説明

蛍光顕微鏡装置

【課題】 簡単な構成で蛍光と標本の両方の光を観察可能にする安価な蛍光顕微鏡装置を提供すること。
【解決手段】 標本13からの蛍光を検出する蛍光顕微鏡装置において、前記標本13を励起する励起光を発生する光源1、22と、前記標本13を観察するための前記励起光とは異なる波長の参照光を発生する光源23と、前記参照光を前記標本13に導く照明光学系と、前記標本13からの光束を撮像装置16に導く対物光学系と、前記対物光学系と前記照明光学系の少なくとも一方に、前記標本13からの前記参照光の光強度を減衰する波長分離型の光学素子5,11を具備してなる蛍光顕微鏡装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡装置に関し、特にフォトアクティベート付き蛍光顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光顕微鏡装置は、参照光で標本を目視で観察し励起光を照射する位置を決め、標本に励起光を照射し標本から発生する蛍光を高感度テレビカメラ等の撮像素子を用いて検出している。近年、蛍光の発する位置を標本上の位置関係から同定するために、標本と蛍光とを撮像装置を用いて検出し、両者を重ねて観察することが行われている。この際、標本からの参照光の光強度と蛍光の光強度とが極端に違っているために(約一万倍以上異なる)、同じ高感度テレビカメラを用いて両者を検出することが困難であった。このため、顕微鏡の光学系中に光量センサーを配置して、参照光の光量を調節することも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−258512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の開示例は、顕微鏡の光学系中に光量センサーを配置して光量を検出すると共に、参照光の光量を制御するための制御装置等が必要となり、蛍光顕微鏡装置の構成が複雑となると共に高価になると言う問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題にかんがみて行われたものであり、簡単な構成で蛍光と標本の両方の光を検出可能にする安価な蛍光顕微鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、標本からの蛍光を検出する蛍光顕微鏡装置において、前記標本を励起する励起光を発生する光源と、前記標本を観察するための前記励起光とは異なる波長の参照光を発生する光源と、前記参照光を前記標本に導く照明光学系と、前記標本からの光束を撮像装置に導く対物光学系と、前記対物光学系と前記照明光学系の少なくとも一方に、前記標本からの前記参照光の光強度を減衰する波長分離型の光学素子を具備してなることを特徴とする蛍光顕微鏡装置を提供する。
【0006】
また、本発明にかかる蛍光顕微鏡装置では、前記励起光は、前記標本を第1励起状態にする第1励起光と、前記第1励起状態から蛍光を発生させる第2励起光を有する構成が好ましい。
【0007】
また、本発明にかかる蛍光顕微鏡装置では、前記参照光は、前記蛍光の波長より長い波長であることが好ましい。
【0008】
また、本発明にかかる蛍光顕微鏡装置では、前記光学素子は、少なくとも2枚のダイクロイックミラーからなり、第1ダイクロイックミラーは前記照明光学系に配置され、第2ダイクロイックミラーは前記対物光学系に配置されている構成が好ましい。
【0009】
また、本発明にかかる蛍光顕微鏡装置では、前記第1ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を透過し、前記参照光を反射し、前記第2ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を反射し、前記参照光を透過する構成が好ましい。
【0010】
また、本発明にかかる蛍光顕微鏡装置では、前記第1ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を反射し、前記参照光を透過し、前記第2ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を反射し、前記参照光を透過する構成が好ましい。
【0011】
また、本発明は、標本からの蛍光を検出する蛍光顕微鏡装置において、標本を第1の励起状態に励起する第1の励起光を発生する第1の励起光源と、前記第1の励起状態から前記蛍光を発生させる第2の励起光を発生する第2の励起光源と、前記標本に前記第1の励起光の照射位置を位置付けする為に用いる参照光を発生する参照光源と、前記第1の励起光と、前記第2の励起光と、前記参照光とを前記標本に導く照明光学系と、前記標本からの光束を撮像装置に導く対物光学系と、前記照明光学系と前記対物光学系の少なくとも一方に、前記参照光の光強度を減衰させる光学素子を具備してなることを特徴とする蛍光顕微鏡装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構成で蛍光と標本の両方の光を検出可能にする安価な蛍光顕微鏡装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に関し図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。図2は、第1実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。図3は、本発明の第2実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。図4は、第2実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。図5は、本発明の第3実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。図6は、第3実施の形態に用いられる第1、および第2ダイクロイックミラーの分光特性を示す。図7は、本発明の第4実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。図8は、本発明の第5実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。図9は、第5実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。図10は、本発明の第6実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。図11は、第6実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。
