説明

血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法

【課題】容積補償法を用いて生体組織の変形の影響を含んだ制御目標値を適用して血圧を測定すること。
【解決手段】カフ圧が所定の方法で算出された最低血圧および最高血圧と一致するときに容積検出部で検出される動脈容積信号の値がそれぞれ、最低血圧時の値および最高血圧時の値として決定され、容積検出部で検出される動脈容積信号で示される容積の、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とが検出され、立上がり点が検出されてから立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、決定された最低血圧時の値から最高血圧時の値の近傍まで所定の制御目標値が変化させられる一方、立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、決定された最高血圧時の値から最低血圧時の値の近傍まで所定の制御目標値が変化させられる(ステップST31〜ST35)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法に関し、特に、容積補償法を用いて血圧を測定する血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子血圧計は、測定部位に腕帯(カフ)を巻き、カフ内の圧力(カフ圧)を最高血圧より高く加圧し、その後徐々に減圧していく過程において、動脈で発生する脈動をカフを介して圧力センサで検出し、カフ圧とその時の脈動の大きさ(脈波振幅)を利用して最高血圧と最低血圧を決定している(オシロメトリック法)。
【0003】
それに対して、非侵襲で1心拍ごとに連続的に血圧を測定するようにした容積補償式の血圧計が開発されている(特許文献1参照)。容量補償法は、生体外からカフによって動脈を圧迫し、脈動する動脈の単位長あたりの容積を一に保つことで圧迫圧力(カフ圧)と動脈内圧すなわち血圧と平衡させ、この状態を維持したときのカフ圧を検出することにより連続血圧値を得る方式である。
【0004】
動脈内圧と動脈にかかるカフ圧を常時平衡に保つことにより、動脈壁が無負荷状態(すなわち圧力のかからない自然な状態)になる。そこで、動脈が無負荷状態にあるときの容積値(制御目標値)の検出、および、この状態を維持すること(サーボ制御)の2点が重要な課題となる。特に、制御目標値の精度は血圧測定精度に大きく影響するため、その決定は非常に重要である。
【0005】
制御目標値の決定方法として、カフにより動脈を徐々に圧迫しながら、光電容積脈波やインピーダンス脈波から得られる動脈容積変化信号(容積脈波の交流成分)の最大点を検出し、そのときの動脈容積値(容積脈波の直流成分)を制御目標値とする方法が発明されている(特許文献2参照)。特許文献2の容積補償法による電子血圧計では、制御カフ圧の全範囲を通じて固定の制御目標値を使用している。
【0006】
しかしながら、実際には動脈を圧迫する過程において動脈周辺の生体組織が変形する影響を受けて、動脈容積の変化よりも容積脈波の直流成分値が大きく変化する。そのため、生体組織の変形が小さい指部でしか測定ができず、また実際の血圧値より最高血圧と最低血圧の差(脈圧)が小さく測定されるという問題点がある。
【0007】
この問題点に関して、生体組織の変形の影響を含んだ制御目標値を決定する方法が発明されている(特許文献3参照)。この発明においては、動脈を徐々に圧迫していく過程において、オシロメトリック法によって最低血圧、最高血圧を算出し、これら2点における動脈容積値を検出する。この2点が最低血圧、最高血圧における制御目標値である。この2点を任意の曲線で補間することにより、1心拍内の任意の点における、生体組織の変形の影響を含んだ制御目標値を決定できる。このようにして決定した制御目標値を使用することで、固定された制御目標値を使用した場合に発生する測定誤差を取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭59−5296号公報
【特許文献2】特公平1−31370号公報
【特許文献3】特許第3211130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の発明においては、生体組織の変形の影響を含んだ制御目標値を決定する方法は示されているものの、この制御目標値を実際に使用する方法は示されていない。このため、実際の容積補償式血圧計において生体組織の変形の影響を含んだ制御目標値を適用することができないといった問題があった。
【0010】
この発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その目的の1つは、容積補償法を用いて生体組織の変形の影響を含んだ制御目標値を適用して血圧を測定することが可能な血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、この発明のある局面によれば、血圧測定装置は、容積補償法に従い血圧を測定するための装置であって、血圧の測定部位に装着された場合に前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、前記制御部は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が所定の制御目標値と一致するように、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整する圧力制御手段と、前記圧力制御手段による調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出する抽出手段とを含む。
【0012】
