説明

薬物耐性であると通常みなされている生物に対して抗菌薬物に効力を与える処方物

本発明は、抗菌剤のサブミクロンサイズ〜ミクロンサイズ粒子の組成物に関する。より具体的には、本発明は抗菌剤の組成物に関し、この組成物は、この薬剤に耐性であると通常では考えられる生物に対して、薬剤が効力を有するようにする。この組成物は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤、ならびにアミノ酸およびその誘導体からなる群より選択される、少なくとも一種の界面活性剤で覆われる薬剤を含む、サブミクロンサイズ〜ミクロンサイズの粒子の水性懸濁液を包含する。この粒子は、レーザー回折分析法により測定する場合、5μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に関する相互参照)
本出願は、2003年4月29日に出願した仮特許出願番号60/466,354からの優先権を主張する。
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、抗菌剤の組成物に関する。より詳細には、本発明は、薬剤に耐性であると通常みなされている生物に対して、薬物に効力を与える抗菌剤の処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インビトロでの抗菌剤感受性試験に基づいて、特定の生物に対して有効と考えられる抗菌薬物のレベルが決定され得る。これは薬物のMIC(最小生育阻止濃度)といわれるものである。一方、安全性研究は、患者または試験動物に安全に与えられ得る薬物の量を決定する。投与され得るこの薬物の最大量は宿主動物に対して生物学的最大暴露量を決定し、時間に対して薬物濃度をプロットした曲線下面積(AUC)、時間に対して薬物濃度をプロットしたピーク高さ、時間に対して組織レベルをプロットしたピーク高さなどにより、通常測定される。インビボ実験における瞬時の組織レベルまたは血漿レベルは、生物学的流体における到達し得る薬物レベルの相対的効力を決定するために、上記MIC値と比較され得る。実際の比較は、遊離の薬物レベルのみが重要なパラメーターであるので、血漿タンパク質の結合を補正されなければならない。なぜなら、この状態で、薬物が生体膜を通過して自由に拡散し得るからである。
【0003】
そのような分析の結果、臨床文献が、どの薬物が特定の生物株、より正確には、特定のレベルより低いMIC値を有する特定の生物株に、一般的に使用され得るのかを特定することが確立された。例として、上記抗菌剤イトラコナゾールは、この薬物に対するMICが8より大きいCandida albicans株(例えば、SPORANOX(登録商標)イトラコナゾールについてC.Albicans株c43(ATCC番号201794)、MIC80=16μg/ml)に有効とみなされていない。Candida albicansのこれらの株は、イトラコナゾールに耐性であるとみなされている。これは、投与され得るこの薬物の標準投与レベルを前提としている。
【0004】
しかしながら、投与され得る抗菌薬物(例えば、イトラコナゾール)の量を実質的に増加させる方法が可能であれば、この薬剤による処置は不能と今までみなされてきた感染症の処置が可能になり得る。そのような方法は、上記薬物をナノ懸濁液として処方することにより可能である。界面活性剤被覆により安定化されたサブミクロンサイズの薬物の結晶は、場合によっては、血流に注入された際に直ちには溶解しないことが分かっている。代わりに、それらは、脾臓および肝臓の定着したマクロファージにより捕捉される。この保護域から、上記薬物は、何日にもわたってゆっくりと放出される。これは、従来の溶解された薬物と対照的であり、それは、注入されるとかなり早い速度で血中濃度が減少する。
【0005】
上記薬物の溶解性をあげるように従来通りに処方される抗菌剤の例は、トリアゾール系抗真菌剤イトラコナゾールがある(図2)。イトラコナゾールは、全身にわたる真菌症、特にアスペルギルス症およびカンジダ症に対して有効である。イトラコナゾールの新しい経口調製物および静脈内調製物は、溶解性の欠如と関連するバイオアベイラビリティの問題を克服するために、調製されてきた。例えば、イトラコナゾールの上記バイオアベイラビリティは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(薬物と包接複合体を形成し、それによって水溶性が増加するキャリアオリゴ糖)で処方される場合、増加する。上記市販の調製物は、商品名SPORANOX(登録商標)注射液で知られており、JANSSEN PHARMACEUTICAL PRODUCTS、L.P.により創作された。上記薬物は、現在Abbott Labsで製造され、Ortho Biotech,Incで販売されている。
【0006】
静脈内イトラコナゾールは、選択された臨床状況では有用であり得る。例としては、AIDS患者、他の薬物と同時的な処置に起因する経口薬剤を効率的に吸収する能力が無い患者、または経口投薬ができない重態患者における塩酸欠乏症がある。現在の市販製品、SPORANOX(登録商標)注射液は、10gのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(「HPBCD」といわれる)と250mgのイトラコナゾールとを含有する25mLのガラスバイアルで入手可能である。これらのバイアルは使用前に50mLの0.9%生理食塩水で希釈される。得られたシクロデキストリン濃度は、再構成された製品の10%(w/v)を超える。HPBCDは、伝統的に注射用として安全であるとみなされてきたが、10%のような高濃度では、内皮組織に著しい変化を誘導することが動物モデルにおいて報告されている(Duncker G.;Reichelt J.、Effects of the pharmaceutical cosolvent hydoroxypropyl−beta−cyclodextrin on porcine corneal Endothelium.Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology(Germany)1998、236/5,380〜389)。
【0007】
他の賦形剤が、静脈内注射のために難水溶性薬物を処方するために、しばしば使用される。例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標)、Bristol−Myers Squibbにより生産される)は、52.7%(w/v)のCremophor(登録商標)EL(ポリオキシエチレンひまし油)および49.7%(v/v)の脱水アルコールUSPを含有する。Cremophor(登録商標)ELの投与は、望ましくない過感受性反応を引き起こし得る(Volcheck、G.W.、Van Dellen、R.G. Anaphylaxis to intravenous cyclosporine and tolerance to oral cyclosporine:case report and review. Annals of Allergy、 Asthma、and Immunology、1998、80、159〜163;Singla A.K.;Garg A.;Aggarwal D.、Paclitaxel and its formulations.International Journal of Pharmaceutics、2002、235/1〜2、179〜192)。
【0008】
本発明は、抗菌薬物を未処方の状態もしくはそれらの既存の処方物より、その物理学的性質および生物学的性質に基づいて、より有効にする組成物を開示する。使用されるアプローチは、抗菌剤をナノ懸濁液として処方することである。これは、未処方の薬物には従来耐性と考えられていた微生物を処理する改善された処方物の使用を可能にする。従来の処方アプローチは、溶解性やバイオアベイラビリティのみを高めることを試みる。そのようなアプローチは、pH変化、塩の形態の改変、有機改変剤の使用またはシクロデキストリンの使用が挙げられる。本発明に開示されるアプローチとしては、薬物の動態的特徴を変えること、さらに大きな投薬を可能にすること、溶解度およびバイオアベイラビリティのみを改善することにより達成され得るもの以上の改善された効力を生じることが挙げられる。急性毒性試験は、ナノ懸濁液として処方される場合よりも非常に多くの薬物が動物に投与され得ることを実証してきた。従って、より多い薬物が効力を発揮するように標的組織で利用可能である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、通常薬剤に対して耐性であるとみなされている生物に対して薬剤が効力を有するようにさせる抗菌剤のサブミクロンサイズからミクロンサイズの粒子の水性懸濁液の組成物に関する。上記組成物としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤、ならびにアミノ酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤で被覆された薬剤を含有するサブミクロンサイズからミクロンサイズの粒子の水性懸濁液が挙げられる。上記粒子は、光散乱(HORIBA)または顕微鏡測定で測定される5μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する。より好ましくは、上記粒子は約1ミクロンより小さくあるべきであり、最も好ましくは、約150nmから約1ミクロンまたはその間の組み合わせの範囲内であるべきである。
【0010】
本発明は、薬学的使用に適切である。
【0011】
本発明の一つの実施形態では、上記抗菌剤は抗真菌剤である。好ましい実施形態では、抗真菌剤はトリアゾール抗真菌剤である。本発明のさらに別の実施形態では、上記トリアゾール抗真菌剤は、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ラブコナゾール(ravuconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、サペルコナゾール、エベルコナゾール(eberconazole)、ゲナコナゾール(genaconazole)、クロトリマゾール、エコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール(terconazole)、チオコナゾールおよびポサコナゾール(posaconazole)から選択される。本発明の好ましい実施形態では、上記抗真菌剤は、イトラコナゾールである。
【0012】
本発明において粒子を覆うのに適切な界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤またはアミノ酸およびそれらの誘導体から選択され得る。
【0013】
さらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は、以下の工程を含有する微量沈殿法により調製される:(i)上記抗菌剤を水混合性の第一の溶媒中に溶解し、溶液を形成する工程;(ii)上記溶液を水溶性である第二の溶媒と混合し、プレ懸濁液を規定する工程;および;(iii)上記プレ懸濁液にエネルギーを加え、5μm未満の平均有効粒径を有する粒子を形成する工程;より好ましくは約1ミクロンより小さく、最も好ましくは約150nm〜約1ミクロンもしくは任意の範囲またはそれらの範囲の組合せ、ここで抗真菌剤の上記溶解度は、第一の溶媒において上記第二の溶媒におけるより大きく、第一の溶媒または第二の溶媒は、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤ならびにアミノ酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される一以上の界面活性剤を含む。
【0014】
本発明はまた、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤ならびにアミノ酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種以上の界面活性剤で覆われた薬剤を含有する、サブミクロンからミクロンサイズまでの粒子の水性懸濁液として、上記薬剤をすることにより、通常薬剤に耐性であるとみなされている生物に対して、抗菌剤に効力を与える方法に関する。
【0015】
本発明は、通常抗菌剤に耐性であるとみなされている生物による被験体の感染を、少なくとも一種以上の界面活性剤で覆われた薬剤を含有するサブミクロンからミクロンサイズまでの粒子の水性懸濁液として処方された上記薬剤を被験体に投与することによって、被験体の感染を処置する方法に、さらに関し、この界面活性剤は、以下:イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤ならびにアミノ酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の局面ならびに特性は、添付の図面および明細書を参考にして議論される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(好ましい実施形態の詳細な記載)
本発明は、多くの異なる形態の実施形態が可能であるが、本開示は、本発明の原理の例示として解釈されるべきであり、そして例示される具体的な実施形態に本発明を限定することを意図しないという了解のもとで、本発明の具体的な実施形態が図面に示され、そして詳細に本明細書中に記載される。
【0018】
