説明

薬物送達脈管内ステントおよび再狭窄を処置するための方法

【課題】再狭窄、続く脈管損傷を抑制するための脈管内ステントおよび方法が、開示される。
【解決手段】ステントは、拡張可能な、フィラメントと連結した本体および脈管損傷部位と接触するためのステント本体フィラメントから形成される薬物放出コーティングを有する。コーティングは、化合物の炭素位置40でのアルキル基置換を有する大環状トリエンである化合物の再狭窄抑制量を放出する。ステントは、脈管損傷を処置するために使用される場合、臨床的再狭窄に対する良好な保護を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、脈管内薬物送達ステントおよび再狭窄を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ステントは、脈管内インプラントの一種であり、通常、一般的に形状が管状であり、代表的に、格子接続ワイヤ管状構造体を有し、この構造体は、血管に永久的に挿入されて血管に対する機械的支持を提供し、かつ、血管形成術後の間またはその後のフローチャネルを維持もしくは再確立するように拡張可能である。ステントの支持構造体は、血管形成術によって脆くなったか、または損傷した血管の早期の崩壊を予防するように設計される。ステントの挿入は、損傷した血管壁の治癒が数ヶ月にわたって進行する間に、血管のネガティブリモデリングおよび痙攣を予防することが示されている。
【0003】
治癒プロセスの間、血管形成術およびステントインプラントによって引き起こされる炎症は、しばしば、平滑筋細胞の増殖およびステント内再増殖を引き起こし、従って、フローチャネルを部分的に閉鎖し、それにより、血管形成術/ステント配置手順の有益な効果を減少または排除する。このプロセスは再狭窄と呼ばれる。生体適合性材料を使用してステントを形成している場合でさえ、凝血塊がまた、ステント表面の血栓形成性に起因して、新たに移植されたステントの内側で形成され得る。
【0004】
血液循環への抗血小板薬物の大量の注入という現在の手技に起因して、大きい凝血塊は、血管形成術手順自体または手順の直後には形成され得ないが、少なくとも微視的レベルではステント表面上に、幾らかの血栓は常に存在しており、これは、平滑筋細胞が引き続いて付着しそして増殖し得るステントの表面上に生体適合性マトリクスを確立することによる再狭窄の初期段階において、重要な役割を果たすと考えられる。
【0005】
血栓または再狭窄を減少または排除するように設計された生体活性因子を含むステントコーティングが公知である。このような生体活性因子は、移植前にステントワイヤの表面に結合された生体耐久性または生体侵食性のポリマーマトリクスのいずれかの中に分散または溶解され得る。移植後、生体活性因子は、少なくとも4週間続く期間にわたって、幾つかの場合において、1年以上にわたって、理想的には、再狭窄、平滑筋細胞の増殖、血栓またはこれらの組み合わせの時間経過に一致して、ポリマーマトリクスから好ましくは周辺組織へと拡散する。
【0006】
ポリマーが生体侵食性である場合、拡散のプロセスを介する薬物の放出に加えて、生体活性因子はまた、ポリマー分解物または溶解物として放出され得、この因子が周辺組織の環境に対してより容易に利用可能となる。外側の表面またはポリマーマトリクスの全体のバルクでさえも多孔性である生体侵食性ステントおよび生体耐久性ステントが、公知である。例えば、PCT公開番号WO 99/07308(これは、本願との共有に係る)は、このようなステントを開示し、そして明示的に本明細書で参考として援用される。生体侵食性ポリマーが薬物送達コーティングとして使用される場合、多孔性は、組織内殖を補助するように様々に特許請求されており、ポリマーの侵食をより予測可能なものとするか、または、例えば、以下の米国特許において開示される薬物放出の速度を調節または増大させる:米国特許第6,099,562号、同第5,873,904号、同第5,342,348号、同第5,873,904号、同第5,707,385号、同第5,824,048号、同第5,527,337号、同第5,306,286号、および同第6,013,583号。
【0007】
ステントの表面に化学的に結合して血栓を減少させるヘパリン、および他の抗血小板表面コーティングまたは抗血栓性表面コーティグが、公知である。ヘパリン化された表面は、ヒトにおいて血液凝固カスケードを妨害し、ステント表面上への血小板(トロンビンへの前駆体)の付着を予防することが知られている。ヘパリン表面およびコーティングの内部に保存された活性因子の両方を含むステントが、記載されている(例えば、米国特許第6,231,600号、および同第5,288,711号を参照のこと)。
【0008】
平滑筋細胞の増殖を抑制し、従って、再狭窄を抑制すると特に主張されている種々のステントが、脈管内ステントからの放出のために提唱されている。例えば、米国特許第6,159,488号は、キナゾリノン誘導体の使用を記載し;米国特許第6,171,609号は、タキソールの使用を、そして米国特許第5,176,98号はパクリタキセル(薬剤であるタキソール中の活性因子であると考えられる細胞傷害性因子)の使用を記載する。金属である銀は、米国特許第5,873,904号において引用される。抗炎症性特性を有すると考えられている一過性の膜安定化剤が、米国特許第5,733,327号に記載される。
【0009】
より最近では、ラパマイシン(平滑筋細胞および内皮細胞の増殖の両方を抑制すると報告されている免疫抑制剤)は、ステント上のポリマーコーティングから送達される場合に、再狭窄に対して改善された有効性を有することが示されている。例えば、米国特許第5,288,711号および同第6,153,252号を参照のこと。また、PCT公開番号WO 97/35575において、大環状とトリエン免疫抑制化合物であるエベロリムスおよび関連する化合物が、全身性送達を介する再狭窄の処置に提唱されている。
【0010】
理想的には、ステントからの薬物放出によって再狭窄を抑制するように選択された化合物は、3つの特性を有するべきである。第1に、ステントは、低いプロフィール(薄いポリマーマトリクスを意味する)を有するので、化合物は、薄いポリマーコーティングから放出される場合、最短でも4〜8週間にわたって持続的な治療用量を生成するのに十分に活性であるべきである。第2に、化合物は、平滑筋細胞の増殖を抑制する際に、低用量で有効であるべきである。最後に、血管の内側の表面に並ぶ内皮細胞は、通常、血管形成術および/またはステント配置のプロセスによって損傷される。化合物は、血管の内側の内皮細胞の再増殖を可能にして、血管恒常性を回復させ、そして血管壁と血管を流れる血流との間の正常かつ重要な相互作用を促進するべきである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、1つの局面において、脈管損傷部位での配置のための、その部位で再狭窄を抑制するための脈管内ステントを含む。ステントは、構造部材または1つ以上のフィラメントから形成される本体から構築され、そしてステント本体フィラメント上で支えられ、生体侵食性薬物放出コーティングは、3〜15ミクロンの厚さを有し、そして(i)20〜60重量パーセントのポリ−dl−ラクチドポリマー基材および(ii)40〜80重量パーセントの抗再狭窄化合物を有する。1〜5ミクロンの厚さを有し、そしてステント本体フィラメントとコーティングとの間に配置されるポリマーアンダーコーティングは、ステントフィラメント上のコーティングの安定化を助ける。ステントは、ステントがカテーテルを介して脈管損傷部位に送達され得る収縮した状態からステントコーティングが損傷部位にて脈管と接触して配置され得る拡張した状態へと拡張可能である。ステントコーティングは、ステントが脈管損傷部位に配置された後、少なくとも4週間にわたって再狭窄を抑制する量の化合物を放出するのに効果的である。
【0012】
種々の例示的な実施形態において、抗再狭窄化合物は、大環状トリエン免疫抑制化合物であり、ステント本体は、金属フィラメント構造であり、アンダーコートは、パリレンポリマーから形成され、そして0.5〜5ミクロンの厚さを有し、そしてコーティングは、2〜10ミクロンの厚さを有する。化合物は、50重量%〜75重量%の量でコーティング中に存在する。
【0013】
例示的な大環状トリエン免疫抑制剤は、以下:
【0014】
【化5】


の一般的な形態を有し、ここで、(i)RはHまたはCH−X−OHであり、そしてXは1〜7個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基であり、ここでR’はHであり(R’は、28位のOでHを置き換える)、あるいは(ii)RおよびR’の少なくとも1つが、以下:
【0015】
【化6】


の形態を有し、ここで、mは1〜3の整数であり、RおよびRは、各々水素、または1〜3個の炭素原子を有するアルキルラジカルであるか、またはあるいは、ここで、RおよびRが結合される窒素原子と一緒になって、4個の炭素原子を有する飽和ヘテロ環式環を形成する。エベロリムス(everolimus)として公知である例示的な化合物において、R’はHであり、そしてXは−CHである。
【0016】
上記のステントは、本発明の別の局面に従って、脈管損傷部位で再狭窄を抑制する方法において利用される。この方法において、ステントは、脈管損傷部位に送達され、そして損傷部位で脈管とステントコーティングを接触させるように拡張する。コーティングは、少なくとも4週間にわたって再狭窄を抑制する量の化合物を放出するのに効果的である。
【0017】
別の局面において、本発明は、脈管損傷部位で再狭窄を抑制するために脈管損傷部位に配置されるための脈管内ステントを提供する。ステントは、構造部材または1つ以上のフィラメントから形成される本体から構築され、そしてステント本体フィラメント上で支えられ、薬物放出コーティングは、3〜25ミクロンの厚さを有し、そして(i)20〜70重量パーセントのポリマー基材および(ii)30〜80重量パーセントの大環状トリエン免疫抑制化合物から構成され、大環状トリエン免疫抑制化合物は、以下:
【0018】
【化7】


