説明

融雪装置及びその制御方法

【課題】
構造物の屋根に設置する融雪装置及びその制御方法において、ヒータ等に必要となる電力コストを抑制し、建造物に設置する際の設置コストを抑制した融雪装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】
融雪装置が、屋根の上面に設置した平板状の融雪モジュールと、融雪モジュール上に積もった雪の高さである積雪高さを検知する積雪センサと、制御装置を有しており、積雪センサで、予め設定した積雪高さを超える雪を融雪モジュール上で検知した場合、ヒータをオンとし、積雪センサで、雪が予め設定した積雪高さ以下となった場合、ヒータをオフとする制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋等の構造物の屋根に設置する融雪装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪の多い地域では、家屋等の屋根から堆積した雪を降ろす雪下ろし作業が必要となる。この雪下ろし作業は、重労働となり、更に危険が伴う。この雪下ろし作業を不要とするために、屋根にヒータを設置し、雪を融かす融雪装置が使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、屋根の瓦の下面に自己温度制御型ヒータを設置する融雪装置が記載されている。この融雪装置は、ヒータで発生させた熱を、瓦を介して屋根上の雪に伝達し、雪を融かす。この構成により、雪下ろし作業が不要となる。このような融雪装置のヒータのオンオフは、サーモスタットで自動制御するものが多い。また、手動で行うものもある。
【0004】
しかしながら、上記の融雪装置はいくつかの問題点を有している。第1に、ヒータ等に必要となる電力コストが多大であるという問題を有している。これは、サーモスタットによるヒータのオンオフ制御では、ヒータの熱が雪の融解にほとんど使われずに、大気中に放射してしまう場合が発生し得るためである。つまり、融雪の必要性の有無、及び積雪の状態を正確に把握していないため、無駄な加熱を行う場合がある。また、ヒータで発生した熱が、屋根を伝わり加熱する必要のない場所(例えば軒や屋根の頂部)から大気中に放熱されてしまうため、エネルギー効率が低下してしまう。更に、ヒータで発生した熱が屋根の瓦等を介して雪に伝達する構成のため、屋根を温めるためのエネルギーが必要となってしまう。
【0005】
第2に、屋根に融雪装置を設置するためのコストが多大であるという問題を有している。上記の融雪装置を既に建築されている家屋等に設置する場合、屋根の瓦を取り除いてから融雪装置を設置しなくてはならないため、設置コストが多大となる。
【0006】
第3に、メンテナンス性が低いという問題を有している。融雪装置を瓦の下方に設置する構造により、融雪装置に故障が発生した場合は、瓦を取り除いてから修理又は交換を行わなくてはいけないからである。また、上記のように融雪装置は、修理又は交換が困難となるため、長期間の安定動作を実現しなければならない。これにより、製造コストが増大してしまうという問題も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3497902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、構造物の屋根に設置する融雪装置及びその制御方法において、ヒータ等に必要となる電力コストを抑制し、建造物に設置する際の設置コストを抑制した融雪装置及びその制御方法を提供することである。また、メンテナンス性の高い融雪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明に係る融雪装置は、平板状の筐体内に、断熱材と、前記断熱材上に配置したヒータと、前記ヒータ上に配置した均熱層を有した融雪モジュールを有する融雪装置において、前記融雪装置が、屋根の上面に設置した平板状の融雪モジュールと、前記融雪モジュール上に積もった雪の高さである積雪高さを検知する積雪センサと、制御装置を有しており、前記積雪センサで、予め設定した積雪高さを超える雪を前記融雪モジュール上で検知した場合、前記ヒータをオンとし、前記積雪センサで、前記雪が前記予め設定した積雪高さ以下となった場合、前記ヒータをオフとする制御を行うように構成したことを特徴とする。
【0010】
この構成により、融雪モジュールが消費するエネルギーのコストを抑制することができる。これは、融雪モジュール上の雪が、融雪モジュールから大気への放熱を抑制し、エネルギー効率が向上するためである。
