説明

蛍光X線分析システムおよびそのシステムに用いるプログラム

【課題】システム自体と基板の汚染を防止する蛍光X線分析システム、それに用いるプログラムを提供する。
【解決手段】蛍光X線分析システム100は、基板1を測定する蛍光X線分析装置40と、基板1の被測定物2を反応性ガスにより溶解する気相分解装置20と、溶液で被測定物2を回収して基板1の表面に保持する試料回収装置30と、基板1を、蛍光X線分析装置40から気相分解装置20へ、気相分解装置20から試料回収装置30へ、および試料回収装置30から蛍光X線分析装置40への搬送を行う搬送装置50と、蛍光X線分析装置40、気相分解装置20、試料回収装置30および搬送装置50を制御するとともに、被測定物2の測定値が所定の分析閾値未満の基板1であるか、否かを識別する制御装置60とを有する制御装置60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次X線を基板に照射して発生する蛍光X線の強度を測定して被測定物の定量分析値を算出する蛍光X線分析装置と、基板の表面に存在する被測定物または基板の表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物を反応性ガスにより溶解する気相分解装置と、表面に被測定物が存在する基板に溶液を滴下して保持具で保持しながら基板の表面で移動させ、被測定物を回収後乾燥させて基板の表面に保持する試料回収装置と、基板の搬送を行う搬送装置と、蛍光X線分析装置、気相分解装置、試料回収装置および搬送装置を制御する制御装置とを備える蛍光X線分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の表面の分析装置として蛍光X線分析装置が広く使用されている。しかし、半導体技術の進歩に伴い、より高感度の分析装置の要求が高まり、蛍光X線分析装置の単体の分析感度では、その要求に充分に応えることができず、半導体基板を試料前処理装置により前処理して被測定物を濃縮し、高感度分析を行っている。従来、基板の表面に存在する被測定物または基板の表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物を反応性ガスにより溶解する気相分解装置と、表面に被測定物が存在する基板に溶液を滴下して保持具で保持しながら基板の表面で移動させ、被測定物を回収後乾燥させて基板の表面に保持する試料回収装置とを有する試料前処理装置がある(特許文献1)。
【0003】
また、このような試料前処理装置と、被測定物に1次X線を照射して発生する蛍光X線の強度を測定する蛍光X線分析装置と、試料前処理装置から蛍光X線分析装置への基板の搬送を行う搬送装置とを備えた蛍光X線分析システムがある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−72836号公報
【特許文献2】特開2003−75374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載されている装置はともに、基板の表面に存在する被測定物の定量分析値の多少に係わらず、分析対象の基板の全数を前処理していた。特許文献2に記載されている装置は、セットした基板の全数が試料前処理装置で処理されて、保持された被測定物に1次X線を照射して発生する蛍光X線の強度を測定する蛍光X線分析システムであり、基板の表面に多量の汚染物質が付着していても基板を自動的に前処理するために、試料前処理装置がこのような基板によって汚染され、さらに、その後前処理される基板も汚染され、正常な前処理および蛍光X線分析を行うことができない。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、基板を前処理段階に入る前に蛍光X線分析装置によって測定し、その測定値により前処理段階に入るか、否かの判断を行い、前処理装置が汚染される恐れのある基板の場合には、その基板を前処理装置に搬送せず、システム自体と基板の汚染を防止する、自動化された蛍光X線分析システムおよびそのシステムに用いるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1構成の蛍光X線分析システムは、1次X線を基板に照射して発生する蛍光X線の強度を測定して被測定物の定量分析値を算出する蛍光X線分析装置と、基板の表面に存在する被測定