤(an optional excipient)」という言及は、単独の任意選択の賦形剤、および同じまたは異なる任意選択の賦形剤の2種以上を意味する、などである。
【0038】
「医薬として許容される賦形剤または担体」とは、本発明の組成物中に任意選択に含まれてもよく、患者に重大な有害な毒性学的影響をもたらさない賦形剤を意味する。
【0039】
「医薬として許容される塩」には、これらだけに限らないが、アミノ酸塩;塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、および硝酸塩などの無機酸で調製される塩;またはリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸およびステアリン酸などの有機酸で調製される塩;ならびにエストレート塩、グルセプテート塩およびラクトビオン酸塩が挙げられる。同様に、医薬として許容されるカチオンを含有する塩には、それだけに限らないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、および(置換アンモニウムを含めた)アンモニウムが挙げられる。
【0040】
本明細書に記載される「活性分子」または「活性剤」には、in−vivoまたはin vitroで示すことができる有益な場合が多い何らかの薬理効果を提供する任意の薬剤、薬物、化合物、組成物または混合物が含まれる。これには、食物、栄養剤、栄養素、栄養補助食品、薬物、ワクチン、抗体、ビタミン、および他の有益な薬剤が含まれる。本明細書で使用する場合、この用語には、患者において局所的または全身作用を生じさせる任意の生理的または薬理学的活性物質がさらに含まれる。
【0041】
「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼ全くまたは完全、例えば、ある一定量の95%以上を意味する。
【0042】
「任意選択の」または「任意選択に」とは、説明した状況が、その後に起こる場合があり、または起こらない場合があり、その結果、説明には、その状況が起こる場合の例、およびその状況が起こらない場合の例が含まれることを意味する。
【0043】
「中枢神経系」または「CNS」という用語には、脊椎動物の脳および脊髄の全ての細胞および組織が含まれる。したがって、この用語には、これらだけに限らないが、神経細胞、グリア細胞(星状細胞、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)、脳脊髄液(CSF)、間質腔などが含まれる。
【0044】
「対象」、「個人」または「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を意味する。哺乳動物には、それだけに限らないが、ネズミ、げっ歯類、サル、ヒト、家畜、運動競技用動物およびペットが挙げられる。
【0045】
「約」という用語は、特に一定量に関して、プラスまたはマイナス5%の偏差を包含することを意味する。
【0046】
「嗜癖」という用語は、側坐核中の細胞外ドーパミン濃度を増加させる、強迫的な薬物の使用または繰返し行動と本明細書において定義される。嗜癖は、それだけに限らないが、覚醒剤、麻薬性鎮痛薬、アルコールおよびニコチンなどの嗜癖性のアルカロイド、カンナビノイド、またはこれらの組合せが挙げられる、薬物に対するものであり得る。例示的な覚醒剤には、それだけに限らないが、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミン、フェンメトラジン、ジエチルプロピオン、メチルフェニデート、コカイン、フェンシクリジン、メチレンジオキシメタンフェタミンおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。例示的な麻薬性鎮痛薬には、それだけに限らないが、アルフェンタニル、α−プロジン、アニレリジン、ベジトラミド、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、イソメタドン、レボメソルファン、レボルファノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、アヘン抽出物、アヘン液体抽出物、粉末アヘン、顆粒状アヘン、生アヘン、アヘンチンキ、オキシコドン、オキシモルホン、ペチジン、フェナゾシン、ピミノジン、ラセメソルファン、ラセモルファン、テバインおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。嗜癖性薬物にはまた、バルビツレートなどの中枢神経系抑制薬、クロルジアゼポキシド、ならびにエタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールなどのアルコールも挙げられる。嗜癖という用語にはまた、行動嗜癖、例えば、強迫的摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、およびコンピュータ使用が挙げられる。
【0047】
嗜癖を患っている対象は、嗜癖関連行動;薬物嗜癖の場合は、物質を使用する欲求、または行動嗜癖の場合は、行動を繰り返すという抗し難い衝動;望ましくない結果(例えば、健康、人間関係、および経済状態への悪影響、失業、または収監)にも関わらず薬物使用または強迫的行動を止めることができないこと;ドーパミン放出と関連する報酬/誘因作用;薬物または行動に関連する刺激の突出;依存性;耐性;またはそれらの任意の組合せを経験する。
【0048】
薬物嗜癖に関する嗜癖関連行動には、物質への依存性によって特徴付けられる、薬物の強迫的使用からもたらされる行動が含まれる。その行動の症候は、(i)薬物の使用への抗し難い関わり、(ii)その供給の確保、および(iii)離脱後の再発の高い確率である。
【0049】
組成物または薬剤の「有効量」または「医薬有効量」という用語は、本明細書において提供する場合、対象の側坐核のドーパミン放出抑制または対象におけるグリア活性化抑制、および任意選択で対応する治療効果などの、所望の反応を実現する無毒性ではあるが十分な量の組成物を意味する。必要な正確な量は、対象の種、年齢および全身状態、治療される状態の重篤度、用いられる特定の薬物または複数の薬物、投与方法など次第で、対象毎に異なるであろう。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、通常の実験を使用して当業者によって決定し得る。
【0050】
イブジラストの「治療有効用量または量」とは、イブジラストが本明細書に記載するように投与された場合、薬物または行動嗜癖の治療において、対象の嗜癖関連行動を減少または解消し、対象における薬物または行動への嗜癖と関連する欲求を減少または解消し、対象における薬物への耐性を減少または解消し、対象における薬物または行動に関連する刺激の誘因突出を減少または解消し、および/あるいは対象による嗜癖性薬物使用または嗜癖的行動の減少または中止による離脱の症状を減少または解消するような、肯定的な治療反応をもたらす量を意図する。
【0051】
II 本発明を実施するモード
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定の製剤またはそれ自体が当然ながら変わり得るプロセスパラメーターに限定されることを意図しないことを理解すべきである。本明細書において使用する用語は、本発明の特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定的なものではないことも理解される。
【0052】
本明細書に記載するものと類似または同等のいくつかの方法および材料を本発明の実施において使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書に記載する。
【0053】
本発明は、イブジラストで安全および効果的に嗜癖を治療する新規な治療方法の発見に基づいている。本発明の方法は、常用者における欲求および強迫的行動と関連する、側坐核におけるドーパミン放出を減少させる。本発明の方法は、対象において嗜癖関連行動を減少させまたは解消し、離脱症候群の症状を軽減するのに特に有用である。
【0054】
本発明の理解を深めるために、イブジラストで嗜癖を治療する方法に関してより詳細な議論を下記に提供する。
【0055】
イブジラストによる嗜癖の治療
側坐核におけるドーパミン放出は、嗜癖と関連する薬物使用および強迫的行動を動機付ける「報酬」を媒介すると考えられる。1つの態様によれば、本発明は、イブジラストの有効量を含む組成物を対象に投与するステップを含む、対象の側坐核のドーパミン放出を抑制する方法を提供する。
【0056】
本出願において、イブジラストが側坐核のドーパミン放出を抑制することを示した。実施例3に示すように、in vivo微小透析によって測定した場合、イブジラストは、モルヒネで処置したラットの側坐核においてドーパミン放出を抑制する。さらに、イブジラストは、ラットにおけるナロキソン誘発性のモルヒネ離脱行動サインを抑制する。
【0057】
したがって、本発明は、嗜癖を治療するためのイブジラストの使用に関し、ならびに特に、嗜癖と関連するドーパミンが媒介する「報酬」を減弱させ、または止め、したがって対象の嗜癖と関連する欲求、ならびにそれに伴う嗜癖関連行動および離脱症候群を減少させ、または解消するためのイブジラストの使用に関する。
【0058】
特定の実施形態では、イブジラストの治療有効量を、薬物嗜癖を治療するために対象に投与することができる。対象は、それだけに限らないが、覚醒剤、麻薬性鎮痛薬、アルコールおよびニコチンなどの嗜癖性のアルカロイド、カンナビノイド、またはこれらの組合せが挙げられる1種またはそれより多くの薬物を常習している場合がある。例示的な覚醒剤には、それだけに限らないが、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミン、フェンメトラジン、ジエチルプロピオン、メチルフェニデート、コカイン、フェンシクリジン、メチレンジオキシメタンフェタミンおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。例示的な麻薬性鎮痛薬には、それだけに限らないが、アルフェンタニル、α−プロジン、アニレリジン、ベジトラミド、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、イソメタドン、レボメソルファン、レボルファノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、アヘン抽出物、アヘン液体抽出物、粉末アヘン、顆粒状アヘン、生アヘン、アヘンチンキ、オキシコドン、オキシモルホン、ペチジン、フェナゾシン、ピミノジン、ラセメソルファン、ラセモルファン、テバインおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。嗜癖性薬物にはまた、それだけに限らないが、バルビツレート、クロルジアゼポキシド、ならびにエタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールなどのアルコールが挙げられる中枢神経系抑制薬も含まれる。
【0059】
他の実施形態では、イブジラストの治療有効量を、行動嗜癖を治療するために対象に投与することができる。行動嗜癖には、それだけに限らないが、強迫的摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、およびコンピュータ使用を挙げることができる。
【0060】
特定の実施形態では、イブジラストは、嗜癖を治療するために1種またはそれより多くの他の薬剤と共に併用療法において使用される。このような薬剤には、それだけに限らないが、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、抗うつ剤、および不眠治療剤が挙げられる。例示的な薬剤には、それだけに限らないが、ブプレノルフィン、ナロキソン、メタドン、酢酸レボメタジル、L−αアセチルメタドール(LAAM)、ヒドロキシジン、ジフェノキシレート、アトロピン、クロルジアゼポキシド、カルバマゼピン、ミアンセリン、ベンゾジアゼピン、フェノジアジン、ジスルフィラム、アカンプロサート、トピラメート、オンダンセトロン、セルトラリン、ブプロピオン、アマンタジン、アミロリド、イスラジピン、チアギャビン、バクロフェン、プロプラノロール、デシプラミン、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、ドキセピン、フルオキセチン、イミプラミン、モクロベミド、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、トリプトファン、ベンラファキシン、トラゾドン、クエチアピン、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、ガバペンチン、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムが挙げられる。
【0061】
イブジラストによるオピエート離脱の治療
本発明はまた、オピオイド依存症および離脱を治療するための新規な抗炎症的アプローチにも関し、特に、モルヒネ離脱の有効な治療上の処置としてのイブジラストの使用に関する。モルヒネ離脱の臨床症状は、部分的に、中枢神経系におけるグリア活性化からもたらされると考えられている(Naritaら(2006年)Nature Neuropsychopharmacology1〜13頁)。イブジラストは、グリア細胞活性化を下方制御する能力を有する抗炎症剤である。Mizunoら(2004年)Neuropharmacology 46号:404〜411頁;Suzumuraら(1999年)Brain Res.837号:203〜212頁;Wakitaら;(2003年)Brain Res.992号:53〜59頁。イブジラストの全身(例えば、経口)または中枢(例えば、くも膜下腔内)投与は、モルヒネ離脱を減弱させ、それによって良好な治療法の選択肢があまりない状態の有効な治療を提供する新規なアプローチを提供する。
【0062】
イブジラストは、炎症性細胞(例えば、グリア細胞)の作用を介して炎症を抑制するように作用し、炎症誘発性メディエーターおよび向神経活性メディエーター両方の放出の抑制をもたらす。(全身投与された)イブジラストについて、いくつかの他の臨床適応症において広範囲に亘って調査されてきたが、これまでにモルヒネ離脱の緩和には提案されてこなかった。
【0063】
益々多くの文献が、繰り返されるモルヒネ処置は、グリア細胞(ミクログリア、星状細胞)活性化をもたらす場合があり、このような活性化はモルヒネ耐性および離脱と関連するイベントの続発症の一因となり得ることを示唆する。
【0064】
いくつかの刺激は、グリアを活性化する。それらは、免疫攻撃、感染症および/または末梢性炎症、持続性のニューロンからニューロンへの伝達の間に放出される物質(例えば、神経伝達物質、一酸化窒素、プロスタグランジン、サブスタンスP、フラクタルカインなど)、ニューロン損傷(例えば、フラクタルカイン、熱ショックタンパク質、細胞壁構成成分)などである。グリア機能は活性化によって劇的に変化し、神経活性物質の放出増加をもたらす。このようなイベントは、神経機能の変化をもたらすと考えられており、その徴候は、神経変性から、疼痛促進、モルヒネ依存性の増感およびその後の離脱症候群に亘る。WatkinsおよびMaier(2002年)Physiol.Rev.82号:981〜1011頁;WatkinsおよびMaier(2004年)Drug Disc.Today:Ther.Strategies1(1)号:83〜88頁など。
【0065】
本発明によれば、この望ましくないグリア活性化を減少させるためにイブジラストを使用することができる。イブジラストは、全身投与される場合、血液脳関門を越え(Sugiyamaら(1993年)No To Shinkei45(2)号:139〜42頁、本明細書の図2も参照されたい)、モルヒネ依存性および離脱の病因に関与する炎症の中枢部位に到達するために、より侵襲的な投与方法の必要性がなくなる。ミノサイクリンおよびフルオロクエン酸などの特定の薬剤は、グリア活性化を妨げる活性を有し得るが、ヒトの治療には許容できない。フルオロクエン酸は、正常なCNS恒常性の維持におけるグリアの本質的な機能である興奮性アミノ酸のグリア取り込みを遮断する可能性があり(Berg−Johnsenら(1993年)Exp.Brain Res.96(2)号:241〜6頁)、フルオロクエン酸の長期または増加した用量は発作の原因となるため許容できない。Willoughby J.O.ら(2003年)J.Neurosci.Res.74(1)号:160〜66頁;Hornfeldt, C.S.およびLarson, A.A.(1990年)Eur.J.Pharmacol.179(3)号:307〜13頁。ミノサイクリンは、グリア活性化の防止に有用であり得るが、現存する状態を逆行させることができないようである。Raghavendraら(2003年)J.Pharmacol. and Exp.Therapeutics306号:624〜30頁;Ledeboer, A.ら(2005年)Pain115号:71〜83頁。
【0066】
総合すれば、グリアおよびその炎症誘発性または神経調節性産物は、モルヒネ離脱を制御するための新しい戦略の機会を提供し得る。本発明の一実施形態では、イブジラストは、炎症誘発性サイトカインおよび神経調節性物質の放出を遮断するために使用される。イブジラストは、グリア活性化の強力なサプレッサーである。Mizunoら(2004年)Neuropharmacology46号:404〜11頁。イブジラストは用量依存的に、一酸化窒素(NO)、反応性酸素種、インターロイキン(IL)−1β、IL−6、および腫瘍壊死因子(TNF)の産生を抑制し、阻害性サイトカインであるIL−10、ならびに神経成長因子(NGF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、および活性化ミクログリア中のニューロトロフィン(NT)−4を含めた、さらなる神経栄養因子の産生を高める。
【0067】
本発明の一実施形態では、イブジラストは、モルヒネ離脱症候群の治療のために、ヒト対象において全身的にまたはくも膜下腔内に投与される。
【0068】
他の実施形態では、イブジラストは、モルヒネ離脱の神経病理的な要素を減弱させるために、全身(例えば、経口)または中枢(例えば、くも膜下腔内)経路で投与される。
【0069】
さらなる情報は、下記の刊行物において入手可能である。Obernolte, R.ら(1993年)Gene129号:239〜47頁;Rile, G.ら(2001年)Thromb.Res.102号:239〜46頁;Souness, J.E.ら(1994年)Br.J.Pharmacol.111号:1081〜88;Suzumura, A.ら(1999年)Brain Res.837号:203〜12頁;Takuma, K.ら(2001年)Br.J.Pharmacol.133号:841〜848頁。
【0070】
イブジラストはまた、包括的なオピオイド離脱治療プロトコルの一部として、1種またはそれより多くの他の薬剤と組み合わせても投与し得る。このような薬剤には、それだけに限らないが、下記の薬剤が挙げられる。
【0071】
ナルトレキソン(17−(シクロプロピルメチル)−4,5α−エポキシ−3,14−ジヒドロキシモルヒナン−6−オン、CAS番号16676−29−2(HCl))は、分子式C20H23NO4および分子量341.4を有する。
【0072】
メトクロプラミド(4−アミノ−5−クロロ−N−(2−ジエチルアミノエチル)−2−メトキシベンズアミド、CAS番号364−62−5)は、分子式C14H22ClN3O2および分子量299.8を有する。
【0073】
ロペラミド(4−[4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジル]−N,N−ジメチル−2,2−ジフェニルブタンアミド、CAS番号53179−11−6)は、分子式C29H33ClN2O2および分子量477.04を有する。
【0074】
ジアゼパム(10−クロロ−6−メチル−2−フェニル−3,6−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−2,8,10,12−テトラエン−5−オン、CAS番号439−14−5)は、分子式C16H13ClN2Oおよび分子量284.74を有する。
【0075】
クロニジン(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−2−イミダゾリン塩酸塩、CAS番号4205−90−7)は、分子式C9H9Cl2N3HClおよび分子量266.56を有する。
【0076】
アセトアミノフェンとも称されるパラセタモール(N−(4−ヒドロキシフェニル)エタンアミド、CAS番号103−90−2)は、分子式C8H9NO2および分子量151.2を有する。
【0077】
嗜癖治療用医薬組成物
イブジラスト
イブジラストは、下記に示される構造を有する小分子薬物(分子量230.3)である。
【0078】
【化1】
イブジラストはまた、ChemBank ID3227、CAS#50847−11−5、およびBeilstein Handbook Reference No.5−24−03−00396でも見出される。その分子式は、[C14H18N2O]に相当する。イブジラストはまた、2−メチル−1−(2−(1−メチルエチル)ピラゾロ(1,5−a)ピリジン−3−イル)1−プロパノン;3−イソブチリル−2−イソプロピルピラゾロ(1,5−a)ピリジン];および1−(2−イソプロピル−ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イル)−2−メチル−プロパン−1−オンを含めた様々な化学名によっても知られている。イブジラストの他の異名には、Ibudilastum(ラテン語)、BRN0656579、KC−404、およびブランド名Ketas(登録商標)が挙げられる。本明細書において言及する場合、イブジラストは、投与のためのその意図した製剤における使用に適した、任意および全ての医薬として許容されるその塩の形態、プロドラッグ形態(例えば、対応するケタール)などが含まれることが意図されている。
【0079】
イブジラストは、非選択的ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(PDE−3、PDE−4、PDE−10、およびPDE−l1に対して最も活性を有し(Gibsonら(2006年)Eur. J. Pharmacology538号:39〜42頁))、LTD4およびPAFアンタゴニスト活性を有することもまた報告されてきた。そのプロファイルは、他のPDE阻害剤および抗炎症剤と比較して、効果的に抗炎症性で独特であると思われる。PDEは、3’−炭素でのリン酸エステル結合の加水分解を触媒して、対応する5’−ヌクレオチド一リン酸を生じさせる。したがって、それらは環状ヌクレオチドの細胞内濃度を調節する。多くのホルモンおよび神経伝達物質の細胞外受容体は、環状ヌクレオチドをセカンドメッセンジャーとして使用するため、PDEもまた、これらの細胞外シグナルへの細胞応答を制御する。11のPDEファミリーが存在する。Ca2+/カルモジュリン依存性PDE(PDE1)、cGMP刺激PDE(PDE2)、cGMP阻害PDE(PDE3)、cAMP特異的PDE(PDE4)、cGMP結合PDE(PDE5)、光受容体PDE(PDE6)、高親和性cAMP特異的PDE(PDE7)、特異的PDE(PDE8)、高親和性cGMP特異的PDE(PDE9)、ならびにcAMPおよびcGMP混合PDE(PDE10、PDE11)である。
【0080】
前述したように、任意の1種またはそれより多くの本明細書に記載される薬物、特にイブジラストに対する参照は、適用可能な場合は、エナンチオマー、ラセミ混合物を含めたエナンチオマーの混合物、プロドラッグ、医薬として許容される塩の形態、水和物(例えば、一水和物、二水和物など)、異なる物理的形態(例えば、結晶性固体、アモルファス固体)、代謝物などのいずれかおよび全てを包含することを意味する。
【0081】
製剤成分
賦形剤/担体
本発明の組成物は、イブジラストに加えて、1種またはそれより多くの医薬として許容される賦形剤または担体をさらに任意選択で含み得る。例示的な賦形剤には、これらだけに限定されないが、炭水化物、デンプン(例えば、コーンスターチ)、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、結合剤/充填剤、界面活性剤、滑沢剤(例えば、カルシウムまたはステアリン酸マグネシウム)、タルクなどの流動促進剤、崩壊剤、希釈剤、緩衝液、酸、塩基、フィルムコーティング、これらの組合せなどが挙げられる。
【0082】
本発明の組成物には、1種またはそれより多くの炭水化物(糖、アルジトールなどの誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーなど)を含み得る。特定の炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類;ならびにマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。