【0015】
本発明の実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置は、光感受性蛍光タンパク(Photo Active Green Fluorescent Protein:略称PAGFP)と呼ばれる物質の蛍光を観察するのに好適であるフォトアクティベート付き蛍光顕微鏡装置に相当する。このPAGFPは、人工的に細胞内で生成されるタンパク質の一種で、生成された状態では光を当てても蛍光を発しないが、特定の波長のレーザ光(例えば、波長405nm)を照射するとレーザ光を照射された部分が変化し(以後、第1励起状態と記す)、別の波長の光を照射(例えば、波長488nm)すると、蛍光(例えば、波長505nm)を発する、所謂GFP(Green Fluorescent Protein)としての特性を示すものである。これ以外にも別の特性を持つ光感受性蛍光タンパク質があり、異なる波長のレーザ照射によって特性を変化させることができる。なお、本発明の実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置はレーザ光の波長を変えることによって種々のPAGFPの蛍光検出に用いることが可能である。
【0016】
以下、それぞれの実施の形態に付いて図面を参照しつつ説明する。
【0017】
(第1実施の形態)
図1および図2を参照しつつ本発明の第1実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置に付いて説明する。
【0018】
図1において、アーク光源1(例えば、水銀ランプ等)からの光は、コレクタレンズ2で集光され、リレーレンズ3を通過した後、励起フィルタ4で選択された波長の励起光(例えば、波長488nm)が第1ダイクロイックミラー5で反射されて、開口絞り6の位置に集光される。コレクタレンズ2とリレーレンズ3の間にはアーク光源1からの光を通過または遮断するシャッタ7が配置され、不図示のシャッタ制御装置でシャッタ7の開閉が制御される。
【0019】
開口絞り6の位置に集光された励起光は、リレーレンズ8、視野絞り9、フィールドレンズ10を介して第2ダイクロイックミラー11に入射し、対物レンズ12の方向に反射され、対物レンズ12を介して図示しないステージに載置された標本13に照射される。
【0020】
照射された励起光によって標本13から発生した蛍光は、対物レンズ12で集光され、第2ダイクロイックミラー11を通過してバリアフィルタ14で検出する波長が選択透過され結像レンズ15を介して、像面に載置された高感度撮像装置16(例えば、高感度テレビカメラ等)で撮像され図示しない画像処理装置を介して不図示のモニタ等で観察される。なお、符号Iは、照明光学系の光軸を、符号Jは、対物光学系の光軸をそれぞれ示している。
【0021】
また、アーク光源1とは別の場所に設けられたレーザユニット21には、レーザ光源22(例えば、波長405nm)とレーザ光源23(例えば、波長633nm)が配置されている。レーザ光源22からのレーザ光(以後、第1励起レーザ光と記す)はダイクロイックミラー24でレーザユニット21に接続された光ファイバ25の入射端面26方向に反射され、入射端面26に入射する。レーザ光源23からのレーザ光(以後、参照レーザ光と記す)はミラー27で反射され、ダイクロイックミラー24を透過して入射端面26に入射する。第1励起レーザ光と参照レーザ光とは、その光軸Kが一致するように調整されており、標本13に対して両方のレーザ光が同じ位置に照射されるように構成されている。
【0022】
レーザ光源22とダイクロイックミラー24の間にはシャッタ28が、レーザ光源23とミラー27の間にはシャッタ29がそれぞれ配置され、不図示のシャッタ制御装置によりシャッタの開閉が制御され第1励起レーザ光と参照レーザ光の出射が選択される。なお、ダイクロイックミラー24は、第1励起レーザ光は効率よく反射し、参照レーザ光は効率よく透過する特性を有している。
【0023】
光ファイバ25の入射端面26に入射したレーザ光は、ファイバ25を通じて照明光学系の光軸Iに沿って配置された出射端面30に導かれる。射出端面30から出射したレーザ光は、コレクタレンズ31で集光され、照明光学系の光軸Iおよび対物光学系の光軸Jに沿って進行し対物レンズ12を介して標本13に照射される。なお、出射端面30の位置を光軸Iに略垂直な平面内で移動させることによって、標本13を移動させることなく標本13に対するレーザ光の照射位置を変更することができる。このようにして、蛍光顕微鏡装置Aが構成されている。
【0024】
本第1実施の形態では、参照レーザ光を用いて標本13上における第1励起レーザ光の照射位置が決められる。PAGFPに対して参照レーザ光は何ら変化を及ぼすことがない波長が用いられる。
【0025】
第1励起レーザ光が照射される位置を不図示のモニタ上で確認するために、像面に載置されている高感度撮像装置16で検出する必要がある。しかし、高感度撮像装置16で検出する蛍光の強度は通常の参照光に対して1/10,000以下であり、標本13からの参照レーザ光を高感度撮像装置16で検出する場合、参照レーザ光の光量の調整や高感度撮像装置16の検出感度の切り替えが必要となる。このような光量調整や感度切り替えは煩雑であると共に蛍光顕微鏡装置の構成を複雑にし、結果として蛍光顕微鏡装置が高価になる。
【0026】
本第1実施の形態では、蛍光顕微鏡装置A内に配置されている第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって、高感度撮像装置16で標本13からの参照レーザ光を検出可能にしている。
【0027】
図2は、第1実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラー5の分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラー11の分光特性をそれぞれ示す。
【0028】
図2(a)において、曲線5aは第1ダイクロイックミラー5の分光特性を示し、波長405nmの第1励起レーザ光を含む約450nm未満の波長の光をほとんど透過し、これより長波長側の光をほとんど反射する特性を有している。曲線4aはアーク光源1からの波長488nmの励起光を選択透過する励起フィルタ4の分光特性を示す。第1ダイクロイックミラー5は励起光を良好に反射する特性を有している。また、波長633nmの参照レーザ光は、ほとんどが反射され数%以下が透過する分光特性を有している。