物または基板の表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物を反応性ガスにより溶解する気相分解装置と、表面に被測定物が存在する基板に溶液を滴下して保持具で保持しながら基板の表面で移動させ、被測定物を回収後乾燥させて基板の表面に保持する試料回収装置と、基板の搬送を行う搬送装置と、前記蛍光X線分析装置、気相分解装置、試料回収装置および搬送装置を制御して、前記気相分解装置および試料回収装置に基板を前処理させ、基板の表面に保持された被測定物の定量分析値を前記蛍光X線分析装置に算出させる制御装置とを備える蛍光X線分析システムであって、前記制御装置が、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理の前に、前記蛍光X線分析装置に、1次X線を基板に照射させて発生する蛍光X線の強度を測定させ、被測定物の定量分析値を算出させ、その算出された定量分析値を所定の分析閾値と比較して、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する。
【0007】
第1構成の蛍光X線分析システムによれば、気相分解装置に搬送される前に、蛍光X線分析装置に基板の被測定物の定量分析値を算出させ、その算出された定量分析値により基板を気相分解装置に搬送するか、否かの判断を行い、試料前処理装置である気相分解装置や試料回収装置が汚染される恐れのある基板の場合には、その基板を気相分解装置に搬送しない自動化により、システム自体と基板の汚染を防止することができる。さらに、試料前処理装置である気相分解装置に基板を搬送するか、否かの判断を自動で行うので、判断の間違いもなくなり、操作も容易になり分析時間を大幅に短縮することができる。
【0008】
第1構成の蛍光X線分析システムは、前記制御装置が、さらに、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する前に、前記測定された蛍光X線の強度のうち基板を構成する元素の蛍光X線の強度を所定の強度閾値と比較して、前記蛍光X線分析装置が正常か否かを判断するのが好ましい。この場合、基板を構成する元素の蛍光X線の強度を所定の強度閾値と比較して、蛍光X線分析装置が正常か否かを判断することにより、蛍光X線分析装置の異常を自動で判断することができ、較正や再調整を行うことにより、早期に正常動作に復帰できる。
【0009】
第2構成のプログラムは、第1構成の蛍光X線分析システムが備えるコンピュータを前記制御装置として機能させるためのプログラムであって、前記気相分解装置および試料回収装置に基板を前処理させる前に、前記蛍光X線分析装置に、1次X線を基板に照射させて発生する蛍光X線の強度を測定させ、前記蛍光X線分析装置に、被測定物の定量分析値を算出させ、その算出された定量分析値を所定の分析閾値と比較して、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する手順をコンピュータに実行させる。
【0010】
第2構成のプログラムによれば、第1構成の蛍光X線分析システムと同様の作用効果が得られる。
【0011】
第2構成のプログラムにおいては、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する前に、前記測定された蛍光X線の強度のうち基板を構成する元素の蛍光X線の強度を所定の強度閾値と比較して、前記蛍光X線分析装置が正常か否かを判断する手順をコンピュータに実行させるのが好ましい。この場合、蛍光X線分析装置の異常を自動で判断させることができ、蛍光X線分析装置の較正や再調整を行うことにより、早期に正常動作に復帰できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態の蛍光X線分析システムを構成から説明する。図1(a)、(b)の一部を破断した平面図、正面図に示すように、この蛍光X線分析システム100は、まず、気相分解装置20および試料回収装置30を有する試料前処理装置10と、試料台41に載置された基板1上の被測定物2にX線源42から1次X線43を照射して発生する蛍光X線44の強度を検出手段45で測定して被測定物2の定量分析値を算出する蛍光X線分析装置40と、前記試料前処理装置10から蛍光X線分析装置40へ基板1を搬送する搬送装置50とを備える。基板1は、例えばシリコンウェハである。