【0083】
また本発明の組成物における使用に適したものは、ジャガイモおよびトウモロコシをベースとするデンプン(デンプングリコール酸ナトリウムなど)、および直接圧縮可能な変性デンプンである。
【0084】
さらなる代表的な賦形剤には、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびこれらの組合せなどの無機塩または緩衝液が挙げられる。
【0085】
本発明のイブジラストを含有する組成物にはまた、例えば、微生物増殖を防止または阻止するための抗菌剤も挙げられ得る。本発明に適した抗菌剤の非限定的実施例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0086】
本発明の組成物にはまた、1種またはそれより多くの抗酸化剤も含有し得る。抗酸化剤は、酸化を防止し、それによって薬物、または調製物の他の成分の劣化を防止するために使用される。本発明において使用される適切な抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0087】
さらなる賦形剤には、ポリソルベート、例えば、「Tween20」および「Tween80」などの界面活性剤、ならびにF68およびF88などの(両方ともBASF、Mount Olive、New Jerseyから入手可能)プルロニック、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、およびホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質)、脂肪酸および脂肪エステル、コレステロールなどのステロイド、ならびにEDTA、亜鉛および他のこのような適当なカチオンなどのキレート剤が挙げられる。
【0088】
さらに、本発明の組成物には、1種またはそれより多くの酸または塩基が任意選択で含まれ得る。使用することができる酸の非限定的実施例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されるそれらの酸が挙げられる。適切な塩基の例には、これらだけに限定されないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される塩基が挙げられる。
【0089】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の役割、活性剤成分の投与量要件、および組成物の特定の必要性によって変化するであろう。通常、任意の個々の賦形剤の最適量は、通常の実験によって、すなわち、異なる量の賦形剤(低量から高量の範囲)を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメーターを調べた後、有意な有害作用がなく最適な性能が得られる範囲を決定することによって決定される。
【0090】
しかし一般に、賦形剤は、組成物中に賦形剤の約1%〜約99重量%、好ましくは約5%〜約98重量%、さらに好ましくは約15〜約95重量%の量で存在するであろう。一般に、本発明のイブジラスト組成物中に存在する賦形剤の量は、下記から選択される。少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはさらに95重量%である。
【0091】
これらの上記の医薬賦形剤は、他の賦形剤と共に、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、19版、Williams & Williams、(1995年)、「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics、Montvale、NJ(1998年)、およびKibbe,A.H.、Handbook of Pharmaceutical Excipients、3版、American Pharmaceutical Association、Washington、D.C.、2000年に記載されている。
【0092】
他の活性物質
本発明による製剤(またはキット)は、イブジラストに加えて、嗜癖の治療に有効な1種またはそれより多くのさらなる活性剤を含有し得る。好ましくは、活性剤はイブジラストの作用機序とは異なる作用機序を有するものである。このような活性物質には、ナルトレキソン、メトクロプラミド、ロペラミド、ジアゼパム、クロニジン、ロフェキシジン、およびパラセタモールが挙げられる。
【0093】
持続送達製剤
組成物は、イブジラストの安定性を向上させ、半減期を延長するために製剤されることが好ましい。例えば、イブジラストは、持続放出製剤中で送達され得る。制御放出製剤または持続放出製剤は、リポソーム;エチレン酢酸ビニルコポリマーおよびHytrel(登録商標)コポリマーなどの非吸収性不透過性ポリマー;ヒドロゲルなどの膨潤性ポリマー;またはコラーゲンおよび特定のポリ酸などの吸収性ポリマー;または吸収性縫合糸を作製するために使用されるものなどのポリエステルなどの、担体あるいはビヒクルに、イブジラストを組み込むことによって調製される。さらに、イブジラストは、特定の担体にカプセル化し、吸収させ、または結合させることができる。特定の担体の例には、ポリメチルメタクリレートポリマーから誘導される担体、およびポリ(ラクチド)およびPLGとして知られるポリ(ラクチド−co−グリコリド)から誘導される微粒子が含まれる。例えば、Jefferyら、Pharm. Res.(1993年)10号:362〜368頁;およびMcGeeら、J Microencap.(1996年)を参照されたい。
【0094】
送達形態
本明細書に記載するイブジラスト組成物は、全てのタイプの製剤、特に、全身投与またはくも膜下腔内投与に適しているものを包含する。経口剤形には、錠剤、ロゼンジ、カプセル剤、シロップ剤、経口懸濁剤、乳剤、顆粒剤、および小丸剤が挙げられる。別の製剤には、エアロゾル剤、経皮パッチ、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、坐薬、再構成できる散剤または凍結乾燥剤、および溶剤が挙げられる。例えば、注入の前に固体組成物を再構成するのに適した希釈剤の例には、注入用静菌性水、水中の5%デキストロース、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびこれらの組合せが挙げられる。液体医薬組成物に関しては、溶剤および懸濁剤が考慮される。
【0095】
ここで経口送達製剤に移ると、錠剤は、任意選択で1種またはそれより多くの補助成分または添加剤と共に、圧縮または成形によって作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)および/または界面活性剤または分散剤と任意選択に混合した、散剤または顆粒剤などの易流動性形態の活性成分を、例えば、適切な打錠機で圧縮することによって調製される。
【0096】
成形錠剤は、例えば、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な打錠機で成形することにより作製される。錠剤は、任意選択にコーティング、または刻み目を付けてもよく、例えば、所望の放出プロファイルを実現するため様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、活性成分の持続放出または制御放出を実現するように製剤してもよい。錠剤は、薄膜、糖衣、または腸溶性コーティングなどのコーティングを任意選択で施し、胃以外の消化管の部分での放出をもたらすようにしてもよい。錠剤およびカプセル剤製造のための方法、装置、および委託製造者は、当技術分野において周知である。
【0097】
口腔内への局所投与用製剤には、一般にスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの風味付けされた基剤中に活性成分を含むロゼンジ、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性な基剤中の活性成分を含む香錠が含まれる。
【0098】
局所投与のための医薬組成物はまた、軟膏、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤または油剤としても製剤し得る。
【0099】
あるいは、製剤は、パッチ(例えば、経皮パッチ)、あるいは活性成分および任意選択で1種もしくは複数の賦形剤または希釈剤を含浸させた包帯または絆創膏などの包帯剤の形態でよい。局所用製剤には、2〜3例を挙げると、ジメチルスルホキシド、ビサボロール、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、およびD−リモネンなどの、皮膚または他の患部を通しての成分の吸収または浸透を高める化合物がさらに挙げられる。
【0100】
乳剤では、油相は、公知の方法により公知の成分から構成される。この相は、単に乳化剤を含み得る(他の場合では、エマルジェントとしても知られる)が、少なくとも1種類乳化剤と、脂肪および/または油との混合物を含むことが望ましい。親水性乳化剤は、安定剤の機能を果たす親油性乳化剤と共に含まれることが好ましい。合わせて、安定剤の有無に関係なく、乳化剤はいわゆる乳化ろうを構成し、そのろうは油および/または脂肪と組み合わせて、いわゆる乳化軟膏基剤を構成し、これがクリーム製剤の油分散相を形成する。例示的なエマルジェントおよびエマルジョン安定剤には、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0101】
直腸内投与用製剤は、例えば、カカオバターまたはサリチラートを含む適切な基剤を有する、通常坐剤の形態である。
【0102】
膣内投与に適した製剤は一般に、坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤の形態をとる。
【0103】
担体が固体である経鼻投与に適した製剤には、例えば、約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗末が挙げられる。このような製剤は通常、例えば、鼻の近くに掲げた粉末の容器からの、鼻腔を通しての迅速な吸入により投与される。あるいは、経鼻送達のための製剤は、液体形態、例えば、スプレー式点鼻薬または点鼻薬であり得る。
【0104】
吸入用のエアロゾル化製剤は、(例えば、ドライパウダー吸入器による投与に適した)乾燥粉末形態でよく、またはあるいは、例えば、噴霧器での使用のための液体形態でよい。エアロゾル化溶液を送達するための噴霧器には、AERx(商標)(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、およびAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)が挙げられる。本発明の組成物はまた、医薬的に不活性な液体噴射剤、例えば、クロロフルオロカーボンまたはフルオロカーボン中に、本明細書に記載する薬物の組合せの溶剤または懸濁剤を含有する、加圧定量吸入器(MDI)、例えば、Ventolin(登録商標)定量吸入器を使用しても送達され得る。
【0105】
非経口投与に適した製剤には、注入に適した水性および非水性の等張滅菌溶剤、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁剤が挙げられる。
【0106】
本発明の非経口製剤は、単位用量または複数用量の密封容器、例えば、アンプルおよびバイアルに任意選択に含有され、注入のために使用直前に、滅菌液体担体、例えば水の添加のみが必要であるフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時注入剤および懸濁剤は、前述のタイプの、滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製し得る。
【0107】
本発明の製剤はまた、非持続放出製剤と比較した場合、薬物成分の各々が、時間と共にゆっくりと放出または吸収されるような持続放出製剤でもよい。持続放出製剤は、活性剤のプロドラッグ形態、リポソームまたはポリマーマトリックスなどの遅延放出薬物送達システム、ヒドロゲル、あるいはポリエチレングリコールなどのポリマーの活性剤への共有結合を使用し得る。
【0108】
特に上述の成分に加えて、本発明の製剤には、医薬分野において一般的なその他の薬剤が任意選択で含まれる場合があり、例えば経口投与形態では、特定の製剤のタイプが使用される場合があり、経口投与用組成物にはまた、甘味料、増粘剤または香味剤などのさらなる薬剤も含まれる場合がある。
【0109】
本発明の組成物はまた、獣医学の用途に適した形態で調製してもよい。
【0110】
投与方法
以上の説明から明らかなように、嗜癖を治療するイブジラストをベースとする治療製剤送達の好ましい方法には、全身送達および局所送達、すなわち、中枢神経系への直接の送達が含まれる。このような投与経路には、それだけに限らないが、経口、動脈内、くも膜下腔内、筋内、腹腔内、皮下、静脈内、鼻腔内、および吸入経路が挙げられる。
【0111】
より詳細には、本発明のイブジラストを含有する製剤は、これらだけに限らないが、経口、直腸内、経鼻、局所(経皮、エアロゾル、口腔および舌下を含めた)、膣内、非経口(皮下、筋内、静脈内および皮内を含めた)、くも膜下腔内、および肺を含めた、任意の適切な経路によって治療のために投与され得る。摂取者の状態と年齢、治療されている特定の神経痛関連症候群、および用いられる薬物の特定の組合せによって、好ましい経路は当然ながら異なるであろう。
【0112】
イブジラスト送達のための1つの好ましい投与方法は、定位注入によるなどの当技術分野で公知の神経外科技術を使用した、針、カテーテルまたは関連する装置による、例えば、脳室領域への、ならびに線条体(例えば、線条体の尾状核または被殻)、脊髄および神経筋接合部への注入によって、例えば、脊髄グリア細胞を標的とした、末梢神経、網膜、後根神経節、神経筋接合部などの神経組織、ならびにCNSへの直接投与である(例えば、Steinら、J.Virol.73号:3424〜3429頁、1999年;Davidsonら、PNAS97号:3428〜3432頁、2000年;Davidsonら、Nat.Genet.3号:219〜223頁、1993年;およびAliskyおよびDavidson、Hum. Gene Ther.11号:2315〜2329頁、2000年を参照されたい)。
【0113】
脊髄グリアを標的にする特に好ましい方法は、髄組織自体への送達ではなく、くも膜下腔内送達による。
【0114】
本発明のイブジラストをベースとする組成物を投与する他の好ましい方法は、例えば、硬膜外腔への注入に続く後根神経節(DRG)への拡散による、DRGニューロンへの送達である。例えば、イブジラストをベースとする組成物は、イブジラストがDRGへ拡散する条件下で、くも膜下腔内カニューレ挿入によって送達することができる。例えば、Chiangら、Acta Anaesthesiol.Sin.(2000年)38号:31〜36頁;Jain、K.K.、Expert Opin.Investig.Drugs(2000年)9号:2403〜2410頁を参照されたい。
【0115】
CNSへのさらに別の投与方法は、対流増加送達(CED)系を使用する。このようにして、イブジラストを、CNSの広い領域に亘って多くの細胞に送達することができる。任意の対流増加送達装置が、イブジラストの送達に適切となり得る。好ましい実施形態では、この装置は、浸透圧ポンプまたは注入ホンプである。浸透圧および注入ホンプの両方とも、種々の供給業者、例えば、Alzet Corporation、Hamilton Corporation、Alza、Inc.(Palo Alto、California)から市販されている。通常、本発明のイブジラストをベースとする組成物は、CED装置を介して下記のように送達される。カテーテル、カニューレまたは他の注入装置を、選択した対象のCNS組織に挿入する。定位地図および位置決め装置は、例えばASI Instruments、Warren、MIから入手可能である。選択した標的に注入装置を誘導するのに役立つCTおよび/またはMRI画像により得られる解剖地図を使用することにより、位置決めがまた実施され得る。CED送達についての詳細な説明については、米国特許第6,309,634号を参照されたい。
【0116】
本発明のイブジラスト組成物は、複数の活性剤を含む場合は、イブジラスト、および嗜癖を治療するのに有効な少なくとも1種類のさらなる活性剤の組合せを含む、単一の複合組成物として投与し得る。患者の薬剤服用順守および投与の容易さの観点から、このようなアプローチが好ましいが、これは治療期間に亘って、複数の錠剤または剤形を、多くの場合は一日に複数回摂取することに患者が反対することが多いためである。あるいは、あまり好ましくないが、本発明の組合せが、個別の剤形として投与される。本発明の治療組成物を含む薬物が個別の剤形として投与され、同時投与が必要な場合は、イブジラストおよびさらなる各活性剤は、同時に、任意の順番で連続的に、または別々に投与され得る。
【0117】
キット
本明細書においてまた提供するのは、使用説明書が添付している、少なくとも1種類の本発明の複合組成物を含有するキットである。
【0118】
例えば、薬物自体の各々が個々または分離した剤形として投与される場合、キットは、使用説明書と共に、本発明の組成物を構成する薬物の各々に加えてイブジラストを含む。薬物成分の各々の投与方法が包装に明示されている限り、投与説明書と共に考慮すると、薬物成分は投与に適切な任意の方法で包装され得る。
【0119】
例えば、イブジラストおよびナルトレキソンを含む例示的なキットでは、キットは、任意の適切な期間、例えば1日単位で分類され得る。一例として、代表的なキットは、1日目として、イブジラストおよびナルトレキソンの各々の単位用量を含み得る。薬物の各々を1日2回投与する場合は、キットは、1日目に対応して、投与時期の説明と共に、イブジラストおよびナルトレキソン各々の2列の単位剤形を含み得る。あるいは、1種またはそれより多くの薬物が、組合せにおいて他の薬物の構成要素と比べて投与する単位剤形の時期または量が異なる場合、包装および説明にこのような内容が反映される。上記に従った様々な実施形態は、容易に想像することができ、当然ながら、イブジラストに加えて治療のために用いられる薬物の特定の組合せ、それらの対応する剤形、推奨用量、所期の患者集団などによるであろう。包装は医薬品の包装に一般に用いられる任意の形態でよく、様々な色、包装材、いたずら防止包装、ブリスターパック、乾燥剤などのいくつかの特徴のいずれかを利用し得る。
【0120】
投与量
治療量は、経験的に決定することができ、治療される特定の状態、対象、ならびに組成物中に含まれる活性剤の各々の効力および毒性によって変わるであろう。実際に投与される用量は、対象の年齢、体重および全身症状、ならびに治療される状態の重篤度、医療専門家の判断、ならびに投与される特定の組合せによって変わるであろう。
【0121】
治療有効量は当業者が決定することができ、各々の特定の事例の必要性によって調節されるであろう。一般に、イブジラストの治療有効量は、例えばヒトにおいては、約0.1〜500mg/日、さらに好ましくは、1〜200mg/日、1〜100mg/日、1〜40mg/日、または1〜20mg/日の量の1日総投与量の範囲であろう。投与は、1日から数日、数週間、数カ月、およびさらに数年の時間経過に亘って、1日1〜3回の場合があり、患者の生涯に亘ることさえあり得る。
【0122】
事実上、本発明の任意の所与の組成物または活性剤の単位用量は、臨床医の判断、患者の必要性などによって、種々の投与スケジュールで投与することができる。特定の投与スケジュールは、当業者に公知であろうし、または通常の方法を用いて実験的に決定することができる。例示的な投与スケジュールには、これらだけに限らないが、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回の投与などが挙げられる。
【0123】
III 実験
下記は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。実施例は例示の目的のみのために提示し、何ら本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0124】
使用する数字(例えば、量、温度など)について正確性を確保するための努力を行ってきたが、いくらかの実験誤差および偏差は、当然ながら許容すべきである。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
ラットにおけるイブジラストの薬物動態および組織分布
イブジラストの薬物動態、ならびに血漿、筋肉、脳、および脊髄への分布を下記のように評価した。
【0126】
実験手順
ラットへの投与のためのイブジラストを、15%エタノール/生理食塩水中で調製した。薬物安定性および濃度を、HPLC/MS/MSによって確認した。
【0127】
病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラット(280〜350g、Harlan Labs)を全ての実験で使用した。ラットを、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23+/−3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。明サイクルの間に行動試験を実施した。
【0128】
ラット(n=3/群)に、イブジラスト5mg/kgをi.p.投与し、血漿、筋肉、脳、および脊髄を、投与後5分、15分、60分、180分、および420分に回収した。組織試料中のイブジラスト濃度を下記の通り決定した。イブジラスト(Haorui)0.5mg/mlのDMSO溶液を常用標準のストック溶液として使用した。各0.5mg/mlストックを、ラット血漿で5000ng/ml(5μl+495μl)に1対100に希釈し、次いで血漿による3倍段階希釈によって2.29ng/mlにさらに希釈することによって血漿中の校正標準を調製した。各々、低、中および高QC試料として標準を使用した。
【0129】
25μlの血漿を、内部標準としてジフェンヒドラミン50ng/mlおよびデキストロメトルファン100ng/mlを含有する3容(75μl)の氷冷アセトニトリルで沈殿させることによって、HPLC注入のための、校正標準、QCおよび血漿試験試料を調製した。組織1mg当たり1μlの水、ならびに内部標準としてジフェンヒドラミン50ng/mlおよびデキストロメトルファン100ng/mlを含有する(水に対して)3容の氷冷アセトニトリルを加え、次いで電動ホモジナイザーでホモジナイズすることによって、HPLC注入のための、組織試験試料を調製した。30分間の6100gでの遠心分離に続いて、各々の上清40μlを、水中の0.2%ギ酸200μlで希釈し、下記のLC/MS/MS条件で分析した。
HPLC:Shimadzu VPシステム
移動相:水中の0.2%ギ酸(A)およびメタノール(B)
カラム:2×10mm Peeke Scientific DuraGel G C18ガードカートリッジ
注入量:100μl
グラジエント:0.75分の洗浄の後、5〜95%Bを2分間
流量:400μl/分
質量分析計:Applied Biosystems/MDS SCIEX API3000
インターフェイス:TurboIonSpray(ESI)、400℃
イオン化モード:陽イオン
Q1/Q3イオン:イブジラスト(IBUDILAST)で231.2/161.2
結果
図1に示すように、イブジラストの腹腔内投与は、二相性にCmaxから低下する良好な血漿濃度を生じた。イブジラストは、末梢(例えば、筋肉)および中枢(例えば、脳および脊髄)組織に十分に分布していた。血漿およびCNS組織における最大濃度(Cmax)は、記載されたように製剤されたイブジラスト〜5mg/kgのi.p.投与後に、〜1μg/mlであった。排出半減期は、全ての組織区画で100〜139分の範囲であった。
【0130】
(実施例2)
モルヒネ離脱のラットモデルにおけるイブジラストの効力
約1週間続く試験を行って、モルヒネ離脱行動の程度および期間を減少させるためのイブジラスト併用療法の可能性を評価した。
【0131】
実験手順
イブジラストは、Sigma(St.Louis、MO)またはHaorui Pharma(Edison、NJ)から、純粋粉末として入手し、腹腔内(i.p.)投与用溶液として毎日調製した。他の神経モデルにおける従前の範囲決定のための認容性および効力試験によって、イブジラストは、複数日に亘り1日2回(bid)15mg/kgまでの用量段階で腹腔内においてよく許容されることが示された。腹腔内投与後のイブジラストの効力は、経口治療などの他の全身投与経路を代表した。適切な量のイブジラストを、100%ポリエチレン(PEG)400(Sigma)に溶解し、次いで滅菌した生理食塩水中で35%PEG400の最終濃度まで希釈した(注入用に0.9%)。
【0132】
