説明

薬物有害反応(ADR)および薬効を診断するための予測ツールとしての一塩基多型

本発明は、ヒト個体がスタチン治療後に薬物有害応答を受ける危険性あるかどうか、またはヒト個体がスタチンの高応答者、または低応答者か、または良い、もしくは悪い代謝体であるかどうかを決定する診断法、およびオリゴおよび/またはポリヌクレオチドまたは誘導体を含み、ならびに抗体を含むキットを提供する。さらに本発明は、ヒト個体が心血管疾患の危険性があるかどうかを決定する診断法および抗体を含むキットを提供する。さらに本発明は、多型配列および他の遺伝子を提供する。本発明はさらに、治療薬を同定する方法に有用で、そして心血管疾患を処置するか、または医薬剤応答に影響を与えるための薬剤の調製に有用である表現型関連(PA)遺伝子ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに関し、該ポリヌクレオチドは:PA遺伝子ポリペプチドに関する完全長のcDNAのような機能的周囲に含まれる、配列のセクションに示される対立遺伝子変異を含み、そしてPA遺伝子プロモーター配列を含むか、もしくは含まない配列番号1〜131を含む群から選択される。配列:配列セクションには、全ての表現型関連(PA)SNPおよび隣接するゲノム配列を含む。関連研究(baySNP)で使用した多型位置が示される。時々別の変異体が周辺ゲノム配列に見出され、各々ICUPACコードによってマークされる。それらの取囲んでいるSNPを明確に分析しなかったが、それらはbaySNPとして表現型と同様の関連性を示すようである(連鎖不均衡のため:Reich D.E. et al. Nature 411, 199-204. 2001)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、脂質低下薬治療およびその医薬剤の薬物有害反応に対する応答を評価するために有用な遺伝子多型に関する。加えて、本発明は、次のものに限定するわけではないが、アロテローム硬化症、虚血/再潅流、高血圧、再狭窄、動脈炎症、心筋梗塞および脳卒中を含むヒトにおける心血管的危険性を評価するために有用な遺伝子多型に関する。具体的には、本発明は正常または非心血管疾患状態のヒトと比較して、心血管疾患を持つヒトに個別に存在する、および/または心血管疾患に関する医薬物に応答する遺伝子変異を同定し、そして記載する。さらに本発明は、心血管疾患処置および/または心血管疾患の予防的治療としての化合物の同定および治療的使用に関する方法を提供する。さらに本発明は心血管疾患の処置について臨床的評価を受けている患者の診断的モニタリング、および臨床試験における化合物の効力をモニタリングするための方法を提供する。さらに本発明は薬物有害反応を回避し、そして患者に最大の利益を達成するための薬物用量の調整を可能とする個人的な医薬物適用スキームを予測するために遺伝子変異を使用する方法を提供する。さらに、本発明は種々の心血管疾患の診断的評価および予後、ならびにかかる状態に対する素因を示す個体の同定のための方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
心血管疾患は先進工業国全体に存在する重大な健康上の危険性である。
【0003】
心血管疾患に限定するわけではないが、心臓および血管系の以下の障害を含む:鬱血性心不全、心筋梗塞、アテローム硬化症、心臓の虚血性疾患、冠動脈性心疾患、すべての種類の心房および心室不整脈、高血圧性血管疾患および末梢血管疾患を含む。
【0004】
心不全は病態生理学的状態と定義されており、ここで心機能の異常は、代謝組織の必要性に釣り合った速度で心臓が血液を送れないことが原因である。これには根本的原因から独立して、例えば高出力および低出力、急性および慢性、右側または左側、心収縮時または心拡張期のなどの、すべての形態のポンプ送出機能不全を含む。
【0005】
心筋梗塞(MI)は、一般にアテローム硬化症によりそれまでに狭窄した冠動脈の血栓閉塞に続いて起こる冠状動脈血流の突然の低下により引き起こされる。MIの予防(原発的および2次的防止)にはMIの急性処置および合併症の防止も含まれる。
【0006】
虚血性疾患は、冠状動脈血流が制限され、心筋が要求する酸素を満たすには不十分である潅流を引き起こす状態である。この疾患群には安定狭心症、不安定狭心症および無症候性虚血を含む。
【0007】
不整脈は、すべての形態の心房性および心室性頻拍(心房頻脈、心房粗動、心房細動、洞房再入性頻拍、早期興奮症候群、心室性頻脈、心室粗動、心室細動)ならびに徐脈型の不整脈を含む。
【0008】
高血圧性の血管疾患は、原発性ならびにあらゆる種類の2次的動脈性高血圧(腎臓性、内分泌性、神経性、その他)を含む。
【0009】
末梢血管疾患は、動脈および/または静脈流が減少して血液供給と組織の酸素要求量との間に不均衡をもたらす血管疾患と定義されている。これには慢性末梢動脈性閉塞性疾患(PAOD)、急性動脈血栓症および塞栓症、炎症性血管障害、レイノー現象および静脈障害が含まれる。
【0010】
最も一般的な血管疾患であるアテローム硬化症は、心臓発作、脳卒中および四肢の壊疽の主な原因であって、そのために死亡の主要因である。アテローム硬化症は複雑な疾患であり、多くの細胞型および分子因子が関与している(詳細な説明については、Ross, 1993, Nature 362: 801-809 および Lusis, A. J., Nature 407, 233-241 (2000))を参照されたい)。正常環境では、このプロセス(動脈壁の内皮および平滑筋細胞(SMC)への傷害に対する保護的応答)は、炎症に先行し且つ炎症を伴う、線維脂肪および線維状病変またはプラークの形成から成りたつ。アテローム硬化症が進行した病変は、関係する動脈を閉塞し、そして多様な損傷形態に対する過剰な炎症性線維増殖性応答を起こし得る。例えば剪断応力は、血液の乱流が起こる循環系の領域で、例えば分岐点および不規則構造などでのアテローム硬化症プラークが頻発する原因であると考えられている。
【0011】
アテローム硬化症プラークの形成において最初に観察され得る事象は、血液で生じた単球が血管内皮層に付着し、内皮下の空間を通って移動する際に起こる。同時に隣接する内皮細胞は、酸化低密度リポタンパク質(LDL)を生産する。次いでこれらの酸化LDLは、単球上に発現したスカベンジャー受容体を介して単球に大量に取り込まれる。この取り込みに関するスカベンジャー経路は本来のLDL(nLDL)がnLDL特異的受容体により取り込まれる調節された経路とは対照的に、単球により調節されない。
【0012】
これらの脂質が充填された単球は泡沫細胞と呼ばれ、そして脂肪線条の主要な構成成分である。泡沫細胞とそれらを取り巻く内皮およびSMCとの間の相互作用は、慢性的な局所的炎症状態を導き、これは最終的に平滑筋細胞の増殖および遊走、ならびに線維状プラークの形成を導く可能性がある。かかるプラークは関連のある血管を閉塞し、これにより血流を制限し、虚血が生じる。
【0013】
虚血は不十分な潅流を理由とする臓器組織における酸素供給の欠乏を特徴とする状態である。かかる不十分な潅流には多数の自然要因があり、数例を挙げると、アテローム硬化症または再狭窄損傷、貧血または脳卒中を含む。例えばバイパス手術中の血流の障害などの多くの医学的介入も虚血を導く。時には、疾患がある心血管組織に起因することに加えて、虚血は虚血性心疾患のような心血管組織に影響を及ぼすことがあり得る。しかし、虚血は、酸素供給の欠如をこうむったいかなる臓器でも起こり得る。
【0014】
心臓虚血の最も多い原因は、心外膜の冠状動脈のアテローム硬化症疾患である。これら血管の管腔が縮小することにより、アテローム硬化症は基本状態における心筋潅流に絶対的な減少を引き起こすか、または流量の需要が増加した時に潅流における適切な増加を制限する。冠血流量は、動脈血栓、痙攣および稀に冠状塞栓、ならびに梅毒大動脈炎による心門の狭窄化によっても制限され得る。肺動脈から左前下行冠動脈の異常な起点のような先天性異常は、幼児に心筋虚血および梗塞を引き起こす可能性があるが、この原因は成人では大変稀である。心筋虚血は、高血圧または大動脈弁狭窄症による重篤な心室肥大のように、心筋の酸素要求量が異常に増加する場合にも起こり得る。これは冠状アテローム硬化症により引き起こされるものと区別できない狭心症で存在し得る。極度に重篤な貧血またはカルボキシヘモグロビンが存在する場合のように、血液の酸素運搬能の低下は心筋虚血の稀な原因である。左心室肥大による酸素要求量の増大および冠状アテローム硬化症に続いて生じる酸素供給の低下のような虚血の2以上の原因が共存することも稀ではない。
【0015】
先行の研究は、心血管疾患を導く正常な細胞機能のミスリードを誘発することに関与すると予想される特定の遺伝子変異の役割を定めることを目標とする。しかし、そのような取り組みは、疾患プロセスに関与する多種多様な遺伝子変異を同定することはできない。
【0016】
現在、心血管障害に唯一利用できる処置は、個人の現実的欠損を標的とはしていない医薬物を基にした医薬品であり;その例には、高血圧に対してはアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤および利尿薬、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)に対してはインスリン補充、脂質代謝異常(dyslipidaemia)に対してはコレステロール低下法、心血管障害に対しては抗凝血剤、β−遮断薬ならびに肥満のための体重減量法が含まれる。標的を定めた処置法が利用可能であれば、特定の治療計画に対する応答を予測することは可能であり、かかる処置の効果を顕著に上げることができる。標的を定めた処置には疾患の感受性について正確な診断試験を要するが、いったんこれらの試験が開発されれば、標的を定めた治療を利用する機会は普及するだろう。そのような診断試験は、最初に高血圧の危険が最も高い個体を同定するために役立ち、そして予防的措置として役立つ該個体の生活習慣または食事を変えることができる。診断試験と標的を定めた治療との組み合わせに関連する利点には、投与する薬物の用量低下、すなわち個人が被る望ましくない副作用の量の低下が含まれる。より重篤な場合では、診断試験により、早期外科的介入が症状のさらなる悪化の防止に有用であることを示唆することが可能である。
【発明の開示】
【0017】
本発明の目的は、心血管疾患に対する素因または感受性に関する遺伝子診断を提供することである。別の関連する目的は、この疾患に対して素因を持つか、または感受性がある対象において疾患の発症を低下させ、または防止し、または遅らせるための処置を提供することである。さらなる目的は、この診断を行うための手段を提供することである。
【0018】
従って、本発明の第一の態様は、個体における疾患の診断方法を提供するものであって、該方法は、該個体において、実施例に挙げた遺伝子において、1つの、様々な、またはすべての遺伝子型を決定することを含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、疾患に対して素因を持つか、または感受性がある個体を同定する方法を提供するものであって、該方法は該個体の実施例に挙げる遺伝子において、1つの、様々な、またはすべての遺伝子型を決定することを含んでなる。
【0020】
本発明は、疾患症状の発症前に、または重篤な症状の発症前に有用な結果をもたらし得る遺伝子分析を介する疾患または特定の疾患症状の診断を可能とする点で有利である。本発明はさらに、遺伝子分析を介して疾患に対する素因もしくは感受性、または特定の疾患状態の診断を可能とする点で有利である。
【0021】
本発明は、他の診断方法の結果の確認または実証にも使用することができる。すなわち本発明の診断は、独立した技術として、または診断のための他の方法および装置と組み合わせて適切に使用することができ、後者の場合、本発明は診断を評価できるさらなる試験を提供する。
【0022】
本発明は、個体の遺伝子型決定方法として対立遺伝子相関性(Allelic association)を使用することから生じる;心血管疾患に関する分子遺伝子的根拠に関する調査を可能とする。特定の実施態様では、本発明は実施例に挙げた遺伝子の配列における多型を試験する。本発明は、「悪い」血清脂質の個体を「良い」血清レベルの個体と比べた時、対立遺伝子頻度が有意に異なることを示すことにより、この多型と心血管疾患に対する素因との間の関連性を証明する。「良い、および悪い」血清脂質レベルの意味は、表1aに定める。
【0023】
特定の疾患状態は、疾患の出現前に処置または治療を受けることによって利益を得るだろう、すなわち患者の罹患を減少し、または防止し、または遅らせることができる;これは、疾患に対する素因または感受性に関する事前診断が分析できれば、より高い信頼性でもって行うことができる。
【0024】
薬理ゲノミクスおよび薬物有害反応
薬物有害反応(ADR)は、依然として主要な臨床的問題である。最近のメタアナリシス(meta-analysis)は、1994年に米国でADRが100000件の死亡の原因であり、それらが第4から6番目に多い死亡の原因となったことを示した(Lazarou 1998, J. Am. Med. Assoc. 279:1200)。これらの数値は厳しく批判されたが、それらはADRの重大性を強調するものである。実際に、ADRが入院全体の5%を占め、そしてADRにより患者あたりの費用増加が〜$2500となり入院期間の長さが2日まで延びるという十分な証拠がある。またADRは薬剤離脱症状の最も多い原因の1つであり、これは製薬産業に莫大な財政的意味合いを示す。ADRは、恐らく幸いにも特定の薬剤を摂取したこれらわずかな人にのみ影響を及ぼす。多くの場合には、感受性を決定する因子は明らかではないが、遺伝的因子の役割についての興味が増している。実際に1950年代後期および1960年代初期から、プソイドコリンエステラーゼ(ブチリルコリンエステラーゼ)およびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(G6PD)のような酵素欠損の発見を通して、ADRに対して素因を持つ患者における遺伝的変異の役割が認識された。より最近では、ちょうど完成されたヒトゲノムの最初の設計図を用いて、薬理ゲノミクス(pharmacogenomics)およびトキシコゲノミックス(toxicogenomics)のような用語を導入することにより、この分野における興味が再起した。本質的に薬理ゲノミクスの目的は個人対応の薬剤を生産することであって、これにより薬剤の種類および用量の投与は個人個人の遺伝子型にあつらえられる。すなわち薬理ゲノミクスという用語は、有効性および毒性の両方を包含している。
【0025】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤(「スタチン」)は、コレステロール生合成の律速段階を触媒する酵素HMG−CoAレダクターゼを特異的に阻害する。これらの薬剤は、糖尿病および非糖尿病患者の中年および老年の男性および女性における心臓発作のような冠状動脈疾患および冠状動脈有害事象の原発的および続発的危険性を低下させるために効果があり、そしてしばしば高脂血症患者に処方される。冠状動脈または心臓疾患の続発防止に使用されるスタチンは、脳卒中の危険性、全死亡率および罹患率、および心筋梗塞の発作を有意に低下させ;スタチンの使用には、内皮および線維素溶解機能の向上、および血小板血栓形成の減少とも関連がある。
【0026】
これら薬剤の長期投与中の耐容性は、重要な問題である。骨格筋が関与する有害反応は稀でなく、時には筋疾患および横紋筋融解症のような骨格筋が関与する重篤な有害反応が起こる可能性があり、薬剤の中断を要する。さらに血清クレアチンキナーゼ(CK)の上昇は、スタチンが関連する有害事象(adverse event)の兆候となり得る。このような有害事象の程度は、CKレベルの増加の程度(正常な[ULN]の上限と比較して)から読み取ることができる。
【0027】
時には、関節痛は、単独または筋痛を伴って報告された。また、肝臓トランスアミナーゼの上昇はスタチン投与と関連があった。
【0028】
スタチン治療に対する薬剤応答は1種の効果であるり、即ちすべての既知の、および恐らくこれまでに見いだされていないすべてのスタチンでも同じ利益および有害効果を共有することが考えられる(Ucar,M.et al. ,Drug safety 2000,22:441)。1つのスタチンに対する薬剤応答を予測するための診断用ツールの発見は、他のスタチンを用いる治療を導く手助けとなるだろう。
【0029】
本発明は、スタチン治療に対する患者個人の応答を予測するための診断試験を提供する。そのような応答には、薬物有害応答の程度、脂質低下のレベルまたは疾患状態に及ぼす薬剤の影響を含むが、これらに限定するわけではない。これらの診断試験は、単独で、または別の診断試験または別の薬剤処方と組み合わせてスタチン治療に対する応答を予測することができる。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも部分的には、いわゆる「候補遺伝子(candidate gene)」(以下に定義する)の多型領域の特異的対立遺伝子が、CVDまたは薬剤応答に関連するという知見に基づく。
【0031】
本発明に関して、以下の候補遺伝子を分析した:
−心組織で発現されることが判明している遺伝子(Hwang et al.,Circulation 1997,96:4146−4203)。
−以下の代謝経路に由来する遺伝子およびその調節エレメント。
【0032】
脂質代謝
多数の研究が血清脂質レベルと心血管疾患との関連を示した。この群に入る候補遺伝子には、コレステロール経路、アポリポタンパク質およびそれらの修飾因子の遺伝子を含むが、これらに限定するわけではない。
【0033】
凝血
心臓の虚血性疾患、そして特に心筋梗塞は、血栓閉塞により誘起され得る。この群に属する遺伝子は、凝固カスケードおよびそれらの調節エレメントのすべての遺伝子を含む。
【0034】
炎症
アテローム硬化症の合併症は、西洋社会における最も多い死亡要因である。概略的には、アテローム硬化症は、修飾されたリポタンパク質、単球由来マクロファージ、T細胞および動脈壁の正常な細胞エレメントの相互作用から生じる慢性の炎症状態であると考えられる。この炎症プロセスは、最終的に動脈管腔に突きでる複雑な病変、またはプラークの発生を導き得る。最終的にプラークは破裂し、そして血栓症が心筋梗塞および脳卒中の急性の臨床的合併症をもたらす(Glass et al.,Cell 2001,104:503−516)。
【0035】
結果的には、限定するわけではないがサイトカイン、サイトカイン受容体および細胞付着分子を含む炎症プロセスに関連するすべての遺伝子は、CVDの候補遺伝子であると言える。
【0036】
グルコースおよびエネルギー代謝
グルコースおよびエネルギー代謝は、脂質の代謝と相互依存し(上記参照)、前者の経路も候補遺伝子を含む。一般にエネルギー代謝は肥満と関連しており、CVDの独立した危険因子である(Melanson et al.,Cardiol Rev 2001 9:202-207)。加えて、高血中グルコースレベルは多くの微小血管およびマクロ血管合併症と関連しているので、CVDに対する個体の素因に影響を及ぼすかもしれない(Duckworth,Curr Atheroscler Rep 2001,3:383-391)。
【0037】
高血圧症
高血圧症はCVDの独立した危険因子であるので、収縮期および拡張期の血圧調節に関与する遺伝子もCVDに関する個体の危険性に影響を及ぼす(Safar,Curr Opin Cardiol 2000,15:258-263)。興味深いことに、高血圧症が、糖尿病ではない患者に比べて糖尿病患者で約2倍の頻度であることから、高血圧と糖尿病(上記参照)とは相互依存しているようである。逆に最近のデータは、高血圧者は、正常血圧者よりも糖尿病を発症し易いことを示唆している(Sowers et al.,Hypertension 2001,37:1053-1059)。
【0038】
薬剤応答に関連する遺伝子
これらの遺伝子には、薬剤の吸収、分布、代謝、排出および毒性(ADMET)に関与する代謝経路を含む。この群の中の有名なメンバーには、薬剤代謝に関与する多くの反応を触媒するチトクロームP450タンパク質がある。
【0039】
非分類遺伝子
上で述べたように、心血管疾患を導くか、または薬剤に対する患者個体の応答を規定するメカニズムは、完全に解明されていない。したがって上に列挙した範疇に割り当てられない候補遺伝子も分析した。本発明は、少なくとも一部が、未知の生理学的機能を持つゲノム領域にある多型性の知見に基づく。
【0040】
結果
関連解析を行った後、驚くべきことに、我々は多数の候補遺伝子中に分析した患者の以下の表現型との強い相関を示す多型部位を見いだした:本明細書で使用する「健康」とは、既存のCVDに罹患しておらず、また彼らの血清脂質レベルの分析結果を通してCVDに対して上昇した危険性も示さない個体を指す。本明細書で使用する「CVD傾向」とは、既存のCVDおよび/またはCVDになる高い危険性を与える血清脂質分析結果の個体を指す(健康およびCVD傾向の血清脂質レべルの定義に関しては表1aを参照にされたい)。本明細書で使用する「高応答者」とは、比較的少量の所定薬剤からの利益を得る患者を指す。本明細書で使用する「低応答者」とは、薬剤適用から利益を得るために比較的高い用量を必要とする患者を称する。「耐容患者」とは、薬物有害反応を現すことなく高用量の医薬剤に耐容することができる個体を指す。本明細書で使用する「ADR患者」とは、ADRに罹患しているか、またはわずかに少用量の医薬剤の適用を受けた後に臨床的症状(血中のクレアチンキナーゼ上昇のような)を示す、個体を指す(薬剤応答の表現型の詳細な定義については、表1bを参照にされたい)。
【0041】
上記した表現型のいずれかと有意に関連することが分かった候補遺伝子中の多型部位は、「表現型関連SNP」(PA SNP)と呼ぶ。PA SNPを持つ各ゲノムの座は、この遺伝子座の実際の機能にかかわらず、「表現型関連遺伝子」(PA遺伝子)と呼ぶ。
【0042】
特に驚くべきことに我々は、以下の遺伝子中にCVD、薬効(EFF)または薬物有害反応(ADR)に関連するPA SNPを見いだした:
【0043】
ABCAl:ATP−結合カセット、サブファミリーA(ABC1)、メンバー1
この遺伝子によってコードされた膜関連タンパク質は、ATP−結合カセット(ABC)トランスポーターのスーパーファミリーのメンバーである。ABCタンパク質は、多様な分子を細胞の外膜と内膜を横切って輸送する。ABC遺伝子は、7つの明確なサブファミリー(ABC1、MDR/TAP、MRP、ALD、OABP、GCN20、White)に分けられる。このタンパク質は、ABC1サブファミリーのメンバーである。ABC1サブファミリーのメンバーは、専ら多細胞真核生物において見出される主要なABCサブファミリーのみを含む。その基質としてコレステロールに関して、このタンパク質は、コレステロール排出ポンプとして、細胞性脂質除去経路において機能する。この遺伝子中の変異は、タンジール病および家族性高密度リポタンパク質欠乏症と関連付けられている。
【0044】
ABCBl:ATP−結合カセット、サブファミリーB(MDR/TAP)、メンバー1
この遺伝子によってコードされた膜関連タンパク質は、ATP−結合カセット(ABC)トランスポーターのスーパーファミリーのメンバーである。ABCタンパク質は、細胞外膜および細胞内膜を横切って多様な分子を輸送する。ABC遺伝子は、7つの明確なサブファミリー(ABC1、MDR/TAP、MRP、ALD、OABP、GCN20、White)に分けられる。このタンパク質は、MDR/TAPサブファミリーのメンバーである。MDR/TAPサブファミリーのメンバーは、多剤耐性に関与する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、広い基質特異性を有する生体異物化合物に対するATP−依存性の薬物排出ポンプである。多剤耐性細胞中の薬物蓄積を低減させる役割を果たし、しばしば抗癌剤に対する耐性の進行を媒介する。このタンパク質は、血液脳関門におけるトランスポーターとしても機能する。
