説明

蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置、および画像表示装置

【課題】高いチキソトロープ性を示し、かつ装置内への充填時に蛍光体の沈降が抑制される高性能な蛍光体含有組成物を提供する。
【解決手段】(A)シリカ微粒子、(B) Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上を含有する金属酸化物、(C)蛍光体、および(D)液状媒体を含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。好ましくは、(B)が(A)に対して5重量%以上95重量%以下であり、好ましくは、(E)無機微粒子、(C)蛍光体、および(D)液状媒体を含有する蛍光体含有組成物であって、(E)無機微粒子がSi、Al、ZrおよびTiから選ばれる2以上を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置、および画像表示装置に関する。詳しくは、発光装置への充填から硬化までの間に蛍光体の沈降が少ない蛍光体含有組成物、および前記蛍光体含有組成物を用いて形成された発光装置、および前記発光装置を用いて形成された照明装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長変換材料としての蛍光体は、白色発光の発光装置の材料として、近紫外域から青色発光の半導体発光素子として注目されている発光効率の高い窒化ガリウム(GaN)系発光ダイオード(light emitting diode。以下、適宜「LED」と略称する。)や半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)と組み合わせて用いられており、その発光装置は画像表示装置や照明装置の発光源として用いられている。
【0003】
前記の蛍光体は半導体発光素子の発光効率の高い近紫外域から青色の励起光に対し効率の高いものが要求される(特許文献1〜2)。
一方、上記発光装置を製造する場合、蛍光体を発光装置の所望の位置に配置するため、通常、蛍光体を液状媒体に分散させた蛍光体含有組成物を装置内に充填(注入)する工程が含まれる。しかしながら、この工程の際、注入された蛍光体含有組成物が硬化する間に蛍光体が沈降し、蛍光体含有組成物内部の蛍光体の分布に偏りが生じるため、発光が不均一となり、蛍光体の利用効率に問題があった。この問題を解決する目的で、例えば高粘度の液状媒体を使用する方法や、酸化ケイ素などの無機フィラーを添加することにより、蛍光体含有組成物の粘度を増大せしめて蛍光体の沈降を防止する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、蛍光体含有組成物の粘度が高いと、(i)注入時に配管の閉塞などトラブルの原因となりやすい、(ii)気泡が抜けにくい、(iii)半導体素子のリードワイヤーの断線が起こりやすい、などの悪影響をもたらすことがあった。
【0004】
そこで、注入する際に粘度が低く、注入されて後硬化するまでの間に蛍光体が沈降しない蛍光体含有組成物が求められていた。そして、この問題の解決のために蛍光体含有組成物にその一部が少なくともナノ粒子であるチキソトロープ剤を添加することにより蛍光体の沈降を防止しようとする提案がなされている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平10−190066号公報
【特許文献2】特開平10−247750号公報
【特許文献3】特開2003−64358号公報
【特許文献4】特表2005−524737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チキソトロープ剤には、一般にシリカ微粒子が用いられるが、シリカ微粒子は嵩密度が低く、所望のチキソトロープ性を発現するために要する体積量が多く、液状媒体と混合するのに特別な工夫が必要であった。また、励起波長が青色より短い近紫外領域の場合に散乱や吸収により発光強度が低下する恐れがあった。
そこで、従来使用されてきたシリカ微粒子より少量の添加でチキソトロープ性を発現するチキソトロープ剤の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上述の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、液体媒体と蛍光体からなる蛍
光体含有組成物に、特定のチキソトロープ剤を添加することにより、蛍光体含有組成物が高いチキソトロープ性を示し、かつ蛍光体の沈降が抑制されることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕(A)シリカ微粒子、(B) Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上を含有する金属酸化物、(C)蛍光体、および(D)液状媒体を含有することを特徴とする蛍光体含有組成物(以下、「第一の本発明の蛍光体含有組成物」と称することがある。)。
〔2〕(B)Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上を含有する金属酸化物が(A)シリカ微粒子に対して5重量%以上95重量%以下である前記〔1〕に記載の蛍光体含有組成物。
〔3〕(E)無機微粒子、(C)蛍光体、および(D)液状媒体を含有する蛍光体含有組成物であって、(E)無機微粒子がSi、Al、ZrおよびTiから選ばれる2以上を含有することを特徴とする蛍光体含有組成物(以下、「第二の本発明の蛍光体含有組成物」と称することがある。)。
〔4〕(E)無機微粒子中における、Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上の含有量が0.1モル%以上95モル%以下である前記〔3〕に記載の蛍光体含有組成物。
〔5〕(D)液状媒体が珪素含有化合物である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の蛍光体含有組成物。
〔6〕シランカップリング剤を含有する前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の蛍光体含有組成物。
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の蛍光体含有組成物を用いて形成された発光装置。
〔8〕前記〔7〕に記載の発光装置を用いて形成された照明装置。
〔8〕前記〔7〕に記載の発光装置を用いて形成された画像表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高いチキソトロープ性を示し、かつ装置内への充填時に蛍光体の沈降が抑制される高性能な蛍光体含有組成物を提供することができる。また、かかる本発明の蛍光体含有組成物を用いて形成された発光装置は、充填部における蛍光体の分布に偏りが生じないため、発光ムラがなく高性能である。また、前記発光装置を用いて形成された照明装置および画像表示装置は、発光ムラがなく高性能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]蛍光体含有組成物
本発明の蛍光体含有組成物は、特定のチキソトロープ剤を含有することを特徴とする。本発明に用いられるチキソトロープ剤を用いた場合、蛍光体含有組成物は高いチキソトロープ性を示し、発光装置への充填工程において流動状態では粘度が低く、隅々まで充填される。一方、充填された後の静止状態においては粘度が上昇し、蛍光体の沈降が抑制される。
【0009】
第一の本発明の蛍光体含有組成物においては、(A)シリカ微粒子、および(B)Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上を含有する金属酸化物が前記チキソトロープ剤に相当する。
第二の本発明の蛍光体含有組成物においては、(E)Si、Al、ZrおよびTiから選ばれる2以上を含有する無機微粒子が前記チキソトロープ剤に相当する。
【0010】
また、いずれの本発明の蛍光体含有組成物も、(C)蛍光体、および(D)液状媒体を含有していることを特徴とする。
さらに、いずれの本発明の蛍光体含有組成物も要すればその他の任意成分を含有していてもよい。以下、各構成成分について説明する。
[1−1](A)シリカ微粒子
本発明の(A)シリカ微粒子は、前述の通り、チキソトロープ剤としての役割を担保するものであり、具体的には、例えばフュームドシリカを挙げることができる。フュームドシリカは、HとOとの混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎でSiClガスを酸化、加水分解させることにより作製される。フュームドシリカの一次粒子は、平均粒径が5〜50nm程度の非晶質の二酸化ケイ素(SiO)を主成分とする球状の超微粒子であり、この一次粒子がそれぞれ凝集し、粒径が数百nmである二次粒子を形成する。フュームドシリカは、超微粒子であるとともに、急冷によって作製されるため、表面の構造が化学的に活性な状態となっている。
【0011】
本発明に使用するシリカ微粒子は、BET法による比表面積が、通常50m/g以上、好ましくは80m/g以上、さらに好ましくは100m/g以上である。また、通常300m/g以下、好ましくは200m/g以下である。比表面積が小さすぎるとシリカ微粒子の添加効果が認められず、大きすぎると樹脂中への分散処理が困難になる。
本発明に使用するシリカ微粒子の一次粒子の平均粒子径は上記の比表面積から計算により求めたものである。平均粒子径をd、1gの粉体が有する表面積をS、形状係数をφとすると
d=6/Sφ