【0029】
図2(b)において、曲線11aは第2ダイクロイックミラー11の分光特性を示し、波長405nmの第1励起レーザ光および波長488nmの励起光を含む波長500nm未満の光をほとんど反射し、波長505nmの蛍光を含む波長500nmを超える波長の光をほとんど透過する特性を有している。曲線14aは、バリアフィルタ14の分光特性を示す。
【0030】
図1において、レーザユニット21のシャッタ29が開放され、参照レーザ光(23)が光ファイバ25を介して光軸Iに沿って導入された場合、第1ダイクロイックミラー5は、参照レーザ光の数%以下を透過し、更に第2ダイクロイックミラー11は、第1ダイクロイックミラー5で減光された参照レーザ光の数%以下を対物レンズ12の方向に反射する。この結果、標本13を照射する参照レーザ光の強度は、蛍光と同等の1/10,000以下の強度となり高感度撮像装置16で検出することが可能となる。
【0031】
この際、参照レーザ光の強度が蛍光の強度と同等程度まで第1および第2ダイクロイックミラー5、11で減衰されているため、高感度撮像装置16の感度の切り替え等は不要である。なお、バリアフィルタ14の分光特性14aを波長505nmの蛍光と波長633nmの参照レーザ光の両方の波長を透過するように設定することによって、バリアフィルタ14を光軸Jから外さなくても良いように構成することも可能である。
【0032】
参照レーザ光で標本13に対する第1励起レーザ光の照射位置を決定した後、バリアフィルタ14が光軸Jに挿入され、シャッタ29が閉じられ、第1励起レーザ光(22)のシャッタ28が所定時間開放されて、波長405nmの第1励起レーザ光が標本13の所定位置に照射される。第1励起レーザ光は、第1ダイクロイックミラー5をほとんど透過し、第2ダイクロイックミラー11でほとんど反射されて対物レンズ12の方向に進行し、対物レンズ12を介して標本13に光量のロスなく照射される。光軸Jにはバリアフィルタ14が挿入されているため、第1励起レーザ光の反射光が高感度撮像装置16に入射することはない。
【0033】
続いて、アーク光源1からの波長488nmの励起光を、シャッタ7を開放することによって標本13に照射し、第1励起レーザ光で第1励起状態にされた場所で発生する波長505nmの蛍光を、バリアフィルタ14を介して像面に配置された高感度撮像装置16で検出し、不図示の画像処理装置を介してモニタで観察する。
【0034】
上述のように、本第1実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Aでは、参照レーザ光による標本からの光を、第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって減衰するため、蛍光を検出する高感度撮像装置16で検出することが可能となる。また、第1および第2ダイクロイックミラー5、11の分光特性を利用するだけで、レーザ光の光量センサーによる光量調整や、照明光による標本像を撮像する撮像装置が不要となり、簡単で低価格の蛍光顕微鏡装置を提供することが可能となる。
【0035】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置に付いて図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図3は、本発明の第2実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【0037】
本第2実施の形態は、第1実施の形態の結像部にコンフォーカル装置を配置するため、第2ダイクロイックミラーの分光特性を変更している。その他、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。
【0038】
図3において、標本13からの参照レーザ光または蛍光は、第2ダイクロイックミラー111を通過し、結像レンズ15によってコンフォーカル装置101に内蔵される高感度撮像装置101Eに全反射ミラー103を介して結像される。
【0039】
コンフォーカル装置101は、励起光用レーザ光101Lと励起波長を選択する励起フィルタ101A(例えば、波長488nm)と、ダイクロイックミラー101Bと、バリアフィルタ101Cと、励起用レーザ光を標本13に照射、非照射を制御するシャッタ101Dと、標本13からの参照レーザ光または標本13からの蛍光を検出するための高感度撮像装置101Eが内蔵されている。このようにして、本第2実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Bが構成されている。
【0040】
本第2実施の形態では、波長633nmの参照レーザ光(23)を用いて標本13上における波長405nmの第1励起レーザ光(22)の照射位置が決められる。PAGFPに対して参照レーザ光は何ら変化を及ぼすことがない波長が用いられる。
【0041】
第1励起レーザ光が照射される位置を不図示のモニタ上で確認するために、コンフォーカル装置101の像面に載置されている高感度撮像装置101Eで検出する必要がある。しかし、高感度撮像装置101Eで検出する蛍光の強度は通常の光に対して1/10,000以下であり、標本13からの参照レーザ光を高感度撮像装置101Eで検出する場合、参照レーザ光の光量の調整や高感度撮像装置の検出感度の切り替えが必要となる。このような光量調整や感度切り替えは煩雑であると共に蛍光顕微鏡装置の構成を複雑にし、結果として蛍光顕微鏡装置が高価になる。
【0042】
本第2実施の形態では、蛍光顕微鏡装置B内に配置されている第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー111の分光特性によって、コンフォーカル装置101に設けられた高感度撮像装置101Eで標本13からの参照レーザ光を検出可能にしている。
【0043】
図4は、第2実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラー5の分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラー111の分光特性をそれぞれ示す。
【0044】
図4(a)の曲線5aは、第1ダイクロイックミラー5の分光特性を示し、その分光特性は第1実施の形態とほぼ同様である。
【0045】