本発明は、抗菌剤の組成物に関し、この組成物は、その薬剤に耐性であると通常では考えられる生物に対して、その薬剤が効力を有するようにする。その組成物は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤、ならびにアミノ酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤で覆われた上記薬剤を含む、サブミクロンサイズからミクロンサイズまでの粒子の、水性懸濁液を含有する。本発明において開示される組成物は、上記薬物の薬物動態学的な特徴の変化をもたらし、この変化は、はるかに多い投薬量を許容し、結果として溶解性および生物学的利用能の向上のみにより達成され得るものを超えて改善された効力を生じる。界面活性剤コーティングにより安定化されたサブミクロンサイズの薬物の結晶は、いくつかの場合において、血流への注入の際にすぐに溶解しないことが見出されている。代わりに、その薬物は、脾臓および肝臓の固定マクロファージにより捕捉される。この聖域から、その薬物は、長期の期間に渡り、緩やかに放出される。急性毒性試験は、ナノ懸濁液として処方された場合、さらに多くの薬物が、動物もしくはヒトに投与され得ることを示した。従って、より多くの上記の薬物が、効力を及ぼすために標的器官において使用可能である。
【0019】
本発明における粒子は、光散乱(HORIBA)もしくは顕微鏡計測により計測したところ、5μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する。より好ましくは、その粒子は約1ミクロン未満であり、そして最も好ましくは、約150nm〜約1ミクロン、またはその中の任意の範囲もしくは範囲の組み合わせである。上記の組成物は、上記の薬剤に耐性であると通常では考えられる生物による感染を処置するために、被験体へ投与され得る。
【0020】
その抗菌剤は、好ましくは、難水溶性(poorly water soluble)有機化合物である。「難水溶性(poorly water soluble)」により意味されることは、その化合物の水溶性が10mg/ml未満であり、そして好ましくは、1mg/ml未満であることである。抗菌剤の好ましい種類は、抗真菌剤である。好ましい抗真菌剤は、図1に示される一般分子式を有するトリアゾール抗真菌剤である。トリアゾール抗真菌剤の例としては、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ラブコナゾール(ravuconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、サペルコナゾール、エベルコナゾール(eberconazole)、ゲナコナゾール(genaconazole)、クロトリマゾール、エコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾールおよびポサコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に好ましい抗真菌剤は、イトラコナゾールである。イトラコナゾールの分子構造は、図2に示される。
【0021】
本発明は、薬学的使用に適している。上記の組成物は、多様な経路により投与され得、この経路としては、静脈内経路、脳内経路、くも膜下腔内経路、リンパ腺内経路、肺経路、関節内経路、および腹腔内経路が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施形態において、上記組成物の水性媒体は除去され、乾燥した粒子を形成する。この水性媒体を除去する方法は、当該分野において公知である任意の方法であり得る。ひとつの例は、エバポレーションである。別の例は、フリーズドライもしくは凍結乾燥である。上記の乾燥粒子は次いで、任意の受容可能な物理的形態へ処方され得、その物理的形態としては、溶液、錠剤、カプセル、懸濁物、クリーム、ローション、エマルジョン、エアロゾル、粉末、徐放のためのレザバーもしくはマトリックスデバイス(例えば、埋め込みもしくは経皮パッチ)中への組み込みなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
上記の粒子が、上記マクロファージに捕獲される必要がない場合、その粒子は、5μmより大きい(例えば、50μm未満、もしくは7μm未満)か、もしくは150nm未満(例えば、100μm未満)であり得る。これらの粒子は、多様な経路により投与され得、その経路としては、非経口経路、経口経路、口腔内膜経路、歯周経路、直腸経路、経鼻経路、肺経路、経皮経路、もしくは局所的経路が挙げられるが、これらに限定されない。非経口投与の形態としては、静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、腹腔内投与、眼内投与、関節内投与、くも膜下腔内投与、脳内投与、筋肉内投与、皮下投与などが挙げられる。
【0023】
本発明の水性懸濁液はまた、貯蔵の際に、安定性を向上させるために、凍結され得る。安定性を向上させるための水性懸濁液の凍結は、同一人に譲渡され、そして同時係属中である米国特許出願番号第60/347,548号(本明細書中に参考として援用され、この一部を成す)に開示される。
【0024】
本発明の実施形態において、上記の抗菌剤は、好ましくは約0.01重量対体積%〜約50重量対体積(w/v)%の量で存在し、より好ましくは約0.05%〜約30%(w/v)で存在し、そして最も好ましくは約0.1%〜約20%(w/v)で存在する。
【0025】
本発明における上記粒子をコーティングするために適切な界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤、もしくはアミノ酸およびその誘導体から選択され得る。イオン性界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性であり得る。
【0026】
適切な陰イオン性界面活性剤としては:スルホン酸アルキル、リン酸アルキル、ホスホン酸アルキル、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびその塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸および他の胆汁酸(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)ならびにそれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)が挙げられるが、これらに限定されない。陰イオン性界面活性剤として、リン脂質が使用され得る。適切なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロール、もしくはホスファチジン酸およびその塩が挙げられる。
【0027】
両性イオン性界面活性剤は、電気的に中性であるが、同じ分子内に局所的に正電荷および負電荷を有する。適切な両性イオン性界面活性剤としては、両性イオン性リン脂質が挙げられるが、これに限定されない。適切なリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジアシル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(例えば、ジミリストイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびジオレオリル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DOPE))が挙げられる。陰イオン性リン脂質および両性イオン性リン脂質を含むリン脂質の混合物が、本発明に利用され得る。このような混合物としては、リゾリン脂質、卵リン脂質もしくは大豆リン脂質またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記のリン脂質(陰イオン性にせよ、両性イオン性にせよ、もしくはリン脂質の混合物にせよ)は、塩にされていてもいなくてもよく、水素化されてもよいし部分的に水素化されてもよく、または天然の半合成物であってもよいし合成物であってもよい。そのリン脂質はまた、本発明におけるマクロファージへの送達を特異的に標的とするために、水溶性ポリマーもしくは親水性ポリマーと結合体化され得る。しかし、結合体化されたリン脂質はまた、他の適用において、他の細胞もしくは組織を標的とするためにも使用され得る。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)(これはモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)としてもまた、公知である)である。このPEGの分子量は、例えば200〜50,000で変動し得る。市販されるいくつかの一般に使用されるPEGとしては、PEG350、PEG550、PEG750、PEG1000、PEG2000、PEG3000、およびPEG5000が挙げられる。上記リン脂質もしくは上記PEG−リン脂質結合体はまた、リガンドに共有結合し得る官能基も取り込み得、このリガンドとしては、タンパク質、ペプチド、糖質、糖タンパク質、抗体、もしくは薬学的に活性な薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの官能基は、上記のリガンドを、例えば、アミド結合形成、ジスルフィド形成もしくはチオエーテル形成、またはビオチン/ストレプトアビジン結合を通じて、結合体化し得る。上記リガンド連結官能基の例としては、ヘキサノイルアミン、ドデカニルアミン、1,12−ドデカンジカーボキシレート、チオエタノール、4−(p−マレイミドフェニル)ブチルアミン(MPB)、4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキシアミド(MCC)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(PDP)、コハク酸、グルタレート、ドデカノエート、およびビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
適切な陽イオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチン塩酸塩、もしくはアルキルピリジニウムハライド)または長鎖アルキルアミン(例えば、n−オクチルアミンおよびオレイルアミン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
適切な非イオン性界面活性剤としては:グリセリルエステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Myrj)、ソルビタンエステル(Span)、グリコールモノステアリン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー(poloxamer))、ポロキサミン(poloxamine)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質のセルロース、デンプンおよびデンプン誘導体(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES))を含む多糖類、ポリビニルアルコール、ならびにポリビニルピロリドンが挙げられる。本発明の好ましい形態において、上記の非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのコポリマーならびに、好ましくは、プロピレングリコールとエチレングリコールとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは、商標名POLOXAMER(時にPLURONIC(登録商標)とも言われる)で販売され、そしてSpectrum ChemicalおよびRugerを含むいくつかの業者から販売される。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルには、短いアルキル鎖を有するものが含まれる。このような界面活性剤の一つの例は、BASF Aktiengesellschaftにより製造されるSOLUTOL(登録商標)HS 15、ポリエチレン−660−ヒドロキシステアレートである。
【0030】
界面活性生物学的分子としては、アルブミン、カゼイン、ヒルジン、もしくは他の適切なタンパク質のような分子が挙げられる。多糖類生物製剤もまた含まれ、デンプン、ヘパリン、およびキトサンからなるが、これらに限定されない。他の適切な界面活性剤としては、任意のアミノ酸(例えば、ロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、フェニルアラニン)、またはこれらのアミノ酸の任意の誘導体(例えば、アミド誘導体もしくはエステル誘導体およびこれらのアミノ酸により形成されるポリペプチド)が挙げられる。
【0031】
好ましいイオン性界面活性剤は、胆汁酸塩であり、そして好ましい胆汁酸塩はデオキシコール酸塩である。好ましい非イオン性界面活性剤はポリアルコキシエーテルであり、そして好ましいポリアルコキシエーテルはPoloxamer 188である。別の好ましい非イオン性界面活性剤は、Solutol HS 15(ポリエチレン−660−ヒドロキシステアレート)である。なおさらに別の好ましい非イオン性界面活性剤は、ヒドロキシエチルデンプンである。生物学由来の好ましい界面活性剤は、アルブミンである。
【0032】