の関係が成立する(出典:化学大辞典)。
【0012】
本発明に使用する前記シリカ微粒子は、市販のものを使用することができ、具体的には、例えば日本アエロジル株式会社もしくはデグサ(Degussa)社製「アエロジル」(登録商標)が挙げられる。
[1−2]金属酸化物
(B)Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上を含有する金属酸化物は、前記(A)シリカ微粒子と併用してチキソトロープ剤としての役割を担保するものである。(B)の金属酸化物としては、市販のものを使用でき、具体的には、例えばデグサ社製「AEROXIDE Alu C」(登録商標)、「AEROXIDE TiOP25」(登録商標)、「AEROXIDE TiOP25S」(登録商標)、「AEROXIDE TiOPF2」(登録商標)、「VP Zirconium Oxide 3−YSZ」、「VP Zirconium Oxide PH」が挙げられる。
【0013】
(B)の含有量は、(A)に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは12重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。(B)の含有量が少なすぎると沈降抑制効果が不十分となり、多すぎると散乱効果や紫外線吸収効果等により発光の効率が低下する。
【0014】
[1−3](E)無機微粒子
本発明の(E)無機微粒子は、前述の通り、チキソトロープ剤としての役割を担保するものであり、(A)シリカ微粒子と(B)金属酸化物が一体になったものと考えることができる。(E)無機微粒子は、フュームドシリカと同じ製法を用いて製造することができる。例えばSiとAlを含有する酸化物の場合、HとOとの混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎でSiClガス、AlClガスを共燃焼させ、酸化、加水分解させることにより作製される。Ti、Zrを含有する場合も同様である。(E)無機微粒子中のAl、ZrおよびTiから選ばれる1以上の含有量は、(E)無機微粒子に対して、通常0.1モル%以上、好ましくは0.3モル%以上、さらに好ましくは0.5モル%以上であり、通常95モル%以下、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上の含有量が少なすぎると沈降抑制効果が不十分となり、多すぎると散乱効果や紫外線吸収効果等により発光の効率が低下する。
【0015】
(E)無機微粒子は市販のものを使用でき、具体的には、例えばデグサ社製「AEROSIL MOX 80」(登録商標)、「AEROSIL MOX 170」(登録商標)が挙げられる。
[1−4]チキソトロープ性と沈降抑制効果
本発明のチキソトロープ剤が前記効果を奏する理由は明らかでないが、以下のように推察される。すなわち、本発明の蛍光体含有組成物はチキソトロープ剤((A)+(B)または(E))、蛍光体(C)及び液状媒体(D)から構成されている。チキソトロープ剤の一成分である(A)シリカ微粒子または(E)無機微粒子が組成物の系に添加されると、(A)シリカ微粒子または(E)無機微粒子の水酸基同士の水素結合によりネットワークが形成される。一方、チキソトロープ性発現の理由は応力が小さい場合はネットワークが維持され高粘度を示すが、応力が大きい場合はネットワークが切れて低粘度を示すものとして説明されている。一方、蛍光体の表面は多くの場合、Si-OH,N-OH,C-OH等の水酸基が存在する。シリカ微粒子を蛍光体含有組成物に添加した場合は(A)シリカ微粒子または(E)無機微粒子の水酸基と蛍光体表面の水酸基間の水素結合により蛍光体がシリカ微粒子のネットワーク内に組み込まれ、チキソトロープ性を示すものと推定される。
【0016】
しかしながら、本発明はシリカ微粒子以外に他の金属酸化物等の無機粒子を添加することによりチキソトロープ性、ならびにシリカ微粒子と液状媒体からなるネットワークへの蛍光体微粒子の組み込みがシリカ微粒子単独の場合に比べ極端に増大することから前記以外の要因が作用しているものと推定される。一般に単独の酸化物では酸性点が少量であったり、弱い酸強度しか持たないものでも、他の酸化物を混合することによって酸性点が増加したり強度が大きくなる例が多くある。例えば、SiOは弱い酸性点しか示さないがAlと混合すると強い酸性を示すことが知られている(粉体の材料化学、荒井康夫 署、培風館)。本発明における高い沈降抑制効果は前述のチキソトロープ剤の酸性点と蛍 光体の表面の塩基性との間にクーロン力が働き、水酸基同士相互作用より強い相互作用が発生するためと考えられ、高いチキソトロープ性ならびに沈降抑制効果を発現する原因と推定される。
【0017】
以上の観点から、(A)シリカ微粒子または(E)無機微粒子は水酸基を多く有するものが好ましく、酸強度の面からはSiO−Al、SiO−TiO、SiO−ZrO、TiO−ZrOなどの組み合わせによって酸強度の強い酸性点が得られるものが好ましい。またこれら2種の金属は置換固溶してもよい。酸の種類は反応によっても異なるが、ブレインステッド酸でもルイス酸でもよい。また、構造は、結晶性であっても無定形であってもよい。
【0018】
[1−5]蛍光体
本発明の蛍光体含有組成物に用いられる蛍光体とは、一般に光の照射によって可視光を発する物質をいう。
蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるY、ZnSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが好ましい。
【0019】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物、YS等の酸硫化物、(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩、YSiO、ZnSiO等の珪酸塩、SnO、Y等の酸化物、GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩、Ca10(PO(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl等のハロリン酸塩、Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0020】
ただし、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0021】
[1−5−1]橙色ないし赤色蛍光体
本発明の蛍光体含有組成物は、橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「橙色ないし赤色蛍光体」という。)を含有していてもよい。
赤色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下が望ましい。
【0022】
本発明にかかる蛍光体以外の橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0023】
さらに、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0024】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY(SiO:Eu、Ca(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、(BaMg)Si:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−xScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0025】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0026】
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Mg)(PO:Sn等が挙げられる。
[1−5−2]緑色蛍光体
本発明の蛍光体含有組成物は、緑色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という。)を含有していてもよい。
【0027】
緑色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常490nm以上、好ましくは500nm以上、また、通常570nm以下、好ましくは550nm以下が望ましい。
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0028】
また、そのほか、緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0029】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
[1−5−3]青色蛍光体
本発明の蛍光体含有組成物は、青色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という。)を含有していてもよい。
【0030】
青色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常420nm以上、好ましくは440nm以上、また、通常480nm以下、好ましくは470nm以下が望ましい。