【0011】
上記の融雪装置において、前記融雪モジュールが、下面に支持部材を有しており、前記融雪モジュールが、前記融雪モジュールと前記屋根の間に空間である空気層を形成していることを特徴とする。この構成により、融雪モジュールが消費するエネルギーのコストを抑制することができる。これは、融雪モジュールで発生する熱が、屋根及び屋根を介して大気中に拡散しないためである。
【0012】
上記の融雪装置において、前記積雪センサが、赤外線により積雪高さを測定する赤外線センサ、又は、前記融雪モジュールにかかる雪の重量から積雪高さを推定する圧力センサの少なくとも1つを有していることを特徴とする。この構成により、積雪高さを正確に計測又は推定することができる。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明に係る融雪装置の制御方法は、平板状の筐体内に、断熱材と、前記断熱材上に配置したヒータと、前記ヒータ上に配置した均熱層を有した融雪モジュールを有し、前記融雪装置が、屋根の上面に設置した平板状の融雪モジュールと、前記融雪モジュール上に積もった雪の高さである積雪高さを検知する積雪センサと、制御装置を有した融雪装置の制御方法であって、前記積雪センサで、前記融雪モジュール上の雪の積雪高さを検知し、前記積雪高さと予め設定した積雪高さと比較するステップと、前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも大きい場合に前記ヒータをオンとするステップと、前記積雪センサで、前記融雪モジュール上の雪の積雪高さを検知し、前記積雪高さと予め設定した積雪高さと比較するステップと、前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも小さい場合に前記ヒータをオフとするステップを有することを特徴とする。この構成により、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0014】
上記の融雪装置の制御方法において、前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも大きい場合に前記ヒータをオンとするステップが、前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも大きい場合に第1タイマーのカウントを開始するステップと、前記第1タイマーの時間が予め設定した第1設定時間を経過した後に、前記ヒータをオンとするステップを有することを特徴とする。
【0015】
この構成により、ヒータのスイッチをオンオフする回数を抑制することができる。つまり、十分な積雪があり、融雪装置が一定時間以上作動することが確実な場合のみ、融雪装置が作動する。これにより、ヒータのエネルギー消費量を抑制することができる。
【0016】
上記の融雪装置の制御方法において、前記融雪装置がツララ防止ヒータを有しており、前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも小さい場合に前記ヒータをオフとするステップが、前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも小さい場合に前記ヒータをオフとし、第2タイマーのカウントを開始するステップと、外気温度が0℃以下であり
、且つ、前記第2タイマーの時間が予め設定した第2設定時間を経過した後に、前記ツララ防止ヒータをオンとするステップを有することを特徴とする。
【0017】
ツララ防止ヒータ4を融雪モジュール2と共に制御する構成により、ツララが発生する条件下でのみ、確実にツララ防止ヒータ4を作動することができる。そのため、ツララ防止ヒータ4のエネルギー効率を向上することができる。特に、外気温度が0℃以下であっても、水の不存在によりツララが発生しない条件下では、ツララ防止ヒータ4が動作しない制御としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る融雪装置及びその制御方法によれば、構造物の屋根に設置する融雪装置及びその制御方法において、ヒータ等に必要となる電力コストを抑制し、建造物に設置する際の設置コストを抑制した融雪装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態の融雪装置の設置状態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の融雪装置の設置状態を示した側面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の融雪装置の平面を示した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の融雪装置の一部を示した透視図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の融雪装置の制御フローである。
