説明

虫除け用光線遮蔽コ−テング剤

【課題】
350〜400nmの虫が感じる光線を効果的に遮蔽し、プラスチックやガラス面に均一に塗り易く、光安定性、及び耐水性にすぐれた虫除け
用光線遮蔽コ−テング剤を提供すること。
【解決手段】
370〜430nmの波長領域に最大吸収を有する光線吸収剤、300〜370nmの波長領域に最大吸収を有する紫外線吸収剤、アクリル系ポリマ−、及び溶媒を含有してなる虫除け用光線遮蔽コ−テング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に外灯の外枠や住宅建築などの窓ガラスにコ−テングし、虫が感じる光線をコ−テング膜によって遮蔽することにより、夜間に蛍光等などの光線に向かって飛来する昆虫を防止することを目的として使用するプラスチック面やガラス面に適した虫除け用光線遮蔽用コ−テング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックやガラス表面に虫除け用被膜を形成するに適した虫除け用コ−テング剤には、虫が感じる光線遮蔽効果が優れていること、塗布した面ゆがみや塗りムラがないこと、光安定性にすぐれていること、耐水性を有すること等が求められる。最近、虫除けを目的として紫外線を遮蔽するコ−テング剤が市販されるようになっている。しかしながらこれらコ−テング剤は虫に感じる光線の遮蔽効果が劣っていたり、耐水性が十分でなかったり等、上記すべての要求を満足させるものが無いのが現状である。
また、虫除け用光線遮蔽用コ−テング剤の技術として、下記特許文献1及び2が開示されている。いずれも虫除け効果のある物質、例えばピレステロイド、ガーリックオイル、樟脳油等をワックスやポリマ−の中に含有して塗布して使用するもので、かかる虫除け効果を示す物質は徐々に蒸発してしまい、時間がたつにつれて虫除け効果が無くなってしまう等の欠点がある。
【0003】
また、外灯や窓ガラスに使用する虫除け方法としてプラスチックフィルムのシ−トを貼り付けるタイプが市販されている.こうしたシ−トを貼るタイプは窓ガラスなど比較的大きな面積を有するフラット面に対しては施工しやすいが、外灯の外枠のように立体的な構造をしたものや蛍光管の様に曲率を持った面に貼るには施工がしにくい等の問題があり、十分に普及していないのが現状である。
【特許文献1】特開2000−107267号
【特許文献2】特開2000−128720号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、虫が感じる光線の遮蔽効果に優れ、塗りムラが生じず、光安定性、耐水性に優れ、かつ複雑な面に対して容易に施工可能な塗布して使用する虫除け用光遮蔽コ−テング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の成分を含有する虫除け用光線遮蔽コーテング剤が上記目的を達成し得るという知見を得た。本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、370〜430nmの波長領域に最大吸収を有する光線吸収剤、300〜370nmの波長領域に最大吸収を有する紫外線吸収剤、アクリル系ポリマ−、及び溶媒を含有することにより優れた虫よけ用光線遮蔽コ−テング剤組成物を提供するものである。
【0006】
本発明の作用機構は、以下のように推察される。
蛍光灯などが発する光の波長の領域で、虫が特に感じることができる特定の波長(340nm〜410nm)を、光線吸収剤と紫外線吸収剤を使用して効果的に吸収することにより、虫が感じる光を弱めることで光に集まる虫を防止することができるものと考えられる。
【発明の効果】
【0007】
数2の記載から明らかなように本発明によって形成された虫除け用光線遮蔽用コーテング被膜は虫が感じる紫外線を有効に遮蔽し、均一に塗りやすく、光安定性にすぐれ、かつ耐水性に優れていることが示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の虫除け用コ−テング剤についてさらに詳細に説明する。
本発明の虫除け用光線遮蔽用コ−テング剤は、370〜430nmの波長領域に最大吸収を有する光線吸収剤、300〜370nmの波長領域に最大吸収を有する紫外線吸収剤、アクリル系ポリマ−、及び溶媒を含有する。本発明に使用する370〜430nmの波長領域に最大吸収を有する光線吸収剤としてはアクリレ−ト系の光吸収剤が好適に使用される。上記光線吸収剤は必要に応じて2種以上使用することもできる。
【0009】
370〜430nmの波長領域に最大吸収を有する光線吸収剤の含有量は0.005〜1.0質量%であり、好ましくは、0.01〜0.1質量%である。0.005質量%以下になると400nm付近の波長の吸収が低下し、虫除け性能が低下する。一方1.0質量%以上になると性能が飽和するばかりか、コ−テング膜の色が黄色になり不具合が生じる。
【0010】
本発明に使用する300〜380nmの波長に最大吸収を有する紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾ−ル系の紫外線吸収剤やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が好適に使用することができる。必要に応じて上記紫外線吸収剤を2種以上併用しても良い。
【0011】
上記紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは、0.5〜5.0質量%である。0.1質量%以下になると350〜380nm付近の波長の吸収率が低下し防虫効果が低下する。一方10質量%以上になると効果が飽和し、コスト的に不利となる。
【0012】
本発明の虫除け用光線遮蔽コ−テング剤中の上記アクリル系ポリマ−としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸とアクリル酸エステルの共重合体が用いられる。特にアクリル酸とアクリル酸エステルの共重合体が好適に用いられる。
【0013】
本発明の虫除け用光線遮蔽コ−テング剤中のアクリル系ポリマ−の含有量は好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは、5〜20質量%である。1質量%以下になると塗布したときのコーテングの被膜厚みが十分でないため耐水性、光安定性が低下する弊害が生じる。一方30質量%以上になると液の粘性がアップしコーテング膜を均一に形成することが困難になる。
【0014】
本発明の虫除け用光線遮蔽コ−テング剤中の上記溶媒としては、上記光線吸収剤や紫外線吸収剤、アクリル系ポリマ−を溶かすことが必要となり、こうした溶媒としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、及び酢酸アミルなどの酢酸エステルが挙げられる。さらにプロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト等のグリコ−ルエ−テル系溶媒が好適に用いられる。
必要に応じて上記溶媒を併用することができる。
【0015】
本発明における虫除け用光線遮蔽コ−テング剤中の溶媒の含有量は60〜95質量%、さらに好ましくは、70〜90質量%である。60質量%以下になると液の粘性が高くなり均一なコ−テング膜が出来なくなる等の弊害が生じ、95質量%以上になると塗布したときコ−テング膜の厚みが薄くなり、被膜の耐水性、光安定性が劣る等の弊害が生じる。
【0016】
本発明の虫除け用光線遮蔽コ−テング剤には、上記成分に加え、更に必要に応じて上記以外の光安定剤、溶媒、成膜剤、レベリング剤、香料、色素等を使用することができる。
【0017】
本発明の本発明における虫除け用光線遮蔽コ−テング剤は、ボトル、スプレー缶及びエアゾール缶等に充填し、ガラス面やプラスチック面に塗布し、スポンジや布等により延展し、乾燥することにより用いられる。
【0018】
塗布量は特に限定されないが10g/m〜50g/mを塗布して乾燥することにより虫が感じる光線遮蔽効果が生じる。
【実施例1】
【0019】
ガラス容器中に酢酸エチルを58.18重量部、アクリレ−ト系光吸収剤:SV−35を0.02重量部、ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤:チヌビン1130を1.9重量部いれ、溶解し、さらにアクリル系ポリマ−:EX−2202を40重量部(ポリマ−として9重量部)添加し溶解して虫除け用光線遮蔽コーテング液を調製した。
【0020】
<評価方法>
調製した液をスライドガラス(7.5×2.5cm厚み1mm)にスポンジを用いて0.04gを均一に塗布した。その後室温条件(20〜30℃、湿度40〜60%)で自然に乾燥させてコーテング被膜を形成した。
【0021】
コ−テング膜の被膜状態
上記スライドガラスのコーテング被膜の状態を目視観察して以下の基準で評価を行った。
◎:均一で透明、○:わずかにムラが生じる、△:少しムラが生じる、
×:著しくムラが生じる
【0022】
光線吸収率の測定
上記スライドガラスに塗布したコ-テング膜の350nm、380nm、400nmの紫外線吸収率(%)を紫外線吸収装置(日立分光光度計UV−3010)を用いて測定した。
【0023】
被膜の耐水性試験
100mlのマヨネ−ズビンに約50mlの水を入れ、上記被膜を形成したスライドガラスを中に入れて浸漬させ1昼夜放置した後、コ−テング膜の状態を目視観察して以下の基準で評価を行った。
◎:変化なし、○:若干変化あり、 △:全体が白化、×:剥離
【0024】
光安定性試験
上記スライドガラスのコ−テング膜にサンテスタ−(キセノンランプ)で紫外線を48時間照射し続け、照射後の400nmの光線吸収率を測定し照射前を1として劣化の度合を以下に示す相対吸収率で表した。
相対吸収強度=紫外線照射後の光線吸収率/照射前の光線吸収率
【0025】
実施例2〜3及び比較例1〜2
数1に示す成分及び表1に示した割合で実施例1と同様の操作で虫除け用光線遮蔽コーテング液を調製した。表中に示す数字は重量部を示す。表2に実施例1と同様の試験法による結果を示す。
【0026】
【数1】

