説明

虚像表示装置及び虚像表示装置の製造方法

【課題】ハードコート層を有して損傷の抑制や表面の汚れ除去ができ、かつ、光学特性を良好な状態に維持できる虚像表示装置及び虚像表示装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】導光装置20の作製において光折り曲げ用の反射膜であるハーフミラー層28が、被覆部材である透光本体部分24aすなわち光透過部材23によって覆われた状態で、ハードコート層CCが成膜されたものとなっている。従って、ハードコート層CCの成膜の前処理として、導光装置20を構成する導光本体部分20aや透光本体部分24aの表面を洗浄しても、これによってハーフミラー層28が剥がれるといった事態を回避し、ハーフミラー層28の光学特性が損なわれないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されており(例えば特許文献1、2等参照)、例えば導光板にホログラム素子を組み込んで、画像光と外界光とを重畳させることのできるシースルー光学系の提案がなされている(特許文献3参照)。また、ヘッドマウントディスプレイに関する技術ではないが、樹脂製の成形品の表面を保護するために、ハードコート層を設けることが一般に知られている(例えば特許文献4参照)。
【0003】
ヘッドマウントディスプレイにおいて、画像光を適切な状態で導くためには、画像光を反射等によって伝搬処理させる導光板の表面部分の状態を良好に保つ必要がある。従って、当該表面部分の損傷を防いだり、表面の汚れの除去を容易にしたりするためにハードコート層を設けることが考えられる。特に、シースルー型のヘッドマウントディスプレイ場合には、導光板のうち露出する部分が多くなりやすく、表面部分にハードコート層を設けることがより重要となる。ここで、ハードコート層の成膜においては、成膜直前の表面部分に付着物がない状態とするため、洗浄を行うのが一般的である。
【0004】
しかしながら、ヘッドマウントディスプレイの導光部分には、例えば上記特許文献3のホログラム素子のように導光のために種々の光学素子を設ける必要がある。このため、例えばハードコート層の成膜の前処理として洗浄をすると、導光部分に設けた光学素子が剥がれる等の事態が生じて、導光の性能等が劣化してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−172367号公報
【特許文献2】特開2000−249969号公報
【特許文献3】特開2007−240924号公報
【特許文献4】特開2009−51920号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、ハードコート層を有して損傷の抑制や表面の汚れ除去ができ、かつ、光学特性を良好な状態に維持できる虚像表示装置及び虚像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、(c2)光入射部から取り込まれた画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、(c3)導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する(c)導光装置と、を備え、(d)導光装置が、光入射部及び光射出部の少なくとも一方において画像光を折り曲げる反射部と、反射部を覆う被覆部材と、少なくとも第1及び第2の全反射面を含む画像光の導光する面を保護するハードコート層とを有し、(e)ハードコート層が、少なくとも光入射部、導光部及び光射出部を構成する導光本体部分と、光折り曲げ用の上記反射部を被覆した状態の被覆部材とを含む部材全体のうち、少なくとも画像光の導光する面を覆っている。
【0008】
上記虚像表示装置では、導光を行うために導光装置内に組み込まれる光学素子である光折り曲げ用の反射部が被覆部材によって被覆された状態で、ハードコート層が成膜されたものとなっている。従って、例えば虚像表示装置の作製においてハードコート層の成膜の前処理として、導光装置を構成する導光本体部分の表面を洗浄しても、これによって光折り曲げ用の反射部が剥がれるといった事態を回避し、当該反射部の光学特性が損なわれないようにすることができる。以上から、虚像表示装置は、ハードコート層を有することにより損傷の抑制や表面の汚れの簡易な除去ができ、かつ、光学特性を良好な状態に維持できるものとなる。なお、上記の反射部には、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる種々のものが含まれる。つまり、反射部には、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される半透過反射膜のみならず、半透過反射性を有する半透過部材や、半透過性のシート、特定波長の光に対してのみ作用し他の波長の光を透過させるホログラム素子等の種々の半透過性の反射部(半透過反射部)が含まれるものとする。
【0009】
本発明の具体的な側面では、上記光折り曲げ用の反射部が、光射出部側に設けられて画像光を外部へ取出すとともに外界光を透過させる反射膜である。この場合、反射膜により画像光を反射するとともに外界光を透過させるシースルー観察が可能となる。
【0010】
本発明の別の側面では、被覆部材が、光射出部に接合されることで反射膜を覆うとともに外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材である。この場合、透視部によりシースルー観察において歪みのない状態とすることが可能となる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、導光装置が、光入射部側においてハードコート層上に設けられて画像光を導光部へ導くミラー膜を有する。この場合、ミラー膜は、ハードコート層の成膜後に形成されるものとなる。従って、ハードコート層の成膜時の洗浄等の影響のない良好な状態のミラー膜を成膜できる。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る第2の虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、(c2)光入射部から取り込まれた画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、(c3)導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する(c)導光装置と、を備え、(d)導光装置が、少なくとも第1及び第2の面を含む画像光の導光する面を保護するハードコート層と、光入射部及び光射出部の少なくとも一方において画像光を折り曲げる反射部とを有し、(e)ハードコート層が、少なくとも光入射部、導光部及び光射出部を構成する導光本体部分を含む部材全体のうち、少なくとも画像光の導光する面を覆っており、光折り曲げ用の上記反射部が、ハードコート層上に形成されている。
【0013】
上記虚像表示装置では、ハードコート層の成膜がなされた後に、光折り曲げ用の反射部が形成されるものとなる。従って、例えば虚像表示装置の作製においてハードコート層の成膜の前処理として、導光装置を構成する導光本体部分の表面を洗浄しても、これによって光折り曲げ用の反射部が剥がれるといった事態が生じず、当該反射部の光学特性が損なわれないようにすることができる。以上から、虚像表示装置は、ハードコート層を有して損傷の抑制や表面の汚れ除去ができ、かつ、光学特性を良好な状態に維持できるものとなる。
【0014】
