説明

蛍光顕微鏡

【課題】従来の蛍光顕微鏡においては、例えば細胞分裂挙動を観察する場合、細胞にラベリングした蛍光物質から発生する蛍光波長が重畳するとき独立成分として検出できず、正確な各細胞毎の挙動観察が不可能であった。
【解決手段】2個の電子的検出器(CCDカメラ)5,6前方の各選択フィルタ装置8,9と励起光を選択するフィルタ装置7とを連動させて、励起光波長に対する検出蛍光波長を対応させるとともに、光源の光路の開閉シャッター11の開閉時間と蛍光発生時の検出器へ2蛍光波長の取り込み時間を対応させ、それぞれのラベリングされた物質からの発生蛍光を重畳することなく2波長の蛍光を同時に検出できるようにした蛍光顕微鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡、特に、試料から発生する蛍光の2波長が重畳していた場合、これら重畳している蛍光の2波長成分を同時に独立成分としてそれぞれ検出する装置に関するものであり、例えば特定の波長の光で励起されて蛍光を発する二種またはそれ以上の蛍光タンパク質(遺伝子)を、細胞内の各組織を構成する遺伝子と融合させ、その融合遺伝子を宿主細胞に導入(ラベリング)し、その細胞分裂挙動を蛍光顕微鏡下で観察する、あるいは薬剤と細胞との関係を蛍光顕微鏡下で観察するなどの細胞分裂(試料)動態を観察する等に適した蛍光顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、細胞構造や分子の局在等を観察するために、蛍光顕微鏡やレーザ顕微鏡が使用されている。蛍光顕微鏡では、試料内の注目する特定分子に特異的に結合する蛍光分子(蛍光プローブ等と呼ばれ、例えば注目するたんぱく質の抗体に蛍光分子を共有結合させたものなどが使用される)を付けて、この分子の分布や動きを励起光の照射に伴って発生する蛍光を観察することで把握している。
【0003】
例えば動植物の細胞では、誕生から死滅まで細胞分裂を繰り返しながら生存することから、生存している状態での細胞分裂の形態変化、動態変化の観察、特に外来性の物質や遺伝子等による細胞分裂の形態変化への影響を観察することは、生物学的に特に重要であり、この観点から、従来、細胞分裂に作用する物質、例えば、核膜、染色体、中心体、動原体、紡錘体などのダイナミックな変化が追跡されている。
【0004】
上記のような細胞分裂の形態(動態)変化を生きているままの状態で観察する場合、通常顕微鏡が使用されるが、一般の顕微鏡観察では、細胞内部での詳細な形態変化を観察することは困難であるため、従来から細胞観察に当たっては上記のようなラベリングされた蛍光分子の分布や動きを観察するために蛍光顕微鏡が一般に用いられていた。
【0005】
例えば、第1図に例示する一般的な蛍光顕微鏡には、試料Sを励起する励起光と試料から発生する蛍光とを分離するダイクロイックミラーMが用いられており、光源OSからの励起光は、開閉シャッターSH,フィルタFを経由して、ダイクロイックミラーMにいたり、図では90度上方に反射されて試料Sを照射する。この結果、試料Sより照射光の波長より若干長い波長の蛍光が発生し、この蛍光は、そのままダイクロイックミラーMを通過して例えば、電子的検出器DE(CCDカメラ)で検出される。
【0006】
以上が一般的な蛍光顕微鏡の構造、機能であるが、上記したように近年、試料(細胞)内の複数物質の形態、動態を追跡するために、複数の蛍光色素で細胞を染色し(ラベリングし)、それぞれの蛍光を発現させる多色蛍光法が利用されている。しかし、上記の蛍光顕微鏡では、都度蛍光色素に応じたフィルタセットを用いて蛍光観察を行うため、単色の蛍光観察しか行えず、複数の蛍光の発色現象を同時多面的に観察することは困難であった。
【0007】
そこで蛍光顕微鏡を利用して多色蛍光観察を行う方法として、蛍光顕微鏡に電子的検出器(CCDカメラ)などの撮像素子を採用し、一方では励起フィルタ、ダイクロイックミラー、吸収フィルタの組み合わせを含む複数種のフィルタセットを用意し、これらの各フィルタセットを所定のタイミングで切り替え移動させ、それぞれのタイミングで撮影した多くの蛍光観察画像を重ね合わせて試料などの動態、形態映像を得る方式も行われている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−331887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の特許文献1に記載の装置にあっては、複数組の励起フィルタ、ダイクロイックミラー、吸収フィルタの組み合わせセットを、所定のタイミングで切り替えてそれぞれのタイミングで撮影した1波長ごとの画像を重ね合わせて映像を得る方式のため、重畳している2波長の蛍光成分は独立成分として同時に観察できないため、タイミング切り替えの遅れで2波長の蛍光発生時には必要な画像の撮影時期を逃し、また機械的移動に伴う光軸のずれのため画像の鮮明さが損なわれ、更にはフィルタ、ダイクロイックミラー間の組み合わせが固定されているので自在のフィルタなどの組み合わせが困難である、などの問題点があり、連続に変化する試料の形態変化を迅速に連続追従して撮影するためには更なる改良が要求されていた。
