説明

蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサン

【課題】繊維などの蛍光(あるいは蛍光増白)に応用できる蛍光発色基を有する構造が導入されたポリオルガノシロキサンを提供する。
【解決手段】反応性の置換基を有するポリオルガノシロキサンに、蛍光(あるいは蛍光増白)に応用できる構造を有する化合物を2価以上の反応性を持つ反応性置換基で連結させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子中に蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、1分子中に特定の2価の有機基を介してケイ素原子に結合した蛍光作用を示す発色基を少なくとも1個有することを特徴とする、蛍光作用を示す発色基含有ポリオルガノシロキサンおよびその製造方法に関する。さらに本発明は、そのような蛍光作用を示す発色基含有ポリオルガノシロキサンを含む、繊維の蛍光(あるいは蛍光増白)および蛍光増白(あるいは蛍光増白)の付与、および柔軟性の付与を同時に行うことのできる繊維処理剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルシロキサンやポリメチルハイドロジェンシロキサンをはじめとして、種々のポリオルガノシロキサンが、繊維に柔軟性を付与する目的で利用されてきた。なかでもアミノ基含有ポリオルガノシロキサンは、繊維の柔軟仕上げ剤を構成する成分として、広範囲に利用されている。また、蛍光増白剤は、繊維をより白く見せる効果があり、繊維の洗浄剤や柔軟仕上げ剤を構成する成分として利用されており(特許文献1、特許文献2)、また、蛍光増白染料とアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを配合した染色用組成物も知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−210811号公報
【特許文献2】特開2001−192965号公報
【特許文献3】特開2004−307496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリオルガノシロキサンに、これらの蛍光増白染料の発色基を導入した蛍光増白基を有するポリオルガノシロキサン、およびそれを含む繊維処理剤は知られていない。繊維の洗浄剤等に用いられる蛍光増白剤は、低分子タイプであり繊維への吸着性が小さいこと、蛍光増白剤自体が凝集しやすい等の問題があり、蛍光増白染料の発色基を導入した蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンが得られれば実用性は高い。
【0004】
本発明の目的は、繊維などの蛍光に応用できる、蛍光作用を示す発色基が導入されたポリオルガノシロキサンおよびその製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、繊維などの蛍光および柔軟性の付与を同時に行うことのできる繊維処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンに、特定の蛍光作用を示す発色基と特定の反応性基とを有する化合物を反応させることにより、その目的を達成しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、分子中に、一般式:
R1aSi(QZ)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1 はたがいに同一でも異なっていてもよく、置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;QはQ1NHまたはQ1NHQ2NHで表される2価の基もしくはQOまたはQSであらわされる1価の基を表し、Q1は炭素数3〜22の2価の炭化水素基を表し、Q2は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、該QはQ1の炭素原子を介してケイ素原子に結合しており;Zはたがいに同一でも異なっていてもよく、ナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系、ジスチリル−ビフェニル系、キサンテノジキノリジン系、アザキサンテン系、ナフトラクタム系、アズラクトン系、オキサジン系、チアジン系、ジオキサジン系、アゾメチン又はメチン型のポリカチオン性蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれる構造を含む1価の基および水素原子から選ばれ、分子中少なくとも1個は該構造を含む基であり;R2はたがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、aは0〜2の整数、bは1または2、cは0〜2の整数であって、a+b+cが1〜3の整数である)で示される、少なくとも1個の蛍光作用を示す発色基含有シロキサン単位を有し、残余のシロキサン単位が、一般式:
R1dSi(OR2)eO{4-(d+e)}/2
(式中、R1およびR2はそれぞれ前述のとおりであり;dおよびeはそれぞれ0〜3の整数であって、d+eが0〜3の整数である)で示され;1分子中のケイ素原子数が2〜3,000である蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンに関する。
【0007】
また、本発明の蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンの製造方法は、
(A)分子中に、一般式:
R1aSi(QH)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1、R2、Q、a、b、およびcはそれぞれ前述のとおり)で示される少なくとも1個のアミノ基もしくはヒドロキシル基もしくはチオール基含有シロキサン単位を有する変性ポリオルガノシロキサンに;
(B)分子中にナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系からなる群より選ばれる構造;ならびに置換ピリミジニル基、置換ピラジニル基、置換トリアジニル基、ハロ置換アセトアミド残基、非置換またはハロ置換アクリルアミド残基、ビニルスルホン基およびグリシジル基ならびにそれらの前駆体からなる群より選ばれた反応性基を有する反応性蛍光染料を反応させることを特徴とする。
蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンの製造方法。
を反応させることを特徴とする。
【0008】
更に本発明は、上記蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンを含むことを特徴とする繊維処理剤に関する。
【0009】
尚、本願明細書では、上記Zの蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光増白染料からなる群より選ばれる構造を含む1価の基(蛍光作用を示す発色基)を便宜上蛍光発色基と呼ぶ場合がある。また、かかる蛍光発色基の中には蛍光増白効果を示すものがあり、このような蛍光増白効果を示すものは特に繊維処理剤に有用である。
【0010】
また、本願明細書において、蛍光とは、広義には、物質が可視・紫外光を吸収して励起状態となった後、もとの基底状態に戻る過程で放射される光を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンは、蛍光(あるいは蛍光増白)機能もしくは蛍光(あるいは蛍光増白)付与能を有するとともに、ポリオルガノシロキサンの特徴である、繊維に柔軟性を与える性質を有し、かつ容易に乳化して水性エマルジョンを形成できる。したがって、それを含む本発明の繊維処理剤は、単一の処理浴により、繊維製品の蛍光(あるいは蛍光増白)と同時に、繊維製品に優れた柔軟性を付与できることから、染料と柔軟仕上げ剤を兼ねる繊維処理剤として、繊維製品の蛍光(あるいは蛍光増白)および蛍光(あるいは蛍光増白)付与および柔軟仕上げ工程の合理化に大きく寄与し、家庭用の衣料用洗剤および柔軟剤として極めて有用である。
【0012】
そのほか、本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンは、分子中にポリシロキサン部分のような親油性部分と、親水性部分とを有し、界面活性剤としても使用できる。また、その蛍光増白の付与とともに、ポリオルガノシロキサンとしての性質を生かして、染毛剤などでの染料やその添加剤として用いられる。また、水性、油性の塗料およびインク;プラスチック;ゴム;口紅、ファンデーション、アイシャドー、マニキュアのような化粧品などの添加剤として用いられる。そのほか、液晶ディスプレイのバックライト、蛍光増白灯器具、広告用ディスプレイ、テレビジョン画像投影装置、コピー機などの光拡散板の着色および反射材;粉体、金属、プラスチックなどの表面処理をはじめとして、各種の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の蛍光発色基を有するポリオルガノシロキサンのシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状、環状および網目状のいずれであってもよく、そのケイ素原子数は、2〜3,000、好ましくは10〜1,000である。繊維に柔軟性を与える効果はケイ素原子数が多いほど優れているが、ケイ素原子数が3,000を越えるものは、合成および取扱いが困難である。
【0014】
なお、本明細書において、複数種のシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンの分子構造式は、単にシロキサン単位の数を示すものであって、必ずしもブロック共重合体を意味するものではなく、これらのポリオルガノシロキサンは、ランダム共重合体であってもよい。