【0045】
ACACB:アセチル-コエンザイムAカルボキシラーゼβ
アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)は、複合化多機能性酵素システムである。ACCは、ビオチン含有酵素であって、脂肪酸合成における律速段階であるアセチル-CoAのマロニル-CoAへのカルボキシル化を触媒する。ACC−βは、マロニル-CoAがカルニチン-パルミトイル-CoAトランスフェラーゼIを阻害する能力によって脂肪酸の酸化を制御すると考えられており、それは脂肪酸の取り込みおよびミトコンドリアによる酸化における律速段階であると考えられる。ACC−βは、脂肪酸生合成というよりはむしろ、脂肪酸の酸化の制御に関与し得る。2つのACC−βアイソフォームの存在についての証拠が存在する。
【0046】
ADRB3:アドレナリン作用性、β−3−、受容体
ADRB3遺伝子産物、β-3-アドレナリン作用性受容体は、主に脂肪組織中に存在しており、脂肪分解の制御および熱発生に関与する。βアドレナリン作用性受容体は、Gタンパク質の作用によるアデニル酸シクラーゼのエピネフリンおよびノルエピネフリン誘導性活性化に関与する。
【0047】
AKAPl:キナーゼ(PRKA)アンカータンパク質1
A−キナーゼ・アンカータンパク質(AKAP)は、構造的に異なったタンパク質の一群であり、これはタンパク質キナーゼA(PKA)の調節サブユニットに結合して、そして該ホロ酵素を細胞内の各位置に固定するという一般的な機能を有する。この遺伝子は、AKAPファミリーのメンバーをコードする。この遺伝子の選択的スプライシングは、サイズの異なる2つのアイソフォームをコードしている2つの転写産物の変異体をもたらす。この両方のアイソフォームは、PKAの調節サブユニットのタイプIおよびIIに結合し、それらをミトコンドリアに固定する。長い方のアイソフォームと比べると、短い方のアイソフォームは、K-相同性モチーフを欠失しており、これは典型的なタンパク質と関連するRNA−結合ドメインであって、RNA触媒作用、mRNAプロセシングまたは翻訳に関与する。長い方のアイソフォームは、cAMP−依存性シグナルトランスダクション経路およびRNAを特異的な細胞区分へと導く方向付に関与すると考えらえる。短い方のアイソフォームの機能は決定されていない。
【0048】
AKAP10:A−キナーゼ(PRKA)アンカータンパク質10
A−キナーゼ・アンカータンパク質(AKAP)は、構造的に異なるタンパク質の一群でであって、これはタンパク質キナーゼA(PKA)の調節性サブユニットに結合して、そしてホロ酵素を細胞内の各位置に固定するという一般的な機能を有する。この遺伝子は、AKAPファミリーのメンバーをコードする。コードされたタンパク質は、PKAの調節性サブユニットのタイプIおよびタイプIIの両方と相互作用する;従って、二重特異性のAKAPである。このタンパク質は、ミトコンドリアに非常に多く含まれる。それは、RGS(Gタンパク質シグナル経路の調節因子)ドメインに加えてPKA−RIIサブユニット結合ドメインを含有する。ミトコンドリアの局在化およびRGSドメインの存在は、PKAおよびGタンパク質シグナル伝達経路におけるこのタンパク質の機能について重要な示唆を示し得る。
【0049】
AKAP13:A−キナーゼ(PRKA)アンカータンパク質13
A−キナーゼ・アンカータンパク質(AKAP)は、構造的に異なるタンパク質の一群であって、これはタンパク質キナーゼA(PKA)の調節性サブユニットに結合して、ホロ酵素を細胞内の各位置に固定するという一般的な機能を有する。この遺伝子は、AKAPファミリーのメンバーをコードする。この遺伝子の選択的スプライシングは、dbIオンコジーン相同(DH)ドメインおよびプレクストリン相同(PH)ドメインを含有する異なるアイソフォームをコードする少なくとも3つの転写物変異体をもたらす。DHドメインは、低分子量GTP結合タンパク質のKho/Racファミリーについてのグアニンヌクレオチド交換活性化と関連があり、不活性化GTPアーゼからシグナルを伝達し得る活性形態への変換をもたらす。PHドメインは多機能性である。従って、これらのアイソフォーム機能は、Rhoシグナル経路を調整するためのスキャッホルドタンパク質として機能し、さらにタンパク質キナーゼA−固定化タンパク質として機能する。
【0050】
AMPDl:アデノシンモノホスフェートデアミナーゼ1(アイソフォームM)
アデノシンモノホスフェートデアミナーゼ1は、骨格筋において、AMPのIMPへの脱アミノ化を触媒し、プリンヌクレオチドサイクルにおいて重要な役割を担う。2つの別の遺伝子としてAMPD2およびAMPD3が、各々肝臓および赤血球特異的アイソフォームとして同定された。筋特異的酵素欠乏症は、明らかに運動誘導性筋疾患の一般的な原因であり、ヒトにおける代謝性筋疾患のおそらく最も一般的な原因である。
【0051】
APOE:アポリポタンパク質E
カイロミクロンレムナントおよび超低密度リポタンパク質(VLDL)レムナントは、肝臓において受容体が媒介するエンドサイトーシスによるこの循環から迅速に除去される。アポリポタンパク質E(カイロミクロンの主なアポタンパク質)は、肝臓細胞および末梢細胞上の特異的な受容体に結合する。ApoEは、トリグリセリドに富むリポタンパク質構成成分の正常な異化に必須である。APOE遺伝子は、APOC1およびAPOC2を含むクラスター中で染色体19にマップされる。アポリポタンパク質Eの欠損は、家族性の異βリポタンパク血症、またはIII型高リポタンパク血症(HLPIII)を生じ、ここで上昇した血漿コレステロールおよびトリグリセリドが、カイロミクロンおよびVLDLレムナントの不十分なクリアランスの結果である。
【0052】
APOM:アポリポタンパク質M
この遺伝子によってコードされたタンパク質はアポリポタンパク質であり、リポカリン型タンパク質ファミリーのメンバーである。それは、高密度リポタンパク質と関連して見出され、低密度リポタンパク質およびトリグリセリドを多く含むリポタンパク質と関連して見出されることは少ない。コードされたタンパク質は、プラズマ膜から分泌されるが、膜に結合したままで、そこで脂質輸送に関与する。この遺伝子に対して2つの異なるアイソフォームをコードする2つの転写物変異体が見出され、それらの一つは完全に特徴分析されている。
【0053】
ARHGAPl:RhoGTPアーゼ活性化タンパク質1
rho、racおよびCdc42Hsに対するGTPアーゼ-活性化タンパク質;SH3結合ドメインを持つ。
【0054】
ATP1A2:ATPアーゼ、Na/K 輸送、α 2(+)ポリペプチド
ATP2A1:ATPアーゼ、Ca++輸送、心筋、速筋線維1
この遺伝子は、SERCACa(2)-ATPアーゼの一つをコードしており、これは筋肉細胞の筋小胞体または小胞体中に位置する細胞内性ポンプである。この酵素は、サイトゾルから筋小胞体内腔へのカルシウムの遷移と共役したATPの加水分解を触媒し、そして筋肉興奮状態および収縮に関与する。この遺伝子中の突然変異は、運動中に筋肉弛緩の機能障害を増強することを特徴とするブロディ(Brody)疾患に関するいくつかの常染色体の後退的形態の原因となる。選択的スプライシングにより、異なるアイソフォームをコードしている2つの転写物変異体が生じる。
【0055】
BAT3:HLA−B関連転写物3
遺伝子のクラスター、BAT1−BAT5は、TNFαとTNFβに対する遺伝子に近接して局在する。これらの遺伝子は、ヒトの主要組織適合性複合化クラスIII領域内に全て存在する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、核タンパク質である。アポトーシスの制御および熱ショックタンパク質の調節と関連があると考えられている。この遺伝子について説明された3つの選択的スプライシング転写物変異体が存在する。
【0056】
BAT4:HLA−B関連転写物4
遺伝子のクラスター、BAT1-BAT5は、TNFαとTNFβに対する遺伝子の付近に位置している。これらの遺伝子は、ヒト主要組織適合性複合化クラスHI領域内の全てに存在する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、免疫に関するいくつかの態様に関与すると考えられる。
【0057】
BAT5:HLA−B関連転写物5
遺伝子のクラスター、BAT1-BAT5は、TNFαとTNFβに対する遺伝子の付近に位置している。これらの遺伝子は、ヒト主要組織適合性複合化クラスDI領域内に全て存在する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、免疫に関するいくつかの態様に関与すると考えられる。
【0058】
BRD3:ブロモドメイン含有物3
この遺伝子は、RING3タンパク質、セリン/スレオニンキナーゼをコードする遺伝子に対するそのホモロジーを基にして同定された。この遺伝子は9q34に局在し、9q34はいくつかの主要組織適合性複合化(MHC)遺伝子を含有する領域である。コードされたタンパク質の機能は知られていない。
【0059】
CDC42BPB:CDC42結合タンパク質キナーゼβ(DMPK様)
この遺伝子によってコードされたタンパク質は、Ser/Thrタンパク質キナーゼファミリーのメンバーである。このタンパク質は、PAKキナーゼの結合ドメインと類似したCdc42/Rac−結合p21結合ドメインを含有する。このタンパク質のこのキナーゼドメインは、筋硬直性ジストロフィーキナーゼ関連ROKのドメインと最も密接に関連する。ラットにおける類似した遺伝子の研究により、このキナーゼが細胞骨格再構築におけるCdc42の下流のエフェクターとして作用し得ることが示唆された。
【0060】
CDC42EP2:CDC42エフェクタータンパク質(RhoGTPアーゼ結合)2
CDC42、低分子量RhoGTPアーゼは、下流のエフェクタータンパク質とのその相互作用を介してF−アクチン含有構造の形成を調節する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、CDC42エフェクタータンパク質のBorgファミリーのメンバーである。Borgファミリータンパク質は、CRIB(Cdc42/Rac相互結合)ドメインを含有する。それらはCDC42に結合し、CDC42の機能を負に調製する。繊維芽細胞における優勢な負の突然変異体CDC42タンパク質とこのタンパク質の共発現は、仮足形成を誘導することが見出され、これは、このタンパク質のアクチンフィラメントのアセンブリおよび細胞形状制御における役割を示唆している。
【0061】
CDC42EP3:CDC42エフェクタータンパク質(RhoGTPアーゼ結合物)3
CDC42、低分子量Rho GTPアーゼは、下流のエフェクタータンパク質とのその相互作用を介してF−アクチン含有構造の形成を調節する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、CDC42エフェクタータンパク質のBorgファミリーのメンバーである。Borgファミリータンパク質は、CRIB(Cdc42/Rac相互結合)ドメインを含有する。それらはCDC42に結合し、CDC42の機能を負に調節する。このタンパク質は、CDC42との相互作用が可能であって、さらにras相同遺伝子ファミリー、メンバーQ(ARHQ/TCIO)とも相互作用し得る。線維芽細胞におけるこのタンパク質の発現は、仮足形成を誘導することを示している。
【0062】
CDC42EP4:CDC42エフェクタータンパク質(RhoGTPアーゼ結合物)4
この遺伝子産物は、CDC42-結合タンパク質ファミリーのメンバーである。このファミリーのメンバーは、RhoファミリーGTPアーゼと相互作用し、アクチン細胞骨格の組織化を調節する。このタンパク質は、GTP依存性様式においてCDC42およびTClOGTPアーゼの両方と結合することを示している。線維芽細胞において過剰発現した場合、このタンパク質は仮足形成を誘導することができ、これはアクチンフィラメントのアセンブリおよび細胞形状制御を誘導するという役割を示唆している。
【0063】
CENPCl:セントロメアタンパク質C1
セントロメアタンパク質C1は、セントロメア自己抗原であり、内側の動原体板の一成分である。このタンパク質は、適当な動原体板の大きさを保ち、適切な時期に、後期へと移行するのに必須である。推定偽遺伝子は、染色体12上に位置する。
【0064】
CETP:コレステリルエステル転送タンパク質、原形質
コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)は、コレステリルエステルをリポタンパク質間で移送する。CETPは、アテローム性動脈硬化症に対して有効であると考えられ得る。
【0065】
CPB2:カルボキシペプチダーゼB2(原形質、カルボキシペプチダーゼU)
カルボキシペプチダーゼは、C末端ペプチド結合を加水分解する酵素である。このカルボキシペプチダーゼファミリーには、メタロ−、セリンおよびシステインカルボキシペプチダーゼを含む。それらの基質特異性に従い、これら酵素はカルボキシペプチダーゼA(脂肪族残基を開裂する)またはカルボキシペプチダーゼB(塩基性アミノ残基を開裂する)と呼ぶ。この遺伝子にコードされるタンパク質はトリプシンにより活性化され、そしてカルボキシペプチダーゼB基質上で作用する。トロンビン活性化後、成熟タンパク質は線維素溶解をダウンレギュレートする。この遺伝子およびそのプロモーター領域について多型性が記載された。利用できる配列データ分析は、異なるアイソフォームをコードするスプライス変異体を示す。
【0066】
CROT:カルニチン−O−オクタノイルトランスフェラーゼ
CSF2:コロニー刺激因子2(顆粒球-マクロファージ)IL3:インターロイキン 3(多機能コロニー刺激因子)
この遺伝子によってコードされるタンパク質は、顆粒球およびマクロファージの産生、分化ならびに機能を制御するサイトカインである。タンパク質の活性形態は、細胞外にホモ二量体として見出される。この遺伝子は、染色体領域5q31で関連遺伝子のクラスターに局在しており、これは5q−症候群および急性骨髄性白血病における間質性欠失と関連することが知られている。クラスター中の他の遺伝子は、インターロイキン4、5および13をコードしている遺伝子を包含する。
【0067】
DFNA5:難聴性、常染色体の優性遺伝子5
聴覚機能障害は、記載した40以上の遺伝子座を有する異質な状況である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、胎児性の蝸牛に発現するが、その機能は知られていない。非症候性聴覚機能障害は、この遺伝子における突然変異と関連がある。
【0068】
F2:凝固因子II(トロンビン)
凝固因子IIは、タンパク質分解的に解裂し、最終的に失血の収束をもたらす凝固カスケードの第一段階にあるトロンビンを形成する。F2は、発達および出生後生活中に血管整合性を維持するためにも働く。F2における突然変異は、多様な形態の血栓症およびプロトロンビン不全症をもたらす。
【0069】
FKBPlA:FK506結合タンパク質IA、12kDa
この遺伝子によってコードされたタンパク質は、イムノフィリンタンパク質ファミリーのメンバーであり、これはタンパク質フォールディングおよびトラフィッキングに関与する免疫調節および基本的な細胞性のプロセシングにおける役割を果たす。このコードタンパク質は、免疫抑制剤FK506およびラパマイシンを結合するcis-transプロリルイソメラーゼである。それは、タイプI TGF−β受容体を包含するいくつかの細胞内シグナル伝達経路タンパク質と相互作用する。それは、四量体の骨格筋肉リアノジン受容体を包含する複数の細胞内カルシウム放出チャンネルとも相互作用する。マウスでは、この相同な遺伝子の欠失は、左心室筋緻密化障害として知られる先天的な心臓疾患をもたらす。この遺伝子に対する複数の選択的スプライシング転写物変異体の証拠が存在するが、いくつかの変異体の完全長の特性は決定されていない。
【0070】
FYN:SRC、FGR、YESと関連のあるFYNオンコジーン
この遺伝子は、タンパク質-チロシンキナーゼオンコジーンファミリーのメンバーである。それは、細胞増殖の制御に影響を与える膜関連チロシンキナーゼをコードする。このタンパク質は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼのp85サブユニットと関連があり、fyn−結合タンパク質と相互作用する。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシング転写物変異体が存在する。
【0071】
GHR:成長ホルモン受容体
生物学的に活性な成長ホルモン(MIM 139250)は、その膜貫通受容体(GHR)と結合し、これにより二量体化し、インスリン様成長因子I(IGFl;MIM 147440)の合成および分泌をもたらす細胞内シグナル伝達経路を活性化する。原形質において、IGFlは、可溶性IGFl受容体(IGFlR;MIM 147370)に結合する。標的細胞で、この複合体は、成長に導く細胞分裂および同化促進応答をもたらすシグナル伝達経路を活性化する。[OMIMにより提供されている]
【0072】
HSPA9B:70kDa熱ショックタンパク質 9B(モルタリン-2)
この遺伝子によってコードされた産物は、熱誘導性メンバーと構成的に発現するメンバーとの両方を含む熱ショックタンパク質70ファミリーに属する。後者は、ヒートショック関連タンパク質と呼ばれる。この遺伝子は、熱ショック関連タンパク質をコードする。このタンパク質は、細胞増殖の制御において役立つ。また、それはシャペロンとしても作用し得る。
【0073】
IQGAPl:IQモチーフ含有GTPアーゼ活性化タンパク質1
IQGAP2:IQモチーフ含有GTPアーゼ活性化タンパク質2
LAG3:リンパ球活性化遺伝子3
リンパ球活性化タンパク質3はIgスーパーファミリーに属し、4つの細胞外Ig様ドメインを含有する。このLAG3遺伝子は、8つのエキソンを含有する。配列データ、エキソン/イントロンの編成、および染色体局在性の全ては、LAG3とCD4との親密な関係性を示す。
【0074】
LCAT:レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ
この遺伝子は、細胞外コレステロールエステル化酵素、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼをコードする。このコレステロールのエステル化酵素は、コレステロール輸送に必須である。この遺伝子中の突然変異は、フィッシュ・アイ病だけでなくLCAT欠乏症を発症させることが判っている。
【0075】
LCP2:リンパ球サイトゾルタンパク質2(76kDaのSH2ドメイン含有白血球タンパク質)
SLP−76は、元々白血病T細胞系Jurkatにおいて、T細胞受容体(TCR)連結反応後のZAP−70タンパク質チロシンキナーゼの基質として同定された。このSLP−76遺伝子座は、ヒト染色体の5q33に局在しており、遺伝子構造はマウスで部分的に特徴づけられている。ヒトとマウスのcDNAはいずれも、533個のアミノ酸タンパク質をコードしており、これは72%の同一性を示し、3つのモジュールドメインを含む。NH2-末端は、PESTドメインを包含する酸性領域とTCR連結後にホスホリル化される数個のチロシン残基を含有する。また、SLP−76は、中央の高プロリン領域とCOOH末端のSH2ドメインを含む。受容体連結反応後に構成的および誘導的にSLP−76と結合する多くのさらなるタンパク質が同定されており、これは、SLP−76がアダプタータンパク質として、またはスキャホルドタンパク質として機能するという考えを支持している。SLP−76欠失T細胞系またはマウスを使用した研究は、T細胞の発生および活性化の促進において陽性の役割を担うという強力な証拠を提供した。
【0076】
LIF:白血病阻害因子(コリン作動性分化因子)
白血病阻害因子は、マクロファージの分化を誘導するサイトカインである。ニューロン間のコミュニケーションにおける役割についてよく知られている神経伝達物質および神経ペプチドは、単球やマクロファージを活性化し、免疫細胞における走化性を誘導することもできる。LIFは、様々な受容体および転写因子を介してシグナルをだす。LIFは、BMP2と結合して一次胚神経前駆細胞上で相乗的に作用し、星状細胞を誘導する。
【0077】
LIMKl:LIMドメインキナーゼ1
約40個の既知の真核性LMタンパク質が存在しており、それらを含むLIMドメインと呼ばれる。LIMドメインとは、2つのジンクフィンガーを含有する高度に保存されたシステリンを多く含む構造である。ジンクフィンガーは、DNAやRNAに結合することによって作用するが、LIMモチーフは、タンパク質-タンパク質相互作用を媒介するようである。LIMキナーゼ-1およびLlMキナーゼ-2は、2つのN末端のLIMモチーフとC末端タンパク質キナーゼドメインとの独特な組合せを有する低分子量サブファミリーに属する。LIMKlは、細胞内シグナル経路の成分であると考えられ、脳の発達に関与し得る。LIMKl半接合体は、ウイリアムズ症候群の空間構成視覚認識不全に関係している。2つのスプライシング変異体が同定された。
【0078】
LIPA:リパーゼA、リソソーム酸、コレステロールエステラーゼ(ウォルマン病)
LIPAは、リパーゼA、リソソーム酸リパーゼ(コレステリルエステル加水分解酵素としても知られている)をコードしている。リソソームにおいてこの酵素は、コレステリルエステルとトリグリセリドの加水分解を触媒するように機能する。LIPAにおける突然変異は、ウォルマン病およびコレステリルエステル蓄積疾患をもたらす。
【0079】
LPA:リポタンパク質、Lp(a)
LPL:リポタンパク質リパーゼ
LPLは、心臓、筋肉および脂肪組織で発現するリポタンパク質リパーゼをコードする。LPLはホモ二量体として機能し、そして受容体媒介性リポタンパク質の取込みに対しては、トリグリセリドヒドロラーゼおよびリガンド/架橋因子の二つの機能を持つ。LPL欠乏症をもたらす重大な変異は、I型高リポタンパク質血症を生じるが、LPLのあまり極端でない変異は多くのリポタンパク質代謝不全と関連性する。
【0080】
LTA:リンホトキシンα(TNFスーパーファミリー、メンバー1)
リンホトキシンα、腫瘍壊死因子ファミリーのメンバーは、リンパ球によって産生されるサイトカインである。LTAは、高誘導性、分泌性であって、ホモ三量体分子として存在する。LTAは、リンホトキシン-αを細胞表面に固定するリンホトキシン-βと共にヘテロ三量体を形成する。LTAは、多様な刺激応答、免疫賦活応答および抗ウイルス応答を媒介する。また、LTAは、増殖中に二次的リンパ器官の形成に関与し、アポトーシスの役割を担う。
【0081】
MTND4L:NADHデヒドロゲナーゼ4L
NDUFA6:NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)1α部分複合体6、14kDa
NDUFB10:NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)1β部分複合体10、22kDa
NADH−ユビキノン酸化還元酵素のサブユニット(複合体I);NADHからユビキノンへと電子を運ぶ
NDUFB5:NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)1β 部分複合体5、16kDa
この遺伝子によってコードされるタンパク質は、NADH:ユビキノン 酸化還元酵素(複合体I)の複数サブユニットのサブユニットである。哺乳類複合化Iは、45個の異なるサブユニットを含む。それはミトコンドリアの内膜に位置する。このタンパク質は、NADHデヒドロゲナーゼ活性および酸化還元酵素活性を有する。それは、電子をNADHから呼吸鎖へと運ぶ。酵素に対する迅速な電子受容体は、ユビキノンであると考えられる。
【0082】
NDUFC2:NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)1、未知の部分複合体2、14.5kDa