の形態を有し、ここで、RがCH−X−OHであり、そしてXが1〜7個の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0019】
ステントは、ステントがカテーテルを介して脈管損傷部位に送達され得る収縮した状態へとステントコーティングが該損傷部位で脈管と接触して配置され得る拡張した状態から拡張可能である。コーティングは、ステントが脈管損傷部位に配置された後、少なくとも4週間にわたって再狭窄を抑制する量の化合物を放出するのに効果的である。
【0020】
種々の例示的な実施形態において、RはCH−X−OHであり、ここで、Xは−CH−であり、ステント本体は、金属フィラメント構造であり、そして、コーティング中のポリマー基材は、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコールまたはポリ−dl−ラクチドポリマーである。
【0021】
1つの例示的な実施形態において、コーティング中のポリマー基材は、3〜20ミクロンの厚さを有する生体侵食性ポリ−dl−ラクチドから形成され、そして化合物は、コーティングの20〜70重量%の初期濃度でコーティング中に存在する。特に、コーティング中の化合物の量が、約40重量%よりも多い場合、ステントは、1〜5ミクロンの厚さを有し、ステント本体のフィラメントとポリ−dl−ラクチドコーティング基材との間に配置されるポリレンポリマーアンダーコートをさらに含み得る。
【0022】
あるいは、ステントおよびコーティング基材の両方は、生体侵食性(bioerodable)ポリマー(例えば、ステント本体フィラメントを形成するポリ−l−ラクチドまたはポリ−dl−ラクチドおよびコーティング基材を形成するポリ−dl−ラクチド)から形成され得る。
【0023】
ステントコーティングは、ステントがその拡張された状態でその部位に配置される場合、ステントを通って流れる血流と接触するように構成され得る。この実施形態において、コーティングは、可溶性結晶形態の生理活性剤(抗血小板物質、フィブリン溶解剤または血栓崩壊剤)をさらに含み得る。抗血小板物質、フィブリン溶解剤または血栓崩壊剤の例は、以下である:ヘパリン、アスピリン、ヒルジン、チクロピジン、エプチヒバチド(eptifibatide)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator:TPA)、またはそれらの混合物。
【0024】
なお別の局面において、本発明は、脈管損傷部位で再狭窄のための方法の改善を提供し、この方法は、延長した期間にわたって大環状トリエン免疫抑制化合物を放出するように設計された脈管内ステントをその部位に配置することによる。この改善は、大環状トリエン免疫抑制化合物を利用することを包含し、この化合物は、以下:
【0025】
【化8】


の式を有し、ここで、RはCH−X−OHであり、そして、Xは1〜7個の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。1つの例示的な化合物において、Xは、−CH−である
ステント組成物の種々の例示的な実施形態は、上記に与えられる。
【0026】
薬物含有ポリマーコーティングを有するステント本体のフィラメントをコーティングするための新規の方法もまた開示される。この方法は、ステント本体のフィラメント上にポリマーまたはポリマー薬物溶液の流れを調節するため、種々のステントコーティング特性(ステント本体フィラメントの1つ以上の側面への均一な厚さのコーティング、他の側面上よりも大きいステント本体の外面(内面)のコーティング厚さ、異なる薬物を含有する内部コーティングおよび外部コーティング、ならびに/またはステント本体のコーティング厚さの勾配または分散コーティングパッチを含む)の1つを達成するための自動化コントローラーを利用する。
【0027】
これらならびに本発明の他の目的および性質は、以下の本発明の詳細な説明を添付の図面と共に読む場合、より完全に明らかとなる。
【0028】
(発明の詳細な説明)
(I.脈管内ステント)
図1および2は、それぞれ、ステントの収縮した状態および拡張した状態の本発明に従って構築されたステント20を示す。ステントは、図3および4を参照してさらに以下に記載される場合、構造部材または本体22および抗再狭窄化合物を保持し、そして放出するための外部コーティングを含む。
【0029】
(A.ステント本体)
示される実施形態において、ステント本体は、フィラメント(例えば、部材24、26)によって、複数の連結された管状部材から形成される。各部材は、拡張可能なジグザク、鋸歯状、または正弦波状の構造を有する。この部材は、隣接する部材の頂点および谷底をつなぎ合わせる軸連結(例えば、連結28、30)によって連結される。理解され得るように、この構成によって、ステントが、ステントの長さをほとんどまたは全く変化させることなく、図1に示される収縮された状態から、図2に示される拡張された状態に拡張され得る。同時に、隣接する管状部材の頂点と谷底との間の比較的まれな連結によって、ステントが、曲げに適応し得る。この特徴は、ステントが、カテーテル内でまたはカテーテル上で、その収縮された状態で脈管部位に送達される場合に、特に重要であり得る。ステントは、0.5〜2mmの間、より好ましくは、0.71〜1.65mmの間の代表的な収縮状態の直径(図1)、および5〜100mmの間の長さを有する。図2に示されるような拡張状態において、ステントの直径は、その収縮状態のおけるステントの直径の少なくとも2倍、8〜9倍までである。従って、0.7〜1.5mmの収縮直径を有するステントは、2〜8mmの間またはそれ以上の選択された拡張状態へと半径方向に拡張され得る。
【0030】
連結された拡張可能な管状部材のこの一般的なステント−本体構造を有するステントは、例えば、PCT公開番号WO 99/07308に記載されるように、公知であり、これは、本出願と同一人によって所有され、そして本明細書中において明確に参考として援用される。さらなる例は、米国特許第6,190,406号、同第6,042,606号、同第5,860,999号、同第6,129,755号、または同第5,902,317号(これらの特許は、本明細書中において参考として援用される)に記載される。あるいは、ステントの構造部材は、連続的なラセンリボン構成(すなわち、ステント本体が、単一の連続なリボン様コイルから形成される)を有し得る。ステント本体の基礎的な要件は、そのステント本体が脈管損傷部位において展開される際に拡張可能であること、およびそのステント本体が、脈管標的部位を裏打ちする脈管壁(すなわち、組織の内側層、外膜層および内皮層)に薬物含有コーティングに含まれた薬物を送達するために、そのステント本体の外側表面上に薬物含有コーティングを受容するのに適していることである。好ましくは、この本体はまた、格子構造または開構造を有し、外側から内側にステントを「通って」内皮細胞壁が内殖することができる。
【0031】
(B.ステントコーティング)
本発明の重要な特徴に従って、ステントフィラメントが、ポリマーマトリックスおよび少なくとも数週間、代表的には4〜8週間、そして必要に応じて2〜3ヶ月以上の期間にわたる、ステントからの放出のためにマトリックス中に分散される抗再狭窄化合物(活性化合物)から構成される、薬物放出コーティングでコーティングされる。
【0032】
図3は、拡大された断面図において、全ての側、すなわち、頂部(ステント本体の外部表面を形成するフィラメント側)底部(ステントの内部表面を形成するフィラメント側)および対向するフィラメント側において、完全にフィラメントを覆うコーティング32を有するステントフィラメント24を示す。以下にさらに考察されるように、コーティングは代表的に3〜30ミクロンの厚さを有し、この厚さはコーティングを形成するポリマーマトリクス材料の性質ならびにポリマーマトリクスおよび活性化合物の相対量に依存する。理想的には、コーティングは、可能な限り薄く(例えば、15ミクロン以下)作製されて、損傷部位での脈管中のステントプロファイルを最小化する。
【0033】
コーティングはまた、標的部位にて放出される薬物のむらのない分散を促進するために、上部(外部)表面を横切る厚さにおいて比較的均一であるべきである。ステントフィラメント上の比較的むらのないコーティング厚を作製するための方法が、以下のセクションIIで議論される。
【0034】
ステントフィラメントとコーティングとの間に配置されるポリマー下層34がまた、図3に示される。下層の目的は、コーティングをステント本体フィラメントに接着させることを助けること、すなわち、フィラメント上のコーティングの安定化を助けることである。以下で見られるように、コーティングが高いパーセンテージの抗再狭窄化合物(例えば、35〜80重量パーセント化合物)を含むポリマー基材から形成される場合、この機能は特に価値がある。1つの例示的な下層ポリマーは、生体侵食性(ポリ−dl−ラクチド)から形成されるポリマー基材と結合して使用されるパリレンである。他の適切なポリマー下層は、エチレンビニルアルコール(EVOH)、paryLASTTM、パリレン、シリコン、TEFLONTM、および他のフッ素樹脂であり、これらは、プラズマコーティングもしくは他のコーティング、または堆積プロセスにより金属ステント表面上に堆積され得る。この下層は、1〜5ミクロンの代表的な厚さを有する。
【0035】
基材を形成するポリマーは、任意の生体適合性ポリマー物質であり得、この物質から、閉じ込められた化合物が、拡散により放出され得、そして/またはポリマーマトリクスの腐食により放出され得る。基材をコーティングするための2つの周知の非腐食性ポリマーは、ポリメチルメタクリレートおよびエチレンビニルアルコールである。ステント本体への塗布のために適切な形態においてこれらのポリマーを調製するための方法が、例えば、US2001/0027340A1およびWO00/145763において記載され、これらは、参考として本明細書中で援用される。一般に、ポリマーへの薬物添加の限界は、約20〜40重量パーセントの範囲においてである。
【0036】
生体侵食性ポリマー、特に、ポリ−dl−ラクチドポリマーはまた、基材物質をコーティングするために適切である。本発明の、1つの一般的な実施形態において、コーティングは、生体侵食性ポリ−dl−ラクチドポリマー基材、すなわち、ポリ−dl−乳酸ポリマーであり、これは、ポリマー基材中に分散される活性化合物の乾燥重量により80%までを含み得る。より一般的には、コーティングは、活性化合物の乾燥重量により35〜80%およびポリマーの乾燥重量により20〜65%を含む。例示的なコーティングは、25〜50%の乾燥重量ポリマーマトリックスおよび50〜75重量パーセントの活性化合物を含む。このポリマーは、以下のセクションIIで詳説されるように、ステントフィラメント上の堆積のための活性化合物とともに処方される。
【0037】
種々の抗再狭窄化合物は、タキソールのような抗増殖剤、アンチセンス化合物、ドキソルビシン、そして最も特に、以下に示される一般構造を有する大環状トリエン免疫抑制化合物を含む実施形態において使用され得る。後者のクラスの化合物およびその合成が、例えば、米国特許番号第4,650,803号、同第5,288,711号、同第5,516,781号、同第5,665,772号および同第6,153,252号、PCT公開番号WO97/35575、ならびに公開米国特許出願番号6273913B1、60/176086、20000212/17、および2001002935/A1において記載され、これらの全てが、参考として本明細書中に援用される。例示的な大環状トリエン免疫抑制化合物は、以下の形態を有する:
【0038】
【化9】