本発明の別の実施形態において、上記の界面活性剤は、好ましくは約0.001%〜5%w/vの量で存在し、より好ましくは約0.005%〜約5%w/vの量で存在し、そして最も好ましくは約0.01%〜5%w/vの量で存在する。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、上記の粒子は、pH調整剤をさらに含む水性媒体に懸濁される。適切なpH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸、モノカルボン酸(例えば、酢酸および乳酸のような)、ジカルボン酸(例えば、コハク酸のような)、トリカルボン酸(例えば、クエン酸のような)、THAM(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、メグルミン(meglumine)(N−メチルグルコサミン)、水酸化ナトリウム、およびアミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、リジン、アラニン、ヒスチジンおよびロイシン)が挙げられるが、これらに限定されない。上記の水性媒体はさらに、浸透圧調整剤(例えば、グリセリン、単糖類(例えば、ブドウ糖)、二糖類(例えば、ショ糖)、三糖類(例えば、ラフィノース)、および糖アルコール(例えば、マンニトール、キシリトールおよびソルビトール)であるが、これらに限定されない)を含有し得る。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、上記の組成物は、0.01〜50%(w/v)で存在するイトラコナゾール粒子の水性懸濁液を含有し、その粒子は、0.001〜5%(w/v)の胆汁酸塩(例えば、デオキシコール酸)および0.001〜5%(w/v)のポリアルコキシエーテル(例えば、Poloxamer 188)でコーティングされ、そしてグリセリンが上記の処方物の浸透圧を調整するために加えられる。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態において、その組成物は、約0.01〜50%(w/v)で存在するイトラコナゾール粒子の水性懸濁液を含有し、その粒子は、約0.001〜5%(w/v)の胆汁酸塩(例えば、デオキシコール酸)および0.001〜5%(w/v)のポリエチレン−660−ヒドロキシステアリン酸塩でコーティングされ、そしてグリセリンが上記の処方物の浸透圧を調整するために加えられる。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態において、その組成物は、約0.01〜50%(w/v)で存在するイトラコナゾール粒子の水性懸濁液を含有し、その粒子は、約0.001〜5%(w/v)のポリエチレン−660−ヒドロキシステアリン酸塩でコーティングされ、そしてグリセリンが上記の処方物の浸透圧を調整するために加えられる。
【0037】
本発明のさらになお別の好ましい実施形態において、その組成物は、0.01〜50%(w/v)で存在するイトラコナゾールの水性懸濁液を含有し、その粒子は、約0.001〜5%(w/v)のアルブミンでコーティングされる。
【0038】
本発明における懸濁液を調製する方法は、同一人に譲渡され、同時係属中である、米国特許出願番号第60/258,160号;同第09/874,799号;同第09/874,637号;同第09/874,499号;同第09/964,273号;同第一0/035,821号;同第60/347,548号;同第一0/021,692号;同第一0/183,035号;同第一0/213,352号;同第一0/246,802号;同第一0/270,268号;同第一0/270,267号および同第一0/390,333号(本明細書に参考として援用され、その一部を成す)に開示される。本発明の実施に有用な懸濁液を調製する一般的手順は、以下に続く。
【0039】
そのプロセスは、3つの一般的なカテゴリーに分類され得る。そのプロセスのカテゴリーの各々は、(1)抗真菌剤を、水混和性の第一の有機溶媒に溶解し、第一の溶液を作製する工程;(2)第一の溶液を、第二の溶媒である水と混和し、抗真菌剤を沈殿させ、前懸濁液を作製する工程;および(3)その前懸濁液に、高剪断(high−shear)混和形態もしくは熱形態のエネルギーを加え、上で定義された所望のサイズ範囲を有する抗真菌剤の安定な形態を得る工程を共有する。
【0040】
プロセスのこれらの3つのカテゴリーは、抗真菌剤の物理的特質に基づいて区分され、その特質は、上記のエネルギー付加工程前に、および上記のエネルギー付加工程後に行われるX線回折研究、示差走査熱量測定(DSC)研究もしくは他の適切な研究を通して決定される。第一プロセスカテゴリーにおいて、上記のエネルギー付加工程前に、前懸濁液中の上記抗真菌剤は、不定形の形態、準結晶形態もしくは過冷却された液体の形態をとり、そしてその抗真菌剤は、平均有効粒径を有する。上記のエネルギー付加工程後は、その抗真菌剤は結晶形態であり、基本的に前懸濁液の粒径と同じ(すなわち、約50μm未満)平均有効粒径を有する。
【0041】
第二プロセスカテゴリーにおいて、上記のエネルギー付加工程の前に、上記抗真菌剤は結晶形態であり、そして平均の有効な粒径を有している。上記のエネルギー付加工程後は、その抗真菌剤は、エネルギー付加工程前と基本的に同一の平均有効粒径を有する結晶形態であるが、エネルギー付加工程後のその結晶は凝集しにくい。
【0042】
上記の有機化合物の凝集頻度が低いことは、レーザー動的光散乱および光学顕微鏡により観察される。
【0043】
第3プロセスカテゴリーにおいて、上記のエネルギー付加工程前は、上記抗真菌剤は、もろく、平均有効粒径を有する結晶形態である。用語「もろい」により意味されることは、上記の粒子が脆弱であり、そしてより小さい粒子へと壊されやすいということである。上記のエネルギー付加工程後は、上記の有機化合物は、前懸濁液の結晶よりも小さな平均有効粒径を有する結晶形態である。上記化合物をもろい結晶形態にするために必要な工程を経ることにより、その後のエネルギー付加工程は、よりもろくない結晶形態の有機化合物と比較して、より迅速に、そしてより効率的に実行され得る。
【0044】
上記のエネルギー付加工程は、任意の様式で行われ得、ここで上記の前懸濁液は、キャビテーション、剪断力もしくは衝撃力に曝される。本発明の一つの好ましい形態において、このエネルギー付加工程は、アニーリング工程である。アニーリングは、本発明においては、1回もしくは繰り返しのエネルギー付加(直接の加熱もしくは機械的な応力)および引き続く熱緩和により、熱力学的に不安定な物質をより安定な物質へ変換するプロセスとして定義される。このエネルギーの低減は、規則性が低い格子構造からより規則的な格子構造への、上記の固体形態の変換により、達成され得る。あるいは、この安定化は、固−液界面に位置する界面活性剤分子の再整列(reordering)により、起こり得る。
【0045】
これら3つのプロセスカテゴリーは、以下に別々に議論される。しかし、プロセス条件(例えば、界面活性剤の選択もしくは界面活性剤の組み合わせ、使用される界面活性剤の量、反応温度、溶液の混合度合い、沈殿の割合など)が、任意の薬剤が、次で議論されるカテゴリーのいずれか1つで加工されることを可能にするように選択され得ることは、理解されるべきである。
【0046】
上記の第一のプロセスカテゴリー、ならびに第二プロセスカテゴリーおよび第3プロセスカテゴリーと同様に、さらに2つの下位カテゴリー(図3および図4にそれぞれ図示される方法Aおよび方法B)に分けられ得る。
【0047】
本発明に従う第一の溶媒は、目的の有機化合物が比較的可溶性であり、そして第二の溶媒を混和できる溶媒、もしくはそのような溶媒の混合物である。このような溶媒としては、分子の水素原子が電気陰性原子(例えば、酸素、窒素もしくは他の元素周期表のVA族、VIA族、およびVIIA族)に結合される水混和性のプロトン性化合物が挙げられるが、これに限定されない。このような溶媒の例としては、アルコール、アミン(第一級および第二級)、オキシム、ヒドロキサム酸、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸、アミドおよび尿素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
第一の溶媒の他の例としてはまた、非プロトン性の有機溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性溶媒のいくつかは、有効なプロトン供与基を欠如するので、水と水素結合を形成し得るが、プロトン受容体としてのみ作用し得る。非プロトン性の溶媒の一つのクラスは、International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第二版、1997)によって規定される双極性非プロトン性溶媒:
比較的高い(約15より大きい)相対誘電率(または誘電定数)およびかなり大きい永久双極子モーメントを有し、強い水素結合(例えば、ジメチルスルホキシド)を形成するために適切に不安定な水素原子を供与し得ない溶媒である。
【0049】
双極性非プロトン溶媒は、以下からなる群より選択され得る:アミド(水素原子を結合していない窒素を有し、完全に置換された)、尿素(窒素に結合した水素原子を欠き、完全に置換された)、エーテル、環状エーテル、ニトリル、ケトン、スルホン、スルホキシド、完全に置換されたホスホネート、ホスホネートエステル、ホスホラミド、ニトロ化合物など。ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリジン(NMP)、2−ピロリジノン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチレンスルホン(スルホレン)、アセトニトリル、およびヘキサメチルホスホラミド(HMPA)、ニトロメタンなどが、このクラスのメンバーである。
【0050】
一般に水不混和性であるが、低体積(10%未満)では十分な水溶性を有する溶媒がまた、選択され得、これらの低体積で水混和性第一溶媒として作用する。例としては、芳香族炭化水素、アルケン、アルカンおよびハロゲン化芳香族、ハロゲン化アルケンおよびハロゲン化アルカンが挙げられる。芳香族としては、ベンゼン(置換、または非置換)および単環式アレーンまたは多環式アレーンが挙げられるが、これらに限定されない。置換ベンゼンの例としては、キシレン(オルト、メタ、またはパラ)およびトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。アルカンの例としては、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタンおよびシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化芳香族の例としては、クロロベンゼン、ブロモベンゼンおよびクロロトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化アルケンの例としては、トリクロロエタン、塩化メチレン、二塩化エチレン(EDC)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
上記溶媒クラス全ての例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:N−メチル−2−ピロリジノン(またN−メチル−2−ピロリドンとも呼ばれる)、2−ピロリジノン(また2−ピロリドンとも呼ばれる)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、カルボン酸(例えば、酢酸および乳酸)、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノールおよびn−プロパノール)、ベンジルアルコール、グリセロール、ブチレングリコール(ブタンジオール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、モノアシル化モノグリセリドおよびジアシル化モノグリセリド(例えば、カプリル酸グリセリル)、ジメチルイソソルビド、アセトン、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラメチレンスルホン(スルホレン)、アセトニトリル、ニトロメタン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、芳香族炭化水素、アルケン、アルカン、ハロゲン化芳香族、ハロゲン化アルケン、ハロゲン化アルカン、キシレン、トルエン、ベンゼン、置換ベンゼン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、トリクロロエタン、塩化メチレン、二塩化エチレン(EDC)、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ポリエチレングリコール(PEG、例えば、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150)、ポリエチレングリコールエステル(例としては、例えば、PEG−4ジラウレート、PEG−20ジラウレート、PEG−6イソステアレート、PEG−8パルミトステアレート、PEG−150パルミトステアレート)、ソルビタンポリエチレングリコール(例えば、ソルビタンPEG−20イソステアレート)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(例としては、例えば、PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンアルギネート、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、プロピレングリコールジカプリレート/プロピレングリコールジカプレート、プロピレングリコールラウレートならびにグリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)。好ましい第一の溶媒は、N−メチル−2−ピロリジノンである。別の好ましい第一の溶媒は、乳酸である。
