説明

融解性の金属材料から成る複数の部品を永久接続するための方法と装置

本発明は、ハイブリット溶接プロセスを実行するためのロボット制御の溶接ユニットを用いて、融解性の金属材料から成る複数の部品相互を永久的に接続するための方法に関わる。この方法に従えば、高性能マグ溶接プロセス(高性能MAG)が、実行される。この高性能マグ溶接プロセスを実行する部品は、前記ハイブリット溶接プロセスを実行するために、前記ロボット制御の溶接ユニットによって運ばれ、前記ハイブリット溶接プロセスに貢献するマグ溶接を実行するユニットは、前記溶接ユニットによって引かれるようにして案内される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリット溶接プロセスを実行するためのロボット制御の溶接ユニットを用いて、融解性の金属材料から成る複数の部品を永久に接続するための方法に関わる。
また、本発明は、前述の方法を実行するための装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
上述のような形式の方法及び装置は、特に造船の分野で用いられるような、厚いプレートを相互接合する際に、産業的に利用される。
【0003】
純粋なレーザーハイブリット溶接、即ち、例えば15mmの厚いプレートを用いたレーザー溶接とガスメタルアーク溶接(GMA)との組み合わせが、一般に高温割れが原因の、いわゆる「ミドル・リブ欠陥」を引き起こすということが知られている。特に、例えば15mm以上の厚いプレートの場合、高温割れが生じることによって、溶接シームを再び溶接しなければならない。このような追加の再溶接は、多くの場合、サブマージアーク溶接法である。
【0004】
ハイブリットシームの再溶接、特に、サブマージアーク溶接法による再溶接は、ミドル・リブ欠陥が、前記ハイブリットシームの根の領域(root region)に変位する危険があるという欠点を有している。このことは、すでにサブマージアーク溶接法によって作り直された前記溶接シームの根の領域が、同様に再溶接されなければならないことを、意味し得る。このことは、更に、もう一度作業工程を必要とし、すなわち、すでに溶接されている部品の向きを変え、このシームを、今度は反対側で、もう一度溶接しなければならない。
【0005】
再溶接のために用いられるサブマージアーク溶接法は、更に、厚いプレートへの熱の導入と、これによるゆがみとが生じ得るという欠点を有する。
さらに、前記サブマージアーク溶接法によって形成されるシームエレベーションは、特に造船の外皮領域において、見た目には効果が無いと見なされるということが、顕著である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、厚いプレートのハイブリット溶接において、亀裂が発生する危険性、即ち、ミドル・リブ欠陥の発生を防ぐという問題に基づいている。
この問題は、請求項1の特徴による方法に従って解決される。本発明に係る方法の加療は、従属請求項2乃至5から明らかになる。
この装置に従えば、本発明の基礎となっているこの問題は、請求項6乃至8の特徴によって解決される。
【0007】
融解性の金属材料から成る複数の部品相互を永久接続するための本発明に従った方法では、ロボット制御の溶接ユニットが、ハイブリット溶接プロセスを実行するために用いられている。本発明に従えば、高性能マグ溶接プロセス(HP−MAG)が、予め規定された間隔で、前記ハイブリット溶接プロセスに続いて、実行される。
【0008】
前記ハイブリット溶接プロセスの溶接シームが冷却し始めるとすぐに、本発明に係る次の更なるHP−MAGプロセスがすぐに続き、これによって亀裂が除かれる。
ハイブリット溶接プロセスは、種々の溶接プロセスの、どのような組み合わせでもあり得る。
【0009】
ハイブリット溶接プロセスを実行するために、サブマージアーク溶接プロセス(SAW)が、レーザー溶接プロセスと組み合わせて実行されることが、特に好ましい。このようなレーザーハイブリット溶接プロセスは、更なる溶接継ぎ手の用意を省略することにつながる単一レーザー溶接が可能であるため、実際に経済効果をもたらす。プレートが比較的厚い場合は特に、具体的には、造船で頻繁に起きるように溶接継ぎ手の反対側に近づくことが出来ない部品において、単側溶接技術が、実施され得る。
【0010】
前記HP−MAG溶接プロセスを実行するトーチが、前記ハイブリット溶接プロセスを実行するために前記ロボット制御の溶接ユニットにより支持されて、一緒に移動される構造ユニットに設けられることが好ましい。したがって、ハイブリット溶接プロセスと、これに続くHP−MAG溶接プロセスとは、シームに沿って同じ溶接速度で実行される。このため、本発明に係る方法は、「タンデム溶接方法」とも称され得る。
【0011】
前記ハイブリット溶接プロセスの実行に係るSAWトーチは、このトーチが溶接方向に引かれるようにして傾けられるように、前記溶接ユニットに整列して配置されている。
【0012】
前記高性能マグ溶接プロセス(HP−MAG)の実行に係るトーチは、前記溶接ユニットに穿孔するようにして(in a piercing manner)案内される。前記引かれるトーチとして案内される前側の前記SAWトーチと、これに続く穿孔する前記HP−MAGとをアラインメントすることによって、速い溶接速度で、最適の溶接結果を可能にする。
【0013】
約13乃至22mmの厚さのプレートを使用して、失敗のない、二層間の溶接が、本発明に係る方法によって、ロボット制御の溶接ユニットの単一の走行で実行され、この溶接ユニットは、更に第2のトーチを案内するように構造ユニットを運ぶ。厚さが18乃至20mmのプレートで、溶接の速度に応じて、前記溶接ユニットと構造ユニットとの間の間隔が約150乃至400mmの範囲であることが、有効である。例えば18mmの厚さのプレートでは、上流のレーザーハイブリット方法によって、接続部の下側8mmが充填され、また、下流HG−MAGプロセスが、接続部の残りを、直径1.6mmの溶接ワイヤで充填する。比較的高速で前記ワイヤを融かし、十分な充填の程度を得るために、対応する高性能溶接装置が使われ得る。
【0014】