【0027】
SV−35:アクリレ−ト系光吸収剤(ハッコ−ルケミカル製)
VRA−401:アクリレ−ト系光吸収剤(ハッコ−ルケミカル製)
チヌビン1130:ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリテ−・ケミカルズ社製)
ユビナールD−50:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(BASF社製)
EX−2202:アクリル系高分子(昭和高分子製):純分30%
バナレジンPSY−C1:アクリル系ポリマー(新中村化学製):純分40%
MFG:プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル
【0028】
【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
370〜430nmの波長領域に最大吸収を有する光線吸収剤、300〜370nmの波長領域に最大吸収を有する紫外線吸収剤、アクリル系ポリマー、及び溶媒を含有してなる虫除け用光線遮蔽コ−テング剤。
【請求項2】
コ−テング剤の全質量に対して0.005〜1.0質量%の光線吸収剤、コ−テング剤の全質量に対して0.1〜10質量%の紫外線吸収剤、コ−テング剤の全質量に対して1〜30質量%のアクリル酸系ポリマー、コ−テング剤の全質量に対して60〜95質量%の溶媒を含有する請求項1記載の光線遮蔽用コ−テング剤。
【請求項3】
370〜430nmの波長領域に最大吸収を有する光線吸収剤がアクリレ−ト系光線吸収剤であることを特徴とする請求項1記載の虫除け用光線遮蔽コ−テング剤。
【請求項4】
300〜370nmの波長領域に最大吸収を有する紫外線吸収剤がベンゾトリアゾ−ル系及び/又はベンゾフェノン系であることを特徴とする請求項1記載の虫除け用光線遮蔽コ−テング剤。
【請求項5】
溶媒が酢酸エステル及び/又はグリコ−ルエ−テルであることを特徴とする請求項1に記載の虫除け用光線遮蔽コ−テング剤。

【公開番号】特開2007−77304(P2007−77304A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267954(P2005−267954)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(591134074)東洋理研株式会社 (2)
【Fターム(参考)】