本発明の具体的な側面では、上記光折り曲げ用の反射部が、光射出部側に設けられて画像光を外部へ取出すとともに外界光を透過させる反射膜である。この場合、画像光を反射するとともに外界光を透過させる反射膜を保護することで、良好なシースルー観察が可能となる。
【0015】
本発明の別の側面では、導光装置が、光射出部に接合されることで外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材を有する。この場合、透視部によりシースルー観察において歪みのない状態とすることが可能となる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、上記光折り曲げ用の反射部が、光入射部側に設けられて画像光を導光部へ導くミラー膜である。この場合、ミラー膜を保護することで、良好な画像光の伝達を行うことができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、ハードコート層が、コート材をディップ処理によって塗布することで形成される。この場合、ハードコート層の成膜時の洗浄等の影響を回避して良好な状態のミラー膜を成膜できる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、導光部が、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする上記第1の面と上記第2の面とを有し、光入射部が、第1の面に対して所定の角度をなす第3の面を有し、光射出部が、第1の面に対して所定の角度をなす第4の面を有する。この場合、反射回数の異なる画像光を同時に合成して1つの虚像を形成する画像光として取り出して、光射出部越しに観察される虚像の表示サイズを大きく確保することができる。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の虚像表示装置の製造方法は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と(c2)光入射部から取り込まれた画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と(c3)導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と(c4)光入射部及び光射出部の少なくとも一方において画像光を折り曲げる反射部と(c5)反射部を覆う被覆部材と(c6)少なくとも第1及び第2の面を含む画像光の導光する面を保護するハードコート層とを有する(c)導光装置と、を備える虚像表示装置の製造方法であって、(d)光折り曲げ用の反射部を光入射部又は光射出部のうち少なくとも一方を構成する導光本体部分に作製する反射部作製工程と、(e)反射部作製工程において作製された反射部を被覆部材によって被覆する被覆工程と、(f)少なくとも光入射部、導光部及び光射出部を構成する導光本体部分と、被覆工程において光折り曲げ用の反射部を覆った状態の被覆部材とを含む部材全体を覆うハードコート層を成膜するハードコート層成膜工程と、を有する。
【0020】
上記虚像表示装置の製造方法では、反射部作製工程で作製された光折り曲げ用の反射部を、被覆工程において被覆部材で覆った状態とし、光折り曲げ用の反射部に影響が及ばない状態で、ハードコート層成膜工程においてハードコート層を成膜できる。従って、ハードコート層成膜工程において、成膜の前処理として、導光装置を構成する導光本体部分の表面を洗浄しても、これによって光折り曲げ用の反射部が剥がれるといった事態を回避し、当該反射部の光学特性が損なわれないようにすることができる。以上から、この製造方法によって作製される虚像表示装置は、ハードコート層を有して損傷の抑制や表面の汚れ除去ができ、かつ、光学特性を良好な状態に維持できるものとなる。
【0021】
上記課題を解決するため、本発明に係る第2の虚像表示装置の製造方法は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と(c2)光入射部から取り込まれた画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と(c3)導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と(c4)少なくとも第1及び第2の面を含む画像光の導光する面を保護するハードコート層と(c5)光入射部及び光射出部の少なくとも一方において画像光を折り曲げる反射部とを有する(c)導光装置と、を備える虚像表示装置の製造方法であって、(d)少なくとも光入射部、光射出部及び導光部を構成する導光本体部分を含む部材全体を覆うハードコート層を成膜するハードコート層成膜工程と、(e)ハードコート層成膜工程において成膜されたハードコート層のうち光入射部及び光射出部の少なくとも一方を構成する導光本体部分上に画像光を折り曲げる反射部を作製する反射部作製工程と、を有する。
【0022】
上記虚像表示装置では、ハードコート層成膜工程においてハードコート層の成膜がなされた後に、反射部作製工程においてハードコート層上に光折り曲げ用の反射部が形成される。従って、ハードコート層成膜工程において、ハードコート層の成膜の前処理として、導光装置を構成する導光本体部分の表面を洗浄しても、これによって光折り曲げ用の反射部が剥がれるといった事態が生じず、当該反射部の光学特性が損なわれないようにすることができる。以上から、この製造方法によって作製される虚像表示装置は、ハードコート層を有して損傷の抑制や表面の汚れ除去ができ、かつ、光学特性を良好な状態に維持できるものとなる。
【0023】
本発明の具体的な側面では、ハードコート層成膜工程において、ハードコート層となるべきコート材をディップ処理によって塗布するディップ処理工程を含む。この場合、製造される導光装置の形状が比較的複雑であっても、所望の厚さの膜を均一に成膜できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の平面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は、縦の第1方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第2方向に関する光路を展開した概念図である。
【図4】虚像表示装置の光学系における光路を具体的に説明する平面図である。
【図5】(A)は、液晶表示デバイスの表示面を示し、(B)は、観察者に見える液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図であり、(C)及び(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。
【図6】(A)は、導光装置の構造を示す断面図であり、(B)は、導光部材の本体部分を示す図であり、(C)は、反射膜を施した状態を示す図であり、(D)は、導光部材と光透過部材とを接合する工程を示す図であり、(E)は、導光部材と光透過部材とを接合した状態を示す図であり、(F)は、ハードコート層及びミラー膜を施した状態を示す図である。
【図7】(A)は、第2実施形態の虚像表示装置に係る導光装置の構造を示す断面図であり、(B)は、導光部材の本体部分を示す図であり、(C)は、ハードコート層を施した状態を示す図であり、(D)は、反射膜及びミラー膜を施した状態を示す図であり、(E)は、導光部材と光透過部材とを接合する工程を示す図であり、(F)は、導光部材と光透過部材とを接合した状態を示す図である。
【図8】(A)は導光部材の正面図であり、(B)は導光部材の下面図であり、(C)は導光部材の左側面図であり、(D)は導光部材の右側面図である。
