説明

虹彩認証支援装置及び虹彩認証支援方法

【課題】 虹彩の状態が変化しても、撮像画像の解像度を向上させることができ、認証精度の向上を図ることが可能になる虹彩認証支援技術を提供する。
【解決手段】 虹彩認証の実行時に、所定枚数の撮像画像を用い、撮像画像の第1解像度より高い第2解像度の虹彩認証用画像を生成する高解像度処理を実行する高解像度画像生成手段16と、虹彩認証の実行時に、高解像度処理の実行に必要な枚数以上の撮像画像を取得する撮像画像取得手段11と、高解像度処理の実行前に、瞳孔の大きさが規定の大きさと一致しない撮像画像である補正対象画像の夫々について、虹彩の輪郭を変化させずに、補正対象画像の瞳孔の大きさと規定の大きさの関係に基づいて、虹彩部分の画像を瞳孔の中心方向に相対的に圧縮または拡大し、瞳孔の大きさを規定の大きさに補正する虹彩画像補正処理を行う虹彩画像補正手段14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証の1つである虹彩認証に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に、個人情報や機密情報等、セキュリティ確保が望まれるセキュリティ情報を取り扱う機器では、漏洩や改竄等の不正利用等からセキュリティ情報を保護するためのセキュリティ技術向上に対する要望が高まっている。このため、セキュリティ確保のための様々な技術が提案されている。
【0003】
セキュリティ確保のための技術には、例えば、生体情報を用いて認証対象者を認証する生体認証技術がある。また、生体認証技術には、例えば、指の指紋画像に基づいて認証対象者を認証する指紋認証技術や、目の虹彩画像に基づいて認証対象者を認証する虹彩認証技術(例えば、特許文献1参照)等がある。
【0004】
ここで、図10は、上記特許文献1に記載の虹彩認証技術における虹彩認証処理の処理手順を示している。上記特許文献1に記載の虹彩認証技術では、先ず、カメラ等の撮像手段を用いて、瞳孔と虹彩を含む目の撮像画像(イメージ)を取得する(ステップ#201)。続いて、当該撮像画像における瞳孔と虹彩の境界及び虹彩と外側画像領域の境界を決定して撮像画像における虹彩領域を求める(ステップ#202)。引き続き、撮像画像に対し瞳孔中心を原点とした極座標系を設定し(ステップ#203)、イメージ解析を行う帯域を決定する(ステップ#204)。
【0005】
引き続き、虹彩領域から瞼や睫毛等の認証対象外画像領域を除去した認証対象領域を求め(ステップ#205)、認証対象領域の画像データに基づいて識別コードを作成する(ステップ#206)。また、基準コードの記憶を行う(ステップ#207)。引き続き、識別コードと予め記憶された認証コードを比較し(ステップ#208)、認証対象者の認証を行う(ステップ#209)。更に、認証結果について、信頼性の評価を行う(ステップ#210)。
【0006】
ところで、虹彩認証技術では、虹彩画像から求められる虹彩パターンの比較により認証を行うが、認証対象者の周囲の明るさ等により、認証対象者の瞳孔の大きさが大きく変化する。このため、認証コードを設定する際に撮像された認証対象者の瞳孔の大きさと、認証時の瞳孔の大きさが相当異なる場合があることが考えられる。このような場合には、撮像画像の虹彩領域の画像データをそのまま用いた場合には、虹彩認証が正常に実行ず、認証精度が低下する可能性がある。
【0007】
従って、上記特許文献1では、虹彩パターンが同心円状に伸びた筋上のパターンで形成されており、極座標系の動径方向では、虹彩パターンがほぼ相似形状を維持しながら相対的に変形する性質を利用して、虹彩領域の画像データに極座標系を適用して識別コードを生成することにより、瞳孔及び虹彩の大きさによる認証精度の低下を押さえている。
【0008】
ところで、認証対象の部位を撮像した撮像画像を用いて認証処理を実行する生体認証技術では、撮像画像のS/N比や解像度等の画像品質により、認証精度が左右される。このため、虹彩認証技術においても、目の撮影に解像度の高い画像を撮像可能な撮像手段を用いることが望ましい。しかし、例えば、特に、携帯電話機のような小型機器等、認証手段の設置スペースやコストに制約のある機器では、解像度の高い画像を撮像可能な撮像手段を搭載することが困難である場合も考えられる。このように、認証手段の設置スペースやコストの制約により、性能やS/N比が比較的低い撮像手段が搭載された機器では、搭載された撮像手段により撮像された比較的品質の高くない撮像画像を用いて、虹彩認証を行う必要がある。そして、このような場合には、登録された正規の認証対象者を正しく認証できない等、撮像画像の品質による認証精度の低下防止が課題となっている。
【0009】
虹彩認証技術による認証処理において、撮像画像の品質を向上させるための技術として、例えば、撮像画像の画像データのS/N比を改善するために、複数枚の撮像画像の夫々から虹彩領域の画像データを抽出し、瞳孔中心を原点として極座標を設定し、虹彩領域の画像データの夫々に対して帯域制限や回転補償等を行った後に識別コードを生成するための中間コードを求め、識別コードの各ビットの値が、中間コード夫々の対応するビットの値の多数決により、最も個数の多い値となるように、識別コードを生成する虹彩認証装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
ここで、図11は、上記特許文献2に記載の虹彩認証装置の概略構成例を示している。上記特許文献2では、識別コードの各ビットの値を、中間コード夫々の対応するビットの値の多数決によって決定するので、実質的に、S/N比を改善させた画像における識別コードを生成することが可能になる。
【0011】
また、画像の品質、ここでは解像度を向上させる技術として、例えば、複数枚の低解像度画像から、1枚の高解像度画像を生成する高解像度処理がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0012】
統計的な確率法であるMAP推定法(最大事後確率推定法)による高解像度画像の生成ついて説明する。
【0013】
mq行nq列の画素行列で表される高解像度画像からm行n列の画素行列で表される低解像度画像を生成する場合、h番目の低解像度画像の画像データy(h)は、k番目の高解像度画像の画像データz(k)を用いて以下の数1式により求められる。
【0014】
[数1]
(h)=DF(h、k)(k)+n(h)
(h=k−(p−1)/2、・・・、k、・・・、k+(p−1)/2)