【図6】本発明に係る実施の形態の融雪装置の制御フローである。
【図7】本発明に係る実施の形態の融雪装置の制御フローである。
【図8】家屋の屋根等への積雪状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態の融雪装置について、図面を参照しながら説明する。図1に、融雪装置1を、家屋5の屋根6に設置した場合の斜視図を示す。この融雪装置1は、平板状の融雪モジュール2と、積雪センサ3と、図示しない制御装置を有している。融雪モジュール2は、加熱ヒータを内蔵しており、このヒータの発熱により雪を融かすように構成している。
【0021】
積雪センサ3は、融雪モジュール2上に積もった雪の高さ(以下、積雪高さという)を検知することができる。この積雪センサ3は、赤外線センサ等を利用して構成することができる。また、積雪センサ3は、外気温度を測定することができる。上記の融雪装置1に、ツララ防止ヒータ4を加えてもよい。このツララ防止ヒータ4は、軒(屋根6の端部)に設置する。
【0022】
なお、この融雪装置1は、積雪高さが高くなりやすい軒側に設置することが望ましい。ただし、豪雪地帯では、頂部を含む屋根全体に、融雪装置1を設置してもよい。また、積雪センサ3は、圧力センサを利用して構成してもよい。この圧力センサは、融雪モジュール2にかかる雪の圧力(重量)から積雪高さを推定するように構成する。この圧力センサは、融雪モジュールの複数個所に設置することが望ましい。更に、積雪センサ3を、赤外線センサ及び圧力センサを併用する構成としてもよい。この構成により、積雪高さの測定精度を向上することができる。
【0023】
図2に、融雪装置1を屋根6に設置した場合の側面図を示す。融雪装置1は、融雪モジュール2と、融雪モジュール2の下面に設置した複数の支持部材9と、積雪センサ3と、ツララ防止ヒータ4を有している。この融雪装置1は、雪止め7を介して屋根6(詳しくは瓦8)に固定している。また、支持部材(例えば支持金具)9は、融雪モジュール2が瓦8上でたわまないように設置している。更に、この支持部材9により、融雪モジュール
2は、屋根6(瓦8)との間に空気層(Airspace)Asを形成している。ここで、h1は、積雪センサ3が検知する積雪高さを示している。
【0024】
次に、融雪装置1の動作について説明する。融雪装置1は、屋根6上の積雪高さ(雪の高さ)が、予め設定した積雪高さ(設定積雪高さh1)を超えた場合、発熱し、雪を融かす作業を開始する。そして、融雪装置1は、積雪高さが設定積雪高さh1以下となった場合に、動作を停止する。つまり、融雪モジュール2上には、常に、一定の高さ(h1)以上の雪が存在するように制御する。
【0025】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、融雪モジュール2上の雪を全て融かさない制御により、融雪モジュールのエネルギー効率を向上することができる。これは、融雪モジュール2上の雪が、融雪モジュール2から大気への放熱を抑制するためである。つまり、融雪モジュール2上の雪を断熱層として利用することができる。従って、融雪モジュール2は、熱のロスがほとんどない状態で、融雪を行うことができる。
【0026】
第2に、融雪モジュール2を屋根6の上面に設置する構成により、融雪装置1の設置コストを低減することができる。これは、融雪モジュール2の設置が、屋根6上に融雪モジュール2を載置し、雪止め7に固定するのみで完了するからである。つまり、瓦8を取り除き、再度敷設する作業が不要となる。
【0027】
第3に、融雪モジュール2が、屋根6との間に断熱効果のある空気層Asを有する構成により、融雪モジュール2で発生した熱が、瓦8を伝わることを抑制できる。これにより、融雪モジュール2で発生した熱のほとんどを、雪の融解のみに使用することが可能となる。つまり、融雪モジュール2で発生した熱が、屋根全体に逃げることを防止することができる。従って、融雪モジュール2のエネルギー効率を向上することができる。なお、融雪装置1は、瓦8のない建造物であっても、雪止め7や、アングル等を介して設置することができる。