NADH−ユビキノン酸化還元酵素(複合体I)のサブユニット;NADHからユビキノンに電子を輸送する。
NFl:ニューロフィブロミン1(神経線維腫症、フォンレックリングハウゼン病、ワトソン病)
神経線維腫症タイプ1と関連した変異により、NF1を識別する。NF1は、タンパク質ニューロフィブロミンをコードしており、これはrasシグナル伝達経路の負の調節因子であることが判っている。1型の神経線維腫症に加えて、NF1における変異は、若年性骨髄単球性白血病をもたらし得る。選択的スプライシングNF1mRNA転写物は単離されているが、その機能はいまだ不明なままである。
【0083】
GRAF:フォーカルアドヒージョン・キナーゼppl25(FAK)と関連のあるGTPアーゼ調節因子
SPC25:AD024−タンパク質
TOSO:Fas誘導性アポトーシスの調節因子
ZNF202:ジンクフィンガー タンパク質202
PAK2:p21(CDKN1A)活性化キナーゼ2
p21活性化キナーゼ(PAK)は、Rho GTPアーゼを細胞骨格再編成および核伝達経路と結びつける重要なエフェクターである。PAKタンパク質は、低分子量GTP結合タンパク質、CDC42およびRAClに対する標的として作用するセリン/スレオニンキナーゼのファミリーであり、広範囲の生物学的活動において関連があると考えられる。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、カスパーゼ媒介性アポトーシスの際にタンパク質分解によって活性化され、死にむかう細胞におけるアポトーシス事象を調節に働きうる。
【0084】
PDCD6IP:タンパク質を相互作用するプログラムされた細胞死6
この遺伝子は、プログラムされた細胞死において関与すると考えられるタンパク質をコードする。マウスの細胞を用いる研究は、このタンパク質の過剰発現がアポトーシスを遮断し得ることを示している。さらに、この遺伝子産物は、カルシウム依存様式において、アポトーシスに必須とされるタンパク質であるPDCD6遺伝子産物と結合する。この遺伝子産物は、エンドフィリン、すなわちエンドサイトーシスにおいて膜の形状を調節するタンパク質にも結合する。この遺伝子産物およびエンドフィリンの過剰発現は、細胞死に対する保護に部分的に関与し得る細胞質空砲変性をもたらす。
【0085】
PDE4D:ホスホジエステラーゼ4D、cAMP特異的(ホスホジエステラーゼ E3ダンス(dunce)相同体、ショウジョウバエ
CAMP−特異的ホスホジエステラーゼ4D;ショウジョウバエdncとの類似性を示す、これは学習および記憶の突然変異体のdunceにおいて影響を受けたタンパク質である。
【0086】
PDGFRA:血小板由来成長因子受容体、αポリペプチド
この遺伝子は、血小板由来成長因子ファミリーのメンバーに対する細胞表面チロシンキナーゼ受容体をコードする。これらの成長因子は、間葉起源の細胞にとってマイジェンである。受容体単量体に結合する成長因子の特性により、血小板由来成長因子受容体αおよびβポリペプチドの両方からなる機能的受容体がホモ二量体またはヘテロ二量体であるかどうかが決定される。ノックアウトマウスにおける研究は、ホモ接合体が致死的である場合、受容体に対するマウスヘテロ接合体が腎臓不全の表現型を示すことから、血小板由来成長因子受容体のα形態が腎臓の発達に対して特に重要であることを示す。
【0087】
PFKM:ホスホフルクトキナーゼ、筋肉型
PLA2G4C:ホスホリパーゼA2、グループIVC(細胞質、カルシウム依存性)
PLPl:プロテオリピドタンパク質1(ペリツェウス・メルツバッハー病、痙攣性パラプレジア2、合併症なし)
PPP1R12C:タンパク質ホスファターゼ1、調節性(阻害剤)サブユニット12C
MYPT2に対する低類似性
PRKAR2B:タンパク質キナーゼ、cAMP依存性、調節性、タイプII、β
PRKCB1:タンパク質キナーゼC、β1
【0088】
PTK2B:PTK2Bタンパク質チロシンキナーゼ2β
この遺伝子は、イオンチャンネルのカルシウム誘導調節およびmapキナーゼ伝達経路の活性化に関与する細胞質性タンパク質チロシンキナーゼをコードする。コードされたタンパク質は、カルシウムの流入を増加させる神経ペプチド活性化受容体、または神経伝達物質とニューロンの活動を調節する下流シグナル、との間を仲介する重要なシグナル伝達経路を示し得る。コードされたタンパク質は、細胞内カルシウム濃度の増加、ニコチン酸アセチルコリン受容体活性化、膜脱分極、またはタンパク質キナーゼC活性化に関する応答の際に、迅速なチロシンホスホリル化および活性化を受ける。このタンパク質は、CRK関連基質、ネフロシスチン、FAKに関連するGTPアーゼ調節因子、およびGRB2のSH2ドメインに結合することが示されている。コードされたタンパク質はタンパク質チロシンキナーゼのFAKサブファミリーのメンバーではあるが、他のサブファミリー由来のキナーゼとは有意な配列類似性は十分にない。2つの異なるアイソフォームをコードしている4つの転写物変異体が、この遺伝子に関して見出された。
【0089】
PYGM:ホスホリラーゼ、グリコーゲン;筋肉(McArdle症、グリコーゲン蓄積疾患タイプV)
RABGGTA:Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ、αサブユニット
RYRl:リアノジン受容体1(骨格)
RYR3:リアノジン受容体3
SCARBl:スカベンジャー受容体クラスB、メンバー1
【0090】
SCO2:SCOシトクロームオキシダーゼ欠損相同体2(酵母)
哺乳類シトクロームcオキシダーゼ(COX)は、シトクロームcから分子酸素への還元等量の転移を触媒し、ミトコンドリア内膜を横切ってプロトンを汲みだす。酵母では、2つの関連のあるCOXアセンブリ遺伝子である、SCO1およびSCO2(シトクロームcオキシダーゼの合成)により、サブユニット1と2をホロタンパク質中に組み込むことが可能となる。この遺伝子は、酵母SCO2遺伝子のヒト相同体である。
【0091】
SELE:セレクチンE(内皮付着分子1)
内皮白血球接着分子-1は、サイトカイン刺激性内皮細胞によって発現される。それは、細胞の血管周縁への接着を媒介することによって、炎症部位での血液白血球の蓄積に関与すると考えられる。それは、構造的態様、例えばレクチンおよびEGF様ドメインに続いて6つの保存されたシステイン残基を含有する短いコンセンサスリピート(SCR)ドメインの存在を示すものである。これらのタンパク質は、細胞接着分子のセレクチンファミリーに属する。この遺伝子は、ヒトゲノムにおいて1コピーで存在し、DNAの約13kbにわたり14のエキソンを含有する。接着分子は、白血球と内皮細胞との相互作用に関与し、またアテローム性動脈硬化症の発症に関与することがわかっている。
【0092】
SEPPl:セレノタンパク質P、原形質、1
セレノタンパク質Pは、細胞外糖タンパク質であり、複数のセテノシステイン残基を含有することが知られている唯一のセレノタンパク質である。このタンパク質の2つのアイソフォームは、Sep51およびSep61である。Sep51はC末端配列の一部を欠損している。セレノタンパク質Pは、ヘアピンに結合し、内皮細胞と会合する。それらは、細胞外空間およびセレニウムの移動における酸化防止として関係がある。
【0093】
SERPINAl:セリン(またはシステイン)プロテイナーゼ阻害剤、cladeA(α-1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)、メンバー1
α-1-アンチトリプシンは、プロテアーゼ阻害剤であり、その欠乏は、肺気腫および肝臓疾患と関連している。このタンパク質は、染色体14番の長腕末端上に位置する遺伝子(PI)にコードされている。[OMIMにより提供されている]
【0094】
SERPINA5:セリン(またはシステイン)プロテイナーゼ阻害剤、cladeA(α-1抗プロテアーゼ、アンチトリプシン)、メンバー5
SERPINB2:セリン(またはシステイン)プロテイナーゼ阻害剤、cladeB(オボアルブミン)、メンバー2
SLC6A8:溶質担体ファミリー6(神経伝達物質のトランスポーター、クレアチン)、メンバー8
ナトリウムと塩素に依存するクレアチントランスポーター;神経伝達物質トランスポーターファミリーのメンバー
【0095】
SSAl:シューグレン症の抗原Al(52kDa、リボヌクレオタンパク質自己抗原SS−A/Ro)
この遺伝子によってコードされたタンパク質は、三つ叉モチーフ(TRIM)ファミリーのメンバーである。TRIMモチーフには、3つの亜鉛結合ドメインであるRING、B−boxタイプ1およびB−boxタイプ2、ならびにコイルドコイル領域が包含される。このタンパク質は、1つのポリペプチドと4つの低分子量RNA分子の一つを包含するRoSSAリボヌクレオタンパク質の一部である。RoSSA粒子は、細胞原形質および核の両方に局在する。RoSSAは、シューグレン症および全身性紅斑性エリテマトーデスに罹患した患者中の自己抗原と相互作用する。RoSSA顆粒の機能は決定されていない。この遺伝子に対する2つの選択的スプライス転写物変異体が記載されている;しかし、一つの変異体の完全長形態は決定されていない。
【0096】
STCH:ストレス70タンパク質シャペロン、ミクロソーム関連、60kDa
SULT1A2:スルホトランスフェラーゼファミリー、細胞質、IA、フェノール選択性、メンバー2
スルホトランスフェラーゼ酵素は、多くのホルモン、神経伝達物質、薬剤、および生体異物化合物の硫酸抱合体を触媒する。これらの細胞質の酵素は、それらの組織分布および基質特異性において異なる。遺伝子構造(エキソンの数および長さ)は、ファミリーメンバー内では類似している。この遺伝子は、熱安定性酵素活性を持つ2つのフェノールスルオホトランスフェラーゼの一つをコードする。同一タンパク質をコードする2つの選択的スプライス変異体が記載されている。
【0097】
SYK:脾臓チロシンキナーゼ
TAPl:トランスポーター1、ATP−結合カセット、サブファミリーB(MDR/TAP)
この遺伝子によってコードされた膜関連タンパク質は、ATP−結合カセット(ABC)トランスポーターのスーパーファミリーのメンバーである。ABCタンパク質は、細胞外および細胞内膜を通過する多様な分子を移送する。ABC遺伝子は、7つの異なるサブファミリー(ABC1、MDR/TAP、MRP、ALD、OABP、GCN20、White)に分けられる。このタンパク質は、MDR/TAPサブファミリーのメンバーである。MDR/TAPサブファミリーのメンバーは多剤耐性に関与する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、クラスI分子がアセンブルする膜結合画分へ、小胞体を通過する分解済みの細胞質ペプチドの汲み出しに関与する。この遺伝子中の変異は、強直性脊椎炎、インスリン依存性糖尿病およびセリアック病と関連し得る。
【0098】
TAP2:トランスポーター2、ATP−結合カセット、サブファミリーB(MDR/TAP)
この遺伝子によってコードされた膜関連タンパク質は、ATP−結合カセット(ABC) トランスポーターのスーパーファミリーのメンバーである。ABCタンパク質は、細胞外および細胞内膜を通過する多様な分子を移送する。ABC遺伝子は、7つの異なるサブファミリー(ABC1、MDR/TAP、MRP、ALD、OABP、GCN20、White)に分けられる。このタンパク質は、MDR/TAPサブファミリーのメンバーである。MDR/TAPサブファミリーのメンバーは、多剤耐性に関与する。この遺伝子は、遺伝子ファミリーメンバーABCB2に対して7kbテロメアに位置する。この遺伝子によってコードされたタンパク質は、抗原提示に関与する。このタンパク質は、ペプチドを細胞質から小胞体へと輸送するために、ABCB2と共にヘテロ二量体を形成する。この遺伝子中の変異は、強直性脊椎炎、インスリン依存性糖尿病およびセリアック病と関連があり得る。この遺伝子の選択的スプライシングにより2つの産物が作成され、これはペプチド選択性およびMHCクラスI分子の表面発現の回復レベルにおいて異なる。
【0099】
THBD:トロンボモジュリン
TR1M28:3要素モチーフ含有28 遺伝子座ID:
TRIP10:甲状腺ホルモン受容体インターリアクター(interactor)10
FERおよびFes/Fpsチロシンキナーゼの非キナーゼドメインとの類似性;活性化Cdc42と結合し、アクチン細胞骨格を調節し得る;SH3ドメインを含有する
【0100】
UGT2B15:UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリー、ポリペプチドB15
VEGF:血管内皮成長因子
多くのポリペプチドマイトジェン、例えば塩基性線維芽細胞成長因子(MIM 134920)および血小板由来成長因子(MIM 173430, MIM 190040)は、広範囲の様々な細胞型に対して活性である。対照的に、血管内皮成長因子は、血管内皮細胞にとって主要なマイトジェンである。しかし、それは、血小板由来成長因子に構造的に関連がある。
【0101】
WASL:ウィスコット・アルドリッチ症候群様
タンパク質のウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)ファミリーは、類似のドメイン構造を共有し、そして細胞表面上で受容体からアクチン細胞骨格までのシグナル伝達経路に関与する。多数の様々なモチーフの存在により、それらは多くの異なる刺激によって調節され、複数のタンパク質と相互作用するということが示唆される。近年の研究では、これらのタンパク質は、直接あるいは間接的に、低分子量GTPアーゼ、アクチンフィラメントの形成を調節することが知られているCdc42、および細胞骨格再編成する複合体、Arp2/3、と会合するということを示している。このWASL遺伝子産物は、WASタンパク質の相同体であるが、WASとは異なり普遍的に発現され、神経組織で最も高い発現を示す。それは、Cdc42を直接結合し、長いアクチンの微小突起の形成を誘導することが知られている。
【0102】
CACNA2D2:カルシウムチャンネル、電位依存性、α 2/δサブユニット2
TFAP2B:転写因子AP−2β(活性化エンハンサー結合タンパク質2β)
TRITl:tRNAイソペンテニルトランスフェラーゼ1
この酵素は、A(37)で細胞質性およびミトコンドリアtRNAの両方を修飾して、イソペンテニルA(37)を与える。
【0103】
UGT2A1:UDPグリコシルトランスゲラーゼ2ファミリー、ポリペプチドA1
PA SNPは、染色体上で隣接遺伝子中の他のSNPにも連鎖するので(連鎖不平衡)、それらSNPはマーカーSNPとしても使用できる。最近の報告では、SNPが100kb、場合により150kbにわたって連鎖することが示された(Reich D.E. et al. Nature 411, 199-204, 2001)。したがってPA SNP近傍領域にあるSNPはPA SNPに連鎖している可能性があり、そしてこれにより診断マーカーとなることができる。これらの関連性は方法の遺伝的多型について記載した通りに行うことができる。
【0104】
定義
便宜的に、本明細書、実施例および特許請求の範囲の中で使用する特定の用語および語句の意味を以下に提供する。さらに定義自体は本発明のさらなる背景を説明することを意図するものである。
【0105】
本明細書中で「対立遺伝子変異体(Allelic variant)」と互換的に使用される「対立遺伝子」という用語は、遺伝子またはその一部分の選択的形態を称する。対立遺伝子は、相同染色体の同じ座または位置を占める。個体がある遺伝子について2つの同じ対立遺伝子を持つ時、この個体はその遺伝子または対立遺伝子についてホモ接合型であると言う。個体がある遺伝子について2つの異なる対立遺伝子を持つ時、この個体はその遺伝子についてヘテロ接合型であると言う。特定遺伝子の対立遺伝子は、互いに1個または数個のヌクレオチドが異なっていてもよく、そしてヌクレオチドの置換、欠失および挿入を含むことができる。遺伝子の対立遺伝子は突然変異を含む遺伝子の形態でもよい。
【0106】
用語「遺伝子の多型領域の対立遺伝子変異体」とは遺伝子の領域を指すものであって、他の個体の遺伝子のその領域に見いだされる数個のヌクレオチド配列の1つを有するものを称する。
【0107】
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較目的で並べることができる各配列中の位置を比べることにより決定できる。比較した配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸で占められている場合、分子はその位置で相同的である。配列間の相同性の程度は、配列が共有する対合または相同的位置の数の関数である。「無関係」または「非相同的」配列は、本発明の配列の1つと40%未満の同一性、好ましくは25%未満の同一性を共有する。
【0108】
用語「核酸の相同体」とは、核酸またはその相補鎖のヌクレオチド配列とある程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を称する。配列番号Xを有する2本鎖核酸の相同体は、配列番号Xまたはその相補鎖とある程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を含むことを意図している。核酸の好適な相同体は、核酸またはその相補鎖とハイブリダイズすることができる。
【0109】
本明細書で使用する用語「相互作用する」とは、例えばハイブリダイゼーションアッセイを使用して検出できるような、分子間の検出可能な相互作用を含むことを意味する。
【0110】
相互作用するという用語は、分子間の「結合」相互作用も含むことも意味する。相互作用は、例えば天然のタンパク質−タンパク質、タンパク質−核酸、タンパク質−低分子または低分子−核酸といった性質のものであり得る。
【0111】
用語「イントロン配列」または「イントロンヌクレオチド配列」とは、イントロンまたはその一部分のヌクレオチド配列を指す。
【0112】
本明細書でDNAまたはRNAのような核酸について使用する用語「単離された」とは、それぞれ巨大分子の天然の供給源に存在する他のDNAまたはRNAから分離された分子を称する。さらに、本明細書で使用する単離されたという用語は、組換えDNA技術により生産された時には細胞性物質、ウイルス性物質または培養基を、あるいは化学的に合成された時には化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない核酸またはペプチドを称する。
【0113】
さらに「単離された核酸」とは、フラグメントとして天然には存在せず、そして天然状態で見いだされない核酸フラグメントを含むことを意味する。本明細書で使用する用語「単離された」とは、他の細胞性タンパク質から単離されたポリペプチドを称するために使用し、そして精製された、および組換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。
【0114】
用語「脂質」は、水のような極性溶媒中で不溶性の脂肪または脂肪様物質を称する。用語「脂質」は真性脂質(例えば、脂肪酸とグリセロールのエステル);脂質(リン脂質、セレブロシド、ロウ);ステロール(コレステロール、エルゴステロール)およびリポタンパク質(例えばHDL、LDLおよびVLDL)を含むことを意図する。
【0115】
用語「座」とは染色体中の特定の位置を指す。例えば遺伝子の座は、遺伝子の染色体位置を指す。
【0116】
本明細書で使用する用語「モジュレーション(modulation)」は、生物活性(例えば遺伝子の発現)に関する、例えば作動(agonize)によるアップ−レギュレーション(すなわち活性化または刺激)、および例えば拮抗(antagonize)によるダウン−レギュレーション(すなわち阻害または抑制)の両方を称する。
【0117】
遺伝子またはその一部分の「分子構造」という用語は、ヌクレオチド含有物(1以上のヌクレオチドの欠失、置換、付加を含む)、ヌクレオチド配列、メチル化の状態、および/または遺伝子もしくはその部分に関するその他の任意の修飾により規定される構造を称する。
【0118】
用語「突然変異した遺伝子」とは、突然変異した遺伝子を持たない個体に比して突然変異した遺伝子を持つ個体の表現型を改変することができる遺伝子の対立遺伝子型を称する。個体が改変された表現型を示すために、この突然変異についてホモ接合性でなければならない場合、突然変異は劣性であると言う。1コピーの突然変異した遺伝子が個体の遺伝子型を改変するために十分である場合、この突然変異を優性と言う。個体が1コピーの突然変異した遺伝子を有し、かつ表現型が(該遺伝子の)ホモ接合性とヘテロ接合性個体との中間である場合、突然変異は共優性と言う。
【0119】
本明細書で使用する用語「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)、そして適切な場合はリボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを称する。この用語はヌクレオチド同族体から作られるRNAまたはDNAのいずれかの等価体、誘導体、変異体および同族体を含むことも意図し、それらにはペプチド核酸(PNA)、モルホリノオリゴヌクレオチド[J.Summerton and D.Weller,Antisense and Nucleic Acid Drug Development 7:187(1997)]を含み、そして記載された態様に、一本(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドとして応用することができる。デオキシリボヌクレオチドにはデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシおよびデオキシチミジンを含む。明瞭にするために、本明細書でDNAまたはRNAであることができる核酸のヌクレオチドを指す時、用語「アデノシン」、「シチジン」、「グアノシン」および「チミジン」を使用する。核酸がRNAである場合、ウラシル塩基を有するヌクレオチドはウリジンである。
【0120】
用語「配列番号xに示したヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列」とは、配列番号xを有する核酸鎖の相補鎖のヌクレオチド配列を指す。本発明において用語「相補鎖」は用語「相補体」と互換的に使用する。核酸鎖の相補体は、コード鎖の相補体または非コード鎖の相補体であり得る。二本鎖核酸を指す時、配列番号xを有する核酸の相補体は、配列番号xを有する鎖の相補鎖または配列番号xの相補鎖のヌクレオチド配列を有する任意の核酸を指す。配列番号xのヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸を指す時、この核酸の相補体は配列番号xのヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を有する核酸である。ヌクレオチド配列およびその相補的配列は、常に5’から3’方向で表示する。用語「相補体」および「反転相補体」は本明細書で互換的に使用する。
【0121】
用語「操作可能に連結された」とは、プロモーターが核酸の転写を促進するような様式で核酸に結合していることを意味する。
【0122】
用語「多型」とは、1より多くの型の遺伝子またはその部分の共存を称する。少なくとも2つの異なる型、すなわち2つの異なるヌクレオチド配列がある遺伝子の部分は、「遺伝子の多型領域」と称する。多型領域は、1つのヌクレオチドで存在することができ、その実体は異なる対立遺伝子において異なる。多型領域は数個のヌクレオチド長であることもできる。
【0123】
「多型遺伝子」は、少なくとも1つの多型領域を有する遺伝子を指す。
【0124】
ヌクレオチド配列中の「多型部位」を説明するために、しばしば1つの部位にヌクレオチドの可能な変異を表す「多義的コード」が使用される。多義的コードのリストを以下の表にまとめる:
【0125】
【表1】