【0013】
第1実施形態では、基板1に対し1次X線43を微小な入射角で照射する全反射蛍光X線分析装置40を採用し、X線源42は、X線管、単色化のための分光素子などを有し、検出手段45には、半導体検出器であるSSDなどを用いる。蛍光X線分析装置40は、ロボットハンドなどの搬送手段46を有しており、導入室の導入カセット47と試料台41との間で、基板1を搬送する。導入カセット47の代わりに導入台を備えてもよい。
【0014】
前記搬送装置50は、レールの上で本体が前後に移動自在なロボットハンドであり、そのハンド部50aに基板1を載置して、基板1を、蛍光X線分析システムのカセット台5に載置された投入カセット3(所定の投入位置)から蛍光X線分析装置40の導入カセット47へ、投入カセット3から試料前処理装置10の気相分解装置20または試料回収装置30へ、気相分解装置20から試料回収装置30へ、気相分解装置20または試料回収装置30から蛍光X線分析装置40の導入室の導入カセット47へ、導入室の導入カセット47からもとのカセット台5に載置された投入カセット3へ、搬送する。カセット台5には、複数の投入カセット3を載置できる。
【0015】
蛍光X線分析システム100は、半導体製造装置などが置かれるクリーンルーム6とそこで製造された半導体の基板1を分析する分析室7とを隔てる壁8を突き抜けるように設置され、カセット台5のみがクリーンルーム6内にある。カセット台5に載置された投入カセット3と搬送装置50との間には図示しないシャッターが設けられている。
【0016】
蛍光X線分析システム100は、蛍光X線分析装置40、気相分解装置20、試料回収装置30、搬送装置50、カセット台5に載置された投入カセット3と搬送装置50との間のシャッターなどを共通の環境(ソフトウエア)で制御するとともに、蛍光X線分析装置40によって測定された基板1の被測定物2の定量分析値と所定の分析閾値とを比較して、気相分解装置20および試料回収装置30による前処理を行うべきか否かを判断するコンピュータで構成された制御装置60を、例えば蛍光X線分析装置40内に配置して備える。すなわち、制御装置60は、測定された基板1の被測定物2の定量分析値と所定の分析閾値とを比較して、測定された基板1が所定の分析閾値未満であるか、否かを判断し、識別する。各装置は、共通の基台上で、全体として一つの筐体に一体的に設けられている。定量分析値はatoms/cmのような絶対値表現であっても、ppmのような濃度表現であってもよい。なお、気相分解装置20および試料回収装置30による前処理を行うべきか否かを判断する測定値として、定量分析値に代えて蛍光X線強度値を用いてもよい。
【0017】
前もって分析条件設定時に、所定の分析閾値が制御装置60に設定される。所定の分析閾値の3つの例について以下に説明する。第1例では、測定元素にかかわらず一つの値、例えば、1E12atoms/cmを設定し、測定元素の定量分析値がいずれも1E12atoms/cm未満であれば、制御装置60が分析閾値未満の基板であると識別する。第2例では、測定元素にかかわらず一つの値、例えば、1E12atoms/cmを設定し、測定元素の定量分析値の総和値が1E12atoms/cm未満であれば、制御装置60が分析閾値未満の基板であると識別する。第3例では、元素毎の個別の分析閾値、例えば、各元素の検出下限値(Ca:1E8atoms/cm、Cr:2E7atoms/cm、Fe:1E7atoms/cm、Ni:1E7atoms/cmなど)の100,000倍、あるいは200,000倍を設定し、各測定元素の定量分析値がそれぞれの元素の分析閾値未満であれば、制御装置60が分析閾値未満の基板であると識別する。分析閾値は分析条件設定時に設定してもよいし、前もって制御装置60に記憶させておいて選択してもよい。
【0018】
試料前処理装置10のうち、気相分解装置20は、基板1の表面に存在する被測定物2または基板1の表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物2を、反応性ガスであるフッ化水素により溶解後、乾燥させて基板1の表面に保持する。試料回収装置30は、表面に被測定物2が存在する基板1に溶液を滴下して保持具(図示なし)で保持しながら基板1の表面で移動させ、被測定物2を回収後、乾燥させて基板1の表面に保持する。
【0019】