ここで(i)Rは、HまたはCH−X−OHであり、R’がHである場合(R’は28位のOでHに置換される)、Xは、Hまたは1〜7個の炭素原子を含む直鎖アルキル基もしくは分岐鎖アルキル基であり、または(ii)RおよびR’の少なくとも1つが、以下の形態を有し:
【0039】
【化10】


ここでmは1〜3の整数であり、そしてRおよびRは、各々水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、またはあるいは、ここでRおよびRは、これらが結合される窒素原子と一緒になって、4個の炭素原子を有する飽和ヘテロ環式環を形成する。エベロリムスのように公知である、例示的な化合物において、R’は、Hであり、Xは、−CHである。
【0040】
3〜15ミクロンの間のコーティング厚を有する、1つの好ましいコーティングが、25〜50重量パーセントのポリ−dl−ラクチドポリマー基材および50〜75重量パーセントの大環状トリエン免疫抑制化合物から形成される。下層が、パリレンから形成され、1〜5ミクロンの間の厚さを有する。この実施形態は、代表的にステント長(mm)当たり約15マイクログラムの薬物と等しい量の薬物を含む。
【0041】
別の例示的な実施形態において、コーティングは、15〜35重量パーセントの腐食性ポリマー基材または非腐食性ポリマー基材および65〜85重量パーセントの大環状トリエン化合物から形成される。コーティング厚は、好ましくは、10〜30ミクロンであり、ステントは1〜5ミクロンのポリマー下層(例えば、パリレン下層)を含み得る。この実施形態は、代表的にステント長(mm)当たり約15マイクログラムの薬物に等しい量の化合物を含む。この活性化合物は、以下の形態を有する:
【0042】
【化11】