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)(POCl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0031】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、SrAl1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr ,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0032】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
なお、上述のような蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0033】
[1−5−4]黄色蛍光体
本発明の蛍光体含有組成物は、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「黄色蛍光体」という。)を含有していてもよい。
黄色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。黄色蛍光体の発光ピーク波長が短すぎると黄色成分が少なくなり演色性が劣る発光装置となる可能性があり、長すぎると発光装置の輝度が低下する虞がある。
【0034】
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y,Tb,Gd,Lu,Smの少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al,Ga,Scの少なくとも1種類の元素を表す。)やM2M3M412:Ce(ここで、M2は2価の金属元素、M3は3価の金属元素、M4は4価の金属元素)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AEM5O:Eu(ここで、AEは、Ba,Sr,Ca,Mg,Znの少なくとも1種類の元素を表し、M5は、Si,Geの少なくとも1種類の元素を表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba,Sr,Ca,Mg,Znの少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0035】
また、そのほか、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
[1−5−5]蛍光体の組み合わせ
本発明の蛍光体含有組成物に使用される蛍光体の具体的な好ましい組み合わせの例として、赤色蛍光体としてEu付活窒化物蛍光体から選ばれる1以上の蛍光体、ならびに緑色蛍光体としてCe付活珪酸塩蛍光体およびCe付活酸化物蛍光体から選ばれる1以上の蛍光体を含有する蛍光体含有組成物が挙げられる。
【0036】
Eu付活窒化物赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等が挙げられ、中でもCaAlSiN:Eu(以下「CASN」と略記することがある。)、および(Sr,Ca)AlSiN:Eu(以下「SCASN」と略記することがある)が好適である。
【0037】
Ce付活珪酸塩緑色蛍光体としては、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等が挙げられ、中でもCa(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce(以下「CSMS」と略記することがある)が好適である。
Ce付活酸化物緑色蛍光体としては、CaSc:Ce(以下「CSO」と略記することがある。)の組み合わせが挙げられる。これらの蛍光体の組み合わせは所望の色度座標、演色指数、発光効率などに応じて適宜組み合わせればよい。
【0038】
[1−5−6]その他の蛍光体の物性
本発明に使用する蛍光体の粒径は特に制限はないが、中央粒径(D50)で通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。D50が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう虞がある。一方、D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる虞がある。
【0039】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。また、蛍光体粒子の形状は、蛍光体部形成に影響を与えない限り、特に限定されない。
【0040】
なお、本発明において、中央粒径(D50)、粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から得ることが出来る。前記重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールなどの溶媒に蛍光体を分散させる。
【0041】
レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定する。
この重量基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を中央粒径D50と表記する。また、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDが小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0042】
[1−5−7]蛍光体の表面処理
本発明に使用する蛍光体は、表面に水酸基を多数有することが好ましい。必要なら蛍光体の表面処理によって水酸基数を増大することもできる。
更に、耐水性を高める目的で、または蛍光体含有組成物中で蛍光体の不要な凝集を防ぐ目的で、表面処理が行われていてもよい。
【0043】
かかる表面処理の例としては、例えば特開2002−223008号公報に記載の有機材料、無機材料、ガラス材料などを用いた表面処理、特開2000−96045号公報等に記載の金属リン酸塩による被覆処理、金属酸化物による被覆処理、シリカコート等の公知の表面処理が挙げられる。
具体的には、例えば蛍光体の表面に上記金属リン酸塩を被覆させるには、(i)所定量のリン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどの水溶性のリン酸塩と塩化カルシウム、硫酸ストロンチウム、塩化マンガン、硝酸亜鉛等のアルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の水溶性の金属塩化合物とを蛍光体懸濁液中に添加し、攪拌する。(ii)アルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の金属のリン酸塩を懸濁液中で生成させると共に、生成したこれらの金属リン酸塩を蛍光体表面に沈積させる。(iii)水分を除去する。
【0044】
また、シリカコートとしては、水ガラスを中和してSiOを析出させる方法、アルコキシシランを加水分解したものを表面処理する方法(例えば、特開平3−231987号公報)等が挙げられ、分散性を高める点においてはアルコキシシランを加水分解したものを表面処理する方法が好ましい。
[1−6]液状媒体
使用される液状媒体としては無機系材料および/または有機系材料が使用できる。
【0045】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
有機系材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。特に照明など大出力の発光装置が必要な場合、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用するのが好ましい。
【0046】
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。

[1−6−1]シリコーン系材料
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば一般組成式(1)で表される化合物及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2・・・式(1)
ここで、RからRは同じであっても異なってもよく、有機官能基、シリル基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。またM、D、T及びQは0から1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0048】
シリコーン系材料を半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる
[1−6−2]シリコーン系材料の種類
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン系材料)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン系材料)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0049】
[1−6−2−1]付加型シリコーン系材料
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては、信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0050】