【0052】
第二の溶媒は、水性溶媒である。この水性溶媒は、それ自体水であり得る。この溶媒はまた、緩衝液、塩、界面活性剤、水溶性ポリマーおよびこれらの賦形剤の組合せを含み得る。
【0053】
(方法A)
方法Aにおいて(図3を参照のこと)、抗菌剤を最初に第一の溶媒に溶解させて第一の溶液を作製する。抗菌剤の第一の溶媒への溶解度に依存して、抗菌剤を約0.01%(w/v)〜約50%(w/v)までで添加し得る。抗菌剤の第一の溶媒への溶解を確実にするために、この濃縮物を約30℃から約100℃まで加熱することが必要であり得る。
【0054】
一種以上の界面活性剤をそこに添加した第二の水性溶液を提供する。この界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または上記の生物由来の界面活性剤から選択され得る。
【0055】
第二の溶液にpH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム、塩酸、tris緩衝液またはクエン酸、酢酸、乳酸、メグルミンなど)を添加することが望ましくあり得る。第二の溶液は、約3〜約11の範囲内のpHを有するべきである。
【0056】
本発明の好ましい形態において、抗菌剤のサブミクロンの大きさの粒子を調製するための方法は、第一の溶液を第二の溶液に添加する工程を包含する。添加速度は、バッチの大きさ、および抗菌剤の沈殿動態に依存する。代表的に、小規模の実験室プロセス(1Lの調製)については、添加速度は、約0.05cc/分〜約10cc/分である。添加の間、溶液は、一定に攪拌されているべきである。プレ懸濁液を作製するために、アモルファス粒子、半結晶固体または過冷却した液体が形成されていることを、光学顕微鏡を用いて観察した。この方法は、プレ懸濁液をアニーリング工程に供し、アモルファス粒子、過冷却液体または半結晶固体を、結晶性のより安定な固体状態に変換する工程をさらに包含する。生じた粒子は、動的光散乱法(例えば、光相関分光法(photocorrelation spectroscopy)、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光オブスキュレーション法(light obscuration methods)(例えば、コールター法)、レオロジーまたは顕微鏡法(光学顕微鏡または電子顕微鏡)により測定した場合、上記の範囲内の平均有効粒径を有する。
【0057】
エネルギー供給工程は、超音波処理、ホモジェナイズ、向流フローホモジェナイズ(例えば、BEE Incorporated、NCから入手可能であるMini DeBEE 2000ホモジェナイザー、その中で、液体の噴出物は、第一経路に沿って配向し、構造は、第一経路内に挿入され、液体を新しい経路に沿った制御された流動経路内に再配向し、液体の乳化または混合を生じる)、ミクロ流動化、または衝撃力(impact force)、剪断力または空洞化力(cavitation force)を提供する他の方法を介してエネルギーを供給する工程を包含する。この段階の間、このサンプルを冷却または加熱し得る。本発明の好ましい一形態の内で、アニーリング工程は、ホモジェナイズにより達成する。本発明の別の好ましい実施形態において、アニーリングを、超音波処理により達成し得る。本発明のなお別の好ましい形態において、アニーリングを、米国特許第5,720,551号に記載される乳化装置の使用によって達成し得、この米国特許は、本明細書中で参考として援用され、本明細書の一部をなす。
【0058】
アニーリングの速度に依存して、加工したサンプルの温度を約−30℃〜100℃の範囲内に調整することが望ましくあり得る。あるいはまた、加工した固体の所望の相転移を達成するために、プレ懸濁液の温度を、アニーリング工程の間、約−30℃〜約100℃の範囲内の温度に調整することが必要であり得る。
【0059】
(方法B)
方法Bは、以下の点で方法Aとは異なる。第一の違いは、界面活性剤または界面活性剤の組合せを第一の溶液に添加することである。この界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または上記の生物由来の界面活性剤から選択され得る。
【0060】
本発明に記載されるプロセスの適用から生じる薬物懸濁液を、注射用溶液として直接投与し得、注射用蒸留水を処方物中に使用する場合、溶液滅菌のための適切な手段が適用される。滅菌は、混合し、プレ懸濁液を形成する前の、薬物濃縮物(薬物、溶媒および必要に応じて界面活性剤)および希釈媒体(水、および必要に応じて緩衝液および界面活性剤)の別々の滅菌により達成され得る。滅菌方法は、最初に3.0ミクロンのフィルターを通してプレろ過し、その後0.45ミクロンの粒子フィルターを通してろ過し、その後、蒸気滅菌もしくは加熱滅菌またはさらに2個の重ねた0.2ミクロンの膜フィルターを通した滅菌ろ過をする工程を含む。
【0061】
必要に応じて、溶媒を含まない懸濁液を、沈殿の後の溶媒除去により作製し得る。これは、遠心分離、透析、ダイアフィルトレーション、フォースフィールド分画(force−field fractionation)、高圧ろ過または当該分野で周知の他の分離技術により達成し得る。N−メチル−2−ピロリジノンの完全な除去を、1回〜3回の連続した遠心分離の実施(各遠心分離の後、上清をデカントし、廃棄した)により代表的に実施した。有機溶媒を含まない新鮮な体積の懸濁液ビヒクルを、残存する固体に添加し、その混合物をホモジェナイズにより分散させた。この再形成工程に、他の高剪断混合技術が適用され得ることが当業者に理解され得る。
【0062】
さらに、いかなる望ましくない賦形剤(例えば、界面活性剤)も、上の段落に記載された分離方法を使用することにより、より望ましい賦形剤により置換し得る。この溶媒および第一の賦形剤を、遠心分離およびろ過の後に、上清と一緒に廃棄し得る。次いで、溶媒を含まず、第一の賦形剤を含まない新鮮な体積の懸濁液ビヒクルを添加し得る。あるいは、新しい界面活性剤を添加し得る。例えば、薬物、N−メチル−2−ピロリジノン(溶媒)、Poloxamer 188(第一の賦形剤)、デオキシコール酸ナトリウム、グリセロールおよび水からなる懸濁液を、遠心分離し、上清を除去した後、リン脂質(新しい界面活性剤)、グリセロールおよび水で置換し得る。
【0063】
(I.第一プロセスカテゴリー)
第一プロセスカテゴリーの方法は、概して、水混和性の第一の溶媒中に抗菌剤を溶解し、その後、この溶液を水性溶液と混合し、プレ懸濁液を形成する工程を包含し、ここで、この抗菌剤は、X線回折研究、DSC、光学顕微鏡または他の分析技術により決定した場合、アモルファス形態、半結晶形態または過冷却した液体形態であり、そして、上記の有効粒径の範囲の一つの範囲の平均有効粒径を有する。混合工程の後、エネルギー供給工程を行い、そして、本発明の好ましい形態においては、アニーリング工程を行なう。
【0064】
(II.第二プロセスカテゴリー)
第二プロセスカテゴリーの方法は、第一プロセスカテゴリーの工程と本質的に同じ工程を包含するが、以下の点で異なる。X線回折、DSCまたは他の適したプレ懸濁液の分析技術が、結晶形態中の抗菌剤を示し、平均有効粒径を有することを示す。エネルギー供給工程後の抗菌剤は、エネルギー供給工程の前と本質的に同じ平均有効粒径を有するが、プレ懸濁液の粒子と比較した場合、より大きい粒子に凝集する傾向は小さい。理論に束縛されなければ、粒子の安定性の差異は、固体液体界面での界面活性剤分子の再構成に起因し得ると考えられる。
【0065】
(III.第三プロセスカテゴリー)
第三のカテゴリーの方法は、プレ懸濁液中の抗菌剤が、平均有効粒径を有するもろい形態(例えば、細い針および薄いプレート)中に存在することを確実にするために、第一および第二のプロセスカテゴリーの最初の二つの工程を改変する。もろい粒子は、適切な溶媒、界面活性剤または界面活性剤の組合せ、個々の溶液の温度、混合速度および沈殿の速度などを選択することにより形成され得る。破砕性はまた、第一の溶液の水性溶液との混合工程の間に格子欠陥を導入すること(例えば、平面の分割)により増強され得る。このことは、例えば、沈殿工程に行なわれる迅速な結晶化により生じ得る。エネルギー供給工程において、これらのもろい結晶を、動力学的に安定で、かつプレ懸濁液の平均有効粒径より小さい平均有効粒径を有する結晶に変換する。動力学的に安定した粒子は、動力学的に安定していない粒子と比較した場合、凝集する傾向が小さくなっている。このような例において、エネルギー供給工程は、もろい粒子の崩壊を生じる。プレ懸濁液の粒子をもろい状態であることを確実にすることによって、有機化合物を加工する工程(ここで、この工程は、有機化合物をもろい形態にさせるためにとられる工程ではない)と比較して、有機化合物をより容易に、より迅速に、所望の大きさの範囲内の粒子に調製し得る。
【0066】
上記ミクロ沈殿方法に加えて、サブミクロンの大きさの粒子またはナノ粒子を調製するための任意の他の当該分野で公知の沈殿方法が、本発明と組み合わせて用いられ得る。以下に他の沈殿方法の例を記載する。この例は、例示の目的のためであり、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0067】
(エマルジョン沈殿法)
一つの適切なエマルジョン沈殿技術が、同時係属し、共有にかかる米国特許出願番号09/964,273に開示され、この特許は、本明細書中に参考として援用され、本明細書の一部をなす。このアプローチにおいて、このプロセスは、以下の工程を包含する:(1)有機相および水相を有する多相系を、薬学的に有効な化合物をその中に有する有機相に提供する工程;ならびに(2)この系を超音波処理して有機相の一部をエバポレートし、水相中の化合物の沈殿を生じさせ、その化合物が、約2μm未満の平均有効粒径を有する、工程。多相系を提供する工程は、以下の工程を包含する:(1)水不混和性溶媒を薬学的に有効な化合物と混合し、有機溶液を規定する工程、(2)一種以上の界面活性化合物を有する水性ベースの溶液を調製する工程、および(3)多相系を形成するために、有機溶液を水性溶液と混合する工程。有機相および水相を混合する工程は、ピストンギャップホモジェナイザー(piston gap homogenizer)、コロイダルミル、高速攪拌装置、押し出し装置、手動攪拌装置もしくは手動振盪装置、ミクロフリューダイザー(microfluidizer)、または高剪断条件を提供するための他の装置または技術の使用を包含し得る。この粗製エマルジョンは、約1μm未満の大きさの直径の油滴を、水中に有する。この粗製エマルジョンを、マイクロエマルジョンを規定するために超音波処理し、最終的には、サブミクロンの大きさの粒子懸濁液を規定する。
【0068】
サブミクロンの大きさの粒子を調製するための別のアプローチは、同時係属する共有にかかる米国特許出願番号10/183,035に開示され、これは、本明細書中に参考として援用され、本明細書の一部をなす。このプロセスは、以下の工程を包含する:(1)有機相および水相を有する多相系の粗製分散物を提供する工程であって、その有機相が、その中に薬学的化合物を有する、工程;(2)粗製分散物にエネルギーを供給し、微細分散物を形成する工程;(3)微細分散物を凍結する工程;および(4)微細分散物を凍結乾燥して、薬学的化合物のサブミクロンの大きさの粒子を得る工程。多相系を提供する工程は、以下の工程を包含する:(1)水不混和性溶媒を薬学的に有効な化合物と混合し、有機溶液を規定する工程;(2)一種以上の界面活性化合物を有する水性ベースの溶液を調製する工程;および(3)有機溶液を水性溶液と混合して多相系を形成する工程。有機相と水相とを混合する工程は、ピストンギャップホモジェナイザー、コロイダルミル、高速攪拌装置、押し出し装置、手動攪拌装置もしくは手動振盪装置、ミクロフリューダイザー、または高剪断条件を提供するための他の装置または技術の使用を包含し得る。
【0069】
(溶媒逆溶媒沈殿)
適切な溶媒逆溶媒沈殿技術は、米国特許第5,118,528号および同第5,100,591号に開示され、これらは、本明細書中に参考として援用され、本明細書の一部をなす。このプロセスは、以下の工程を包含する:(1)一種以上の界面活性剤が添加され得る溶媒または溶媒の混合物中に、生物学的に活性な物質の液相を調製する工程;(2)非溶媒または非溶媒の混合物の第二の液相を調製する工程であって、その非溶媒がその物質に関して溶媒または溶媒の混合物と混和性である、工程;(3)(1)の溶液および(2)の溶液を攪拌しながら一緒に添加する工程;ならびに(4)望ましくない溶媒を除去し、ナノ粒子のコロイド状の懸濁液を生成する工程。’528特許は、エネルギーを供給せずに、500nmより小さい、物質の粒子を生成することを開示する。
【0070】
(転相沈殿)
