説明

蛍光体及び発光装置

【課題】本発明は、紫色光を吸収して緑色光を高効率で発し、且つ紫色域よりも長波長域の光を吸収しにくい蛍光体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る蛍光体は、BaLaAlO:Ce3+にMgがドープされた構造を有する金属酸化物固溶体から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体及びこの蛍光体を備える発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)の発光効率向上に伴い、LEDを応用した発光装置が普及、拡大しつつある。特に、LED及びこのLEDからの発光を波長変換する蛍光体を備える発光装置は、高効率化、小型・薄型化、省電力化が可能であり、且つ白色や電球色など用途に応じた任意の色での発光が可能である等の特長を有する。このためこの種の発光装置は、屋内外用の照明器具、液晶ディスプレイ、携帯電話や携帯情報端末等のバックライト用光源、室内外広告等に利用される表示装置、車載用光源等への利用が期待され、開発が進められている。
【0003】
この種の発光装置としては、現在、青色LEDと、青色光を吸収して発光する蛍光体とを備える発光装置が主流になっている。この場合に例えば蛍光体として、緑色光を発する蛍光体(緑色蛍光体)及び赤色光を発する蛍光体(赤色蛍光体)が組み合わされて使用されると、白色光を発する発光装置が構成される。
【0004】
一方で、近年、紫色光を発する紫色LEDに注目が集まりつつある。紫色LEDから発せられる光は演色性が高く、且つ色むらが少ないため、紫色LEDが使用されることで発光装置が発する光の品質が向上することが期待されている。この場合に、白色光を発する発光装置を得るためには、蛍光体として、例えば紫色光を吸収して青色の光を発光する青色蛍光体、紫色光を吸収して緑色の光を発光する緑色蛍光体、及び紫色光を吸収して赤色の光を発光する赤色蛍光体の組み合わせが使用される。
【0005】
青色光を発する発光素子と組み合わせて使用される代表的な緑色蛍光体としては、CaSc:Ce3+の組成を有する蛍光体がある(特許文献1参照)。しかし、この蛍光体は、青色光を発する発光素子との組み合わせでは有効であるが、励起スペクトルの発光強度のピークが紫色域(390〜430nm)よりも長波長側にずれた位置にあるため、紫色LEDなどの紫色光を発光する発光素子との組み合わせにおいては、発光効率が低くなってしまう。
【0006】
一方、特許文献2には、発光デバイスにおける半導体発光素子から発せられる青紫色光又は青色光を吸収して緑色光又は黄緑色光を発する第1の蛍光物質として、ユーロピウム元素で賦活したベータサイアロン蛍光体が開示されている。この第1の蛍光物質は、第1の蛍光物質より発光波長が長く、黄緑色光、黄色光、黄赤色光のいずれかを発する第2の蛍光物質(ユーロピウム元素で賦活したアルファサイアロン蛍光体)、及び第2の蛍光物質より発光波長が長く、黄赤色光、赤色光のいずれかを発する第3の蛍光物質(一般式(Ca,Eu)AlSiNで表される窒化物結晶赤色蛍光体)と、混合され、発光デバイスに適用される。
【0007】
上記ユーロピウム元素で賦活したベータサイアロン蛍光体(β−サイアロン:Eu2+)の励起スペクトルは、紫色域(390〜430nm)を含むブロードな波形を有するため、紫色光を発する発光素子との組み合わせは成立しえる。
【0008】
しかし、β−サイアロン:Eu2+の励起スペクトルの波形は上記のようにブロードであることから、β−サイアロン:Eu2+は青色蛍光体から発せられる青色光をも吸収して緑色光に変換してしまう。すなわち、発光素子から発せられる紫色光の一部が、青色蛍光体によって青色光に変換されてから更に緑色蛍光体によって緑色光に変換されてしまうという、二段階の波長変換が生じてしまう。光が蛍光体によって波長変換されると、ある程度の強度の低下は避けられないため、発光装置内で前記のような二段階の波長変換が生じると、発光装置から外部に出射する光の強度が低下し、全体的な発光効率の低下を招いてしまう。
【0009】
このように、従来、特に紫色光を発する発光素子との組み合わせにおいて、発光装置の高い発光効率を達成しえる緑色蛍光体は見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3700502号公報
【特許文献2】特許第4148245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の事由に鑑みてなされたものであり、紫色光を吸収して緑色光を高効率で発し、且つ紫色域よりも長波長域の光を吸収しにくい蛍光体を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、紫色光を発する発光素子と、紫色光を吸収して緑色光を高効率で発すると共に紫色域よりも長波長域の光を吸収しにくい蛍光体とを備え、高効率で発光する発光装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る蛍光体は、BaLaAlO:Ce3+にMgがドープされた構造を有する金属酸化物固溶体から成る。
【0014】
本発明の第一の態様に係る蛍光体は、Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体から成り、Ba、La、Ce、Al、及びMgのイオンを(1−x):(1+x−y):y:(1−x):x(但し、xは0.1<x<0.8を満たす数であり、yは0.001≦y≦0.3を満たす数である。)のモル比で含有する。