【図9】(A)は光透過部材の裏面図であり、(B)は光透過部材のBB断面図であり、(C)は光透過部材の左側面図であり、(D)は光透過部材の右側面図である。
【図10】第1実施形態の虚像表示装置を構成する第1表示装置の変形例を示す図である。
【図11】(A)は、第2実施形態の虚像表示装置を構成する第1表示装置の変形例を示す図であり、(B)は、第1表示装置の別の変形例を示す図である。
【図12】第1実施形態の虚像表示装置を構成する第1表示装置のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0026】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す本実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121のヨロイからテンプルにかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0027】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0028】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0029】
照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0030】
液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、投射光学系12を通る第1光軸AX1と、後述する導光部材21の第3反射面21cに平行な特定線とを含む縦断面の延びる方向に対応し、第2方向D2は、上記第1光軸AX1と、上記第3反射面21cの法線とを含む横断面の延びる方向に対応する。つまり、液晶表示デバイス32の位置において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のX方向に相当する。
【0031】
導光装置20は、導光部材21と光透過部材23とを接合したものであり、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0032】
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面を構成する第1の面から第4の面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第4反射面21dとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3、及び第4反射面21a,21b,21c,21dに隣接するとともに互いに対向する第1の側面(上面)21eと第2の側面(下面)21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第4反射面21dは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。第3反射面21cを通る 第1光軸AX1と第4反射面21dを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、以下に詳述するが、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
【0033】
導光部材21は、対向して延びる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返される横方向すなわち閉じ込め方向DW2は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(Z軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当する。一方、導光に際して反射によって折り返されないで伝搬する縦方向すなわち非閉じ込め方向DW1は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。なお、導光部材21において、伝搬される光束が全体として向かう主導光方向は、−X方向になっている。
【0034】
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分である導光本体部分20aとし、導光本体部分20aは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。このように導光部材21は、導光本体部分20aを一体形成品とするが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0035】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域全体に、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導く。第3反射面21cを形成するため、光入射部B1には、反射用のミラー層25(ミラー膜)が形成されている。このミラー層25は、導光部材21の導光本体部分20aの斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。なお、ミラー層25は、上述のように、第3反射面21cとなるべき面に重なるようにアルミ等を成膜することで形成されており、光入射部B1に外光等が透過して入り込むことがないような構成となっている。
【0036】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。つまり、第1及び第2反射面21a,21bは、上述したミラー層25や後述するハーフミラー層28と異なり、導光部B2と外部の空気層との界面で画定され、当該界面での屈折率差を利用して高効率に光の導光を行っている。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aは、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通の面部分となっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、ミラー層等の反射コートが施されていないが、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、表面コート層であるハードコート層CCで被覆されている。原則として、ハードコート層CCが露出する最表面を形成するものとするが、必要であれば、図示のように、ハードコート層CC上にさらに反射防止コートARで被覆することもできる。この場合、反射防止コートARは、表面での反射を防止するとともに、例えばハードコート層CCと協働してハードコートとしての性能をより高めるマルチコートとして機能する。
【0037】