【0028】
図3に、融雪装置1の平面図を示す。融雪装置1は、融雪モジュール2及び積雪センサ3を有している。融雪モジュール2は、内部に配置した線状のヒータ20を有している。この線状ヒータ20は、融雪モジュール2上に降り積もる雪に対して、均一な面として熱を加えられるように配置している。また、融雪モジュール2は、側部に線状ヒータ20のコネクタ部21を有している。
【0029】
このヒータ20は、自己温度制御型ヒータとすることが望ましい。自己温度制御型ヒータとは、例えばカーボン等の導電性粉末を分散して混入して成型した樹脂材料に、2つの電極線を埋め込んで線状に成型したものである。この自己温度制御型ヒータは、電極線間に電気が流れて発熱する。この温度が所定の温度以上になると、電極線間(樹脂材料及び導電性粉末)の電気抵抗が増大し、流れる電気量が減少し、温度上昇を抑制する機能を有している。
【0030】
なお、図3では融雪モジュール2の有する加熱装置(ヒータ)として、線状のヒータ20を示しているが、これは、面状に形成した面状ヒータ等を使用してもよい。面状ヒータであっても、自己温度制御型ヒータとして構成することができる。
【0031】
図4に、図3に示した融雪装置1のAA透視図を示す。融雪モジュール2は、内部に空洞を有する平板状の筐体22内に、断熱材23を配置している。この断熱材23の上部に、ヒータ(例えば線状ヒータ)20を配置している。更に、このヒータ20の上部に均熱層24を設けている。また、ヒータ20を設置した層の他の部分には、断熱材23aを配
置している。融雪モジュール2は、屋根6に設置した雪止め7に固定している。また、融雪モジュール2は、下面に支持部材9を有している。更に、融雪モジュール2は、屋根6との間に空気層Asを形成している。
【0032】
線状のヒータ20は、前述の自己温度制御型ヒータで構成している。25は、電極線を示している。断熱材23、23aは、断熱効果を有する材料であればあらゆる材料を使用することができる。例えばポリウレタンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム等を使用することが望ましい。均熱層24は、熱伝導率の高い金属板等を使用することができる。この均熱層24は、融雪モジュール2の上面の温度を場所によらず均一にするために設置している。熱が一部に集中し、その部分の雪のみが融け、空洞が形成されることを防止するためである。この均熱層24には、例えばアルミ板等を使用することができる。また、アルミ等の金属繊維を充填して均熱層24として構成することもできる。
【0033】
融雪モジュール2の大きさは、屋根等の一般的なサイズに合わせて、任意に決定することができる。例えば、1800mm×720mm程度とするとよい。これは、一般家屋の屋根サイズに合わせて、融雪装置の敷設作業を容易にするためである。また、融雪装置1を屋根に合わせて配置しやすくするためである。
【0034】
次に、融雪装置1の制御について説明する。図5に、融雪装置1の制御フローを示す。制御開始(S00)後、まず、第1タイマーをリセットする(S01)。次に、積雪センサ3で積雪高さhxを測定又は推定し、予め設定した積雪高さh1との比較を行う(S02)。この設定積雪高さh1は、例えば10〜100cm、望ましくは10〜50cm、更に望ましくは20cmとする。
【0035】
屋根6上の積雪高さhxが、設定積雪高さh1を超えた場合、第1タイマーのカウントを開始する(S03)。そして、第1タイマーの時間Txが、予め定めた時間(第1設定時間T1)を超えた場合(S04)、融雪モジュール2のヒータ20のスイッチをオンとする(S05)。この第1設定時間T1は、10〜120分、望ましくは30〜90分、更に望ましくは60分とする。
【0036】
次に、積雪センサ3で測定等を行った積雪高さhxと、設定積雪高さh1の比較を行う(S06)。積雪高さhxが、設定積雪高さh1以下となった場合、融雪モジュール2のヒータ20のスイッチをオフとする(S07)。最後に、第2タイマーをリセットし、カウントを開始する(S08)。なお、この第2タイマーは、後述するツララ防止ヒータ4の制御に利用する。
【0037】
以上を繰り返し、融雪装置1の制御を自動的に行う。ここで、第1設定時間T1は、短すぎるとヒータ20のスイッチのオンオフが頻繁となり、エネルギー効率が低下する。また、第1設定時間T1が長すぎると、積雪高さhxが高くなりすぎ、雪の滑落事故や、家屋への荷重増加を引き起こす。