一つの適した転相沈殿が、米国特許第6,235,224号、同第6,143,211号および米国特許出願番号2001/0042932に開示され、これらは、本明細書中に参考として援用され、本明細書の一部をなす。転相は、ポリマーが連続相に溶解して、溶媒系が、ポリマーが連続相である固体高分子ネットワークになる物理的現象を記載するのに用いられる用語である。転相を誘導する一つの方法は、非溶媒を連続相に添加することによる。ポリマーは、単一の相から不安定な二相の混合物(ポリマーの多い画分とポリマーの少ない画分)へ転移される。ポリマーの多い相中の非溶媒のミセル液滴は、核形成部位の役目をし、ポリマーで被覆される。’224特許は、特定の条件下でのポリマー溶液の相転移が、自然に生じる個々のミクロ粒子(ナノ粒子を含む)の形成を引き起こし得ることを開示する。’224特許は、ポリマーの溶媒中への溶解および分散を開示する。医薬品もまた溶媒中に溶解および分散させる。このプロセスにおける結晶を生じる工程では、薬剤が溶媒に溶解することが望ましい。ポリマー、薬剤および溶媒は一緒になって連続相を有する混合物を形成し、その溶媒が連続相である。次いで、この混合物を少なくとも10倍過剰量の混和性の非溶媒中に導入し、10nmと10μmとの間の平均粒径を有するマイクロカプセル化された薬剤のミクロ粒子の自然な形成を引き起こす。粒径は、溶媒:非溶媒の体積比、ポリマー濃度、ポリマー−溶媒溶液の粘度、ポリマーの分子量、および溶媒−非溶媒対の特性に影響される。このプロセスは、例えば、エマルジョンを形成することによって、溶媒のミクロ液滴を作製する工程を必要としない。このプロセスはまた、攪拌力および/または剪断力を必要としない。
【0071】
(pHシフト沈殿)
pHシフト沈殿技術は代表的に、薬物が溶解性であるpHを有する溶液にその薬物を溶解し、その後、そのpHを、その薬物が溶解性ではないpHまで変化させる工程を包含する。そのpHは、特定の薬学的化合物に依存して酸性または塩基性であり得る。次いで、この溶液を中性化し、薬学的に活性な化合物のサブミクロンの大きさの粒子のプレ懸濁液を形成する。一つの適したpHシフト沈殿プロセスは、米国特許第5,665,331号に開示され、これは、本明細書中に参考として援用され、本明細書の一部をなす。このプロセスは、医薬品をアルカリ溶液中の結晶成長調整剤(CGM)と一緒に溶解する工程、次いで、この溶液を、表面改質界面活性剤または医薬品の微細な粒子分散液を形成するための薬剤の存在下で、酸で中和させる工程を包含する。沈殿工程の後、分散液のダイアフィルトレーションクリーンナップ工程を行い、次いで、分散液の濃度を所望のレベルに調節する。このプロセスは、報告によると、光子相関分光法により測定した場合、400nmより小さいZ平均直径の微結晶性粒子を生じる。
【0072】
pHシフト沈殿法の他の例は、米国特許第5,716,642号;同第5,662,883号;同第5,560,932号および同第4,608,278号に開示され、これらは、本明細書中に参考として援用され、本明細書の一部をなす。
【0073】
(注入沈殿法)
適切な注入沈殿技術は、米国特許第4,997,454号および同第4,826,689号に開示されており、これらの開示は、本明細書中で参考として援用され、本明細書の一部をなす。第一に、適切な固体化合物を、適切な有機溶媒に溶解して、溶媒混合物を形成する。次いで、有機溶媒と混和性の沈殿非溶媒を、約−10℃と約100℃の間の温度で、かつ50mlの容量あたり約0.01ml/分〜約1000ml/分の注入速度で、上記溶媒混合物に注入して、実質的に均一な10μm未満の平均直径を有する化合物の、沈殿した非凝集固体粒子の懸濁液を生成する。上記沈殿非溶媒と注入溶液の攪拌(agitation)(例えば、攪拌(stirring)による)が、好ましい。上記非溶媒は、上記粒子を攪拌に対して安定化するための界面活性剤を含有し得る。次いで、上記粒子を、上記溶媒から分離する。上記固体化合物および所望される粒径に依存して、温度パラメーター、溶媒に対する非溶媒の比、注入速度、攪拌速度および容量は、本発明に従って変更され得る。粒径は、非溶媒容量:溶媒容量の比および注入温度に比例し、そして注入速度および攪拌速度に反比例する。上記沈殿非溶媒は、化合物の相対溶解度および所望される懸濁用ビヒクルに依存して、水性であっても非水性であってもよい。
【0074】
(温度シフト沈殿)
温度シフト沈殿技術はまた、熱融解技術として公知であり、Dombに対する米国特許第5,188,837号に開示されており、この開示は、本明細書中で参考として援用され、本明細書の一部をなす。本発明の一つの実施形態において、リポスフェア(liposphere)が、以下の工程により調製される:(1)融解ビヒクル中に送達されるべき物質(例えば、薬物)を融解または溶解して、その送達されるべき物質の液体を形成する工程;(2)上記融解された物質またはビヒクルに、その物質またはビヒクルの融解温度よりも高い温度で、水性媒体とともにリン脂質を添加する工程;(3)均一で微細な沈殿を得るまで、上記ビヒクルの融解温度より上の温度で、上記懸濁液を混合する工程;および(4)次いで、室温以下まで、その沈殿をすばやく冷却する工程。
【0075】
(溶媒エバポレーション沈殿)
溶媒エバポレーション沈殿技術は、米国特許第4,973,465号に開示されており、これらの開示は、本明細書中で参考として援用され、本明細書の一部をなす。’465特許は、微結晶を調製するための方法を開示し、この方法は、以下の工程を包含する:(1)共通の有機溶媒または溶媒の組み合わせ中に溶解された、薬学的組成物およびリン脂質の溶液を提供する工程、(2)その溶媒をエバポレートする工程および(3)その溶媒のエバポレーションによって得られたフィルムを、激しく攪拌することによって水溶液中に懸濁する工程。上記溶媒は、その溶液にエネルギーを負荷して、上記化合物の沈殿を引き起こすために充分な量のその溶媒をエバポレートすることによって、除去され得る。上記溶媒はまた、他の周知技術(例えば、その溶液に真空を適用する工程またはその溶液中に窒素を吹き込む工程)によって、除去され得る。
【0076】
(反応沈殿)
反応沈殿は、適切な溶媒に上記薬学的化合物を溶解して、溶液を形成する工程を包含する。上記化合物は、上記溶媒中でのその化合物の飽和点またはそれより下の量で添加されるべきである。上記化合物は、化学的物質との反応によるか、またはエネルギー(例えば、熱またはUV光線など)の負荷に応答した改変によって、その改変された化合物が、上記溶媒中でより小さい溶解度を有し、そして上記溶液から沈殿するように改変される。
【0077】
(圧縮流体沈殿)
圧縮流体による沈殿のための適切な技術は、Johnstonに対するWO 97/14407に開示されており、これらの開示は、本明細書中で参考として援用され、本明細書の一部をなす。上記方法は、非水溶性薬物を溶媒中に溶解して、溶液を形成する工程を包含する。ついで、その溶液は、圧縮流体中に噴霧され、この圧縮流体は、気体、液体または超臨界流体であり得る。上記圧縮流体の溶液(溶媒中の溶質)への添加は、その溶質が、超飽和状態を達成するかまたはそれに近づき、そして微細な粒子として沈殿して現れることを引き起こす。この場合、上記圧縮流体は、上記薬物を溶解する溶媒の粘着エネルギー密度を低下する抗溶媒として作用する。
【0078】
あるいは、上記薬物は、圧縮流体中に溶解され得、次いで、水相中に噴霧される。上記圧縮流体の迅速な広がりは、上記流体の溶媒力を減少し、次いで、上記溶質が、水相中で微細な粒子として沈殿して現れることを引き起こす。この場合、上記圧縮流体は、溶媒として作用する。
【0079】
(粒子を調製するための他の方法)
本発明の粒子はまた、活性剤の機械的粉砕(grinding)によって調製され得る。機械的粉砕としては、ジェット粉砕、パール粉砕、ボール粉砕、ハンマー粉砕、流体エネルギー粉砕または湿式粉砕技術(例えば、米国特許第5,145,684号に開示されている湿式粉砕技術)のような技術が挙げられ、これらの開示は、本明細書中で参考として援用され、本明細書の一部をなす。
【0080】
本発明の粒子を調製するための別の方法は、活性剤を懸濁する工程による。この方法において、上記活性剤の粒子は、上記粒子を水性媒体中に直接添加してプレ懸濁液を生じることによって、水性媒体中に分散される。上記粒子は、通常、表面改変剤によりコーティングされて、この粒子の凝集を阻害する。一つ以上の他の賦形剤が、上記活性剤または上記水性媒体のいずれかに添加され得る。
【実施例】
【0081】
(実施例1:デオキシコール酸コーティングを有する1%イトラコナゾール懸濁液の調製)
各々の100mLの懸濁液は、以下を含む:
イトラコナゾール 1.0g(1.0%w/v)
デオキシコール酸ナトリウム塩一水和物 0.1g(0.1%w/v)
Poloxamer 188、NF 0.1g(0.1%w/v)
グリセリン、USP 2.2g(2.2%w/v)
水酸化ナトリウム、NF(0.1Nまたは1.0N) pH調整のため
塩酸、NF(0.1Nまたは1.0N) pH調整のため
滅菌注射用水、USP 適量
標的pH(範囲) 8.0(6〜9)
(微量沈殿のための界面活性剤溶液(2L)の調製)
適切に洗浄したタンクに、滅菌注射用水を充填し、そして攪拌する。必要な量のグリセリンを添加し、そして溶解するまで攪拌する。必要な量のデオキシコール酸ナトリウム塩一水和物を添加し、そして溶解するまで攪拌する。必要な場合は、最小量の水酸化ナトリウムおよび/または塩酸によって上記界面活性剤溶液のpHを調整し、8.0のpHにする。上記界面活性剤溶液を、0.2μmフィルターを通して濾過する。上記界面活性剤溶液を、ホモジナイザーを提供する管に量を測定して移す。上記界面活性剤溶液を混合しながらホッパー中で冷却する。
【0082】
(置換溶液の調製)
4リットルの置換溶液の調製。適切に洗浄したタンクにWFIを充填し、そして攪拌する。秤量したPoloxamer 188(Spectrum Chemical)を、測定した容量の水に添加する。上記Poloxamer 188/水混合物の混合を開始し、Poloxamer 188を完全に溶解させる。必要な量のグリセリンを添加し、そして溶解するまで攪拌する。一旦、上記グリセリンが完全に溶解したら、必要な量のデオキシコール酸ナトリウム塩一水和物を添加し、そして溶解するまで攪拌する。必要な場合は、最小量の水酸化ナトリウムおよび/または塩酸によって上記洗浄溶液のpHを調整し、8.0のpHにする。上記置換溶液を、0.2μmメンブレンフィルターを通して濾過する。
【0083】
(薬物濃縮液の調製)
2Lのバッチに対して、250mLビーカー中に120.0mLのN−メチル−2−ピロリジノンを添加する。2.0gのPoloxamer 188を秤量する。20.0gのイトラコナゾール(Wyckoff)を秤量する。上記秤量したPoloxamer 188を、上記N−メチル−2−ピロリジノンを含む250mLビーカーに移す。溶解するまで攪拌し、次いで、上記イトラコナゾールを添加する。溶解するまで、加熱および攪拌する。上記薬物濃縮液を室温まで冷却して、0.2μmフィルターを通して濾過する。
【0084】
(微量沈殿)
充分なWFIを、既にホモジナイザーを提供する管中にある上記界面活性剤溶液に、所望される目的濃度に達するように添加する。上記界面活性剤溶液が冷めたら、混合を続けながら上記薬物濃縮液のその界面活性剤溶液への添加を開始する。
【0085】
(ホモジナイゼーション)
作動圧力が10,000psiに達するまで、ホモジナイザーの圧力をゆっくりと上昇させる。混合の間、上記懸濁液を、再循環しながらホモジナイズする。50Hzでの2,000mLの懸濁液について、1パスに約54秒を必要とするべきである。ホモジナイゼーションに続いて、粒径の分析のために、20mLのサンプルを収集する。上記懸濁液を冷却する。
【0086】
(洗浄置換)
次いで、上記懸濁液を分割し、そして500mLの遠心管中に充填する。沈殿物のきれいな分離が観察されるまで、遠心する。上清の容量を測定し、そして先に調製した新しい置換溶液で置換する。再懸濁(プールしたサンプル)のために、各遠心管から、適切に洗浄し、かつ標識した容器へと、上記沈殿物を、量を測定して移す。目に見える凝集物が観察されなくなるまで、上記プールしたサンプルの再懸濁を、高剪断力混合機により実施する。粒径の分析のために、20mLのサンプルを収集する。
【0087】
次いで、上記懸濁液を分割し、そして500mLの遠心管中に充填する。沈殿物のきれいな分離が観察されるまで、遠心する。上清の容量を測定し、そして先に調製した新しい置換溶液で置換する。再懸濁(プールしたサンプル)のために、各遠心管から、充分に洗浄し、かつ標識した容器へと、上記沈殿物を、量を測定して移す。目に見える凝集が観察されなくなるまで、上記プールしたサンプルの再懸濁を、高剪断力混合機により実施する。粒径の分析のために、20mLのサンプルを収集する。
【0088】
(第二のホモジナイゼーション)
上記懸濁液を、ホモジナイザーのホッパーへと移し、そしてその懸濁液を混合しながら冷却する。作動圧力が10,000psiに達するまで、ホモジナイザーの圧力をゆっくりと上昇させる。上記溶液の温度をモニターしながら、ホモジナイズする。ホモジナイゼーションに続いて、上記懸濁液を冷却し、そして粒子の分析のために、3つの30mLのサンプルを収集する。残りの懸濁液を、2リットルのボトルに収集する。
【0089】
(充填)
受容可能な粒径決定試験(50nm〜5μmの平均の容量秤量直径)に基づいて、50mLのゴム栓付きガラスバイアル中に30mLのサンプルを収集した。
【0090】
(実施例2:リン脂質コーティングを有する1%イトラコナゾールナノ懸濁液の調製)
各々の100mLの懸濁液は、以下を含む:
イトラコナゾール 1.0g(1.0%w/v)
リン脂質(Lipoid E 80) 1.2g(1.2%w/v)
グリセリン、USP 2.2g(2.2%w/v)
水酸化ナトリウム、NF(0.1Nまたは1.0N) pH調整のため
塩酸、NF(0.1Nまたは1.0N) pH調整のため
滅菌注射用水、USP 適量