【0009】
この発明は、上記課題を解決するために蛍光あるいはレーザ顕微鏡の光学系を2波長の蛍光発生時でも2波長成分を同時独立観察が可能なように改良するもので、試料を励起してラベリングされた蛍光色素を励起させる励起光を照射する光学系と、試料から発生した蛍光(蛍光放射光)を観察する光学系とを連動制御して、選択された目的とする励起波長に対応して発生する蛍光と、重畳して発生する可能性のある他の蛍光とを、つまり2波長の蛍光を波長ごとにそれぞれ独立成分として同時に選択的に検出できる蛍光顕微鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するための装置として、試料への励起光を順次選択照射する複数のフィルタからなる励起フィルタ装置と、試料からの蛍光を2個の電子的検出器方向に2分割する蛍光分割手段と、励起フィルタ装置のフィルタ選択に対応して蛍光の波長を選択する複数のフィルタからなる選択フィルタ装置とを有するとともに、この選択フィルタ装置は前記の2個の電子的検出器の前方にそれぞれ配置され、励起フィルタ装置でのフィルタ選択に対応したフィルタが各々連動選択され2波長の蛍光を独立成分として同時に測定することを特徴とする蛍光顕微鏡を提供するものである。
【0011】
さらに、前記励起光源の光路開閉シャッターの開閉時間と、2個の電子的検出器への蛍光取り込み時間を対応させるように同期制御して、正確な蛍光取り込みを可能としたことを特徴とする蛍光顕微鏡を提供するものである。
【0012】
本発明装置に供される試料(細胞)には、一般に複数個の蛍光タンパク質がラベリングのために導入されているので、これらの蛍光タンパク質を順次励起するために、試料へ励起光を順次選択する複数のフィルタからなる励起フィルタ装置と、試料からの蛍光を2個の検出器方向に2分割する蛍光分割手段と、励起フィルタ装置のフィルタ選択に対応して蛍光の波長を選択する複数の波長選択フィルタからなる選択フィルタ装置とを有し、この選択フィルタ装置は前記2個の電子的検出器の前方にそれぞれ配置され、励起フィルタ装置でのフィルタ選択と各選択フィルタ装置でのフィルタ選択とが連動選択されるように構成されているので、同時に2波長の蛍光を独立成分として観察・検出が可能となり、試料の正確な動態蛍光観察も可能となるのである。
【0013】
また本発明は、励起光の出射を制御する光路開閉機構のもとに、電子的検出器の動作時間を同期制御しているので、目的とする励起光に対応する目的とする個々の蛍光が検出でき、迷光などのノイズを防ぎ、正確な試料の観察が可能となる。
【0014】
すなわち、例えば緑色、赤色、青色、さらに黄色などのいろいろの色を発生させる蛍光物質(蛍光試薬名)をもって細胞をラベリングすることにより発生する可能性のある重畳した蛍光もこの発明の装置では同時に独立成分として観察が可能となる。また、このような蛍光タンパク質から発生する蛍光は、緑、赤、青、黄に限ったものではなく、これ以外のいろいろな蛍光を発するタンパク質が存在し、特許文献1にも開示されているような蛍光色素と試薬の組み合わせ、例えば青、シアン、緑、赤の組み合わせ、あるいは青、黄、赤の組み合わせを一度に用いることで幅広い多くの試料(細胞)の分裂構造(動態)解析等が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、細胞等に各種の発色を呈する蛍光物質をラベリングしておき、分裂観察時、細胞に複数種の波長の励起光を順次照射することにより、励起光の波長に対応して発生したその細胞にラベリングされた蛍光物質特有の蛍光を選択検出することによって、細胞の分裂形態(状況)が、蛍光の分布状況から判明する。もちろん分裂進行中においても、繰り返し検出することにより映画のコマのように、その進行状況を観察することが可能となる。特に波長が重畳している近接する蛍光も、少なくとも2個の電子検出器(CCDカメラ)前方に配置されて各選択フィルタ装置の働きと電子検出器の動作域(範囲)の制御で重畳している個々の蛍光が2つの検出器で独立成分として同時に検出され、この重畳部分がノイズ部分の場合は、この部分を差し引いき、あるいは情報の場合は有用な情報として追加して観察できるので、細胞分裂の進行時を含めた分裂状況がリアルタイムに詳細に直接観察できる。