図4(a)において、曲線5aは、波長405nmの第1励起レーザ光を含む約450nm未満の波長の光をほとんど透過し、これより長波長側の光をほとんど反射し、波長633nmの参照レーザ光の数%以下を透過する分光特性を有している。
【0046】
図4(b)の曲線111aは、第2ダイクロイックミラー111の分光特性を示している。また、曲線101aはコンフォーカル装置101内に配置されている励起フィルタ101Aの特性を、曲線101bはコンフォーカル装置101内に配置されているダイクロイックミラー101Bの特性を、曲線101cはコンフォーカル装置101内に配置されているバリアフィルタ101Cの特性をそれぞれ示している。
【0047】
図4(b)において、曲線111aは、波長405nmの第1励起レーザ光を含む波長400nm未満の光をほとんど反射し、波長488nmの励起用レーザ光および波長505nmの蛍光を含む400nm以上の波長の光をほとんど透過する特性を有している。曲線101bは、波長505nmの蛍光を含む500nmを超える波長の光をほとんど透過する特性を有している。
【0048】
図3において、レーザユニット21でシャッタ29が開放され、参照レーザ光が光ファイバ25を介して光軸Iに沿って導入され、第1ダイクロイックミラー5を数%以下が透過し、更に第2ダイクロイックミラー111で数%以下が対物レンズ12の方向に反射される。この結果、標本13を照射する参照レーザ光の強度は、蛍光と同等の1/10,000以下の強度となりコンフォーカル装置101内に配置された高感度撮像装置101Eで検出することが可能となる。
【0049】
この際、コンフォーカル装置101内に設けられているバリアフィルタ101Cを光軸Jから外すことによって、1/10,000以下に減衰した標本13からの参照レーザ光を像面に配置した高感度撮像装置101Eで検出することが可能となる。参照レーザ光の強度が蛍光の強度と同等程度まで第1および第2ダイクロイックミラー5、111で減衰されているため、高感度撮像装置101Eの感度の切り替え等は不要である。なお、バリアフィルタの分光特性101Cを波長505nmの蛍光と波長633nmの参照レーザ光の両方の波長を透過するように設定することによって、バリアフィルタ101Cを光軸Jから外さなくても良いように構成することができる。
【0050】
参照レーザ光で標本13に対する第1励起レーザ光の照射位置を決定した後、バリアフィルタ101Cが光軸Jに挿入され、シャッタ29が閉じられ、第1励起レーザ光(22)のシャッタ28が所定時間開放されて、波長405nmの第1励起レーザ光が標本13の所定位置に照射される。第1励起レーザ光は第1ダイクロイックミラー5をほとんど透過し、第2ダイクロイックミラー11ではほとんど反射されて対物レンズ12の方向に進行し、対物レンズ12を介して標本13に光量のロスなく照射される。光軸Jにはコンフォーカル装置101内においてバリアフィルタ101Cが挿入されているため、第1励起レーザ光の反射光がコンフォーカル装置101内の高感度撮像装置101Eに入射することはない。
【0051】
続いて、コンフォーカル装置101内に設けられている励起フィルタ101Aによって選択された波長488nmの励起用レーザ光を、シャッタ101Dを開放することによって標本13に照射し、第1励起レーザ光で第1励起状態にされた場所で発生する波長505nmの蛍光を、バリアフィルタ101Cを介して像面に配置された高感度撮像装置101Eで検出し、不図示の画像処理装置を介してモニタで観察する。
【0052】
上述のように、本第2実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Bでは、参照レーザ光による標本からの光を、第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー111の分光特性によって減衰するため、コンフォーカル装置101内に設けられた蛍光を検出する高感度撮像装置101Eで検出することが可能となる。また、第1および第2ダイクロイックミラー5、111の分光特性を利用するだけで、レーザ光の光量センサーによる光量調整や、参照光による標本像を撮像する撮像装置が不要となり、簡単で低価格の蛍光顕微鏡装置を提供することが可能となる。
【0053】
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置に付いて図面を参照しつつ説明する。
【0054】
図5は、本発明の第3実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図であり、図6は、第3実施の形態に用いられる第1、および第2ダイクロイックミラーの分光特性を示す。
【0055】
本第3実施の形態は、第1実施の形態のアーク光源1系とレーザユニット21から光ファイバ25を介してレーザ光を導入するレーザ光系との配置を入れ替えた構成であり、第1実施の形態の一変形例である。光源の配置を入れ替えたため第1ダイクロイックミラー105の分光特性が変更されている。その他、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。
【0056】
図5において、第1ダイクロイックミラー105は、アーク光源1からの励起光(例えば、波長488nm)を透過し、レーザユニット21からの第1励起レーザ光(22)(例えば、波長405nm)を反射し、参照レーザ光(23)(例えば、波長633nm)を透過する構成としている。このようにして、本第3実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Cが構成されている。
【0057】
本第3施の形態では、参照レーザ光を用いて標本13上における第1励起レーザ光の照射位置が決められる。PAGFPに対して参照レーザ光は何ら変化を及ぼすことがない波長が用いられる。
【0058】
第1励起レーザ光が照射される位置を不図示のモニタ上で確認するために、像面に載置されている高感度撮像装置16で検出する必要がある。しかし、高感度撮像装置16で検出する蛍光の強度は通常の光に対して1/10,000以下であり、標本13からの参照レーザ光を高感度撮像装置16で検出する場合、参照レーザ光の光量の調整や高感度撮像装置16の検出感度の切り替えが必要となる。このような光量調整や感度切り替えは煩雑であると共に蛍光顕微鏡装置の構成を複雑にし、結果として蛍光顕微鏡装置が高価になる。
【0059】
本第3施の形態では、蛍光顕微鏡装置Cに配置されている第1ダイクロイックミラー105と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって、高感度撮像装置16で標本13からの参照レーザ光を検出可能にしている。