【0015】
ここで、Dはダウンダンプリング行列、F(h、k)は動き補償行列であり、n(h)は動き補償行列の誤差を示している。尚、図12は、数1式に示す各行列の大きさを示している。また、pは正の奇数であり、k番目の1枚の高解像度画像の画像データからp枚の低解像度画像の画像データを生成する場合、以下の数2式が成り立つ。
【0016】
[数2]
(k−(p−1)/2)=DF(k−(p−1)/2、k)(k)+n(k−(p−1)/2)
・・・
(k−1)=DF(k−1、k)(k)+n(k−1)
(k)=DF(k、k)(k)+n(k)
(k+1)=DF(k+1、k)(k)+n(k+1)
・・・
(k+(p−1)/2)=DF(k+(p−1)/2、k)(k)+n(k+(p−1)/2)
【0017】
従って、数2式を満足する高解像度画像の画像データz(k)を求めることで、高解像度画像の画像データを推定することができる。但し、数2式のみでは、q枚の低解像度画像の画像データy(k−(p−1)/2)、・・・、y(k+(p−1)/2)から1枚の高解像度画像の画像データz(k)を推定する場合、画像データz(k)の解が無数に存在するため、ベイズ理論によるMAP推定法を適用し、数3式に示す確率Prが最大となる画像データz(k)を求める。
【0018】
[数3]
Pr(z(k))=(1/Z)exp{−(1/2β)Σρ(d(k))}
【0019】
数3式において、d(k)は輝度勾配であり、画素毎に図13に示す4方向dm、n、1(k)〜dm、n、4(k)の隣接画素との輝度勾配を合計して求められる。
【0020】
[数4]
m、n、1(k)=z(k)m、n−1−2z(k)m、n+z(k)m、n+1
m、n、2(k)=0.5z(k)m+1、n−1−z(k)m、n+0.5z(k)m−1、n+1
m、n、3(k)=z(k)m−1、n−2z(k)m、n+z(k)m+1、n
m、n、4(k)=0.5z(k)m−1、n−1−z(k)m、n+0.5z(k)m+1、n+1
【0021】
数3式において、ρは分布関数であり、以下の数5で求められる。
【0022】
[数5]
(x)=x(|x|≦T)
(x)=T+2T(|x|−T)(|x|≦T)
【0023】
【特許文献1】特表平8−504979号公報
【特許文献2】特開2004−127286号公報
【非特許文献1】Richard R. Schultz他、“Extraction of High−Resolution Frames from Video Sequences”、IEEE TRANSACTIONS ON IMAGE PROCESSING、VOL.5、NO.6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上述したように、撮像画像のS/N比や解像度等の画像品質により認証精度が左右されるため、虹彩認証技術においても、目の撮影に解像度の高い画像を撮像可能な撮像手段を用いることが望ましい。しかし、設置スペースやコストに制約のある機器では、比較的低解像度の撮像手段を用いて虹彩認証技術による認証処理を行わなければならず、虹彩認証の認証精度を向上させることが困難である。
【0025】
例えば、携帯電話機に虹彩認証技術による認証装置を搭載しようとする場合、携帯電話機には、操作ボタン或いはメインモニタが設置された面と反対の面にメインカメラが、操作ボタン或いはメインモニタが設置された面にサブガメラが搭載されている。目の撮像動作では、認証対象者自身がモニタを確認しながらピントや位置等合わせる必要があり、認証対象者の利便性を考慮すると、目の撮像画像をサブカメラで撮像することが望ましい。しかし、一般的に、虹彩認証には、目の撮像画像が140×140画素以上の大きさ、特に、虹彩領域が100×100画素以上の大きさであることが望ましいが、一般的な携帯電話機では、サブカメラは、ズーム機能無しの場合、30万画素以下の比較的安価で比較的解像度が低いものが用いられている。このため、携帯電話機のように設置スペースやコストの制約から、比較的安価で解像度の低い(虹彩領域が100×100画素以下となる)撮像手段により撮像する機器の場合、必要な認証精度を得られない可能性があるという問題があった。
【0026】
これに対し、上記特許文献2には、虹彩認証技術による認証処理において、画像のS/N比を改善させる技術が提案されている。また、上記非特許文献1には、複数枚の低解像度撮像画像から高解像度画像を生成する高解像度処理が開示されている。従って、上記非特許文献1に記載の高解像度処理により解像度の向上させた撮像画像に対し、上記特許文献2に記載の技術を適用することができれば、解像度及びS/N比を改善させた画像を用いて虹彩認証技術による認証処理を行うことが可能になり、認証精度の更なる向上が期待できる。
【0027】
しかしながら、上述したように、目は周囲の明るさにより瞳孔の大きさが変化し、これに伴って虹彩の状態も変化する。そして、例えば、携帯電話機のように周囲の明るさの変動が大きい機器の場合には、目の撮像中に瞳孔の大きさが変化し、瞳孔の大きさが夫々異なる撮像画像が撮像される可能性がある。このような場合には、単に複数枚の撮像画像を用いて非特許文献1に記載の高解像度処理を実行しても、生成される1枚の高解像度画像の品質の向上は期待できず、むしろ低下する可能性が高いという問題がある。
【0028】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像中に虹彩の状態が変化する可能性がある場合においても、実質的に、撮像画像の解像度を向上させることができ、認証精度の向上を図ることが可能になる虹彩認証支援技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するための本発明に係る虹彩認証支援装置は、虹彩認証の実行時に、瞳孔及び虹彩を含む目の撮像画像を所定の枚数用いて、前記撮像画像の第1解像度より高い第2解像度の虹彩認証用画像を生成する高解像度処理を実行する高解像度画像生成手段と、前記虹彩認証の実行時に、認証対象者の前記目を前記第1解像度で連続撮像して前記撮像画像を出力する撮像手段から、前記高解像度処理の実行に必要な枚数以上の前記撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、前記高解像度処理の実行前に、少なくとも前記高解像度処理に用いる前記撮像画像の内、前記瞳孔の大きさが規定の大きさと一致しない前記撮像画像を補正対象画像とし、前記補正対象画像の夫々について、前記虹彩の輪郭を変化させずに、前記補正対象画像の前記瞳孔の大きさと前記規定の大きさの関係に基づいて、前記虹彩部分の画像を前記瞳孔の中心方向に相対的に圧縮または拡大し、前記瞳孔の大きさを前記規定の大きさに補正する虹彩画像補正処理を行う虹彩画像補正手段と、を備えることを第1の特徴とする。