イブジラストを、2.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中で2.8mg/mlを0.9ml/kg)、または7.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中で2.8mg/mlを2.7ml/kg)、毎朝(通常午前9時)および毎午後(通常午後4時)に投与した。薬物安定性および濃度を、HPLC/MS/MSによって確認した。
【0133】
病原体がない成体雄Sprague−Dawleyラット(280〜350g、Harlan Labs)を全ての実験において使用した。ラットを、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23+/−3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。明サイクルの間に行動試験を実施した。全ての手順について、コロラド大学の動物実験委員会の承認を得た。
【0134】
(皮下注射による)モルヒネ処置のスケジュールは以下の通りであった。1日目:1000時に5mg/kg、1300時に5mg/kg、1700時に5mg/kg、2日目:1000時に5mg/kg、1700時に12.5mg/kg、3日目:1000時に15mg/kg、4日目:1000時に17.5mg/kg、5日目:1000時に5mg/kg、1200時に17.5mg/kg。
【0135】
ラットは、上記のスケジュールに従ってモルヒネ、さらに下記のスケジュールに従って、生理食塩水(n=4)、PEGビヒクル(n=5)、(「低用量」)イブジラスト2.5mg/kg(n=4)、または(「高用量」)イブジラスト7.5mg/kg(n=5)のいずれかを与えられた。モルヒネ開始の2日前:毎日1000時および1700時;モルヒネ投与計画の1〜4日目:毎日1000時および1700時;モルヒネ投与計画の5日目:1000時および1200時。次いで、ラットは、5日目のモルヒネおよび/またはイブジラスト、生理食塩水、あるいはビヒクルの最後の投与後45分の1245時に、ナロキソン5mg/kgを与えられた。
【0136】
測定した離脱の徴候は、(1)異常な姿勢(動物は、その腹部および下顎をケージの床に押し付ける)、(2)探索(動物は、ケージの中を周り、その頭を色々な方向に押し付け、周囲を調べる)、(3)ジャンプ、(4)クリーニング(毛づくろい)、(5)立ち上がり(動物は、前足を上に上げて、後足で立つ)。10分間の観察中の5種類の決まった行動全ての発生率を、下記のスケールに従ってスコア化した。0=何も示さない、1=1〜5の行動エピソード、2=6〜10の行動エピソード、3=11〜15の行動エピソード、4=16〜20の行動エピソード、5=21以上の行動エピソード。
【0137】
ナロキソン誘発性離脱が開始した直後に、60分に亘り10分間の区分で盲検観察者によって離脱スコアを測定した。各々の個々のラットについて、ナロキソン投与後1〜10分、11〜20分、21〜30分、31〜40分、41〜50分、51〜60分で観察結果を集め、6つの時点とした。図2A〜2Dにおいて、実験群内の全ての動物の(各時点での)平均スコアを、「総離脱スコア」として報告した。
【0138】
結果
図2A〜2Dは、イブジラスト処置は、ナロキソン誘発性モルヒネ離脱症候群の伝統的な生理的徴候の程度および期間の両方を減少させるのに有効であったことを示す。生理食塩水対照(図2A)と比較して、PEGビヒクルは、これらの行動への作用を有さなかったが、イブジラストは、これらの行動について用量依存的減少を示した(図2B〜2D)。生理食塩水対照(図2C)と比較して、低用量のイブジラスト(2.5mg/kg)は作用を示さなかったが、高用量のイブジラスト(7.5mg/kg)は、離脱の行動サインを著しく減弱させた(図2B、図2Dにおいては棒グラフとして示す)。
【0139】
(実施例3)
側坐核におけるドーパミン放出のイブジラストによる抑制
実験手順
側坐核におけるドーパミン放出は、依存性薬物と関連する「報酬」を媒介すると考えられている。in vivoの微小透析によって測定すると、イブジラストは側坐核におけるドーパミン放出を抑制した。5日間に亘り、ラット(6ラット/群)に、実施例1に記載したモルヒネ投与計画を用いて、全身性イブジラスト(7.5mg/kg b.i.d.)を全身性モルヒネと同時投与した。6日目の朝、ベースライン試料採取開始の1時間前に、ラットはイブジラストを与えられた。3回のベースライン試料採取の後(試料採取間の20分の間隔)、モルヒネを全てのラットに投与した。180分の間20分の間隔で透析試料を回収した。行動離脱およびモルヒネ誘発性ドーパミンの逆行を試験するために、60分の試料採取時間が完了した後、全てのラットに、オピオイドアンタゴニストであるナロキソンを投与した。
【0140】
結果
図3に示すように、モルヒネに反応した側坐核へのドーパミンの放出抑制によって明らかなように、イブジラストで処置したラットは、有意に抑制された「報酬」の指標またはメディエーターを示した。イブジラストは、ドーパミンの基礎レベルを減少させなかった。オピオイドアンタゴニストであるナロキソンは、モルヒネ誘発性ドーパミン放出を逆行させた。これはドーパミン放出が実際にモルヒネの作用によっていたことを示す。イブジラストおよびモルヒネを連続して同時投与されたラットは、PEG−生理食塩水ビヒクルおよびモルヒネを連続投与されたラットと比較して、ナロキソン誘発性行動離脱の徴候の抑制を示した(図4を参照されたい)。
【0141】
結論
脳内微小透析ドーパミン濃度および同時に起こるオピエート離脱行動反応の両方の結果は、ラットのイブジラスト処置によって、報酬または突出の神経化学的メディエーター(ドーパミン)、およびオピエート依存の行動的発現が有意に減少することを示す。このような結果は、イブジラストは、複数の形態の依存症の治療に有用であろうということを意味する。
【0142】
(実施例4)
イブジラストはモルヒネ依存症の進行および中枢のグリア細胞活性化を緩和する
実験手順
ラット(n=10/群)は、実施例2において記載したスケジュールに従ってモルヒネ、さらに下記のスケジュールに従って、生理食塩水、PEGビヒクル、(「低用量」)イブジラスト2.5mg/kg、または(「高用量」)イブジラスト7.5mg/kgのいずれかを与えられた。モルヒネ開始の2日前:毎日1000時および1700時、モルヒネ投与計画の1〜4日目:毎日1000時および1700時、モルヒネ投与計画の5日目:1000時および1200時。次いで、ラットは、5日目のモルヒネおよび/またはイブジラスト、生理食塩水、あるいはビヒクルの最後の投与後45分の1245時に、ナロキソン5mg/kgを与えられた。
【0143】
離脱行動のスコア化の後に、動物に50mg/mlのペントバルビタールナトリウム0.8mlの腹腔内注射を与え、麻酔をかけると、動物を経心的に灌流した。各処置群の半分を生理食塩水で灌流し、半分を4%パラホルムアルデヒドで灌流した。脊髄および脳を回収した(タンパク質およびmRNA定量化のための生理食塩水潅流、および免疫組織化学のためのパラホルムアルデヒド潅流)。生理食塩水で灌流した動物から回収した試料は、液体窒素中で急速冷凍し、−80℃で保存した。パラホルムアルデヒドで灌流した試料は、4%パラホルムアルデヒド中で48時間保存し、次いで組織切断まで30%スクロース(0.1%アジド)に移した。
【0144】
OX−42(補体受容体3、例えば、CD11bを認識する抗体)および/またはグリア線維酸性タンパク質(GFAP)の免疫活性、ミクログリアおよび星状細胞活性化マーカーを、各々評価した。切片(20μm)をトリス緩衝生理食塩水(TBS)中の0.3%H2O2によって20分間室温で処理し、内因性ペルオキシダーゼ活性を抑制した。次いで切片を一晩4℃にて、2%正常ヤギ血清および0.5%Triton−X−100と共に、TBS中のモノクローナルマウス抗ラットOX−42(1:100、Pharmingen、San Diego、CA)またはモノクローナルマウス抗ラットGFAP抗体(1:200、Chemicon、Temecula、CA)中でインキュベートした。引き続いて、切片を適切なビオチン化二次抗体(1:400、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)と室温で2時間インキュベートし、アビジン−ビオチン複合体溶液(ABC、1:200、Vector Laboratories、Burlingame、CA)中で室温にて2時間インキュベートし、3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB、Sigma)0.5mg/mlと反応させた。最後に、切片を乾燥、脱水し、Permountを用いてカバーガラスをかけた。光学顕微鏡で染色を評価した。次いで、免疫組織化学染色のデンシトメトリーを、コンピュータソフトウェア(NIH image)を使用して評価した。
【0145】
QUANTITECT SYBR GREEN PCRキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、MYIQ単色リアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)のICYCLER IQ96ウェルPCRプレート(Bio−Rad、Hercules、CA)中で、cDNAの増幅を行った。反応混合物(26μl)は、1×QUANTITECT SYBR GREEN PCRマスターミックス(蛍光色素SYBRグリーンI、2.5mMのMgCl2、dNTPミックス、およびHOTSTART Taq DNAポリメラーゼを含有)、10nMのフルオレセイン、各500nMのフォワードおよびリバースプライマー、25ngのcDNAおよびヌクレアーゼ非含有H2Oから構成された。反応を3通り行った(n=3〜6動物/群)。反応条件は、95℃で最初15分、次いで94℃15秒を40サイクル、55〜60℃で30秒、および72℃で30秒であった。融解曲線分析を行って、産物形成の均一性、プライマーダイマー形成、および非特異的産物の増幅を評価した。増加する量のcDNAによって生じた検量線を用いてPCR増幅の直線性および有効性を評価した。MYIQ単色リアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)を使用して、SYBRグリーン1蛍光(PCR産物形成)をリアルタイムでモニターした。PCR産物検出の閾値を、増幅の対数線形相に設定し、閾値サイクル(CT、検出閾値に達するまでのサイクル数)を各反応について決定した。比較CT(ΔCT)方法(LivakおよびSchmittgen、2001年)を使用して、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のレベルに対する標的mRNAレベルを定量化した。ハウスキーピング遺伝子の発現は、実験的処置によって有意に変化しなかった。
【0146】
結果
A 体重変化
イブジラストで処置された動物は、処置の最初の2日間において、ビヒクルで処置された動物と比較して体重減少の減少を示した(イブジラスト7.5mg/kgで処置された動物は9.3±6.3g、イブジラスト2.5mg/kgで処置された動物は10.4±5.6g、ビヒクルで処置された動物は1±4.4g)。したがって、データは動物のモルヒネ処置を開始した朝の体重で標準化した(したがって最初の2日間のイブジラストが誘発する体重減少を排除した)。7日目に、モルヒネが誘発する体重減少は、イブジラスト7.5mg/kgで処置された動物で13.3±7.1g、イブジラスト2.5mg/kgで処置された動物で16.6±5.7g、ビヒクルで処置された動物で18.2±6.6gであった。体重減少は、ラットオピエートモデルにおいて離脱の古典的で客観的マーカーであり、高用量イブジラストによる減弱は、オピエート離脱の間の生理的利点を支持する。
【0147】
B 離脱行動
図5に示すように、2.5mg/kgおよび7.5mg/kgの投与量のイブジラストによる処置は、60分間の観察期間におけるナロキソン誘発性離脱行動の劇的な減少をもたらした。個々の行動ベースでは、イブジラストによる処置は、立ち上がり、探索および激しい震えを除いて全ての行動で減少をもたらし、一方ビヒクルで処置された動物においては何の変化も観察されなかった。図5では、実験の全ての動物(n=10/処置群)について各10分間の区分で観察した総離脱行動の和としてデータを示す。
【0148】
C 脳免疫組織化学
パラホルムアルデヒド潅流後にラットから回収した脳試料で、免疫組織化学分析を行った。ミクログリア活性化マーカーCD11bおよび星状細胞マーカーGFAPを調査した。図6に見られるように、慢性的モルヒネ投与は、ミクログリア活性化マーカーCD11bの明らかな上方制御をもたらした。イブジラストによる処置は、CD11bマーカーの増加を劇的に減少させた。デンシトメトリー分析(図7)によって、イブジラストは、2つの脳領域、すなわち中脳水道周囲灰白質、および脳における脊髄後角に相当する三叉神経核において、ミクログリア活性化マーカーCD11bの大幅な減少をもたらすことが明らかにされた。
【0149】
D 脳核のmRNA分析
脳組織試料からのインターロイキン−1mRNAを定量化した。モルヒネは、中脳水道周囲灰白質の背側領域においてインターロイキン−1mRNAの劇的な増加をもたらすが、中脳水道周囲灰白質の腹側領域ではもたらさない(図8)。イブジラストは、モルヒネが誘発する中脳水道周囲灰白質の背側領域におけるインターロイキン−1mRNAの増加を完全に遮断した。
【0150】
結論
モルヒネ処置の間のイブジラスト投与は、処置された動物の脳において、グリア細胞活性化および炎症誘発性サイトカイン産生の有意な減少をもたらす。ナロキソン誘発性離脱において、イブジラストを与えられた動物は、行動反応の有意な減少を示し、これはイブジラスト処置が、神経炎症およびオピエート離脱症候群と関連する行動上の症状を減弱させることを示した。
【0151】
(実施例5)
イブジラストは、モルヒネ依存症および自発性のオピオイド離脱を逆行させる
実験手順
病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラットを全ての実験で使用した。ラット(到着時350〜375g、Harlan Labs、Madison、WI)を、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23±3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。全ての手順について、コロラド大学(Boulder)の動物実験委員会の承認を得た。到着すると、雄Sprague−Dawleyラット(300〜400g)を別個に収容し、動物コロニーの遠隔測定室に1週間順応させた。研究者による5回×90分のセッションのハンドリングを次の週に行った。
【0152】
ラットにイソフルランで麻酔をかけ、深部体温を測定するエミッター(MiniMitter、Sun River、OR)を、腹膜腔内に埋め込んだ。深部体温を記録するために使用するのと同じエミッターを使用して、粗大運動を遠隔測定によって評価した。活動を計数するためにエミッターを除かなくてはならなかった。したがって、毛づくろいなどの静的動作は数えなかった。活動計測および深部体温を毎分測定し、120分に亘って平均化した動作を計算した(したがってデータを平準化した)。遠隔測定データの記録を実験全体に亘って行った。実験者が収容室に入った時間は、これが活動を増加させ、したがって誤差を生じさせるため分析から除外した。遠隔測定埋込みの時には、動物に2つの皮下の腰椎からの2ML2浸透圧ミニポンプ(Alzet、Cupertino、CA)を埋め込み、各々が14日間に亘り1時間当たり約5μl(したがって合わせて1時間当たり計10μl)を注入した。1つのポンプは、生理食塩水で予め満たしたPE60管のリード長を有し、モルヒネ送達を2日間遅らせた。したがって、ポンプは、1日目および2日目は1日当たりモルヒネ(または生理食塩水)6.25mgを、次いでそれ以降は1日当たり12.5mgを送達した。12日目に、動物に、7日間の1日2回のイブジラスト投与計画(生理食塩水投与量2.5ml/kg中35%PEG中で7.5mg/kgまたは2.5mg/kg)またはビヒクル(生理食塩水中35%PEG)を開始した(18日目の午後に最後の投与を完了)。朝の注入を8:45AM〜9:15AMに行い、午後の注入を4:45PM〜5:15PMに行った。14日目に、ポンプを除去し、(モルヒネを与えられた動物において)自発性のオピオイド離脱を誘発した。正確な用量計算を行い、オピオイドが誘発する体重減少を追跡記録するために、各投与セッションの前に体重を記録した(投与が行われない日にも行った)。
【0153】
結果
イブジラストは、自発性のオピオイド離脱が誘発する体重減少から動物を保護した。図9に示すように、体重変化の改善の傾向のみが低用量のイブジラストで観察されたが、高用量では、イブジラストは、実質的に体重減少を減弱させた。体重減少減弱のエンドポイントは、ラットにおける離脱緩和の重要な客観的測定結果と考えられる。
【0154】
(実施例6)
5日間のモルヒネおよびイブジラストによる処置後の側坐核ドーパミン微小透析
実験手順
病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラットを全ての実験で使用した。ラット(到着時に300〜325g、Harlan Labs、Madison、WI)を、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23±3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。全ての手順について、コロラド大学(Boulder)の動物実験委員会の承認を得た。到着すると、雄Sprague−Dawleyラット(300〜400g)を、ペアを組んで収容し、動物コロニーの遠隔測定室に1週間順応させた。研究者による5回×90分のセッションのハンドリング、および微小透析環境への動物の順応を次の週に行った。
【0155】
ハロタン麻酔下で、微小透析ガイドカニューレ埋込みを行った。CMA12ガイドカニューレ(CMA Microdialysis)を、均衡するように右または左側坐核を狙った(AP=+1.7、LM=±0.8、DV=−6.0)。PaxinosおよびWatsonのアトラス(1998年)を使用して、座標はブレグマからであった。ガイドカニューレおよび係留ねじ(CMA Microdialysis)を、3つの宝石商ねじおよび歯科用セメントで頭蓋骨に固定した。ラットは手術後個々に収容され、1週間回復させた。
【0156】
動物に7日間の投与計画を開始した(1回につき6匹の動物の群、処置群当たりn=10)。7日間に亘り動物は、1日2回の、イブジラスト(生理食塩水投与量2.5ml/kg中35%PEG中で7.5mg/kgまたは2.5mg/kg)またはビヒクル(生理食塩水中の35%PEG)の腹腔内注入を与えられた。朝の注入は、8:45AM〜9:15AMに行い、午後の注入を4:45PM〜5:15PMに行った。3日目に、動物に5日間のモルヒネまたはビヒクル(生理食塩水)(皮下注射1ml/kg)の依存性投与計画を開始した。モルヒネを朝または午後に投与する場合、イブジラスト注入の30分後に行った。依存性投与計画は、3日目:AMの投与5mg/kg、正午の投与5mg/kg、PMの投与5mg/kg;4日目:AMの投与7.5mg/kg、PMの投与12.5mg/kg;5日目:AMの投与15mg/kg;6日目:AMの投与17.5mg/kg;7日目:AMの投与22.5mg/kgで構成された。正確な用量計算を行い、オピオイドが誘発する体重減少を追跡記録するために、各投与セッションの前に体重を記録した。
【0157】
微小透析前の午後に(モルヒネおよびイブジラスト投与後6日目)、ラットをコロニー室と同じ明暗サイクルの透析室に移した。微小透析プローブ(CMA12、MWカットオフ20,000Da、2mm活性膜)をガイドカニューレに挿入し、ラットを、飼料および水を自由に摂取できる別々のプレキシグラス注入ボウル中に入れた。リンガー溶液(147mMのNaCl、2.97mMのCaCl、4.02mMのKCl、Baxter)を、CMA注入ポンプを使用してプローブを通して、一晩0.2μl/分の流量で灌流した。流量を翌朝1.5μl/分に増加させ、1時間の平衡期間の後、モルヒネの最終用量を投与し、試料回収を開始し、透析液を20分毎に手作業で回収し、分析するまで即座に−80℃中に置いた。一組の動物において、モルヒネ投与の60分後に、10mg/kg皮下投与の(投与量1ml/mg)ナロキソンによってオピオイド離脱を誘発した。回収チューブを、1%エタノール中の0.02%EDTA(抗酸化剤)3μlで予め満たした。3つのベースライン試料の回収後、上記と同様にモルヒネまたはビヒクルを投与した。回収の2週間以内に透析液をHPLCによって分析した。
【0158】
透析液中のドーパミンを、30℃に維持したESA HR80カラム(C18、3μm、80×3mm)に連結した、ESA5014B分析細胞およびESA5020孔辺細胞を有するESA5600A COULARRAY検出器を使用して決定した。移動相は、150mMのリン酸二水素ナトリウム一水和物、4.76mMのクエン酸一水和物、3mMのドデシル硫酸ナトリウム、50μMのEDTA、10%メタノール、および15%アセトニトリル(水酸化ナトリウムでpH=5.6)であった。電位は−75および+220mVに設定し、および孔辺細胞電位を、+250mVに設定した。27μlの注入量でESA542オートサンプラーによって注入を行った。毎日流す外部標準(Sigma−Aldrich、St Louis、MO)によって定量的比較を行った。
【0159】
プローブの位置を確認するため、ipのペントバルビタールナトリウム65mg/kgでラットを安楽死させた。脳を取り出し、冷却したイソペンタン中で凍らせ、−20℃で低温槽中で切断した(40μm)。切片をゼラチン処理したスライド上に載せ、クレシルバイオレットで染色し、カバースリップをした。プローブを側坐核内に入れられたラットのみを分析に含めた。
【0160】
結果
イブジラストによる処置は、モルヒネ依存症動物において、モルヒネ投与の間、およびナロキソン誘発性オピオイド離脱または自発性のオピオイド離脱の間に、モルヒネが誘発する側坐核ドーパミンの増加を劇的に減少させる結果となった(図10および11)。図10は、モルヒネ依存症動物における、イブジラスト7.5mg/kgで処置された動物において、ナロキソン誘発性オピオイド離脱(ナロキソン10mg/kgを、60分間皮下投与した)の間の、イブジラストが減少させる側坐核ドーパミン濃度を示す。図11は、モルヒネ依存症動物において、モルヒネ投与(0時において)後に、イブジラスト(7.5mg/kg)、またはイブジラストおよびモルヒネの組合せで処置された動物における自発性のオピオイド離脱の間に、イブジラストはまた、側坐核ドーパミン濃度を減少させたことを示す。
【0161】
結論
イブジラスト処置は、モルヒネ依存症のラットモデルにおいて、モルヒネ処置後の脳側坐核で観察されるドーパミン濃度の増加を有意に減少させることを示した。依存性薬物は、側坐核においてドーパミンの増加をもたらす(およびこの増加はこのような薬物と関連する「報酬」を媒介すると考えられている)ため、この結果は、イブジラスト治療が同様に、依存性を減少させ、任意の嗜癖障害の離脱を減弱し得ることを意味する。したがって、イブジラスト処置は、オピエートと関連する症候群だけではなく、覚醒剤(コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン)、カンナビノイド、およびアルコールなどの薬物の他のクラスの治療にも適応される。さらに、イブジラスト処置はまた、ギャンブルおよび過食などの「行動嗜癖」を減弱させ得るところまで拡大することもできる。
【0162】
本発明の好ましい実施形態を少し詳しく説明してきたが、ここで特許請求されているように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明らかな変形を行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、ラットにおけるイブジラストの薬物動態および組織分布を表す。
【図2】図2A、2B、2Cおよび2Dは、モルヒネ離脱症候群のラットモデルにおける、様々な処置および対照プロトコルについての、離脱症候群の時間経過(分)(総離脱スコアにより測定)である。
【図3】図3は、イブジラスト(AV411)の存在下および非存在下での、モルヒネで処置したラットの側坐核(NAc)におけるドーパミン(DA)濃度を示す。
【図4】図4は、イブジラスト(AV411)の存在下および非存在下での、モルヒネで処置したラットの微小透析の間の離脱行動を比較する。
【図5】図5は、モルヒネおよび低用量(2.5mg/kg)のイブジラスト、高用量(7.5mg/kg)のイブジラスト、またはビヒクル(PEG)で処置したラットのナロキソン誘発性離脱行動を比較する。
【図6】図6A〜6Cは、ラットから回収した脳試料の免疫組織化学解析を示す。図6Aは、ビヒクルおよびモルヒネで処置された動物からの脳試料を示す。図6Bは、未処置動物からの脳試料を示す。図6Cは、イブジラストおよびモルヒネで処置された動物からの脳試料を示す。CD11b染色によって示されるように、モルヒネは、中脳水道周囲灰白質領域における重大なミクログリア活性化をもたらす(図6A)。イブジラストによる処置は、慢性モルヒネ投与に起因するCD11bマーカーの上昇を劇的に減少させる(図6C)。