【0060】
図6において、曲線105aは、第1ダイクロイックミラー105の分光特性を示し、波長405nmの第1励起レーザ光を含む約400nm未満の波長の光をほとんど反射し、これより長波長側の光をほとんど透過する特性を有している。曲線4aは、波長488nmの励起光を選択透過する励起フィルタ4の分光特性を示す。第1ダイクロイックミラー5は励起光を良好に透過する特性を有している。また、ダイクロイックミラー5は、波長633nmの参照レーザ光の数%以下を反射する特性を有している。また、曲線11aは、第2ダイクロイックミラー11の分光特性を示し、波長405nmの第1励起レーザ光および波長488nmの励起光を含む略波長500nm以下の光をほとんど反射し、波長505nmの蛍光と波長633nmの参照レーザ光を含む500nmを超える波長の光をほとんど透過する特性を有している。
【0061】
図5において、レーザユニット21でシャッタ29が開放され、参照レーザ光が光ファイバ25を介して光軸Iに沿って導入され、第1ダイクロイックミラー105で数%以下が反射され、更に第2ダイクロイックミラー11で数%以下が対物レンズ12の方向に反射される。この結果、標本13を照射する参照レーザ光の強度は、蛍光と同等の1/10,000以下の光となり高感度撮像装置16で検出することが可能となる。
【0062】
参照レーザ光で標本13上の第1励起レーザ光の照射位置を決める場合、バリアフィルタ14を光軸Jから外すことによって、1/10,000程度まで減衰した標本13からの参照レーザ光を像面に配置した高感度撮像装置16で検出することが可能となる。この際、参照レーザ光の強度が蛍光の強度と同等程度まで第1および第2ダイクロイックミラー105、11で減衰されているため、高感度撮像装置16の感度の切り替え等は不要である。なお、バリアフィルタ14の分光特性14aを波長505nmの蛍光と波長633nmの参照レーザ光の両方の波長を透過するように設定することによって、バリアフィルタ14を光軸Jから外さなくても良い構成にすることができる。
【0063】
参照レーザ光で標本13に対する第1励起レーザ光の照射位置が決定された後、バリアフィルタ14が光軸Jに挿入され、シャッタ29が閉じられ、第1励起レーザ光のシャッタ28が所定時間開放されて、波長405nmの第1励起レーザ光が標本13の所定位置に照射される。第1励起レーザ光は第1ダイクロイックミラー105でほとんど反射され、第2ダイクロイックミラー11でほとんど反射されて対物レンズ12の方向に進行し、対物レンズ12を介して標本13に光量のロスなく照射される。光軸Jにはバリアフィルタ14が挿入されているため、第1励起レーザ光の反射光が高感度撮像装置16に入射することはない。
【0064】
続いて、アーク光源1からの波長488nmの励起光を、シャッタ7を開放することによって標本13に照射し、第1励起レーザ光で第1励起状態にされた場所で発生する波長505nmの蛍光を、バリアフィルタ14を介して像面に配置された高感度撮像装置16で検出し、不図示の画像処理装置を介してモニタで観察する。
【0065】
上述のように、本第3実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Cでは、参照レーザ光による標本からの光を、第1ダイクロイックミラー105と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって減衰するため、蛍光を検出する高感度撮像装置16で検出することが可能となる。また、第1および第2ダイクロイックミラー105、11の分光特性を利用するだけで、レーザ光の光量センサーによる光量調整や、照明光による標本像を撮像する撮像装置が不要となり、簡単で低価格の蛍光顕微鏡装置を提供することが可能となる。
【0066】
(第4実施の形態)
次に、本発明の第4実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置に付いて図を参照しつつ説明する。図7は、本発明の第4実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【0067】
本第4実施の形態は、第1実施の形態におけるレーザユニット21からなる光源を第2アーク光源51(例えば、水銀ランプ等)に変更し、標本13に照射する波長を選択するフィルタ交換装置55を設けている。第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。
【0068】
図7において、第2アーク光源51からの光は、コレクタレンズ52で集光され光軸Iに略平行な光となり視野絞り53に入射し、視野絞り53で標本13における光の照射範囲が制限される。視野絞り53を出射した光は、リレーレンズ54で光軸Iに沿った照明光として対物レンズ12にリレーされる。なお、視野絞り53は絞り羽根により開口径を可変とするものでも良いし、開口径の異なる視野絞りを交換可能に配置しても良い。また、視野絞り53を光軸Iに略垂直な平面内で移動可能に配置することで、標本13を移動することなく照射位置を変更することが可能となる。
【0069】
リレーレンズ54を出射した光は、標本13に照射する波長を選択するフィルタ交換装置55に入射し、第1励起光(例えば、波長405nm)を選択透過するフィルタ56または参照光(例えば、波長633nm)を選択透過するフィルタ57を通過して第1のダイクロイックミラー5に入射し、光軸Iに沿って進行し標本13に照射される。なお、フィルタ交換装置55は、上記フィルタのほかにも複数のフィルタが交換可能に配置され所望の波長を選択できるように構成されている。
【0070】
また、コレクタレンズ52と視野絞り53の間には、第2アーク光源2からの光を標本13へ照射、非照射を制御するシャッタ58が配置され図示しないシャッタ制御装置でシャッタ58の開閉が制御されている。このようにして、本第4実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Dが構成されている。
【0071】
本第4実施の形態では、第2アーク光源51からの光のうちフィルタ57で選択された波長633nmの参照光を用いて標本13上における波長405nmの第1励起光の照射位置が決められる。PAGFPに対して参照光は何ら変化を及ぼすことがない波長が用いられる。
【0072】