【0038】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、融雪装置1上には、常に一定の厚さ(h1)以上の雪が積もった状態となるため、融雪モジュール2から大気中への放熱を、抑制することができる。これは、雪が断熱層として働くためである。これにより、融雪装置1のエネルギー効率が向上し、融雪装置1のエネルギー消費量(電力消費量)を抑制することができる。
【0039】
第2に、家屋内の熱が、屋根6を介して大気中に放射されることを抑制できる。例えば20cmの積雪高さを有する雪が、家屋全体の断熱層として作用するためである。これにより、暖房費を抑制することができる。
【0040】
第3に、積雪高さhxが設定積雪高さh1を超えて、更に一定時間(第1設定時間T1)後に、融雪装置1による融雪を開始する構成により、ヒータ20のスイッチをオンオフする回数を抑制することができる。つまり、十分な積雪があり、融雪装置1が一定時間以上作動することが確実な場合のみ、融雪装置1が作動する。ヒータ20は、雪を融かす前に、ヒータ自身、均熱層及び筐体等の加熱のために一定量のエネルギーを消費している。そのため、ヒータ20が均熱層等を加熱する回数が減ると、ヒータ20のエネルギー消費量(電力消費量)を抑制することができる。融雪モジュールの電力消費量は、従来は1mあたり300〜400W程度であったが、本発明の融雪モジュールでは、1mあたり150Wとなることが実験でわかった。つまり、本発明の融雪モジュールは、電力消費量を従来品の半分とすることができる。
【0041】
なお、第1設定時間T1の変更により、融雪を開始する際の積雪高さを変更することができる。つまり、例えば20cmの積雪高さを検出することができる積雪センサ(赤外線センサ)で、30cmの積雪高さを推定することができる。これは、単位時間当たりの積雪量から推定する。
【0042】
次に、ツララ防止ヒータ4の制御について説明する。なお、ツララ防止ヒータ4は、融雪モジュール2に使用するヒータ20と同様のものを使用することができる。図6に、ツララ防止ヒータ4の第1制御(融雪モジュールとの協働制御)の制御フローを示す。この第1制御は、融雪モジュールの動作により、雪が融け、これによりツララが発生することを防止するための制御である。つまり、ツララ防止ヒータ4が、融雪モジュール2と協働するように制御することを特徴としている。
【0043】
制御開始(S10)後、ます、外気温度Taを測定し、0℃以下であることを確認する(S11)。外気温度Taが0℃以下であることが、ツララ発生の条件の1つだからである。次に、第1タイマーの経過時間Txが、予め定めた時間(第2設定時間T2)を超えた場合(S12)、融雪装置1のツララ防止ヒータ4のスイッチをオンとする(S13)。この第2設定時間T2は、例えば40〜140分、望ましくは60〜120分、更に望ましくは90分とする。融雪装置1の動作等により発生した水の存在が、ツララ発生の条件の1つだからである。
【0044】
その後、融雪装置1のヒータ停止後からカウントしている第2タイマーの経過時間Ty(図5参照)が、予め定めた時間(第3設定時間T3)を超えた場合(S14)、ツララ防止ヒータ4のスイッチをオフとする(S16)この第3設定時間T3は、例えば70〜170分、望ましくは90〜150分、更に望ましくは120分とする。融雪装置1の動作が停止して一定時間経過した後は、ツララ発生の条件である水が発生しないためである。また、ツララ防止ヒータ4の動作中であっても、外気温度Taが0℃を超えた場合(S15)、ツララ防止ヒータ4のスイッチをオフとする(S16)。
【0045】
以上を繰り返し、ツララ防止ヒータ4の制御を、融雪装置1の制御と協働させて自動的に行う。ここで、第2設定時間T2が短すぎると、ツララが形成される前にツララ防止ヒータ4のスイッチがオンとなるため、熱は大気中に放射され、エネルギー効率が低下する。この第2設定時間T2が長すぎると、ツララが大きく成長した後にツララ防止ヒータで加熱することになるため、大きなツララ片が落下する危険性がある。
【0046】
また、第3設定時間T3が短すぎると、ツララ防止ヒータ4の停止後であっても、融雪モジュール2により融かされた雪の水が流れ、ツララを形成する可能性がる。この第3設定時間T3が長すぎると、ツララの発生条件を満たさない状態(水の不存在)で、ツララ防止ヒータ4が作動するため、エネルギー効率が低下する。