標的pH(範囲) 8.0(7.5〜8.5)
(微量沈殿のための界面活性剤溶液(2L)の調製)
上記界面活性剤溶液を、2相で調製した。第一相は、分散リン脂質であり、一方、第二相は、濾過グリセリンを含む。上記2つのフラクションを、pH調整の前に合わせる。
【0091】
(第一相)
適切に洗浄した管に、50〜500rpmで攪拌しながら、約700mLの滅菌注射用水、USP(WFI)を充填する。50℃〜70℃に濾液の温度を上昇させ、そして完全な分散に達するまで、50〜500rpmで混合しながら、必要な量のリン脂質を添加する。上記リン脂質を添加した時間および温度、ならびにそのリン脂質が分散された時間および温度を記録する。上記リン脂質を分散させるために必要とされる総混合時間を決定する。グリセリンの添加前に、上記界面活性剤溶液を18℃〜30℃まで冷却する。
【0092】
(第二相)
適切に洗浄した管に、50〜500rpmで攪拌しながら、約700mLのWFIを充填する。18℃〜30℃で必要な量のグリセリンを添加し、そして溶解するまで、50〜500rpmで攪拌する。
【0093】
(合わせた相)
上記グリセリン溶液を、50〜500rpmで混合しながら、0.2μmフィルターセットアップを通して第一相へと濾過する(18℃〜30℃で)。容量は、約1.4リットルである。上記界面活性剤溶液のpHを記録する。必要な場合は、最小量の水酸化ナトリウムおよび/または塩酸によって上記界面活性剤溶液のpHを調整し、8.0±0.5のpHにする。上記界面活性剤溶液の容量を、18℃〜30℃で、2Lメスシリンダーを用いて測定する。
【0094】
上記界面活性剤溶液を、上記ホモジナイザーを提供する管(Avestin C−160)へと量を測定して移す。上記界面活性剤溶液を、溶液ボルテックスを観察可能な速度で、温度が10℃以下になるまで、混合しながらホッパー中で冷却する。
【0095】
(置換溶液の調製(4L))
置換溶液を、2相で調製する。第一相は、分散リン脂質を含み、一方、第二相は、濾過グリセリンを含む。上記2つのフラクションを、pH調整の前に合わせる。
【0096】
(第一相)
適切に洗浄した管に、50〜500rpmで攪拌しながら、約1.4リットルのWFIを充填する。上記水の温度を50℃〜70℃まで上昇させ、そして完全な分散に達するまで、50〜500rpmで混合しながら、必要な量のリン脂質を添加する。グリセリンの添加前に、上記界面活性剤溶液を18℃〜30℃まで冷却する。
【0097】
(第二相)
適切に洗浄した管に、50〜500rpmで攪拌しながら、約1.4リットルのWFIを充填する。必要な量のグリセリンを添加し、そして溶解するまで、50〜500rpmで攪拌する。
【0098】
(合わせた相)
上記グリセリン溶液を、50〜500rpmで混合しながら、0.2μmフィルターセットアップを通して第一相へと濾過する(18℃〜30℃で)。メスシリンダーを用いて、注射用水で4.0Lの容量まで希釈する。上記洗浄溶液のpHを記録する。必要な場合は、最小量の水酸化ナトリウムおよび/または塩酸によって上記界面活性剤溶液のpHを調整し、8.0±0.5のpHにする。
【0099】
(薬物濃縮液の調製)
2Lのバッチに対して、250mLビーカー中に120.0mLのN−メチル−2−ピロリジノン(Pharmasolve(登録商標)、ISP)を添加する。20.0gのイトラコナゾール(Wyckoff)を秤量する。上記秤量したイトラコナゾールを、NMT 70℃で、NMPを含む250mLビーカーに移す。70℃より下に維持し、そして溶解するまで、100rpm〜1000rpmで攪拌する。上記薬物濃縮液を、18℃〜30℃まで冷却する。上記薬物濃縮液を、プレフィルターおよびフィルターセットアップを通して濾過する。15psiおよび周囲温度で、一つのポリプロピレンプレフィルターSBPPおよび2つの0.2μmフィルターを使用する。上記薬物濃縮液を、3つの60mL注射器に移し、そしてその注射器のルーアー連結部に注射針を取り付ける。上記注射器を用いて、薬物濃縮液の容量を決定する。
【0100】
(微量沈殿)
注射用水を、既にホモジナイザーを提供する管中にある界面活性剤溶液に添加する。添加される18℃〜30℃での水の量は、以下のように計算するべきである:
V=2,000mL−薬物濃縮液の容量−界面活性剤溶液の容量
注射器ポンプを用いて、各注射針アセンブリを設置する。上記針の出口を、上記管の上部に配置する。上記界面活性剤溶液が10℃以下になれば、顕著な溶液ボルテックスを生じるために必要な速度で、連続的に混合しながら上記薬物濃縮液の上記界面活性剤溶液への添加を開始する。上記濃縮液を、ボルテックスの底において滴が最も大きな剪断力の点を打つように添加するべきである。添加速度は、約2.5mL/分であるべきである。
【0101】
(ホモジナイゼーション)
Avestin C160ホモジナイザーを使用した。作動圧力が10,000psiに達するまで、ホモジナイザーの圧力をゆっくりと上昇させる。100〜300rpmで混合し、そして懸濁液温度を70℃より下に維持しながら、20パス(18分)の間、再循環しながら上記懸濁液をホモジナイズする。50Hzでの2,000mLの懸濁液について、1パスには約54秒を必要とする。ホモジナイゼーションに続いて、粒径の分析のために、50mLのガラスバイアル中に20mLのサンプルを収集する。上記懸濁液を、10℃以下に冷却する。
【0102】
(洗浄置換)
次いで、上記懸濁液を分割し、そして500mLの遠心管中に充填する。遠心のためのスピードを、ローターSLA−3000、Superliteを用いて、約20,434gに相当する11,000rpmに設定する。遠心時間の合計は、10℃以下で60分間である。上清の容量を測定し、そして新しい置換溶液で置換する。スパチュラを用いて、再懸濁のために、上記沈殿物を各遠心管から、適切に洗浄してそして標識した容器へと、量を測定して移す(プールされたサンプル)。目に見える凝集が観察されなくなるまで、上記プールしたサンプルの再懸濁を、高剪断力混合機により実施する。
【0103】
(第二の洗浄および遠心工程)
次いで、上記懸濁液を分割し、そして500mLの遠心管に充填する。遠心のためのスピードを、ローターSLA−3000、Superliteを用いて、約20,434gに相当する11,000rpmに設定する。遠心時間の合計は、10℃以下で60分間である。上清の容量を測定し、そして新しい置換溶液で置換する。スパチュラを用いて、再懸濁のために、上記沈殿物を各遠心管から、適切に洗浄してそして標識した容器へと、量を測定して移す(プールされたサンプル)。目に見える凝集が観察されなくなるまで、上記プールしたサンプルの再懸濁を、高剪断力混合機により実施する。上記懸濁液のpHを記録する。必要な場合は、最小量の水酸化ナトリウムおよび/または塩酸によって上記懸濁液のpHを調整し、8.0±0.5のpHにする。
【0104】
(第二のホモジナイゼーション)
上記懸濁液を、ホモジナイザーのホッパーへと移す。上記懸濁液を、温度が10℃未満になるまで、混合しながら冷却する。作動圧力が10,000psiに達するまで、圧力をゆっくりと上昇させる。上記溶液温度を70℃より下に維持しながら、20パス(18分)の間ホモジナイズする。ホモジナイゼーションに続いて、上記懸濁液を10℃以下まで冷却し、そして粒径の分析のために、3つの30mLのサンプルを収集する。残りの懸濁液を、2リットルのボトルに収集する。上記懸濁液に、窒素ガスを10分間噴霧する。上記窒素ガスは、確実に、0.2μmフィルターを通して濾過する。
【0105】
(充填)
受容可能な粒径の決定試験(50nm〜100nmの平均の容量秤量直径)に基づいて、PTFE(登録商標)コーティング栓を有する50mLのガラスバイアル中に30mLのサンプルを収集した。各バイアルの上部空きを、密封前に窒素でパージした。
【0106】
(実施例3:イトラコナゾール懸濁剤の他の処方物)
異なる組み合わせの界面活性剤を備えるイトラコナゾール懸濁剤の他の処方物をも、実施例1または実施例2に記載された方法を用いて調製し得る。表1は、種々のイトラコナゾール懸濁剤の界面活性剤の組成物をまとめる。
【0107】
(表1:種々の1%イトラコナゾール懸濁剤の組成物の要旨)
【0108】
【表1】

【0109】
(実施例4:市販のイトラコナゾール処方物(SPORANOX(登録商標))と本発明の懸濁剤組成物との間の急性毒性の比較)
市販のイトラコナゾール処方物(SPORANOX(登録商標))の急性毒性を、表1に列挙する本発明の種々の1%イトラコナゾール処方物と比較する。SPORANOX(登録商標)は、Janssen Pharmaceutical Products,L.P.から入手可能である。それは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンにより可溶化された1%静脈内用(I.V.)液剤として入手可能である。結果を、各処方物に対して示す最大許容用量(MTD)とともに、表2に示す。
【0110】
(表2:イトラコナゾールの種々の処方物の急性毒性の比較)
【0111】
【表2】

【0112】
LD10=10%死亡率をもたらす致死量
LD40=40%死亡率をもたらす致死量
LD50=50%死亡率をもたらす致死量
NOEL=効果レベルではない
MTD=最大許容用量
表2のデータは、ナノ懸濁剤中に処方した場合、シクロデキストリンを用いて液剤として処方した場合よりも、上記動物がはるかに高いレベルの抗真菌剤イトラコナゾールを許容したことを示した。この上昇した寛容性に対する理由は、シクロデキストリンを使用しないことに関連することが考えられ得る。しかしながら、Sporanoxで使用されるレベルでは、シクロデキストリンそれ自体では、観察した毒性度をもたらさない。むしろ、その理由は、上記ナノ懸濁剤により引き起こされる薬理動力学的プロフィールの変化にあると考える。
【0113】
(実施例5:SPORANOX(登録商標)対イトラコナゾールの懸濁剤処方物の薬理動力学的比較)
若成体の雄性のSprague Dawleyラットを、SPORANOX(登録商標)注射、または20mg/kg、40mg/kgおよび80mg/kgでの処方物1およびB、あるいは80mg/kgでの処方物3、14、A6およびCのいずれかを用いて、1ml/分の速度での1回の注射で、後尾尾部静脈(caudal tail vein)を介して静脈内に(IV)処置した。
【0114】
投与に続いて、これらの動物を麻酔し、眼窩球後血を異なる時点(n=3)で回収した。時点は、以下のとおりであった:0.03時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、24時間、48時間、96時間、144時間、192時間、288時間、および360時間(SPORANOX(登録商標)注射は192時間までのみ)。血液を、EDTAとともに管に回収し、3200rpmで15分間遠心分離し、血漿を分離した。その血漿を、分析まで−70℃で凍結保存した。親イトラコナゾールおよび代謝物であるヒドロキシ−イトラコナゾールの濃度を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定した。イトラコナゾール(ITC)およびヒドロキシ−イトラコナゾール(OH−ITC)に対する薬理速度論的(PK)パラメーターを、WinNonlin(登録商標)Professional Version 3.1(Pharsight Corp.,Mountain View,CA)を用いた非分画的方法を用いて誘導した。
【0115】
表3は、各イトラコナゾール処方物に対して決定した血漿薬理速度論的パラメーターの比較を提供する。血漿イトラコナゾールを、5mg/kgでのSPORANOX(登録商標)注射に対しては24時間で、20mg/kgでのSPORANOX(登録商標)注射に対しては48時間で、処方物1および処方物Bに対しては96時間で、もはや検出しなかった。血漿ヒドロキシ−イトラコナゾールを、最初にSPORANOX(登録商標)注射ならびに処方物1および処方物Bに対しては、0.25時間で検出した。血漿ヒドロキシ−イトラコナゾールを、最初に、5mg/kgおよび20mg/kgでのSPORANOX(登録商標)注射ならびに20mg/kgでの処方物1および処方物Bに対しては、0.25時間で検出した。ヒドロキシ−イトラコナゾールを、5mg/kgでのSPORANOX(登録商標)注射に対しては48時間で、20mg/kgでのSPORANOX(登録商標)注射に対しては96時間で、処方物1およびBに対しては144時間で、もはや検出しなかった。
【0116】
【表3】

【0117】
図5は、SPORANOX(登録商標)の薬理速度論(PK)を、イトラコナゾール粒子の処方物1懸濁剤と比較する。上に示すように、本発明の懸濁剤処方物は、Sporanox(登録商標)よりも毒性でないので、それを、この等毒性実験(equitoxic experiment)では、より多量で投与した。Sporanoxを20mg/kgで、処方物1を80mg/kgで投与した。SPORANOX(登録商標)は、20時間にわたって、血漿濃度が比較的すばやく減少した。ナノ懸濁剤血漿レベルは、約3〜4倍長い期間、上昇したまま留まる。ナノ懸濁剤は、30分で血漿レベルの初期の最小値を示す。これは、脾臓および肝臓のマクロファージによる薬物ナノ結晶の隔離(sequestration)に起因する血漿濃度における最下点に対応し、従って、一時的に循環から薬物を取り除く。しかしながら、マクロファージは、見かけ上その薬物を循環に放出するので、薬物レベルは、すぐに回復する。さらに、ナノ懸濁剤薬物は、ヒドロキシイトラコナゾール代謝に対するPK曲線に示すように、有効に代謝される。ナノ懸濁剤に対する代謝物の出現速度は、SPORANOX(登録商標)処方物に対する代謝物についてのPK曲線と比較して、遅延する。しかしながら、ナノ懸濁剤に対する親分子の場合のように、代謝物は、SPORANOX(登録商標)処方物に対する代謝の場合よりもはるかに長い時間、循環の中で持続する。AUC(血液濃度下の面積対時間曲線)を用量で規格化する場合、ナノ懸濁剤は、少なくともSPORANOX(登録商標)ほどに生物利用可能である。