第1励起光が照射される位置を不図示のモニタ上で確認するために、像面に載置されている高感度撮像装置16で検出する必要がある。しかし、高感度撮像装置16で検出する蛍光の強度は通常の光に対して1/10,000以下であり、標本13からの参照光を高感度撮像装置16で検出する場合、参照光の光量の調整や高感度撮像装置16の検出感度の切り替えが必要となる。このような光量調整や感度切り替えは煩雑であると共に蛍光顕微鏡装置の構成を複雑にし、結果として蛍光顕微鏡装置が高価になる。
【0073】
本第4実施の形態では、蛍光顕微鏡装置D内に配置されている第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって、高感度撮像装置16で標本13からの参照光を検出可能にしている。
【0074】
なお、第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー11のそれぞれの分光特性は第1実施の形態と同様であり説明を省略する。また、その作用も第1実施の形態と同様である。
【0075】
図7において、シャッタ52が開放され、フィルタ交換装置55のフィルタ57で参照光が透過されて光軸Iに沿って導入され、第1ダイクロイックミラー5は参照光を数%以下透過し、更に第2ダイクロイックミラー11は数%以下を対物レンズ12の方向に反射する。この結果、標本13を照射する参照光の強度は、蛍光と同等の1/10,000以下の光となり高感度撮像装置16で検出することが可能となる。
【0076】
参照光で標本13の照射位置を決める場合、バリアフィルタ14を光軸Jから外すことによって、1/10,000以下にまで減衰した標本13からの参照光を像面に配置した高感度撮像装置16で検出することが可能となる。この際、参照光の強度が蛍光の強度と同等程度まで第1および第2ダイクロイックミラー5、11で減衰されているため、高感度撮像装置16の感度の切り替え等は不要である。なお、バリアフィルタ14の分光特性14aを波長505nmの蛍光と波長633nmの参照光の両方の波長を透過するように設定することによって、バリアフィルタ14を光軸Jから外さなくても良い構成にすることができる。
【0077】
参照光で標本13に対する第1励起光の照射位置が決定された後、バリアフィルタ14が光軸Jに挿入され、シャッタ58が閉じられ、第1励起光を選択透過するフィルタ56に交換される。そしてシャッタ58が所定時間開放されて、波長405nmの第1励起光が標本13の選択位置に照射される。第1励起光は第1ダイクロイックミラー5をほとんど透過し、第2ダイクロイックミラー11ではほとんど反射されて対物レンズ12の方向に進行し、対物レンズ12を介して標本13に光量のロスなく照射される。この際、光軸Jにはバリアフィルタ14が挿入されているため、第1励起光の反射光が高感度撮像装置16に入射することはない。
【0078】
続いて、アーク光源1からの波長488nmの励起光を、シャッタ7を開放することによって標本13に照射し、第1励起光で第1励起状態にされた場所で発生する波長505nmの蛍光を、バリアフィルタ14を介して像面に配置された高感度撮像装置16で検出し、不図示の画像処理装置を介してモニタで観察する。
【0079】
上述のように、本第4実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Dでは、参照光による標本からの光を、第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって減衰するため、蛍光を検出する高感度撮像装置16で検出することが可能となる。また、第1および第2ダイクロイックミラー5、11の分光特性を利用するだけで、参照光の光量センサーによる光量調整や、照明光による標本像を撮像する撮像装置が不要となり、簡単で低価格の蛍光顕微鏡装置を提供することが可能となる。
【0080】
なお、第2アーク光源52から標本13への光の照射効率をより良くする為に、視野絞り53とシャッタ58との間に集光レンズを配置しても良い。
【0081】
(第5実施の形態)
次に、本発明の第5実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置に付いて図面を参照しつつ説明する。本第5実施の形態の蛍光顕微鏡装置Eは、第3実施の形態の蛍光顕微鏡装置におけるアーク光源1の照明系をコンフォーカル装置に置き換えたため第1および第2ダイクロイックミラーの分光特性が異なっている。第3実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。
【0082】
図8は、本発明の第5実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【0083】
図8において、コンフォーカル装置201は、励起光用レーザ光201Lと励起波長を選択する励起フィルタ201Aと、ダイクロイックミラー201Bと、バリアフィルタ201Cと、励起用レーザ光を標本13に照射、非照射を制御するシャッタ201Dと、標本13からの参照レーザ光または標本13からの蛍光を検出するための高感度撮像装置201Eが内蔵されている。
【0084】
図9は、第5実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。
【0085】
図9(a)の曲線205aは、第1ダイクロイックミラー205の分光特性を示し、波長405nmの第1励起レーザ光を含む波長450nm未満の波長を反射し、波長488nmの励起光用レーザ光と波長505nmの蛍光を含む波長450nmから波長600nmの間の光をほぼ透過し、波長633nmの参照レーザ光の光を含む600nmを超える光を略50%透過する特性を有している。図中曲線201a、201b、201cは、コンフォーカル装置201内に配置されている励起フィルタ201A、ダイクロイックミラー201B、バリアフィルタ201Cの特性をそれぞれ示している。
【0086】
図9(b)の曲線211aは、第2ダイクロイックミラー211の分光特性を示し、波長633nmの参照レーザ光を含む波長600nmを超える波長をほぼ透過し、これ以下の波長をほぼ反射する特性を有している。図中曲線201a、201b、201cは、図9(a)と同様であり説明を省略する。
【0087】
図8において、レーザユニット21からの参照レーザ光(23)は、シャッタ29が開放されている間、光ファイバ25で入射端面30に導かれ集光レンズ31を介して第1ダイクロイックミラー205に入射し、第1ダイクロイックミラー205で略50%が反射され、第2ダイクロイックミラー211で数%以下が反射されて標本13に照射される。標本13からの反射光は第2ダイクロイックミラー211で数%以下が反射されて第1ダイクロイックミラー205側に戻り、第1ダイクロイックミラー205で略50%が透過されてコンフォーカル装置201に入射し、コンフォーカル装置201内に配置されているバリアフィルタ201Cが光軸Iから外され高感度撮像装置201Eで検出される。