【0126】
このように、例えばヌクレオチド配列中の“R”は、“a”または“g”のいずれかがその位置であり得ることを意味する。
【0127】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、遺伝子産物を指す時に本明細書において互換的に使用する。
【0128】
本明細書で「調節配列」とも呼ぶ「調節エレメント」は、基本的なプロモーターからの転写をモジュレートすることができるエレメントを含み、そしてエンハンサーおよびサイレンサーのようなエレメントを含むことを意図する。本明細書で「エンハンサーエレメント」とも呼ぶ用語「エンハンサー」は、基本的なプロモーターからの転写を増加、刺激または強化することができる調節エレメントを含むことを意図する。本明細書で「サイレンサーエレメント」とも呼ぶ用語「サイレンサー」は、基本的プロモーターからの転写を減少、阻害または抑制することができる調節エレメントを含むことを意図する。調節エレメントは典型的には遺伝子の5’フランキング領域に存在する。しかし調節エレメントは遺伝子の他の領域、特にイントロンに存在することも示された。すなわち遺伝子は、イントロン、エキソン、コード領域および3’フランキング配列に位置する調節エレメントを有することが可能である。そのような調節エレメントも本発明により包含されることを意図し、そして遺伝子の5’フランキング領域中の調節エレメントを同定するために使用することができる任意のアッセイにより同定することができる。
【0129】
用語「調節エレメント」はさらに「組織特異的」な調節エレメント、すなわち特異的な細胞(例えば、特異的組織の細胞)中で選択したDNA配列を優先的に発現させる調節エレメントを包含する。遺伝子発現は、この細胞中での発現が他の細胞型中での発現よりも有意に高い場合、特異的細胞中で優先的に起こる。用語「調節エレメント」には非組織特異的調節エレメント、すなわちほとんどの細胞型で活性な調節エレメントも包含する。さらに調節エレメントは、構成的調節エレメント、すなわち誘導性である調節エレメント、すなわち刺激物質に反応して主に活性となる調節エレメントは反対に、転写を構成的に調節する調節エレメントであることができる。刺激物質は、例えばホルモン、サイトカイン、重金属、ホルボールエステル、サイクリックAMP(cAMP)またはレチノイン酸のような分子でありうる。
【0130】
調節エレメントはタンパク質、例えば転写因子により通常結合される。用語「転写因子」は、特異的な核酸配列、すなわち調節エレメントと優先的に相互作用し、そして適切な条件下で転写を刺激または抑制するタンパク質またはその修飾形態を含むことを意図する。幾つかの転写因子は、単量体の形態で存在する時に活性である。あるいは他の転写因子は、2つの同一タンパク質または異なるタンパク質(ヘテロ二量体)からなる二量体の状態で活性である。修飾された形態の転写因子は、リン酸基付加のような翻訳後修飾を有する転写因子を指すことを意図する。転写因子の活性は、翻訳後修飾によりしばしばモジュレートされる。例えば、ある種の転写因子はそれらが特定の残基上でリン酸化された場合にのみ活性である。あるいは転写因子はリン酸化残基の不存在下で活性であり、リン酸化により不活性化となることもできる。既知の転写因子およびそれらのDNA結合部位のリストは、例えば公開されているデータベース、TFMATRIX転写因子結合部位分析結果データベースなどで見いだすことができる。
【0131】
本明細書で使用する用語「特異的にハイブリダイズする」または「特異的に検出する」とは、本発明の核酸分子が、遺伝子の少なくとも約6、12、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130または140個の連続するヌクレオチドのいずれかの鎖とハイブリダイズする能力を指す。
【0132】
用語「野生型対立遺伝子」とは、個体中に2つのコピーで存在する時、野生型の表現型を生じる遺伝子の対立遺伝子を称する。遺伝子中の特定のヌクレオチドの変化は、そのヌクレオチド変化を有する遺伝子の2つのコピーを持つ個体の表現型に影響を及さないことがあるので、特別な遺伝子に数種の異なる野生型対立遺伝子が存在し得る。
【0133】
本明細書で使用する「薬物有害反応」(ADR)は、医薬製品の使用に関連する介入から生じるかなり有害な、または望ましくない反応を指し、これは、今後の投与の危険を予測するもので、予防処置もしくは特別処置、あるいは投薬計画の変更、または製品の投薬中止の正当な理由となる。ADRの最も深刻な状態は、個体の死をもたらす。
【0134】
用語「薬剤応答」は、薬剤投与で患者が現すあらゆる応答を意味することを意図する。具体的な薬剤応答には、有益、すなわち所望の薬剤効果、ADRまたは全く検出できない反応を含む。より具体的に薬剤応答という用語は、定性的な意味も有し得る、すなわちそれぞれ低または高い有益効果、およびそれぞれ穏やかまたは重篤なADRを包含する。本明細書で使用する用語「スタチン応答」は、スタチン投与後の薬剤応答を指す。個々の薬剤応答には薬剤の良い、または悪い代謝も含み、「悪い代謝体」は薬剤を体内に蓄積することを意味し、これにより蓄積された過剰摂取による薬剤の副作用を示す。
【0135】
本明細書で使用する「候補遺伝子」は、正常な心血管機能または心血管疾患の発症および/または進行に関連する代謝経路のいずれかに割り当てられることができる遺伝子を含む。
【0136】
薬剤応答に関して、用語「候補遺伝子」は薬剤投与に対する患者の応答に関して、明白な表現型にあてはめることができる遺伝子を含む。それら表現型には、比較的少量で与える薬剤から利益を得る患者(高応答者)、または同じ利益を得るために比較高い用量を必要とする患者(低応答者)を含む。加えてそれらの表現型には、ADRを現すことなく高用量の薬剤に耐容できる患者、またはわずかな低用量の薬剤を受けた後でもADRに罹る患者を含むことができる。
【0137】
心血管疾患の発症も、または薬剤投与に対する患者の応答も完全に解明されていないので、用語「候補遺伝子」は現在未知の機能を持つ遺伝子も含みうる。
【0138】
「PA SNP」(表現型関連SNP)は、患者の表現型(健康な、疾患した、低または高応答者、薬剤耐容、ADR傾向等)との有意な関連を表す多型部位を指す。
【0139】
「PA遺伝子」(表現型関連遺伝子)は、この遺伝子座の実際の機能にかかわらずPA SNPを持つゲノムの座を指す。
【0140】
PA遺伝子ポリペプチドは、少なくとも一部がPA遺伝子にコードされているポリペプチドを指す。
【0141】
本明細書で使用する用語「第二のSNP」とは、少なくとももう一つの別の(第一の)SNPの近傍に存在するSNPを称する。連鎖不均衡のために、第一および第二のSNPの両方は、表現型と同様の関連性を示すはずである。
【0142】
本明細書で使用する用語「ハプロタイプ」は、機能的および/または空間的に連鎖した2以上のSNP群を意味することを意図する。すなわちハプロタイプは、同一(または関連する代謝)経路に属する遺伝子内にある、および/または同じ染色体上にあるSNP群と定める。ハプロタイプは単一のSNPよりも良好な予測/診断情報を提供することが期待される。
【0143】
用語「スタチン」とは、酵素3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼのすべての阻害剤を包含することを意図する。スタチンはコレステロール生合成の律速段階を触媒する酵素HMG−CoAレダクターゼを特異的に阻害する。既知のスタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンである。
【0144】
心血管状態の評価法
本発明は、ヒト個体の心血管状態を評価する診断法を提供する。本明細書で使用する心血管状態とは、1以上のマーカーまたは指標で表される個体の心血管系の生理学的状態を指す。状態のマーカーには、例えば血圧、心電図分析結果および示差血流分析、ならびにLDL−およびHDL−コレステロールレベル、その他脂質のレベル、および当該技術分野で標準的な他の十分に確立された臨床的パラメーターの測定のような臨床検査を含むが、これらに限定するわけではない。本発明による状態のマーカーは、例えば高血圧、急性心筋梗塞、無症候性心筋梗塞、脳卒中およびアテローム硬化症のような1以上の心血管症候群の診断を含む。医師によりなされる心血管症候群の診断には、臨床検査および医学的判断を包含すると考えられる。本発明による状態のマーカーは、当該技術分野で周知な常法を使用して評価される。また心血管状態の評価に含まれるのは、例えば特定の治療的処方に対する個体の応答の判定において使用されるような経時的なマーカーの定量的または定性的変化である。
【0145】
この方法は次のステップによって行われる:
(i)個体中に、実施例に列挙した遺伝子またはこのファイルに列挙する他の遺伝子の1個、数個またはすべての中の1以上の多型位置の配列を決定して、個体に関する多型パターンを確立すること;そして
(ii)(i)で確立した多型パターンを、心血管状態の異なるマーカーを表すヒトの多型パターンと比較すること。この個体の多型パターンは、好ましくは特定の状態のマーカー、心血管症候群および/または治療的介入に対する応答の特定のパターンを現す個体の多型パターンに高度に類似し、そして最も好ましくは同一である。多型パターンは、実施例に列挙した遺伝子中の1以上の多型位置と組み合わせて、特定の状態のマーカーの存在と相関することを示す他の遺伝子中の多型位置も含む。1つの実施態様では、この方法には個体の多型パターンを、特定の治療的処方に対して正または負に応答することを示した個体の多型パターンと比較することを含む。本明細書で使用する治療的処方とは、症状および心血管障害に関係する有害事象の排除または改善を目的とする処置を称する。そのような処置には、食事、生活習慣および運動療法の1以上の変更;アテレクトミー、血管形成術および冠状バイパス手術のような侵襲的および非侵襲的外科技術;およびACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、利尿薬、アルファ−アドレナリン受容体アンタゴニスト、強心配糖体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ベータ−アドレナリン受容体アンタゴニスト、カルシウムチャンネル遮断薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、イミダゾリン受容体遮断薬、エンドセリン受容体遮断薬、有機亜硝酸塩および実施例に列挙する遺伝子のタンパク質機能のモジュレーターの投与のような医薬的介入を含むが、これらに限定するわけではない。活性が、心血管疾患と関連する特定の多型パターンに相関する、未知の医薬的介入も包含される。例えば、特定の治療的処方の候補である患者は、特定の治療的処方に対する応答性に相関する多型パターンについてスクリーニングされることが考えられる。
【0146】
好ましい実施態様では、この方法は個体の多型パターンを、例えば上昇したLDL−コレステロールレベル、高血圧、異常な心電図分析結果、心筋梗塞、脳卒中またはアテローム硬化症のような心血管疾患の1以上のマーカーを示すか、または示した個体の多型パターンと比較することを含む。
【0147】
別の態様では、この方法は個体の多型パターンを、例えば低または高い薬剤応答または薬物有害反応のような1以上の薬剤関連表現型を示すか、または示す個体の多型パターンと比較することを含む。
【0148】
本発明の方法の実施にあたり、個体の多型パターンは、個体からDNAを得、そしてこのファイルに記載するような遺伝子中の予め決定された多型位置で配列を決定することにより確立することができる。
【0149】
DNAは、任意の細胞源から得ることができる。臨床的な実施で利用可能な細胞源の非限定的な例は、血液細胞、頬の細胞、膣頚管細胞、尿由来の上皮細胞、胎児細胞または生検により得られた組織に存在する任意の細胞を含む。細胞とは、限定しないが、血液、唾液、汗、尿、脳脊髄液、便および感染または炎症部位の組織滲出液を包含する体液から得ることができる。DNAは、当該技術分野で標準的である任意の多数の方法を使用して細胞源または体液から抽出する。DNAを抽出するために使用した特定の方法は、供給源の性質に依存すると解される。
【0150】
診断および予後アッセイ
本発明は、遺伝子の少なくとも1つの多型領域の分子構造を決定するための方法を提供するものであって、該多型領域の特定の対立遺伝子変異体が心血管疾患に関連している。一つの実施態様では、遺伝子の多型領域の分子構造を決定することは、対立遺伝子変異体の実体を決定することを含んでなる。特異的な対立遺伝子が心血管疾患に関連している遺伝子の多型領域は、エキソン、イントロン、イントロン/エキソン境界、または遺伝子のプロモーターに位置することができる。
【0151】
本発明は、個体が心血管疾患を有するか、またはそれを発症する危険にあるかどうかを決定するための方法を提供する。そのような障害は、異所性の遺伝子活性、例えば脂質形態への異常な結合、または異所性の遺伝子タンパク質レベルと関連し得る。異所性の遺伝子タンパク質レベルは、異所性の転写または転写後の調節から生じ得る。このように遺伝子の特定領域中の対立遺伝子の差異は、発現の調節における差異により遺伝子タンパク質に差異をもたらすことができる。特に、ヒト遺伝子中で同定された多型の幾つかは、転写、RNA成熟、スプライシングまたは遺伝子の翻訳または転写産物のレベルにおける変化と関連し得る。
【0152】
好ましい実施態様では、本発明の方法は、個体に由来する細胞のサンプル中に、遺伝子の1以上の多型領域の特異的対立遺伝子変異体の存在または不存在を検出することを含んでなることを特徴とすることができる。対立遺伝子の差異は:(i)少なくとも1つのヌクレオチドの実体における差異、または(ii)ヌクレオチドの数における差異、この差異は単一ヌクレオチドまたは数個のヌクレオチドであることができる。
【0153】
好ましい検出法は、多型部位とオーバーラップし、そして多型領域周辺に約5、10、20、25または30ヌクレオチドを有するプローブを使用した対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションである。イントロンXに位置する多型領域の特異的対立遺伝子変異体を検出するためのプローブの例は、任意の配列番号Xに示すヌクレオチド配列を含むプローブである。本発明の好ましい実施態様では、対立遺伝子変異体に特異的にハイブリダイズすることができる数個のプローブを固相支持体、例えば「チップ」に結合させる。オリゴヌクレオチドは、リトグラフィーを含む種々の方法により固体支持体に結合させることができる。例えばチップは最高250,000個のオリゴヌクレオチドを保持することができる(GeneChip、Affymetrix)。「DNAプローブアレイ」とも呼ばれるオリゴヌクレオチドを含んでなるこれらチップを使用した突然変異検出分析は、例えばCronin et al. .(1996)Human Mutation 7:244およびKozal et al. .(1996)Nature Medicine 2:753に記載されている。一つの実施態様では、チップは遺伝子の少なくとも1つの多型領域のすべての対立遺伝子変異体を含んでなる。次いで固相支持体を試験核酸と接触させ、そして特異的プローブへのハイブリダイゼーションを検出する。したがって、1以上の遺伝子の多数の対立遺伝子変異体の実体を、簡単なハイブリダイゼーション実験により確認することができる。例えば、配列番号1(baySNP179)の33位のヌクレオチドAまたはGのヌクレオチド多型の対立遺伝子変異体の実体、および他の可能な多型領域の実体は、一回のハイブリダイゼーション実験で決定することができる。
【0154】
別の検出法では、対立遺伝子変異体を同定する前に最初に遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の部分を増幅することが必要である。増幅は、当該技術分野で既知の方法に従い、例えばPCRおよび/またはLCRにより行うことができる。一つの実施態様では、細胞のゲノムDNAを2つのPCRプライマーに暴露し、そして必要量の増幅されたDNAを生成するために十分なサイクル数で増幅させる。好ましい実施態様では、プライマーは40から350塩基の間離れて位置する。このファイルの遺伝子の遺伝子フラグメントを増幅させるために好適なプライマーは、実施例の表2に列挙する。
【0155】
選択的な増幅法には:自己持続型配列複製(self sustained sequence replication)(Guatelli,J.C.et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh,D.Y.et al.,1989,Proc. Natl. Acad. Sci.USA.86:1173-1177)、Q-Betaレプリカーゼ(Lizardi,P.M.et al., 1988,Bio/Technology 6:1197)、あるいは任意の他の核酸増幅法、続いて増幅した分子の当業者に周知な技術を使用した検出を含む。これらの検出スキームは、そのような分子が大変少数で存在する場合に核酸分子の検出に特に有用である。
【0156】
一つの実施態様では、当該技術分野で知られている様々な配列決定反応を使用して、遺伝子の少なくとも一部分で配列を直接配列決定し、そして対立遺伝子変異体、例えば突然変異を、サンプル配列の配列と対応する野生型(対照)の配列と比較することにより検出することができる。例示的な配列決定反応には、Maxam and Gilbert(Proc. Natl. Acad. Sci.USA(1977)74:560)またはSanger(Sanger et al. (1977)Proc.Natl.Acad.Sci 74:5463)により開発された技法を基にした反応を含む。様々な自動化配列決定方法も目的とするアッセイを行う時に利用できることが考えられる(Biotechniqes(1995)19:448)、それらには質量分析による配列決定(例えば、H.Kosterにより、質量分析によるDNA配列決定(DNA Sequencing by Mass Spectrometry)と表題を付けられた米国特許第5,547,835号明細書および国際公開第94/16101号パンフレット;H.Kosterによりエキソヌクレアーゼ分解を介する質量分析によるDNA配列決定(DNA Sequencing by Mass Spectrometry Via Exonuclease Degradation)と表題を付けられた米国特許第5,547,835号明細書および国際公開第94/21822号パンフレット)、およびH.Kosterによる質量分析に基づくDNA診断(DNA Diagnostics Based on Mass Spectrometry)と表題を付けられた米国特許第5,605,798号明細書およびPCT/US96/03651;Cohen et al. (1996)Adv Chromatogr 36:127-162;およびGriffin et al.(1993)Appl Biochem Biotechnol 38:147-159)を含む。当業者には特定の態様では、ただ1つ、2または3個の核酸塩基の存在を配列決定反応で決定する必要があることは明らかである。例えばA−トラック(track)等(例えば1つのヌクレオチドのみを検出する場合)を行うことができる。
【0157】
さらに別の配列決定法は、例えば「混合DNA−ポリマー鎖プローブを使用するDNA配列決定法」と表題を付けられた米国特許第5,580,732号明細書、および「誤対合−に対するインビトロDNA配列決定法」と表題を付けられた米国特許第5,571,676号明細書に開示されている。
【0158】
場合により、個体に由来するDNA中の遺伝子の特異的対立遺伝子の存在は、制限酵素分析により表すことができる。例えば特異的なヌクレオチド多型は、別の対立遺伝子変異体のヌクレオチド配列には存在しない制限部位を含んでなるヌクレオチド配列を生じることができる。
【0159】
別の態様では、電気泳動的移動度における変化を使用して遺伝子の対立遺伝子変異体の型を同定する。例えば一本鎖高次構造多型(SSCP)を使用して、変異体と野生型核酸との間の電気泳動的移動度の差異を検出することができる(Orita et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 86:2766、またCotton(1993)Mutat Res285:125-144:およびHayashi(1992)Genet Anal Tech Appl 9:73-79も参照されたい)。サンプルおよび対照核酸の一本鎖DNAフラグメントを変性させ、そして再生する。一本鎖核酸の二次構造は配列に従い変動し、電気泳動的移動度で生じた変化は、1塩基の変化さえも検出を可能とする。DNAフラグメントを標識するか、または標識したプローブを検出することができる。アッセイの感度は、二次構造が配列中の変化に対して(DNAよりも)感受性が高いRNAを使用することにより強化することができる。別の好ましい実施態様では、目的の方法はヘテロ二本鎖分析を利用して、電気泳動的移動度の変化に基づきヘテロ二本鎖分子を分離する(Keen et al..(1991), Trends Genet 7:5)。
【0160】
さらに別の態様では、多型領域中の対立遺伝子変異体の実体は、多型領域を含む核酸の、変性剤の勾配を含むポリアクリルアミドゲル中での移動を、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)[(Myers et al. (1985)Nature 313:495]を使用してアッセイして分析することにより得られる。DGGEを分析法として使用する時、例えば約40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプをPCRで加えることにより、DNAが完全に変性しないことが確実となるように修飾する。さらなる実施態様では、変性剤の勾配の代わりに温度勾配を使用して、対照およびサンプルDNAの移動度における差異を確認する(Rosenbaum and Reissner(1987)Biophys Chem 265:1275)。
【0161】
2つの核酸間の少なくとも1つのヌクレオチドの差異を検出するための技術の例には、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長を含むが、限定するわけではない。例えばオリゴヌクレオチドプローブは既知の多型ヌクレオチドが中央に配置されるように調製し(対立遺伝子特異的プローブ)、次いで完全な対合が見いだされる場合のみハイブリダイゼーションが可能となる条件下で、標的DNAにハイブリダイズさせ得る(Saiki et al. (1986) Nature 324:163);Saiki et al. (1989)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 86:6230;およびWallace et al.(1979)Nucl.Acids Res.6:3543)。そのような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技法は、遺伝子の異なる多型領域において数個のヌクレオチド変化の同時検出に使用することができる。例えば、特異的な対立遺伝子変異体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドをハイブリダイズ用膜に付け、この膜を次いで標識されたサンプル核酸とハイブリダイズさせる。その後、ハイブリダイゼーションシグナルの分析で、サンプル核酸のヌクレオチドの実体が明らかとなる。