【0015】
このような蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとしては、一般式:
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1、QおよびZはそれぞれ前述のとおりであり;A1はたがいに同一でも異なっていてもよく、一般式:
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R1は前述のとおりであり;R3はたがいに同一でも異なっていてもよく、前述のR2であるか、−SiR13で示されるトリオルガノシリル基であり;rは0または正の整数である)で示される1価の基を示し;A2はたがいに同一でも異なっていてもよく、R1、OR2またはA1を表し;pは正の整数、qは0または正の整数であって、p、q、rはともに、前述の1分子中のケイ素原子数を満足させる数である)で示される、直鎖状または分岐状のシロキサン骨格を有するものが示される。このような蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンは、合成が容易で、繊維に優れた柔軟性を与えることから好ましい。
【0020】
また、他のタイプの蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとしては、一般式:
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R1、QおよびZはそれぞれ前述のとおり)で示される1官能性の蛍光発色基またはアミノ基含有シロキサン単位、ただし、分子中少なくとも1個は蛍光発色基含有シロキサン単位が、相互に結合したジシロキサン;および該−QZを含有するシロキサン単位が、
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R2、dおよびeはそれぞれ前述のとおりであり、ただしd+eは0〜2の整数であり;R4はたがいに同一でも異なっていてもよく、前述のR1であるか、−QZである)で示される、蛍光発色基を含み、または蛍光発色基を含まない1個または2個以上のシロキサン単位を介して、ポリオルガノシロキサンの末端基の少なくとも一部として存在する直鎖状または分岐状のシロキサン骨格を有するものが示される。
【0025】
さらに、蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとしては、一般式:
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R1、A2、QおよびXはそれぞれ前述のとおりであり;mは正の整数、nは0または正の整数であって、m+nが3〜6になる数である)で示される、環状シロキサン骨格を有するものが示される。
【0028】
前述のように、本発明のポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に結合する、一般式:−QZで示され、Zが蛍光発色基を含む蛍光発色基含有基を、分子中に少なくとも1個有する。ここで、QはQ1NHまたはQ1NHQ2NHを表し、Q1の炭素原子を介してケイ素原子に結合している。Q1は炭素数3〜6の2価の炭化水素基であり、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンのような直鎖状アルキレン基が挙げられるほか;2−メチルトリメチレンのような分岐状アルキレン基;ならびにシクロヘキサン−1,4−ジイル、1,4−フェニレンのような環状炭化水素基であってもよく、合成が容易で、化学的に安定なことから、トリメチレン基が好ましい。Q2は炭素数2〜4のアルキレン基であり、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンが挙げられ、合成が容易なことから、エチレン基が好ましい。すなわち、Qとしては、Q1NHであってQ1がトリメチレン基のもの、およびQ1NHQ2NHであって、Q1がトリメチレン基、Q2がエチレン基のものが好ましい。
【0029】
Zは、前述のように、蛍光発色基を含む基および水素原子から選ばれ、分子中少なくとも1個は蛍光発色基を含む基である。該蛍光発色基含有基は、Qを介してケイ素原子に結合する有機基であり、ナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系、キサンテノジキノリジン系、アザキサンテン系、ナフトラクタム系、アズラクトン系、オキサジン系、チアジン系、ジオキサジン系、アゾ、アゾメチン又はメチン型のポリカチオン性蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれた1種または2種以上の発色基を含む。蛍光発色基を有する発色基としては、式:
【0030】
【化6】