【図7】図7は、脳試料からのミクログリア活性化マーカーCD11bのデンシトメトリー分析を示す。イブジラストは、2つの脳領域すなわち、中脳水道周囲灰白質、および脳における脊髄後角に相当する三叉神経核において、ミクログリア活性化マーカーCD11bにおける大幅な減少をもたらす。
【図8】図8は、イブジラスト、イブジラストおよびモルヒネ、ならびにモルヒネおよびビヒクル(PEG)で処置した動物から回収した脳組織のおけるIL−1発現の比較を示す。モルヒネは、脳の中脳水道周囲灰白質の背側領域ではIL−1mRNAを増加させたが、中脳水道周囲灰白質の腹側領域では増加させなかった。イブジラストは、中脳水道周囲灰白質の背側領域におけるIL−1mRNAのモルヒネ誘発性増加を遮断した。
【図9】図9は、自発性のオピオイド離脱を経験している動物における、イブジラストによる体重減少の減弱を示す。
【図10】図10は、イブジラスト(7.5mg/kg)またはビヒクル(PEG)で処置した動物における、モルヒネ投与(0時)後の、および(ナロキソン10mg/kgを60分間皮下投与した)ナロキソンが引き起こすオピオイド離脱の間の、モルヒネ依存動物における側坐核ドーパミン濃度を示す。
【図11】図11は、イブジラスト(7.5mg/kg)、モルヒネ、またはイブジラストおよびモルヒネの組合せで処置した動物における、モルヒネ投与(0時)後の、モルヒネ依存動物における側坐核ドーパミン濃度を示す。
【技術分野】
【0001】
(連邦政府の支援を受けた研究もしくは開発に関する宣言)
本発明は、the National Institute of Drug AbuseからのNIH助成金DA017670およびDA015642の下で支援を受けて行われた。したがって、米国政府は、本発明に対し一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、薬物嗜癖および行動嗜癖を治療する方法に関する。特に、本発明は、嗜癖性薬物および嗜癖的行動に反応して、対象が体験する報酬感と関連する側坐核におけるドーパミンの放出を抑制するために、オピエート依存などの嗜癖を、(本明細書においてAV411とも称する)イブジラストで治療する方法に関する。さらに、嗜癖性薬物使用または嗜癖的行動を中止した後の離脱症候群を治療するために、イブジラストを使用することができる。イブジラストは、オピエート離脱症候群を軽減し、オピエート耐性および離脱現象と関連している可能性があるオピエート誘発性の脳グリア細胞活性化を減弱させることが特に示されている。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
特定の薬物および強迫的行動の嗜癖性は、中枢神経系におけるドーパミンが媒介する強化/報酬経路の興奮と関連している(非特許文献1;非特許文献2)。通常ドーパミンは、哺乳動物が摂食およびセックスなどの生存に重要な行動を行うように動機付けるように機能する。しかし嗜癖を有する対象においては、ドーパミンは不適応行動を誘発させる。嗜癖を有する対象は、悪影響を経験するにも関わらず、ある物質を使用するか、ある行動を繰り返し行わざるを得ないように感じる。事実上全ての依存性薬物および強迫的行動は、哺乳動物の側坐核における細胞外ドーパミン濃度を増加させることが示されてきた。
【0004】
依存性薬物は、強迫的な薬物欲求および薬物探索行動によって特徴付けられるドーパミンが媒介する依存症を誘発する。世界保健機構(WHO)は、嗜癖性薬物を9つのグループに分類した。1.アルコール、2.アンフェタミン、3.バルビツレート、4.マリファナ、5.コカイン、6.幻覚剤、7.カート、8.オピエート、および9.有機溶剤である。ドーパミン経路の調節不全もまた、過度の食事、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、およびコンピュータ使用などの強迫的行動嗜癖と関連している(非特許文献3;Comingsら(1997年)2号:44〜56頁;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;および非特許文献12)。
【0005】
さらに、離脱症候群に伴う身体的および精神的依存は、嗜癖性薬物の使用および強迫的行動と関連する場合が多い。離脱は、薬物使用または強迫的行動の減少または中止による身体および行動上の症状の出現と定義される。行動の強化および報酬を媒介する通常の機序を侵害する、物質の連続使用または嗜癖的行動の繰返しに応答して中枢神経系で起きている変化を離脱は反映し、耽溺している個人が、重大な社会的、法律的、身体的および職業的影響にもかかわらず、薬物摂取または強迫的行動の繰返しを続けることの動機を与える。離脱の身体症状には、激しい欲求、被刺激性、不安、神経不安、不穏状態、集中力欠如、意識朦朧、不眠、振戦、空腹感の増大および体重増加、あくび、発汗、流涙、鼻漏、瞳孔散大、骨、背中および筋肉の痛み、立毛、ホットフラッシュおよびコールドフラッシュ、悪心、嘔吐、下痢、体重減少、熱、ならびに血圧、脈拍および呼吸数の増加が含まれ得る。
【0006】
オピオイド離脱症候群の管理は、未だ対処されていない臨床上の必要性として長い間認識されてきた。慢性疼痛は、世界中で3人に1人を超える成人を苦しめている。モルヒネなどのオピオイド化合物は、慢性疼痛の管理のための最前線の治療法である。慢性疼痛は、定義上何ヶ月(および患者の生命の残りまで)も持続するため、モルヒネおよび同様の化合物は、その上慢性的に与えられる場合がある。オピオイドは反復投与によって依存性を誘発するため、これは恐ろしい問題であり、患者が通常に機能するためにオピオイドの継続的投与が必要であることを意味する。オピオイドが中断された場合、およびオピオイドの連続的用量の間に一時的な遅れがあった場合も、患者は離脱に陥る。
【0007】
オピオイドは幅広い脳、脊髄および体組織に作用するため、オピオイドの作用および結果として起こる離脱の総体症状は様々である。離脱の兆候は一般に、オピオイドの作用の反対である。例えば、モルヒネは便秘をもたらし、離脱は下痢をもたらす。モルヒネは深部体温を下げ、離脱はそれを上げる。モルヒネは鎮静作用をもたらし、離脱は動揺をもたらす。離脱のさらなる兆候には、疼痛の増加、瞳孔散大、鳥肌、あくび、痙攣、筋肉痛、不穏状態、極めて強い不安、不眠、悪心および嘔吐、発汗、流涙、頻脈、ならびに血圧の上昇が挙げられる。
【0008】
あいにくにも、疼痛の減少はオピオイドが投与される理由であるが、本来の疼痛愁訴の領域において疼痛がオピオイドによって制御されないだけでなく、触覚刺激および温度刺激に対して全身が今や非常に敏感になり、通常の痛くない刺激を痛いと誤って解釈するように、離脱の間に疼痛は劇的に元に戻る。軽く触れることが痛みを伴う。暖かさおよび冷たさが痛みを伴う。(他の離脱の総体症状と共に)このように日常の感覚が、脅かすような疼痛に変わることによって、米国のみで何百万人もの人の生活が日常的に破壊されている。これによって、慢性的なオピオイド摂取者、オピオイドを中止する必要のある患者、および非合法な薬物使用から脱することを妨げ得る離脱症候群を避けることが望みである回復中の麻薬常用者において多大な苦痛が生じている。
【0009】
オピオイドのさらなる用量が不足する離脱の治療法が現在のところないという事実により問題は複雑となる。常用者は承知しているが、薬物のさらなる用量は問題を何ら解決せず、薬物の効果がまた再び減少するまでむしろ問題を隠すだけである。患者および常用者を離脱から切り抜けさせる現在のアプローチは、「禁断症状」、鎮静、および鎮痛を含めて悲惨なものである。「解毒」は、集中治療などの厳密な監視下にある環境において、全身麻酔またはベンゾジアゼピン鎮静作用下でナルトレキソン(オピオイド受容体アンタゴニスト)によって誘発される場合が多い。ナルトレキソンは、約6日間続く症状を伴う急性離脱を誘発する。健康な患者にのみ考慮される。ヒトを離脱から救い出す他の現在用いられている方法には、パラセタモールなどの非ステロイド性抗炎症薬、メトクロプラミドなどの制吐剤、ロペラミドなどの止瀉薬、不安および動揺を減少させるためのジアゼパム、不安、発汗、ならびに心拍数および血圧の変化を減少させるためのクロニジンの投与が含まれる。
【0010】
オピオイド離脱のための改善された治療の開発において、モルヒネを含めたオピオイドは、ニューロンのみに影響を与えるのではないことを考慮することが重要である。様々な脳および脊髄領域におけるオピオイド反応性ニューロンは、疼痛を抑え、深部体温を下げ、ホルモン放出を変化させ、その他(オピオイドの古典的作用)である一方、オピオイドは、グリアと称される非神経細胞タイプ(ミクログリア、星状細胞、オリゴデンドロサイト)にも影響を与えることが最近見出された。モルヒネおよび他のオピオイドは、グリアを活性化する。グリア特異的活性化マーカーの上方制御からも明らかなように、この活性化は繰り返されるオピオイド投与に伴って増大する。このようなグリア活性化がモルヒネ耐性の一因となることは、グリア阻害剤をモルヒネと共に同時投与することによりモルヒネ耐性の進行を乱すという知見によって裏付けられる。グリア活性化の減少は、モルヒネ耐性の進行を乱すための治療的なアプローチとして有用であり得るという結果になる。非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19。
【0011】
オピオイドが誘導する進行性グリア活性化によって、グリアによる炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン−1(IL−1)、腫瘍壊死因子(TNF)、およびインターロイキン−6(IL−6)を含めた神経興奮性物質の放出をもたらす。炎症誘発性または抗炎症性物質のモルヒネとの同時投与を伴う実験によって示されるように、これらの神経興奮性物質は、モルヒネなどのオピオイドの鎮痛作用を打ち消し、離脱の総体症状を促進する。例えば、それ自体では行動への影響がない用量で、IL−1をマウスの脳脊髄液に注入すると、全身性モルヒネの鎮痛効果を遮断する。同様に、モルヒネおよび(IL−1が作用を発揮するのを妨げる)IL−1受容体アンタゴニスト、またはモルヒネおよび(炎症誘発性サイトカインの産生、放出および効力を下方制御する)抗炎症性サイトカインIL−10の脊髄送達は、モルヒネ鎮痛の程度および期間を増加させる。実際、モルヒネ鎮痛が確立し、次いでそれが消失すると、IL−1受容体アンタゴニストを注入することによって強力な鎮痛を急速に回復させることができる。これは、鎮痛の消失が、モルヒネの鎮痛効果の消失によるよりはむしろ疼痛を増大させる炎症誘発性サイトカインの活性によってもたらされることを示している。
【0012】
他のオピオイドの活性もまた、グリア活性化によって妨げられ得る。グリアおよび炎症誘発性サイトカインは、少なくとも部分的に非古典的オピオイド受容体を介して、メタドンの鎮痛効果を損なうことが研究により示されている(非特許文献20)。これらの結果は、グリアおよび炎症誘発性サイトカインは、メタドン離脱、およびおそらく同様に他のオピオイドからの離脱に関与していることを示唆する。オピオイド間の交差耐性は、オピオイドで慢性疼痛を治療する全ての試みを妨げるグリアの疼痛促進系の活性化によって説明し得るため、これらのデータはまた、グリア活性化の臨床上の意義を拡大させる。
【非特許文献1】Abbott(2002年)Nature419号:872〜874頁
【非特許文献2】Montagueら(2004年)Nature431号:760〜767頁
【非特許文献3】Comingsら(2000年)Prog.Brain Res.126号:325〜341頁
【非特許文献4】Blumら(2000年)J.Psychoactive Drugs32号suppl:i〜iv、1〜112頁
【非特許文献5】Potenza(2001年)Semin.Clin.Neuropsychiatry6号:217〜226頁
【非特許文献6】Gianoulakis(1998年)Alcohol Health Res.World22号:202〜210頁
【非特許文献7】Bowirratら(2005年)Am.J.Med.Genet.B Neuropsychiatr.Genet.132号:29〜37頁
【非特許文献8】Di Chiara(2005年)Physiol.Behav.86号:9〜10頁
【非特許文献9】Frankenら(2005年)Appetite45号:198〜201頁
【非特許文献10】Wangら(2004年)J.Addict Dis.23号:39〜53頁
【非特許文献11】Aamodt(1998年)Nature Med.4号:660頁
【非特許文献12】Koeppら(1998年)Nature393号:266〜268頁
【非特許文献13】Watkins, L.R.ら(2005年)Trends in Neuroscience28号:661〜669頁
【非特許文献14】Gul, H.ら(2000年)Pain89号:39〜45頁
【非特許文献15】Johnston, I.N.ら(2004年)J.Neurosci.24号:7353〜65頁
【非特許文献16】Raghavendra, V.ら(2002年)J.Neurosci22(22)号:9980〜89頁
【非特許文献17】Raghavendra, V.ら(2004年)Neuropsychopharmacology29(2)号:327〜34頁
【非特許文献18】Shavit, Y.ら(2005年)Pain115号:50〜59頁
【非特許文献19】Song, P.およびZhao, Z.Q.(2001年)Neurosci.Res.39号:281〜86頁
【非特許文献20】Watkins, L.R.ら(2005年)Trends Neurosci.28号:661〜669頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
要約すれば、オピオイドはグリアを興奮させ、それは次にオピオイドの作用に対抗する(炎症誘発性サイトカインなどの)神経興奮性物質を放出し、オピオイド処置の中止に伴う離脱症候群を生じさせる。このようなグリア活性化を抑制する化合物は、オピオイド離脱を治療する有益で新規な治療法であろう。
【0014】
薬物嗜癖および行動嗜癖を治療する改良された化合物、組成物、および方法に対する必要性が存在する。特に、常用者の欲求と関連するドーパミンが媒介する「報酬」を減弱させまたは止め、薬物使用または強迫的行動の中止後の離脱症候群の症状を軽減する薬物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
1つの態様によれば、本発明は、イブジラストの有効量を対象に投与するステップを含む、対象の側坐核のドーパミン放出を抑制する方法を提供する。
【0016】
特定の実施形態では、対象は嗜癖を有する。特定の実施形態では、嗜癖は薬物嗜癖、例えば、オピエート、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、カンナビノイド、アルコール、またはニコチン嗜癖である。他の実施形態では、嗜癖は行動嗜癖、例えば、摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、またはコンピュータ使用嗜癖である。
【0017】
特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、イブジラストは、例えば、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、舌下または他の全身的経路によって全身的に投与される。他の実施形態では、イブジラストは中枢に、例えば、くも膜下腔内に投与される。特定の実施形態では、イブジラストの複数回の治療有効用量が対象に投与される。特定の実施形態では、イブジラストは毎日の投与計画に従って投与される。特定の実施形態では、イブジラストは1日2回投与される。特定の実施形態では、イブジラストは間欠的に投与される。
【0018】
他の態様では、本発明は、それを必要としている対象にイブジラストの治療有効量を投与するステップを含む、嗜癖を治療する方法を提供する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、対象の嗜癖関連行動を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、対象における薬物への嗜癖と関連する欲求を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、対象における薬物への耐性を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、対象における薬物または嗜癖的行動に関連する刺激の誘因突出(incentive salience)を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、対象における離脱症候群の症状を減少させ、または解消する方法を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、対象における体重減少を緩和し、または解消する方法を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、対象におけるグリア細胞活性化を減少させ、または解消する方法を提供する。特定の実施形態では、ミクログリア活性化は、対象において減少し、または解消する。特定の実施形態では、星状細胞活性化は、対象において減少し、または解消する。特定の実施形態では、対象の脳において、例えば、対象の脳の中脳水道周囲灰白質または三叉神経核領域において、薬物誘発性のCD11b増加が減少する。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、対象における炎症誘発性サイトカイン発現の薬物誘発性の増加を減少させ、または解消する方法を提供する。特定の実施形態では、炎症誘発性サイトカインは、インターロイキン−1である。特定の実施形態では、炎症誘発性サイトカイン発現は、対象の脳内で減少する。特定の実施形態では、インターロイキン−1発現は、対象の脳の中脳水道周囲灰白質の背側領域において減少する。
【0027】
特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、イブジラストは全身的に、例えば、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、舌下または他の全身的経路によって投与される。他の実施形態では、イブジラストは中枢に、例えば、くも膜下腔内に投与される。特定の実施形態では、イブジラストの複数回の治療有効用量が対象に投与される。特定の実施形態では、イブジラストは毎日の投与計画に従って投与される。特定の実施形態では、イブジラストは1日2回投与される。特定の実施形態では、イブジラストは間欠的に投与される。
【0028】
特定の実施形態では、嗜癖は、薬物嗜癖、例えば、オピエート、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、カンナビノイド、アルコール、またはニコチン嗜癖である。他の実施形態では、嗜癖は、行動嗜癖、例えば、摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、またはコンピュータ使用嗜癖である。
【0029】
特定の実施形態では、イブジラストは、嗜癖を治療するための1種またはそれより多くの他の薬剤との併用療法において使用される。いくつかの実施形態では、1種またはそれより多くの薬剤は、鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、抗うつ剤、および不眠治療剤からなる群から選択される。様々な実施形態において、1種またはそれより多くの薬剤は、ブプレノルフィン、ナロキソン、メタドン、酢酸レボメタジル、L−αアセチルメタドール(LAAM)、ヒドロキシジン、ジフェノキシレート、アトロピン、クロルジアゼポキシド、カルバマゼピン、ミアンセリン、ベンゾジアゼピン、フェノジアジン、ジスルフィラム、アカンプロサート、トピラメート、オンダンセトロン、セルトラリン、ブプロピオン、アマンタジン、アミロリド、イスラジピン、チアギャビン、バクロフェン、プロプラノロール、デシプラミン、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、ドキセピン、フルオキセチン、イミプラミン、モクロベミド、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、トリプトファン、ベンラファキシン、トラゾドン、クエチアピン、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、ガバペンチン、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される。
【0030】
他の態様では、本発明は、1回またはそれより多くの用量のイブジラストを投与することによる、哺乳動物対象においてオピオイド離脱症候群を治療する方法に関する。一実施形態では対象はヒトである。
【0031】
他の実施形態では、オピオイドは、モルヒネ、メタドン、およびフェンタニルからなる群から選択される。一実施形態では、オピオイドはモルヒネである。いくつかの実施形態では、オピオイド離脱症候群は、対象におけるオピオイド投与の減少または中止によってもたらされる。他の実施形態では、オピオイド離脱症候群は、ナロキソンまたはナルトレキソンなどのオピオイドアンタゴニストの投与によってもたらされる。
【0032】
一実施形態では、イブジラストは、全身的に、例えば、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、舌下または他の全身的経路によって投与される。他の実施形態では、イブジラストは、中枢に、例えばくも膜下腔内に投与される。
【0033】
他の実施形態では、イブジラストは、オピオイド離脱の治療のための1種またはそれより多くの他の薬剤と共に併用療法において使用される。いくつかの実施形態では、1種またはそれより多くの薬剤は、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、およびベンゾジアゼピンからなる群から選択される。様々な実施形態において、1種またはそれより多くの薬剤は、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される。
【0034】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書における開示に鑑みて、当業者であれば容易に想定し得るであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当分野の技術の範囲内の、化学、生化学、および薬理学の従来の方法を用いる。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、A.L.Lehninger、Biochemistry(Worth Publishers, Inc.、現版);MorrisonおよびBoyd、Organic Chemistry(Allyn and Bacon, Inc.、現版);J.March、Advanced Organic Chemistry(McGraw Hill、現版);Remington:The Science and Practice of Pharmacy、A.Gennaro、Ed.、20版;Goodman & Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J.Griffith Hardman、L.L.Limbird、A.Gilman、10版を参照されたい。
【0036】
I 定義
本発明を説明し、特許請求することにおいて、下記の定義による下記の用語法を使用する。
【0037】
本明細書および意図する特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」「an」および「the」は、文脈が明らかにその他のことを指示しない限り、複数の指示物を含むことに留意しなくてはならない。したがって、例えば、「薬物(a drug)」という言及は、単独の薬物、および同じまたは異なる薬物の2種以上を含み、「任意選択の賦形剤(an optional excipient)」という言及は、単独の任意選択の賦形剤、および同じまたは異なる任意選択の賦形剤の2種以上を意味する、などである。
【0038】
「医薬として許容される賦形剤または担体」とは、本発明の組成物中に任意選択に含まれてもよく、患者に重大な有害な毒性学的影響をもたらさない賦形剤を意味する。
【0039】
「医薬として許容される塩」には、これらだけに限らないが、アミノ酸塩;塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、および硝酸塩などの無機酸で調製される塩;またはリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸およびステアリン酸などの有機酸で調製される塩;ならびにエストレート塩、グルセプテート塩およびラクトビオン酸塩が挙げられる。同様に、医薬として許容されるカチオンを含有する塩には、それだけに限らないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、および(置換アンモニウムを含めた)アンモニウムが挙げられる。