次に、第1実施形態の蛍光X線分析システム100が備えるコンピュータを図1の制御装置60として機能させるためのプログラムについて説明する。このプログラムは、気相分解装置20および試料回収装置30に基板1を前処理させる前に、蛍光X線分析装置40に1次X線43を基板1に照射させて発生する蛍光X線44の強度を測定させ、蛍光X線分析装置40に被測定物2の定量分析値を算出させ、その算出された定量分析値を所定の分析閾値、例えば前記の第1例の分析閾値と比較して、気相分解装置20および試料回収装置30による前処理を行うべきか否かを判断する手順を実行させる。
【0020】
次に、第1実施形態の蛍光X線分析システム100の動作手順について図2のフロー図を用いて説明する。ステップS1でカセット台5(図1参照)に基板1、例えば汚染物質を分析すべきシリコンウエハを収納した投入カセット3が載置され、その投入カセット3内(所定の投入位置)の分析する枚数の基板1を所定の条件で前処理、分析すべき旨が入力手段(図示なし)から制御装置60に入力されると、蛍光X線分析システム100の各装置が以下のように動作するよう制御される。
【0021】
ステップS2において、蛍光X線分析システム100の分析が開始される。
【0022】
ステップS3において、基板1を搬送装置50で導入カセット47に搬送し、次に、搬送手段46で導入カセット47から試料台41へ搬送して載置する。
【0023】
ステップS4において、蛍光X線分析装置40は載置された基板1に1次X線43を照射して基板1から発生する蛍光X線44の強度を測定する。
【0024】
ステップS5において、ステップS4で測定された蛍光X線44の強度に基づき、制御装置60により基板1の被測定物2の定量分析値を算出する。
【0025】
ステップS6において、算出された各測定元素の定量分析値と例えば、前記の第1例の所定の分析閾値である1E12atoms/cmとを比較して、算出された被測定物2の定量分析値が1元素でも1E12atoms/cm以上であれば、制御装置60が分析閾値以上の基板であると識別する。
【0026】
ステップS7Aにおいて、分析閾値以上の基板1は搬送手段46で試料台41から投入カセット3に搬送される。
【0027】
ステップS6において、算出された被測定物2の定量分析値がすべての元素で1E12atoms/cm未満であれば、制御装置60が分析閾値未満の基板であると識別する。
【0028】
ステップS7において、分析閾値未満の基板1は搬送手段46で試料台41から導入カセット47へ搬送され、さらに、搬送装置50で導入カセット47から気相分解装置20に搬送される。
【0029】
ステップS8において、気相分解装置20が、基板1の表面に存在する被測定物2または基板1の表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物2を、気相分解装置20内で反応性ガスであるフッ化水素により溶解後、乾燥させて基板1の表面に保持する。
【0030】
ステップS9において、搬送装置50が、基板1を気相分解装置20から試料回収装置30へ搬送する。
【0031】
ステップS10において、試料回収装置30が、表面に被測定物2が存在する基板1に溶液を滴下して保持具(図示なし)で保持しながら基板1表面で移動させ、被測定物2を回収後乾燥させて基板1の表面に保持する。
【0032】
ステップS11において、搬送装置50が、基板1を試料回収装置30から導入カセット47へ搬送し、さらに、搬送手段46が導入カセット47から試料台41へ搬送する。
【0033】
ステップS12において、蛍光X線分析装置40が、試料台41に載置された基板1に1次X線43を照射して全反射蛍光X線分析を行い、基板1の被測定物2の定量分析値を求める。
【0034】
ステップS13において、基板1は搬送手段46により試料台41から導入室の導入カセット47へ搬送され、さらに、搬送装置50によりカセット台5に載置されたもとの投入カセット3へ搬送される。
【0035】
ステップS14において、ステップSA7およびステップS13で投入カセット3に搬送された基板数の合計数nと、分析条件設定時に設定された基板数とが同数になったか、否かを判断する。設定された基板数と同数でない場合には、ステップS3に戻る。
【0036】
分析条件設定時に設定された基板数と同数になると、ステップS15において、分析は終了する。なお、ステップS12の基板1の蛍光X線測定中に、次の基板の回収、その次の基板の分解を同時に行えば、全体の前処理および分析作業をいっそう迅速に行える。