【0162】
あるいは、選択的PCR増幅に依存した対立遺伝子特異的増幅技術を使用することができる。特異的増幅にプライマーとして使用するオリゴヌクレオチドは、分子の中心(増幅がディファレンシャルハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbs et al. (1989)Nucleic.Acids Res.17:2437-2448)に、または適当な条件下で誤対合がポリメラーゼ伸長を防止するか、または減少させることができる1つのプライマーの3’の極めて端に(Prossner(1993)Tibtech 11:238;Newton et al. (1989) Nucleic.Acids Res.17:2503)、目的の対立遺伝子変異を持つことができる。この技法は、プローブオリゴ塩基伸長(Probe Oligo Base Extension)用の「プローブ(PROBE)」とも名付けられている。さらに開裂に基づく検出を作成するために、突然変異の領域に新規な制限部位を導入することが望ましいかもしれない(Gasparini et al.(1992)Mol.Cell Probes 6:1)。
【0163】
別の実施態様では、対立遺伝子変異体の同定は、米国特許第4,998,617号明細書およびLandegren,U.et al.,Science 241:1077-1080(1988)に記載されているような、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を使用して行う。OLAプロトコールは、標的の1本の鎖の隣接配列(abutting sequence)にハイブリダイズすることができるように設計された2つのオリゴヌクレオチドを使用する。1つのオリゴヌクレオチドは、分離マーカー(例えばビオチン化された)に連結され、そしてもう1つは検出できるように標識される。標的分子中に正確な相補的配列が見出されれば、オリゴヌクレオチドはそれらの末端が接するようにハイブリダイズし、そしてライゲーション基質を作成する。次いでライゲーションにより標識されたオリゴヌクレオチドは、アビジン、または他のビオチンリガンドを用いて回収される。Nickerson,D.A.らは、PCRおよびOLAの特性を組み合わせた核酸検出アッセイを記載している(Nickerson,D.A.et al.,Proc.Natl.Acad.sci. (U.S.A)87:8923-8927(1990)。この方法では、PCRを使用して標的DNAの指数的増幅を達成し、これは次いでOLAを使用して検出される。
【0164】
このOLA法に基づく幾つかの技法が開発され、そして遺伝子の多型領域の特異的対立遺伝子変異体を検出するために使用することができる。例えば米国特許第5,593,826号明細書は、ホスホルアミデート結合を有する結合体を形成するために3’−アミノ基および5’−リン酸化オリゴヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを使用したOLAを開示する。Tobe et al.[(1996)Nucleic.Acids Res 24:3728]に記載されたOLAの別の変法では、PCRと組み合わせたOLAにより、1つのマイクロタイターウェル中で2つの対立遺伝子のタイプ分けが可能となる。独特なハプテン、すなわちジゴキシゲニンおよびフルオレセインを使用して各対立遺伝子特異的プライマーをマーキングすることにより、各LA反応は様々な酵素レポーター、アルカリフォスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼを用いて標識されたハプテン特異的抗体を使用することにより検出することができる。この系により、2つの異なる色の生成を導く高処理量形式を使用して、2つの対立遺伝子の検出が可能となる。
【0165】
本発明は、さらに遺伝子中の一塩基多型を検出するための方法を提供する。一塩基多型は、不変配列の領域に挟まれた変異の部位を構成するので、それらの分析には変異の部位に存在する1より多くのヌクレオチドの同一性を決定する必要はなく、そして各患者について完全な遺伝子配列を決定することは必要ではない。幾つかの方法は、そのような一塩基多型の分析を容易にするために開発された。
【0166】
一つの実施態様では、一塩基多型は、例えばMundy,C.R.(米国特許第4,656,127号明細書)に開示された、特殊化エキソヌクレアーゼ−耐性ヌクレオチドを使用することにより検出することができる。この方法に従い、多型部位に対して3’に隣接する対立遺伝子配列に相補的なプライマーを、特定の動物またはヒトから得た標的分子とハイブリダイズするようにさせる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを含む場合、誘導体はハイブリダイズしたプライマーの末端に導入されるだろう。そのような導入により、プライマーはエキソヌクレアーゼに対して耐性となり、これによりその検出を可能とする。サンプル中のエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の実体は知られているので、プライマーがエキソヌクレアーゼに耐性となったという知見は、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが反応に使用したヌクレオチド誘導体のヌクレオチドに相補的であったことを示す。この方法は大量の外来配列データの決定を必要としない点で有利である。
【0167】
本発明の別の実施態様では、多型部位のヌクレオチドの実体を決定するために溶液に基づく方法を使用する。[Cohen,D.et al.(仏国特許第2,650,840号明細書;PCT出願国際公開第91/02087号パンフレット)]。米国特許第4,656,127号明細書のMundy法のように、多型部位に対して3’に隣接する対立遺伝子に相補的なプライマーを使用する。この方法は、多型部位のヌクレオチドに相補的ならば、プライマーの末端に組み込まれるようになる標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用して、その部位のヌクレオチドの実体を決定する。
【0168】
Genetic Bit分析またはGBA TMとして知られている別の方法が、Goelet,P.ら(PCT出願第92/15712)により記載されている。Goelet,P.らの方法は、標識したターミネーターおよび多型部位に対して3’の配列に相補的なプライマーの混合物を使用する。取り込まれた標識ターミネーターは、すなわち評価される標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドにより決定され、そしてそれに相補的である。Cohenら(仏国特許第2,650,840号明細書;PCT出願国際公開第91/02087号パンフレット)の方法とは対照的に、Goelet,P.らの方法は、好ましくはプライマーまたは標的分子が固相に固定化される異相アッセイである。
【0169】
最近、DNA中の多型部位をアッセイするためのプライマー−誘導型(guided)ヌクレオチド取り込み手法の幾つかが記載された[Komher,J.S.et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779−7784(1989);Sokolov,B.P., Nucl.Acids.Res.18:3671(1990);Syvanen,A.-C., et al.,Genomics 8:684-692(1990);Kuppuswamy,M.N.et al.,Proc.Natl.Acad.sci.(U.S.A)88:1143-1147(1991);Prezant,T.R.et al.,Hum.Mutat.1:159-164(1992);Ugozzoli,L.et al.,GATA9:107-112(1992);Nyren,P.et al.,Anal.Biochem.208:171-175(1993)]。これらの方法は、すべて、多型部位での塩基間を識別するために標識したデオキシヌクレオチドの取込みに頼る点でGBA TMとは異なる。そのような形式では、シグナルは取り込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するので、同じヌクレオチドの作業中で起こる多型は、作業の長さに比例してシグナルを生じることができる[Syvanen,A.-C.,et al.,Amer.J.Hum.Genet.52:46-59(1993)]。
【0170】
遺伝子のコード領域中に位置する多型領域の対立遺伝子変異体の実体を決定するために、上に記載した以外のさらに別の方法を使用することができる。例えば、突然変異した遺伝子タンパク質をコードする対立遺伝子変異体の同定は、例えば免疫組織化学または免疫沈降において変異体タンパク質を特異的に認識する抗体を使用することにより行うことができる。野生型の遺伝子タンパク質に対する抗体が、例えばActon et al.(1999)Science271:518(ヒト遺伝子と交差反応性の抗−マウス遺伝子抗体)に記載されている。野生型の遺伝子または遺伝子タンパク質の突然変異した形態に対する他の抗体を、当該技術分野で既知の方法に従い調製することができる。あるいは脂質もしくはリポタンパク質への結合のような遺伝子タンパク質の活性も測定することができる。結合アッセイは当該技術分野では既知であり、そして例えば個体から細胞を得、そして標識した脂質との結合実験を行って、受容体の突然変異した形態に対する結合が受容体の野生型に対する結合と異なるかどうかを決定する。
【0171】
多型領域が遺伝子のコードまたは非コード領域のいずれかのエキソンに位置する場合、対立遺伝子変異体の実体を、mRNA、プレmRNAまたはcDNAの分子構造を決定することにより判定することができる。分子構造はゲノムDNAの分子構造を決定するために上記した任意の方法、例えば配列決定およびSSCPを使用して決定することができる。
【0172】
本明細書で記載する方法は、例えば上記のような本明細書に記載する少なくとも1つのプローブもしくはプライマー核酸を含んでなる予め包装された診断キットを利用することにより行うことができ、このキットは個体が特異的な遺伝子の対立遺伝子変異体に関連する疾患を有するか、または疾患を発症する危険があるかどうかを決定するために都合よく使用することができる。
【0173】
上記の診断および予後法に使用するサンプル核酸は、個体の任意の細胞型または組織から得ることができる。例えば、個体の体液(例えば血液)は既知の技術(例えば静脈穿刺)により、または心臓のようなヒトの組織(生検、移植臓器)から得ることができる。あるいは核酸試験は、乾燥サンプル(例えば毛髪または皮膚)に対して行うことができる。出生前診断用の胎児核酸サンプルは、Bianchiの国際公開第91/07660号パンフレットに記載されているように母体血液から得ることができる。あるいは羊水細胞または絨毛膜絨毛を、出生前試験を行うために得ることができる。
【0174】
診断手法は、核酸の精製が必要とならないように、生検または切除から得た患者組織の切片(固定および/または凍結)により、その場で直接行ってもよい。核酸試薬はそのようなin situ法において、プローブおよび/またはプライマーとして使用することができる(例えば、Nuovo,G.J.,1992,PCR in situ hybridization:protocols and applications、ラバン出版、ニューヨーク)。
【0175】
1つの核酸配列の検出に主に焦点をあてた方法に加えて、そのような検出スキームで分析結果を評価することもできる。フィンガープリントの分析結果は、例えばディファレンシャル デスプレイ法、ノーザン分析および/またはRT−PCRを利用することにより作成することができる。
【0176】
本発明の実施において、心血管状態または薬剤応答の特定マーカーを示す多数の個体における多型パターンの分布は、上記の任意の方法を使用して決定され、そして年齢、人種、および/または他の統計的または医学的に関連があるパラメーターとあわせて、定量的または定性的に異なる状態のマーカーを示す患者を対象とした多型パターンの分布と比較される。相関は、ノミナルロジスティック回帰、カイ2乗検定または標準最小2乗回帰分析を含む当該技術分野で任意の既知の方法を使用してなされる。この様式では、特定の多型パターンと特定の心血管状態との間に統計的に有意な相関を確立することが可能である(p値で示す)。さらに特定の多型パターンと、特定の処置的処方から生じる心血管状態または薬剤応答における変化との間に統計的に有意な相関を確立することが可能である。この様式では、多型パターンを特定の処置に対する応答性と相関させることが可能である。
【0177】
本発明の別の態様では、2以上の多型領域を組み合わせて、いわゆる「ハプロタイプ」を規定する。ハプロタイプは、機能的および/または空間的に連鎖した2以上のSNP群である。本発明に開示するSNPを互いに、またはさらなる多型領域のいずれかと組み合わせてハプロタイプを形成することが可能である。ハプロタイプは単一のSNPより良好な予測/診断情報を与えると期待される。
【0178】
本発明の好ましい実施態様では、CVDまたは薬剤応答の危険性を予測するSNP/ハプロタイプのパネルを規定する。次いでこの予測パネルを、多数のSNPを同時に遺伝子型を決定することができるプラットフォーム上の患者の遺伝子型決定に使用する(マルチプレックス;Multiplexing)。好適なプラットフォームは、例えば遺伝子チップ(Affymetrix)またはLuminex LabMAPリーダーである。続いて患者のハプロタイプの同定および評価は、特異的かつ個別化された治療を導くために役立ち得る。
【0179】
例えば、本発明は、薬物有害反応に関して高い危険性を示す遺伝的多型またはハプロタイプを示す患者を同定することができる。その場合、薬剤用量は、ADRの危険性を下げるように減らすべきである。また薬剤投与に対する患者の応答が特に高い場合(または患者の薬剤に関する代謝が悪い場合)、薬剤用量はADRの危険性を下げるために減らすべきである。
【0180】
次に、薬剤投与に対する患者の応答が低く(または患者が薬剤に関して特に高い代謝者である場合)、かつADRの明白な危険性が無い場合、薬剤用量は効果的なレベルまで増やすべきである。
【0181】
患者個体の薬剤応答を予測する能力が薬剤の組成に影響を及ぼすことは自明であり、すなわち薬剤組成は、それらが異なる患者のクラス(低/高応答者、悪い/良い代謝者、ADR傾向の患者)に適するようにあつらえられるべきである。それらの様々な薬剤組成は、薬剤の異なる用量を包含することができる、すなわち医薬品は低または高量の活性物質を含む。本発明の別の実施態様では、薬剤組成は、有利な効果を促進し、および/またはADRの危険を低下する別の物質を含むこともできる(Folkers et al. 1991 米国特許第5,316,765号明細書)。
【0182】
単離された多型核酸、プローブおよびベクター
本発明は、ヒト遺伝子に関して本明細書に記載する多型位置を含む単離核酸;核酸を含むベクター;およびベクターを含む形質転換された宿主細胞を提供する。本発明はこれら多型を検出するために有用なプローブを提供する。
【0183】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの通常の技法を使用する。そのような技法は周知であり、そして例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning(1989):A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York;;A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984, (M. L.Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, 1997, (John Wiley and Sons); および Methods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155(各々、Wu および Grossman and Wu 編)に完全に説明されている。
【0184】
本発明の完全長cDNAのような機能的周囲にある配列を含む核酸(典型的にはDNA)のベクターへの挿入は、DNAの末端およびベクターの両方が適合し得る制限部位を含んでなる時、容易に行うことができる。これを行うことができない場合、制限エンドヌクレアーゼ切断により一本鎖DNA突出部を、平滑末端を作成するために生じた後方消化により、DNAおよび/またはベクターの末端を修飾するか、または一本鎖末端を適切なDNAポリメラーゼで埋めることにより同じ結果を達成することが必要かもしれない。
【0185】
あるいは、所望する任意の部位を、例えばヌクレオチド配列(リンカー)を末端に連結することにより作成することができる。そのようなリンカーは、所望する制限部位を定める特異的なオリゴヌクレオチド配列を含むことができる。制限部位はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用により生成することもできる。例えば、Saiki et al.,1988,Science 239:48を参照されたい。開裂したベクターおよびDNAフラグメントは必要によりホモポリマー・テーリング(homopolymeric tailing)により修飾することもできる。
【0186】
核酸は、細胞から直接単離することができ、または既知の方法を使用して化学的に合成することができる。あるいは、鋳型として化学的に合成した鎖またはゲノム材料のいずれかを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使用して本発明の核酸を生成することができる。PCRに使用するプライマーは、本明細書に提供する配列情報を使用して合成することができ、そしてさらに組換え発現用の上記ベクターへの導入を容易にするために、所望により適切な新規制限部位を導入することを設計することもできる。
【0187】
本発明の核酸は、天然の遺伝子配列により挟まれてもよく、またはプロモーター、エンハンサー、応答エレメント、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’−および3’−非コード領域等を含む異種配列に結合してもよい。核酸は当該技術分野で既知の多くの手段により修飾されることもできる。そのような修飾の非限定的例は、メチル化、「キャップ」、1以上の天然に存在するヌクレオチドの同族体との置換、例えば荷電を持たない連結(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメート、モルホリン等)および荷電を持つ連結(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を用いたようなヌクレオチド間修飾を含む。核酸は、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシン等)、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、鉄、酸化性金属等)、およびアルキル化剤のような1以上のさらなる共有結合部分を含んでもよい。PNAも含まれる。核酸は、メチルもしくはエチルホスホトリエステルまたはアルキルホスホルアミデート結合の形成により得られることもできる。さらに本発明の核酸配列は、直接的または間接的のいずれかで検出可能なシグナルを提供することができる標識で修飾されてもよい。例示的な標識物には、放射性同位体、蛍光分子、ビオチン等がある。
【0188】
本発明は、実施例に記載する遺伝子の遺伝子配列またはその誘導体もしくはフラグメントを含んでなる核酸ベクターも提供する。プラスミドおよび真菌性ベクターを含む多数のベクターは、様々な真核および原核宿主での複製および/または発現について記載されており、そして遺伝子治療ならびに単純なクローニングまたはタンパク質発現に使用することができる。適切なベクターの非限定的例には、限定するわけではないがpUCプラスミド、pETプラスミド(Novagen,Inc. Madison, Wis)、またはpRSETもしくはpREP(Invitrogen, San Diego, Calif)を含み、そして多くの適切な宿主細胞が本明細書に開示または引用する方法または関連分野の当業者に知られている方法を使用する。ベクター/宿主の特定の選択は、本発明の実施に重要となることはない。
【0189】
適当な宿主細胞は、エレクトロポレーション、CaClが媒介するDNAの取り込み、真菌もしくはウイルス感染、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル(microprojectile)または他の確立された方法を含む適切な方法により、適切に形質転換/トランスフェクション/感染させることができる。適当な宿主細胞には、細菌、古細菌、真菌、特に酵母、ならびに植物および動物細胞、特に哺乳動物細胞を含む。多数の転写開始および終結調節領域が単離され、そして種々の宿主中で異種タンパク質の転写および翻訳に効果的であることが示された。これら領域、単離法、操作様式等の例は、当該技術分野で知られている。適切な発現条件下で、宿主細胞は、実施例の遺伝子によりコードされる組換え的に生産されるペプチドおよびポリペプチドの供給源として使用することができる。ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸は、実施例の遺伝子配列から組換え反応により細胞に導入することもできる。例えばそのような配列を細胞に導入し、そしてこれにより内因性遺伝子またはその遺伝子に実質的な同一性を持つ配列の部位で相同的組換えを行うことができる。非相同的組換えまたは相同的組換えによる内因性遺伝子の削除のような他の組換えに基づく方法も使用できる。
【0190】
ヘテロ二量体または他の多量体を形成するタンパク質の場合、両方またはすべてのサブユニットが1つの系または細胞中で発現されなければならない。
【0191】
本発明の核酸には、遺伝的多型の検出のためのプローブとして、そして実施例に列挙する遺伝子にコードされる正常もしくは変異体ペプチドまたはポリペプチドの組換え的生産用の鋳型としての用途がある。
【0192】