【0040】
本明細書に記載される「活性分子」または「活性剤」には、in−vivoまたはin vitroで示すことができる有益な場合が多い何らかの薬理効果を提供する任意の薬剤、薬物、化合物、組成物または混合物が含まれる。これには、食物、栄養剤、栄養素、栄養補助食品、薬物、ワクチン、抗体、ビタミン、および他の有益な薬剤が含まれる。本明細書で使用する場合、この用語には、患者において局所的または全身作用を生じさせる任意の生理的または薬理学的活性物質がさらに含まれる。
【0041】
「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼ全くまたは完全、例えば、ある一定量の95%以上を意味する。
【0042】
「任意選択の」または「任意選択に」とは、説明した状況が、その後に起こる場合があり、または起こらない場合があり、その結果、説明には、その状況が起こる場合の例、およびその状況が起こらない場合の例が含まれることを意味する。
【0043】
「中枢神経系」または「CNS」という用語には、脊椎動物の脳および脊髄の全ての細胞および組織が含まれる。したがって、この用語には、これらだけに限らないが、神経細胞、グリア細胞(星状細胞、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)、脳脊髄液(CSF)、間質腔などが含まれる。
【0044】
「対象」、「個人」または「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を意味する。哺乳動物には、それだけに限らないが、ネズミ、げっ歯類、サル、ヒト、家畜、運動競技用動物およびペットが挙げられる。
【0045】
「約」という用語は、特に一定量に関して、プラスまたはマイナス5%の偏差を包含することを意味する。
【0046】
「嗜癖」という用語は、側坐核中の細胞外ドーパミン濃度を増加させる、強迫的な薬物の使用または繰返し行動と本明細書において定義される。嗜癖は、それだけに限らないが、覚醒剤、麻薬性鎮痛薬、アルコールおよびニコチンなどの嗜癖性のアルカロイド、カンナビノイド、またはこれらの組合せが挙げられる、薬物に対するものであり得る。例示的な覚醒剤には、それだけに限らないが、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミン、フェンメトラジン、ジエチルプロピオン、メチルフェニデート、コカイン、フェンシクリジン、メチレンジオキシメタンフェタミンおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。例示的な麻薬性鎮痛薬には、それだけに限らないが、アルフェンタニル、α−プロジン、アニレリジン、ベジトラミド、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、イソメタドン、レボメソルファン、レボルファノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、アヘン抽出物、アヘン液体抽出物、粉末アヘン、顆粒状アヘン、生アヘン、アヘンチンキ、オキシコドン、オキシモルホン、ペチジン、フェナゾシン、ピミノジン、ラセメソルファン、ラセモルファン、テバインおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。嗜癖性薬物にはまた、バルビツレートなどの中枢神経系抑制薬、クロルジアゼポキシド、ならびにエタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールなどのアルコールも挙げられる。嗜癖という用語にはまた、行動嗜癖、例えば、強迫的摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、およびコンピュータ使用が挙げられる。
【0047】
嗜癖を患っている対象は、嗜癖関連行動;薬物嗜癖の場合は、物質を使用する欲求、または行動嗜癖の場合は、行動を繰り返すという抗し難い衝動;望ましくない結果(例えば、健康、人間関係、および経済状態への悪影響、失業、または収監)にも関わらず薬物使用または強迫的行動を止めることができないこと;ドーパミン放出と関連する報酬/誘因作用;薬物または行動に関連する刺激の突出;依存性;耐性;またはそれらの任意の組合せを経験する。
【0048】
薬物嗜癖に関する嗜癖関連行動には、物質への依存性によって特徴付けられる、薬物の強迫的使用からもたらされる行動が含まれる。その行動の症候は、(i)薬物の使用への抗し難い関わり、(ii)その供給の確保、および(iii)離脱後の再発の高い確率である。
【0049】
組成物または薬剤の「有効量」または「医薬有効量」という用語は、本明細書において提供する場合、対象の側坐核のドーパミン放出抑制または対象におけるグリア活性化抑制、および任意選択で対応する治療効果などの、所望の反応を実現する無毒性ではあるが十分な量の組成物を意味する。必要な正確な量は、対象の種、年齢および全身状態、治療される状態の重篤度、用いられる特定の薬物または複数の薬物、投与方法など次第で、対象毎に異なるであろう。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、通常の実験を使用して当業者によって決定し得る。
【0050】
イブジラストの「治療有効用量または量」とは、イブジラストが本明細書に記載するように投与された場合、薬物または行動嗜癖の治療において、対象の嗜癖関連行動を減少または解消し、対象における薬物または行動への嗜癖と関連する欲求を減少または解消し、対象における薬物への耐性を減少または解消し、対象における薬物または行動に関連する刺激の誘因突出を減少または解消し、および/あるいは対象による嗜癖性薬物使用または嗜癖的行動の減少または中止による離脱の症状を減少または解消するような、肯定的な治療反応をもたらす量を意図する。
【0051】
II 本発明を実施するモード
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定の製剤またはそれ自体が当然ながら変わり得るプロセスパラメーターに限定されることを意図しないことを理解すべきである。本明細書において使用する用語は、本発明の特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定的なものではないことも理解される。
【0052】
本明細書に記載するものと類似または同等のいくつかの方法および材料を本発明の実施において使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書に記載する。
【0053】
本発明は、イブジラストで安全および効果的に嗜癖を治療する新規な治療方法の発見に基づいている。本発明の方法は、常用者における欲求および強迫的行動と関連する、側坐核におけるドーパミン放出を減少させる。本発明の方法は、対象において嗜癖関連行動を減少させまたは解消し、離脱症候群の症状を軽減するのに特に有用である。
【0054】
本発明の理解を深めるために、イブジラストで嗜癖を治療する方法に関してより詳細な議論を下記に提供する。
【0055】
イブジラストによる嗜癖の治療
側坐核におけるドーパミン放出は、嗜癖と関連する薬物使用および強迫的行動を動機付ける「報酬」を媒介すると考えられる。1つの態様によれば、本発明は、イブジラストの有効量を含む組成物を対象に投与するステップを含む、対象の側坐核のドーパミン放出を抑制する方法を提供する。
【0056】
本出願において、イブジラストが側坐核のドーパミン放出を抑制することを示した。実施例3に示すように、in vivo微小透析によって測定した場合、イブジラストは、モルヒネで処置したラットの側坐核においてドーパミン放出を抑制する。さらに、イブジラストは、ラットにおけるナロキソン誘発性のモルヒネ離脱行動サインを抑制する。
【0057】
したがって、本発明は、嗜癖を治療するためのイブジラストの使用に関し、ならびに特に、嗜癖と関連するドーパミンが媒介する「報酬」を減弱させ、または止め、したがって対象の嗜癖と関連する欲求、ならびにそれに伴う嗜癖関連行動および離脱症候群を減少させ、または解消するためのイブジラストの使用に関する。
【0058】
特定の実施形態では、イブジラストの治療有効量を、薬物嗜癖を治療するために対象に投与することができる。対象は、それだけに限らないが、覚醒剤、麻薬性鎮痛薬、アルコールおよびニコチンなどの嗜癖性のアルカロイド、カンナビノイド、またはこれらの組合せが挙げられる1種またはそれより多くの薬物を常習している場合がある。例示的な覚醒剤には、それだけに限らないが、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミン、フェンメトラジン、ジエチルプロピオン、メチルフェニデート、コカイン、フェンシクリジン、メチレンジオキシメタンフェタミンおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。例示的な麻薬性鎮痛薬には、それだけに限らないが、アルフェンタニル、α−プロジン、アニレリジン、ベジトラミド、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、イソメタドン、レボメソルファン、レボルファノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、アヘン抽出物、アヘン液体抽出物、粉末アヘン、顆粒状アヘン、生アヘン、アヘンチンキ、オキシコドン、オキシモルホン、ペチジン、フェナゾシン、ピミノジン、ラセメソルファン、ラセモルファン、テバインおよび医薬として許容されるその塩が挙げられる。嗜癖性薬物にはまた、それだけに限らないが、バルビツレート、クロルジアゼポキシド、ならびにエタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールなどのアルコールが挙げられる中枢神経系抑制薬も含まれる。
【0059】
他の実施形態では、イブジラストの治療有効量を、行動嗜癖を治療するために対象に投与することができる。行動嗜癖には、それだけに限らないが、強迫的摂食、飲酒、喫煙、買い物、ギャンブル、セックス、およびコンピュータ使用を挙げることができる。
【0060】
特定の実施形態では、イブジラストは、嗜癖を治療するために1種またはそれより多くの他の薬剤と共に併用療法において使用される。このような薬剤には、それだけに限らないが、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、抗うつ剤、および不眠治療剤が挙げられる。例示的な薬剤には、それだけに限らないが、ブプレノルフィン、ナロキソン、メタドン、酢酸レボメタジル、L−αアセチルメタドール(LAAM)、ヒドロキシジン、ジフェノキシレート、アトロピン、クロルジアゼポキシド、カルバマゼピン、ミアンセリン、ベンゾジアゼピン、フェノジアジン、ジスルフィラム、アカンプロサート、トピラメート、オンダンセトロン、セルトラリン、ブプロピオン、アマンタジン、アミロリド、イスラジピン、チアギャビン、バクロフェン、プロプラノロール、デシプラミン、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、ドキセピン、フルオキセチン、イミプラミン、モクロベミド、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、トリプトファン、ベンラファキシン、トラゾドン、クエチアピン、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、ガバペンチン、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムが挙げられる。
【0061】
イブジラストによるオピエート離脱の治療
本発明はまた、オピオイド依存症および離脱を治療するための新規な抗炎症的アプローチにも関し、特に、モルヒネ離脱の有効な治療上の処置としてのイブジラストの使用に関する。モルヒネ離脱の臨床症状は、部分的に、中枢神経系におけるグリア活性化からもたらされると考えられている(Naritaら(2006年)Nature Neuropsychopharmacology1〜13頁)。イブジラストは、グリア細胞活性化を下方制御する能力を有する抗炎症剤である。Mizunoら(2004年)Neuropharmacology 46号:404〜411頁;Suzumuraら(1999年)Brain Res.837号:203〜212頁;Wakitaら;(2003年)Brain Res.992号:53〜59頁。イブジラストの全身(例えば、経口)または中枢(例えば、くも膜下腔内)投与は、モルヒネ離脱を減弱させ、それによって良好な治療法の選択肢があまりない状態の有効な治療を提供する新規なアプローチを提供する。
【0062】
イブジラストは、炎症性細胞(例えば、グリア細胞)の作用を介して炎症を抑制するように作用し、炎症誘発性メディエーターおよび向神経活性メディエーター両方の放出の抑制をもたらす。(全身投与された)イブジラストについて、いくつかの他の臨床適応症において広範囲に亘って調査されてきたが、これまでにモルヒネ離脱の緩和には提案されてこなかった。
【0063】
益々多くの文献が、繰り返されるモルヒネ処置は、グリア細胞(ミクログリア、星状細胞)活性化をもたらす場合があり、このような活性化はモルヒネ耐性および離脱と関連するイベントの続発症の一因となり得ることを示唆する。
【0064】
いくつかの刺激は、グリアを活性化する。それらは、免疫攻撃、感染症および/または末梢性炎症、持続性のニューロンからニューロンへの伝達の間に放出される物質(例えば、神経伝達物質、一酸化窒素、プロスタグランジン、サブスタンスP、フラクタルカインなど)、ニューロン損傷(例えば、フラクタルカイン、熱ショックタンパク質、細胞壁構成成分)などである。グリア機能は活性化によって劇的に変化し、神経活性物質の放出増加をもたらす。このようなイベントは、神経機能の変化をもたらすと考えられており、その徴候は、神経変性から、疼痛促進、モルヒネ依存性の増感およびその後の離脱症候群に亘る。WatkinsおよびMaier(2002年)Physiol.Rev.82号:981〜1011頁;WatkinsおよびMaier(2004年)Drug Disc.Today:Ther.Strategies1(1)号:83〜88頁など。
【0065】
本発明によれば、この望ましくないグリア活性化を減少させるためにイブジラストを使用することができる。イブジラストは、全身投与される場合、血液脳関門を越え(Sugiyamaら(1993年)No To Shinkei45(2)号:139〜42頁、本明細書の図2も参照されたい)、モルヒネ依存性および離脱の病因に関与する炎症の中枢部位に到達するために、より侵襲的な投与方法の必要性がなくなる。ミノサイクリンおよびフルオロクエン酸などの特定の薬剤は、グリア活性化を妨げる活性を有し得るが、ヒトの治療には許容できない。フルオロクエン酸は、正常なCNS恒常性の維持におけるグリアの本質的な機能である興奮性アミノ酸のグリア取り込みを遮断する可能性があり(Berg−Johnsenら(1993年)Exp.Brain Res.96(2)号:241〜6頁)、フルオロクエン酸の長期または増加した用量は発作の原因となるため許容できない。Willoughby J.O.ら(2003年)J.Neurosci.Res.74(1)号:160〜66頁;Hornfeldt, C.S.およびLarson, A.A.(1990年)Eur.J.Pharmacol.179(3)号:307〜13頁。ミノサイクリンは、グリア活性化の防止に有用であり得るが、現存する状態を逆行させることができないようである。Raghavendraら(2003年)J.Pharmacol. and Exp.Therapeutics306号:624〜30頁;Ledeboer, A.ら(2005年)Pain115号:71〜83頁。
【0066】
総合すれば、グリアおよびその炎症誘発性または神経調節性産物は、モルヒネ離脱を制御するための新しい戦略の機会を提供し得る。本発明の一実施形態では、イブジラストは、炎症誘発性サイトカインおよび神経調節性物質の放出を遮断するために使用される。イブジラストは、グリア活性化の強力なサプレッサーである。Mizunoら(2004年)Neuropharmacology46号:404〜11頁。イブジラストは用量依存的に、一酸化窒素(NO)、反応性酸素種、インターロイキン(IL)−1β、IL−6、および腫瘍壊死因子(TNF)の産生を抑制し、阻害性サイトカインであるIL−10、ならびに神経成長因子(NGF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、および活性化ミクログリア中のニューロトロフィン(NT)−4を含めた、さらなる神経栄養因子の産生を高める。
【0067】
本発明の一実施形態では、イブジラストは、モルヒネ離脱症候群の治療のために、ヒト対象において全身的にまたはくも膜下腔内に投与される。
【0068】
他の実施形態では、イブジラストは、モルヒネ離脱の神経病理的な要素を減弱させるために、全身(例えば、経口)または中枢(例えば、くも膜下腔内)経路で投与される。
【0069】
さらなる情報は、下記の刊行物において入手可能である。Obernolte, R.ら(1993年)Gene129号:239〜47頁;Rile, G.ら(2001年)Thromb.Res.102号:239〜46頁;Souness, J.E.ら(1994年)Br.J.Pharmacol.111号:1081〜88;Suzumura, A.ら(1999年)Brain Res.837号:203〜12頁;Takuma, K.ら(2001年)Br.J.Pharmacol.133号:841〜848頁。
【0070】
イブジラストはまた、包括的なオピオイド離脱治療プロトコルの一部として、1種またはそれより多くの他の薬剤と組み合わせても投与し得る。このような薬剤には、それだけに限らないが、下記の薬剤が挙げられる。
【0071】
ナルトレキソン(17−(シクロプロピルメチル)−4,5α−エポキシ−3,14−ジヒドロキシモルヒナン−6−オン、CAS番号16676−29−2(HCl))は、分子式C20H23NO4および分子量341.4を有する。
【0072】
メトクロプラミド(4−アミノ−5−クロロ−N−(2−ジエチルアミノエチル)−2−メトキシベンズアミド、CAS番号364−62−5)は、分子式C14H22ClN3O2および分子量299.8を有する。
【0073】
ロペラミド(4−[4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジル]−N,N−ジメチル−2,2−ジフェニルブタンアミド、CAS番号53179−11−6)は、分子式C29H33ClN2O2および分子量477.04を有する。
【0074】
ジアゼパム(10−クロロ−6−メチル−2−フェニル−3,6−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−2,8,10,12−テトラエン−5−オン、CAS番号439−14−5)は、分子式C16H13ClN2Oおよび分子量284.74を有する。
【0075】
クロニジン(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−2−イミダゾリン塩酸塩、CAS番号4205−90−7)は、分子式C9H9Cl2N3HClおよび分子量266.56を有する。
【0076】
アセトアミノフェンとも称されるパラセタモール(N−(4−ヒドロキシフェニル)エタンアミド、CAS番号103−90−2)は、分子式C8H9NO2および分子量151.2を有する。
【0077】
嗜癖治療用医薬組成物
イブジラスト
イブジラストは、下記に示される構造を有する小分子薬物(分子量230.3)である。
【0078】
【化1】
イブジラストはまた、ChemBank ID3227、CAS#50847−11−5、およびBeilstein Handbook Reference No.5−24−03−00396でも見出される。その分子式は、[C14H18N2O]に相当する。イブジラストはまた、2−メチル−1−(2−(1−メチルエチル)ピラゾロ(1,5−a)ピリジン−3−イル)1−プロパノン;3−イソブチリル−2−イソプロピルピラゾロ(1,5−a)ピリジン];および1−(2−イソプロピル−ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イル)−2−メチル−プロパン−1−オンを含めた様々な化学名によっても知られている。イブジラストの他の異名には、Ibudilastum(ラテン語)、BRN0656579、KC−404、およびブランド名Ketas(登録商標)が挙げられる。本明細書において言及する場合、イブジラストは、投与のためのその意図した製剤における使用に適した、任意および全ての医薬として許容されるその塩の形態、プロドラッグ形態(例えば、対応するケタール)などが含まれることが意図されている。
【0079】
イブジラストは、非選択的ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(PDE−3、PDE−4、PDE−10、およびPDE−l1に対して最も活性を有し(Gibsonら(2006年)Eur. J. Pharmacology538号:39〜42頁))、LTD4およびPAFアンタゴニスト活性を有することもまた報告されてきた。そのプロファイルは、他のPDE阻害剤および抗炎症剤と比較して、効果的に抗炎症性で独特であると思われる。PDEは、3’−炭素でのリン酸エステル結合の加水分解を触媒して、対応する5’−ヌクレオチド一リン酸を生じさせる。したがって、それらは環状ヌクレオチドの細胞内濃度を調節する。多くのホルモンおよび神経伝達物質の細胞外受容体は、環状ヌクレオチドをセカンドメッセンジャーとして使用するため、PDEもまた、これらの細胞外シグナルへの細胞応答を制御する。11のPDEファミリーが存在する。Ca2+/カルモジュリン依存性PDE(PDE1)、cGMP刺激PDE(PDE2)、cGMP阻害PDE(PDE3)、cAMP特異的PDE(PDE4)、cGMP結合PDE(PDE5)、光受容体PDE(PDE6)、高親和性cAMP特異的PDE(PDE7)、特異的PDE(PDE8)、高親和性cGMP特異的PDE(PDE9)、ならびにcAMPおよびcGMP混合PDE(PDE10、PDE11)である。
【0080】
前述したように、任意の1種またはそれより多くの本明細書に記載される薬物、特にイブジラストに対する参照は、適用可能な場合は、エナンチオマー、ラセミ混合物を含めたエナンチオマーの混合物、プロドラッグ、医薬として許容される塩の形態、水和物(例えば、一水和物、二水和物など)、異なる物理的形態(例えば、結晶性固体、アモルファス固体)、代謝物などのいずれかおよび全てを包含することを意味する。
【0081】
製剤成分
賦形剤/担体
本発明の組成物は、イブジラストに加えて、1種またはそれより多くの医薬として許容される賦形剤または担体をさらに任意選択で含み得る。例示的な賦形剤には、これらだけに限定されないが、炭水化物、デンプン(例えば、コーンスターチ)、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、結合剤/充填剤、界面活性剤、滑沢剤(例えば、カルシウムまたはステアリン酸マグネシウム)、タルクなどの流動促進剤、崩壊剤、希釈剤、緩衝液、酸、塩基、フィルムコーティング、これらの組合せなどが挙げられる。
【0082】
本発明の組成物には、1種またはそれより多くの炭水化物(糖、アルジトールなどの誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーなど)を含み得る。特定の炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類;ならびにマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。
【0083】
また本発明の組成物における使用に適したものは、ジャガイモおよびトウモロコシをベースとするデンプン(デンプングリコール酸ナトリウムなど)、および直接圧縮可能な変性デンプンである。
【0084】
さらなる代表的な賦形剤には、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびこれらの組合せなどの無機塩または緩衝液が挙げられる。
【0085】
本発明のイブジラストを含有する組成物にはまた、例えば、微生物増殖を防止または阻止するための抗菌剤も挙げられ得る。本発明に適した抗菌剤の非限定的実施例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0086】