光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向すなわち光射出部B3を設けた+Z側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0038】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第4反射面21dとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための裏側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第4反射面21dは、矩形の平坦面であり、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるとともに外界光を透過させる。第4反射面21dを形成するため、光射出部B3には、反射部(半透過反射部)であるハーフミラー層28が形成されている。つまり、このハーフミラー層28は、画像光を折り曲げる光折り曲げ用の反射膜であるとともに、外界光を透過させる光透過性を有する半透過反射膜である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、導光部材21のうち第4反射面21dを構成する斜面RR上に例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を重なるように成膜することで形成される。なお、ハーフミラー層28上に、後述する光透過部材23が配置されることで、シースルーが可能となる。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL'の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
【0039】
第4反射面21dは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。また、第4反射面21dは、外界光GL'を部分的に透過させ光射出面OSを通過させる面でもあり、半透過半反射面である。なお、第4反射面21dを透過した画像光の成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0040】
光透過部材23は、導光部材21の本体と同一の材料で構成され同一の屈折率を有し、第1面23aと、第2面23bと、第3面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、XY面に沿って延びる。また、第3面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第3面23cとに挟まれた楔状の部材を有するものとなっている。光透過部材23は、導光部材21と同様に、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材であり、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。なお、光透過部材23の表面には、導光部材21と共通してハードコート層CCが施されている。
【0041】
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置され、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置され、観察者の眼EYから遠い表側にある。第3面23cは、接着剤によって導光部材21の第4反射面21dに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面23aと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第4反射面21dとのなす角度εと等しくなっており、第2面23bと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
【0042】
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL'を高い透過率で透過させる。第3面23cも、外界光GL'を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dがハーフミラー層28を有していることから、第3面23cを通過する外界光GL'は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL'とを重畳させたものを観察することになる。
【0043】
ここで、導光装置20の露出面を被覆するハードコート層CCは、接合された導光部材21及び光透過部材23の表面を構成する要素であり、導光部材21の導光本体部分20aと光透過部材23の透光本体部分24aとを接合した後に、両者の表面を一括して種々の樹脂材料からなるハードコート剤を成膜することで形成されている。より具体的には、ハードコート層CCは、導光装置20のうち、光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3となるべき部分を含む導光本体部分20aと、導光本体部分20a側に成膜されたハーフミラー層28を被覆した状態となるように導光本体部分20aに接合された透光本体部分24aとを一体のものとする部材全体を覆っている。これにより、このハードコート層CCは、第1及び第2反射面21a,21bといった導光に寄与する面を覆うことで、損傷から防いだり汚れの除去を容易にしたりするといった機能を果たすものとなっている。特に、虚像表示装置100のように透視部B4を有するタイプでは、ハードコートを設けることは、良好なシースルー観察を確保する上で重要であるが、虚像表示装置100の作製のうちハードコートの成膜に際しては、その性能確保のために成膜前の洗浄が必要となる。一方、虚像表示装置100を構成する導光部材21等には、ハーフミラー層28等の光学素子が設けられており、洗浄等を行うと、これらの光学素子の性能が劣化する可能性がある。本実施形態では、ハードコート層CCの成膜時において、ハーフミラー層28を被覆部材である透光本体部分24aで覆い保護しておくことで、洗浄等から影響を受けないようにしている。
【0044】
〔C.画像光の光路の概要〕
図3(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0045】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φの上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ(|φ|=|φ|)の下方向から傾いて入射する。以上の角度φ,φは、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0046】
図3(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向(閉じ込め方向又は合成方向)D2の光路を説明する図である。第2方向D2(閉じ込め方向又は合成方向)に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GLcとし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GLdとする。図3(B)中には、参考のため、右寄り内側のから射出される画像光GLeと、左寄り内側のから射出される画像光GLfとを追加している。
【0047】
右側の第1表示点P1からの画像光GLcは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θの右方向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GLdは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ(|θ|=|θ|)の左方向から傾いて入射する。以上の角度θ,θは、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0048】