この装置に従えば、融解性の、金属材料から成る複数の部品相互を接続するための方法は、ロボット制御の溶接ユニットによって実行され、この溶接ユニットは、ハイブリット溶接プロセス、即ち、サブマージアーク溶接プロセス(SAW)とレーザー溶接プロセスとの組み合わせを実行する。この溶接ユニットは、前記ハイブリット溶接プロセスに続いて高性能マグ溶接プロセス(HP−MAG)を実行するために、構造ユニットと接続されている。前記溶接ユニットが、溶接されるシームに沿って、相互に接続される厚いプレートの間を案内されると、HP−MAGトーチと接続されている構造ユニットが、予め規定された間隔で、前記溶接ユニットの後に続く。
【0015】
ロボットによって案内される前記溶接ユニットには、前記HP−MAG溶接トーチを支持する前記構造ユニットが容易に取り付けられることができるキャリアが、設けられ得る。逆も可能であり、前記構造ユニットは、前記溶接ユニットに取り付けられたキャリアを有し得る。
前記キャリアは、これに設けられる前記1つもしくはそれぞれのトーチが、溶接方向にこれらの間隔とのアラインメントとに関して調整され得るように構成されることが、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この図は、溶接方法を実行するための装置の概略的な側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
更なる発明の特徴が明らかになる本発明の実施形態が、前記図に表されている。
【0018】
ここでは融解性の金属材料から成る造船のための厚いプレート1である部品を永久的に接続するための装置は、ロボット制御の溶接ユニット2を有している。このロボット制御の溶接ユニットが、矢印VSに従って溶接方向に案内される時、この溶接ユニットは、同時に、この溶接ユニットに設けられたトーチ3も移動させ、これによって、サブマージアーク溶接プロセス(SAW)が実行される。同時に、同じく前記溶接ユニットに位置されたレーザービームを案内する部品4も移動され、この結果、前記溶接ユニット2は、最終的に、前記厚いプレート1に沿った移動によって、予め規定された速度で、矢印VS方向にハイブリット溶接プロセスを実行する。六角形のヘッド5によってこの図では概略的に示されているように、ねじ接続によって、キャリア6が、前記溶接ユニット2に取り付けられている。このキャリアは、高性能マグ溶接プロセス(HP−MAG)を実行するように、トーチ8が設けられている構造ユニット7を運ぶ。
【0019】
前記SAWのトーチ3は、前記溶接方向VSに対して、引かれるようにして、アラインメントされる。前記HP−MAGのトーチ8は、同じく前記溶接方向VSに対して、穿孔するようにして、アラインメントされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリット溶接プロセスを実行するためのロボット制御の溶接ユニットを用いて、融解性の金属材料から成る複数の部品相互を永久的に接続するための方法において、
高性能マグ溶接プロセス(HP−MAG)が、前記ハイブリット溶接プロセスの後に、予め規定された間隔で続くように、実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記HP−MAG溶接プロセスを実行する構造ユニット(7)が、前記ハイブリット溶接プロセスを実行するための前記ロボット制御の溶接ユニット(2)によって運ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハイブリット溶接プロセスの実行に係るSAWトーチ(3)が、前記溶接ユニット(2)によって引かれるようにしてアラインメントされるように案内されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記高性能マグ溶接プロセス(HP−MAG)の実行に係るHP−MAGトーチ(8)は、前記溶接ユニット(2)によって運ばれる前記構造ユニット(7)と共に、穿孔するように案内されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶接プロセスは、約0.6乃至1.5m/minの溶接速度で実行されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ハイブリット溶接プロセスを実行するためのロボット制御の溶接ユニットを用いて、融解性の金属材料から成る複数の部品相互を接続するための装置において、
構造ユニット(7)が、前記ハイブリット溶接プロセスに続いて高性能マグ溶接プロセス(HP−MAG)を実行するように、前記溶接ユニット(2)に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
溶接ユニット(2)と構造ユニット(7)との間の間隔は、約150乃至400mmに等しいことを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記溶接ユニット(2)は、前記構造ユニット(7)が取り付けられているキャリア(6)を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−526669(P2010−526669A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507787(P2010−507787)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000762
【国際公開番号】WO2008/138304
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509316682)メイアー・ベルフト・ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】MEYER WERFT GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriegebiet Sued, 26871 Papenburg, Germany
【Fターム(参考)】