【0016】
この場合、各フィルタ装置は回転円盤に複数個のフィルタを配置し、各円盤の回転角度ごとに対応フィルタを決めておくことで、各フィルタ間の対応をあらかじめ決定できるので、励起フィルタ装置と選択フィルタ装置とは連動制御可能となる。また回転円盤方式のため、光軸のずれもなく正確な位置決めが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面に従いこの発明を実施するための形態を説明する。
第2図にこの発明の蛍光顕微鏡の概略構成図を示す。ただし、この図は、顕微鏡が本来装備している接眼レンズ、コレクタレンズ、対物レンズなどは省略して、この発明に関連する要部の構成のみを示している。また、この概略構成図のようなダイクロイックミラーを使用するタイプの蛍光顕微鏡は一般に落射蛍光顕微鏡と呼ばれ、試料の観察面に励起光が直接照射されて明るくシャープな像が得られるため、一般的に広く用いられている。
【0018】
図において、1は光源で、例えば水銀ランプあるいはハロゲンランプである。
2は、第1図において説明したダイクロイックミラーで、光源からの励起光と試料3からの蛍光とを分離するための光学素子で、特定の波長の光(励起光)は反射し、それ以外の波長の光(蛍光)は透過させる。このミラー2は、図でも明らかなように、入射光路Oに対し角度45度で配置されており、光源1からの入射光は、試料3方向にこのミラーで反射され(この図では90度上方)、光路P上を試料3方向へ導かれる。
【0019】
この入射光によって試料3は励起され、例えば細胞(試料)にラベリングされた蛍光物質は蛍光を発し、この蛍光はダイクロイックミラー2を透過し、半透明鏡4に入射する。なお、試料3は、顕微鏡のステージ上のCO2チャンバー(図示せず)内に導入されており、この中には、細胞を培養することが出来るようにCO2インキュベータ内に近い環境を保つために空気と炭酸ガスとの混合気体が封印されている。また生細胞の観察のためには、底面に円形のカバーグラスが貼り付けられたグラスボトムデイッシュを用いられる。
【0020】
この半透明鏡4は、蛍光分割手段として、図のように光軸に対し45度の角度で配置され、入射光のうち半分は二次元的電子的検出器(CCDカメラ)5に、残りの半分は同じく二次元的電子的検出器(CCDカメラ)6にそれぞれ分割入射し検出される。なお、図の7は、励起フィルタ装置で、光源の幅広い波長域の励起光から、特定波長の試料励起光を選択する励起フィルタであり、8及び9は、各電子的検出器(CCDカメラ)5,6の前方に配置された特定波長の選択(吸収)フィルタ装置である。
【0021】
この上記の励起フィルタ装置7は、試料にラベリングした蛍光物質の励起に必要な光を励起光源1から抽出するため複数の光学素子(フィルタ)群で構成され、赤,シアン,オレンジ,青などの特定の波長の光のみを透過するように選択される複数のバンドパスフィルタ等が一般に用いられる。なお、このフィルタ装置は複数の励起光を順次得るため、複数のフィルタがセットされた回転フィルターホイールが一般的に用いられている。
【0022】
一方選択フィルタ装置8,9の各々は、試料からの目的とする蛍光とその他の不必要に重畳している蛍光あるいは散乱光などを分離する光学素子(フィルタ)群で構成され、図のように試料からダイロックミラー2を透過してきた励起光より長波長の蛍光は透過し、その他の励起漏れ光(試料や光学系からの散乱光)などの通過は阻止する働きをする。そしてこれらの選択フィルタ装置も複数のフィルタがセットされた回転フィルターホイールが一般的に用いられる。
【0023】
10は、フィルタ駆動機構で、上記に説明した各フィルタ装置7,8,9を連動駆動するもので、励起フィルタ装置7でのフィルタ選択に伴い、この励起フィルタに対応した励起光で発生する蛍光波長が得られるように選択フィルタ装置8,9は駆動され、対応するフィルタを選択する。すなわちフィルタ装置7による選択励起光に対する発生蛍光をフィルタ装置8,9で選択する。
【0024】
第3図は、励起光とこれに伴って発生する蛍光との発生タイミング関係、及びシャッター機構の開閉範囲(時間)と蛍光の検出波長範囲(時間)を例記したものである。