【0088】
また、レーザユニット21からの第1励起レーザ光(22)は、シャッタ28が開放されている間、光ファイバ25で入射端面30に導かれ集光レンズ31を介して第1ダイクロイックミラー205に入射し、第1ダイクロイックミラー205でほとんど反射され、第2ダイクロイックミラー211でほとんど反射されて標本13に光量のロスが無く照射される。コンフォーカル装置201内に設けられたバリアフィルタが光軸にIに挿入されているため、高感度撮像装置201Eで検出されることは無い。
【0089】
コンフォーカル装置201内に設けられている励起用レーザ光201Lからの光が励起フィルタ201Aで波長を選択されコンフォーカル装置201から出射し、第1ダイクロイックミラー205を透過し、第2ダイクロイックミラー211で反射されて対物レンズ12を介して標本13に照射される。
【0090】
標本13の第1励起レーザ光で照射された部分は、特性が変化しており励起用レーザ光で照射され波長505nmの蛍光が発せられる。この蛍光は、対物レンズ12で集光され第2ダイクロイックミラー211で反射されて第1ダイクロイックミラー205に至り、第1ダイクロイックミラー205を透過してコンフォーカル装置201に入射する。
【0091】
蛍光は、コンフォーカル装置201内のダイクロイックミラー201B、バリアフィルタ201Cを透過して高感度撮像装置201Eで検出される。励起用レーザ光はバリアフィルタ201Bでカットされるために高感度撮像装置201Eに入射することは無い。
【0092】
本第5実施の形態では、参照レーザ光は、第1ダイクロイックミラー205において往復で略25%まで減衰され、第2ダイクロイックミラー211で1/10、000以下まで減衰され、トータルで標本13から発生する蛍光の強度に同等レベルまで減衰することができ、コンフォーカル装置201内に設けられた高感度撮像装置201Eで標本13からの参照レーザ光を検出することが可能となる。
【0093】
以上述べたように、本第5実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Eでは、参照レーザ光による標本からの光を、第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって減衰するため、コンフォーカル装置201内に設けられた蛍光を検出する高感度撮像装置201Eで検出することが可能となる。このように、第1および第2ダイクロイックミラー205、211の分光特性を利用するだけで、レーザ光の光量センサーを用いた光量調整や、照明光による標本像を撮像する撮像装置が不要となり、簡単で低価格の蛍光顕微鏡装置を提供することが可能となる。
【0094】
(第6実施の形態)
次に、本発明にかかる第6実施の形態に付いて図面を参照しつつ説明する。本第6実施の形態は第5実施の形態においてレーザユニット21とコンフォーカル装置201の配置を入れ替えた構成であり、これに伴い第1ダイクロイックミラー305の分光特性が第5実施の形態とは異なっている。その他の構成は第5実施の形態と同様であり同じ符号を付し説明を省略する。
【0095】
なお、第6実施の形態の構成は第5実施の形態と同様であるため詳細な説明を省略し、第5実施の形態とは特性が異なる第1ダイクロイックミラー305の分光特性と作用に付いて説明する。
【0096】
図10は、本発明の第6実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。図11は、第6実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。
【0097】
図10において、蛍光顕微鏡装置Fは、参照レーザ光(例えば、波長633nm)のレーザ光源23と第1励起レーザ光(例えば、波長405nm)のレーザ光源22を有するレーザユニット21と、励起光用レーザ光(例えば、波長488nm)のレーザ光源201Lと、ダイクロイックミラー201Bと励起フィルタ201Aと、バリアフィルタ201Cと、標本13からの参照レーザ光または蛍光を検出する高感度撮像装置201Eを内蔵するコンフォーカル装置201とから構成されている。
【0098】
図11(a)の曲線305aは、第1ダイクロイックミラー305の分光特性を示し、波長405nmの第1励起レーザ光を含む波長450nm以下の波長をほとんど透過し、波長633nmの参照レーザ光を含む波長600nm以上の波長の光略50%透過し、波長450nmと波長600nmの範囲の波長をほとんど反射する特性を有している。図中曲線201a、201b、201cは、第5実施の形態と同様のコンフォーカル装置201内に配置されている励起フィルタ201A、ダイクロイックミラー201B、バリアフィルタ201Cの特性をそれぞれ示している。
【0099】
図11(b)の曲線211aは、第5実施の形態の第2ダイクロイックミラー211の分光特性と同等であり説明を省略する。
【0100】
図10において、レーザユニット21からの波長633nmの参照レーザ光は、シャッタ29が開放されている間、光ファイバ25で入射端面30に導かれ集光レンズ31を介して第1ダイクロイックミラー305に入射し、第1ダイクロイックミラー305で略50%が透過され、第2ダイクロイックミラー211で数%以下が反射されて標本13に照射される。標本13からの反射光は第2ダイクロイックミラー211で数%以下が反射されて第1ダイクロイックミラー305側に戻り、第1ダイクロイックミラー305で略50%が反射されてコンフォーカル装置201に入射し、コンフォーカル装置201内に配置されているバリアフィルタ201Cが光軸Iから外され高感度撮像装置201Eで検出される。
【0101】
本第6実施の形態では、参照レーザ光は、第1ダイクロイックミラー305において往復で略25%程度まで減衰され、第2ダイクロイックミラー211で1/10、000以下まで減衰され、トータルで標本13から発生する蛍光の強度に同等レベルまで減衰することができ、コンフォーカル装置201内に設けられた高感度撮像装置201Eで標本13からの参照レーザ光を検出することが可能となる。
【0102】