本発明によるプローブは、本明細書に開示する1以上の多型配列または多型配列に直ぐ隣接する配列に、高ストリンジェンシーでハイブリダイズする、約10〜100bp、好ましくは15〜75bp、そして最も好ましくは17〜25bp長の単離された核酸を含むが、これらに限定するわけではない。さらに幾つかの実施態様では、完全長の遺伝子配列をプローブとして使用することができる。一連の実施態様では、プローブは本明細書に開示する遺伝子中の多型位置におよぶ。別の一連の実施態様では、プローブは多型位置に直ぐ隣接する配列に相当する。
【0193】
多型ポリペプチドおよび多型特異的抗体
本発明は、本明細書に開示する多型位置を含む実施例に列挙する遺伝子にコードされる単離されたペプチドおよびポリペプチドを包含する。1つの好適な態様では、ペプチドおよびポリペプチドは、心血管薬を同定するための有用なスクリーニング標的である。別の好適な実施態様では、ペプチドおよびポリペプチドは、多型位置を含んでなるポリペプチドと特異的に反応し、そしてそのポリペプチドを、その位置に異なる配列を有する他のポリペプチドと区別する抗体を、適切な宿主動物中に誘導することができる。
【0194】
本発明のポリペプチドは、好ましくは少なくとも5個以上の残基長、好ましくは少なくとも15残基である。これらのポリペプチドを得る方法を以下に記載する。タンパク質生化学および免疫学における多くの常法を使用する。そのような技法は周知であり、そして細胞および分子生物学における免疫化学的方法[Mayer and Waler eds, Academic press, London)(1987)];タンパク質精製:Protein Purification[Scopes,1987,Second Edition (Springer-Verlag, N.Y.)]および実験免疫学のハンドブック[1986, Volumes I-IV (Weir and Blackwell eds.)]で説明されている。
【0195】
タンパク質のコード配列を含んでなる核酸は、インタクトな細胞または無細胞翻訳系で、本明細書に開示する遺伝子にコードされるポリペプチドのITT組換え的発現を目的として使用することができる。既知の遺伝子コード(所定の宿主生物中でより効率的な発現を望む場合には、それに合わせて作成される)を使用して、所望するアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドを合成することができる。ポリペプチドは、適切なタンパク質のコード配列を導入し、発現されたヒト細胞から、または異種生物または細胞(細菌、真菌、昆虫、植物および哺乳動物細胞を含むが、限定するわけではない)から単離することができる。さらにポリペプチドは組換え融合タンパク質の一部であり得る。
【0196】
ペプチドおよびポリペプチドは、限定するわけではないが排他的固相合成、部分固相法、フラグメント縮合または古典的な溶液合成を含め、市販されている自動化法により化学的に合成することができる。ポリペプチドは、好ましくはMerrifield,1963,J.Am.Chem.Soc,85:2149により記載されている固相ペプチド合成により調製される。
【0197】
ポリペプチド精製の方法は、当該技術分野では周知であり、調製用ディスクゲル電気泳動、等電点電気泳動、HPLC、逆相HPLC、ゲル濾過、イオン交換および分配クロマトグラフィーおよび向流分配を含むが、それらには限定するわけではない。幾つかの目的には、ポリペプチドを組換え系で生産することが好ましく、ここでタンパク質は、限定するわけではないがポリヒスチジン配列のような精製を容易にする別の配列タグを含む。こうして、ポリペプチドは、適切な固相マトリックスでのクロマトグラフィーにより、宿主細胞の粗溶解物から精製することができる。あるいは本明細書に開示する遺伝子にコードされるペプチドに対して生産された抗体を精製試薬として使用することができる。他の精製法も可能である。
【0198】
本発明は、ポリペプチドの誘導体および相同体も包含する。幾つかの目的のために、ペプチドをコードする核酸配列は、機能的に均等な分子、すなわち機能が保存された変異体を提供する置換、付加または欠失により改変することができる。例えば、配列中の1以上のアミノ酸残基を、例えば正に荷電したアミノ酸(アルギニン、リシンおよびヒスチジン);負に荷電したアミノ酸(アスパラギンおよびグルタミン);極性が中性のアミノ酸;および非極性アミノ酸のような類似する特性の別のアミノ酸に置換することができる。
【0199】
単離されたポリペプチドは、例えばリン酸化、硫酸化、アシル化または他のタンパク質修飾により修飾することができる。それらは、限定するわけではないが放射性同位体および蛍光化合物を含め、直接的または間接的のいずれかで検出可能なシグナルを提供することができる標識で修飾することもできる。
【0200】
本発明は、本発明の多型位置を特異的に認識し、そして特定の多型を含むペプチドまたはポリペプチドを、その位置に異なる配列を含むものと識別する抗体も包含する。本発明によるそのような多型位置に特異的な抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。抗体は、本明細書に開示する遺伝子にコードされるペプチドで免疫感作することにより動物宿主で誘導することができ、または免疫細胞のインビトロ免疫感作により形成することができる。抗体を誘導するために使用する免疫原性化合物は、ヒト細胞から単離するか、または組換え系で生産することができる。また抗体は、適切な抗体をコードするDNAでプログラムされた組換え系でも生産することができる。あるいは、抗体は精製された重鎖および軽鎖の生化学的再構成により構築することができる。抗体は、ハイブリッド抗体(すなわち、各々が異なる抗原を認識する2組の重鎖/軽鎖の組み合わせを含む)、キメラ抗体(すなわち、ここでは重鎖、軽鎖のいずれか、または両方が融合タンパク質である)、および一価抗体(すなわち、第2重鎖の定常領域に結合した重鎖/軽鎖複合体からなる)を含む。また含まれるのは、抗体のFab’およびF(ab).sub2.フラグメントを含むFabフラグメントである。上記のすべての型の抗体および誘導体の生産方法は、当該技術分野で周知であり、そして以下により詳細に議論されている。例えば、ポリクローナル抗血清を生産し、そしてプロセシングするための技法は、細胞および分子生物学における免疫化学的方法(Mayer and Walker(1987), Academic Press, London)に開示されている。ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を作成する一般法は周知である。不死化抗体生産細胞株は細胞融合により、およびまた発癌性DNAでのBリンパ球の直接形質転換のような他の技法、またはエプスタイン−バーウイルスを用いたトランスフェクションにより作成することができる。例えばハイブリドーマ技法(Schreier et al., 1980):米国特許第4,341,761号;同第4,399,121号;同第4,427,783号;同第4,444,887号;同第4,466,917号;同第4,472,500号;同第4,491,632号;および同第4,493,890号明細書を参照にされたい。本明細書に開示する遺伝子にコードされるペプチドに対して生産されたモノクローナル抗体のパネルを、種々の特性:すなわちアイソタイプ、エピトープ親和性等についてスクリーニングすることができる。
【0201】
本発明の抗体は、限定するわけではないが分取用ディスクゲル電気泳動、等電点電気泳動、HPLC、逆相HPLC、ゲル濾過、イオン交換および分配クロマトグラフィー、および向流分配を含む標準的な方法により精製することができる。抗体の精製法は、例えば抗体精製の技術[Amicon Division, W. R. Grace & Co(1989)]に開示されている。一般的なタンパク質精製法は、タンパク質精製:原理および実践(R. K. Scopes, Ed., 1987, Springer-Verlag, New York, N. Y)に記載されている。
【0202】
開示した配列の免疫原的能力および生成した配列特異的抗体および免疫細胞の特性を決定する方法は、当該技術分野では周知である。例えば、特定の多型配列を含んでなるペプチドに応答して誘導される抗体は、それらが多型配列を特異的に認識する能力、すなわち多型配列を含んでなるペプチドまたはポリペプチドに差別的に結合する能力について試験でき、そうしてこのようにそのペプチドまたはポリペプチドを、同じ位置に異なる配列を含む類似のペプチドまたはポリペプチドと識別することができる。
【0203】
キット
本明細書で説明するように、本発明は、例えば本明細書に開示する遺伝子の遺伝子座に存在する多型領域の対立遺伝子変異体の実体を決定するための診断法を提供し、ここで多型領域の特異的な対立遺伝子変異体は心血管疾患に関連している。好適な実施態様では、診断キットは、個体が心血管疾患を発症する危険性があるかどうかを決定するために使用することができる。次いでこの情報は、例えばそのような個体の処置を至適化するために使用することができる。
【0204】
好適な実施態様では、キットは、遺伝子にハイブリダイズすることができるプローブまたはプライマーを含んでなり、そしてこれにより遺伝子が心血管疾患の危険性に関連している多型領域の対立遺伝子変異体を含むかどうかを同定する。キットは、好ましくはさらに心血管疾患を有する、またはその発症に対する素因を有する個体の診断に使用するための使用説明を含む。キットのプローブまたはプライマーは、このファイルに記載する任意のプローブまたはプライマーであることができる。
【0205】
目的の多型領域を含む遺伝子の領域を増幅するための好適なキットは、1、2以上のプライマーを含んでなる。
【0206】
抗体に基づく診断法およびキット
本発明はまた、生物学的サンプル中の多型パターンを検出するための抗体に基づく方法も提供する。この方法は次の工程を含む:(i)サンプルを1以上の抗体調製物(ここで各抗体調製物は本明細書に開示する遺伝子にコードされるタンパク質の特定の多型形態に特異的である)と、安定な抗原−抗体複合体がサンプル中で抗体と抗原成分との間で形成できる条件下で接触させ:そして(ii)工程(i)で形成したいかなる抗原−抗体複合体も、当該技術分野で既知の任意の適当な手段を使用して検出する(ここで、複合体の検出はサンプル中の特定の多型形態の存在を示すものである)。
【0207】
典型的には免疫アッセイは、標識した抗体または標識した抗原成分のいずれか(例えば抗体に対する結合についてサンプル中の抗原と拮抗する)を使用する。適当な標識には、酵素に基づいた、蛍光性、化学発光性、放射性または色素分子を含むが、これらに限定するわけではない。例えば、ビオチンおよびアビジンを使用するようなプローブからのシグナルを増幅するアッセイ、およびELISAアッセイのような酵素−標識化イムノアッセイも知られている。
【0208】
また本発明は、抗体に基づく診断用途に適するキットも提供する。診断キットは典型的には1以上の以下の成分を含む:
(i)多型に特異的な抗体。該抗体は予め標識することができる;別法として、該抗体は標識されず、キット内に標識するための成分を別の容器で含むことができるか、または2次的な標識抗体が提供される;および
(ii)反応成分:該キットは、適用可能な場合には、固相マトリックスを含む特定のイムノアッセイプロトコールに必要な他の適当に包装された試薬および材料、および標準規格物を含んでいてもよい。
【0209】
上記のキットは、試験を行うための使用説明を含むことができる。さらに、好適な実施態様では、診断キットは高処理量および/または自動化操作に適している。
【0210】
薬剤標的およびスクリーニング法:
本発明に従い、本明細書に開示する遺伝子から派生したヌクレオチド配列および本明細書に開示する遺伝子によりコードされるペプチド配列、特に1以上の多型配列を含むものは、心血管薬、すなわち心血管疾患の1以上の臨床的症状を処置するために効果的な化合物を同定するために有用な標的を含んでなる。さらに、特にタンパク質が2以上のサブユニットから構築されている多量体タンパク質である時、種々の多型サブユニットの組み合わせが大変有用である。
【0211】
薬剤標的には、限定するわけではないが、(i)本明細書に開示する遺伝子に由来する単離された核酸、および(ii)本明細書に開示する遺伝子にコードされる単離されたペプチドおよびポリペプチドを含み、その各々が1以上の多型位置を含む。
【0212】
インビトロスクリーニング法:
一連の実施態様では、1以上の多型位置を含む単離された核酸を、それが試験化合物に配列特異的様式で結合する能力についてインビトロで試験する。この方法は:
(i)多型位置に特定の配列を含む第1核酸、および配列が同じ多型位置で異なる配列を除き、第1核酸と同一である第2核酸を準備すること;
(ii)核酸を多数の試験化合物と、結合に適する条件下で接触させること;そして
(iii)第1または第2核酸配列のいずれかに選択的に結合する化合物を同定すること、
を含んでなる。
【0213】
本明細書で使用する選択的結合とは、例えば結合親和性、結合能等のような結合における任意のパラメーターにおける測定可能な任意の差異を指す。
【0214】
別の一連の実施態様では、1以上の多型位置を含んでなる単離されたペプチドまたはポリペプチドを、それが試験化合物に配列特異的様式で結合する能力についてインビトロで試験する。このスクリーニング方法は:
(i)多型位置に特定の配列を含む第1ペプチドまたはポリペプチド、および配列が同じ多型位置で異なる配列を除き、第1ペプチドまたはポリペプチドと同一である第2ペプチドまたはポリペプチドを準備すること;
(ii)ポリペプチドを多数の試験化合物と、結合に適する条件下で接触させること;そして
(iii)1つの核酸配列に選択的に結合する化合物を同定すること、
を含んでなる。
【0215】
好適な実施態様では、高処理量スクリーニングプロトコールを使用して、多数の試験化合物が上記に開示する遺伝子またはペプチドへ、配列特異的様式で結合する能力を調査する。
【0216】
試験化合物は、合成または天然化合物の大きなライブラリーからスクリーニングされる。多くの手段がサッカライド、ペプチドおよび核酸に基づく化合物の無作為または指向的な合成のために現在使用されている。合成化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical社(Trevillet, Cornwall, UK)、Comgenex (Princeton, NJ.)、Brandon Associates (Merrimack, N.H.)およびMicrosource (New Milford, Conn.)から市販購入できる。稀な化学ライブラリーはAldrich (Milwaukee, Wis.)から入手可能である。あるいは細菌、真菌、植物および動物抽出物状態の天然化合物のライブラリーは、例えばPan Laboratories (Bothell, Wash.)またはMycoSearch (N.C.)から入手可能であり、または容易に生成することができる。さらに天然および合成的に作成したライブラリーおよび化合物は、通例の化学的、物理的および生化学的手段を介して容易に修飾される。
【0217】
インビボスクリーニング法
本明細書に開示する遺伝子の多型変異体を発現するインタクトな細胞または動物全体は、候補となる心血管薬を同定するためのスクリーニング法に使用することができる。
【0218】
一連の実施態様では、永久細胞系を、特定の多型パターンを発現する個体から樹立する。あるいは細胞(哺乳動物、昆虫、酵母または細菌細胞を包含するが、限定するわけではない)を、適切なDNAを導入することにより1以上の多型配列を含んでなる遺伝子を発現するようにプログラムする。候補化合物の同定は、(i)本明細書に開示する遺伝子にコードされるタンパク質の特定の多型変異体に対する試験化合物の選択的結合を測定するアッセイ;(ii)本明細書に開示する遺伝子にコードされるタンパク質の測定可能な活性または機能を修飾(すなわち阻害または強化)する試験化合物の能力を測定するアッセイ;および(iii)本明細書に開示する遺伝子のプロモーター(すなわち調節)領域から得られる配列の転写活性を修飾(すなわち阻害または強化)する化合物の能力を測定するアッセイ、を含むがこれらに限定しない任意の適切なアッセイを使用して達成することができる。
【0219】
別の一連の実施態様では、(i)本明細書に開示する特定の多型位置に異なる配列を有する1以上のヒト遺伝子を、トランスジェニック動物のゲノムに安定に挿入した;および/または(ii)本明細書に開示する内因性遺伝子を不活性化し、特定の多型位置に異なる配列を有する本明細書に開示するヒト遺伝子と置き換える、トランスジェニック動物を作出する。例えば、Coffman, Semin. Nephrol. 17:404, 1997; Esther et al., Lab. Invest. 74:953, 1996; Murakami et al., Blood Press. Suppl. 2:36, 1996.を参照されたい。そのような動物を候補化合物で処置し、そして心血管状態の1以上の臨床的マーカーをモニタリングすることができる。
【0220】
以下は、本発明の非限定的な実施例であることを意図する。
材料および方法
PyrosequencingTM法を用いた患者DNAの遺伝子型の決定は、国際公開第9813523号明細書に記載されている通りである。
【0221】
最初にSNP周辺のフランキング領域を増幅するためにPCRを準備する。このために2ngのゲノムDNA(患者サンプル)を、プライマーセット(20−40pmol)と混合して、20μLの総容量中に0,3〜1UのQiagens Hot Star Taq ポリメーラーゼTMを用いて75〜320bpのPCRフラグメントを生成する。1つのプライマーを、配列決定プライマーの方向に依存してビオチン化する。ビオチン化プライマーが取り込まれるようにするために、0,8倍を使用する。
【0222】
プライマーの設計には、Oligo6TM(Molecular Biology Insights)またはPrimer SelectTM(DNAStar)のようなプログラムを使用する。PCR設定は、QiagensからのBioRobot3000TMにより行う。PCRは、BiometeraからのT1またはTgradient ThermocyclerTMで行う。
【0223】
全PCR反応物をPSQPlate TM(Pyrosequencing)に移し、そしてPyrosequencingからSample Prep ToolTMおよびSNP Reagent KitTMを使用してそれらの使用説明に従い調製する。
【0224】
Pyrosequencing TM用の鋳型の調製:
PSQ96 Sample Prep Toolを使用したサンプル調製:
1.PSQ96 Sample Prep Tool CoverをPSQ96 Sample Prep Toolに以下のように乗せる:カバーをデスク上に置き、磁気ロッドホルダーからハンドルを離すことにより4個のアタッチメントロッドを引っ込め、磁気ロッドをカバープレートの穴にはめ、ハンドルをカチッという音がするまで下げる。これでPSQ96 Sample Prep Toolは使用する準備ができている。
2.ビーズを1つのプレートから別のプレートに移すため、カバーをかけたツールは、サンプルを含むPSQ 96 Plateに置き、そしてハンドルを磁気ロッドホルダーから離すことにより磁気ロッドを下げる。ツールを上下に数回動かし、次いで30〜60秒待つ。ビーズは選択した溶液を含む新たなPSQ96 Plateに移す。
3.磁気ロッドホルダーをハンドルと共に持ち上げることによりビーズを放出する。ツールを上下に数回動かして、ビーズが放出されたことを確かめる。
【0225】
すべての工程は特に言及しない限り、室温で行う。
【0226】
PCR産物の固定化:
ビオチン化PCR産物は、ストレプトアビジンをコートしたDynabeads TM M−280 Streptavidin上に固定化する。幾つかのサンプルをPSQ96プレートで平行して固定化する。
PCR産物、十分に至適化されたPCRの20μlを、25μlの2X BW緩衝液IIと混合する。60〜150μgのDynabeadsを加える。Dynabeadsと2X BW緩衝液IIの混合物もPCR産物に加えて、約1x濃度の最終BW緩衝液IIを生成することが可能である。
1.65℃で15分間、一定に撹拌しながらインキューベーションしてビーズの分散を維持する。300bpより長いフラグメントの最適な固定化には、30分間のインキューベーション時間を使用する。
【0227】
鎖の分離:
4.鎖を分離するために、PSQ 96 Sample Prep Toolを使用して固定化サンプルを含むビーズを、ウェルあたり50μlの0.50M NaOHを含むPSQ 96 Plateに移す。ビーズを放出する。
5.約1分後、固定化された鎖を含むビーズを、ウェルあたり99μlの1xアニーリング緩衝液を含むPSQ 96 Plateに移し、そして完全に混合する。
6.ビーズは、ウェルあたり1xアニーリング緩衝液および3〜15pmolの配列決定プライマーの混合物(45μl)を含有するPSQ 96 Plateに移す。
7.PSQ 96 Sample Prep Thermoplate 中で80℃で2分間加熱し、そして室温に戻す。
8.室温に戻した後、配列決定反応を続ける。
【0228】
配列決定反応:
1.使用する方法を選択し(“SNP法”)、そして関連情報をPSQ 96 Instrument Control ソフトウェアに入力する。
2.カートリッジおよびPSQ 96 PlateをPSQ 96 Instrumentに配置する。
3.作業を開始する。
【0229】
ABI 7700/7900 instrument(TaqMan)を用いる遺伝子型決定
TaqMan(Applied Biosystem/Perkin Elmer)を用いるSNP遺伝子型決定化を、製造者指示書に従って行った。TaqManアッセイは、Leeらによって、Nucleic Acids Research 1993, 21: 3761-3766において検討されている。
【0230】
サービス契約社での遺伝子型決定:
Qiagen Genomics、正式にはRapigeneは、患者サンプル中のSNPの遺伝子型決定のサービスを行う契約社である。彼らの方法は、異なるタグで標識された2つの相補的プライマーが各遺伝子型について設計されているプライマー伸長法を基にしている。遺伝子型に依存して、ただ一つのプライマーが特定のタグと一緒に伸長する。このタグは質量分析により検出することができ、そして各遺伝子型に関する尺度である。この方法は以下の特許に記載されている:「非蛍光分光計または電位差計により検出され得るタグを使用した核酸分子の検出および同定」(国際公開第9727325号パンフレット)。
【実施例】
【0231】
本発明およびその用途(架空)を例示するために、baySNP28を以下のとおりに使用する:
baySNP28(例えばC対T交換)にみられるヌクレオチド多型、およびそれがおそらく存在する該遺伝子は、表3から判り得る。baySNP28は、表2からのプライマーを使用して種々の患者コホートを対象として遺伝子決定した。結果として、異なる遺伝子型を持つ以下の数の患者が見いだされた(表3および5aを合わせた情報):
【表2】