本発明の組成物にはまた、1種またはそれより多くの抗酸化剤も含有し得る。抗酸化剤は、酸化を防止し、それによって薬物、または調製物の他の成分の劣化を防止するために使用される。本発明において使用される適切な抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0087】
さらなる賦形剤には、ポリソルベート、例えば、「Tween20」および「Tween80」などの界面活性剤、ならびにF68およびF88などの(両方ともBASF、Mount Olive、New Jerseyから入手可能)プルロニック、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、およびホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質)、脂肪酸および脂肪エステル、コレステロールなどのステロイド、ならびにEDTA、亜鉛および他のこのような適当なカチオンなどのキレート剤が挙げられる。
【0088】
さらに、本発明の組成物には、1種またはそれより多くの酸または塩基が任意選択で含まれ得る。使用することができる酸の非限定的実施例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されるそれらの酸が挙げられる。適切な塩基の例には、これらだけに限定されないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される塩基が挙げられる。
【0089】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の役割、活性剤成分の投与量要件、および組成物の特定の必要性によって変化するであろう。通常、任意の個々の賦形剤の最適量は、通常の実験によって、すなわち、異なる量の賦形剤(低量から高量の範囲)を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメーターを調べた後、有意な有害作用がなく最適な性能が得られる範囲を決定することによって決定される。
【0090】
しかし一般に、賦形剤は、組成物中に賦形剤の約1%〜約99重量%、好ましくは約5%〜約98重量%、さらに好ましくは約15〜約95重量%の量で存在するであろう。一般に、本発明のイブジラスト組成物中に存在する賦形剤の量は、下記から選択される。少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはさらに95重量%である。
【0091】
これらの上記の医薬賦形剤は、他の賦形剤と共に、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、19版、Williams & Williams、(1995年)、「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics、Montvale、NJ(1998年)、およびKibbe,A.H.、Handbook of Pharmaceutical Excipients、3版、American Pharmaceutical Association、Washington、D.C.、2000年に記載されている。
【0092】
他の活性物質
本発明による製剤(またはキット)は、イブジラストに加えて、嗜癖の治療に有効な1種またはそれより多くのさらなる活性剤を含有し得る。好ましくは、活性剤はイブジラストの作用機序とは異なる作用機序を有するものである。このような活性物質には、ナルトレキソン、メトクロプラミド、ロペラミド、ジアゼパム、クロニジン、ロフェキシジン、およびパラセタモールが挙げられる。
【0093】
持続送達製剤
組成物は、イブジラストの安定性を向上させ、半減期を延長するために製剤されることが好ましい。例えば、イブジラストは、持続放出製剤中で送達され得る。制御放出製剤または持続放出製剤は、リポソーム;エチレン酢酸ビニルコポリマーおよびHytrel(登録商標)コポリマーなどの非吸収性不透過性ポリマー;ヒドロゲルなどの膨潤性ポリマー;またはコラーゲンおよび特定のポリ酸などの吸収性ポリマー;または吸収性縫合糸を作製するために使用されるものなどのポリエステルなどの、担体あるいはビヒクルに、イブジラストを組み込むことによって調製される。さらに、イブジラストは、特定の担体にカプセル化し、吸収させ、または結合させることができる。特定の担体の例には、ポリメチルメタクリレートポリマーから誘導される担体、およびポリ(ラクチド)およびPLGとして知られるポリ(ラクチド−co−グリコリド)から誘導される微粒子が含まれる。例えば、Jefferyら、Pharm. Res.(1993年)10号:362〜368頁;およびMcGeeら、J Microencap.(1996年)を参照されたい。
【0094】
送達形態
本明細書に記載するイブジラスト組成物は、全てのタイプの製剤、特に、全身投与またはくも膜下腔内投与に適しているものを包含する。経口剤形には、錠剤、ロゼンジ、カプセル剤、シロップ剤、経口懸濁剤、乳剤、顆粒剤、および小丸剤が挙げられる。別の製剤には、エアロゾル剤、経皮パッチ、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、坐薬、再構成できる散剤または凍結乾燥剤、および溶剤が挙げられる。例えば、注入の前に固体組成物を再構成するのに適した希釈剤の例には、注入用静菌性水、水中の5%デキストロース、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびこれらの組合せが挙げられる。液体医薬組成物に関しては、溶剤および懸濁剤が考慮される。
【0095】
ここで経口送達製剤に移ると、錠剤は、任意選択で1種またはそれより多くの補助成分または添加剤と共に、圧縮または成形によって作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)および/または界面活性剤または分散剤と任意選択に混合した、散剤または顆粒剤などの易流動性形態の活性成分を、例えば、適切な打錠機で圧縮することによって調製される。
【0096】
成形錠剤は、例えば、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な打錠機で成形することにより作製される。錠剤は、任意選択にコーティング、または刻み目を付けてもよく、例えば、所望の放出プロファイルを実現するため様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、活性成分の持続放出または制御放出を実現するように製剤してもよい。錠剤は、薄膜、糖衣、または腸溶性コーティングなどのコーティングを任意選択で施し、胃以外の消化管の部分での放出をもたらすようにしてもよい。錠剤およびカプセル剤製造のための方法、装置、および委託製造者は、当技術分野において周知である。
【0097】
口腔内への局所投与用製剤には、一般にスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの風味付けされた基剤中に活性成分を含むロゼンジ、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性な基剤中の活性成分を含む香錠が含まれる。
【0098】
局所投与のための医薬組成物はまた、軟膏、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤または油剤としても製剤し得る。
【0099】
あるいは、製剤は、パッチ(例えば、経皮パッチ)、あるいは活性成分および任意選択で1種もしくは複数の賦形剤または希釈剤を含浸させた包帯または絆創膏などの包帯剤の形態でよい。局所用製剤には、2〜3例を挙げると、ジメチルスルホキシド、ビサボロール、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、およびD−リモネンなどの、皮膚または他の患部を通しての成分の吸収または浸透を高める化合物がさらに挙げられる。
【0100】
乳剤では、油相は、公知の方法により公知の成分から構成される。この相は、単に乳化剤を含み得る(他の場合では、エマルジェントとしても知られる)が、少なくとも1種類乳化剤と、脂肪および/または油との混合物を含むことが望ましい。親水性乳化剤は、安定剤の機能を果たす親油性乳化剤と共に含まれることが好ましい。合わせて、安定剤の有無に関係なく、乳化剤はいわゆる乳化ろうを構成し、そのろうは油および/または脂肪と組み合わせて、いわゆる乳化軟膏基剤を構成し、これがクリーム製剤の油分散相を形成する。例示的なエマルジェントおよびエマルジョン安定剤には、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0101】
直腸内投与用製剤は、例えば、カカオバターまたはサリチラートを含む適切な基剤を有する、通常坐剤の形態である。
【0102】
膣内投与に適した製剤は一般に、坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤の形態をとる。
【0103】
担体が固体である経鼻投与に適した製剤には、例えば、約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗末が挙げられる。このような製剤は通常、例えば、鼻の近くに掲げた粉末の容器からの、鼻腔を通しての迅速な吸入により投与される。あるいは、経鼻送達のための製剤は、液体形態、例えば、スプレー式点鼻薬または点鼻薬であり得る。
【0104】
吸入用のエアロゾル化製剤は、(例えば、ドライパウダー吸入器による投与に適した)乾燥粉末形態でよく、またはあるいは、例えば、噴霧器での使用のための液体形態でよい。エアロゾル化溶液を送達するための噴霧器には、AERx(商標)(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、およびAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)が挙げられる。本発明の組成物はまた、医薬的に不活性な液体噴射剤、例えば、クロロフルオロカーボンまたはフルオロカーボン中に、本明細書に記載する薬物の組合せの溶剤または懸濁剤を含有する、加圧定量吸入器(MDI)、例えば、Ventolin(登録商標)定量吸入器を使用しても送達され得る。
【0105】
非経口投与に適した製剤には、注入に適した水性および非水性の等張滅菌溶剤、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁剤が挙げられる。
【0106】
本発明の非経口製剤は、単位用量または複数用量の密封容器、例えば、アンプルおよびバイアルに任意選択に含有され、注入のために使用直前に、滅菌液体担体、例えば水の添加のみが必要であるフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時注入剤および懸濁剤は、前述のタイプの、滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製し得る。
【0107】
本発明の製剤はまた、非持続放出製剤と比較した場合、薬物成分の各々が、時間と共にゆっくりと放出または吸収されるような持続放出製剤でもよい。持続放出製剤は、活性剤のプロドラッグ形態、リポソームまたはポリマーマトリックスなどの遅延放出薬物送達システム、ヒドロゲル、あるいはポリエチレングリコールなどのポリマーの活性剤への共有結合を使用し得る。
【0108】
特に上述の成分に加えて、本発明の製剤には、医薬分野において一般的なその他の薬剤が任意選択で含まれる場合があり、例えば経口投与形態では、特定の製剤のタイプが使用される場合があり、経口投与用組成物にはまた、甘味料、増粘剤または香味剤などのさらなる薬剤も含まれる場合がある。
【0109】
本発明の組成物はまた、獣医学の用途に適した形態で調製してもよい。
【0110】
投与方法
以上の説明から明らかなように、嗜癖を治療するイブジラストをベースとする治療製剤送達の好ましい方法には、全身送達および局所送達、すなわち、中枢神経系への直接の送達が含まれる。このような投与経路には、それだけに限らないが、経口、動脈内、くも膜下腔内、筋内、腹腔内、皮下、静脈内、鼻腔内、および吸入経路が挙げられる。
【0111】
より詳細には、本発明のイブジラストを含有する製剤は、これらだけに限らないが、経口、直腸内、経鼻、局所(経皮、エアロゾル、口腔および舌下を含めた)、膣内、非経口(皮下、筋内、静脈内および皮内を含めた)、くも膜下腔内、および肺を含めた、任意の適切な経路によって治療のために投与され得る。摂取者の状態と年齢、治療されている特定の神経痛関連症候群、および用いられる薬物の特定の組合せによって、好ましい経路は当然ながら異なるであろう。
【0112】
イブジラスト送達のための1つの好ましい投与方法は、定位注入によるなどの当技術分野で公知の神経外科技術を使用した、針、カテーテルまたは関連する装置による、例えば、脳室領域への、ならびに線条体(例えば、線条体の尾状核または被殻)、脊髄および神経筋接合部への注入によって、例えば、脊髄グリア細胞を標的とした、末梢神経、網膜、後根神経節、神経筋接合部などの神経組織、ならびにCNSへの直接投与である(例えば、Steinら、J.Virol.73号:3424〜3429頁、1999年;Davidsonら、PNAS97号:3428〜3432頁、2000年;Davidsonら、Nat.Genet.3号:219〜223頁、1993年;およびAliskyおよびDavidson、Hum. Gene Ther.11号:2315〜2329頁、2000年を参照されたい)。
【0113】
脊髄グリアを標的にする特に好ましい方法は、髄組織自体への送達ではなく、くも膜下腔内送達による。
【0114】
本発明のイブジラストをベースとする組成物を投与する他の好ましい方法は、例えば、硬膜外腔への注入に続く後根神経節(DRG)への拡散による、DRGニューロンへの送達である。例えば、イブジラストをベースとする組成物は、イブジラストがDRGへ拡散する条件下で、くも膜下腔内カニューレ挿入によって送達することができる。例えば、Chiangら、Acta Anaesthesiol.Sin.(2000年)38号:31〜36頁;Jain、K.K.、Expert Opin.Investig.Drugs(2000年)9号:2403〜2410頁を参照されたい。
【0115】
CNSへのさらに別の投与方法は、対流増加送達(CED)系を使用する。このようにして、イブジラストを、CNSの広い領域に亘って多くの細胞に送達することができる。任意の対流増加送達装置が、イブジラストの送達に適切となり得る。好ましい実施形態では、この装置は、浸透圧ポンプまたは注入ホンプである。浸透圧および注入ホンプの両方とも、種々の供給業者、例えば、Alzet Corporation、Hamilton Corporation、Alza、Inc.(Palo Alto、California)から市販されている。通常、本発明のイブジラストをベースとする組成物は、CED装置を介して下記のように送達される。カテーテル、カニューレまたは他の注入装置を、選択した対象のCNS組織に挿入する。定位地図および位置決め装置は、例えばASI Instruments、Warren、MIから入手可能である。選択した標的に注入装置を誘導するのに役立つCTおよび/またはMRI画像により得られる解剖地図を使用することにより、位置決めがまた実施され得る。CED送達についての詳細な説明については、米国特許第6,309,634号を参照されたい。
【0116】
本発明のイブジラスト組成物は、複数の活性剤を含む場合は、イブジラスト、および嗜癖を治療するのに有効な少なくとも1種類のさらなる活性剤の組合せを含む、単一の複合組成物として投与し得る。患者の薬剤服用順守および投与の容易さの観点から、このようなアプローチが好ましいが、これは治療期間に亘って、複数の錠剤または剤形を、多くの場合は一日に複数回摂取することに患者が反対することが多いためである。あるいは、あまり好ましくないが、本発明の組合せが、個別の剤形として投与される。本発明の治療組成物を含む薬物が個別の剤形として投与され、同時投与が必要な場合は、イブジラストおよびさらなる各活性剤は、同時に、任意の順番で連続的に、または別々に投与され得る。
【0117】
キット
本明細書においてまた提供するのは、使用説明書が添付している、少なくとも1種類の本発明の複合組成物を含有するキットである。
【0118】
例えば、薬物自体の各々が個々または分離した剤形として投与される場合、キットは、使用説明書と共に、本発明の組成物を構成する薬物の各々に加えてイブジラストを含む。薬物成分の各々の投与方法が包装に明示されている限り、投与説明書と共に考慮すると、薬物成分は投与に適切な任意の方法で包装され得る。
【0119】
例えば、イブジラストおよびナルトレキソンを含む例示的なキットでは、キットは、任意の適切な期間、例えば1日単位で分類され得る。一例として、代表的なキットは、1日目として、イブジラストおよびナルトレキソンの各々の単位用量を含み得る。薬物の各々を1日2回投与する場合は、キットは、1日目に対応して、投与時期の説明と共に、イブジラストおよびナルトレキソン各々の2列の単位剤形を含み得る。あるいは、1種またはそれより多くの薬物が、組合せにおいて他の薬物の構成要素と比べて投与する単位剤形の時期または量が異なる場合、包装および説明にこのような内容が反映される。上記に従った様々な実施形態は、容易に想像することができ、当然ながら、イブジラストに加えて治療のために用いられる薬物の特定の組合せ、それらの対応する剤形、推奨用量、所期の患者集団などによるであろう。包装は医薬品の包装に一般に用いられる任意の形態でよく、様々な色、包装材、いたずら防止包装、ブリスターパック、乾燥剤などのいくつかの特徴のいずれかを利用し得る。
【0120】
投与量
治療量は、経験的に決定することができ、治療される特定の状態、対象、ならびに組成物中に含まれる活性剤の各々の効力および毒性によって変わるであろう。実際に投与される用量は、対象の年齢、体重および全身症状、ならびに治療される状態の重篤度、医療専門家の判断、ならびに投与される特定の組合せによって変わるであろう。
【0121】
治療有効量は当業者が決定することができ、各々の特定の事例の必要性によって調節されるであろう。一般に、イブジラストの治療有効量は、例えばヒトにおいては、約0.1〜500mg/日、さらに好ましくは、1〜200mg/日、1〜100mg/日、1〜40mg/日、または1〜20mg/日の量の1日総投与量の範囲であろう。投与は、1日から数日、数週間、数カ月、およびさらに数年の時間経過に亘って、1日1〜3回の場合があり、患者の生涯に亘ることさえあり得る。
【0122】
事実上、本発明の任意の所与の組成物または活性剤の単位用量は、臨床医の判断、患者の必要性などによって、種々の投与スケジュールで投与することができる。特定の投与スケジュールは、当業者に公知であろうし、または通常の方法を用いて実験的に決定することができる。例示的な投与スケジュールには、これらだけに限らないが、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回の投与などが挙げられる。
【0123】
III 実験
下記は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。実施例は例示の目的のみのために提示し、何ら本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0124】
使用する数字(例えば、量、温度など)について正確性を確保するための努力を行ってきたが、いくらかの実験誤差および偏差は、当然ながら許容すべきである。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
ラットにおけるイブジラストの薬物動態および組織分布
イブジラストの薬物動態、ならびに血漿、筋肉、脳、および脊髄への分布を下記のように評価した。
【0126】
実験手順
ラットへの投与のためのイブジラストを、15%エタノール/生理食塩水中で調製した。薬物安定性および濃度を、HPLC/MS/MSによって確認した。
【0127】
病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラット(280〜350g、Harlan Labs)を全ての実験で使用した。ラットを、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23+/−3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。明サイクルの間に行動試験を実施した。
【0128】
ラット(n=3/群)に、イブジラスト5mg/kgをi.p.投与し、血漿、筋肉、脳、および脊髄を、投与後5分、15分、60分、180分、および420分に回収した。組織試料中のイブジラスト濃度を下記の通り決定した。イブジラスト(Haorui)0.5mg/mlのDMSO溶液を常用標準のストック溶液として使用した。各0.5mg/mlストックを、ラット血漿で5000ng/ml(5μl+495μl)に1対100に希釈し、次いで血漿による3倍段階希釈によって2.29ng/mlにさらに希釈することによって血漿中の校正標準を調製した。各々、低、中および高QC試料として標準を使用した。
【0129】
25μlの血漿を、内部標準としてジフェンヒドラミン50ng/mlおよびデキストロメトルファン100ng/mlを含有する3容(75μl)の氷冷アセトニトリルで沈殿させることによって、HPLC注入のための、校正標準、QCおよび血漿試験試料を調製した。組織1mg当たり1μlの水、ならびに内部標準としてジフェンヒドラミン50ng/mlおよびデキストロメトルファン100ng/mlを含有する(水に対して)3容の氷冷アセトニトリルを加え、次いで電動ホモジナイザーでホモジナイズすることによって、HPLC注入のための、組織試験試料を調製した。30分間の6100gでの遠心分離に続いて、各々の上清40μlを、水中の0.2%ギ酸200μlで希釈し、下記のLC/MS/MS条件で分析した。
HPLC:Shimadzu VPシステム
移動相:水中の0.2%ギ酸(A)およびメタノール(B)
カラム:2×10mm Peeke Scientific DuraGel G C18ガードカートリッジ
注入量:100μl
グラジエント:0.75分の洗浄の後、5〜95%Bを2分間
流量:400μl/分
質量分析計:Applied Biosystems/MDS SCIEX API3000
インターフェイス:TurboIonSpray(ESI)、400℃
イオン化モード:陽イオン
Q1/Q3イオン:イブジラスト(IBUDILAST)で231.2/161.2
結果
図1に示すように、イブジラストの腹腔内投与は、二相性にCmaxから低下する良好な血漿濃度を生じた。イブジラストは、末梢(例えば、筋肉)および中枢(例えば、脳および脊髄)組織に十分に分布していた。血漿およびCNS組織における最大濃度(Cmax)は、記載されたように製剤されたイブジラスト〜5mg/kgのi.p.投与後に、〜1μg/mlであった。排出半減期は、全ての組織区画で100〜139分の範囲であった。
【0130】
(実施例2)
モルヒネ離脱のラットモデルにおけるイブジラストの効力
約1週間続く試験を行って、モルヒネ離脱行動の程度および期間を減少させるためのイブジラスト併用療法の可能性を評価した。
【0131】
実験手順
イブジラストは、Sigma(St.Louis、MO)またはHaorui Pharma(Edison、NJ)から、純粋粉末として入手し、腹腔内(i.p.)投与用溶液として毎日調製した。他の神経モデルにおける従前の範囲決定のための認容性および効力試験によって、イブジラストは、複数日に亘り1日2回(bid)15mg/kgまでの用量段階で腹腔内においてよく許容されることが示された。腹腔内投与後のイブジラストの効力は、経口治療などの他の全身投与経路を代表した。適切な量のイブジラストを、100%ポリエチレン(PEG)400(Sigma)に溶解し、次いで滅菌した生理食塩水中で35%PEG400の最終濃度まで希釈した(注入用に0.9%)。
【0132】
イブジラストを、2.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中で2.8mg/mlを0.9ml/kg)、または7.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中で2.8mg/mlを2.7ml/kg)、毎朝(通常午前9時)および毎午後(通常午後4時)に投与した。薬物安定性および濃度を、HPLC/MS/MSによって確認した。
【0133】
病原体がない成体雄Sprague−Dawleyラット(280〜350g、Harlan Labs)を全ての実験において使用した。ラットを、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23+/−3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。明サイクルの間に行動試験を実施した。全ての手順について、コロラド大学の動物実験委員会の承認を得た。
【0134】