なお、第2方向D2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GLc,GLdが反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GLc,GLdが導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GLc,GLdの導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GLcの射出角度θ'と左側の画像光GLdの射出角度θ'とは異なるものに設定されている。
【0049】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GLc,GLdは、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0050】
〔D.横方向に関する画像光の光路〕
図4は、第1表示装置100Aにおける具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、3つのレンズL1,L2,L3を有している。
【0051】
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θの傾きで平行光束として射出される。
【0052】
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θの傾きで平行光束として射出される。
【0053】
図4において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS'を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS"を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS',IS"の近傍に存在する投射光学系12のレンズL3を重ねて観察していることになる。
【0054】
図5(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図5(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図5(C)及び5(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図5(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図5(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図5(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図5(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
【0055】
図5(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図5(B)に示す重複画像SIを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像SIについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。
【0056】
以上では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1部分領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2部分領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
【0057】
〔E.虚像表示装置の作製工程〕
以下、図6(A)〜6(F)により、本実施形態に係る虚像表示装置の作製工程について説明する。ここでは、各製造工程のうち特徴的な部分である導光部材21と光透過部材23との接合の前後における導光装置20の作製工程について説明する。図6(A)は、各工程を経て製造された導光装置20の構造を示す断面図であり、図6(B)〜6(F)に図6(A)の構造を作製するための各工程を示している。
【0058】
まず、図6(B)に示すように、導光部材21の光入射部B1、導光部B2及び光射出部B3を構成する導光本体部分20aが準備される。導光本体部分20aは、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されるが、ここでは、例えばメタクリルスチレン等を材料として射出成型によって成形されるものとする。導光本体部分20aは、導光部材21の第1〜第4反射面21a,21b,21c,21d(図6(A)等参照)を形成すべき部分である第1〜第4面SFa,SFb,SFc,SFdを有する。
【0059】
次に、図6(C)に示すように、導光本体部分20aの面SFa,SFb,SFc,SFdのうち、斜面RRである第4面SFdの面上において、画像光の反射及び外界光の透過のために必要な領域に銀等を蒸着することによってハーフミラー層28が成膜され、半透過面である第4反射面21dが形成される(反射部作製工程)。
【0060】
次に、図6(D)に示すように、導光部材21となるべき導光本体部分20aに接合する光透過部材23となるべき透光本体部分24aが準備される。透光本体部分24aは、導光部材21の第1及び第2面23a,23b(図6(A)等参照)を形成すべき部分である第1及び第2平坦面MFa,MFbを有する。また、透光本体部分24aは、導光本体部分20aの第4反射面21dに対向する対向面である第3面23cを有している。
【0061】
次に、図6(E)に示すように、導光部材21となるべき導光本体部分20aの第4反射面21dに、光透過部材23となるべき透光本体部分24aの第3面23cが、接着剤等により貼り合わされることで、両者が接合される(接合工程)。違う見方をすれば、第4反射面21dのハーフミラー層28が、被覆部材である透光本体部分24aによって被覆される(被覆工程)。
【0062】
次に、図6(F)に示すように、接合された状態にある導光本体部分20aと透光本体部分24aとのうち露出している表面全体に表面コート層であるハードコート層CCが成膜される。ハードコート層CCは、例えばディップ処理によってコート材を塗布することで(ディップ処理工程)、導光本体部分20a及び透光本体部分24aの表面全体にほぼ均一な膜厚で形成される(ハードコート層成膜工程)。これにより、導光本体部分20aの第1及び第2面SFa,SFbを覆うことで第1及び第2反射面21a,21bが形成される。さらに、斜面RSである第3面SFc上において、ハードコート層CCの上にアルミ等を蒸着することでミラー膜であるミラー層25が成膜され第3反射面21cが形成される(ミラー層成膜工程)。以上により、導光本体部分20aにハードコート層CC及びミラー層25が成膜された導光部材21と、透光本体部分24aにハードコート層CCが成膜された光透過部材23とが一体化した状態で作製される。ここで、ハードコート層CCの成膜において、導光本体部分20a及び透光本体部分24aの表面にごみ等が付着すると、損傷から防いだり汚れの除去を容易にしたりするといったハードコートとしての機能が果たせなくなくなる恐れがある。このため、成膜の前処理として導光本体部分20a及び透光本体部分24aの表面部分の洗浄がなされる。この際、ハーフミラー層28は、被覆部材である透光本体部分24aによって覆われた状態となっているため、洗浄によってハーフミラー層28が剥がれたり欠けたりする、あるいは洗浄剤により化学的作用を受けるといった事態を回避することができるものとなっている。なお、ミラー層25の形成については、ハードコート層CCを成膜した後になされるので、ハードコート層CCの成膜時の洗浄等の影響を受けることなく良好な状態で成膜できる。