上述のように、本第6実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置Fでは、参照レーザ光による標本からの光を、第1ダイクロイックミラー5と第2ダイクロイックミラー11の分光特性によって減衰するため、コンフォーカル装置201内に設けられた蛍光を検出する高感度撮像装置201Eで検出することが可能となる。このように、第1および第2ダイクロイックミラー305、211の分光特性を利用するだけで、レーザ光の光量センサーを用いた光量調整や、照明光による標本像を撮像する撮像装置が不要となり、簡単で低価格の蛍光顕微鏡装置を提供することが可能となる。
【0103】
なお、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【図2】第1実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。
【図3】本発明の第2実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【図4】第2実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。
【図5】本発明の第3実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【図6】第3実施の形態に用いられる第1、および第2ダイクロイックミラーの分光特性を示す。
【図7】図7は、本発明の第4実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【図8】本発明の第5実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【図9】第5実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。
【図10】本発明の第6実施の形態にかかる蛍光顕微鏡装置の概略構成図である。
【図11】第6実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの分光特性を示し、(a)は、第1ダイクロイックミラーの分光特性を、(b)は、第2ダイクロイックミラーの分光特性をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0105】
1 アーク光源
2 コレクタレンズ
3 リレーレンズ
4 励起フィルタ
5 第1ダイクロイックミラー
6 開口絞り
7 シャッタ
8 リレーレンズ
9 視野絞り
10 フィールドレンズ
11 第2ダイクロイックミラー
12 対物レンズ
13 標本
14 バリアフィルタ
15 結像レンズ
16 高感度撮像装置
21 レーザユニット
22 励起レーザ光源
23 参照レーザ光源
24 ダイクロイックミラー
25 光ファイバー
26 入射端面
27 ミラー
28、29 シャッタ
30 出射端面
31 コレクタレンズ
51 第2アーク光源
52 コレクタレンズ
53 視野絞り
54 リレーレンズ
55 フィルタ交換装置
56 第1励起光選択フィルタ
57 参照光選択フィルタ
58 シャッタ
101、201 コンフォーカル装置
103 全反射ミラー
105、205、305 第1ダイクロイックミラー
111、211 第2ダイクロイックミラー
I 照明光学系の光軸
J 対物光学系の光軸
K レーザユニットの光軸
A〜F 蛍光顕微鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本からの蛍光を検出する蛍光顕微鏡装置において、
前記標本を励起する励起光を発生する光源と、
前記標本を観察するための前記励起光とは異なる波長の参照光を発生する光源と、
前記参照光を前記標本に導く照明光学系と、
前記標本からの光束を撮像装置に導く対物光学系と、
前記対物光学系と前記照明光学系の少なくとも一方に、前記標本からの前記参照光の光強度を減衰する波長分離型の光学素子を具備してなることを特徴とする蛍光顕微鏡装置。
【請求項2】
前記励起光は、前記標本を第1励起状態にする第1励起光と、
前記第1励起状態から蛍光を発生させる第2励起光を有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項3】
前記参照光は、前記蛍光の波長より長い波長であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項4】
前記光学素子は、少なくとも2枚のダイクロイックミラーからなり、第1ダイクロイックミラーは前記照明光学系に配置され、第2ダイクロイックミラーは前記対物光学系に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項5】
前記第1ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を透過し、前記参照光を反射し、
前記第2ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を反射し、前記参照光を透過することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項6】
前記第1ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を反射し、前記参照光を透過し、
前記第2ダイクロイックミラーは、前記第1励起光を反射し、前記参照光を透過することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項7】
標本からの蛍光を検出する蛍光顕微鏡装置において、
標本を第1の励起状態に励起する第1の励起光を発生する第1の励起光源と、
前記第1の励起状態から前記蛍光を発生させる第2の励起光を発生する第2の励起光源と、
前記標本に前記第1の励起光の照射位置を位置付けする為に用いる参照光を発生する参照光源と、
前記第1の励起光と、前記第2の励起光と、前記参照光とを前記標本に導く照明光学系と、
前記標本からの光束を撮像装置に導く対物光学系と、
前記照明光学系と前記対物光学系の少なくとも一方に、前記参照光の光強度を減衰させる光学素子を具備してなることを特徴とする蛍光顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−3662(P2006−3662A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180209(P2004−180209)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】