(皮下注射による)モルヒネ処置のスケジュールは以下の通りであった。1日目:1000時に5mg/kg、1300時に5mg/kg、1700時に5mg/kg、2日目:1000時に5mg/kg、1700時に12.5mg/kg、3日目:1000時に15mg/kg、4日目:1000時に17.5mg/kg、5日目:1000時に5mg/kg、1200時に17.5mg/kg。
【0135】
ラットは、上記のスケジュールに従ってモルヒネ、さらに下記のスケジュールに従って、生理食塩水(n=4)、PEGビヒクル(n=5)、(「低用量」)イブジラスト2.5mg/kg(n=4)、または(「高用量」)イブジラスト7.5mg/kg(n=5)のいずれかを与えられた。モルヒネ開始の2日前:毎日1000時および1700時;モルヒネ投与計画の1〜4日目:毎日1000時および1700時;モルヒネ投与計画の5日目:1000時および1200時。次いで、ラットは、5日目のモルヒネおよび/またはイブジラスト、生理食塩水、あるいはビヒクルの最後の投与後45分の1245時に、ナロキソン5mg/kgを与えられた。
【0136】
測定した離脱の徴候は、(1)異常な姿勢(動物は、その腹部および下顎をケージの床に押し付ける)、(2)探索(動物は、ケージの中を周り、その頭を色々な方向に押し付け、周囲を調べる)、(3)ジャンプ、(4)クリーニング(毛づくろい)、(5)立ち上がり(動物は、前足を上に上げて、後足で立つ)。10分間の観察中の5種類の決まった行動全ての発生率を、下記のスケールに従ってスコア化した。0=何も示さない、1=1〜5の行動エピソード、2=6〜10の行動エピソード、3=11〜15の行動エピソード、4=16〜20の行動エピソード、5=21以上の行動エピソード。
【0137】
ナロキソン誘発性離脱が開始した直後に、60分に亘り10分間の区分で盲検観察者によって離脱スコアを測定した。各々の個々のラットについて、ナロキソン投与後1〜10分、11〜20分、21〜30分、31〜40分、41〜50分、51〜60分で観察結果を集め、6つの時点とした。図2A〜2Dにおいて、実験群内の全ての動物の(各時点での)平均スコアを、「総離脱スコア」として報告した。
【0138】
結果
図2A〜2Dは、イブジラスト処置は、ナロキソン誘発性モルヒネ離脱症候群の伝統的な生理的徴候の程度および期間の両方を減少させるのに有効であったことを示す。生理食塩水対照(図2A)と比較して、PEGビヒクルは、これらの行動への作用を有さなかったが、イブジラストは、これらの行動について用量依存的減少を示した(図2B〜2D)。生理食塩水対照(図2C)と比較して、低用量のイブジラスト(2.5mg/kg)は作用を示さなかったが、高用量のイブジラスト(7.5mg/kg)は、離脱の行動サインを著しく減弱させた(図2B、図2Dにおいては棒グラフとして示す)。
【0139】
(実施例3)
側坐核におけるドーパミン放出のイブジラストによる抑制
実験手順
側坐核におけるドーパミン放出は、依存性薬物と関連する「報酬」を媒介すると考えられている。in vivoの微小透析によって測定すると、イブジラストは側坐核におけるドーパミン放出を抑制した。5日間に亘り、ラット(6ラット/群)に、実施例1に記載したモルヒネ投与計画を用いて、全身性イブジラスト(7.5mg/kg b.i.d.)を全身性モルヒネと同時投与した。6日目の朝、ベースライン試料採取開始の1時間前に、ラットはイブジラストを与えられた。3回のベースライン試料採取の後(試料採取間の20分の間隔)、モルヒネを全てのラットに投与した。180分の間20分の間隔で透析試料を回収した。行動離脱およびモルヒネ誘発性ドーパミンの逆行を試験するために、60分の試料採取時間が完了した後、全てのラットに、オピオイドアンタゴニストであるナロキソンを投与した。
【0140】
結果
図3に示すように、モルヒネに反応した側坐核へのドーパミンの放出抑制によって明らかなように、イブジラストで処置したラットは、有意に抑制された「報酬」の指標またはメディエーターを示した。イブジラストは、ドーパミンの基礎レベルを減少させなかった。オピオイドアンタゴニストであるナロキソンは、モルヒネ誘発性ドーパミン放出を逆行させた。これはドーパミン放出が実際にモルヒネの作用によっていたことを示す。イブジラストおよびモルヒネを連続して同時投与されたラットは、PEG−生理食塩水ビヒクルおよびモルヒネを連続投与されたラットと比較して、ナロキソン誘発性行動離脱の徴候の抑制を示した(図4を参照されたい)。
【0141】
結論
脳内微小透析ドーパミン濃度および同時に起こるオピエート離脱行動反応の両方の結果は、ラットのイブジラスト処置によって、報酬または突出の神経化学的メディエーター(ドーパミン)、およびオピエート依存の行動的発現が有意に減少することを示す。このような結果は、イブジラストは、複数の形態の依存症の治療に有用であろうということを意味する。
【0142】
(実施例4)
イブジラストはモルヒネ依存症の進行および中枢のグリア細胞活性化を緩和する
実験手順
ラット(n=10/群)は、実施例2において記載したスケジュールに従ってモルヒネ、さらに下記のスケジュールに従って、生理食塩水、PEGビヒクル、(「低用量」)イブジラスト2.5mg/kg、または(「高用量」)イブジラスト7.5mg/kgのいずれかを与えられた。モルヒネ開始の2日前:毎日1000時および1700時、モルヒネ投与計画の1〜4日目:毎日1000時および1700時、モルヒネ投与計画の5日目:1000時および1200時。次いで、ラットは、5日目のモルヒネおよび/またはイブジラスト、生理食塩水、あるいはビヒクルの最後の投与後45分の1245時に、ナロキソン5mg/kgを与えられた。
【0143】
離脱行動のスコア化の後に、動物に50mg/mlのペントバルビタールナトリウム0.8mlの腹腔内注射を与え、麻酔をかけると、動物を経心的に灌流した。各処置群の半分を生理食塩水で灌流し、半分を4%パラホルムアルデヒドで灌流した。脊髄および脳を回収した(タンパク質およびmRNA定量化のための生理食塩水潅流、および免疫組織化学のためのパラホルムアルデヒド潅流)。生理食塩水で灌流した動物から回収した試料は、液体窒素中で急速冷凍し、−80℃で保存した。パラホルムアルデヒドで灌流した試料は、4%パラホルムアルデヒド中で48時間保存し、次いで組織切断まで30%スクロース(0.1%アジド)に移した。
【0144】
OX−42(補体受容体3、例えば、CD11bを認識する抗体)および/またはグリア線維酸性タンパク質(GFAP)の免疫活性、ミクログリアおよび星状細胞活性化マーカーを、各々評価した。切片(20μm)をトリス緩衝生理食塩水(TBS)中の0.3%H2O2によって20分間室温で処理し、内因性ペルオキシダーゼ活性を抑制した。次いで切片を一晩4℃にて、2%正常ヤギ血清および0.5%Triton−X−100と共に、TBS中のモノクローナルマウス抗ラットOX−42(1:100、Pharmingen、San Diego、CA)またはモノクローナルマウス抗ラットGFAP抗体(1:200、Chemicon、Temecula、CA)中でインキュベートした。引き続いて、切片を適切なビオチン化二次抗体(1:400、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)と室温で2時間インキュベートし、アビジン−ビオチン複合体溶液(ABC、1:200、Vector Laboratories、Burlingame、CA)中で室温にて2時間インキュベートし、3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB、Sigma)0.5mg/mlと反応させた。最後に、切片を乾燥、脱水し、Permountを用いてカバーガラスをかけた。光学顕微鏡で染色を評価した。次いで、免疫組織化学染色のデンシトメトリーを、コンピュータソフトウェア(NIH image)を使用して評価した。
【0145】
QUANTITECT SYBR GREEN PCRキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、MYIQ単色リアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)のICYCLER IQ96ウェルPCRプレート(Bio−Rad、Hercules、CA)中で、cDNAの増幅を行った。反応混合物(26μl)は、1×QUANTITECT SYBR GREEN PCRマスターミックス(蛍光色素SYBRグリーンI、2.5mMのMgCl2、dNTPミックス、およびHOTSTART Taq DNAポリメラーゼを含有)、10nMのフルオレセイン、各500nMのフォワードおよびリバースプライマー、25ngのcDNAおよびヌクレアーゼ非含有H2Oから構成された。反応を3通り行った(n=3〜6動物/群)。反応条件は、95℃で最初15分、次いで94℃15秒を40サイクル、55〜60℃で30秒、および72℃で30秒であった。融解曲線分析を行って、産物形成の均一性、プライマーダイマー形成、および非特異的産物の増幅を評価した。増加する量のcDNAによって生じた検量線を用いてPCR増幅の直線性および有効性を評価した。MYIQ単色リアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)を使用して、SYBRグリーン1蛍光(PCR産物形成)をリアルタイムでモニターした。PCR産物検出の閾値を、増幅の対数線形相に設定し、閾値サイクル(CT、検出閾値に達するまでのサイクル数)を各反応について決定した。比較CT(ΔCT)方法(LivakおよびSchmittgen、2001年)を使用して、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のレベルに対する標的mRNAレベルを定量化した。ハウスキーピング遺伝子の発現は、実験的処置によって有意に変化しなかった。
【0146】
結果
A 体重変化
イブジラストで処置された動物は、処置の最初の2日間において、ビヒクルで処置された動物と比較して体重減少の減少を示した(イブジラスト7.5mg/kgで処置された動物は9.3±6.3g、イブジラスト2.5mg/kgで処置された動物は10.4±5.6g、ビヒクルで処置された動物は1±4.4g)。したがって、データは動物のモルヒネ処置を開始した朝の体重で標準化した(したがって最初の2日間のイブジラストが誘発する体重減少を排除した)。7日目に、モルヒネが誘発する体重減少は、イブジラスト7.5mg/kgで処置された動物で13.3±7.1g、イブジラスト2.5mg/kgで処置された動物で16.6±5.7g、ビヒクルで処置された動物で18.2±6.6gであった。体重減少は、ラットオピエートモデルにおいて離脱の古典的で客観的マーカーであり、高用量イブジラストによる減弱は、オピエート離脱の間の生理的利点を支持する。
【0147】
B 離脱行動
図5に示すように、2.5mg/kgおよび7.5mg/kgの投与量のイブジラストによる処置は、60分間の観察期間におけるナロキソン誘発性離脱行動の劇的な減少をもたらした。個々の行動ベースでは、イブジラストによる処置は、立ち上がり、探索および激しい震えを除いて全ての行動で減少をもたらし、一方ビヒクルで処置された動物においては何の変化も観察されなかった。図5では、実験の全ての動物(n=10/処置群)について各10分間の区分で観察した総離脱行動の和としてデータを示す。
【0148】
C 脳免疫組織化学
パラホルムアルデヒド潅流後にラットから回収した脳試料で、免疫組織化学分析を行った。ミクログリア活性化マーカーCD11bおよび星状細胞マーカーGFAPを調査した。図6に見られるように、慢性的モルヒネ投与は、ミクログリア活性化マーカーCD11bの明らかな上方制御をもたらした。イブジラストによる処置は、CD11bマーカーの増加を劇的に減少させた。デンシトメトリー分析(図7)によって、イブジラストは、2つの脳領域、すなわち中脳水道周囲灰白質、および脳における脊髄後角に相当する三叉神経核において、ミクログリア活性化マーカーCD11bの大幅な減少をもたらすことが明らかにされた。
【0149】
D 脳核のmRNA分析
脳組織試料からのインターロイキン−1mRNAを定量化した。モルヒネは、中脳水道周囲灰白質の背側領域においてインターロイキン−1mRNAの劇的な増加をもたらすが、中脳水道周囲灰白質の腹側領域ではもたらさない(図8)。イブジラストは、モルヒネが誘発する中脳水道周囲灰白質の背側領域におけるインターロイキン−1mRNAの増加を完全に遮断した。
【0150】
結論
モルヒネ処置の間のイブジラスト投与は、処置された動物の脳において、グリア細胞活性化および炎症誘発性サイトカイン産生の有意な減少をもたらす。ナロキソン誘発性離脱において、イブジラストを与えられた動物は、行動反応の有意な減少を示し、これはイブジラスト処置が、神経炎症およびオピエート離脱症候群と関連する行動上の症状を減弱させることを示した。
【0151】
(実施例5)
イブジラストは、モルヒネ依存症および自発性のオピオイド離脱を逆行させる
実験手順
病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラットを全ての実験で使用した。ラット(到着時350〜375g、Harlan Labs、Madison、WI)を、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23±3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。全ての手順について、コロラド大学(Boulder)の動物実験委員会の承認を得た。到着すると、雄Sprague−Dawleyラット(300〜400g)を別個に収容し、動物コロニーの遠隔測定室に1週間順応させた。研究者による5回×90分のセッションのハンドリングを次の週に行った。
【0152】
ラットにイソフルランで麻酔をかけ、深部体温を測定するエミッター(MiniMitter、Sun River、OR)を、腹膜腔内に埋め込んだ。深部体温を記録するために使用するのと同じエミッターを使用して、粗大運動を遠隔測定によって評価した。活動を計数するためにエミッターを除かなくてはならなかった。したがって、毛づくろいなどの静的動作は数えなかった。活動計測および深部体温を毎分測定し、120分に亘って平均化した動作を計算した(したがってデータを平準化した)。遠隔測定データの記録を実験全体に亘って行った。実験者が収容室に入った時間は、これが活動を増加させ、したがって誤差を生じさせるため分析から除外した。遠隔測定埋込みの時には、動物に2つの皮下の腰椎からの2ML2浸透圧ミニポンプ(Alzet、Cupertino、CA)を埋め込み、各々が14日間に亘り1時間当たり約5μl(したがって合わせて1時間当たり計10μl)を注入した。1つのポンプは、生理食塩水で予め満たしたPE60管のリード長を有し、モルヒネ送達を2日間遅らせた。したがって、ポンプは、1日目および2日目は1日当たりモルヒネ(または生理食塩水)6.25mgを、次いでそれ以降は1日当たり12.5mgを送達した。12日目に、動物に、7日間の1日2回のイブジラスト投与計画(生理食塩水投与量2.5ml/kg中35%PEG中で7.5mg/kgまたは2.5mg/kg)またはビヒクル(生理食塩水中35%PEG)を開始した(18日目の午後に最後の投与を完了)。朝の注入を8:45AM〜9:15AMに行い、午後の注入を4:45PM〜5:15PMに行った。14日目に、ポンプを除去し、(モルヒネを与えられた動物において)自発性のオピオイド離脱を誘発した。正確な用量計算を行い、オピオイドが誘発する体重減少を追跡記録するために、各投与セッションの前に体重を記録した(投与が行われない日にも行った)。
【0153】
結果
イブジラストは、自発性のオピオイド離脱が誘発する体重減少から動物を保護した。図9に示すように、体重変化の改善の傾向のみが低用量のイブジラストで観察されたが、高用量では、イブジラストは、実質的に体重減少を減弱させた。体重減少減弱のエンドポイントは、ラットにおける離脱緩和の重要な客観的測定結果と考えられる。
【0154】
(実施例6)
5日間のモルヒネおよびイブジラストによる処置後の側坐核ドーパミン微小透析
実験手順
病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラットを全ての実験で使用した。ラット(到着時に300〜325g、Harlan Labs、Madison、WI)を、自由に摂取できる標準のげっ歯類用飼料および水と共に、温度(23±3℃)および光(明:暗=12:12、0700時に点灯)を制御した部屋に収容した。全ての手順について、コロラド大学(Boulder)の動物実験委員会の承認を得た。到着すると、雄Sprague−Dawleyラット(300〜400g)を、ペアを組んで収容し、動物コロニーの遠隔測定室に1週間順応させた。研究者による5回×90分のセッションのハンドリング、および微小透析環境への動物の順応を次の週に行った。
【0155】
ハロタン麻酔下で、微小透析ガイドカニューレ埋込みを行った。CMA12ガイドカニューレ(CMA Microdialysis)を、均衡するように右または左側坐核を狙った(AP=+1.7、LM=±0.8、DV=−6.0)。PaxinosおよびWatsonのアトラス(1998年)を使用して、座標はブレグマからであった。ガイドカニューレおよび係留ねじ(CMA Microdialysis)を、3つの宝石商ねじおよび歯科用セメントで頭蓋骨に固定した。ラットは手術後個々に収容され、1週間回復させた。
【0156】
動物に7日間の投与計画を開始した(1回につき6匹の動物の群、処置群当たりn=10)。7日間に亘り動物は、1日2回の、イブジラスト(生理食塩水投与量2.5ml/kg中35%PEG中で7.5mg/kgまたは2.5mg/kg)またはビヒクル(生理食塩水中の35%PEG)の腹腔内注入を与えられた。朝の注入は、8:45AM〜9:15AMに行い、午後の注入を4:45PM〜5:15PMに行った。3日目に、動物に5日間のモルヒネまたはビヒクル(生理食塩水)(皮下注射1ml/kg)の依存性投与計画を開始した。モルヒネを朝または午後に投与する場合、イブジラスト注入の30分後に行った。依存性投与計画は、3日目:AMの投与5mg/kg、正午の投与5mg/kg、PMの投与5mg/kg;4日目:AMの投与7.5mg/kg、PMの投与12.5mg/kg;5日目:AMの投与15mg/kg;6日目:AMの投与17.5mg/kg;7日目:AMの投与22.5mg/kgで構成された。正確な用量計算を行い、オピオイドが誘発する体重減少を追跡記録するために、各投与セッションの前に体重を記録した。
【0157】
微小透析前の午後に(モルヒネおよびイブジラスト投与後6日目)、ラットをコロニー室と同じ明暗サイクルの透析室に移した。微小透析プローブ(CMA12、MWカットオフ20,000Da、2mm活性膜)をガイドカニューレに挿入し、ラットを、飼料および水を自由に摂取できる別々のプレキシグラス注入ボウル中に入れた。リンガー溶液(147mMのNaCl、2.97mMのCaCl、4.02mMのKCl、Baxter)を、CMA注入ポンプを使用してプローブを通して、一晩0.2μl/分の流量で灌流した。流量を翌朝1.5μl/分に増加させ、1時間の平衡期間の後、モルヒネの最終用量を投与し、試料回収を開始し、透析液を20分毎に手作業で回収し、分析するまで即座に−80℃中に置いた。一組の動物において、モルヒネ投与の60分後に、10mg/kg皮下投与の(投与量1ml/mg)ナロキソンによってオピオイド離脱を誘発した。回収チューブを、1%エタノール中の0.02%EDTA(抗酸化剤)3μlで予め満たした。3つのベースライン試料の回収後、上記と同様にモルヒネまたはビヒクルを投与した。回収の2週間以内に透析液をHPLCによって分析した。
【0158】
透析液中のドーパミンを、30℃に維持したESA HR80カラム(C18、3μm、80×3mm)に連結した、ESA5014B分析細胞およびESA5020孔辺細胞を有するESA5600A COULARRAY検出器を使用して決定した。移動相は、150mMのリン酸二水素ナトリウム一水和物、4.76mMのクエン酸一水和物、3mMのドデシル硫酸ナトリウム、50μMのEDTA、10%メタノール、および15%アセトニトリル(水酸化ナトリウムでpH=5.6)であった。電位は−75および+220mVに設定し、および孔辺細胞電位を、+250mVに設定した。27μlの注入量でESA542オートサンプラーによって注入を行った。毎日流す外部標準(Sigma−Aldrich、St Louis、MO)によって定量的比較を行った。
【0159】
プローブの位置を確認するため、ipのペントバルビタールナトリウム65mg/kgでラットを安楽死させた。脳を取り出し、冷却したイソペンタン中で凍らせ、−20℃で低温槽中で切断した(40μm)。切片をゼラチン処理したスライド上に載せ、クレシルバイオレットで染色し、カバースリップをした。プローブを側坐核内に入れられたラットのみを分析に含めた。
【0160】
結果
イブジラストによる処置は、モルヒネ依存症動物において、モルヒネ投与の間、およびナロキソン誘発性オピオイド離脱または自発性のオピオイド離脱の間に、モルヒネが誘発する側坐核ドーパミンの増加を劇的に減少させる結果となった(図10および11)。図10は、モルヒネ依存症動物における、イブジラスト7.5mg/kgで処置された動物において、ナロキソン誘発性オピオイド離脱(ナロキソン10mg/kgを、60分間皮下投与した)の間の、イブジラストが減少させる側坐核ドーパミン濃度を示す。図11は、モルヒネ依存症動物において、モルヒネ投与(0時において)後に、イブジラスト(7.5mg/kg)、またはイブジラストおよびモルヒネの組合せで処置された動物における自発性のオピオイド離脱の間に、イブジラストはまた、側坐核ドーパミン濃度を減少させたことを示す。
【0161】
結論
イブジラスト処置は、モルヒネ依存症のラットモデルにおいて、モルヒネ処置後の脳側坐核で観察されるドーパミン濃度の増加を有意に減少させることを示した。依存性薬物は、側坐核においてドーパミンの増加をもたらす(およびこの増加はこのような薬物と関連する「報酬」を媒介すると考えられている)ため、この結果は、イブジラスト治療が同様に、依存性を減少させ、任意の嗜癖障害の離脱を減弱し得ることを意味する。したがって、イブジラスト処置は、オピエートと関連する症候群だけではなく、覚醒剤(コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン)、カンナビノイド、およびアルコールなどの薬物の他のクラスの治療にも適応される。さらに、イブジラスト処置はまた、ギャンブルおよび過食などの「行動嗜癖」を減弱させ得るところまで拡大することもできる。
【0162】
本発明の好ましい実施形態を少し詳しく説明してきたが、ここで特許請求されているように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明らかな変形を行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、ラットにおけるイブジラストの薬物動態および組織分布を表す。
【図2】図2A、2B、2Cおよび2Dは、モルヒネ離脱症候群のラットモデルにおける、様々な処置および対照プロトコルについての、離脱症候群の時間経過(分)(総離脱スコアにより測定)である。
【図3】図3は、イブジラスト(AV411)の存在下および非存在下での、モルヒネで処置したラットの側坐核(NAc)におけるドーパミン(DA)濃度を示す。
【図4】図4は、イブジラスト(AV411)の存在下および非存在下での、モルヒネで処置したラットの微小透析の間の離脱行動を比較する。
【図5】図5は、モルヒネおよび低用量(2.5mg/kg)のイブジラスト、高用量(7.5mg/kg)のイブジラスト、またはビヒクル(PEG)で処置したラットのナロキソン誘発性離脱行動を比較する。
【図6】図6A〜6Cは、ラットから回収した脳試料の免疫組織化学解析を示す。図6Aは、ビヒクルおよびモルヒネで処置された動物からの脳試料を示す。図6Bは、未処置動物からの脳試料を示す。図6Cは、イブジラストおよびモルヒネで処置された動物からの脳試料を示す。CD11b染色によって示されるように、モルヒネは、中脳水道周囲灰白質領域における重大なミクログリア活性化をもたらす(図6A)。イブジラストによる処置は、慢性モルヒネ投与に起因するCD11bマーカーの上昇を劇的に減少させる(図6C)。
【図7】図7は、脳試料からのミクログリア活性化マーカーCD11bのデンシトメトリー分析を示す。イブジラストは、2つの脳領域すなわち、中脳水道周囲灰白質、および脳における脊髄後角に相当する三叉神経核において、ミクログリア活性化マーカーCD11bにおける大幅な減少をもたらす。
【図8】図8は、イブジラスト、イブジラストおよびモルヒネ、ならびにモルヒネおよびビヒクル(PEG)で処置した動物から回収した脳組織のおけるIL−1発現の比較を示す。モルヒネは、脳の中脳水道周囲灰白質の背側領域ではIL−1mRNAを増加させたが、中脳水道周囲灰白質の腹側領域では増加させなかった。イブジラストは、中脳水道周囲灰白質の背側領域におけるIL−1mRNAのモルヒネ誘発性増加を遮断した。
【図9】図9は、自発性のオピオイド離脱を経験している動物における、イブジラストによる体重減少の減弱を示す。