【0063】
以上により、図6(A)に示す構造を有する導光装置20が作製される(導光装置作製工程)。さらに、必要であればミラー層成膜工程後に反射防止コートARを成膜することも可能である。なお、ミラー層25については、例えばフレーム121(図1参照)を保護カバーとすること等によって保護される。
【0064】
上述したハードコート層成膜工程において、ハードコート層CCの膜厚は、5μm程度とすることが望ましい。これにより、ハードコート層CCを成膜後の形状が、成膜前の導光本体部分20aと透光本体部分24aとを接合してできる形状を維持したものとなり、かつ、ハードコート層CCが導光本体部分20a及び透光本体部分24aを損傷から防いだり汚れの除去を容易にしたりするといったハードコートとしての機能できる程度の厚さを有するものとなる。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100では、導光装置20の作製において導光を行うために導光装置内に組み込まれる光学素子である光折り曲げ用の反射膜であるハーフミラー層28が、被覆部材である透光本体部分24aすなわち光透過部材23によって覆われた状態で、ハードコート層CCが成膜されたものとなっている。従って、例えば虚像表示装置100の作製においてハードコート層CCの成膜の前処理として、導光装置20となるべき導光本体部分20aや透光本体部分24aの表面を洗浄しても、これによってハーフミラー層28が剥がれるといった事態を回避し、ハーフミラー層28の光学特性が損なわれないようにすることができる。以上から、虚像表示装置100は、ハードコート層CCを有して損傷の抑制や表面の汚れ除去ができ、かつ、ハーフミラー層28の光学特性を良好な状態に維持できる。特に上記の場合、被覆部材が光透過性の光透過部材23であり、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0066】
また、以上では、光射出部側において、光折り曲げ用の反射部を被覆部材で覆うものとしているが、これに限らず、光入射部側において、光折り曲げ用の反射部を被覆部材で覆うものとすることもできる。具体的には、上記では、光射出部B3側において、光折り曲げ用の反射部をハーフミラー層28とし、被覆部材を透光本体部分24aすなわち光透過部材23として、ハーフミラー層28を光透過部材23で覆って保護するものとしているが、本実施形態はこれに限らない。例えば、光入射部B1側において、ミラー膜であるミラー層25は、画像光を折り曲げる光折り曲げ用の反射部である。つまり、光折り曲げ用の反射部をミラー層25とし、図6(C)において第3面SFcにミラー層25を成膜し、ミラー層25を被覆する被覆部材を別途設けた状態でハードコート層CCを成膜するものとしてもよい。ミラー層25を保護することで、良好な画像光の伝達を行うことができる。
【0067】
また、以上のようにして作製される導光装置20の導光部材21について、例えば反射防止コートARを施さない場合には、第1及び第2反射面21a,21bは、最表層に位置するハードコート層CCと空気層との界面によって形成される(図6(F)参照)。また、第3反射面21cは、ミラー層25と第3面SFcとの界面によって形成される(図6(A)参照)。また、第4反射面21dは、ハーフミラー層28と第4面SFdとの界面によって形成される(図6(A)参照)。なお、図6(A)に示すように、反射防止コートARを成膜する場合には、反射防止コートARと空気層との界面を、第1及び第2反射面21a,21bとすることができる。
【0068】
なお、第1及び第2反射面21a,21bでの全反射は、ハードコート層CCの屈折率の設定によっており、上述のように、ハードコート層CCと空気層との界面すなわちハードコート層CCの表面側で生じさせることもできるが、ハードコート層CCの内側である面SFa,SFbで生じさせることもできる。つまり、第1及び第2反射面21a,21bとして実質的に機能する面を、面SFa,SFbとすることもハードコート層CCの表面とすることもできる。導光部B2においてどの面が画像光の導光に寄与する面である第1及び第2反射面21a,21bになる場合であっても、第1及び第2反射面21a,21bを保護しているのは、ハードコート層CCである。
【0069】
〔第2実施形態〕
以下、図7(A)〜7(F)により、第2実施形態に係る虚像表示装置の作製工程について説明することで、本実施形態の虚像表示装置を説明する。なお、本実施形態の虚像表示装置200は、第1実施形態の虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様であるので、虚像表示装置200を構成する導光装置220の構造以外については、図示及び説明を省略する。図7(A)は、各工程を経て製造された導光装置220の構造を示す断面図であり、図7(B)〜7(F)に図7(A)の構造を作製するための各工程を示している。
【0070】
まず、図7(B)に示すように、導光部材221となるべき導光本体部分20aが準備される。次に、図7(C)に示すように、導光本体部分20aのうち露出している表面全体に表面コート層であるハードコート層CC1が例えばディップ処理によって成膜される(ハードコート層成膜工程)。これにより、導光本体部分20aの第1及び第2面SFa,SFbを覆うことで第1及び第2反射面21a,21bが形成される。
【0071】
次に、図7(D)に示すように、斜面RRである第4面SFdの面上において、ハードコート層CCの上に半透過反射膜であるハーフミラー層28が成膜され第4反射面21dが形成され(反射部作製工程)、斜面RSである第3面SFc上において、ハードコート層CCの上にミラー膜25が成膜され第3反射面21cが形成される(反射部作製工程)。以上により、導光部材221が作製される(導光部材準備工程)。
【0072】
次に、図7(E)に示すように、導光部材221に接合する光透過部材223が準備される(光透過部材準備工程)。光透過部材223は、透光本体部分24aにハードコート層CC2が例えばディップ処理によって成膜されて形成される。ハードコート層CC2は、ハードコート層CC1と同一の材料で構成されている。なお、導光部材221の第4反射面21dには、第3面23c(対向面)が対向している。
【0073】
次に、図7(F)に示すように、導光部材221に光透過部材223が接着剤等により貼り合わされることで、両者が接合される(接合工程)。この場合、ハードコート層CC1のうち、第4反射面21dの下地となる部分は、光透過部材23が接合された状態では装置の内部側に存在する中間層となる。ハードコート層CC1のうち、第1及び第2面SFa,SFbを覆う部分は、露出する表面を形成する表面コート層となる。
【0074】
以上により、図7(A)に示す構造を有する導光装置120が作製される(導光装置作製工程)。さらに、必要であれば接合工程後に反射防止コートARを成膜することも可能である。なお、ミラー層25については、例えばフレーム121(図1参照)を保護カバーとすること等によって保護される。
【0075】
本実施形態では、導光装置220の作製において、導光部材221を構成するハードコート層CC1の成膜がなされた後に、光折り曲げ用の反射部であるミラー層25及びハーフミラー層28が形成されるものとなる。従って、例えば虚像表示装置200の作製においてハードコート層CC1の成膜の前処理として、導光装置となるべき導光本体部分20aの表面を洗浄しても、これによってミラー層25やハーフミラー層28が剥がれるといった事態が生じず、ミラー層25及びハーフミラー層28の光学特性が損なわれないようにすることができる。以上から、虚像表示装置200は、ハードコート層CC1やハードコート層CC2を有して損傷の抑制や表面の汚れ除去ができ、かつ、ハーフミラー層28の光学特性を良好な状態に維持できるものとなる。特に上記の場合、光透過部材223が光透過性であり、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0076】