【0030】
上記特徴の本発明に係る虹彩認証支援装置は、前記撮像画像取得手段が、前記高解像度処理の実行に必要な枚数より多い所定枚数の前記撮像画像を取得するように構成され、前記撮像画像取得手段が取得した前記撮像画像から、所定の選択条件に従って、前記高解像度処理の実行に必要な枚数の前記撮像画像を選択する選択手段を備えることを第2の特徴とする。
【0031】
上記特徴の本発明に係る虹彩認証支援装置は、前記選択手段が、前記撮像画像の夫々についてピントの照合度を求め、前記照合度が高い前記撮像画像から順に前記撮像画像を選択するように構成されていることを第3の特徴とする。
【0032】
上記第2の特徴の本発明に係る虹彩認証支援装置は、前記選択手段が、前記撮像画像の夫々について、前記撮像画像における前記虹彩の大きさを求め、前記虹彩の大きさに基づいて前記撮像画像を選択するように構成されていることを第4の特徴とする。
【0033】
上記何れかの特徴の本発明に係る虹彩認証支援装置は、前記虹彩画像補正手段による前記虹彩画像補正処理の実行前或いは実行後に、前記撮像画像夫々における前記虹彩を含む虹彩領域の平均輝度値を求め、前記撮像画像から1枚の中心画像を選択し、前記中心画像を除く前記撮像画像の内、前記虹彩領域の平均輝度値が、前記中心画像の前記虹彩領域の平均輝度値を基に規定される輝度範囲外である前記撮像画像の夫々について、前記虹彩領域の平均輝度値が前記中心画像の前記虹彩領域の平均輝度値となるように、輝度補正処理を行う輝度補正手段を備えることを第5の特徴とする。
【0034】
上記何れかの特徴の本発明に係る虹彩認証支援装置は、高解像度画像生成手段が、前記撮像画像から1枚の中心画像を選択し、前記中心画像を除く前記撮像画像の夫々について、前記中心画像における前記虹彩を含む虹彩領域の位置に対する前記撮像画像の前記虹彩領域の位置を示す動きベクトルを求め、当該動きベクトルを用いて撮像画像における虹彩領域の位置ずれを補償する動き補償処理を行うことを第6の特徴とする。
【0035】
上記特徴の本発明に係る虹彩認証装置は、上記第1〜第6の特徴の虹彩認証支援装置から前記虹彩認証用画像を取得する虹彩認証用画像取得手段と、前記虹彩認証用画像から虹彩パターンを抽出し、前記虹彩認証用画像の虹彩パターンに基づいて虹彩認証指標を生成し、前記虹彩認証指標を予め記憶された虹彩登録指標と比較し、前記虹彩認証指標と前記虹彩登録指標の一致度が所定の判定度以上の場合に認証する認証手段と、を備えることを特徴とする。
【0036】
上記特徴の本発明に係る虹彩認証支援方法は、虹彩認証の実行時に、瞳孔及び虹彩を含む目の撮像画像を所定の枚数用いて、前記撮像画像の第1解像度より高い第2解像度の虹彩認証用画像を生成する高解像度処理を実行する高解像度画像生成工程と、前記虹彩認証の実行時、前記高解像度画像生成工程の実行前に、認証対象者の前記目を前記第1解像度で連続撮像する撮像手段により、前記撮像画像を前記高解像度処理の実行に必要な枚数以上の前記撮像画像を撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した前記撮像画像を取得し、所定の記憶手段に記憶する撮像画像取得工程と、前記撮像画像取得工程の実行後、前記高解像度画像生成工程の実行前に、少なくとも前記高解像度処理に用いる前記撮像画像の内、前記瞳孔の大きさが規定の大きさと一致しない前記撮像画像を補正対象画像とし、前記補正対象画像の夫々について、前記虹彩の輪郭を変化させずに、前記補正対象画像の前記瞳孔の大きさと前記規定の大きさの関係に基づいて、前記虹彩部分の画像を前記瞳孔の中心方向に相対的に圧縮または拡大し、前記瞳孔の大きさを前記規定の大きさに補正する虹彩画像補正処理を行う虹彩画像補正工程と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
上記特徴の虹彩認証支援装置によれば、複数の撮像画像における虹彩領域の画像データを、瞳孔の大きさが規定の大きさと一致するように補正する虹彩画像補正処理を実行するので、高解像度画像生成手段において虹彩認証用画像を生成する際に、S/N比が低下するのを効果的に防止できる。即ち、上記特徴の虹彩認証支援装置によれば、上述したように、極座標系の動径方向では、虹彩パターンがほぼ相似形状を維持しながら相対的に変形する性質を利用し、虹彩部分の画像を瞳孔の中心方向に相対的に圧縮または拡大するように構成したので、虹彩パターンの情報を変化させずに、高解像度処理を実行可能な状態を維持しながら、虹彩の補正を行うことが可能になる。
【0038】
従って、上記特徴の虹彩認証支援装置によれば、設置スペースやコストの制約により、解像度の比較的低い撮像手段を備える機器において、高解像度の撮像手段を搭載することなく、認証精度の向上を図ることが可能になる。また、瞳孔の大きさが統一されるので、後の虹彩認証において、複雑な極座標の設定や識別コード化等の処理の簡略化が期待できる。
【0039】
上記第2の特徴の虹彩認証支援装置によれば、高解像度処理の実行に必要な枚数より多い枚数の撮像画像を取得し、高解像度処理に用いる撮像画像を選択するように構成したので、高解像度処理で用いると高解像度画像である虹彩認証用画像の画質が低下する可能性の高い撮像画像を除外することが可能になり、虹彩認証用画像の画質が低下するのを効果的に防止できる。
【0040】
例えば、高解像度処理に用いると虹彩認証用画像の画質が低下する撮像画像としては、虹彩領域にピントが合っていない撮像画像があり、これに対しては、上記第3の特徴の虹彩認証支援装置の如く、ピントの照合度が高い撮像画像から順に選択することで、比較的、虹彩認証用画像の画質が低下する可能性の高い撮像画像を除外できる。また、例えば、高解像度処理に用いると虹彩認証用画像の画質が低下する撮像画像としては、他の撮像画像と比べて、虹彩の大きさ(虹彩の輪郭の大きさ)が異なる撮像画像が考えられ、これに対しては、上記第4の特徴の虹彩認証支援装置の如く、虹彩の大きさに基づいて撮像画像を選択するように構成すれば、比較的、虹彩認証用画像の画質が低下する可能性の高い撮像画像を除外できる。
【0041】