【0015】
本発明の第二の態様に係る蛍光体は、Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体から成り、Ba、La、Ce、Al、及びMgのイオンを1:(1−y):y:(1−x):x(但し、xは0.1<x<0.8を満たす数であり、yは0.001≦y≦0.3を満たす数である。)のモル比で含有する。
【0016】
本発明に係る発光装置は、発光素子と、前記発光素子から発せられる光を吸収して発光する波長変換部材とを備え、前記波長変換部材が前記蛍光体を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蛍光体は、紫色光を吸収して緑色光を高効率で発し、且つ紫色域よりも長波長域の光を吸収しにくい。
【0018】
本発明に係る発光装置は、紫色光を発する発光素子と、紫色光を吸収して緑色光を高効率で発すると共に紫色域よりも長波長域の光を吸収しにくい蛍光体とを備え、高効率で発光する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における発光装置を示す、一部破断した分解斜視図である。
【図2】前記発光装置の断面図である。
【図3】前記発光装置が備える波長変換部材の内部構造を示す模式図である。
【図4】実施例1〜5で得られたサンプル、BaLaAlO、並びにSr0.8La1.2Al0.8Mg0.2についての、粉末X線回折測定により得られた回折強度曲線を示すグラフである。
【図5】実施例6〜8,10,11で得られたサンプル、BaLaAlO、並びにSr0.8La1.2Al0.8Mg0.2についての、粉末X線回折測定により得られた回折強度曲線を示すグラフである。
【図6】実施例9で得られたサンプル、並びに比較例についての、励起スペクトルと発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例2〜4についての、励起スペクトルにおける発光ピーク波長での発光強度を示すグラフである。
【図8】実施例8〜11についての、励起スペクトルにおける発光ピーク波長での発光強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[蛍光体]
本実施形態に係る蛍光体は、BaLaAlO:Ce3+にMgがドープされた構造を有する金属酸化物固溶体から成る。
【0021】
BaLaAlOはオリビン型の結晶構造を有する。BaLaAlO:Ce3+は、BaLaAlOに発光中心であるCe3+イオンがドープされた構造を有する。Ce3+は、BaLaAlOの結晶中におけるLa3+と置換することで結晶中に固溶する。このBaLaAlO:Ce3+もオリビン型構造を有する。本実施形態に係る蛍光体は、更にBaLaAlO:Ce3+にMgがドープされた構造を有する。この蛍光体の結晶構造は、オリビン型構造ではなくペロブスカイト構造となることが確認されている。この金属酸化物固溶体においては、Mg2+イオンは、Al3+イオンとイオン半径が近いため、結晶中のAl3+イオンが占めるサイトの一部においてAl3+イオンと置換することで結晶中に固溶していると考えられる。
【0022】
Mgがドープされていないオリビン型構造の蛍光体(BaLaAlO:Ce3+)は発光効率が極端に低く、その発光スペクトルの主たるピーク波長は470nm付近に存在する。これに対し、本実施形態に係る蛍光体の発光効率は非常に高く、且つこの蛍光体の発光スペクトルの主たるピーク波長は500〜520nm付近であることからこの蛍光体は緑色光を発する。更に、本実施形態に係る蛍光体の励起スペクトルでは、紫色域(390〜430nm)で強度が高く、それよりも長波長域では強度が低い。このように本実施形態に係る蛍光体は紫色光の吸収効率が高いと共に、青色光などの紫色域よりも長波長側の波長域の光は吸収しにくく、更に緑色光を高効率で発する。
【0023】
本実施形態の第一の態様においては、蛍光体はBa、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体から成り、且つBa、La、Ce、Al、及びMgのイオンを(1−x):(1+x−y):y:(1−x):xのモル比で含有する。xは0.1<x<0.8を満たす数であり、この範囲において発光効率の高い蛍光体が得られる。このxの値は特に0.2≦x≦0.6を満たす数であることが好ましい。yは0.001≦y≦0.3を満たす数であり、この範囲において発光効率の高い蛍光体が得られる。yの値が0.001未満であると蛍光体中のCe3+イオン濃度が低くなることで蛍光体の発光効率が低下してしまい、この値が0.3より大きいと濃度消光が顕著になることでやはり蛍光体の発光効率が低下してしまう。yの値は特に0.01〜0.02の範囲であることが好ましい。
【0024】
この第一の態様に係る蛍光体は、下記一般式(1)で表される組成を有する金属酸化物固溶体である。
【0025】
Ba1−x(La1+x−yCe)Al1−xMg …(1)
この第一の態様に係る蛍光体では、結晶中のLaイオン濃度がBaLaAlO:Ce3+に比して増大することで、Mgイオンのドープに伴う電荷補償がなされ、電気的中性が保たれている。
【0026】
この第一の態様に係る蛍光体の発光スペクトルの主たるピーク波長は、Mgイオンの比率に応じて若干変動するが、500nm付近にあるため、この蛍光体は緑色光を発する。更に、第一の態様に係る蛍光体の励起スペクトルでは、Mgイオンの比率に応じて若干変動するが430nmの波長付近よりも短波長側において強度が高く、これよりも長波長側では強度が低い。このため、第一の態様に係る蛍光体は紫色域の光を吸収して発光すると共にそれよりも長波長域の光を吸収しにくい。