また、本実施形態の場合、接合部分は、同一の材料で構成されるハードコート層CC1,CC2によって形成されているので、当該材料を接着するのに適した接着剤を用いることで、必要に足る接着力を確保することができる。従って、導光部材221の導光本体部分20a及び光透過部材223の透光本体部分24aの材料として、直接接合することが一般に困難とされているシクロオレフィンポリマーを用いることができる。シクロオレフィンポリマーを用いた場合、導光部材221や光透過部材223の高い光透過性を持たせ、かつ、吸湿性を特に抑制でき、より良好な状態でのシースルー観察が可能となる。また、この場合、導光本体部分20aと透光本体部分24aとで材料が異なるものとしても必要に足る接着力を確保することができる。
【0077】
〔F.その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0078】
上記実施形態では、虚像表示装置100をシースルータイプのものとして説明しているが、本発明は、シースルーでないタイプのヘッドマウントディスプレイにおいても適用することができる。
【0079】
光透過部材23,223の形状は、導光部材21,221を横すなわちX方向に延長するものに限らず、導光部材21を上下から挟むように拡張した部分を含むものとできる。例えば、図8(A)〜8(D)及び図9(A)〜9(D)に示すような導光部材21,221及び光透過部材23,223の組み合わせが考えられる。なお、これらの比較的複雑な形状の導光部材21及び光透過部材23であっても、例えばディップ処理によってハードコート層CC,CC1,CC2を成膜することで、全体に比較的薄い膜を均一に成膜できる。なお、ハードコート層CC,CC1,CC2の成膜方法については、ディップ処理に限らず、通常のコート方式やスプレー方式、ロールコート方式、湿式・乾式のコート方式等も適用可能である。導光部材21等の形状が比較的単純な場合には、上記のような種々の方法で、所望の膜厚のハードコート層CC,CC1,CC2を形成できる。
【0080】
上記実施形態では、半透過反射部であるハーフミラー層28を、例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される半透過反射膜としているが、これに限らず、半透過反射性を有する半透過部材や、半透過性のシート等によって半透過反射部を構成するものとしてもよい。また、例えば図10及び図11(A)に示すように、第1表示装置100A,200Aにおいて、ミラー層25やハーフミラー層28(図2(A)等参照)に代えて、ホログラム素子HE1,HE2によって第3反射面21cや第4反射面21dを形成するものとしてもよい。つまり、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる半透過反射部をホログラム素子HE2で構成するものとしてもよい。この場合、画像表示装置11は、光源として、例えば3色の光束を発生するLED光源を有し、ホログラム素子HE1,HE2は、当該3色に応じた3層構造のホログラム層を有するものとする。これにより、ホログラム素子HE1,HE2は、第3反射面21cや第4反射面21dの近辺に形成された仮想的なミラーとして、画像表示装置11からの各色光を所望の方向に反射させる機能を有するものとなる。つまり、ホログラム素子825は、画像光の反射方向の調整を可能とする。また、ホログラム素子HE1,HE2を用いる場合、各色光を所望の方向に反射できる。従って、例えば図11(B)に示すように、第1表示装置200Aの変形例として、第3及び第4反射面21c,21dを第1反射面21aに対して傾斜させることなく、第2反射面21bを延長した第1反射面21aに平行な面上にホログラム素子HE1,HE2を形成する構成とすることもできる。なお、ホログラム素子HE2は、特定波長帯の光に対してのみ作用し他の波長帯の光を透過させるため、外界光を通過させてシースルー観察が可能となっている。
【0081】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、平面ミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、図12に示すように、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材1125を用いることができ、このリレー部材1125の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。なお、導光部B2を構成する導光体26には、画像光GLを反射によって伝搬させる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bが設けられているが、これらの反射面21a,21bは、互いに平行である必要はなく、曲面とすることもできる。なお、ここでは、曲面についても略沿って延びる面については、互いに対向して延びる面として取り扱うものとする。
【0082】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0083】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図5(B)等に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0084】
上記実施形態では、画像表示装置11として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像表示装置11としては、透過型の液晶表示デバイス32に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置11として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
【0085】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光装置20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0086】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光入射面ISを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0087】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0088】
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【0089】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、光学パネル110は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。
【符号の説明】
【0090】