【0037】
以下、本発明の第2実施形態の蛍光X線分析システムについて、図1(a)、(b)により説明する。第2実施形態の蛍光X線分析システム200は、第1実施形態の蛍光X線分析システム100の制御装置60に代えて制御装置70を備えており、その他の構成は第1実施形態の蛍光X線分析システム100と同様である。制御装置70は、基板1を気相分解装置20および試料回収装置30による前処理を行うべきか否かを判断する前に、蛍光X線分析装置40に測定させた基板1の蛍光X線の強度のうち基板1を構成する元素の蛍光X線の強度を所定の強度閾値と比較して、蛍光X線分析装置40が正常か、否かを判断する手順を、制御装置60に追加して有している。
【0038】
例えば、シリコンウェハである基板1を測定する場合、シリコンウェハ1を構成する元素であるSiから発生する蛍光X線であるSi−Kα線44の強度と所定の強度閾値とを比較して、測定されたSi−Kα線44の強度が所定の強度閾値未満であれば、蛍光X線分析装置40に異常が発生したと判断する。前もって分析条件設定時に、制御装置70に所定の強度閾値が設定される。所定の強度閾値の2つの例について以下に説明する。第1例の所定の強度閾値では、例えば基準強度3000cpsの50%として設定し、測定された基板のSi−Kα線の強度が、3000cpsの50%未満であれば、蛍光X線分析装置40に異常が発生したと判断する。第2例の所定の強度閾値では、例えば基準強度2000cpsとして、測定された基板のSi−Kα線の強度が、2000cps未満であれば、蛍光X線分析装置40に異常が発生したと判断する。強度閾値は分析開始前に設定してもよいし、前もって制御装置70に記憶させておき、その中から選択してもよい。
【0039】
次に、第2実施形態の蛍光X線分析システム200が備えるコンピュータを図1の制御装置70として機能させるためのプログラムについて説明する。このプログラムは、基板1を気相分解装置20および試料回収装置30による前処理を行うべきか否かを判断する前に、蛍光X線分析装置40によって測定された基板1の蛍光X線44の強度のうち基板1を構成する元素の蛍光X線44の強度を所定の強度閾値、例えば前記の第2例のSi−Kα線の基準強度2000cpsと比較して、蛍光X線分析装置40が正常か否かを判断する手順を、第1実施形態の蛍光X線分析システム100に用いるプログラムに追加したプログラムである。
【0040】
次に、第2実施形態の蛍光X線分析システム200の動作手順について図3のフロー図を用いて説明する。第2実施形態の蛍光X線分析システム200の図3のフロー図は、第1実施形態の蛍光X線分析システム100の図2のフロー図に、ステップ4とステップ5の間にあるステップSA1とステップSA2が追加されているだけであるので、ステップSA1とステップSA2について説明する。
【0041】
ステップSA1において、ステップS4で測定されたSi−Kα線44の強度が、例えば、前記の第2例の強度閾値である2000cps未満であれば、制御装置70が、蛍光X線分析装置40に異常が発生したと判断する。
【0042】
ステップSA2において、ステップSA1の判断に基づき、蛍光X線分析装置40が異常であるとみなし分析を終了する。ステップSA1において、測定された基板のSi−Kα線44の強度が、強度閾値の2000cps以上であれば、蛍光X線分析装置40は正常と判断し、ステップS5に進む。
【0043】
なお、ステップSA1およびステップSA2は測定する基板毎に実行してもよいし、最初の基板1のみに実行してもよいし、所定枚数毎に実行してもよい。ステップS12の基板1の蛍光X線測定中に、次の基板の回収、その次の基板の分解を同時に行っている蛍光X線分析システムで、蛍光X線分析装置40が異常であるとみなし分析を終了するときは、気相分解装置20および試料回収装置30において、基板1が乾燥される段階まで進行し、乾燥させた基板1を投入カセット3に搬送して分析を終了する。
【0044】
以下、本発明の第3実施形態の蛍光X線分析システムについて、図1(a)、(b)により説明する。第3実施形態の蛍光X線分析システム300は、第1実施形態の蛍光X線分析システム100の制御装置60に代えて制御装置80を備えており、その他の構成は第1実施形態の蛍光X線分析システム100と同様である。
【0045】