ここでRは、CH−X−OHであり、Xは、1〜7個の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。好ましい化合物は、エベロリムスであり、ここでX=−CH。エベロリムスを含む前記の化合物の酢酸エステルの塗布と同様に、Xが2、3、4、5、6または7個の炭素のアルキル基である化合物がまた、単独でまたは任意の組み合わせで、本発明について適切である。
【0043】
コーティングは、さらに、元々の血管傷害、ステントの存在によって刺激され得る血液に関連する事象(例えば、凝固)を最小にするため、または傷害部位での血管の治癒を改善するために有効な第2の生物活性剤を含み得る。例示的な第2の薬剤としては、可溶性結晶形態の抗血小板薬剤、フィブリン溶解性薬剤、または血栓崩壊性薬剤、あるいは内皮細胞の治癒を刺激し、かつ平滑筋細胞の増殖を制御するNOドナーが挙げられる。例示的な抗血小板薬剤、フィブリン溶解性薬剤、または血栓崩壊性薬剤は、ヘパリン、アスピリン、ヒルジン、チクロピジン(ticlopidine)、エプチフィバチド(eptifibatide)、ウロキナーゼ、ストレプドキナーゼ、組織プラスミノゲン賦活剤(TPA)、またはそれらの混合物である。ステントコーティング中に含まれる第2の薬剤の量は、その薬剤が治療的効果を提供する必要がある期間によって決定される。代表的には、薬剤は、血管傷害およびステント移植の後で最初の数日にわたって有効であるが、いくつかの薬剤は、より長い薬剤放出期間を必要とする。
【0044】
第2の薬剤は、公知の方法に従って、ステント本体フィラメントに塗布されるコーティング処方物に含まれ得る。
【0045】
(C.生体侵食性ステント)
別の一般的な実施形態において、ステント本体およびポリマーコーティングの両方が、生物侵食性ポリマーで形成され、経時的にステントが完全に再吸収されることを可能にする。ステントは、好ましくは、ステント本体を形成しているらせん状のリボンフィラメントを有する拡張可能なコイル型ステントである(示さず)。自己拡張可能なコイルステントは、血管中への移植についての米国特許第4,990,155号に記載されており、本明細書に参考として援用される。
【0046】
コイル型ステントは、このコイルによって処置されるべき血管の内腔のサイズよりも少し大きいように設計されている前形成物(preform)の最終的な拡張直径を有する前形成物を使用して形成され得る(3.5mm OD±1mmが、冠状動脈に対して一般的である)。より一般的には、ステントは、成形によって拡張した形態として形成され得、カテーテルの先端部に取り付けられた場合、ステントの長軸の周りにねじるか、またはステントに半径方向に力を加えて血管に送達するための収縮状態にすることによって収縮状態にする。ステントは、好ましくは約100ミクロンと1000ミクロンとの間の全厚、および0.4cmと10cmとの間の全長を有する。実際は、この型の生体侵食性ステントの重要な利点は、比較的長いステント(例えば、3cmを超える長さ)が、血管傷害部位に容易に送達され得、配置され得ることである。
【0047】
編み込まれた生体侵食性ポリマーフィラメント(例えば、ポリ−l−ラクチド)で形成されるバルーン拡張可能ステントを形成するための方法が、報告されている(米国特許第6,080,177号)。デバイスバージョンもまた、薬物を放出するように適合される(米国特許第5,733,327号)。
【0048】
ステント形成するための好ましいポリマー材料は、ポリ−l−ラクチドまたは、ポリ−dl−ラクチドである(US6,080,177)。上記のように、ステント本体およびコーティングは、一面に含まれる抗再狭窄性化合物を有する単一の拡張可能な繊維状ステントとして、一体として形成され得る。あるいは、下のセクションで詳述するように、生体侵食が可能なコーティングが適用され得、生物浸食が可能な本体を前形成する。後者の場合において、ステント本体は、1種類の生体侵食が可能なポリマー(例えば、ポリ−l−ラクチドポリ−dl−ラクチドポリマー)および第2のポリマー(例えば、ポリ−dl−ラクチドポリマー)によるコーティングから形成され得る。前形成されたステントに対して塗布された場合、このコーティングは、実質的に前述と同じ組成的特徴および厚さ特徴を有し得る。
【0049】
図4は、別々に形成された本体およびコーティングを有する、まさに記載した種類の生物浸食が可能なステントにおけるフィラメント(例えば、らせん状リボン)の断面図を示す。この図は、生物浸食が可能なコーティング38ですべての側面がコーティングされた内部の生物浸食が可能なステントフィラメント36を示す。例示のコーティングは、ポリ−dl−ラクチドで形成され、20〜40重量%の間で抗再狭窄薬剤(例えば、大環状トリエン性免疫抑制化合物)、および60〜80重量%のポリマー基材を含む。別の一般的な実施形態において、このコーティングは45〜75重量%の化合物、および、25〜55重量%のポリマーマトリクスを含む。他の種類の抗再狭窄化合物(例えば、上に列記したような化合物)が、いずれかの実施形態において使用され得る。
【0050】
生物浸食が可能なステントは、大きな閉塞が存在する場合に、血管形成用バルーンによる脈管の先立つ拡張と組み合わせて、または、将来重要な遮断を生じる高いリスクを有する患者への予防的移植としてのいずれかで、一つのデバイスで全脈管を処置できるという独特の利点を有する。このステントは完全に生分解性であるので、「フルメタルジャケット」、すなわち金属性基材を含む薬物溶出ステントのひもとして、後の複雑でない脈管の手術に対する患者の機会に影響しない。
【0051】
第2の薬剤(例えば、上記のような薬剤)は、移植した後で所望の期間にわたりコーティングから放出されるために、コーティングに取り込まれ得る。あるいは、第2の薬剤が使用される場合、それは、ステント本体に塗布されたコーティングが、ステント本体の内部表面を覆っていない場合に、ステント本体フィラメントに取り込まれ得る。金属性フィラメントステント本体に関する下のセクションIIで記載されるコーティング方法もまた、ポリマーフィラメントステント本体を覆うための使用に適している。
【0052】
(II ステントコーティング方法)
ここで図面をより詳細に参照して、図5Aおよび5Bは、本発明に従うステントコーティングプロセスの概略図である。ポリマー溶液40を、ポリマーを親和的溶媒に溶解させることで作製する。少なくとも1つの抗再狭窄性化合物および、所望の場合には第2の薬剤を、同じ溶媒または異なる溶媒を使用する懸濁液または溶液のいずれかとして、この溶液に加える。この完成した混合物を、耐圧性リザーバ42に入れる。リザーバを粒体加圧ポンプ44に接続する。
【0053】
加圧ポンプは、溶媒混合物をプログラムした速度で溶液送達管46を通って移動させ得る、任意の圧力源であり得る。この加圧ポンプ44は、正確分配システムの分野では周知のように、微小コントローラ(示さず)の制御下にある。例えば、このような微小コントローラは、パーソナルコンピュータによりRS−232C連絡インターフェイスを通じて制御可能である、4−Axis Dispensing Robot Model 番号I&J500−RおよびI&J750−R(I&J Fisnar Inc,Fair Lawn,NJから利用可能)、または正確分配システム(例えば、Automove A−400(Asymtek、Carlsbad,Caから利用可能))を含み得る。RS232Cインターフェイスを制御するための適切なソフトウェアプログラムは、Fluidmove system(これもまた、Asymtek、Carlsbad,Caから利用可能)を含み得る。
【0054】
ステントの表面に溶媒混合物を送達するための溶液送達チューブ48が、レザバ42に接着される(例えば、このレザバの底部で)。加圧可能レザバ42および送達チューブ48は、矢印X1で示されるステントの長手軸に沿って、溶媒送達チューブを小さなステップで(例えば、1ステップあたり0.2mmで)、または連続的に移動させ得る可動支持体(示さず)に搭載される。加圧可能レザバ42および送達チューブ46についての可動支持体もまた、矢印X1で示すように、小さなステップで送達チューブの先端部(遠位端部)を移動させて、マイクロフィラメント表面により近づけ得るか、またはマイクロフィラメント表面から遠ざけ得る。
【0055】
コーティングされていないステントは、少なくとも1つの端部においてこのステントと接触している回転チャックによって掴まれる。ステントの軸回転が、小さな角度ステップ(例えば、1ステップあたり0.5度)で達成され、当該分野で周知のようなチャックへのステッパーモーターの接着による送達チューブによるコーティングのために、このステント構造の最上部の表面を再配置する。所望の場合には、このステントは、連続的に回転され得る。少量溶液送達デバイスの正確な配置の方法は、X−Y−Z溶媒分配システムの分野において周知であり、本発明に援用され得る。
【0056】
溶液加圧ポンプの作用、溶液チューブのX1およびY1への配置、ならびにステントのR1への配置は、代表的には、デジタル式コントローラーおよびコンピューターソフトウェアプログラムによって協調され得、それによって、正確な要求量の溶液が、ステント表面上の所望の任意の位置、溶媒が逃れ得る任意の場所(ステント表面のポリマーと試薬による硬化したコーティングが残る)に溶着される。代表的には、溶媒混合物の粘度は、溶媒量を変えることによって用意され、2センチポアズ〜2000センチポアズの範囲であり、代表的には300〜700センチポアズであり得る。あるいは、送達チューブは、固定位置に保持され得、ステントが、回転移動に加えて長手軸方向に沿って移動され、コーティングプロセスを達成し得る。
【0057】
X−Y−Z配置テーブルおよび可動支持体は、I&J Fisnarから購入され得る。好ましい寸法の溶液送達チューブは、好ましくは、適切な固定コネクタに搭載された18〜28ゲージの間のステンレス鋼ハイポチューブ(hypotube)である。このような送達チューブは、East Providence、RIのEFD Incから取得され得る。特定の目的の先端部についてはEFDの選択ガイドを参照のこと。好ましい先端は、再注文番号5118−1/4−B「Burr−free passivated stainless steel tips with 1/4” length for fast point−to−point dispensing of particle−filled or thick materials」、再注文番号51150VAL−B「Oval stainless steel tips apply thick pastes,sealant,and epoxies in flat ribbon deposits」、および再注文番号5121−TLC−B〜5125−TLC−B「Resists clotting of cyanoacrylates and provides additional deposit control for low viscosity fluids.Crimped and Teflon lined」である。使い捨て可能な加圧可能溶液レザバはまた、EFDのストック番号1000Y5148〜1000Y5152Fからも利用可能である。本発明と共に使用するための代替的な先端は、約0.0005〜0.002インチの内径(例えば、0.001インチ)(I.D.)ガラスマイクロキャピラリーであり、VWRカタログ番号15401−560「Microhematocrit Tubes」(長さ60mm、内径0.5〜0.6mm)から利用可能である。
【0058】
チューブはさらに、ブンセンバーナーのもとで引張られ、ポリマー/薬物/溶媒混合物の正確な塗付のために所望のI.D.を達成する。ステッパーモーター、およびXYZテーブルを操作するためのプログラム可能なマイクロコントローラーは、Asymtek、Inc.から利用可能である。協調的に機能してコーティングを形成する1種類以上の流体配分チューブの種類の使用、あるいは異なる先端部を備えるか、またはコーティングを形成するための同じプロセスにおいて異なる粘度の溶液もしくは異なる複数の溶液による化学物組成を含む1つ以上の可動溶液レザバの代替的な使用は、本発明の範囲内である。チャックおよびステッパーモーターシステムは、Edmund Scientific of Barrington、NJからも購入され得る。
【0059】
代表的には、上記のように、コーティングは、ステントの外側の支持体表面(単数または複数)上に直接的に塗付され、図5Aおよび5Bに示すように、上述の本発明のコーティングシステムへの塗付の制御方法に依存して、ステントの内側表面(単数または複数)の全体または一部をカバーするかもしれないし、しないかもしれない。後者の図は、フィラメント50の頂部および側部領域へのコーティング材料52の塗付を示す。あるいは、コーティング物またはコーティング混合物はまた、ステントの内側表面に直接的に塗付され得る。薄い送達先端は、ステント構造の壁中の1つ以上のカットオフ領域(すなわち、ウインドウ)を貫通し、それによって、所望の領域の内側表面上にコーティング混合物を直接的に塗付する。この方法において、フィラメントの外側側面部および内側側面部へ、異なる薬物成分を有する異なるコーティング材料を塗付し得る。例えば、外側のフィラメント表面上のコーティングは、抗再狭窄化合物を含み得、内側のフィラメント表面上のコーティングは、1種類の上記の二次試薬(例えば、抗血栓化合物または抗血液凝固化合物)を含み得る。ステントが、十分に大きな直径を有する場合、薄い「L形状」送達先端は、内側の表面へコーティングを塗付する目的のために、ステントの長手軸に沿ってステントの開端部中に挿入され得る。
【0060】
本発明における使用のためのポリマーとしては、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ε−カプロラクタム、エチルビニルヒドロキシル化アセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ならびに、これらのコポリマーおよびこれらの混合物(クロロホルムまたはアセトン、あるいは他の適切な溶媒に溶解される)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリマーはすべて、全身循環における安全な使用および低炎症性の使用の歴史を有している。
【0061】
非ポリマー性コーティング(例えば、金属性ステント表面にイオン結合するエベロリムス(everolimus))もまた、本発明において使用され得る。
【0062】
記載したコーティングシステムを使用することで、ステントの頂部表面、側部表面、および内側表面の全てをコーティングすることが可能であることが、発見された。ポリマーに対する溶媒の適切な比を注意深く選択することによって、溶液の粘度が調節され、図5Bに示すように、溶液のいくらかが、ステントの側部を下へと移動し、固形化する前に底部表面に実際に至る。ステントの縁に近い送達チューブの休止時間を制御することで、ステントの縁または底部をコーティングするポリマーの量を増大または減少させ得る。図3に示す実施形態において、純粋なポリマーおよび溶媒からなる下部層34が、最初に、本発明のコーティングシステムを使用してステント表面24に塗付され、溶媒が蒸発され得る。次いで、生物活性試薬を含むポリマーからなる第2層32が、塗付される。