【0027】
更に、この第一の態様に係る蛍光体は、紫色域よりも短波長の波長域の光も吸収して発光し得る。このため、第一の態様に係る蛍光体は、紫色域よりも短波長の近紫外域などの光を発する発光素子を備える発光装置にも適用され得る。
【0028】
本実施形態の第二の態様においては、蛍光体はBa、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体から成り、且つBa、La、Ce、Al、及びMgのイオンを1:(1−y):y:(1−x):xのモル比で含有する。xは0.1<x<0.8を満たす数であり、この範囲において発光効率の高い蛍光体が得られる。このxの値は特に0.2≦x≦0.6を満たす数であることが好ましく、更に0.4≦x≦0.6を満たす数であることが好ましい。yは0.001≦y≦0.3を満たす数であり、この範囲において発光効率の高い蛍光体が得られる。yの値が0.001未満であると蛍光体中のCe3+イオン濃度が低くなることで蛍光体の発光効率が低下してしまい、この値が0.3より大きいと濃度消失が顕著になることでやはり蛍光体の発光効率が低下してしまう。yの値は特に0.01〜0.02の範囲であることが好ましい。
【0029】
この第二の態様に係る蛍光体は、下記一般式(2)で表される組成を有する金属酸化物固溶体である。
【0030】
Ba(La1−yCe)Al1−xMg4−x/2 …(2)
この第二の態様に係る蛍光体では、La3+イオンによる電荷補償はなされていないが、結晶中に酸素イオンの欠陥が生じることで電気的中性が保たれている。但し、Ce3+イオンの一部がCe4+に酸化されていると共にそれに伴って酸素イオンの比率が4−x/2よりも大きくなることで電気的中性が保たれている可能性もある。
【0031】
この第二の態様に係る蛍光体の発光スペクトルの主たるピーク波長は520nm付近であるため、この蛍光体は緑色光を発する。更に、第二の態様に係る蛍光体の励起スペクトルの主たるピーク波長は紫色域(390〜430nm)にあって、それ以外の波長域の光の吸収性が低く、且つこの主たるピークは非常にシャープである。このため、第一の態様に係る蛍光体は紫色域の光を非常に高い選択性をもって吸収する。更に、この第二の態様に係る蛍光体の発光効率は、第一の態様に係る蛍光体と比べても非常に高い。
【0032】
本実施形態に係る蛍光体の製造方法の一例について説明する。まず、Ba、La、Ce、Al、及びMgを含む原料が用意される。これらの金属を含む原料としては、これらの金属の単体、及びこれらの金属の酸化物、塩などの化合物が挙げられる。具体的には、例えばBaを含む原料としてBaCOが、Laを含む原料としてLaが、Ceを含む原料としてはCeOが、Alを含む原料としてはAlが、Mgを含む原料としてはMgOが挙げられる。これらの原料が配合されることで混合物が調製される。
【0033】
この混合物が焼成されることで固溶反応が進行し、これにより本実施形態に係る蛍光体を含む材料(以下、蛍光材料という)が得られる。
【0034】
混合物の焼成にあたっては、例えば混合物がアルミナや石英等の材質から形成された容器内に入れられる。続いてこの容器内の混合物が非酸化性ガス雰囲気中で1200〜1600℃の温度で焼成される。この非酸化性ガス雰囲気は、例えば水素/窒素混合ガス雰囲気、水素/アルゴン混合ガス雰囲気等の弱還元性ガス雰囲気であることが好ましい。加熱時間は混合物の固溶反応が充分に進行するように適宜設定される。このような条件による混合物の本焼成の前に、予め混合物が大気雰囲気中で仮焼成されてもよく、この場合は蛍光体の結晶性が特に高くなる。混合物が仮焼成される場合には、この仮焼成時の焼成温度は、本焼成時の焼成温度以下であることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る蛍光材料は、必要に応じて解砕・粉砕され、続いて更に必要に応じて水洗あるいは酸洗浄されることで不要成分が除去されることで、粉末化される。
【0036】
最も好ましくは、蛍光材料の製造時に、混合物中の金属元素の比率が目的とする蛍光体における金属イオンの比率と一致するように、原料の配合比が調整される。更に、混合物の焼成時には固溶反応が充分に進行することが好ましい。この場合、実質的に本実施形態に係る蛍光体のみからなる蛍光材料が得られる。但しこの場合、蛍光材料中には僅に残留する未反応の原料、副生成物、その他の不純物等が含まれてもよい。
【0037】
本実施形態に係る蛍光体は、LEDなどの発光素子を備える発光装置に適用され得る。発光素子は、特に限定されないが、紫色域の光、特に主発光ピークが390nm〜430nmの範囲にある光を発する発光素子であることが好ましい。このような発光素子の好ましい一例として、窒化物半導体LEDが挙げられる。窒化物半導体LEDにおける窒化物半導体は、例えばInGaAlN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の組成を有する化合物半導体である。この窒化物半導体の重要な具体例として、、GaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等が挙げられる。
【0038】
このように発光装置が紫色光を発する発光素子と本実施形態に係る蛍光体とを備えていると、発光素子から発せられる光を蛍光体が吸収し、この蛍光体が高効率で緑色光を発する。このため発光装置の発光効率が高くなる。
【0039】