図において、波長433nm,488nm,548nm,563nmは、例えば細胞にラベリングした物質への励起波長で、この順に青色、緑色、オレンジ色、赤色である。この波長特性では明らかなように、励起光433nm,563nmの波長は独立(重畳していない)しているが、488nmと548nmは、その裾野部分は重畳している。
【0025】
一方、これらの波長で励起されて発生する蛍光は、475nm,507nm,559nm,582nmの波長として出現するが、蛍光波長475nm,582nmは独立しているが、励起光488nm,548nmに対応する蛍光波長507nm,559nmは、やはり裾野部分で重畳している。
【0026】
この図で明らかなように、励起波長488nmを選択してもその裾の部分には548nmの波長成分がわずかに出現して重畳しており、結果的に励起波長488nmの励起光により発生する蛍光波長507nmの裾部分には559nmの波長成分が出現して重畳するようになる。この発明の構成においては、フィルタ装置7での488nmの励起光選択時にでもフィルタ装置8,9においては蛍光507nmと559nmの両蛍光が同時検出できるように、フィルタ駆動機構10は動作する。
【0027】
同じく逆に、励起光548nmにおいてもその裾の部分には488nmの波長成分が重畳している。したがって548nmでの励起光によっても蛍光波長559nmの裾部分には同じく507nmが重畳することになる。よってこの発明の構成にあっては、フィルタ装置7での548nmの励起光選択時にフィルタ装置8,9において蛍光507nmと559nmの両蛍光が同時検出できるようにフィルタ駆動装置10が動作する。
【0028】
また蛍光に重畳部分が発生しないと思われている場合でも、蛍光エネルギー共鳴現象の結果重畳部分でわずかな蛍光の発生が見られることがあり、これが形態(動態)分析に重要な知見をもたらす可能性がある。特に構造解析、形態解析において、反応の可視化の結果、酵素反応、薬剤とたんぱく質との結合、ホルモン同士の結合、など思いもよらない現象が蛍光エネルギー共鳴現象として出現する可能性が考えられるので、この発明の構成にあっては、同時に2波長の蛍光が発生するこの現象の出現も検出することが可能となる。
【0029】
一方、11はシャッター機構で、光源1からの光路Oを開閉し、且つこの開閉時間は12の光路開閉制御機構でコントロールされるとともに、この光路開閉制御機構12は、光路Oの開閉時間に対応して電子的検出器5,6の動作範囲を制御する。すなわち、試料への励起光照射タイミングに遅れて発生する蛍光を効率よく取り込み検出するためのもので、光路Oの開閉時間に遅れたタイミングの蛍光発生時間に、検出器を一定期間動作させ、ノイズを除去した蛍光成分のみを効率よく取り込み、検出することができ、これらの検出出力は表示器13上にいろいろな状況で表示される。
【0030】
この発明は、第3図のようにシャッター機構11の開閉範囲(励起波長範囲)a,b,c,d,・・・と電子的検出器(CCDカメラ)の検出波長範囲A,B,C,D・・・とを、光路開閉制御機構12を介して連動させ、励起光488nm,548nmの発生範囲b,c部分の励起光をフィルタ装置7とシャッター機構11とで取り込み、試料を励起し、一方、発生する蛍光の波長507nm,559nmの発生範囲B,C部分をフィルタ装置8,9及び電子的検出器5,6で取り込み検出するものである。
【0031】
(実施例)
以上の構成の顕微鏡において、試料として青色,緑色,オレンジ色,赤色の励起光で蛍光を発生するようにラベリングした試料(例えば細胞試料)3を作成し、この試料3に光源1より例えばハロゲンランプの光を投射する。このときフィルタ装置7で順次、433nm,488nm,548nm,563nmを選択し、かつシャッター11の開閉範囲a,b,c,dを第3図のような波長との関係において励起光として取り込むと、この選択された波長の光が、順次励起光としてダイクロイックミラー2で反射されて、試料を励起照射する。
【0032】
この結果、試料からの励起波長に対応した波長、475nm,507nm,559nm,582nmの蛍光が発生し、ダイクロイックミラー2を透過して、半透明鏡4にいたる。この半透明鏡4は光路に対して略45度に傾斜しているので、半分の光は透過してフィルタ装置8を介して検出器5に、残りの半分の光は、反射してフィルタ装置9を介して検出器6でそれぞれ同時に検出される。
【0033】