【0063】
上記のように、二次試薬が、ポリマー混合物中に取り込まれ得る。例えば、結晶形態のへパリンが、コーティング中に取り込まれ得る。へパリンの結晶は、およそ1〜5ミクロンの粒子サイズにまで微細化され、ポリマー溶液中に懸濁液として添加される。適切な形態のへパリンとしては、本発明のプロセスに従って塗付された場合に、哺乳動物宿主において生物活性を示す結晶形態のへパリン(ヘパリン塩(すなわち、へパリンナトリウムおよび低分子量形態のへパリン、ならびにそれらの塩)が挙げられる)である。図8に見られるように、血管壁内へ薬物送達ステントが配置される場合、硬化したポリマーのコーティング表面の近くでヘパリンの結晶が溶解し始め、ポリマーの多孔度を増大させる。ポリマーがゆっくりと溶解するにつれて、より多くのへパリンおよび生物活性試薬が、制御された様式で放出される。
【0064】
しかし、図8を参照すると、ステントの内側表面をコーティングすることが常に望ましいわけではないことが、理解されるべきである。例えば、ステントの内側表面をコーティングすることによって、デバイスの縮れた送達プロファイルを増大させ、小血管における運動性を小さくする。そして、移植後、内側表面は、ステントを通る血流によって直接的に洗浄され、内側表面上の任意の薬物を放出させ、全身循環中へと消失する。そのために、図3および4に示す実施形態において、バルクの硬化したポリマーおよび試薬が、ステント支持体の外側環境に配置され、そして二次的にその側部に配置される。好ましい実施形態において、最小量のポリマーおよび試薬のみが、ステントの内側表面上に塗付される。所望の場合、ステントの内側表面の少なくとも一部が、コーティングされないか、または曝露されることもまた可能である。
【0065】
さらに、図3および4のコーティングは、選択的な様式で、ステントフィラメント表面に配置され得る。コーティングされるセクションの深さは、組織に呈示するために利用可能である生物活性コーティングの体積に対応し得る。特定の領域(例えば、ステントの展開の間に高いひずみレベルを受け得る領域)からコーティングを制限することが、有利であり得る。
【0066】
均一な下層が、最初に、ステント表面に配置されて、生物活性因子を含有するコーティングの接着を促進し得、そして/またはステント上のポリマーコーティングの安定化を補助し得る。プライマーコートは、当該分野においてすでに公知であるような方法のいずれかを使用することによって、または本発明の精密分配システムによって、塗布され得る。プライマーコートを、異なるポリマー材料(例えば、パリレン(ポリ(ジクロロ−パラ−キシレン))、またはベース金属基板と、生物活性因子を含有するコーティングとの両方に対して良好な接着を示す任意の他の材料)を使用して塗布することもまた、本発明の範囲内である。パリレン(ポリ(ジクロロ−パラ−キシリレン))は、当該分野において周知であるように、プラズマ技術または蒸着技術によって堆積され得る(米国特許第6,299,604号を参照のこと)。本発明の1つの実施形態において、ヘパリンを含有するコーティングの島または層が、ステントの内側表面に形成され、そして上記のような本発明の薬物を含有する抗増殖コーティングが、ステントの外側表面に形成される。
【0067】
高い薬物/ポリマー基材比を有するコーティングを形成することが望ましい場合、例えば、薬物が、金属ステント基材上のコーティングの40〜80重量%を構成する場合、下層をステントフィラメント上に形成して、基材に対してコーティングを安定させ、そしてしっかりと付着させることが有利である。下層は、さらに加工され得、その後、コーティング材料が、適切な溶媒(例えば、アセトン、クロロホルム、キシレン、またはこれらの混合物)中で膨潤させることによって、堆積される。このアプローチは、エベロリムス(everolimus)対ポリ−dl−ラクチドの高い比を有するステントの調製について、実施例5に記載される。
【0068】
ここで、パリレン下層は、プラズマ堆積によって、ステントフィラメント上に形成され、次いで、この下層は、キシレン中で膨順され、その後、コーティング材料の最終堆積がなされる。この方法は、5〜10ミクロンのみの厚さを有するコーティングにおいて、ポリ−dl−ラクチドポリマー基材中に、1つの場合においては50%の薬物、そして別の場合においては75%の薬物を含有するコーティングを製造する際に、有効であった。
【0069】
上に記載されるように、本発明のコーティングシステムを使用して、完全に生体侵食性のステントを製造することもまた、本発明の範囲内である。これは、頂部が開いた「C字型」螺旋チャネル(この中に、分配システムがポリマーを堆積させ得る)を使用して、形成されるべきステントの形状に管状プレフォームを作製することによって、達成され得る。このプレフォームは、その外径が開いており、その結果、このポリマーは、分配チューブの代表的には1回の通過(しかし必要であればまた、複数の通過)を使用して、プレフォーム内に堆積され得、一方で、ポリマーがプレフォームによって閉じ込められた位置で、ステント構造体の均一な縁部を作製する。このプレフォームは、このように作製される生分解性のステントを溶解しない溶媒中で可溶性である。ポリマーが堆積され、そしてポリマー溶液の溶媒が蒸発した後に、このアセンブリは、プレフォームを溶解する溶媒中に入れられて、完成したステント構造体を解放し得る。プレフォームのための代表的な材料は、スクロースであり、これは、標準的な射出成形技術を使用して、所望のプレフォームの形状に成形され得る。プレフォームのための代表的な溶媒は、水である。
【0070】
(III.使用方法および性能特徴)
この節は、本発明に従う脈管処置方法、および本発明に従って構築されるステントの性能特徴を記載する。
【0071】
(A.方法)
本発明の方法は、局所的な脈管損傷を受けた患者、または脈管閉塞の危険のある患者において、狭窄の危険性および/または程度を最小にするように設計される。代表的に、脈管損傷は、血管造影手順の間に生じ、部分的に閉塞された脈管(例えば、冠状動脈または末梢脈管動脈)を開く。脈管造影手順において、バルーンカテーテルが閉塞部位に配置され、そして遠位バルーンが1回以上膨張および収縮されて、閉塞された脈管を強制的に開く。この脈管の膨張(特に、斑が外れ得る脈管壁における表面の外傷を伴うもの)は、しばしば、脈管が、細胞増殖および再閉塞によって、経時的に応答するために十分な局在した損傷を生じる。驚くべきことではないが、狭窄の発生または重篤度は、しばしば、脈管造影手順に関与する脈管伸長の程度に関連する。特に、過度伸長が35%以上である場合、狭窄が、高い頻度で、そしてしばしばかなりの重篤度(すなわち、脈管閉塞)を伴って、起こる。
【0072】
本発明を実施する際に、ステントは、その収縮状態で、代表的に、カテーテルの遠位端において、カテーテル管腔内かまたは遠位端バルーン上での収縮状態でかのいずれかで、配置される。次いで、遠位カテーテル端が、損傷部位または潜在的閉塞の部位に案内され、そして例えば、ステントが自己拡張型である場合、トリップワイヤを使用してステントを適所に解放することによって、またはバルーン膨張によってバルーン上のステントを拡張することによって、ステントが脈管壁に接触するまで、カテーテルから解放され、実際に、ステントをその部位において組織壁に移植する。
【0073】
図6は、本発明の完全に生分解性のステントの実施形態を、心臓血管系の血管(例えば、冠状動脈)内へのデバイスの移植に適切な送達カテーテルとともに示す。この図は、ステント53(「薬物コイル」と称される)を、部分的に解放された位置で示す。このステント(これは、自己拡張コイルの型である)は、ポリ乳酸から形成され、そして本発明の一種以上の活性な生物学的因子を含む。
【0074】
このコイルは、記載されるようなプレフォームを使用して作製され、このプレフォームの最終拡張直径は、このコイルを用いて処置される脈管の内部管腔サイズよりわずかに大きいように処方される。このプレフォームを除去した後に、薬物コイルが、両端を逆方向に捻ることによって、より小さい半径のコイルに巻き付けられ、従って、送達直径が、体温における最終拡張直径の約1/3まで、スライド可能なシースの下で、その全長に沿って圧縮される。薬物コイルは、シースの内径において圧縮されたコイルを形成するための、より締まった半径に容易に屈曲するように、厚さが十分に薄い(およそ25〜125ミクロン)。このシースは、送達カテーテル55の上にスライド可能に配置され、ステントをその圧縮状態で標的脈管に送達するために適切である。シース54は、その近位端において把持手段56を有し、これによって、血管形成操作者は、送達カテーテルの先端が脈管内の適切な位置にある場合に、シースを引き戻し得、そして薬物コイルを完全に解放し得る。
【0075】
送達カテーテル55の中心は、約0.014インチの直径の管腔を有し、この中に、可撓性先端58を有するガイドワイヤ57が、スライド可能に配置され得る。この送達カテーテルは、血管新生の分野において周知であるように、内空をY字型コネクタおよび止血弁に接続するためのルアーハブ59を、さらに有する。スライド可能なシースを備える送達カテーテルのODは、2〜4F(フレンチサイズ)の範囲内であり得るか、または末梢動脈が処置される場合には、より大きくあり得る。
【0076】
薬物コイルは、完全に生分解性であるので、このコイルは、全て金属のジャケットのように、血管に対する後の合併されない手術の患者の機会に影響を与えない。露出した金属のコイルは、しばしば、血栓塞栓症および完全な遮断を、特定の神経血管適用において生じるために、脈管内に配置されるが、驚くべきことに、生体適合性ポリマー(ポリ(dl−乳)酸(PDLA)およびその混合物)は、開示される構成において、血管形成術後に損傷した脈管を支持するために十分な機械的強度を提供し、そしてさらに、塞栓症を生じず、従って、本発明の薬物コイルの製造のための例示的な材料であることが実証された。
【0077】
一旦、その部位において展開されると、ステントは、脈管部位をライニングする細胞内に活性化合物を放出し始め、細胞増殖を抑制する。図7Aは、本発明に従って構築された2つのステント(各々、約10ミクロンの厚さのコーティングを有する)からのエベロリムス放出速度論を示す(黒四角)。薬物放出速度論は、ステントを25%エタノール溶液(これは、ステントコーティングからの薬物放出の速度を大いに加速する)に浸漬することによって、得られた。このグラフは、インビボで予測され得る薬物放出速度論の型を示すが、なおより長い時間スケールにわたってである。
【0078】
図7Bは、金属ステント基材上の、本発明のコーティングからのエベロリムスの薬物放出を示す。上側の曲線のセットは、コーティングが金属表面に直接塗布された場合の薬物放出を示す。下側の曲線のセット(より遅い放出を示す)は、金属ステント表面にパリレンの下層またはプライマーコートを塗布し、次いで、本発明のコーティング系でその表面をコーティングすることによって得られた。見られるように、プライマーは、ステント表面へのコーティングの機械的接着を増大させ、生体侵食性コーティングのより遅い分解および薬物のより遅い放出を生じる。このような構成は、強力に接着したステントコーティングを有することが望ましい場合(これは、薬物溶出ステントの、ガイドカテーテルおよび/または脈管の内側での蛇行した操作の間の繰り返しの摩耗に耐え得る)、ならびに/あるいはデバイスの移植後の移植部位におけるアテローム性動脈硬化症疾患プロセスの延長した処置のために薬物放出を遅くすることが望ましい場合に、有用である。
【0079】
図8は、移植されたステント62を有する脈管領域60を、断面で示す。このステントのコーティングされたフィラメント(例えば、コーティング66を有するフィラメント64)が、断面で見られる。この図は、各フィラメント領域から周囲の脈管壁領域への、抗狭窄化合物の放出を示す。経時的に、脈管壁を形成する平滑筋細胞が、ステントの格子または螺旋状開口部の内部に、そしてこれらを通って成長し始め、最終的に、連続的な内側細胞層を形成し、この層が、ステントを両側で包み込む。ステントの移植が首尾よくいった場合、後のその部位における脈管閉塞の程度は、50%未満である。すなわち、脈管の内側に残っているフローチャネルの断面直径は、移植の時点の拡張したステント直径の少なくとも50%である。
【0080】
Schwartzら(「Restenosis After Balloon Angioplasty−A Practical Proliferative Model in Porcine Coronary Arteries」、Circulation 82:(6)2190−2200、1990年12月)によって一般的に記載されるようなブタ再狭窄動物モデルにおける知見は、本発明のステントが再狭窄の程度を制限する能力、および現在提唱されそして試験されているステントに対するこのステントの利点(特に、重篤な脈管損傷(すなわち、35%より大きい脈管伸長)の場合)を実証する。これらの研究は、実施例4に要約されている。
【0081】
簡単にいえば、これらの研究は、ステント移植の28日後における再狭窄の程度を、剥き出しの金属のステント、ポリマーコーティングされたステント、ならびに高濃度または低濃度のシロリムス(ラパマイシン)およびエベロリムスを含有するポリマーコーティングされたステントにおいて、比較する。
【0082】
実施例4の表1は、ラパマイシンステント(Rapa−highまたはRapa−low)とエベロリムスステント(C−highまたはC−low)の両方が、再狭窄のレベルを大いに低下させたことを示す。最小量の再狭窄は、高用量のエベロリムスステントにおいて観察された。類似の結果が、低い損傷を有する動物に対する研究において得られた(表2)。
【0083】
図9A〜9Cは、剥き出しの金属のS字型ステント(Biosensors International Inc,Newport Beach,CAから入手可能)における、28日目の心内膜形成のステント断面の例である。図10A〜10Cは、ポリマーコーティングされた(薬物なしの)S字型ステントにおける心内膜形成の例である;そして図11A〜11Cおよび12A〜12Cは、エベロリムス/ポリマーコーティングされたステントにおける心内膜形成の例である。一般に、エベロリムスコーティングされたステントで処理された脈管は、十分に確立された内皮層を伴って、十分に治癒したようである。完全な治癒および脈管止血の証拠は、28日目においてである。図13は、91倍の倍率での脈管断面の例であり、移植の28日後における脈管管腔の内側への内皮層の治癒および確立を示す。
【0084】
これらの写真は、28日目における再狭窄の排除のための最も好ましい組み合わせが、C−high処方物またはC−Ulight処方物(実施例4を参照のこと)(これらは、18.7mmの長さのステントに、それぞれ325マイクログラムおよび275マイクログラムの投薬量のエベロリムスを含有した)であることを示す。このデータは、現在市場に出ているむき出しの金属ステント(S字型ステント)と比較して、非近交系の若いブタにおける追跡の28日目における、再狭窄の50%の減少を予測する。このデータはまた、薬物のエベロリムスが、同じステント/ポリマー送達プラットフォーム上の180マイクログラムの投薬量のシロリムスより良好であるか、または少なくとも同等であることを示す。これらの結果は、推計学的分析によって支持される(実施例4)。