【0031】
で示されるようなスチルベン系の蛍光発色基;式:
【0032】
【化7】

【0033】
で示されるようなクマリン系の蛍光発色基;式:
【0034】
【化8】

【0035】
で示されるようなナフタル酸無水物系の蛍光発色基;および式:
【0036】
【化9】

【0037】
で示されるようなナフタル酸イミド系の蛍光発色基が例示される。これらの発色基は、後述の反応性基の残基、メチレン、エチレンのような2価の炭化水素基;2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイルのような2価の置換炭化水素基;イミノ基およびアミド基などの1種または2種以上の基を介してQの窒素原子と結合する。このような発色基含有基は、発色基にさらに、他の反応性基が結合していてもよい。
【0038】
ケイ素原子に結合した有機基R1としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;シクロヘキシルのようなシクロアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニルのようなアルケニル基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基;フェニル、トリル、キシリルのようなアリール基;および3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルのような置換炭化水素基が例示され、合成および取扱いが容易で、ポリオルガノシロキサンの特徴である、繊維に柔軟性を付与する性質を最も優れて発揮することから、メチル基が最も好ましい。
【0039】
2としては、隣接する酸素原子とともにケイ素官能性のヒドロキシ基を構成する水素原子;同様にアルコキシ基を構成するメチル、エチル、プロピル、ブチルのようなアルキル基;ならびに置換アルコキシ基を構成する2−メトキシエチル、2−エトキシエチルのような置換アルキル基が例示され、比較的安定に合成し、取扱うことのできるメチル基およびエチル基が好ましい。
【0040】
これらのR1、QZおよびOR2を有する蛍光発色基含有シロキサン単位およびアミノ基含有シロキサン単位において、bは1または2であるが、合成が容易なことから、bは1が好ましい。aおよびcはそれぞれ0〜2の整数であり、該シロキサン単位は、上記のbが1の場合、a+cが2のとき分子末端に、a+cが0のときシロキサン骨格の分岐点に、a+cが1のときその他の中間位置に存在する。
【0041】
また、直鎖状または分岐状ポリオルガノシロキサンにおいて、分子鎖末端に存在するR3は、上述のR2のようなケイ素官能基を構成する基のほか、安定な1官能性シロキサン単位を構成するトリメチルシリル、ジメチル(tert−ブチル)シリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチルビニルシリルのようなトリオルガノシリル基が例示され、上記のメチル基およびエチル基のほか、トリメチルシリル基が好ましい。
【0042】
1は、rが0のとき、前述のR3である。またrが正の整数のとき、ケイ素原子にR1およびOR3が結合したシリル基または(ポリ)シロキサニル基である。またA2は、前述のR1、OR2またはA1である。これらのA1およびA2において、R1およびR3は前述と同様なものが例示され、同様にR1としてはメチル基;OR2としてはメトキシ基およびエトキシ基;OR3としてはメトキシ基、エトキシ基およびトリメチルシロキシ基が好ましい。
【0043】
本発明の蛍光作用を示す発色基含有ポリオルガノシロキサンは、たとえば次のようにして得ることができる。すなわち、まず、合成しようとする該ポリオルガノシロキサンに対応する、(A)分子中に、一般式:
R1aSi(QH)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1、R2、Q、a、bおよびcはそれぞれ前述のとおり)で示される、第一級アミノ基を有するアミノ基含有シロキサン単位を少なくとも1個有するアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを用意する。ただし、ここでR1には、(B)である反応性染料と反応する−QH基は含まないものとして示す。分子中の該アミノ基含有シロキサン単位以外のシロキサン単位が存在する場合、該単位は、本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンにおける残余のシロキサン単位と同様である。
【0044】
このような(A)は、たとえば次のような方法で合成されるが、製法はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(1)3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルのようなアミノ基置換炭化水素基がケイ素原子に結合したアミノ基含有アルコキシシランの存在下に、オクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状ジオルガノシロキサンオリゴマーを開環重合させて、分子末端にアルコキシ基を有するアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを合成する。
【0046】
(2)上記(1)で得られたアミノ基含有ポリオルガノシロキサンに、ヘキサメチルジシラザンのようなシリル化剤を反応させて、分子末端にトリオルガノシロキサン単位を有するアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを合成する。
【0047】
(3)ポリメチルハイドロジェンシロキサンのようなヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンを、塩化アリルのようなハロ置換アルケンとヒドロシリル化反応させることによって、クロロプロピルのようなハロアルキル基を導入した後、アンモニアまたはエチレンジアミンのようなアミノ化合物で処理して、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンを合成する。
【0048】
この(A)に存在する第一級および/または第二級アミノ基に、(B)である反応性を有する蛍光染料を反応させる。(B)中の蛍光発色基は、目的物である本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンと同様の、ナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系、キサンテノジキノリジン系、アザキサンテン系、ナフトラクタム系、アズラクトン系、オキサジン系、チアジン系、ジオキサジン系、アゾ、アゾメチン又はメチン型のポリカチオン性蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれた1種または2種以上を含み、同様のものが例示される。
【0049】
(B)中に存在する、(A)と反応する反応性基としては、式:
【0050】
【化10】