前記制御部は、さらに、カフ圧が所定の方法で算出された最低血圧および最高血圧と一致するときに前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号の値をそれぞれ、最低血圧時の値および最高血圧時の値として決定する決定手段と、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出する変化点検出手段と、前記変化点検出手段によって前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、前記決定手段によって決定された前記最低血圧時の値から前記最高血圧時の値の近傍まで前記所定の制御目標値を変化させる一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、前記決定手段によって決定された前記最高血圧時の値から前記最低血圧時の値の近傍まで前記所定の制御目標値を変化させる変化手段とを含む。
【0013】
好ましくは、前記変化手段は、前記立上がり時は、前記決定手段によって決定された前記最低血圧時の値から前記最高血圧時の値にステップ変化する波形を低域通過フィルタに入力したときに出力される値に従って前記所定の制御目標値を変化させる一方、前記立下がり時は、前記最高血圧時の値から前記最低血圧時の値にステップ変化する波形を低域通過フィルタに入力したときに出力される値に従って前記所定の制御目標値を変化させる。
【0014】
さらに好ましくは、前記低域通過フィルタの時定数は、前記立上がり時よりも前記立上がり時の方を長くする。
【0015】
この発明の他の局面によれば、血圧測定装置を制御する制御方法は、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置の制御方法である。血圧測定装置は、血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有する。
【0016】
血圧測定装置の制御方法は、前記制御部が、カフ圧が所定の方法で算出された最低血圧および最高血圧と一致するときに前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号の値をそれぞれ、最低血圧時の値および最高血圧時の値として決定するステップと、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出するステップと、前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、決定された前記最低血圧時の値から前記最高血圧時の値の近傍まで所定の制御目標値を変化させる一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、決定された前記最高血圧時の値から前記最低血圧時の値の近傍まで前記所定の制御目標値を変化させるステップと、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が前記所定の制御目標値と一致するように、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整するステップと、前記カフの圧力の調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0017】
この発明に従えば、血圧測定装置によって、カフ圧が所定の方法で算出された最低血圧および最高血圧と一致するときに容積検出部で検出される動脈容積信号の値がそれぞれ、最低血圧時の値および最高血圧時の値として決定され、容積検出部で検出される動脈容積信号で示される容積の、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とが検出され、立上がり点が検出されてから立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、決定された最低血圧時の値から最高血圧時の値の近傍まで所定の制御目標値が変化させられる一方、立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、決定された最高血圧時の値から最低血圧時の値の近傍まで所定の制御目標値が変化させられる。
【0018】
このため、血圧測定装置によって、制御目標値が各タイミングにおける血圧値に近い値に応じたものに変化させながら、被測定者の血圧を得ることができる。その結果、容積補償法を用いて生体組織の変形の影響を含んだ制御目標値を適用して血圧を測定することが可能な血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子血圧計の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子血圧計における血圧測定のためのカフ圧を制御する概念を表わした図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子血圧計のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図4】動脈の力学特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態において制御目標値を決定する方法を説明するためのグラフである。
【図8】本発明の実施の形態における制御目標値切替処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態における制御目標値を切替える方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