【0085】
図15は、バルーン/動脈比(B/A比)によって測定される場合の脈管のバルーン過度伸長と、動物実験における脈管損傷との間の関係を示す。このデータは、過剰に拡張した血管形成バルーンを使用して非常に制御された脈管損傷を生じることが、予測可能かつ既知の脈管損傷をブタモデルにおいて作製する、合理的に正確な方法であることを示す。
【0086】
図14は、S字型ステント上にコーティングされたポリマー中の因子の選択された投薬の、「最適」直線回帰曲線を示す。この曲線は、損傷スコアを、追跡の際の狭窄領域を関係付ける。「狭窄領域」とは、推計学的分析によって決定される、心内膜形成の正確な指標である。この図から見られ得るように、高エベロリムスのステントは、試験されたサンプルの群において、増加する損傷スコアに対する負の傾きを示した唯一のコーティングであった。この分析は、C−highコーティングが、損傷した冠状動脈における再狭窄(これは、事実上、損傷スコアとは無関係である)を制御し得ることを示唆する。試みた他のコーティング処方物は、いずれも、この独特の特徴を示さなかった。
【0087】
上記のことから、本発明の種々の目的および特徴がどのように適合されるかがわかり得る。1つの局面において、本発明は、高い薬物/ポリマー比(例えば、40〜80重量%の薬物)を有する生体侵食性のステントコーティングを提供する。この特徴は、低プロフィールのステントからの、抗うつ性化合物の、延長された期間にわたっての連続的な送達を可能にする。同時に、ポリマー分解成分(例えば、生体侵食の間に放出されるラクチドおよび乳酸)の総量は、比較的低く、ステントコーティングの生体侵食から生じ得る可能な副作用(例えば、刺激)を最小にする。
【0088】
別の局面において、本発明は、再狭窄を処置または抑制するための改善された方法を提供する。この方法(これは、大環状トリエンである免疫抑制化合物の、ステントポリマーコーティング中での新規組み合わせを含む)は、再狭窄に対して、少なくとも先行技術のうちで最良のステントと同程度の有効性を提供するが、この方法の効力が損傷の程度に無関係であるように見られ、そしてこの方法が、ステント挿入された脈管のより大きな程度の内皮形成を与え得るという、先行技術より優れた付加された利点を有する。
【0089】
最後に、この方法は、完全に生体侵食性のステントを提供し、このステントは、ちょうど記載された有利な特徴を有し、そして金属本体のステントより大きい設計融通性(特に、ステントの全長および処置された脈管における将来の手術可能性)を有する。
【0090】
以下の実施例は、本明細書中のステントの発明を作製および使用する、種々の局面を示す。これらは、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
(エベロリムスおよびその誘導体の調製)
(工程A.2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシエタノール(TBSグリコール)の合成)
154mlの乾燥THFおよび1.88gのNaHを、窒素雰囲気下で、500mLの丸底フラスコ冷却器中で攪拌する。4.4mLの乾燥エチレングリコールをこのフラスコに添加し、45分間の攪拌後に、大きい沈殿物を生じる。11.8gのtert−ブチルジメチルシリルクロリドをこのフラスコに添加し、そして激しい攪拌を45分間続ける。得られた混合物を950mLのエチルエーテルに注ぐ。このエーテルを420mLのブラインで洗浄し、そして溶液を硫酸ナトリウムで乾燥する。この生成物を、減圧下でのエーテルのエバポレーションによって濃縮し、そしてシリカゲルを充填された27×5.75cmのカラムを使用する、ヘキサン/EtO(75:25 v/v)溶媒系を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。その生成物を、0℃で保存する。
【0092】
(工程B.2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシエチルトリフレート(TBSグリコールTrif)の合成)
4.22gのTBSグリコールおよび5.2gの2,6−ルチジンを、冷却器を備えた100mLの二つ口フラスコ中で、窒素下で激しく攪拌しながら合わせる。10.74gのトリフルオロメタンスルホン酸無水物を、このフラスコに、35〜45分間かけてゆっくりと添加し、黄色がかった褐色溶液を得る。次いで、この反応を、1mLのブラインを添加することによってクエンチし、そしてこの溶液を、100mLのブライン中で5回洗浄して、最終pH値を6〜7にする。この溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、そして減圧下での塩化メチレンのエバポレーションによって濃縮する。その生成物を、シリカゲルを充填した約24×3cmのフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用して、ヘキサン/EtO(85:15 v/v)溶媒系を使用して精製し、次いで、0℃で保存する。
【0093】
(工程C.40−O−[2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシ]エチル−ラパマイシン(TBS Rap)の合成)
400mgのラパマイシン、10mLのトルエン、および1.9mLの2,6−ルチジンを、55〜57℃に維持した50mLのフラスコ中で混合し、そして撹拌する。別の3mLのセプタムバイアル中で、940μLの2,6−ルチジンを1mLのトルエンに添加し、次いで、2.47gのTBSグリコールTrifを添加する。このバイアルの内容物を50mLフラスコに添加し、そして撹拌しながら、反応を1.5時間進行させる。480μLの2,6−ルチジンおよびさらなる1.236gのTBSグリコールTrifを、この反応フラスコに添加する。撹拌を、さらに1時間続ける。最後に、第二の部分の480μLの2,6−ルチジンおよび1.236gのTBSグリコールTrifをこの混合物に添加し、そしてこの混合物を、さらに1〜1.5時間攪拌する。得られる褐色の溶液を、多孔質ガラスフィルタを通して、減圧を使用して注ぐ。結晶様の沈澱物を、全ての色が除かれるまでトルエンで洗浄する。次いで、その濾液を、60mLの飽和NaHCO溶液で2回洗浄し、次いで、ブラインで再度洗浄する。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮する。少量のヘキサン/EtOAc(40:60 v/v)溶媒を使用して生成物を溶解し、そしてシリカゲルを充填した33×2cmのフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用し、そして同じ溶媒で展開して、精製を達成する。この溶媒を減圧下で除去し、そして生成物を5℃で保存する。
【0094】
(工程D.40−O−(2−ヒドロキシル)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)の合成プロセス。)
パイレックス(登録商標)ガラス皿(150×75mm)を、氷で満たし、そして撹拌プレート上に置く。少量の水を加えて、氷のスラリーを得る。第1に、60〜65mgのTBS−Rapを、8mLのメタノールを加えることによりガラスバイアル中で溶解する。0.8mL 1N HClを、バイアルに加え、この溶液を45分間撹拌し、次いで、3mL飽和NaHCO水溶液を加えることにより中和する。5mLのブライン、続いて20mLのEtOAcを溶液に加え、その結果、二相が形成される。これらの相の混合後、分液ロートを使用して水層を除く。残る溶媒をブラインで洗って6〜7の最終pHにし、硫酸ナトリウムで乾燥する。硫酸ナトリウムを多孔性ガラスフィルターを使用して除き、そして溶媒を真空中で除去する。生じる濃縮物を、EtOAc/メタノール(97:3)中に溶解し、次いで、シリカゲルで充填された23×2cmフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用し、同じ溶媒系を使用して展開して精製する。この溶媒を真空中で除去し、そして生成物を5℃で保存する。
【0095】
(実施例2)
(ポリ−dl−ラクチドコーティングにおけるエベロリムスを含むステントの調製)
100mgのポリ(dl−ラクチド)を、室温にて2mLアセトン中に溶解した。5mgのエベロリムスをバイアル中に置き、400μLのラクチド溶液を加えた。マイクロプロセッサ制御シリンジポンプを使用して、ステントストラット頂部表面にラクチド溶液を含む10μLの薬物を正確に分配した。溶媒の蒸発が、ステント上の単一ポリマー層を含む均一な薬物を生じた。
【0096】
15μLの体積を同様の様式において使用して、ステント頂部ストラット表面およびステント側部ストラット表面をコーティングし、ステントストラット頂部およびステントストラット側部をコーティングする単一層を生じた。
【0097】
(実施例3)
(ポリ−dl−ラクチドコーティングにおけるエベロリムスを含むステントからのインビトロでの薬物放出)
インビトロ薬物放出を、コーティングされたステントを25%EtOHを含む2mLのpH7.4リン酸緩衝化生理食塩水溶液中に配置し、0.05%(w/v)アジドナトリウムとともに保存し、37℃に保つことにより行なった。サンプリングを、全緩衝液体積を薬物測定のために回収しながら、溶液を同じ体積の新鮮な緩衝液(無限の沈降)で置換することにより定期的に行なった。図7は、この様式で微小分配される単一のポリマー層でコーティングされる2つの同じステントからの薬物放出を例示する。
【0098】
(実施例4)
(動物移植試験)
(A.ブタにおける安全および用量設定試験のQCA結果)
原理:
薬物溶出ステントのための最も問題のある処置条件が、再狭窄(新脈管内膜形成)の程度が脈管損傷の程度と共に直接増加することが公知であるために、ひどく損傷した血管であると考えられていた。実験がブタにおいて行われ、薬物でコーティングされたステント移植物の標的であった脈管のかなりの数が、血管形成術バルーンを使用して重篤に損傷された(平均およそ36%過度に伸ばした脈管の損傷)。これは、脈管の内膜および中間層の重篤な引き裂きおよび伸びを引き起こし、移植後28日で極端な再狭窄を引き起こした。このように、薬物の種々の用量の相対有効性および移植後28日での再狭窄の減少についての同じ金属ステント/ポリマープラットフォームにおけるポリマーに対する薬物重量比を評価することが可能であった。
【0099】
(略語)
「剥き出しのステント」とは、波形の環設計の18.7mmの剥き出しの金属ステントをいう(すなわち、Biosensors Intl.,Inc.により製造されるような、現在市販される「S−ステント」)。
【0100】
「C−high」とは、PDLA(ポリ−dl−乳酸)ポリマーコーティング中の325μgのエベロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0101】
「C−low」とは、PDLAポリマーコーティング中に180μgのエベロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0102】
「Rapamycin−high」とは、PDLAポリマーコーティング中に325μgのシロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0103】
「Rapamycin−low」とは、PDLAポリマーコーティング中に180μgのシロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0104】
「C−Ulight」とは、PDLAポリマーの極薄コーティングにおける275μgのエベロリムス(ポリマーに対して37%の薬物重量比)を有する18.7mm長のステントをいう。
【0105】
「C−Ulow」とは、PDLAポリマーの極薄コーティングにおける180μgのエベロリムスまたはその等価物(37%のポリマーに対する薬物重量比)を有する18.7mm長のステントをいう。
【0106】
「ポリマーステント」とは、PDLAポリマーコーティングのみで覆われた18.7mmのS−ステントをいう。
【0107】
「B/A」は、動脈に対する最後に膨張したバルーンの比であり、脈管の過度の伸びの指標である。
【0108】
「平均管腔喪失(MLL)」とは、移植時でのステント内部管腔内で得られる3つの測定値の平均から続く血管造影法での3つの測定値の平均を引いたものから決定され、そしてステント内部で形成された新脈管内膜の量を示す。
【0109】
(方法:)
波形環設計の金属ワイヤメッシュ骨格を使用する薬物溶出ステント(すなわち、S−ステント)およびポリマーコーティングを、異なる用量の薬物エベロリムスまたは薬物シロリムスのいずれかを使用して、外で育った未成育のブタ(あるいは28日以上続く移植研究についてはYucatan Minipig)に移植した。移植の際に、Quantitative Coronary Angiography(QCA)を実施して、ステント移植の前および後の脈管の直径を測定した。28日目、または以下の表に具体的に示される場合にはそれより長期間にて、動物をステントの領域においてQCAを再び受けさせ、その後安楽死させる。
【0110】
認可されたプロトコルに従う動物の安楽死に続いて、心臓を動物から除去し、加圧されたホルムアルデヒド溶液を冠動脈中に注入した。次いで、ステントを含む冠動脈のセグメントを、心臓表面から外科的に除去し、続いて、石切用丸鋸での横行切断のためにアクリルプラスチックブロック中に固定した。次いで、近位に、中央に、遠位に位置した脈管の切断面を含むアクリル材料の50ミクロン厚の切片を、光学的に磨き、顕微鏡のスライドに載せた。
【0111】
デジタルカメラを備える顕微鏡を使用して、スライドに載せられた脈管横断面の高解像度画像を作製した。これらの画像を、以下のような手段により組織形態学的(histomorphometric)分析に供した:
PCベースのシステムのためのA.G. Heinzeスライド顕微鏡を通したコンピューター化された画像化システムImage Pro Plus 4.0を、以下の組織形態学的測定のために使用した:
1.平均断面積および管腔厚(脈管内膜/新脈管内膜境界により制限される領域);新脈管内膜(管腔と内弾性板(IEL)との間の領域、IELが欠けている場合、管腔と中間弾性板または外弾性板(EEL)の残りとの間の領域);中間(IELとEELとの間の領域);管サイズ(外膜領域を除くEELにより制限される領域);および外膜領域(周辺外膜組織、脂肪組織および心筋層ならびにEELの間の領域)。
2.損傷スコア。脈管損傷の程度を定量化するために、異なる壁構造の裂け目の量および長さに基づくスコアが、使用された。損傷の程度が、以下のように計算された:
0=インタクトなIEL
1=媒体浅層に曝される裂かれたIEL(少ない損傷)
2=より深い媒体層に曝される裂かれたIEL(媒体切開)
3=外膜領域に曝された裂かれたEEL
以下の表は、追跡管理QCAでのQCA分析(再狭窄に起因する平均管腔喪失の測定)の結果を示す。以下の表の「新脈管内膜」と題される欄の下のデータは、追跡管理(f/u)でのブタから除かれたステントおよび管の形態学的分析の結果を報告する:
(表1:「高度損傷」実験の結果)
【0112】
【表1】