【0047】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、ツララが発生する条件となった場合のみ、ツララ防止ヒータ4のスイッチをオンとするため、ツララ防止ヒータ4のエネルギー効率が向上し、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0048】
第2に、ツララ防止ヒータ4を融雪モジュール2と共に制御しているため、ツララが発生する条件下でのみ、確実にツララ防止ヒータ4を作動することができる。そのため、ツララ防止ヒータ4のエネルギー効率を向上することができる。特に、外気温度が0℃以下であっても、水の不存在によりツララが発生しない条件下では、ツララ防止ヒータ4が動作しない制御としている。
【0049】
なお、ツララ防止ヒータ4を制御するために使用する外気温度は、積雪センサ3内に設置した温度計、又は、ツララ防止ヒータ4の上方の軒付近に設置することができる。望ましくは、雪と接触する屋根6の表面温度を計測できるように、温度計を設置する。
【0050】
図7に、ツララ防止ヒータ4の第2制御(一般制御)の制御フローを示す。この第2制御は、外気温度により雪が融け、これによりツララが発生することを防止する制御である。つまり、一定温度以上の外気温度が続き、雪が融け、その後外気温度が0℃以下となった場合に、ツララ防止ヒータ4をオンとすることを特徴としている。
【0051】
制御開始(S20)後、まず、外気温度Taを測定し、予め定めた温度(第1設定温度Ta1)以上であることを確認する(S21)。この第1設定温度Ta1は、例えば1〜3℃、望ましくは2℃とする。次に、第3タイマーをリセットした後、カウントを開始する(S22)。次に、外気温度Taが、第1設定温度Ta1以上に維持され(S23)、この状態が予め定めた時間(第4設定時間T4)以上継続されたことを確認する(S24)。この第4設定時間T4は、例えば130〜230分、望ましくは150〜210分、更に望ましくは180分とする。
【0052】
その後、外気温度Taが0℃以下となった場合(S25)、ツララ防止ヒータ4のスイッチをオンとする(S26)。次に、第4タイマーで時間を計測し、予め定めた時間(第5設定時間T5)を経過後(S27)に、ツララ防止ヒータ4をオフとする制御を行う(S28)。この第5設定時間T5は、例えば70〜170分、望ましくは90〜150分、更に望ましくは120分とする。
【0053】
以上を繰り返し、ツララ防止ヒータ4の制御を自動的に行う。ここで、第4設定時間T4が短すぎると、外気温度により雪が融け、ツララを形成する十分な水が存在しない状態で、ツララ防止ヒータ4のスイッチがオンとなる。そのため、熱エネルギーは大気中に放射され、エネルギー効率が低下する。この第4設定時間T4が長すぎると、ツララを形成する十分な水が存在しているにもかかわらず、ツララ防止ヒータ4のスイッチがオンとならない。そのため、ツララが形成されてしまう。
【0054】
また、第5設定時間T5が短すぎると、ツララ防止ヒータ4の停止後であっても、外気温度により融かされた雪の水が流れ、ツララを形成する可能性がある。この設定時間T5が長すぎると、ツララの発生条件を満たさない状態(水の不存在)で、ツララ防止ヒータ4が作動するためエネルギー効率が低下する。
【0055】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、ツララが発生する条件となった場合のみ、ツララ防止ヒータ4のスイッチをオンとするため、ツララ防止ヒータ4のエネルギー効率が向上し、エネルギー消費量を抑制することができる。なお、ツララ防止ヒータにおける第1制御及び第2制御は、同時平行で行うことができる。つまり、
第1制御(図6参照)又は第2制御(図7参照)の少なくとも一方で、ツララ防止ヒータ4をオンとする条件が揃った場合に、ツララ防止ヒータ4のスイッチをオンとする。
【0056】
図8に家屋における積雪状態を示す。図8Aに、融雪装置を設置していない場合の積雪状態を示す。図8Bに、融雪装置1を設置し、作動した場合の積雪状態を示す。本発明の融雪装置1は、従来の融雪装置と異なり、一定の積雪高さを有するように融雪を行うことを特徴としている。屋根6全体を雪10が覆うため、断熱効果を得ることができ、家屋から大気中に放出される熱を抑制することができる。これにより、家屋の暖房効果を向上することができる。家屋内における消費電力量も抑制することができる。
【0057】
なお、前述の融雪装置1は、家屋5の屋根6に限らず設置し、使用することができる。具体的には、アーケード等の屋根や、駐輪場の屋根、ビルの屋上等に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 融雪装置