更に、発光装置が、緑色域以外の光を発する蛍光体、例えば青色の蛍光を発する蛍光体や赤色の蛍光を発する蛍光体を更に備えていても、本実施形態に係る蛍光体は紫色域以外の光の吸収性が低いため、緑色域以外の光を発する蛍光体から発せられる光は本実施形態に係る蛍光体に吸収されにくい。このため、発光素子から発せられる光が緑色域以外の光を発する蛍光体に吸収されて緑色域以外の光に波長変換され、更にこの光が本実施形態に係る蛍光体に吸収されて緑色に波長変換されるような、二段階の波長変換が抑制される。従って、発光装置が複数種の蛍光体を備えていても、発光装置の発光効率が高くなる。
【0040】
[発光装置]
本実施形態に係る発光装置について説明する。この発光装置1は、図1,2に示されるように、発光素子であるLEDチップ10、実装基板20、光学部材60、封止部50、並びに波長変換部材(色変換部材)70を備える。後述するように、波長変換部材(色変換部材)70は本実施形態に係る蛍光体から形成される蛍光体粒子を備える。
【0041】
LEDチップ10は実装基板20に実装されている。実装基板20の形状は平面視矩形板状である。実装基板20の厚み方向に面する第一の表面上にはLEDチップ10への給電用の一対の導体パターン23が形成され、更にこの第一の表面上にLEDチップ10が実装されている。LEDチップ10と導体パターン23とはボンディングワイヤ14で電気的に接続されている。光学部材60はドーム状の部材であり、実装基板20の第一の表面上の固着されている。この光学部材60と実装基板20との間に、LEDチップ10が収容されている。この光学部材60は、LEDチップ10から放射される光の配向を制御する機能を有する。封止部50は透光性の封止材料から形成される。封止部50は光学部材60と実装基板20とで囲まれた空間に充填されている。この封止部50により、LEDチップ10および複数本(本実施形態では、2本)のボンディングワイヤ14が封止されている。波長変換部材70は、光学部材60を包囲するようにドーム状に形成されている。LEDチップ10が発光すると、LEDチップ10から放射された光(励起光)によって波長変換部材70中の蛍光体粒子71が励起されて励起光よりも長波長の蛍光(LEDチップ10の発光色とは異なる色の光からなる変換光)を放射する。光学部材60と波長変換部材70との間には、空気などの気体が充実する空隙80が介在している。実装基板20の第一の表面上には、光学部材60の外周を包囲する環状の堰部27が形成されている。堰部27は第一の表面上から突出するように形成される。このため、光学部材60が実装基板20に固着される際に、光学部材60と実装基板20とで囲まれた空間から封止材料が溢れ出ようとしても、この封止材料が堰部27によって堰き止められる。
【0042】
LEDチップ10の主発光ピークは350nm〜470nmの範囲にあることが好ましい。このようなLEDチップ10としては、青色光を放射するGaN系の青色LEDチップや近紫外光を放射する近紫外LEDチップが挙げられる。
【0043】
GaN系の青色LEDチップには、結晶成長用基板として、サファイア基板よりも格子定数や結晶構造がGaNに近く且つ導電性を有するn形のSiC基板が用いられる。このSiC基板上に、例えばダブルへテロ構造を有する発光部が形成される。発光部は、たとえばGaN系化合物半導体材料などを原料として、エピタキシャル成長法(例えば、MOVPE法など)などで形成される。このLEDチップ10は、その実装基板20の第一の表面と対向する表面上にカソード電極を備え、それとは反対側の表面上にアノード電極を備える。このカソード電極およびアノード電極は、例えばNi膜とAu膜との積層膜により構成される。カソード電極およびアノード電極の材料は特に制限されず、良好なオーミック特性が得られる材料であればよく、例えばAlなどであってもよい。
【0044】
LEDチップ10の構造は上記構造に限定されない。例えば、結晶成長用基板上にエピタキシャル成長により発光部などが形成された後、発光部を支持するSi基板などの支持基板が発光部に固着され、更にその後、結晶成長用基板が除去されることで、LEDチップ10が形成されてもよい。
【0045】
実装基板20は矩形板状の伝熱板21と配線基板22とで構成される。伝熱板21は熱伝導性材料から形成される。この伝熱板21にLEDチップ10が実装される。配線基板22は例えば矩形板状のフレキシブルプリント配線板である。配線基板22は伝熱板21上に例えばポリオレフィン系の固着シート29を介して固着される。配線基板22の中央部には、伝熱板21におけるLEDチップ10の実装位置を露出させる矩形状の窓孔24が形成されている。この窓孔24の内側で、LEDチップ10が後述のサブマウント部材30を介して伝熱板21に実装される。したがって、LEDチップ10で発生した熱は配線基板22を介さずにサブマウント部材30および伝熱板21へ伝導する。
【0046】
配線基板22は、ポリイミドフィルムからなる絶縁性基材221と、この絶縁性基材221上に形成された、LEDチップ10への給電用の一対の導体パターン23とを備える。更に配線基板22は、各導体パターン23を覆うと共に絶縁性基材221上の導体パターン23が形成されていない部位を覆う保護層26を備える。保護層26は例えば光反射性を有する白色系のレジスト(樹脂)から形成される。この場合、LEDチップ10から配線基板22に向けて光が放射されても、保護層26で光が反射されることで配線基板22における光の吸収が抑制される。これにより、LEDチップ10から外部への光取り出し効率が向上し、発光装置の光出力が向上する。尚、各導体パターン23は、絶縁性基材221の外周形状の半分よりもやや小さな外周形状に形成されている。絶縁性基材221はFR4基板、FR5基板、紙フェノール樹脂基板などから形成されてもよい。
【0047】