【0118】
(実施例6:迅速溶解性ナノ懸濁剤の急性毒性)
さらなる実験を実施した。イトラコナゾールナノ懸濁剤を、血液中により容易に溶解するように、別様に処方した。このことを、その粒子をより小さくするかもしくは非晶性にするか、またはその両方により達成した。これらの処方物のこれらの急性毒性を、表1の処方物エントリー14331−1および14443−1について記載する。緩徐に溶解するナノ懸濁剤とは対照的に、迅速に溶解するナノ懸濁剤は、上記動物において、SPORANOX(登録商標)で見出されたものと同様に、はるかに低いレベルで死をもたらした。これらの迅速に溶解するナノ懸濁剤は、シクロデキストリンを含んでいなかったので、この賦形剤は、毒性の原因をなしていないことは明りょうである。むしろ、迅速溶解は、血液における薬物の即座の生物利用可能性を生じ、これが原因となる因子であった。迅速に溶解する処方物(形態A)に対する薬物レベルは、インビトロ溶解実験において決定する場合、緩徐溶解(マクロファージ標的化)処方物(形態B)により達成されるレベルよりもはるかに高い。これは、5%アルブミン/セーレンセン緩衝液からなる血漿模擬媒体を含んだ。結果を図6に示す。
【0119】
(実施例7:抗真菌性効力研究)
1mlの生理食塩水あたり9.5×10cfuまたは3×10cfuのC.albicansで一度静脈内で接種した、正常なラットおよび免疫抑制した(接種前日および接種日にプレドニゾロンを1日2回投与した)ラットを、SPORANOX(登録商標)注射で、連続10日間、1日1回、静脈内処置し、最初の用量を接種後4〜5時間後に与えた。SPORANOX(登録商標)注射ラットを、5mg/kgまたは20mg/kgで最初の2日間投与し、次いで、2日間の投与後20mg/kgでの毒性に起因して、5mg/kgまたは10mg/kgで残りの8日間投与した。同様に、1mlの生理食塩水あたり1×106.5cfuのC.albicansとともにインキュベートした免疫抑制したラットを、処方物1または処方物Bで(各々、20mg/kg、40mg/kg、または80mg/kgで)、10日間、1日おきに1回、静脈内処置し、これを接種日に開始した。SPORANOX(登録商標)注射処置ラット、処方物1処置ラット、および処方物B処置ラットを、C.albicans接種の11日後に終止し、腎臓を回収し、重量測定し、そしてC.albicansコロニー総数ならびにイトラコナゾール濃度およびヒドロキシ−イトラコナゾール濃度の決定のために培養した。瀕死状態を観察した場合、または動物が20%体重を有する場合、腎臓を、未処置のコントロールラットから回収した。加えて、各研究の過程の間、周期的に体重を測定した。
【0120】
SPORANOX(登録商標)注射ならびに処方物1および処方物Bで処置した免疫抑制ラットに対する結果の比較を表4および図7に示す。10〜20mg/kgでの毎日のSPORANOX(登録商標)注射処置は、5mg/kgでの毎日のSPORANOX(登録商標)注射処置よりもわずかにより有効であるようであった。腎臓のコロニー総数に基づき、20mg/kgでの処方物1または処方物Bの1日おきの投与は、20mg/kgでの毎日のSPORANOX(登録商標)注射と同様に有効であるようであり、5mg/kgでの毎日のSPORANOX(登録商標)注射処置(すなわち、推奨される臨床用量)よりも、恐らくより有効であるようであるが、処方物1および処方物Bの両方に対するより多い用量が、腎臓のコロニー総数(すなわち、C.albicansを検出しなかった)および増加する腎臓イトラコナゾール濃度に基づき、最も有効であるようであった。
【0121】
【表4】

【0122】
上記実験では、抗真菌剤のナノ懸濁剤処方物が、同じ薬物の従来の全体として可溶性な処方物よりも毒性が低いことを示した。従って、より多くの薬物が、有害な影響を引き出すことなく、投与され得る。上記薬物のナノ粒子は、注入後即座には溶解しなかったので、それらは肝臓および脾臓において貯蔵場所に留め置かれた。これらは、長期放出の避難所(sanctuary)として作用し、より少ない頻度の投与を可能にする。投与され得るより多い投与は、より高い薬物レベルが、標的器官(この場合は、腎臓)において現れることを許容する(図8)。この器官におけるより多い薬物は、感染生物のより多い死滅を導いた(図9)。
【0123】
(実施例8:抵抗性株抗真菌性効力試験)
致死量のC.albicans株c43(ATCC番号201794)(SPORANOX(登録商標)イトラコナゾールに対してMIC80=16μg/ml;Vfendに対して8〜16、およびCancidasに対して0.1)を、免疫無防備状態ラットモデル(毎日のプレドニゾロン)に投与した。24時間後、試験群(n=6)を、20mg/kg、40mg/kgまたは80mg/kgのNANOEDGETMイトラコナゾールナノ懸濁剤で2時間毎に試験した。コントロール群は、処置アーム(Sporanox(登録商標)(10mg/kg/日)、Vfend(登録商標)(10mg/kg/日)、およびCancidas(登録商標)(1mg/kg/日))を含まなかった。処置を10日間継続した。生存数および腎臓cfu/gを評価した。
【0124】
6日後および10日後に生存した動物の数は、それぞれ、Sporanox(3、0)、20mg/kgおよび40mg/kgナノ懸濁剤(5、3)、80mg/kgナノ懸濁剤(6、4)、Vfend(0、0)、Cancidas(0、0)であった。図10。
【0125】
イトラコナゾールナノ懸濁剤を用いて可能なより多い投与は、従来はイトラコナゾールに抵抗性であると思われたC.albicans株の感染を有効に処置し得、免疫無防備状態ラットモデルにおける増加した生存をもたらすと結論できる。
【0126】
感受性真菌株および抵抗性真菌株の現在の定義は、従来の投薬形態を使用して投与したイトラコナゾールの特定の用量を想定する。ナノ懸濁剤注射に付随するより多い薬物負荷は、現在イトラコナゾール抵抗性C.albicans感染と考えられているものの処置を可能にし得る。
【0127】
(実施例9:他のトリアゾール抗真菌剤の予言的例)
本発明は、抗真菌剤がイトラコナゾール以外のトリアゾール抗真菌剤であることを除いて、実施例1または実施例2に記載した方法および実施例3に記載した処方物を使用した、サブミクロンサイズまたはミクロンサイズのトリアゾール抗真菌剤の1%懸濁剤の調製を企図する。使用し得るトリアゾール抗真菌剤の例は、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ラブコナゾール(ravuconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、サペルコナゾール、エベルコナゾール(eberconazole)、ゲナコナゾール(genaconazole)、クロトリマゾール、エコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール(terconazole)、チオコナゾール、およびポサコナゾール(posaconazole)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
(実施例10:非トリアゾール抗真菌剤の予言的例)
本発明は、抗真菌剤が、イトラコナゾールの代わりにアムホテリシンB、ナイスタチン、テルビナフィン、アニドゥラファンギン(anidulafungin)、またはフルシトシンであることを除いて、実施例1または実施例2に記載した方法および実施例3に記載した処方物を使用した、サブミクロンサイズまたはミクロンサイズの非トリアゾール抗真菌剤の1%懸濁剤の調製を企図する。
【0129】
上記から、多数のバリエーションおよび改変が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく実施され得ることが観察される。本明細書中に図示された特定の装置に関して、限定は意図されておらず、また限定がほのめかされるべきではないことが理解される。添付の特許請求の範囲により、その特許請求の範囲に入るすべてのそのような改変を包含することが、当然、意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、トリアゾール抗真菌剤の一般分子構造である。
【図2】図2は、イトラコナゾールの分子構造である。
【図3】図3は、上記懸濁液を調製するために、本発明で使用された微量沈殿プロセスの方法Aの説明図である。
【図4】図4は、上記懸濁液を調製するために、本発明で使用された微量沈殿プロセスの方法Bの説明図である。
【図5】図5は、本発明のイトラコナゾールの処方物1懸濁液でのSPORANOX(登録商標)の薬物反応速度を比較しているグラフであり、ここでITCは、処方物1(80mg/kg)のボーラス注入後に測定されたイトラコナゾールの血漿中の濃度であり、ITC−OHは、処方物1(80mg/kg)のボーラス注入後に測定された1次代謝物、ヒドロキシイトラコナゾールの血漿中の濃度であり、合計は、処方物1(80mg/kg)のボーラス注入後に測定されたイトラコナゾールおよびヒドロキシイトラコナゾール(ITC+ITC−OH)をあわせた濃度であり、Sporanox−ITCは、20mg/kgのSporanox IVのボーラス注入後に測定された血漿中のイトラコナゾール濃度であり、Sporanox−ITC−OHは、20mg/kgのSporanox IVのボーラス注入後に測定された血漿中の1次代謝物であるヒドロキシイトラコナゾール血漿中の濃度であり、Sporanox−合計は、20mg/kgのSporanox IVのボーラス注入後に測定されたイトラコナゾールおよびヒドロキシイトラコナゾールの合わせた濃度(ITC+ITC−OH)である。
【図6】図6は、処方物形態Aを早く溶解した薬物レベルと処方物形態Bをゆっくり溶解させた(マクロファージ標的化)薬物レベルとを比較するグラフであり、インビトロ溶解実験で決定された;形態Aからの薬物レベルは、形態Bによって得られてレベルより高い。
【図7】図7は、SPORANOX(登録商標)注射液および処方物14288−1および14228−Bにより処置し、免疫抑制ラットの経時的な体重の結果の比較を示すグラフである。
【図8】図8は、用量に対する腎臓薬物レベルのグラフであり、これは、投与され得る用量が大きくなると標的器官(この場合は腎臓)において、より多い薬物レベルが現われることを示す。
【図9】図9は、標的器官(腎臓)における、より大きな薬物レベルが感染性生物により多くの死を導くことを示す、腎臓薬物レベル(N=ナノ懸濁液;S=Sporanox IV溶液)に対する真菌の計数のグラフである。
【図10】図10は、イトラコナゾール耐性のCandida albicansで全身にわたって感染したラットにおける10日間にわたる、1日1回または2日に1回の抗真菌薬物を投与した後の死亡率、瀕死(moribundity)のプロフィールを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤に耐性であると通常では考えられる生物に対して、該薬剤が効力を有するようにした、抗菌剤の組成物であって、該組成物は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤、ならびにアミノ酸およびその誘導体からなる群より選択される、少なくとも1種の界面活性剤で覆われた該薬剤を含む、サブミクロンサイズ〜ミクロンサイズまでの粒子の、水性懸濁液を含有し、該粒子は、レーザー回折分析法により測定する場合、5μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する、組成物。
【請求項2】
前記粒子は、レーザー回折分析法により測定する場合、2μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子は、レーザー回折分析法により測定する場合、1μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粒子は、レーザー回折分析法による測定として、約150nm〜約1μmの容積重み付けられた平均粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗菌剤は、抗真菌剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗菌剤は、トリアゾール抗真菌性剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、前記トリアゾール抗真菌剤が、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ラブコナゾール(ravuconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、サペルコナゾール、エベルコナゾール(eberconazole)、ゲナコナゾール(genaconazole)、クロトリマゾール、エコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾールおよびポサコナゾールからなる群より選択される、組成物。
【請求項8】