上記第5の特徴の虹彩認証支援装置によれば、輝度補正処理を行うので、高解像度処理において、撮像画像夫々の輝度値のばらつきに起因する虹彩認証用画像の画質低下を効果的に防止できる。尚、例えば、特に、携帯電話機のように、周囲の明るさや照明(光の強度や色)等の環境条件が大きく変動する可能性がある場合には、撮像画像毎に輝度値が大きく異なる可能性があり、上記第5の特徴の虹彩認証支援装置により、輝度補正処理を行うことで、虹彩認証用画像の画質低下を良好に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る虹彩認証支援装置、虹彩認証支援方法(以下、適宜「本発明装置」、「本発明方法」と略称する)、及び、虹彩認証装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0043】
〈第1実施形態〉
本発明装置、本発明方法、及び、本発明に係る虹彩認証装置の第1実施形態について、図1〜図9を基に説明する。
【0044】
先ず、本発明装置及び本発明に係る虹彩認証装置の構成について、図1及び図2を基に説明する。ここで、図1は、本発明装置10及び虹彩認証装置20の概略構成例を示しており、図2は、本発明装置10が搭載された携帯電話機1の概略構成例を示している。
【0045】
尚、本実施形態では、携帯電話機1内に、本発明装置10及び本発明に係る虹彩認証装置20が設置されており、携帯電話機1に備えられているサブカメラ30(撮像手段に相当)を用いて虹彩認証を行う場合について説明するが、これに限るものではなく、本発明装置10及び虹彩認証装置20は、携帯電話機1以外の機器に備えられていても良い。
【0046】
携帯電話機1は、図2に示すように、背面側に設置されたメインカメラ(図示せず)と、後述する表示手段と同じ筐体面上に設置されたサブカメラ30と、サブカメラ30による撮像時に周囲の明るさを調整する照明用LED31と、液晶ディスプレイで構成される表示手段と、携帯電話機1の通話機能や認証装置等、各種機能及び装置を利用するための操作ボタン50と、虹彩認証装置20で用いる虹彩認証用画像を生成する本発明装置10と、虹彩認証技術により認証処理を行う虹彩認証装置20を備えて構成されている。
【0047】
携帯電話機1のサブカメラ30は、本実施形態では、100×100画素の画像を撮像可能に構成されたCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)等の固体撮像素子で構成されており、ズーム機能等は備えていない場合を想定して説明する。更に、サブカメラ30は、所定枚数の撮像画像を連写撮像可能な連写機能を備えており、本発明装置10が必要とする枚数以上の撮像画像を連続撮像することが可能に構成されている。尚、動画を撮影するためのビデオ機能を利用して、連続撮像された撮像画像を取得可能に構成しても良い。
【0048】
携帯電話機1の照明用LED31は、本実施形態では、虹彩領域の画像データのコントラストをより高くすることができる波長750nm以上の赤外線を照射可能に構成されている。尚、照明用LED31は、本実施形態では、サブカメラ30の近傍、照明像の撮像画像への写り込みを防止できる位置に設置する。
【0049】
携帯電話機1のモニタ40(表示手段)は、サブカメラ30によって撮像された目の画像を表示可能に構成されている。
【0050】
本発明装置10は、図1に示すように、虹彩認証の実行時に、瞳孔及び虹彩を含む目の撮像画像を所定の枚数用いて、撮像画像の第1解像度より高い第2解像度の虹彩認証用画像を生成する高解像度処理を実行する高解像度画像生成手段16と、虹彩認証の実行時に、認証対象者の目を第1解像度で連続撮像して撮像画像を出力するサブカメラ30から、高解像度処理の実行に必要な枚数より多い所定枚数の撮像画像を取得する撮像画像取得手段11と、高解像度処理の実行前に、少なくとも高解像度処理に用いる撮像画像の内、瞳孔の大きさが規定の大きさと一致しない撮像画像を補正対象画像とし、補正対象画像の夫々について、虹彩の輪郭を変化させずに、補正対象画像の前記瞳孔の大きさと規定の大きさの関係に基づいて、虹彩部分の画像を瞳孔の中心方向に相対的に圧縮または拡大し、瞳孔の大きさを規定の大きさに補正する虹彩画像補正処理を行う虹彩画像補正手段14と、を備えて構成されている。
【0051】
更に、本実施形態の本発明装置10は、撮像画像取得手段11が取得した撮像画像の夫々について、虹彩領域を抽出する虹彩領域抽出手段12と、撮像画像取得手段11が取得した撮像画像から、所定の選択条件に従って、高解像度処理の実行に必要な枚数の撮像画像を選択する選択手段13と、虹彩画像補正手段14による虹彩画像補正処理の実行後に、撮像画像夫々における虹彩を含む虹彩領域の平均輝度値を求め、撮像画像から1枚の中心画像を選択し、中心画像を除く撮像画像の内、虹彩領域の平均輝度値が、中心画像の虹彩領域の平均輝度値を基に規定される輝度範囲外である撮像画像の夫々について、虹彩領域の平均輝度値が中心画像の虹彩領域の平均輝度値となるように、輝度補正処理を行う輝度補正手段15と、撮像画像や虹彩認証用画像を記憶するための記憶手段17を備えて構成されている。
【0052】
より具体的には、高解像度画像生成手段16は、本実施形態では、8枚の連続撮像された撮像画像から、撮像画像の1×1画素を、2×2画素に変換し、解像度が2倍の認証用画像を生成するように構成されている。
【0053】
尚、本実施形態では、説明の簡単のために、8枚の連続撮像された撮像画像を用いて、1×1画素を2×2画素にアップサンプリングする場合について説明するが、これに限るものではない。サブカメラ30の解像度が低い場合や、虹彩認証用画像に求められる画質が高い場合等には、9枚以上の連続撮像された撮像画像を用いても良い。高解像度処理に用いる撮像画像の枚数は、サブカメラ30の解像度や虹彩認証用画像に求められる画質に応じて適切に設定する。更に、本実施形態では、撮像画像の1×1画素を2×2画素にアップサンプリングして虹彩認証用画像を生成する場合について説明するが、虹彩認証用画像の解像度は、サブカメラ30の解像度や虹彩認証の認証精度を確保可能な解像度、虹彩認証装置20の処理性能、セキュリティ情報の重要度等の認証条件を考慮して、適切に設定する。また、虹彩認証用画像の解像度は、上記認証条件等に基づいて可変に構成しても良い。
【0054】
選択手段13は、本実施形態では、撮像画像の夫々についてピントの照合度を求め、照合度が高い撮像画像から順に撮像画像を選択するように構成されている。ピントの照合度は、本実施形態では、撮像画像における虹彩領域のコントラストを算出し、コントラストの絶対値が高いものから順に選択する。