各導体パターン23は、平面視矩形状の端子部231を二つずつ備える。この端子部231は配線基板22の窓孔24の近傍に位置し、この端子部231にボンディングワイヤ14が接続される。各導体パターン23は、更に平面視円形状の外部接続用電極部232を一つずつ備える。この外部接続用電極部232は、配線基板22の外周付近に位置している。導体パターン23は、例えばCu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成される。
【0048】
保護層26は、この保護層26から各導体パターン23が部分的に露出するようにパターニングされている。配線基板22の窓孔24の近傍で、各導体パターン23における端子部231が保護層26から露出している。更に、配線基板22の外周付近で、各導体パターン23における外部接続用電極部232が保護層26から露出している。
【0049】
LEDチップ10は、上述の通りサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されている。サブマウント部材30は、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率の差に起因してLEDチップ10に働く応力を緩和する。サブマウント部材30は、LEDチップ10のチップサイズよりも大きなサイズの矩形板状に形成されている。
【0050】
サブマウント部材30は、上記応力を緩和する機能だけでなく、LEDチップ10で発生した熱を伝熱板21におけるLEDチップ10のチップサイズよりも広い範囲に伝導させる熱伝導機能をも有している。本実施形態における発光装置1では、LEDチップ10がサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されているので、LEDチップ10で発生した熱がサブマウント部材30および伝熱板21を介して効率良く放熱されるとともに、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率差に起因してLEDチップ10に働く応力が緩和される。
【0051】
サブマウント部材30は、例えば熱伝導率が比較的高く且つ絶縁性を有するAlNから形成される。
【0052】
LEDチップ10のカソード電極がサブマウント部材30上に重ねられ、このカソード電極が、カソード電極と接続される電極パターン(図示せず)および金属細線(例えば、金細線、アルミニウム細線など)からなるボンディングワイヤ14を介して、二つの導体パターン23のうちの一方と電気的に接続される。LEDチップ10は、ボンディングワイヤ14を介して、カソード電極に接続されていない導体パターン23と電気的に接続されている。
【0053】
LEDチップ10とサブマウント部材30との接合には、例えば、SnPb、AuSn、SnAgCuなどの半田や、銀ペーストなどが用いられる。特にAuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田が用いられることが好ましい。サブマウント部材30がCuから形成され、LEDチップ10とサブマウント部材30との接合にAuSnが用いられる場合には、サブマウント部材30およびLEDチップ10における互いに接合される面に、あらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が施されることが好ましい。サブマウント部材30と伝熱板21との接合には、例えば、AuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田が用いられることが好ましい。サブマウント部材30と伝熱板21との接合にAuSnが用いられる場合には、伝熱板21におけるサブマウント部材30と接合される面に、あらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が施されることが好ましい。
【0054】
サブマウント部材30の材料はAlNに限らず、線膨張率が結晶成長用基板の材料である6H−SiCに比較的近く且つ熱伝導率が比較的高い材料であればよい。例えば、サブマウント部材30の材料として複合SiC、Si、Cu、CuWなどが採用されてもよい。なお、サブマウント部材30は、上述の熱伝導機能を有しているため、伝熱板21におけるLEDチップ10に対向する面の面積は、LEDチップ10における伝熱板21と対向する面の面積よりも、十分に大きいことが望ましい。
【0055】
本実施形態における発光装置1では、伝熱板21の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面から、保護層26の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面までの寸法よりも、伝熱板21における前記表面から、サブマウント部材30の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面までの寸法の方が、大きくなっている。このような位置関係となるように、サブマウント部材30の厚み寸法が設定されている。このため、LEDチップ10から放射された光が、配線基板22の窓孔24の内側を通って配線基板22に吸収されることが、抑制される。これによりLEDチップ10から外部への光取り出し効率が更に向上し、発光装置の光出力が更に向上する。
【0056】