上記付加型シリコーン系材料は、具体的には、例えば下記平均組成式(1a)で表される(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、下記平均組成式(2a)で表される(B)ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンとを、(A)の総アルケニル基に対して(B)の総ヒドロシリル基量が0.5〜2.0倍となる量比で混合し、触媒量の(C)付加反応触媒の存在下反応させて得ることが出来る。
【0051】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記組成式(1a)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
SiO〔(4−n)/2〕 (1a)
(但し、式(1a)中、Rは同一又は異種の置換又は非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、又は水酸基であり、nは1≦n<2を満たす正数である。ただし、Rのうち少なくとも1つはアルケニル基である。)
(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンは、下記組成式(2a)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0052】
R’SiO〔(4−a−b)/2〕 (2a)
(但し、式(2a)中、R’はアルケニル基を除く同一又は異種の置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、a及びbは0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0かつ、0.8≦a+b≦2.6を満たす正数である。)
以下、付加型シリコーン系材料につき更に詳しく説明する。
【0053】
上記式(1a)のRにおいて、アルケニル基とはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましい。また、Rが炭化水素基である場合は、メチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、フェニル基等の炭素数1〜20の1価炭化水素基から選択されるものが好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。Rはそれぞれ同じでも異なっていても良いが、耐UV性が要求される場合にはRの80%以上はメチル基であることが好ましい。Rが炭素数1〜8のアルコキシ基や水酸基であってもよいが、アルコキシ基や水酸基の含有率は(A)の重量の3%以下であることが好ましい。
【0054】
上記組成式(1a)において、nは1≦n<2を満たす正数であるが、この値が2以上であると封止材としての十分な強度が得られなくなり、1未満であると合成上このオルガノポリシロキサンの合成が困難になる。
なお、(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0055】
次に、(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンは、(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応をすることにより、組成物を硬化させる架橋剤として作用するものである。
組成式(2a)において、R’はアルケニル基を除く一価の炭化水素基を表わす。ここで、R’としては、組成式(1a)中のRと同様の基(ただし、アルケニル基を除く)を挙げることができる。また、耐UV性要求される用途に用いる場合には少なくとも80%以上はメチル基であることが好ましい。
【0056】
組成式(2a)において、aは、通常0.7以上、好ましくは0.8以上であり、通常2.1以下、好ましくは2以下の正の数である。また、bは、通常0.001以上、好ましくは0.01以上であり、通常1.0以下の正の数である。ただし、a+bは、0.8以上、好ましくは1以上であり、2.6以下、好ましくは2.4以下である。
さらに、(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンは、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のSiH結合を有する。
【0057】
この(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常3以上、また、通常1000以下、好ましくは300以下のものを使用することができる。
なお、(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンは、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0058】
上記(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンの配合量は、(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの総アルケニル基量に依存する。具体的には、(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの総アルケニル基に対して、(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンの総SiH量が、通常0.5モル倍以上、好ましくは0.8モル倍以上、また、通常2.0モル倍以下、好ましくは1.5モル倍以下となる量とすればよい。
【0059】
(C)付加反応触媒は、(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基と(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒である。この(C)付加反応触媒としては、例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。
【0060】
なお、(C)付加反応触媒は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として、(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン及び(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンの合計重量に対して、1ppm以上、特に2ppm以上、また、500ppm以下、特に100ppm以下配合することが好ましい。
【0061】
付加型シリコーン系材料を得るための組成物には、上記(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン及び(C)付加反応触媒に加え、任意成分として硬化性、ポットライフを与えるための付加反応制御剤、硬度・粘度を調節するための例えばアルケニル基を有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンの他にも直鎖状の非反応性オルガノポリシロキサン、ケイ素原子数が2〜10個程度の直鎖状又は環状の低分子オルガノポリシロキサンなどを本発明の効果を損なわない範囲で含有させても良い。
【0062】
上記組成物の硬化条件は特に制限されないが、120℃〜180℃、30℃〜180分の条件とすることが好ましい。得られる硬化物が硬化後にも柔らかいゲル状である場合には、ゴム状や硬質プラスチック状のシリコーン樹脂と比較して線膨張係数大きいため、室温付近の低温にて10時間〜30時間硬化することにより内部応力の発生を抑制することができる。
【0063】
付加型シリコーン系材料は公知のものを使用することができ、さらには金属やセラミックスへの密着性を向上させる添加剤や有機基を導入しても良い。例えば、特許3909826号公報、特許3910080号公報、特開2003−128922号公報、特開2004−221308号公報、特開2004−186168号公報に記載のシリコーン材料が好適である。
【0064】
[1−6−2−2]縮合型シリコーン系材料
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(1b)及び/又は(2b)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0065】
m+m−1 (1b)
(式(1b)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Yは、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
(Ms+s−t−1 (2b)
(式(2b)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Yは、1価の有機基を表わし、Yは、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
また、硬化触媒としては、例えば金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zr、Hf、Zn、Snのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。
【0066】
縮合型シリコーン系材料は公知のものを使用することができ、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光装置用部材が好適である。
【0067】
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが欠点とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