(B.低損傷研究)
どれほどのエベロリムスの用量が軽く損傷した脈管(合併症でない冠動脈疾患および1つの新しい損傷を有する患者により代表的である)において最良であるかをさらに決定するために、エベロリムス溶出ステントを、中程度から低い過度伸長損傷(およそ15%)を作製するために移植した。農場のブタを30日の実験のために使用し、そして成体のYucatan minipigを三ヶ月の安全研究のために移植した。血管造影法の結果は、以下の通りであった:
(表2:「低い損傷」実験のQCA結果)
【0113】
【表2】


上のデータは、エベロリムスのC−UlowまたはC−Uhigh用量のいずれかが、低いまたは中程度に損傷した管における新脈管内膜形成での45〜48%の減少を作り出すことを予測した。
【0114】
(C.形態学的分析)
ステント内に形成された、各々のステント内の全切断面領域および新しい組織(新脈管内膜)の切断面領域が、コンピューターにより測定され、狭窄領域の割合が、計算された。薬物およびポリマーの各々の形成のための、平均的管損傷スコア、新脈管内膜領域、および狭窄領域の割合、ステント当たりの3つのスライスの平均化が、以下の表に示される。
【0115】
(表3:「高度損傷」実験の結果)
【0116】
【表3】


形態学的分析は、ブタ冠動脈モデルにおけるステント内狭窄を測定する高度に正確な方法と考えられる。高度損傷モデルにおいて、C−High調合は、28日での「高度損傷」実験における新脈管内膜形成の最も低い量を作製した;しかし、C−Uhighは、群の最も高度な損傷スコアを有し、0.45の非常に低い狭窄領域の割合をなお管理した。従って、データは、QCA分析の発見を独立して確かめ、そして臨床試験のための好ましいい調合としてC−Uhighの選択を支持する。
(D.組織学的分析)
C−Uhighおよびsirolimus−lowについてのスライドを、経験を積んだ癌病理学者に提出した。彼は、炎症、フィブリンおよび新しく治療した管腔の内皮を示す証拠について管断面を再調査した。シロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステントとの間の違いは、見出せなかった。一般に、良く定着した内皮を有する管は、良く治療されており、完成した治療の証拠であり、28日での管恒常性であると見られる。図13は、移植後28日での管腔内部の内皮層の治療および定着を示す倍率91倍の管断面図の例である。
【0117】
(E.発表された結果に対する比較)
Carterらは、ブタにおいてPalmaz Schatz金属ステントを使用してシロリムスでコーティングしたステントの結果を発表した。発表されたCarterの結果のBiosensorの実験結果に対して比較する表を、下に示す:
(表4)
【0118】
【表4】