【0051】
で示されるような置換ピリミジニル基;式:
【0052】
【化11】

【0053】
で示されるような置換ピラジニル基;式:
【0054】
【化12】

【0055】
で示されるような置換トリアジニル基;式:
【0056】
【化13】

【0057】
で示されるようなハロ置換アセトアミド残基;式:
【0058】
【化14】

【0059】
で示されるような非置換または置換アクリルアミド残基およびその前駆体;式:
【0060】
【化15】

【0061】
で示されるようなビニルスルホン基およびその前駆体;および式:
【0062】
【化16】

【0063】
で示されるグリシジル基が例示される。
【0064】
(B)において、前述の発色基は、上述の反応性基と直接結合していてもよく、メチレン、エチレンのような2価の炭化水素基;2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイルのような2価の置換炭化水素基;イミノ基およびアミド基などの1種または2種以上のような基を介して結合していてもよい。
【0065】
このような(B)としては、繊維用の蛍光増白剤や蛍光増白染料として、HAKKOL染料(昭和化学工業(株)製)など、アミノ基に対して反応性を示す反応性基を有するものが用いられる。
【0066】
本発明の製造方法において、(B)の使用量は特に限定されないが、ポリオルガノシロキサンに満足な蛍光増白性を与えるには、(A)100重量部に対する(B)の量は、通常10重量部以下で十分であり、未反応のアミノ基含有ポリオルガノシロキサンが残存していても差し支えない。なお、(B)が分子中に2個以上の反応性基を有する場合は、(B)の量が10重量部を越えると、(B)が(A)の架橋剤として働き、そのために著しい粘度上昇や、ゲル状物の形成を生じることがある。
【0067】
本発明の製造方法において、(A)と(B)との反応は、約80℃以上で進行し、反応温度は高い方が有利である。
【0068】
本発明の製造方法において、特に有機溶剤を使用する必要はない。(B)の反応性を有する蛍光染料であり、室温で固体である場合には、あらかじめ(B)を水中に溶解して使用することが好ましい。
【0069】
反応生成物の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンまたは該ポリオルガノシロキサンを含む組成物を精製する必要がある場合には、減圧下において水や酢酸などの低沸点成分を留去した後、ろ過によって未反応の反応性染料を除去できる。
【0070】
本発明の繊維処理剤は、本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンを含むことを特徴とする。特に優れた柔軟性を付与するためには、該蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとともに、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとアミノ基含有ポリオルガノシロキサンの混合比には、特に制限はない。アミノ基含有ポリオルガノシロキサンとしては、次のいずれを用いてもよい。
【0071】
(1)本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンを合成する際に、(B)に対して(A)を過剰に用い、(A)が残存した系をそのまま繊維処理剤ないしその成分として用いる。
【0072】
(2)合成して得られた蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンに、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンを添加する。添加されるアミノ基含有ポリシロキサンは、(A)として合成に用いたものと同一のものでもよく、異なるものでもよい。
【0073】
特に好ましいアミノ基含有ポリオルガノシロキサンは、次式(a)および(b):で示されるアミノ基含有シリコーンオイルである。
(a)RabSiO(4-a-b)/2
(b)RcSiO(4-c)/2
[式中、Rは炭素数1〜6個の1価の炭化水素基または置換炭化水素基;Qは3-アミノプロピル基またはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基;a、bはそれぞれ0<a≦2、1≦b≦3、およびa+b≦3を満たす数;cは1〜3の範囲の数を示す]で表される構成単位を含み([I]:[II]=1:2〜1:65(モル比)、1分子中のRおよびQは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)。
【0074】
このアミノ基含有シリコーンオイルの粘度は、25℃において20000000cP未満である。20000000cPを超えると、取り扱いが困難となり、また該アミノ基と反応性の基を有する蛍光染料が吸着し難くなる。取り扱いや、蛍光染料の吸着を考慮すると好ましくは、100000cP以下であり、さらに好ましくは、10000cP以下である。
【0075】
また、このシリコーンオイルに含まれるアミノ基量は、窒素原子として0.01〜3重量%である。0.01重量%未満であると蛍光染料の吸着量が少なく、蛍光効果が乏しく、3重量%を超えると触感を低下させる傾向があり好ましくない。好ましくは、0.02〜2重量%、さらに好ましくは0.02〜1.5重量%である。
【0076】
本発明の繊維処理剤は、上記の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサン、または好ましくは該ポリオルガノシロキサンとアミノ基含有ポリオルガノシロキサンとの混合物を、その使用態様に応じて、そのまま用いてもよく、溶液、エマルジョンなどの形態で用いてもよい。溶液として用いる場合、溶媒としては、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類などを用いることができる。また、エマルジョンとして用いるときは、適当なノニオン系、アニオン系またはカチオン系界面活性剤の存在下に、水によって乳化できる。
【実施例】
【0077】
次の実施例は本発明を例証することを意図したものであり、その範囲を限定するものではない。以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部はすべて重量部を表す。
実施例1
アミノ変性シリコーンオイル100部を300mlのフラスコ中に入れる。そこに下記式で示される蛍光増白染料(Hakkol RN)0.5部を蒸留水50部に分散させ徐々に加える。反応系の温度を80〜90℃に調整し、3時間維持する。次に減圧下において水を留去した。未反応の蛍光増白染料を濾別した後、淡黄色透明な液体が得られた。
【0078】
反応のチェックは、反応終了後、反応混合物(シリコーンと蛍光増白染料)が透明となるかで行った。シリコーンと蛍光増白染料は、相溶しないため、透明になれば完全に反応したと考えられる。
【0079】
【化17】