【図10】図10は、イブジラスト(7.5mg/kg)またはビヒクル(PEG)で処置した動物における、モルヒネ投与(0時)後の、および(ナロキソン10mg/kgを60分間皮下投与した)ナロキソンが引き起こすオピオイド離脱の間の、モルヒネ依存動物における側坐核ドーパミン濃度を示す。
【図11】図11は、イブジラスト(7.5mg/kg)、モルヒネ、またはイブジラストおよびモルヒネの組合せで処置した動物における、モルヒネ投与(0時)後の、モルヒネ依存動物における側坐核ドーパミン濃度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブジラストの有効量を対象に投与するステップを含む、対象の側坐核のドーパミン放出を抑制する方法。
【請求項2】
前記対象が嗜癖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イブジラストの治療有効量を、それを必要としている対象に投与するステップを含む、嗜癖を治療する方法。
【請求項4】
前記嗜癖が薬物嗜癖である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物嗜癖が、オピエート嗜癖、コカイン嗜癖、アンフェタミン嗜癖、メタンフェタミン嗜癖、カンナビノイド嗜癖、アルコール嗜癖、およびニコチン嗜癖からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬物嗜癖が、モルヒネ、メタドン、およびフェンタニルからなる群から選択される1種またはそれより多くのオピエートへのオピエート嗜癖である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記嗜癖が行動嗜癖である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記行動嗜癖が、摂食嗜癖、飲酒嗜癖、喫煙嗜癖、買い物嗜癖、ギャンブル嗜癖、セックス嗜癖、およびコンピュータ使用嗜癖からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イブジラストが、前記対象の嗜癖関連行動を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項10】
イブジラストが、前記対象における1種またはそれより多くの薬物への嗜癖と関連する欲求を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項11】
イブジラストが、前記対象における1種またはそれより多くの薬物への耐性を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項12】
イブジラストが、前記対象における薬物または嗜癖的行動と関連する刺激の誘因突出を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項13】
イブジラストが、前記対象における離脱症候群の症状を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項14】
イブジラストが、前記対象における体重減少を緩和し、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項15】
イブジラストが、前記対象におけるグリア細胞活性化を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項16】
イブジラストが、前記対象における星状細胞またはミクログリア活性化を減少させ、または解消する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イブジラストが、前記対象の脳内のCD11bを減少させる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項18】
イブジラストが、前記対象の脳の中脳水道周囲灰白質または三叉神経核領域のCD11bを減少させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
イブジラストが、前記対象におけるインターロイキン−1発現の薬物誘発性増加を減少させまたは解消する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記対象がヒトである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項21】
前記イブジラストが全身的に投与される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項22】
前記イブジラストが、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、または舌下に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記イブジラストが中枢に投与される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項24】
前記イブジラストがくも膜下腔内に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
イブジラストの複数回の治療有効用量が前記対象に投与される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項26】
イブジラストが毎日の投与計画に従って投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
イブジラストが1日2回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
イブジラストが間欠的に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
嗜癖を治療するために、イブジラスト以外の1種またはそれより多くの薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項30】
1種またはそれより多くの薬剤が、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、抗うつ剤、および不眠治療剤からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1種またはそれより多くの薬剤が、ブプレノルフィン、ナロキソン、メタドン、酢酸レボメタジル、L−αアセチルメタドール(LAAM)、ヒドロキシジン、ジフェノキシレート、アトロピン、クロルジアゼポキシド、カルバマゼピン、ミアンセリン、ベンゾジアゼピン、フェノジアジン、ジスルフィラム、アカンプロサート、トピラメート、オンダンセトロン、セルトラリン、ブプロピオン、アマンタジン、アミロリド、イスラジピン、チアギャビン、バクロフェン、プロプラノロール、デシプラミン、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、ドキセピン、フルオキセチン、イミプラミン、モクロベミド、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、トリプトファン、ベンラファキシン、トラゾドン、クエチアピン、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、ガバペンチン、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1回またはそれより多くの用量のイブジラストを投与するステップを含む、哺乳動物対象においてオピオイド離脱症候群を治療する方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記オピオイド離脱症候群が、前記対象におけるオピオイド投与の減少または中止によってもたらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記オピオイドが、モルヒネ、メタドン、およびフェンタニルからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記オピオイドがモルヒネである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記オピオイドがフェンタニルである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記オピオイド離脱症候群が、オピオイドアンタゴニストの投与によってもたらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記オピオイドアンタゴニストが、ナロキソンまたはナルトレキソンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記イブジラストが全身的に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記イブジラストが、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、または舌下に投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記イブジラストが中枢に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記イブジラストがくも膜下腔内に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
イブジラストの複数回の治療有効用量が対象に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
イブジラストが毎日の投与計画に従って投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
イブジラストが1日2回投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
イブジラストが間欠的に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
オピオイド離脱の治療のために、イブジラスト以外の1種またはそれより多くの薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項49】
1種またはそれより多くの薬剤が、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、およびベンゾジアゼピンからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
1種またはそれより多くの薬剤が、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
イブジラストが、前記対象における体重減少を緩和し、または解消する、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
イブジラストが、前記対象におけるグリア細胞活性化を減少させ、または解消する、請求項32に記載の方法。
【請求項53】
イブジラストが、前記対象における星状細胞またはミクログリア活性化を減少させ、または解消する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
イブジラストが、前記対象の脳内のCD11bを減少させる、請求項32に記載の方法。
【請求項55】
イブジラストが、前記対象の脳の中脳水道周囲灰白質または三叉神経核領域内のCD11bを減少させる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
イブジラストが、前記対象におけるインターロイキン−1発現の薬物誘発性増加を減少させ、または解消する、請求項32に記載の方法。
【請求項57】
対象の側坐核のドーパミン放出を抑制するための、医薬の製造におけるイブジラストの使用。
【請求項58】
嗜癖を治療するための、医薬の製造におけるイブジラストの使用。
【請求項59】
オピオイド離脱症候群を治療するための、医薬の製造におけるイブジラストの使用。
【請求項1】
イブジラストの有効量を対象に投与するステップを含む、対象の側坐核のドーパミン放出を抑制する方法。
【請求項2】
前記対象が嗜癖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イブジラストの治療有効量を、それを必要としている対象に投与するステップを含む、嗜癖を治療する方法。
【請求項4】
前記嗜癖が薬物嗜癖である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物嗜癖が、オピエート嗜癖、コカイン嗜癖、アンフェタミン嗜癖、メタンフェタミン嗜癖、カンナビノイド嗜癖、アルコール嗜癖、およびニコチン嗜癖からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬物嗜癖が、モルヒネ、メタドン、およびフェンタニルからなる群から選択される1種またはそれより多くのオピエートへのオピエート嗜癖である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記嗜癖が行動嗜癖である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記行動嗜癖が、摂食嗜癖、飲酒嗜癖、喫煙嗜癖、買い物嗜癖、ギャンブル嗜癖、セックス嗜癖、およびコンピュータ使用嗜癖からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イブジラストが、前記対象の嗜癖関連行動を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項10】
イブジラストが、前記対象における1種またはそれより多くの薬物への嗜癖と関連する欲求を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項11】
イブジラストが、前記対象における1種またはそれより多くの薬物への耐性を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項12】
イブジラストが、前記対象における薬物または嗜癖的行動と関連する刺激の誘因突出を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項13】
イブジラストが、前記対象における離脱症候群の症状を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項14】
イブジラストが、前記対象における体重減少を緩和し、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項15】
イブジラストが、前記対象におけるグリア細胞活性化を減少させ、または解消する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項16】
イブジラストが、前記対象における星状細胞またはミクログリア活性化を減少させ、または解消する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イブジラストが、前記対象の脳内のCD11bを減少させる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項18】
イブジラストが、前記対象の脳の中脳水道周囲灰白質または三叉神経核領域のCD11bを減少させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
イブジラストが、前記対象におけるインターロイキン−1発現の薬物誘発性増加を減少させまたは解消する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記対象がヒトである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項21】
前記イブジラストが全身的に投与される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項22】
前記イブジラストが、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、または舌下に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記イブジラストが中枢に投与される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項24】
前記イブジラストがくも膜下腔内に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
イブジラストの複数回の治療有効用量が前記対象に投与される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項26】
イブジラストが毎日の投与計画に従って投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
イブジラストが1日2回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
イブジラストが間欠的に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
嗜癖を治療するために、イブジラスト以外の1種またはそれより多くの薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項30】
1種またはそれより多くの薬剤が、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、抗うつ剤、および不眠治療剤からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1種またはそれより多くの薬剤が、ブプレノルフィン、ナロキソン、メタドン、酢酸レボメタジル、L−αアセチルメタドール(LAAM)、ヒドロキシジン、ジフェノキシレート、アトロピン、クロルジアゼポキシド、カルバマゼピン、ミアンセリン、ベンゾジアゼピン、フェノジアジン、ジスルフィラム、アカンプロサート、トピラメート、オンダンセトロン、セルトラリン、ブプロピオン、アマンタジン、アミロリド、イスラジピン、チアギャビン、バクロフェン、プロプラノロール、デシプラミン、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、ドキセピン、フルオキセチン、イミプラミン、モクロベミド、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、トリプトファン、ベンラファキシン、トラゾドン、クエチアピン、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、ガバペンチン、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1回またはそれより多くの用量のイブジラストを投与するステップを含む、哺乳動物対象においてオピオイド離脱症候群を治療する方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記オピオイド離脱症候群が、前記対象におけるオピオイド投与の減少または中止によってもたらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記オピオイドが、モルヒネ、メタドン、およびフェンタニルからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記オピオイドがモルヒネである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記オピオイドがフェンタニルである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記オピオイド離脱症候群が、オピオイドアンタゴニストの投与によってもたらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記オピオイドアンタゴニストが、ナロキソンまたはナルトレキソンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記イブジラストが全身的に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記イブジラストが、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、または舌下に投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記イブジラストが中枢に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記イブジラストがくも膜下腔内に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
イブジラストの複数回の治療有効用量が対象に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
イブジラストが毎日の投与計画に従って投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
イブジラストが1日2回投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
イブジラストが間欠的に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
オピオイド離脱の治療のために、イブジラスト以外の1種またはそれより多くの薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項49】
1種またはそれより多くの薬剤が、鎮痛剤、NSAID、制吐剤、止瀉薬、α−2−アンタゴニスト、およびベンゾジアゼピンからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
1種またはそれより多くの薬剤が、ナルトレキソン、パラセタモール、メトクロプラミド、ロペラミド、クロニジン、ロフェキシジン、およびジアゼパムからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
イブジラストが、前記対象における体重減少を緩和し、または解消する、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
イブジラストが、前記対象におけるグリア細胞活性化を減少させ、または解消する、請求項32に記載の方法。
【請求項53】
イブジラストが、前記対象における星状細胞またはミクログリア活性化を減少させ、または解消する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
イブジラストが、前記対象の脳内のCD11bを減少させる、請求項32に記載の方法。
【請求項55】
イブジラストが、前記対象の脳の中脳水道周囲灰白質または三叉神経核領域内のCD11bを減少させる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
イブジラストが、前記対象におけるインターロイキン−1発現の薬物誘発性増加を減少させ、または解消する、請求項32に記載の方法。
【請求項57】
対象の側坐核のドーパミン放出を抑制するための、医薬の製造におけるイブジラストの使用。
【請求項58】
嗜癖を治療するための、医薬の製造におけるイブジラストの使用。
【請求項59】
オピオイド離脱症候群を治療するための、医薬の製造におけるイブジラストの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−509975(P2009−509975A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532501(P2008−532501)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/037563
【国際公開番号】WO2007/038551
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【出願人】(505466664)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/037563
【国際公開番号】WO2007/038551
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【出願人】(505466664)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド (5)
【Fターム(参考)】
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