〈1〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
〈2〉後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
【0068】
(a)ピークトップの位置がポリジメチルシロキサンを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がポリジメチルシロキサンを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〈3〉シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0069】
本発明においては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈1〉を有するシリコーン系材料が好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を全て有するシリコーン系材料が好ましい。以下、上記の特徴〈1〉〜〈3〉について説明する。
[1−6−2−2−1]特徴〈1〉(ケイ素含有率)
本発明に好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【0070】
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
【0071】
[1−6−2−2−2]特徴〈2〉(固体Si−NMRスペクトル)
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に好適なシリコーン系材料において、(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般に後述の(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
【0072】
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大きすぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
【0073】
また、ピークの半値幅が小さすぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
【0074】
本発明に好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
【0075】
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料 ポリジメチルシロキサン
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
【0076】
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5),p.1141,
1998年等を参考にする。
【0077】
[1−6−2−2−3]特徴〈3〉(シラノール含有率)
本発明に好適なシリコーン系材料は、これを硬化して得られる硬化物のシラノール含有率が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0078】
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば(固体Si−NMRスペクトル)の(固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出)において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0079】
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
【0080】
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
[1−6−3]液状媒体の含有量
液状媒体は、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。
【0081】
液状媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で蛍光体を添加する必要がある。少なすぎると流動性がなく取り扱いにくい。
液状媒体は、前述の様に、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液状媒体は単独で用いてもよいが、複数を混合してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、通常、バインダーに対して25重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0082】
液状媒体の粘度は通常100mPa.s以上、好ましくは800mPa・s以上、更に 好ましくは1500mPa・s以上である。
[1−7]シランカップリング剤
本発明に使用するシランカップリング剤は特に制限はないが、具体的には、例えばX〜SiRの化学式で表わされる化合物を挙げることができる。シランカップリング剤は分子中に2個以上の異なった反応基を有する。即ち、例えばXはアルキル基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基などの有機質と反応するもしくは親和性を有する基である。一方、R,R,Rはメトキシ基、エトキシ基といった加水分解可能な基である。かかるシランカップリング剤は、通常では結びつきにくい有機質材料と無機質材料とのバインダーとしての作用を発現する。本発明においては蛍光体と液状媒体との間に結合を作り、蛍光体の沈降を抑制するものと推定される。
【0083】
なお、シランカップリング剤としては、好ましくは、X〜Si(OR)の構造を有する化合物が挙げられる。式中、Xは、有機基を示すが、好ましくは、炭素数が通常1以上 、好ましくは3以上さらに好ましくは、5以上のアルキル基である。炭素数が少ないとリジッドなため空間的に蛍光体と活性な樹脂部分との結合が困難になる場合がある。Rは、炭素数が通常1以上のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基が挙げられる。
【0084】
シランカップリング剤は、市販のものを使用することができ、具体的には、東レ・ダウコーニング社製シランカップリング剤、信越シランカップリング剤等を挙げることができる。
シランカップリング剤の蛍光体組成物中への添加量は通常0.1〜30重量%、好ましくは0.2〜3重量%である。少なすぎると十分な結合が得られず、多すぎると結合に供されない余剰部が液体媒体と分離することが考えられる。
【0085】
[1−8]その他の成分
本発明の蛍光体含有組成物は、上記成分の他に、色素、酸化防止剤、安定化剤(燐系加工安定化剤などの加工安定化剤、酸化安定化剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤などの耐光性安定化剤など)、光拡散材、フィラーなど、当該分野で公知の添加物のいずれをも用いることができる。
【0086】
[1−9]蛍光体含有組成物の製造方法
本発明の蛍光体含有組成物の製造法には特に制限はなく、チキソトロープ剤((A)成分および(B)成分もしくは(E)成分)、(C)蛍光体、シランカップリング剤および必要に応じて添加する添加物が(D)液状媒体中に均一に分散する方法であれば良い。
チキソトロープ剤((A)成分および(B)成分もしくは(E)成分)の配合量は(D)液状媒体100重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは0.3重量部以上である。また、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。チキソトロープ剤の配合量が少なすぎると、効果が発現せず、多すぎると分散が困難となる。
【0087】
(C)蛍光体の配合量は通常、(D)液状媒体100重量部に対して通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上である。また、通常100重量部以下、好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。
(D)液状媒体としてシリコーン樹脂を使用する場合には、例えばシリコーン樹脂、蛍光体、チキソトロープ剤、ならびに架橋剤、硬化触媒、増量材、およびその他の添加剤を配合し、ミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、ニーダー等で混合する等、従来公知の方法で製造することができる。この場合、前記成分を全て混合して、1液の形態として液状シリコーン樹脂組成物を製造しても良いが、
(i)シリコーン樹脂と蛍光体及び増量材を主成分とするシリコーン樹脂液と、(ii)架橋剤と硬化触媒を主成分とする架橋剤液の2液を調製しておき、使用直前にシリコーン樹脂液と架橋剤液を混合して液状シリコーン樹脂組成物を製造しても良い。
【0088】
[1−10]蛍光体含有組成物の物性
[1−10−1]粘度
本発明の蛍光体含有組成物の粘度は、通常500mPa・s以上、好ましくは1000mPa・s以上、さらに好ましくは2000mPa・s以上であり、通常30000mPa・s以下、好ましくは20000mPa・s以下、さらに好ましくは15000mPa・s以下、特に好ましくは10000mPa・s以下、とりわけ好ましくは8000mPa・s以下である。凹部を有する容器にポッティングを行う場合にはレベリングしやすい20000mPa・s以下が扱いやすく脱泡も行いやすいので望ましい。リフレクタの無いチップオンボード形式の発光デバイス上への塗布など、塗布液の形状保持が重要である場合には15000mPa・s以上、かつ高いチキソトロープ性を有することが好ましい。粘度が高すぎると注入時に配管の閉塞などトラブルの原因となりやすく、また気泡が抜けにくい、更には半導体素子のリードワイヤーの断線が起こりやすいなどの悪影響をもたらす。一方、粘度が低すぎると蛍光体粒子の沈降が起こるので好ましくない。