【0232】
スタチン治療(HELD FEM HIRESP)に対して高い応答を示す女性患者数を対象コホート(HELD FEM LORESP)と比較した時、CT遺伝子型を持つ低応答者の数が高いことがわかる。これは、CT遺伝子型を持つ女性個体間でのより低いスタチン応答を指摘するものである。統計試験をこれらの知見に適用して、以下のp値を得た(表5bから採用したデータ):
【表3】

【0233】
少なくとも1つの遺伝子型(GTYPE)p値が0.05未満なので、遺伝子型とスタチン応答表現型との間の関連は、統計的に有意であると見なす(すなわち、患者の遺伝子型から、スタチン治療に対する応答を予測することができる)。より詳細には、特定の遺伝子型を持つ時、特定のスタチン応答表現型を予測することができる(表6aから採用したデータ);
【表4】

【0234】
baySNP28の場合では、高応答者の表現型を示す危険性は、TT遺伝子型を持つ場合、3.38倍高い。これは、baySNP28中のTT多型が、女性の高スタチン応答について独立した危険因子であることを示した。
【0235】
さらに、統計的関連は、対立遺伝子に基づき算出することができる。この計算から、危険な遺伝子型の代わりに危険な対立遺伝子が同定されるであろう。
【0236】
baySNP28の場合では、以下の対立遺伝子の数値を得た(表3および5aを合わせたデータ):
【表5】