制御装置80は、気相分解装置20および試料回収装置30による前処理の前に、蛍光X線分析装置40に1次X線を基板1に照射させて発生する蛍光X線の強度を測定させた基板数をカウントして、分析条件設定時に設定された基板数か、否かを判断する手順を、制御装置60に追加して有している。
【0046】
次に、第3実施形態の蛍光X線分析システム300が備えるコンピュータを図1の制御装置80として機能させるためのプログラムについて説明する。このプログラムは、気相分解装置20および試料回収装置30による前処理の前に、蛍光X線分析装置40に1次X線43を基板1に照射させて発生する蛍光X線44の強度を測定させた基板数をカウントして、分析条件設定時に設定された基板数と同数か、否かを判断する手順を、第1実施形態の蛍光X線分析システム100に用いるプログラムに追加したプログラムである。すなわち、気相分解装置20および試料回収装置30での基板1の処理前に、蛍光X線分析装置40に測定させる第1段階と、気相分解装置20および試料回収装置30に基板1を処理させた後に、蛍光X線分析装置40に測定させる第2段階とに分けて、分析条件設定時に設定した全枚数の基板1について第1段階を実行してから、第2段階に進むプログラムである。
【0047】
次に、第3実施形態の蛍光X線分析システム300の動作手順について図4のフロー図を用いて説明する。蛍光X線分析システム300の動作は、分析する基板1の総枚数について気相分解装置20および試料回収装置30での基板1の処理前に蛍光X線分析装置40で測定する第1段階と、第1段階の蛍光X線分析装置40によって測定された定量分析値により、蛍光X線分析システム300の汚染のおそれのない基板1のみを気相分解装置20および試料回収装置30に搬送し、基板1の処理後に蛍光X線分析装置40で測定する第2段階とに区分される。
【0048】
まず、ステップS1でカセット台5(図1参照)に基板1、例えば汚染物質を分析すべきシリコンウエハ1を収納した投入カセット3が載置され、その投入カセット3内(所定の投入位置)の分析する枚数の基板1を所定の条件で前処理、分析すべき旨が入力手段(図示なし)から制御装置60に入力されると、蛍光X線分析システム300の各装置が以下のように動作するよう制御される。
【0049】
ステップS2において、蛍光X線分析システム300の分析が開始される。
【0050】
ステップS3において、基板1を搬送装置50で投入カセット3から導入カセット47へ搬送し、さらに、搬送手段46で導入カセット47から試料台41へ搬送して載置する。
【0051】
ステップS4において、蛍光X線分析装置40は、試料台41に載置された基板1に1次X線43を照射して基板1から発生する蛍光X線44の強度を測定する。
【0052】
ステップSB1において、基板1を搬送手段46で試料台41から導入カセット47へ搬送し、さらに、搬送装置50で導入カセット47から投入カセット3へ搬送する。
【0053】
ステップSB2において、制御装置80が蛍光X線分析装置40に測定させた基板1の枚数nをカウントし、設定された基板数と同数でない場合には、ステップS3に戻る。測定した基板1の枚数nが分析条件設定時に設定した枚数と同数になると、第1段階が終了する。
【0054】
第1段階が終了すると、第2段階に進み、ステップS5において、第1段階で測定された基板1の蛍光X線44の強度に基づき、制御装置80により基板1の被測定物2の定量分析値を算出する。
【0055】
ステップS6において、算出された全測定元素の定量分析値と例えば、前記の第1例の所定の分析閾値である1E12atoms/cmとを比較して、算出された被測定物2の定量分析値が1元素でも1E12atoms/cm以上であれば、制御装置80が分析閾値以上の基板であると識別し、分析閾値以上の基板1は投入カセット3に保持さたままとなる。
【0056】
ステップS6において、算出された被測定物2の定量分析値がすべての元素で1E12atoms/cm未満であれば、制御装置80が分析閾値未満の基板であると識別し、ステップS7において、分析閾値未満の基板1は搬送手段46で試料台41から導入カセット47へ搬送され、さらに、搬送装置50で導入カセット47から気相分解装置20に搬送される。
【0057】
ステップS8において、気相分解装置20が、基板1の表面に存在する被測定物2または基板1の表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物2を気相分解装置20内で反応性ガスであるフッ化水素により溶解後、乾燥させて基板1の表面に保持する。