【0055】
更に、本実施形態の選択手段13は、撮像画像の夫々について、撮像画像における虹彩の大きさを求め、虹彩の大きさに基づいて撮像画像を選択するように構成されている。具体的には、本実施形態の選択手段13は、虹彩領域抽出手段12によって抽出された虹彩領域に基づいて、虹彩の輪郭の大きさ、即ち、虹彩の輪郭の半径が同一の撮像画像を選択するように構成されている。
【0056】
輝度補正手段15は、本実施形態では、中心画像を除く撮像画像の内、虹彩領域の平均輝度値が、中心画像における虹彩領域の平均輝度値に対して±5%以上の値をとる場合に、輝度補正処理を行う。尚、本実施形態では、輝度範囲を±5%としているが、この値は経験則であり、サブカメラ30の解像度や目の撮像時における携帯電話機1の周囲の環境条件等に応じて適切に設定する。輝度範囲は、サブカメラ30の解像度や環境条件に応じて可変に構成しても良い。尚、本実施形態では、輝度補正手段15により輝度補正処理を行うので、動きベクトルの導出精度の低下を効果的に防止できる。
【0057】
記憶手段17は、本実施形態では、RAM(Random Access Memory)で構成されている場合を想定している。尚、記憶手段17は、必ずしも備える必要はなく、携帯電話機1内に搭載されたメモリ等を利用するように構成しても良いし、後述する虹彩認証装置20の記憶手段24を利用するように構成しても良い。
【0058】
虹彩認証装置20は、本発明装置10から虹彩認証用画像を取得する虹彩認証用画像取得手段21と、虹彩認証用画像から虹彩パターンを抽出し、虹彩認証用画像の虹彩パターンに基づいて虹彩認証指標を生成し、虹彩認証指標を予め記憶された虹彩登録指標と比較し、虹彩認証指標と虹彩登録指標の一致度が所定の判定度以上の場合に認証する認証手段23を備えている。
【0059】
更に、虹彩認証装置20は、本実施形態では、携帯電話機1に搭載されたサブカメラ30の撮像動作を制御するための撮像制御手段21と、虹彩認証用画像や認証手段23で用いる虹彩登録指標、認証結果等を記憶するための記憶手段24を備えて構成されている。
【0060】
記憶手段24は、本実施形態では、フラッシュメモリで構成されている場合を想定している。尚、記憶手段24は、必ずしも備える必要はなく、携帯電話機1内に搭載されたメモリ等を利用するように構成しても良い。
【0061】
次に、本発明装置10及び虹彩認証装置20による本発明方法の処理手順について、図3〜図9に基づいて説明する。ここで、図3は、本発明方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0062】
虹彩認証装置20は、虹彩認証要求を受け付けると(ステップ#100で「YES」分岐)、撮像制御手段21により、認証対象者がサブカメラ30により目を撮像するための操作を行うための画面をモニタ40上に表示する(ステップ#110)。
【0063】
尚、撮像制御手段21は、虹彩認証に必要な虹彩領域の画像の大きさが100×100画素であることから、モニタ40上で、認証対象者に対し、50×50画素以上の大きさで虹彩領域を撮像するように促す。撮像制御手段21は、50×50画素以上の大きさで虹彩領域が撮像されなかった場合、再度、目を撮像するように認証対象者に対して通知する。
【0064】
また、本実施形態のサブカメラ30は、上述したように、高解像度画像生成手段16が8枚の連続撮像された撮像画像から1枚の虹彩認証用画像を生成する場合を想定しており、選択手段13により所定の選択条件に応じて撮像画像を選択するように構成していることから、認証対象者による1度の撮像操作に応じて、9枚の撮像画像を自動的に連続撮像する。尚、携帯電話機1の周囲の環境条件等によっては、10枚以上の撮像画像を自動的に連続撮像するように構成しても良い。
【0065】
認証対象者の操作により認証対象者の目が撮像され、サブカメラ30から連続撮像された9枚の撮像画像が出力されると、本発明装置10の撮像画像取得手段11は、撮像画像を受け付け、記憶手段17に記憶する。
【0066】
撮像画像が記憶手段17に記憶されると、本発明装置10の虹彩領域抽出手段12は、撮像画像の夫々から、虹彩領域を抽出する(ステップ#120)。
【0067】
より具体的には、虹彩領域は、虹彩と瞳孔の境界、及び、虹彩の輪郭で規定されることから、虹彩と瞳孔の境界、及び、虹彩の輪郭の抽出を行う。ここでは、先ず、瞳孔が黒色円形であり、通常では、虹彩領域との輝度差が非常に大きい性質を利用して、虹彩と瞳孔の境界の決定を行う。より詳細には、撮像画像の夫々において、中心位置及び半径で規定される円の内側と外側の輝度差を、中心位置(瞳孔中心)及び半径を順次変更しながら算出し、輝度差が最大となる円を虹彩と瞳孔の境界とする。
【0068】
虹彩の輪郭の決定は、虹彩と瞳孔の境界及び虹彩の輪郭が、瞳孔中心を原点とする同心円で構成される性質を利用して行う。より詳細には、瞳孔中心を原点とする同心円について、半径を順次変更しながら輝度差を算出して求める。ここで、虹彩の輪郭は、虹彩領域の上側部分及び下側部分の領域に、睫毛や蓋が重なっている場合を考慮し、虹彩領域の右側部分及び左側部分の内、予め設定された所定部分のみについて輝度差を算出する。具体的には、図4に示すように、目の両側の目尻を結んだ線を水平方向とし、水平方向に対し、±30度の角度範囲の部分(破線部分参照)についてのみ輝度差を算出する。そして、輝度差が最大となる同心円を虹彩の輪郭とする。尚、本実施形態では、水平方向に対し±30度の角度範囲の部分についての輝度差を算出したが、輝度差の算出対象となる領域は、認証対象者の目の状態や認証精度等を考慮して適切に設定する。
【0069】
虹彩領域抽出手段12は、虹彩領域の抽出結果、即ち、虹彩と瞳孔の境界を規定する瞳孔中心の撮像画像に対する位置及び半径の値、虹彩の輪郭を規定する半径の値を、撮像画像毎に記憶装置18に記憶する。
【0070】
続いて、本発明装置10の選択手段13は、撮像画像取得手段11が取得した複数の撮像画像から、所定の選択条件に従って、高解像度処理で必要とする枚数、ここでは、8枚の撮像画像を選択する(ステップ#130)。
【0071】