2 融雪モジュール
3 積雪センサ
4 ツララ防止ヒータ
9 支持部材
20 ヒータ
22 筐体
23 断熱材
24 均熱層
As 空気層
h1 設定積雪高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の筐体内に、断熱材と、前記断熱材上に配置したヒータと、前記ヒータ上に配置した均熱層を有した融雪モジュールを有する融雪装置において、
前記融雪装置が、屋根の上面に設置した平板状の融雪モジュールと、前記融雪モジュール上に積もった雪の高さである積雪高さを検知する積雪センサと、制御装置を有しており、
前記積雪センサで、予め設定した積雪高さを超える雪を前記融雪モジュール上で検知した場合、前記ヒータをオンとし、
前記積雪センサで、前記雪が前記予め設定した積雪高さ以下となった場合、前記ヒータをオフとする制御を行うように構成したことを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
前記融雪モジュールが、下面に支持部材を有しており、前記融雪モジュールが、前記融雪モジュールと前記屋根の間に空間である空気層を形成していることを特徴とする請求項1に記載の融雪装置。
【請求項3】
前記積雪センサが、赤外線により積雪高さを測定する赤外線センサ、又は、前記融雪モジュールにかかる雪の重量から積雪高さを推定する圧力センサの少なくとも1つを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項4】
平板状の筐体内に、断熱材と、前記断熱材上に配置したヒータと、前記ヒータ上に配置した均熱層を有した融雪モジュールを有し、前記融雪装置が、屋根の上面に設置した平板状の融雪モジュールと、前記融雪モジュール上に積もった雪の高さである積雪高さを検知する積雪センサと、制御装置を有した融雪装置の制御方法であって、
前記積雪センサで、前記融雪モジュール上の雪の積雪高さを検知し、前記積雪高さと予め設定した積雪高さと比較するステップと、
前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも大きい場合に前記ヒータをオンとするステップと、
前記積雪センサで、前記融雪モジュール上の雪の積雪高さを検知し、前記積雪高さと予め設定した積雪高さと比較するステップと、
前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも小さい場合に前記ヒータをオフとするステップ
を有することを特徴とする融雪装置の制御方法。
【請求項5】
前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも大きい場合に前記ヒータをオンとするステップが、
前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも大きい場合に第1タイマーのカウントを開始するステップと、
前記第1タイマーの時間が予め設定した第1設定時間を経過した後に、前記ヒータをオンとするステップを有することを特徴とする請求項4に記載の融雪装置の制御方法。
【請求項6】
前記融雪装置がツララ防止ヒータを有しており、
前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも小さい場合に前記ヒータをオフとするステップが、
前記積雪高さが、前記予め設定した積雪高さよりも小さい場合に前記ヒータをオフとし、第2タイマーのカウントを開始するステップと、
外気温度が0℃以下であり、且つ、前記第2タイマーの時間が予め設定した第2設定時間を経過した後に、前記ツララ防止ヒータをオンとするステップを有することを特徴とする請求項4又は5に記載の融雪装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−92529(P2012−92529A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239195(P2010−239195)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(501138231)独立行政法人防災科学技術研究所 (29)
【出願人】(510284646)環境ソリューションズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】