【0080】
実施例2
0.2部の塩化シアヌルと1.0部の4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸ナトリウムをイソプロピルアルコールに溶解し2時間反応させた。その後100部のアミノ変性シリコーンを徐々に加え、3時間反応させた。ついで、イソプロピルアルコールを蒸留し、未反応の蛍光増白染料を濾別した後、淡黄色透明な液体がえられた。反応前の蛍光増白染料が水溶性であり、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンには溶解しないのに反して、この淡黄色油状物は安定で、水中に分散するが溶解はしなかった。
実施例3
0.2部の塩化シアヌルと1.0部の4−アミノ−1,8−ナルタルイミドをイソプロピルアルコールに溶解し2時間反応させた。その後100部のアミノ変性シリコーンを徐々に加え、3時間反応させた。ついで、イソプロピルアルコールを蒸留し、未反応の蛍光増白染料を濾別した後、淡緑色透明な液体がえられた。反応前の蛍光増白染料はアミノ基含有ポリオルガノシロキサンには溶解しない。
実施例4、比較例1〜2
次に、実施例1の蛍光増白剤が付着したシリコーンを用いて柔軟剤を調製し、その効果を確認した。
(1)柔軟剤組成物による処理方法
(試験布の調製)
市販の綿ニット(綿100%)を市販衣料用洗剤により、家庭用二槽式洗濯機を用いて洗浄15分(洗剤は標準量使用)→脱水5分の工程を2サイクル繰り返した後、流水すすぎ15分→脱水5分の工程を5回繰り返し、自然乾燥したものを試験布とした。
(柔軟剤による処理)
綿ニット100gに、表1に示す柔軟剤組成物を水量3リットルに対して30g加えて、衣料の柔軟処理を行った。その後、自然乾燥し、以下の評価を行った。
(2)手触り(風合い、滑らかさ、柔軟性)と増白効果の評価は、柔軟剤を使用せずに処理した綿ニットを対照例として専門パネラー10人による官能一対比較を行い、以下に示す評価基準で評価を行った。
+2:対照よりはっきり良好
+1:対照よりやや良好
0:対照とほぼ同じ
−1:対照の方がやや良好
−2:対照の方がはっきり良好
その評点の平均をとり、1.5〜2.0点を◎、1.0以上〜1.4点を○、0.5〜0.9点を△、0.4点以下を×とした。
【0081】
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に、一般式:
R1aSi(QZ)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1 はたがいに同一でも異なっていてもよく、置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;QはQ1NHまたはQ1NHQ2NHで表される2価の基もしくはQOまたはQSであらわされる1価の基を表し、Q1は炭素数3〜22の2価の炭化水素基を表し、Q2は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、該QはQ1の炭素原子を介してケイ素原子に結合しており;Zはたがいに同一でも異なっていてもよく、ナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系、ジスチリル−ビフェニル系、キサンテノジキノリジン系、アザキサンテン系、ナフトラクタム系、アズラクトン系、オキサジン系、チアジン系、ジオキサジン系、アゾメチン又はメチン型のポリカチオン性蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれる構造を含む1価の基および水素原子から選ばれ、分子中少なくとも1個は該構造を含む基であり;R2はたがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、aは0〜2の整数、bは1または2、cは0〜2の整数であって、a+b+cが1〜3の整数である)で示される、少なくとも1個の蛍光作用を示す発色基含有シロキサン単位を有し、残余のシロキサン単位が、一般式:
R1dSi(OR2)eO{4-(d+e)}/2
(式中、R1およびR2はそれぞれ前述のとおりであり;dおよびeはそれぞれ0〜3の整数であって、d+eが0〜3の整数である)で示され;1分子中のケイ素原子数が2〜3,000である蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサン。
【請求項2】
蛍光作用を示す発色基が蛍光増白効果を示すものである請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項3】
(A)分子中に、一般式:
R1aSi(QH)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1、R2、Q、a、b、およびcはそれぞれ前述のとおり)で示される少なくとも1個のアミノ基もしくはヒドロキシル基もしくはチオール基含有シロキサン単位を有する変性ポリオルガノシロキサンに;
(B)分子中にナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系からなる群より選ばれる構造;ならびに置換ピリミジニル基、置換ピラジニル基、置換トリアジニル基、ハロ置換アセトアミド残基、非置換またはハロ置換アクリルアミド残基、ビニルスルホン基およびグリシジル基ならびにそれらの前駆体からなる群より選ばれた反応性基を有する反応性蛍光染料を反応させることを特徴とする蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンを含むことを特徴とする繊維処理剤。
【請求項5】
さらにアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを含む、請求項4記載の繊維処理剤。
【請求項6】
請求項1又は2記載の蛍光作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンを含むことを特徴とする柔軟剤。

【公開番号】特開2007−169535(P2007−169535A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371354(P2005−371354)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】