本実施形態では、選択手段13は、先ず、ステップ#120で抽出した虹彩の輪郭の大きさ(半径)が異なる撮像画像を選択対象から除外する。更に、選択手段13は、ピントの照合度が高い順に、撮像画像を選択する。より詳細には、選択手段13は、ピントの照合度として、撮像画像の全領域を対象としてコントラストを計算し、コントラストの高い順に撮像画像を選択する。尚、本実施形態では、虹彩の輪郭の大きさが異なる撮像画像、及び、ピントの合っていない撮像画像、即ち、高解像度処理で用いると生成される高解像動画像の画質を低下させる可能性が比較的高いと考えられる撮像画像を選択対象から除外することにより、後述する高解像度処理において、虹彩認証用画像の画質が低下するのを効果的に防止できる。
【0072】
引き続き、虹彩画像補正手段14は、選択手段13によって選択された撮像画像の瞳孔の大きさが規定の大きさになるように、虹彩領域に対する虹彩画像補正処理を行う(ステップ#140)。ここで、規定の大きさは、例えば、認証対象者の虹彩認証情報(虹彩パターン、虹彩コード等)を登録する際における瞳孔の大きさとする。尚、規定の大きさを虹彩認証情報の登録時の大きさとすれば、登録時と認証時の瞳孔の大きさを統一できるので、認証精度の維持が期待できるが、規定の大きさは、任意に設定可能である。
【0073】
より具体的には、虹彩画像補正手段14は、先ず、記憶手段17に記憶された虹彩領域の抽出結果に基づいて、瞳孔の大きさ(半径)が、規定の大きさと一致しない撮像画像を補正対象画像とする(ステップ#141)。更に、虹彩画像補正手段14は、補正対象画像の夫々について、瞳孔中心を原点とし、目の両側目尻を結んだ線に平行な方向を0度とし、反時計回りに角度を設定することにより、極座標を設定する。
【0074】
更に、虹彩画像補正手段14は、補正対象画像の夫々について、虹彩の輪郭、即ち、虹彩領域と外側領域の境界を固定し、瞳孔の大きさが規定の大きさとなるように規格化する(ステップ#142)。ここで、図5は、虹彩領域の画像データの補正について示している。図5(a)は、瞳孔の大きさが規定の大きさに一致する撮像画像例を示しており、この場合には、補正対象画像から除外される。図5(b)は、瞳孔の大きさが規定の大きさより小さい撮像画像例を示しており、この場合には、虹彩パターン等の虹彩の持つ情報を保持しつつ、瞳孔の大きさが規定の大きさとなるように、虹彩領域の画像データを、瞳孔の中心方向とは反対の方向に、相対的に圧縮処理する。図5(c)は、瞳孔の大きさが規定の大きさより大きい撮像画像例を示しており、この場合には、瞳孔の大きさが規定の大きさとなるように、虹彩領域の画像データを、瞳孔の中心方向に相対的に拡大処理する。
【0075】
虹彩画像補正処理の実行後、本実施形態では、図3に示すように、輝度補正手段15が、撮像画像の虹彩領域に対する輝度補正処理を実行する(ステップ#150)。具体的には、輝度補正手段15は、上述したように、中心画像を除く撮像画像の内、虹彩領域の平均輝度値が、中心画像における虹彩領域の平均輝度値に対して±5%以上の値をとる撮像画像について、輝度補正処理を行う。尚、本実施形態では、中心画像は、輝度補正処理の対象となる撮像画像の内、虹彩領域の平均輝度値が、高解像度処理で用いる撮像画像の平均輝度値の平均値に最も近い値をとる撮像画像を設定する。
【0076】
引き続き、本発明装置10の高解像度画像生成手段16は、図3に示すように、高解像度処理を行う(ステップ#160)。
【0077】
尚、高解像度画像生成手段16による高解像度処理では、直交座標系を用いる。尚、極座標系における原点が直交座標系の原点となり、極座標系における水平方向(基準方向)が直交座標系のX座標となるように設定する。尚、画質の向上のために、画像データを構成する画素データの夫々に対し、帯域制限等、ノイズ除去処理を実行するように構成しても良い。
【0078】
以下、高解像度画像生成手段16による高解像度処理について説明する。ここで、図6は、高解像度処理の各工程における撮像画像の概略図を示している。尚、図6では、簡単のために、1つの□を1つの画素とし、撮像画像が4×4=16画素で構成される場合について図示している。また、図6では、連続撮像された撮像画像の内、中間の時間で撮像された撮像画像を中心画像y(k)とし、撮像画像y(k−2)〜y(k+2)の5つの撮像画像を示している。
【0079】
高解像度画像生成手段16は、先ず、図6(a)に示す撮像画像の夫々について、1×1画素を2×2画素にするアップサンプリング処理を行う。ここで、図7(a)は、アップサンプリング処理前の撮像画像の例を、図7(b)はアップサンプリング処理後の撮像画像の例を夫々示している。ここでのアップサンプリング処理は、低解像度画像の各画素を段純に4倍にするものであり、図7に示すように、図7(a)に示す各画素yi,j(i=0〜m、j=0〜n、mは撮像画像の列方向の画素数−1、nは撮像画像の行方向の画素数−1)を、図7(b)の対応する4つの画素にそのまま用いている。
【0080】
引き続き、高解像度画像生成手段16は、アップサンプリング処理した撮像画像に対し、図6(b)に示すように、上述したMAP推定法を適用して、高解像度化する。
【0081】
引き続き、高解像度画像生成手段16は、図6(c)に示すように、中心画像y(k)を除く撮像画像y(k−2)〜y(k+2)の夫々について、中心画像y(k)における虹彩を含む虹彩領域の位置に対する撮像画像y(k−2)〜y(k+2)の虹彩領域の位置を示す動きベクトルを、アップサンプリング処理した後の画素単位で求める(ステップ#163)。
【0082】
より具体的には、高解像度画像生成手段16は、本実施形態では、動きベクトルを、ブロックマッチング法を用いて導出する。ここで、図8は、動きベクトルの導出対象の撮像画像について示している。ブロックマッチング法では、先ず、図8(a)に示すように、中心画像における探索対象、即ち、瞳孔中心を中心とする8×8画素の単位ブロックで構成される基準ブロックの画素夫々の輝度値を算出する。更に、中心画像を除く撮像画像の夫々について、図8(b)に示すように、中心画像における原点(0,0)に相当する座標から水平方向及び垂直方向に±16画素の範囲で探索範囲を設定する。引き続き、高解像度画像生成手段16は、中心画像を除く撮像画像の夫々に設定された探索範囲において、8×8画素で構成される単位ブロックで構成される分割ブロックを順次設定し、分割ブロックを構成する8×8=64個の画素夫々の輝度値を算出する。そして、対応する画素毎に、基準ブロックと分割ブロックの輝度値の差の絶対値を算出し、当該輝度値の差の絶対値を合計して輝度差の絶対値の総和を求める。輝度差の絶対値の総和が最も小さくなる分割ブロックを探索対象ブロックとして求める。最後に、図6(c)に示すように、基準ブロックと探索対象ブロックの位置のずれを、撮像画像における虹彩領域の中心画像からの動きベクトルとして求める。尚、各ブロックの大きさや、探索範囲は、撮像画像の解像度や処理時間等を考慮して適切に設定する。