なお、サブマウント部材30の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面における、LEDチップ10が配置される位置の周囲に、LEDチップ10から放射された光を反射する反射膜が形成されてもよい。この場合、LEDチップ10から放射された光がサブマウント部材30に吸収されることが防止される。これによりLEDチップ10から外部への光取り出し効率が更に向上し、発光装置の光出力が更に向上する。反射膜は、例えば、Ni膜とAg膜との積層膜により構成される。
【0057】
上述の封止部50を形成するための材料である封止材料としては、シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂に限らず、例えば、アクリル樹脂や、ガラスなどが用いられてもよい。
【0058】
光学部材60は、光透過性を有する材料(例えば、シリコーン樹脂、ガラスなど)から形成される。特に光学部材60がシリコーン樹脂から形成されると、光学部材60と封止部50との屈折率差および線膨張率差が低減され得る。
【0059】
光学部材60の光出射面602(LEDチップ10とは反対側に面する表面)は、光入射面601(LEDチップ10側に面する表面)から光学部材60内へ入射した光が、光出射面602と空隙80との境界で全反射しないような、凸曲面状に形成されている。光学部材60は、LEDチップ10と光軸が一致するように配置されている。したがって、LEDチップ10から放射され光学部材60の光入射面601に入射された光は、光出射面602と空隙層80との境界で全反射されることなく波長変換部材70まで到達しやすくなり、発光装置からの発光の全光束が増大する。なお、光学部材60は、位置によらず法線方向に沿って厚みが一様となるように形成されている。
【0060】
波長変換部材70は、その光入射面701(LEDチップ10側に面する表面)が、光学部材60の光出射面602に沿った形状に形成されている。したがって、光学部材60の光出射面602の位置によらず、法線方向における光学部材60の光出射面602と波長変換部材70との間の距離が略一定値となっている。波長変換部材70は、位置によらず法線方向に沿った厚みが一様となるように成形されている。波長変換部材70は、実装基板20に対して、例えば接着剤(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)などで固着される。
【0061】
LEDチップ10から放射される光は光入射面701から波長変換部材70内へ入射し、波長変換部材70の光出射面(LEDチップ10とは反対側の表面)702を通じて波長変換部材70外へ出射される。波長変換部材70中を光が通過する際にこの光の一部が波長変換部材70中の蛍光体粒子によって波長変換される。これにより、LEDチップ10から放射される光と波長変換部材70中の蛍光体粒子の種類との組み合わせに応じた色の光が発光装置1から発せられる。
【0062】
波長変換部材70は、図3に示されるように、透光性媒体72と、この透光性媒体72中に分散している複数の蛍光体粒子71とを備える。この蛍光体粒子71の少なくとも一部が、本実施形態に係る蛍光体を含む。
【0063】
波長変換部材70は、蛍光体粒子71として、本実施形態に係る蛍光体を含む粉末状の蛍光材料(以下、本実施形態に係る蛍光体粒子という)と共に、本実施形態に係る蛍光体粒子以外の蛍光体粒子を含有してもよい。
【0064】
発光装置1が白色光を発する場合において、発光装置1におけるLEDチップ10が紫色光を放射する紫色LEDチップである場合には、波長変換部材70が蛍光体粒子71として、例えば本実施形態に係る蛍光体粒子と共に、赤色の蛍光を発する蛍光体粒子(赤色蛍光体粒子)及び青色の蛍光を発する蛍光体粒子(青色蛍光体粒子)を含有する。
【0065】
赤色蛍光体粒子を構成する蛍光体としては、例えばLaS:Eu3+、(Ca,Sr)Si:Eu2+、(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+などの組成を有する蛍光体が挙げられる。青色蛍光体粒子を構成する蛍光体としては、例えばBaMgAl1017:Eu2+、(Sr,Ca,Ba)10(POCl:Eu2+、SrMgSi:Eu2+などの組成を有する蛍光体が挙げられる。本実施形態に係る蛍光体粒子と共に、本実施形態に係る蛍光体粒子以外の緑色蛍光体粒子が併用されてもよい。この緑色蛍光体粒子を構成する蛍光体としては、例えば(Ba,Sr)SiO:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu2+などの組成を有する蛍光体が挙げられる。
【0066】
蛍光体粒子71の粒径は特に制限されないが、蛍光体粒子71の平均粒子径が大きい方が、蛍光体粒子71中の欠陥密度が小さくなって発光時のエネルギ損失が少なくなり、発光効率が高くなる。このため、発光効率を向上する観点からは、蛍光体粒子71の平均粒子径は1μm以上であることが好ましく、更に好ましくは5μm以上である。この平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置により測定される値である。
【0067】
蛍光体粒子71には、蛍光体粒子71と透光性媒体72との界面での励起光や蛍光の反射が抑制されるために、コーティングなどの適宜の表面処理が施されていてもよい。
【0068】