前記抗菌剤はイトラコナゾールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、前記イオン性界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、前記陰イオン性界面活性剤は、スルホン酸アルキル、リン酸アルキル、ホスホン酸アルキル、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硫酸アルキル、アルギン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジン酸およびその塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸ならびに他の胆汁酸およびその塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項11】
前記胆汁酸は、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、およびグリコデオキシコール酸からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記陰イオン性界面活性剤はリン脂質である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記リン脂質は、天然または合成である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記リン脂質はPEG化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項8に記載の組成物であって、前記陽イオン性界面剤は、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチン塩酸塩、塩化アルキルピリジニウムまたは脂肪族アミンのような第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される、組成物。
【請求項16】
前記両イオン性界面活性剤はリン脂質である、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記前記リン脂質は、天然または合成である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記リン脂質はPEG化されている、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物であって、前記非イオン性界面活性剤は、グリセリルエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン脂肪族エステル(Myri)、ソルビタンエステル(Span)、モノステオリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポロキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、デンプンおよびデンプン誘導体(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES))を含む多糖類、ポリビニルアルコールならびにポリビニルピロリドンからなる群より選択される、組成物。
【請求項20】
前記生物由来の界面活性剤は、アルブミン、カゼイン、他のタンパク質および多糖類からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記多糖類は、デンプン、ヘパリンおよびキトサンからなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記アミノ酸は、ロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、チロシンおよびフェニルアラニンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記アミノ酸誘導体は、アミド、エステルまたはポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記界面活性剤は胆汁酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記胆汁酸塩は、デオキシコール酸塩である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記界面活性剤は、ポリアルコキシエーテルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリアルコキシエーテルは、Poloxamer 188である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記界面活性剤は、ヒドロキシエチルデンプンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記界面活性剤は、ポリエチレン−660−ヒドロキシステアリン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記界面活性剤はアルブミンである、請求項1の組成物。
【請求項31】
前記界面活性剤はリン脂質である、請求項1の組成物。
【請求項32】
前記水性懸濁液は、さらにpH調整剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
前記pH調整剤は、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、マグネシウム、水酸化ナトリウムおよびアミノ酸からなる群より選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記アミノ酸は、グリシン、アルギニン、リジン、アラニン、メチオニン、バリン、アスパラギン、チロシン、プロリン、セリン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニン、システイン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、タウリンおよびロイシンからなる群より選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
浸透圧調整剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
前記浸透圧調整剤は、グリセリン、単糖類、二糖類、三糖類および糖アルコールからなる群より選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記単糖はブドウ糖である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記二糖は、スクロース、マルトースおよびトレハロースからなる群より選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
前記三糖はラフィノースである、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
前記糖アルコールは、マンニトールまたはソルビトールである、請求項36に記載の組成物。
【請求項41】
前記抗菌剤は、約0.01%w/v〜約50%w/vの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項42】
前記抗菌剤は、約0.05%w/v〜約30%w/vの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項43】
前記抗菌剤は、約0.1%w/v〜約20%w/vの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項44】
前記界面活性剤は、約0.001%w/v〜約5%w/vの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項45】
前記界面活性剤は、約0.005%w/v〜約5%w/vの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
前記界面活性剤は、約0.01%w/v〜約5%w/vの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項47】
非経口経路、経口経路、口腔内膜経路、歯周経路、直腸経路、経鼻経路、肺経路、経皮経路および局所的経路からなる群より選択される経路によって投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項48】
静脈内投与、筋肉内投与、脳内投与、皮下投与、皮内投与、リンパ内投与、肺内投与、関節内投与、くも膜下腔内投与および腹腔内からなる群より選択される経路によって投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項49】
前記水性媒体は、乾燥粒子を形成するために除去される、請求項1に記載の組成物。
【請求項50】
前記水性媒体を除去する方法は、蒸発および凍結乾燥からなる群より選択される、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記水性媒体を除去する方法は凍結乾燥である、請求項49に記載の組成物。
【請求項52】
前記乾燥粒子は、受容可能な薬学的投薬形態に処方される、請求項49に記載の組成物。
【請求項53】
前記薬学的投薬形態は、非経口の溶液、錠剤、カプセル、懸濁物、クリーム、ローション、エマルジョン、肺用の処方物、局所用の処方物、制御放出処方物または徐放処方物、ならびに組織特異的な標的化送達処方物からなる群より選択される、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物は凍結されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項55】
薬剤に耐性であると通常では考えられる生物に対して、該薬剤が効力を有するようにした、抗菌剤の組成物であって、該組成物は、少なくとも1種の界面活性剤で覆われた、イトラコナゾールのサブミクロンサイズ〜ミクロンサイズまでの粒子の水性懸濁液および浸透圧調節剤を含有し、ここで、該ナノ粒子は、レーザー回折分析法により測定する場合、5μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有し、かつ該イトラコナゾールは、約0.01%w/v〜約50%w/vの量で存在し、そして該界面活性剤は、約0.001%〜約5%の量で存在する、組成物。
【請求項56】
薬剤に耐性であると通常では考えられる生物に対して、該薬剤が効力を有するようにした、抗菌剤の粒子の組成物であって、該組成物は以下の工程:
(i)該抗菌剤を水混合性の第一の溶媒中に溶解し、溶液を形成する工程;
(ii)該溶液を水溶性である第二の溶媒と混合し、プレ懸濁液を規定する工程;および
(iii)該プレ懸濁液にエネルギーを加え、5μm未満の平均有効粒径を有する粒子を形成する工程;
を包含する方法によって調製され、
ここで、該抗菌剤の溶解度は、該第一の溶媒において該第二の溶媒におけるより大きく、そして該第二の溶媒は、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤ならびにアミノ酸およびその誘導体からなる群より選択される1種以上の界面活性剤を含む、組成物。
【請求項57】
薬剤に耐性であると通常では考えられる生物に対して、該薬剤が効力を有するようにするための方法であって、該方法は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤ならびにアミノ酸およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤で覆われた薬剤を含む、サブミクロンサイズ〜ミクロンサイズまでの粒子の水性懸濁液として該薬剤を処方する工程を包含し、ここで、該粒子は、レーザー回折分析法により測定する場合、5μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する、方法。
【請求項58】
抗菌剤に耐性であると通常では考えられる生物に感染した被験体を処置する方法であって、該方法は、該被験体に該薬剤を投与する工程を包含し、ここで、該薬剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、生物由来の界面活性剤、ならびにアミノ酸およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の界面活性剤で覆われた薬剤を含む、サブミクロンサイズ〜ミクロンサイズまでの粒子の水性懸濁液として処方され、該粒子は、レーザー回折分析法により測定する場合、5μm未満の容積で重み付けられた平均粒径を有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−525345(P2006−525345A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513447(P2006−513447)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/013268
【国際公開番号】WO2004/096180
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】