【0237】
高いスタチン応答を示す女性患者数(HELD FEM HIRESP)を対照コホート(HELD FEM LORESP)と比較した時、T対立遺伝子を持つ高スタチン応答者の数が増加するが、C対立遺伝子を持つ高スタチン応答者数は減少する。これは、T対立遺伝子を持つ女性個体間での高いスタチン応答を指摘するものである。統計試験をこれらの知見に適用して、以下のp値を得た(表5bから採用したデータ):
【表6】

【0238】
少なくとも1つの対立遺伝子(ALLELE)p値が0.05未満なので、対立遺伝子と高いスタチン応答表現型との間の関連は、統計的に有意であると見なされる(この実施例では、有意なp値が2つの統計試験から得られた)。すなわち、baySNP28からの患者の対立遺伝子の分析により、スタチン応答の程度を予測することができる。より詳細には、特定の対立遺伝子を担持する時、特定のスタチン応答表現型を示す相対的危険性を算出することができる(表6bから採用したデータ):
【表7】

【0239】
baySNP28の場合では、高スタチン応答を示す危険性は、T対立遺伝子を持つ場合、2.39倍高い。これは、baySNP28中のT対立遺伝子が、女性の高スタチン応答について独立的な危険因子であることを示すものである。換言すると、これらの患者は、ADRを回避するために低用量のスタチンを受容すべきである。しかし、彼らは「高応答者」の表現型であるので、それでも薬剤から利益を得るだろう。言い換えると、C対立遺伝子の担持者は、有益な治療的効果を経験するためには、より高い薬剤用量を受容すべきである。
【0240】
別の例は、(仮空)baySNP29であり、これは薬剤有害反応に関連する多型を例示するために採用した。baySNP29は、重篤なADR罹患男性患者と対応する対照とを比較した時に有意であることが分かった(表1bで定めたとおり)。
【0241】
遺伝子型AA、AGおよびGGについての相対的な危険率は以下の通りであった(データは表6aから採用した)
【表8】

【0242】
この場合、AA遺伝子型を持つ男性患者は、ADRに罹患する危険性が3.15倍高い危険性を有する。換言すると、それらの患者は、ADRを回避するために低用量のスタチンを受容するべきか、または別の治療に切替えるべきかいずれかある。一方で、AGまたはGGの遺伝子型を有する男性患者は、ADRに対するより高い耐性があり、よってスタチン治療を良好に耐容することがあきらかとなった。
【0243】
以下の表から判るように、本発明に開示される関連性の幾つかは、1より多くの表現型に対する指標である。いくつかのbaySNPは、例えばADRと関連があるが、CVDに罹患する危険性とも関連する(表6)。
【0244】
【表9】

【0245】
【表10】

【0246】
【表11】

【0247】
インフォームド・コンセントが、患者および対照の人々により署名された。血液は医師により医学的に標準的な手順に従い採取された。
サンプルは匿名で集められ、そして患者番号で標識された。
DNAはQiagenからのキットを使用して抽出した。
【0248】
【表12】

【0249】
【表13】

【0250】
【表14】

【0251】
【表15】

【0252】
【表16】

【0253】
【表17】

【0254】
【表18】

【0255】
【表19】

【0256】
【表20】

【0257】
表4:コホート
遺伝子型決定に使用した様々なコホートの名称(表5で使用したとおり)および構成を示す。
【表21】

【表22】

【0258】
【表23】


【0259】
【表24】

【0260】
【表25】

【0261】
【表26】

【0262】
【表27】

【0263】
【表28】

【0264】
【表29】

【0265】
【表30】

【0266】
【表31】

【0267】
【表32】

【0268】
表5b: PA SNPのp値
p値の0.05と同じかまたは0.05以下である場合に、SNPは心血管疾患の有害なスタチン応答またはスタチン処置の効果と各々関連があると見なされる。
【表33】

【0269】
【表34】

【0270】
【表35】

【0271】
【表36】

【0272】
【表37】

【0273】
【表38】

【0274】
表6a:PA SNPの遺伝子型と相対リスクの相関関係
特定患者を遺伝子型から導き出された診断結果について、我々は、各SNPの3つの潜在的遺伝子型について相対リスクRR1、RR2、RR3を計算した。遺伝子型頻度を下記に示す
【表39】

【0275】
我々は計算した
【表40】

【0276】
ここで、症例および対照集団は、任意の症例−対照−群のペア、または悪い(症例)−良好な(対照)−群のペア(スタチンに対するそれらの高い応答のため「高応答者」が症例コホートとして処理され、一方「低応答者」は対照コホートとして各々処理される)を示す。値RR>1、RR2およびRR3>1は、遺伝子型1、遺伝子型2および遺伝子型3を各々担持する個体にとっての高いリスクを示す。例えば、RR1=3は、遺伝子2または3を担持する個体と比較して、遺伝子型1を担持する個体のリスクが3倍であることを示す[相対リスクの計算および統計に関する詳細な記述は、Biostatistics, L.D.Fisher and G. van Bell, Wiley Interscience 1993に記載されている]。baySNPの数は、PA SNPの内部番号付けを指し、配列表に見出される。Null:規定せず。
【0277】
相対リスク(3倍、ゼロまたはnull)を表に示していない場合では、有益な遺伝子型は、遺伝子型の頻度を症例および対照コホートにおいて示した表の右欄から導きだされ得る。例えば、BaySNP33660は以下の結果を示した:
【表41】

【表42】

【0278】
GTまたはTT遺伝子型が対照コホートにのみ存在することが結論づけられ得る;これらの遺伝子型は、ADRに対して何らかの保護的なものである。相対リスクが与えられていない場合に、同様の処理が保護的対立遺伝子を決定するために使用され得る(表6b)。
【表43】

【0279】
【表44】

【0280】
【表45】

【0281】
【表46】

【0282】
【表47】

【0283】
【表48】

【0284】
【表49】

【0285】
【表50】

【0286】
【表51】

【0287】
表6b:PA SNP対立遺伝子と相対的リスクの相関
特定の患者を遺伝子型から導きだされる診断結果にについて、我々は、各SNPの2つの潜在的対立遺伝子について相対リスクRR1およびRR2を計算した。

【表52】

【0288】
我々は計算した
【表53】

【0289】
ここで、症例および対照集団は、任意の症例−対照−群のペア、または悪い(症例)−良好な(対照)−群のペア(スタチンに対するそれらの高い応答のため「高応答者」が症例コホートとして処理され、一方「低応答者」は対照コホートとして各々処理される)を示す。RR>1およびRR2>1の値は、対立遺伝子1および対立遺伝子2を各々担持する個体とっての高いリスクを示す。例えば、RR1=3は、対立遺伝子1を担持しない個体と比較して、対立遺伝子1を担持する個体のリスクが3倍であることを示す[相対リスクの計算および統計に関する詳細な記述は、Biostatistics, L.D.Fisher and G. van Bell, Wiley Interscience 1993に記載されている]。baySNPの数は、PA SNPの内部番号付けを指し、配列表に見出される。Null:規定せず。
【表54】

【0290】
【表55】

【0291】
【表56】

【0292】
【表57】

【0293】
【表58】

【0294】
【表59】

【0295】
【表60】

【0296】
【表61】

【0297】
【表62】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表現型関連(PA)遺伝子によりコードされる単離されたポリヌクレオチドであって、
PA遺伝子プロモーター配列を含むかまたは含まない、PA遺伝子ポリペプチドの完全長cDNAのような機能的周囲に含まれる配列セクションに示される対立遺伝子変異を含む配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131を含んでなる群から選択されるポリヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1記載の1以上のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項3】
請求項2記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項4】
請求項1記載のポリヌクレオチドによりコードされる実質的に精製されたPA遺伝子ポリペプチド。
【請求項5】
PA遺伝子ポリペプチドを生産する方法であって、以下の工程:
a)請求項3記載の宿主細胞を、PA遺伝子ポリペプチドの発現に適当な条件下で培養すること、そして
b)PA遺伝子ポリペプチドを宿主細胞カルチャーから回収すること、
を含む方法。
【請求項6】
請求項1記載のポリヌクレオチドまたは請求項4記載のPA遺伝子ポリペプチドを検出する方法であって、生物学的サンプルと、該ポリヌクレオチドまたは該PA遺伝子ポリペプチドと特異的に相互作用する試薬とを接触させる工程を含む方法。
【請求項7】
PA遺伝子の活性を調節する作用物質をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
試験化合物を、請求項1記載の任意のポリヌクレオチドによりコードされるPA遺伝子ポリペプチドと接触させること、そして該ポリペプチドのPA遺伝子活性を検出することを含んでなり、ここで該PA遺伝子ポリペプチド活性を上昇させる試験化合物が該PA遺伝子ポリペプチドの活性を上昇させる有力な治療薬として同定され、該ポリペプチドのPA活性を低下させる試験化合物が該PA遺伝子ポリペプチドの活性を低下させる有力な治療薬として同定される、方法。
【請求項8】
PAポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性を調節し、請求項7記載の方法により同定される、作用物質。
【請求項9】
請求項2記載の発現ベクターまたは請求項8記載の作用物質および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬用組成物。
【請求項10】
医薬剤を調製するための請求項8記載の作用物質の使用。
【請求項11】
ヒト個体が心血管疾患を有するか、または心血管疾患を発症する危険性があるかどうかを決定する方法であって、個体のPA遺伝子座の配列番号1〜131の配列セクションで示されるヌクレオチド変異の実体を決定することを含んでおり、ここでSNPのSNPクラスは表3から判るように“CVD”である;但し“危険”遺伝子型は表6から判るような1より大きな危険率を有する、方法。
【請求項12】
薬効および薬物有害反応を含むスタチン治療に対する患者の個別応答を決定する方法であって、個体のPA遺伝子座の配列番号1〜131の配列セクションに示されるヌクレオチド変異の実体を決定することを含んでおり、ここでSNPのSNPクラスは表3から判るような“ADR”、“EFF”またはそれら両方である;但しかかる応答の確率は表6から判る、方法。
【請求項13】
スタチン治療に対する患者の個別応答に適するようにあつらえられた医薬剤を調製するための請求項12記載の方法の使用。
【請求項14】
心血管状態またはスタチン応答を評価するためのキットであって、
a)配列決定プライマーおよび
b)配列決定試薬
を含んでおり、
該プライマーは、請求項1記載のヒトPA遺伝子中の多型位置にハイブリダイズするプライマー;および請求項1記載のヒトPA遺伝子中の多型位置に直ぐ隣接してハイブリダイズするプライマーを含む群から選択される、キット。
【請求項15】
請求項1記載の配列群から選択される2以上の組合せから、すべての多型部位の組み合わせまでを検出する、請求項12記載のキット。
【請求項16】
心血管状態またはスタチン応答を評価するためのキットであって、ヒトPA遺伝子ポリペプチド内の請求項1で定義した多型位置に特異的な1以上の抗体、および前記いずれかの組み合わせを含む、キット。

【公表番号】特表2008−506372(P2008−506372A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520743(P2007−520743)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007600
【国際公開番号】WO2006/008045
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】