(実施例5)
(高度な薬物装填を有するステントの調製)
長さ14.6mmの印付けられた金属波形環ステント(S−ステント、波形環設計)を、血漿堆積プロセスを使用してパリレン「C」プライマーのおよそ2ミクロンの層でコーティングした。パリレンでコーティングしたステントを周囲温度で終夜キシレン中においた。50μg/μlのポリ乳酸(PDLA)を含む貯蔵ポリ(d、l)−乳酸溶液を、2mL中100mgのPDLAに溶解することにより調製した。
【0119】
50%のポリマーに対する薬物比を含むステントを調製するために、5mgのエベロリムスを100μlのPDLA貯蔵溶液中に溶解した。さらなる20μlのアセトンを加えて、溶液を調合するのを補助した。ステントをキシレンから除去して、注意深くブロットして溶媒を除去した。総5.1μlのコーティング溶液を、各々のステントの外部表面上で調合した。ステントを周囲温度で乾燥して、終夜デシケーター中においた。これは、ステント当たり212μgのPDLA中に含まれる総212μgのエベロリムスを生じた。
【0120】
75%のポリマーに対する薬物比を含むステントを調製するために、5mgのエベロリムスおよび33.3μgの貯蔵PDLA溶液を、混合した。さらなる33.3μlのアセトンを加え、混合物を溶解した。ステントをキシレンから除去し、上と同様にブロットした。総2.8μlのコーティング溶液を、各々の外部表面上で調合した。ステントを、周囲温度で乾燥し、終夜デシケーター中に置いた。これは、ステント当たり70μgのPDLA中に含まれる総212μgのエベロリムスを生じた。
【0121】
最後のステントは、エベロリムス/PDLAのおよそ5ミクロン厚のコーティングまたはわずかに乳濁色の外見を示し、これは頂部表面および側部表面において円滑に塗られ、金属ストラット表面にストラット表面に堅く接合された。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、金属フィラメント本体を有し、そして本発明の1つの実施形態に従って形成される脈管内ステント(ステントは、収縮した状態を示す)を図示する。
【図2】図2は、金属フィラメント本体を有し、そして本発明の1つの実施形態に従って形成される脈管内ステント(ステントは、拡張した状態を示す)を図示する。
【図3】図3は、図1のステントのコーティングされた金属フィラメントの拡大した断面図である。
【図4】図4は、コーティングされた生体侵食性ポリマーステントの拡大した断面図である。
【図5A】図5Aおよび5Bは、本発明のコーティングされたステントの生成における使用に適切なポリマーコーティング方法の略図である。
【図5B】図5Aおよび5Bは、本発明のコーティングされたステントの生成における使用に適切なポリマーコーティング方法の略図である。
【図6】図6は、本発明に従って構築され、そして脈管部位に送達するためのカテーテルに取り付けられた生体侵食性ポリマーステントを示す。
【図7A】図7Aは、本発明に従って構築されたステントからエベロリムスの放出を示すプロットである。
【図7B】図7Bは、本発明に従って構築されたステントからエベロリムスの放出を示すプロットである。
【図8】図8は、脈管部位に展開された本発明におけるステントの断面図である。
【図9A】図9A〜9Cは、ベア金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図9B】図9A〜9Cは、ベア金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図9C】図9A〜9Cは、ベア金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図10A】図10A〜10Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図10B】図10A〜10Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図10C】図10A〜10Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11A】図11A〜11Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11B】図11A〜11Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11C】図11A〜11Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12A】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12B】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12C】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図13】図13は、図11A〜11Cに利用されるステントのフィラメントに見られる、脈管の拡大組織学的切片であり、治癒される血管壁を形成する新しい組織によって過剰増殖される。
【図14】図14は、種々の異なるステント(本発明に従って構築されたステントを含む)を用いる、損傷スコアの関数としての移植28日後の狭窄領域のプロットである。
【図15】図15は、ステント移植時の損傷スコア(Y軸)とB/A(バルーン(balloon)/動脈)比との間の相関プロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈管損傷部位において配置し、その部位での再狭窄を抑制するための脈管内ステントであって、該ステントが、以下:
1つ以上のフィラメントから形成される本体、
該1つ以上のフィラメント上で支えられる、(i)20〜60重量パーセントのポリマー基材および(ii)40〜80重量パーセントの抗再狭窄化合物から構成される薬物放出コーティングならびに
該ステント本体フィラメントと該コーティングとの間に配置されるポリマーアンダーコーティングを含み、
該ステントは、該ステントがカテーテルを介して脈管損傷部位に送達され得る収縮した状態からステントコーティングが該損傷部位にて該脈管と接触して配置され得る拡張した状態へと拡張可能であり、
該コーティングは、該部位にて再狭窄を抑制する量の化合物を放出するのに効果的である、脈管内ステント。
【請求項2】
請求項1に記載のステントであって、前記ステント本体が、金属フィラメント構造であり、前記アンダーコーティングが、パリレンポリマーから形成され、かつ1〜5ミクロンの間の厚みを有し、該コーティングが、生分解性ポリマーから構成され、約3〜30ミクロンの間の厚さを有する、ステント。
【請求項3】
請求項1に記載のステントであって、前記ステント本体が、金属フィラメント構造であり、前記薬物放出コーティングが、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコールおよびポリ−dl−ラクチドポリマーからなる群より選択されるポリマーから形成される、ステント。
【請求項4】
請求項1に記載のステントであって、前記ステント本体が、ポリ−l−乳酸ポリマーまたはポリ−dl−乳酸ポリマーから形成され、前記薬物放出コーティングが、ポリ−dl−ラクチドから形成される、ステント。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントであって、前記抗再狭窄化合物が、大環状トリエン化合物である、ステント。
【請求項6】
請求項5に記載のステントであって、前記化合物が、以下:
【化1】


の形態を有し、(i)RはHまたはCH−X−OHであり、Xは1〜7個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、R’はHであり、あるいは(ii)RおよびR’の少なくとも1つが、以下:
【化2】


の形態を有し、ここで、mは1〜3の整数であり、RおよびRは、各々水素、または1〜3個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、またはあるいは、RおよびRは、それらがそれらが結合される窒素原子と共に、4個の炭素原子を有する飽和ヘテロ環式環を形成する、ステント。
【請求項7】
請求項6に記載のステントであって、R’がHであり、RがCH−X−OHであり、そしてXが−CHである、ステント。
【請求項8】
請求項5に記載のステントであって、前記化合物が、以下:
【化3】


の形態を有し、Rが、CH−X−OHであり、Xが、1〜7個の炭素原子を含む、直鎖アルキル基である、ステント。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のステントであって、前記化合物が、50重量%〜75重量%の間の量でコーティング中に存在する、ステント。
【請求項10】
脈管損傷部位における再狭窄を抑制するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のステント。
【請求項11】
前記脈管損傷が、脈管領域が直径で少なくとも30%過度伸長する血管造影手順の間に生成される場合の使用のための、請求項10に記載のステント。
【請求項12】
脈管損傷部位に配置し、該部位にて再狭窄を抑制するための脈管内ステントであって、該脈管内ステントが、以下:
1つ以上のフィラメントから形成される本体、
該1つ以上のフィラメント上に支えられる、ポリマー基材および以下:
【化4】


の形態の抗再狭窄化合物から構成される薬物放出コーティングであって、RがCH−X−OH、そしてXが1〜7個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基である、薬物放出コーティング、ならびに
該ステント本体フィラメントと該コーティングとの間に配置されるポリマーアンダーコーティングを含み、
該ステントは、該ステントがカテーテルを介して脈管損傷部位に送達され得る収縮した状態からステントコーティングが該損傷部位にて該脈管と接触して配置され得る拡張した状態まで拡張可能であり、該コーティングは、該部位にて再狭窄を抑制する量の化合物を放出するのに効果的である、脈管内ステント。
【請求項13】
請求項12に記載のステントであって、XがCHである、ステント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−279278(P2008−279278A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209130(P2008−209130)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【分割の表示】特願2003−587443(P2003−587443)の分割
【原出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【出願人】(504395257)バイオセンサーズ インターナショナル グループ、リミテッド (16)
【Fターム(参考)】