【0089】
なお本発明の蛍光体含有組成物は、発光装置内へ十分に充填(注入)させ得ること、また充填後液状媒体が硬化する前に蛍光体が沈降しないために、チキソトロープ性を示すものが好ましい。チキソトロープ性を示すことは、ローター回転数を1rpmおよび5rpmとした場合のB型粘度計における粘度が1rpmの粘度が5rpmの粘度より大きいことで確認することができる。
【0090】
[2]発光装置
本発明の発光装置は、[1]に記載の蛍光体含有組成物を用いて、公知の方法により形成される。以下、本発明の発光装置について説明する。
[2−1]光源
本発明の発光装置における光源は、前記蛍光体を励起する光を発光するものである。光源の発光波長は、蛍光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の蛍光体を使用することができる。通常は、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する蛍光体が使用され、具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光体が使用される。この光源としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(LED)や半導体レーザーダイオード(LD)等が使用できる。
【0091】
中でも、光源としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、同じ電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlxGayN発光層、GaN発光層、又はInxGayN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInxGayN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InxGayN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0092】
なお、上記においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlxGayN層、GaN層、又はInxGayN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0093】
[2−2]蛍光体の選択
本発明の発光装置において、前述の蛍光体(赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、1種以上の蛍光体を適切に組み合わせればよい。光源として青色発光素子を使用する場合は蛍光体として青色の補色関係にある黄色蛍光体を、より演色性の高い白色を得るには赤、及び緑色蛍光体を使用することが好ましい。近紫外光を発する半導体発光素子を用いる場合は赤、緑、青の3色の蛍光体を使用するのが好ましい。
【0094】
具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、光源と、蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、以下の(i)〜(iii)の組み合わせ が挙げられる。
(i)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体および緑色蛍光体を使用する。
(ii)光源として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を併用する。
(iii)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、橙色蛍光体および緑色蛍光体 を使用する。
【0095】
[2−3]発光装置の構成
本発明の発光装置は、上述の光源および本発明の蛍光体含有組成物を備えていればよく、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の光源および蛍光体含有組成物を配置してなる。この際、光源の発光によって蛍光体が励起されて発光を生じ、且つ、この光源の発光および/または蛍光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、赤色蛍光体は、緑色蛍光体、青色蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、赤色蛍光体を含有する層の上に青色蛍光体と緑色蛍光体を含有する層が積層されていてもよい。
【0096】
[2−4]発光装置の実施形態
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置1は、フレーム2と、光源である青色LED3と、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し、それとは異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4からなる。
【0097】
フレーム2は、青色LED3、蛍光体含有部4を保持するための金属または樹脂製の基部である。フレーム2の上面には、図1中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成されている。これにより、フレーム2はカップ形状となっているため、発光装置1から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。更に、フレーム2の凹部2A内面は、銀などの金属メッキにより、可視光域全般の光の反射率を高められており、これにより、フレーム2の凹部2A内面に当たった光も、発光装置1から所定方向に向けて放出できるようになっている。
【0098】
フレーム2の凹部2Aの底部には、光源として青色LED3が設置されている。青色LED3は、電力を供給されることにより青色の光を発するLEDである。この青色LED3から発せられた青色光の一部は、蛍光体含有部4内の発光物質(蛍光体)に励起光として吸収され、また別の一部は、発光装置1から所定方向に向けて放出されるようになっている。
【0099】
また、青色LED3は前記のようにフレーム2の凹部2Aの底部に設置されているが、ここではフレーム2と青色LED3との間は接着剤5によって接着され、これにより、青色LED3はフレーム2に設置されている。
更に、フレーム2には、青色LED3に電力を供給するための金製のワイヤ6が取り付けられている。つまり、青色LED3の上面に設けられた電極(図示省略)とは、ワイヤ6を用いてワイヤボンディングによって結線されていて、このワイヤ6を通電することによって青色LED3に電力が供給され、青色LED3が青色光を発するようになっている。なお、ワイヤ6は青色LED3の構造にあわせて1本又は複数本が取り付けられる。
【0100】
更に、フレーム2の凹部2Aには、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4が設けられている。蛍光体含有部4は、蛍光体と透明樹脂とで形成されている。蛍光体は、青色LED3が発する青色光により励起されて、青色光よりも長波長の光である光を発する物質である。蛍光体含有部4を構成する蛍光体は一種類であっても良いし、複数からなる混合物であってもよく、青色LED3の発する光と蛍光体発光部4の発する光の総和が所望の色になるように選べばよい。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と
白色との間の中間的な色であっても良い。また、透明樹脂は蛍光体含有部4の封止材料であり、ここでは、上述の封止材料を用いている。
【0101】
モールド部7は、青色LED3、蛍光体含有部4、ワイヤ6などを外部から保護するとともに、配光特性を制御するためのレンズとしての機能を持つ。モールド部7には主にエポキシ樹脂を用いることができる。
図2は、図1に示す発光装置1を組み込んだ面発光照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。図2において、8は面発光照明装置、9は拡散板、10は保持ケースである。
【0102】
この面発光照明装置8は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース10の底面に、多数の発光装置1を、その外側に発光装置1の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置したものである。発光の均一化のために、保持ケース10の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板9を固定している。
そして、面発光照明装置8を駆動して、発光装置1の青色LED3に電圧を印加することにより青色光等を発光させる。その発光の一部を、蛍光体含有部4において波長変換材料である本発明の蛍光体と必要に応じて添加した別の蛍光体が吸収し、より長波長の光に変換し、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により、高輝度の発光が得られる。この光が拡散板9を透過して、図面上方に出射され、保持ケース10の拡散板9面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0103】