【0058】
ステップS9において、搬送装置50が、基板1を気相分解装置20から試料回収装置30へ搬送する。
【0059】
ステップS10において、試料回収装置30が、表面に被測定物2が存在する基板1に溶液を滴下して保持具(図示なし)で保持しながら基板1表面で移動させ、被測定物2を回収後、乾燥させて基板1の表面に保持する。
【0060】
ステップS11において、搬送装置50が、基板1を試料回収装置30から導入カセット47へ搬送し、さらに、搬送手段46が導入カセット47から試料台41へ搬送する。
【0061】
ステップS12において、蛍光X線分析装置40が、試料台41に載置された基板1に1次X線43を照射して全反射蛍光X線分析を行い、基板1の被測定物2の定量分析値を求める。
【0062】
ステップS13において、基板1は搬送手段46により試料台41から導入カセット47へ搬送され、さらに、搬送装置50によりカセット台5に載置されたもとの投入カセット3へ搬送される。
【0063】
ステップS14において、ステップS6で保持された基板数とステップS13で投入カセット3に搬送された基板数との合計数nと、分析条件設定時に設定された基板数とが同数になったか、否かを判断する。設定された基板数と同数でない場合には、ステップS5に戻る。分析条件設定時に設定された基板数と同数になると、ステップS15において、分析は終了する。
【0064】
以下、本発明の第4実施形態の蛍光X線分析システムについて、図1(a)、(b)により説明する。第4実施形態の蛍光X線分析システム400は、第2実施形態の蛍光X線分析システム200の制御装置70に代えて制御装置90を備えており、その他の構成は第2実施形態の蛍光X線分析システム200と同様である。
【0065】
制御装置90は、気相分解装置20および試料回収装置30による前処理の前に、蛍光X線分析装置40に1次X線を基板1に照射させて発生する蛍光X線の強度を測定させた基板数をカウントして、分析条件設定時に設定された基板数と同数か、否かを判断する手順を、制御装置70に追加して有している。
【0066】
次に、第4実施形態の蛍光X線分析システム400が備えるコンピュータを
図1
の制御装置90として機能させるためのプログラムについて説明する。このプログラムは、気相分解装置20および試料回収装置30による前処理の前に、蛍光X線分析装置40に1次X線43を基板1に照射させて発生する蛍光X線44の強度を測定させた基板数nをカウントして、分析条件設定時に設定された基板数と同数か、否かを判断する手順を、第2実施形態の蛍光X線分析システム200に用いるプログラムに追加したプログラムである。
【0067】
次に、第4実施形態の蛍光X線分析システム400の動作手順について図5のフロー図を用いて説明する。第4実施形態の蛍光X線分析システム400の図5のフロー図は、第3実施形態の蛍光X線分析システム300の図4のフロー図に、ステップS4とステップSB1の間にあるステップSA1とステップSA2が追加されているだけである。ステップSA1とステップSA2については第2実施形態の蛍光X線分析システム200で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0068】
前記の第1から第4実施形態のプログラムは、記録媒体に記録することができ、第1から第4実施形態の蛍光X線分析システム100、200、300、400が備える制御装置60、70、80、90に、それぞれに対応した手順を実行させるために、記録媒体に書き込まれる。記録された第1から第4実施形態のプログラムを容易にコンピュータなどの制御装置60、70、80、90に読み取らせることができる。ここで、記録媒体には、フロッピー(登録商標)ディスク、MOディスク、CD、DVD、ハードディスク等が含まれる。この記録媒体を用いれば、第1から第4実施形態の蛍光X線分析システム100、200、300、400に用いるプログラムと同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