このとき、励起光波長433nmと563nmとに対応する蛍光は、波長457nmと582nmとして、シャッター11の開閉と、それに伴うフィルタ装置7とフィルタ装置8,9及び検出器5,6との関係で、それぞれを検出波長域A,Dとしてそれぞれの検出器で分離独立して検出できる。一方、励起光波長488nmと548nmとに対応する蛍光も、波長507nmと重畳部分の波長559nmとして、あるいは波長559nmと重畳部分の波長507nmとしてそれぞれの検出器で検出される。このときシャッター機構11の開閉と、それに伴うフィルタ装置8、フィルタ装置9及び電子的検出器5,6との動作関係で、中心波長507nmと重畳波長559nm、あるいは逆に中心波長559nmと重畳波長507nm、として検出波長域B,Cでそれぞれの検出器5,6で互いに同時に分離独立成分して検出できる。例えばフィルタ装置8は波長507nmを、フィルタ装置9は重畳部分の波長559nmを、あるいはフィルタ装置8は重畳部分の波長507nmを、フィルタ装置9は波長559nmを、それぞれ透過させ、結果として重畳していた蛍光も中心波長と同時にそれぞれの電子的検出器8及び9で分離独立成分して検出でき、この結果は、表示器13で検出データとして各蛍光での出力が同時に表示される。
【0034】
以上の説明では、半透明鏡を使用するとして説明したが、半透明鏡に代わり、半円盤状で鏡面を持った回転光チョッパー(蛍光分割手段)を利用し、ある回転角度では、蛍光は検出器5に直接に、ある回転角度では、蛍光は、反射させられて検出器6方向に向かうように動作させることでも回転チョッパーの回転スピードにもよるが半透明鏡の使用と略同じような効果を得ることができ、この構成も2検出器で2波長の蛍光を同時検出するというこの発明と略同一の効果が得られる。このとき表示器13のソフトで回転チョッパーでの遅れを補正することで、表示機13に出力を同時表示することも可能である。
【0035】
また、図示していないが、鏡筒の長さの調整手段、いわゆるエレベータ機構を採用することで、例えば試料(細胞)の厚さ方向での光学切片を観察することも可能となり、細胞の水平方向への形態変化のみならず、厚さ方向での変化も検出でき、細胞分裂などの動態変化を、立体的に、継続的に観察することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、蛍光顕微鏡において励起フィルタ装置と選択フィルタ装置との駆動機構装置、更にはシャッター機構と電子的検出器との連動操作をする光路開閉制御機構などを装備しているので、種々の励起光に対する発生蛍光を、波長の重畳している蛍光も同時に独立成分として検出できるので、例えば生体試料の生存状態を維持しながら細胞分裂などの動態変化を連続的に観察でき、更には薬剤投与の結果の生体試料の動態変化なども継続的に観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図は、一般的な蛍光顕微鏡の要部構成を説明する概略図である。
【図2】図は、この発明の蛍光顕微鏡の要部構成を説明する図である。
【図3】図は、この発明の励起フィルタ装置、選択フィルタ装置、シャッター装置、更には電子的検出器の連動関係から、励起光とこれに伴う蛍光の検出タイミングなどを説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
OS,1 光源
M,2 ダイクロイックミラー
S,3 試料
M,4 半透明鏡
DE,5,6 電子的検出器(CCD)
F,7 励起フィルタ装置
8,9 選択フィルタ装置
10 フィルタ駆動機構
SH,11 シャッター機構
12 光路開閉制御装置
13 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料への励起光を順次選択照射する複数のフィルタからなる励起フィルタ装置と、試料からの蛍光を2個の電子的検出器方向に2分割する蛍光分割手段と、励起フィルタ装置のフィルタ選択に対応して蛍光波長を選択する複数のフィルタからなる選択フィルタ装置とを有するとともに、この選択フィルタ装置は前記の2個の電子的検出器の前方にそれぞれ配置され、励起フィルタ装置でのフィルタ選択に対応したフィルタが各々連動選択され重畳していた2波長の蛍光を独立成分として同時に検出することを特徴とする蛍光顕微鏡。
【請求項2】
前期励起光の照射時間と、2個の電子的検出器の動作時間とが、光路開閉機構の光路開閉動作と同期制御されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−199605(P2007−199605A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20709(P2006−20709)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】