透光性媒体72の屈折率は、蛍光体粒子71の屈折率に近い方が好ましいが、この限りではない。透光性媒体72の材質としてシロキサン結合を有するケイ素化合物やガラス等が挙げられる。これらの材質は耐熱性および耐光性(青色〜紫外線等の短波長の光に対する耐久性)に優れるため、蛍光体粒子71の励起光である青色光から紫外光にわたる波長域の光によって透光性媒体72が劣化することが抑制される。ケイ素化合物の例としては、シリコーン樹脂、オルガノシロキサンの加水分解縮合物、オルガノシロキサンの縮合物などが、公知の重合手法(ヒドロシリル化などの付加重合、ラジカル重合など)により架橋することで生成する複合樹脂が挙げられる。透光性媒体72として、例えばアクリル樹脂や、有機成分と無機成分とがnmレベルもしくは分子レベルで混合、結合されることで形成される有機・無機ハイブリッド材料などが採用されてもよい。
【0069】
波長変換部材70中の蛍光体粒子71の含有量は、蛍光体粒子71及び透光性媒体72の種類、波長変換部材70の寸法、波長変換部材70に要求される波長変換能等を考慮して適宜決定されるが、例えば5質量%〜30質量%の範囲である。
【0070】
この波長変換部材70に蛍光体粒子71の励起光が照射されると、蛍光体粒子71が励起光を吸収して、励起光よりも長波長の蛍光を発光する。これにより、波長変換部材70を光が透過する際に、この光の波長が蛍光体粒子71によって変換される。
【実施例】
【0071】
[実施例1〜5]
(蛍光材料の作製)
本実施例では、上記第一の態様に対応する蛍光体を含有する蛍光材料のサンプルを作製した。
【0072】
まず、Baを含む原料としてBaCO粉末を、Laを含む原料としてLa粉末を、Ceを含む原料としてCeO粉末を、Alを含む原料としてAl粉末を、Mgを含む原料としてMgO粉末を、それぞれ用意した。
【0073】
これらの原料を配合し、混合することで混合物を調製した。この際、混合物中のBa、La、Ce、Al、及びMgのモル比が(1−x):(1+x−y):y:(1−x):xとなるように原料を配合した。各実施例における金属元素の具体的なモル比、並びにx及びyの値を、表1に示す。
【0074】
【表1】

この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、大気中で1300℃で12時間加熱することで仮焼成した。この仮焼成により形成された焼結体を粉砕し、これにより得られた粉体をアルミナるつぼに入れ、水素濃度5%の水素/アルゴン混合ガス雰囲気下で、1500℃で12時間加熱することで本焼成した。この本焼成により形成された焼結体を粉砕することで、粉末状のサンプルを得た。
【0075】
(X線回折測定)
実施例1〜5で得られたサンプルの、CuKα線を利用した粉末X線回折測定をおこなった。その結果を図4に示す。更に、参考のため、図4にオリビン型構造を有するBaLaAlO及びペロブスカイト型構造を有するSr0.8La1.2Mg0.2について得られた回折強度曲線も、併せて示す。
【0076】
この結果によると、実施例2〜4では、原料の混合物中における金属元素の組成比が異なるにもかかわらず、回折強度曲線のピーク位置はほぼ同じであり、且つピーク位置はペロブスカイト型構造を有するSr0.8La1.2Mg0.2の場合と似通った位置に現れた。従って、実施例2〜4におけるサンプル中には、原料の混合物中における金属元素のモル比と一致するモル比で金属イオンを含有するペロブスカイト型構造の金属酸化物固溶体が含まれていると、判断される。更に、これらのサンプルは、ほぼ前記金属酸化物固溶体のみから構成されていると、判断される。
【0077】
一方、実施例5では、回折強度曲線にオリビン型構造を有するBaLaAlOの場合と似通った位置にピークが現れている。このため、実施例1におけるサンプル中には、Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体と共に、オリビン型構造を有する相が含有されていると、判断される。
【0078】
実施例1では、回折強度曲線に、実施例2〜5では認められない特徴的なピークが現れている。このため、実施例5におけるサンプル中には、Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体と共に、固溶反応時に生成した副生成物からなる相が含有されていると、判断される。
【0079】
尚、合成条件が改善されることで、目的とする金属酸化物固溶体の収率は更に向上することが見込まれる。
【0080】
[実施例6〜11]
本実施例では、上記第二の態様に対応する蛍光体を含有する蛍光材料のサンプルを作製した。
【0081】
まず、Baを含む原料としてBaCO粉末を、Laを含む原料としてLa粉末を、Ceを含む原料としてCeO粉末を、Alを含む原料としてAl粉末を、Mgを含む原料としてMgO粉末を、それぞれ用意した。
【0082】
これらの原料を配合し、混合することで混合物を調製した。この際、混合物中のBa、La、Ce、Al、及びMgのモル比が1:(1−y):y:(1−x):xとなるように原料を配合した。各実施例における金属元素の具体的なモル比、並びにx及びyの値を、表2に示す。
【0083】
【表2】

この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、大気中で1300℃で12時間加熱することで仮焼成した。この仮焼成により形成された焼結体を粉砕し、これにより得られた粉体をアルミナるつぼに入れ、水素濃度5%の水素/アルゴン混合ガス雰囲気下で、1500℃で12時間加熱することで本焼成した。この本焼成により形成された焼結体を粉砕することで、粉末状のサンプルを得た。
【0084】
(X線回折測定)
実施例6〜8,10,11で得られたサンプルの、CuKα線を利用した粉末X線回折測定をおこなった。その結果を図5に示す。更に、参考のため、図5には、オリビン型構造を有するBaLaAlOについて得られた回折強度曲線を,並びにペロブスカイト型構造を有するSr0.8La1.2Mg0.2について得られた回折強度曲線も、併せて示す。