【0083】
引き続き、高解像度画像生成手段16は、図3に示すステップ#161〜ステップ#163で撮像画像の画像データ毎に求めた動きベクトルを用いて画素間補完処理を行う(ステップ#164)。
【0084】
より具体的には、高解像度画像生成手段16は、先ず、図6(d)及び図7に示すように、中心画像の各画素を単純に2×2画素にアップサンプリング処理し、第1中間画像を生成する。続いて、図6(e)に示すように、ステップ#161〜ステップ#163で撮像画像の画像データ毎に求めた動きベクトルの夫々を用いて、第1中間画像の虹彩領域を移動させて撮像画像の夫々に対応する第2中間画像を生成する。
【0085】
引き続き、高解像度画像生成手段16は、図6(f)に示すように、図6(e)に示す第2中間画像の夫々に、対応する図6(a)に示す撮像画像を夫々重ね合わせて、第3中間画像を生成し、アップサンプリング処理と逆の倍率でダウンサンプリング処理を行う。ここで、図9(a)は、2×2画素を1×1画素にダウンサンプリング処理する場合の処理前の第3中間画像の例を、図9(b)はダウンサンプリング処理後の第3中間画像の例を夫々示している。ダウンサンプリング処理後の第3中間画像の各画素は、以下の数6で求められる。
【0086】
[数6]
0、0(k)={z0、0(k)+z0、1(k)+z1、0(k)+z1、1(k)}/4
【0087】
更に、高解像度画像生成手段16は、図6(d)に示す中心画像と、ダウンダンプリング処理後の第3中間画素夫々の誤差エネルギEと統計的画像モデルポテンシャル関数Pを算出し、数7式に示す評価関数Mが最小値となるように、既知の一般的な勾配投影法により、高解像度画像の画像データz(n)(k)を求める。
【0088】
[数7]
M(z(0)(k)
=βE+P
=βΣ|y(j)−DF(h、k)(n)(k)+ΣUz(0)(k)
【0089】
ここで、本実施形態では、複数の第3中間画像を用いるため、重み付けパラメータβを設定している。尚、高解像度画像生成手段16は、本実施形態では、MAP推定法等を用いて虹彩認証用画像を生成したが、これに限られるものではなく、他の既知の方法により、複数の撮像画像から高解像度の虹彩認証用画像を生成するように構成しても良い。
【0090】
本発明装置10により虹彩認証用画像が生成されると、虹彩認証装置20は、虹彩認証用画像取得手段21により虹彩認証用画像を取得し、記憶手段24に記憶する。虹彩認証装置20は、認証手段23により、虹彩認証用画像を用いて虹彩認証を行う。
【0091】
虹彩認証装置20が、本発明装置10により生成された高解像度の虹彩認証用画像を用いて虹彩認証処理を行うように構成することにより、虹彩認証処理の認証精度を向上させることが可能になる。また、本実施形態で示したように、低解像度のサブカメラ30を用いた場合でも、所望の解像度の虹彩認証用画像を用いて虹彩認証処理を行うことが可能になる。
【0092】
〈別実施形態〉
〈1〉上記第1実施形態では、撮像画像取得手段11が、高解像度処理の実行に必要な枚数より多い所定枚数の撮像画像を取得し、選択手段13により、高解像度処理の実行に必要な枚数を選択するように構成したが、これに限るものではない。
【0093】
例えば、撮像画像の品質がある程度安定しているような場合には、撮像画像取得手段11を高解像度処理の実行に必要な枚数の撮像画像を取得するように構成し、選択手段13を持たない構成にしても良い。
【0094】
具体的には、例えば、上記第1実施形態では、選択手段13がピントの照合度に応じて撮像画像を選択するように構成しているが、サブカメラ30に自動的にピントを合わせるオートフォーカス機能が備えられている場合は、虹彩領域にピントが合うようにサブカメラ30を設定することで、撮像画像取得手段11が取得する撮像画像の枚数を高解像度処理の実行に必要な枚数とし、選択手段13が、ステップ#130において、ピントの照合度による撮像画像の選択を実行しないように構成しても良い。
【0095】
〈2〉上記第1実施形態では、輝度補正手段15が、虹彩画像補正手段14による虹彩画像補正処理(ステップ#140)の実行後に、輝度補正処理(ステップ#150)を実行するように構成されている場合について説明したが、これに限るものではない。
【0096】
例えば、輝度補正手段15による輝度補正処理は、虹彩画像補正手段14による虹彩画像補正処理の実行前、選択手段13によって選択された撮像画像の夫々に対して輝度補正処理を行うように構成しても良いし、選択手段13による撮像画像の選択を実行する前に、全ての撮像画像に対して実行しても良い。
【0097】
〈3〉上記第1実施形態では、撮像画像の選択(ステップ#130)、虹彩画像補正処理(ステップ#140)、及び、輝度補正(ステップ#150)をこの順に実行しているが、これに限るものではない。例えば、全ての撮像画像に対する虹彩画像補正処理(ステップ#140)及び輝度補正(ステップ#150)の実行後に、撮像画像の選択(ステップ#130)を実行するように構成しても良いし、その他の順番で実行しても良い。撮像画像の選択(ステップ#130)、虹彩画像補正処理(ステップ#140)、及び、輝度補正(ステップ#150)は、任意に実行順序を設定可能であり、記憶装置18の容量や本発明装置10の処理速度等を考慮して適切に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る虹彩認証支援装置及び虹彩認証装置の概略構成例を示す概略ブロック図
【図2】本発明に係る虹彩認証支援装置及び虹彩認証装置を搭載した携帯電話機の部分概略構成例を示す概略ブロック図
【図3】本発明に係る虹彩認証支援方法の処理手順を示すフローチャート
【図4】本発明に係る虹彩認証支援方法において虹彩領域の抽出工程を説明するための説明図
【図5】本発明に係る虹彩認証支援方法における虹彩画像補正処理を説明するための説明図
【図6】本発明に係る虹彩認証支援方法における高解像度処理の各工程における撮像画像の概略図を示す概略部分ブロック図
【図7】本発明に係る虹彩認証支援方法で用いるアップサンプリング処理の概要を示す概略説明図
【図8】本発明に係る虹彩認証支援方法で用いるブロックマッチング法を説明するための概略説明図
【図9】本発明に係る虹彩認証支援方法で用いるダウンサンプリング処理の概要を示す概略説明図