10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20…導光装置、 20a…本体部分、 21,221…導光部材、 21a,21b,21c,21d…反射面、 21e…第1の側面(上面)、 21f…第2の側面(下面)、 21h…端面、 23,223…光透過部材(被覆部材)、 23a,23b,23c…面、 24a…透光本体部分(被覆部材)、 25…ミラー層(反射膜)、 28…ハーフミラー層(反射膜、半透過反射膜)、 31…照明装置、 32…液晶表示デバイス、 32b…表示領域、 34…駆動制御部、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 121…フレーム、 131,132…駆動部、 AX1…第1光軸、 AX2…第2光軸、 B1…光入射部、 B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 CC…接着層、 EY…眼、 FS…平坦面、 GL…画像光、 GL'…外界光、 GL11,GL12,GL21,GL22…画像光、 IM1,IM2…投射像、 IS…光入射面、 L1,L2,L3…レンズ、 OS…光射出面、 P1…表示点、 P2…表示点、 SL…照明光、 CC,CC1,CC2…ハードコート層、 AR…反射防止コート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光装置と、
を備え、
前記導光装置は、前記光入射部及び前記光射出部の少なくとも一方において前記画像光を折り曲げる反射部と、前記反射部を覆う被覆部材と、少なくとも前記第1及び第2の面を含む前記画像光の導光する面を保護するハードコート層とを有し、
前記ハードコート層は、少なくとも前記光入射部、前記導光部及び前記光射出部を構成する導光本体部分と、光折り曲げ用の前記反射部を被覆した状態の前記被覆部材とを含む部材全体のうち、少なくとも前記画像光の導光する面を覆っている、虚像表示装置。
【請求項2】
光折り曲げ用の前記反射部は、前記光射出部側に設けられて前記画像光を外部へ取出すとともに前記外界光を透過させる反射膜である、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記光射出部に接合されることで前記反射膜を覆うとともに外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材である、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記導光装置は、前記光入射部側において前記ハードコート層上に設けられて前記画像光を前記導光部へ導くミラー膜を有する、請求項2及び3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光装置と、
を備え、
前記導光装置は、少なくとも前記第1及び第2の面を含む前記画像光の導光する面を保護するハードコート層と、前記光入射部及び前記光射出部の少なくとも一方において前記画像光を折り曲げる反射部とを有し、
前記ハードコート層は、少なくとも前記光入射部、前記導光部及び前記光射出部を構成する導光本体部分を含む部材全体のうち、少なくとも前記画像光の導光する面を覆っており、光折り曲げ用の前記反射部は、前記ハードコート層上に形成されている、虚像表示装置。
【請求項6】
光折り曲げ用の前記反射部は、前記光射出部側に設けられて前記画像光を外部へ取出すとともに前記外界光を透過させる反射膜である、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記導光装置は、前記光射出部に接合されることで外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材を有する、請求項6に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
光折り曲げ用の前記反射部は、前記光入射部側に設けられて前記画像光を前記導光部へ導くミラー膜である、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記ハードコート層は、コート材をディップ処理によって塗布することで形成される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記導光部は、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする前記第1の面と前記第2の面とを有し、
前記光入射部は、前記第1の面に対して所定の角度をなす第3の面を有し、
前記光射出部は、前記第1の面に対して所定の角度をなす第4の面を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
画像光を形成する画像表示装置と、前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と前記光入射部から取り込まれた前記画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と前記光入射部及び前記光射出部の少なくとも一方において前記画像光を折り曲げる反射部と前記反射部を覆う被覆部材と少なくとも前記第1及び第2の面を含む前記画像光の導光する面を保護するハードコート層とを有する導光装置と、を備える虚像表示装置の製造方法であって、
光折り曲げ用の前記反射部を前記光入射部又は前記光射出部のうち少なくとも一方を構成する導光本体部分に作製する反射部作製工程と、
前記反射部作製工程において作製された前記反射部を前記被覆部材によって被覆する被覆工程と、
少なくとも前記光入射部、前記導光部及び前記光射出部を構成する導光本体部分と、前記被覆工程において光折り曲げ用の前記反射部を被覆した状態の前記被覆部材とを含む部材全体を覆う前記ハードコート層を成膜するハードコート層成膜工程と、
を有する虚像表示装置の製造方法。
【請求項12】
画像光を形成する画像表示装置と、前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と前記光入射部から取り込まれた前記画像光を第1及び第2の面での全反射により導く導光部と前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と少なくとも前記第1及び第2の面を含む前記画像光の導光する面を保護するハードコート層と前記光入射部及び前記光射出部の少なくとも一方において前記画像光を折り曲げる反射部とを有する導光装置と、を備える虚像表示装置の製造方法であって、
少なくとも前記光入射部、前記光射出部及び前記導光部を構成する導光本体部分を含む部材全体を覆う前記ハードコート層を成膜するハードコート層成膜工程と、
前記ハードコート層成膜工程において成膜された前記ハードコート層のうち前記光入射部及び前記光射出部の少なくとも一方を構成する導光本体部分上に前記画像光を折り曲げる反射部を作製する反射部作製工程と、
を有する虚像表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記ハードコート層成膜工程において、前記ハードコート層となるべきコート材をディップ処理によって塗布するディップ処理工程を含む、請求項11及び12のいずれか一項に記載の虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−61593(P2013−61593A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201464(P2011−201464)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】