【0085】
この結果によると、実施例7〜9では、原料の混合物中における金属元素の組成比が異なるにもかかわらず、回折強度曲線のピーク位置はほぼ同じであり、且つピーク位置はペロブスカイト型構造を有するSr0.8La1.2Mg0.2の場合と似通った位置に現れた。従って、実施例7,8,10におけるサンプル中には、原料の混合物中における金属元素のモル比と一致するモル比で金属イオンを含有するペロブスカイト型構造の金属酸化物固溶体が含まれていると、判断される。特に実施例8,10では、サンプルはほぼ前記金属酸化物固溶体のみから構成されていると、判断される。
【0086】
一方、実施例11では、回折強度曲線にオリビン型構造を有するBaLaAlOの場合と似通った位置にピークが現れている。このため、実施例11におけるサンプル中には、Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体と共に、オリビン型構造を有する相が含有されていると、判断される。実施例10でもオリビン型構造を有する相が存在していると判断される。
【0087】
実施例6では、回折強度曲線に、実施例7〜11では認められない特徴的なピークが現れている。このため、実施例6におけるサンプル中には、Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体と共に、固溶反応時に生成した副生成物からなる相が含有されていると、判断される。
【0088】
尚、合成条件が改善されることで、目的とする金属酸化物固溶体の収率は更に向上することが見込まれる。
【0089】
[発光特性評価]
実施例2〜4、並びに実施例8〜11で得られたサンプルについて、励起スペクトルと発光スペクトルを測定した。測定装置としては日本分光株式会社製の分光蛍光光度計FP−6500を用いた。
【0090】
発光スペクトルの測定にあたり、実施例2〜4については励起光の波長を390nmnmとし、実施例8〜11については励起光の波長を405nmとした。励起スペクトルの測定にあたり、モニター波長は各実施例において発光スペクトルの発光強度が最大値となる波長とした。
【0091】
この結果、実施例2〜4で得られたサンプルでは、発光スペクトルの主たるピーク波長は、サンプルごとに多少変動があるものの、500nm付近であることが確認された。目視によればこれらのサンプルからの発光が緑色であることが確認された。更に、実施例2〜4で得られたサンプルの励起スペクトルでは、430nmの波長付近よりも短波長側において発光強度が高く、これよりも長波長側では発光強度が低いことが確認された。
【0092】
実施例8〜11で得られたサンプルでは、発光スペクトルの主たるピーク波長は520nm付近であり、且つこの主たるピークは非常にシャープであった。目視によればこれらのサンプルからの発光も緑色であることが確認された。実施例8〜11で得られたサンプルの励起スペクトルでは、主たるピーク波長は紫色域(390〜430nm)にあって、この主たるピークも非常にシャープであり、それ以外の波長域では発光強度は非常に小さかった。
【0093】
図6は実施例9で得られたサンプルについての、励起スペクトルと発光スペクトルの測定結果を示す。図6中では、発光スペクトルは実線で、励起スペクトルは破線で示されている。図6中には、比較例として、Ba(La0.99Ce0.01)AlOについての励起スペクトルと発光スペクトルの測定結果も併せて示す。
【0094】
図7は、実施例2〜4についての、励起スペクトルにおける発光ピーク波長での発光強度を示す。この発光強度は、実施例4(x=0.2)の場合の発光強度を100として規格化した値(相対発光強度)である。
【0095】
図8は、実施例8〜11についての、励起スペクトルにおける発光ピーク波長での発光強度を示す。この発光強度は、実施例11(x=0.1)の場合の発光強度を100として規格化した値(相対発光強度)である。
【符号の説明】
【0096】
1 発光装置
70 波長変換部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaLaAlO:Ce3+にMgがドープされた構造を有する金属酸化物固溶体から成る蛍光体。
【請求項2】
Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体から成り、Ba、La、Ce、Al、及びMgのイオンを(1−x):(1+x−y):y:(1−x):x(但し、xは0.1<x<0.8を満たす数であり、yは0.001≦y≦0.3を満たす数である。)のモル比で含有する蛍光体。
【請求項3】
Ba、La、Ce、Al、及びMgの金属酸化物固溶体から成り、Ba、La、Ce、Al、及びMgのイオンを1:(1−y):y:(1−x):x(但し、xは0.1<x<0.8を満たす数であり、yは0.001≦y≦0.3を満たす数である。)のモル比で含有する蛍光体。
【請求項4】
発光素子と、前記発光素子から発せられる光を吸収して発光する波長変換部材とを備え、前記波長変換部材が請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光体を備えている発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−167146(P2012−167146A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27494(P2011−27494)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】