第1から第4実施形態の蛍光X線分析システムでは、搬送手段46と搬送装置50との2つの搬送手段(装置)を備えて基板1の搬送しているが、1つの搬送手段(装置)を備えて基板1を搬送してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】(a)は、本発明の第1から第4実施形態の蛍光X線分析システムの平面図である。(b)は、同蛍光X線分析システムの正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の蛍光X線分析システムの動作フロー図である。
【図3】本発明の第2実施形態の蛍光X線分析システムの動作フロー図である。
【図4】本発明の第3実施形態の蛍光X線分析システムの動作フロー図である。
【図5】本発明の第4実施形態の蛍光X線分析システムの動作フロー図である。
【符号の説明】
【0071】
1 基板 (シリコンウェハ)
2 被測定物
20 気相分解装置
30 試料回収装置
40 蛍光X線分析装置
43 1次X線
44 蛍光X線
50 搬送装置
60、70、80、90 制御装置
100、200、300、400 蛍光X線分析システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次X線を基板に照射して発生する蛍光X線の強度を測定して被測定物の定量分析値を算出する蛍光X線分析装置と、
基板の表面に存在する被測定物または基板の表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物を反応性ガスにより溶解する気相分解装置と、
表面に被測定物が存在する基板に溶液を滴下して保持具で保持しながら基板の表面で移動させ、被測定物を回収後乾燥させて基板の表面に保持する試料回収装置と、
基板の搬送を行う搬送装置と、
前記蛍光X線分析装置、気相分解装置、試料回収装置および搬送装置を制御して、前記気相分解装置および試料回収装置に基板を前処理させ、基板の表面に保持された被測定物の定量分析値を前記蛍光X線分析装置に算出させる制御装置とを備える蛍光X線分析システムであって、
前記制御装置が、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理の前に、前記蛍光X線分析装置に、1次X線を基板に照射させて発生する蛍光X線の強度を測定させ、被測定物の定量分析値を算出させ、その算出された定量分析値を所定の分析閾値と比較して、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する蛍光X線分析システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置が、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する前に、前記測定された蛍光X線の強度のうち基板を構成する元素の蛍光X線の強度を所定の強度閾値と比較して、前記蛍光X線分析装置が正常か否かを判断する蛍光X線分析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の蛍光X線分析システムが備えるコンピュータを前記制御装置として機能させるためのプログラムであって、
前記気相分解装置および試料回収装置に基板を前処理させる前に、
前記蛍光X線分析装置に、1次X線を基板に照射させて発生する蛍光X線の強度を測定させ、
前記蛍光X線分析装置に、被測定物の定量分析値を算出させ、
その算出された定量分析値を所定の分析閾値と比較して、前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する手順をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項4】
請求項2に記載の蛍光X線分析システムが備えるコンピュータを前記制御装置として機能させるためのプログラムであって、
前記気相分解装置および試料回収装置による前処理を行うべきか否かを判断する前に、
前記測定された蛍光X線の強度のうち基板を構成する元素の蛍光X線の強度を所定の強度閾値と比較して、前記蛍光X線分析装置が正常か否かを判断する手順をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−92448(P2009−92448A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261638(P2007−261638)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】