また、本発明の発光装置において、特に励起光源として面発光型のものを使用する場合、蛍光体含有部を膜状とするのが好ましい。即ち、面発光型の発光体からの光は断面積が十分大きいので、蛍光体含有部をその断面の方向に膜状とすると、第1の発光体からの蛍光体への照射断面積が蛍光体単位量あたり大きくなるので、蛍光体からの発光の強度をより大きくすることができる。
【0104】
また、光源として面発光型のものを使用し、蛍光体含有部として膜状のものを用いる場合、光源の発光面に、直接膜状の蛍光体含有部を接触させた形状とするのが好ましい。ここでいう接触とは、光源と蛍光体含有部とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、光源からの光が蛍光体含有部の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0105】
図3は、このように、光源として面発光型のものを用い、蛍光体含有部として膜状のものを適用した発光装置の一例を示す模式的斜視図である。図3中、11は、前記蛍光体を有する膜状の蛍光体含有部、12は光源としての面発光型GaN系LD、13は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、光源12のLDと蛍光体含有部11とそれぞれ別個につくっておいてそれらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、光源12の発光面上に蛍光体含有部11を製膜(成型)させても良い。これらの結果、光源12と第2の蛍光体含有部11とを接触した状態とすることができる。
【0106】
[3]発光装置の用途
本発明の発光装置は使用する蛍光体の種類、量により各色の発光が可能であるが照明用途などは、白色光を発するもの発光装置が有用である。本発明の発光装置は、発光効率が通常20lm/W以上、好ましくは22lm/W以上、より好ましくは25lm/W以上であり、特に好ましくは28lm/W以上であり、平均演色評価指数Raが80以上、好ましくは85以上、より好ましくは88以上である。
【0107】
なお、上記平均演色評価指数Raは、JIS Z 8726により算出される。
また、発光効率は、量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積により以下のように算出する。
まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば、粉末状など)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えば大塚電子株式会社製「MCPD2000」等が挙げられる。積分球などを用いるのは、サンプルで反射したフォトンおよびサンプルからフォトルミネッセンスで放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。
【0108】
この分光光度計に蛍光体を励起する発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が400nmとなるようにフィルター等を用いて調整がなされる。この400nmの波長ピークを持つように調整された発光源からの光を、測定しようとしているサンプルに照射し、その発光スペクトルを測定する。この測定スペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下、単に「励起光」と記す。)でフォトルミ ネッセンスによりサンプルから放出されたフォトンの他に、サンプルで反射された励起光の分のフォトンの寄与が重なっている。
【0109】
量子吸収効率αqは、サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere社製「Spectralon」(400nmの励起光に対して98%の反射率を持つ。)等の反射板を、測定対象として該分光光度計に取り付け、反射スペクトルIref(λ)を測定する。ここで この反射スペクトルIref(λ)から下記(式1)で求められた数値は、Nに比例する。
【0110】
【化1】

【0111】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったものでよ い。前者のサンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式2)で求められる量に比例する。
【0112】
【化2】

【0113】
ここで、I(λ)は,吸収効率αqを求めようとしている対象サンプルを取り付けたと きの、反射スペクトルである。(式2)の積分範囲は(式1)で定めた積分範囲と同じにする。このように積分範囲を限定することで、(式2)の第二項は,対象サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、対象サンプルから生ずる全フォトンのうち励起光によるフォトルミネッセンスで生じたフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式1)および(式2)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。
【0114】
以上より、αq=Nabs/N=(式2)/(式1)と求められる。
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、フォトルミネッセンスによって生じたフォトンの数NPLをサンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。 ここで、NPLは、下記(式3)で求められる量に比例する。
∫λ・I(λ)dλ (式3)
この時、積分区間は、サンプルからフォトルミネッセンスによって生じたフォトンが持つ波長域に限定する。サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためで ある。具体的に(式3)の積分の下限は、(式1)の積分の上端を取り、フォトルミネッセンス由来のスペクトルを含むのに好適な範囲を上端とする。
【0115】
以上により、ηi=(式3)/(式2)と求められる。
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、αqを求め た場合と同様である。
そして、上記のようにして求めた量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積をとることで、本発明で定義される発光効率を求める。
【0116】
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。また、単独で、又は複数個を組み合わせて用いても良い。具体的には、例えば、照明ランプ、液晶パネル用等のバックライト、超薄型照明等の種々の照明装置、画像表示装置の光源として使用することができる。なお、本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、カラーフィルターと併用してもよい。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[1]蛍光体の合成方法
[1−1]合成例1:緑色蛍光体の合成
原料化合物として炭酸バリウム(BaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、酸化ユウロピウム(Eu)、二酸化ケイ素(SiO)=1.39:0.46:0.15:1.0の比率となるように秤量した。これをメノウ乳鉢でエタノールとともに粉砕混合を行い、エタノールを気化して除去した。得られた混合物をアルミナ坩堝に詰め窒素中で1100℃で8時間焼成した。得られた焼成物に塩化ストロンチウム(SrCl)2重量%を均一になるように充分混合した上で、再度アルミナ坩堝に詰め、水素4%混合した窒素雰囲気中1200℃で6時間加熱することにより反応させた。引き続いて粉砕処理を行なうことにより、緑色蛍光体Ba1.39Sr0.46SiO:Eu0.15(D50=21.0μm)(以下、「BSS」と表記する)の粉末を得た。
【0118】
[1−2]合成例2:緑色蛍光体の合成
合成例1で得られた緑色蛍光体を、以下の様に表面処理した。
アンモニア水はキシダ化学社製、特級純度28%を使用した。
500mLフラスコに東京化成社製、純度95%以上のテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」と表記する)50g およびキシダ化学社製、特級純度99.5%エタノール224g を入れて均一に混合して金属アルコキシド溶液を調製した。
【0119】
ジャケット付きの1Lセパラブルフラスコにエタノール310g 、アンモニア水10 0g を入れて均一に混合した後、BSS粉末を50g投入して基体蛍光体含有溶液を調 製した。
セパラブルフラスコのジャケットには温度調節された冷却水を流して反応溶液の温度を5℃で一定に保ち、BSS粉末が沈降しないように、モーター付きの撹拌羽根で基体蛍光体含有溶液を激しく撹拌してBSS粉末を舞い上げながら、そこに金属アルコキシド溶液
を定量ポンプで約4時間かけて滴下した。
【0120】
金属アルコキシド溶液の滴下が終了した後、反応溶液を静置して緑色蛍光体が沈降してから、シリカ微粒子で白濁した液相をデカンテーションで除去した。その後500mL