【図10】従来技術に係る虹彩認証支援方法の処理手順を示すフローチャート
【図11】従来技術に係る虹彩認証支援装置及び虹彩認証装置の概略構成例を示す概略ブロック図
【図12】従来技術に係る高解像度処理を説明する行列式の大きさを示す図
【図13】従来技術に係る高解像度処理における輝度勾配の算出方法を説明するための概略説明図
【符号の説明】
【0099】
1 携帯電話機
10 本発明に係る虹彩認証支援装置
11 撮像画像取得手段
12 虹彩領域抽出手段
13 選択手段
14 虹彩画像補正手段
15 輝度補正手段
16 高解像度画像生成手段
17 記憶手段
20 本発明に係る虹彩認証装置
21 撮像制御手段
22 虹彩認証用画像取得手段
23 認証手段
24 記憶手段
30 サブカメラ(撮像手段)
31 照明用LED
40 モニタ
50 操作ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
虹彩認証の実行時に、瞳孔及び虹彩を含む目の撮像画像を所定の枚数用いて、前記撮像画像の第1解像度より高い第2解像度の虹彩認証用画像を生成する高解像度処理を実行する高解像度画像生成手段と、
前記虹彩認証の実行時に、認証対象者の前記目を前記第1解像度で連続撮像して前記撮像画像を出力する撮像手段から、前記高解像度処理の実行に必要な枚数以上の前記撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、
前記高解像度処理の実行前に、少なくとも前記高解像度処理に用いる前記撮像画像の内、前記瞳孔の大きさが規定の大きさと一致しない前記撮像画像を補正対象画像とし、前記補正対象画像の夫々について、前記虹彩の輪郭を変化させずに、前記補正対象画像の前記瞳孔の大きさと前記規定の大きさの関係に基づいて、前記虹彩部分の画像を前記瞳孔の中心方向に相対的に圧縮または拡大し、前記瞳孔の大きさを前記規定の大きさに補正する虹彩画像補正処理を行う虹彩画像補正手段と、を備えることを特徴とする虹彩認証支援装置。
【請求項2】
前記撮像画像取得手段が、前記高解像度処理の実行に必要な枚数より多い所定枚数の前記撮像画像を取得するように構成され、
前記撮像画像取得手段が取得した前記撮像画像から、所定の選択条件に従って、前記高解像度処理の実行に必要な枚数の前記撮像画像を選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の虹彩認証支援装置。
【請求項3】
前記選択手段が、前記撮像画像の夫々についてピントの照合度を求め、前記照合度が高い前記撮像画像から順に前記撮像画像を選択するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の虹彩認証支援装置。
【請求項4】
前記選択手段が、前記撮像画像の夫々について、前記撮像画像における前記虹彩の大きさを求め、前記虹彩の大きさに基づいて前記撮像画像を選択するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の虹彩認証支援装置。
【請求項5】
前記虹彩画像補正手段による前記虹彩画像補正処理の実行前或いは実行後に、前記撮像画像夫々における前記虹彩を含む虹彩領域の平均輝度値を求め、前記撮像画像から1枚の中心画像を選択し、前記中心画像を除く前記撮像画像の内、前記虹彩領域の平均輝度値が、前記中心画像の前記虹彩領域の平均輝度値を基に規定される輝度範囲外である前記撮像画像の夫々について、前記虹彩領域の平均輝度値が前記中心画像の前記虹彩領域の平均輝度値となるように、輝度補正処理を行う輝度補正手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の虹彩認証支援装置。
【請求項6】
高解像度画像生成手段が、前記撮像画像から1枚の中心画像を選択し、前記中心画像を除く前記撮像画像の夫々について、前記中心画像における前記虹彩を含む虹彩領域の位置に対する前記撮像画像の前記虹彩領域の位置を示す動きベクトルを求め、当該動きベクトルを用いて撮像画像における虹彩領域の位置ずれを補償する動き補償処理を行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の虹彩認証支援装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の虹彩認証支援装置から前記虹彩認証用画像を取得する虹彩認証用画像取得手段と、
前記虹彩認証用画像から虹彩パターンを抽出し、前記虹彩認証用画像の虹彩パターンに基づいて虹彩認証指標を生成し、前記虹彩認証指標を予め記憶された虹彩登録指標と比較し、前記虹彩認証指標と前記虹彩登録指標の一致度が所定の判定度以上の場合に認証する認証手段と、を備えることを特徴とする虹彩認証装置。
【請求項8】
虹彩認証の実行時に、瞳孔及び虹彩を含む目の撮像画像を所定の枚数用いて、前記撮像画像の第1解像度より高い第2解像度の虹彩認証用画像を生成する高解像度処理を実行する高解像度画像生成工程と、
前記虹彩認証の実行時、前記高解像度画像生成工程の実行前に、認証対象者の前記目を前記第1解像度で連続撮像する撮像手段により、前記撮像画像を前記高解像度処理の実行に必要な枚数以上の前記撮像画像を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した前記撮像画像を取得し、所定の記憶手段に記憶する撮像画像取得工程と、
前記撮像画像取得工程の実行後、前記高解像度画像生成工程の実行前に、少なくとも前記高解像度処理に用いる前記撮像画像の内、前記瞳孔の大きさが規定の大きさと一致しない前記撮像画像を補正対象画像とし、前記補正対象画像の夫々について、前記虹彩の輪郭を変化させずに、前記補正対象画像の前記瞳孔の大きさと前記規定の大きさの関係に基づいて、前記虹彩部分の画像を前記瞳孔の中心方向に相対的に圧縮または拡大し、前記瞳孔の大きさを前記規定の大きさに補正する虹彩画像補正処理を行う虹彩画像補正工程と、を実行することを特徴とする虹彩認証支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−282925(P2009−282925A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137111(P2008−137111)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】