のエタノールを加え、軽く撹拌した後静置して、白濁の残る液層をデカンテーションで除去した。このエタノール洗浄を、液層が無色透明になるまで4回繰り返し、セパラブルフラスコごと50℃、30分間の減圧乾燥を行い、その後150℃、2時間の減圧乾燥を行い、シリカ付着率24.0重量%で表面シリカコートされたBSS蛍光体粉末を得た。
【0121】
[1−3]合成例3:橙色蛍光体の合成
橙色蛍光体SrBaSiO:Eu(D50=40.7μm)(以下、「SBS」と表記する)を表面処理したものを使用した。この蛍光体は、原料化合物としてSrCO、BaCO、SiO、EuをSr:Ba:Si:Eu=1.98:1:1:0.02の比率となるように秤量し、メノウ乳鉢でエタノールとともに粉砕混合を行い、エタノールを気化して除去した後、得られた混合物を錠剤に成型して、モリブデン箔上で水素3%混合した窒素雰囲気中1450℃・6時間加熱することにより反応させ、引き続いて粉砕処理を行なうことにより粉末として得た。
【0122】
表面処理は、以下の通り行った。
アンモニア水はキシダ化学社製、特級純度28%を使用した。
100mLフラスコにSBS粉末3gを入れ、キシダ化学社製、特級純度99.5%エタノール30gとアンモニア水 6g及び東京化成社製、純度95%以上のテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」と表記する)1.5g を入れて均一に混合し、室温で30分マグネチックスターラーを用いて攪拌した。更にTEOS1.5g を入れて均一に混合し、室温で30分マグネチックスターラーを用いて攪拌した。反応溶液を静置して橙色蛍光体が沈降してから、シリカ微粒子で白濁した液相をデカンテーションで除去した。その後30mL のエタノールを加え、軽く撹拌した後静置して、白濁の残る液層をデカンテーションで除去した。このエタノール洗浄を、液層が無色透明になるまで4回繰り返し、セパラブルフラスコごと150℃、2時間の減圧乾燥を行い、シリカ付着率10重量%で表面シリカコートされたSBS蛍光体粉末を得た。
【0123】
[1−4]合成例4:縮合型シリコーン系液状媒体Xの合成
GE東芝シリコーン社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイル「XC96−723」を140g、フェニルトリメトキシシランを14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120℃まで昇温し、120℃、全還流下で30分間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
【0124】
続いて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに6時間重合反応を進めた。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをい う。
【0125】
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、無溶剤の縮合型シリコーン系液状媒体X(粘度=0.8Pa・s)を得た。
[2]蛍光体含有組成物の製造方法
[2−1]合成例5:蛍光体含有組成物Kの製造
合成例3の縮合型シリコーン系液状媒体X(100重量部)に、表1に記載の実施例1〜3および5、並びに比較例1〜2のアエロジル3〜5重量部を加えて手攪拌した後、東レ・ダウコーニング社製シランカップリング剤n-C1021-Si(OMe)3を0.7 5重量部加えて更に手攪拌した。赤色蛍光体(CaAlSiN:Eu、中央粒径D50=8.2μm)0.8重量部と合成例2で得られた緑色蛍光体1.5重量部及び青色蛍光体((Ba0.7, Eu0.3)MgAl1017で、粒径D50=6.0μm)23.2重量部とを加え、シンキー社製攪拌装置(泡取り練太郎AR−100)で3分混練して蛍光体含有組成物Kを得た。
【0126】
[2−2]合成例6:蛍光体含有組成物Lの製造
信越化学工業製付加硬化型シリコーン樹脂商品名LPS−2410(粘度=4.7Pa・s、Type A硬さ=42)100重量部(主剤:架橋剤=100:10)に、表1に記載の実施例4のアエロジル1重量部を加えて手攪拌した後、東レ・ダウコーニング社製シランカップリング剤n-C1021-Si(OMe)3を0.75重量部加えて更に手 攪拌した。合成例3で得られたSBS蛍光体6.3重量部と合成例1で得られた緑色蛍光体5.6重量部とを加え、シンキー社製攪拌装置(泡取り練太郎AR−100)で3分混練して蛍光体含有組成物Lを得た。
【0127】
[3]蛍光体含有組成物の評価方法
実施例1〜5、および比較例1〜2の蛍光体含有組成物について、以下の試験を行なった。結果を表1に示す。
[3−1]沈降試験
蛍光体含有組成物を作成した後、6時間静置し、容器の底に三色のうちのいずれかの蛍光体が沈降しているか否かを目視観察した。三色混合したペーストはクリーム色であるが沈降すると底部の色が緑や赤などに変色するために沈降の有無を容易に視認できる。
【0128】
沈降が認められるものを「有」、認められないものを「無」として評価を行なった。
[3−2]粘度測定ならびにチキソトロピー性評価
ブルックフィールド社製プロクラマフルデジタル粘度計コーンプレート型(型式: RVDV−11)を用いて、ローター回転数1rpmおよび5rpmにおける粘度を測定した。
【0129】
【表1】

【0130】
*表中“−”は実施しなかったことを示す。
*チキソトロープ剤((A)、(B)および(E))
A剤(デグサ社製親水性アエロジル「COK84」;SiO84重量%、Al16%)
B剤(デグサ社製親水性アエロジル「MOX80」)
C剤(デグサ社製親水性アエロジル「MOX170」)
D剤(デグサ社製親水性アエロジル「#200」)5重量部
E剤(デグサ社製疎水性アエロジル「RY200」)5重量部
*液状媒体
X:合成例3の縮合型シリコーン系液状媒体X(粘度=0.8Pa・s)
LPS−2410:信越化学工業製付加硬化型シリコーン樹脂商品名「LPS−2410」(粘度=4.7Pa・s、Type A硬さ=42)
*シランカップリング剤:東レ・ダウコーニング社製「AY43-210MC」
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の蛍光体含有組成物は、高いチキソトロープ性を示し、かつ装置内への充填時に蛍光体の沈降を抑制することができる。また、本発明の発光装置は、充填部における蛍光体の分布に偏りが生じないため、発光ムラがなく高性能である。また、かかる発光装置を使用した画像表示装置および照明装置は、発光ムラがなく高性能である。
従って、本発明の蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置は、当該各分野における産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の発光装置を用いた面発光照明装置の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の発光装置の他の実施の形態を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0133】
1 発光装置
2 フレーム
2A フレームの凹部
3 青色LED(第1の発光体)
4 蛍光体含有部(第2の発光体)
5 接着剤
6 ワイヤ
7 モールド部
8 面発光照明装置
9 拡散板
10 保持ケース
11 蛍光体含有部
12 光源
13 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリカ微粒子、(B) Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上を含有する金属酸化物、(C)蛍光体、および(D)液状媒体を含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【請求項2】
(B)Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上を含有する金属酸化物が(A)シリカ微粒子に対して5重量%以上95重量%以下である請求項1に記載の蛍光体含有組成物。
【請求項3】
(E)無機微粒子、(C)蛍光体、および(D)液状媒体を含有する蛍光体含有組成物であって、(E)無機微粒子がSi、Al、ZrおよびTiから選ばれる2以上を含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【請求項4】
(E)無機微粒子中における、Al、ZrおよびTiから選ばれる1以上の含有量が0.1モル%以上95モル%以下である請求項3に記載の蛍光体含有組成物。
【請求項5】
(D)液状媒体が珪素含有化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光体含有組成物。
【請求項6】
シランカップリング剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光体含有組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の蛍光体含有組成物を用いて形成された発光装置。

【請求項8】
請求項7に記載の発光装置を用いて形成された照明装置。
【請求項9】
請求項7に記載の発光装置を用いて形成された画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−260930(P2008−260930A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71476(P2008−71476)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】