本実施の形態に係る電子血圧計1は、容積補償法により連続的に血圧を測定する。電子血圧計1は、生体外からカフにより動脈に外圧を加え、生体外圧すなわちカフ圧と動脈内圧すなわち血圧とが常時平衡するように、決定した最適なサーボゲインを用いてサーボ制御する。つまり、電子血圧計1は、動脈壁が無負荷状態に維持されるようにカフ圧を微調整し、そのとき(無負荷状態)のカフ圧を測定することにより連続的に血圧を測定する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1の外観斜視図である。図1を参照して、電子血圧計1は、本体部10と、被測定者の四肢に巻き付け可能なカフ20とを備える。本体部10はカフ20に取り付けられている。本体部10の表面には、たとえば液晶等により構成される表示部40と、ユーザ(被測定者)からの指示を受付けるための操作部41とが配置されている。操作部41は、複数のスイッチを含む。
【0023】
本実施の形態において、「四肢」とは、上肢および下肢を表わす。つまり、四肢は、手首から腕の付け根までの部位と、足首から足の付け根までの部位とを含む。以下の説明においては、カフ20は、被測定者の手首に装着されるものとする。
【0024】
なお、本実施の形態における電子血圧計1は、図1に示されるように、本体部10がカフ20に取り付けられた形態を例に説明するが、上腕式の血圧計で採用されているような、本体部10とカフ20とがエアチューブ(後述の図3においてエアチューブ31)によって接続される形態のものであってもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1における血圧測定のためのカフ圧を制御する概念を表わした図である。図2には、カフ20が、被測定者の手首200に装着された様子が示される。
【0026】
図2を参照して、本体部10には、ポンプ51および排気弁(以下、単に「弁」という)52を含むカフ圧の調整機構が配置される。
【0027】
ポンプ51、弁52、および、空気袋21内の圧力(カフ圧)を検出するための圧力センサ32を含むエア系30は、エアチューブ31を介して、カフ20に内包される空気袋21と接続される。
【0028】
空気袋21の内側には発光素子71と受光素子72とが所定の間隔に配置される。本実施の形態では、カフ20の装着状態における手首200の周に沿って発光素子71と受光素子72とが並べられるが、このような配置例に限定されるものではない。
【0029】
また、カフ20には空気袋21が含まれることとしたが、カフ20に供給される流体は空気に限定されるものではなく、たとえば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0030】
図3は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1のハードウェア構成を表わすブロック図である。図3を参照して、電子血圧計1のカフ20は、空気袋21と、動脈容積センサ70とを含む。
【0031】
動脈容積センサ70は、被測定者の血圧測定部位の動脈の容積を検出するためのセンサであり、上述した発光素子71(たとえば、発光ダイオード)と、受光素子72(たとえば、フォトトランジスタ)とを有する光電センサによって構成される。発光素子71は、動脈に対して光を照射し、受光素子72は、発光素子71によって照射された光の動脈の透過光または反射光を受光する。
【0032】
なお、動脈容積センサ70は、動脈の容積が検出できるものであればよく、インピーダンスセンサ(インピーダンスプレスチモグラフ)により動脈の容積を検出するものであってもよい。その場合、発光素子71および受光素子72に代えて、動脈を含む部位のインピーダンスを検出するための複数の電極(電流印加用の電極対、および、電圧検知用の電極対)が含まれる。
【0033】
本体部10は、上述の表示部40および操作部41に加え、各部を集中的に制御し、各種の演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU10
0に所定の動作をさせるプログラムや各種データを記憶するためのメモリ部42と、測定された血圧データを記憶するための不揮発性メモリ、たとえば、フラッシュメモリ43と、CPU100を介し各部に電力を供給するための電源44、および現在時間を計時して計時データをCPU100に出力するタイマ45とを含む。
【0034】
操作部41は、電源をONまたはOFFするための指示の入力を受付ける電源スイッチ41Aと、測定開始の指示を受付けるための測定スイッチ41Bと、測定停止の指示を受付けるための停止スイッチ41Cと、フラッシュメモリ43に記録された血圧などの情報を読出す指示を受付けるためのメモリスイッチ41Dと、被測定者を識別するためのID(Identification)情報を入力するために操作されるIDスイッチ41Eを有する。
【0035】
本体部10は、さらに、上述したエア系30と、カフ圧の調整機構50と、発振回路33と、発光素子駆動回路73と、動脈容積検出回路74とを含む。
【0036】
調整機構50は、ポンプ51および弁52の他、ポンプ駆動回路53と弁駆動回路54とを有する。
【0037】
ポンプ51は、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給する。弁52は、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される。ポンプ駆動回路53は、ポンプ51の駆動をCPU100から与えられる制御信号に基づいて制御する。弁駆動回路54は弁52の開閉制御をCPU100から与えられる制御信号に基づいて行なう。
【0038】
発光素子駆動回路73は、CPU100からの指令信号に応じて、発光素子71の発光量を制御する。
【0039】
動脈容積検出回路74は、発光素子71の発する光であって、血管を流れる血液(赤血球)に含まれるヘモグロビンの吸収帯の光の、受光素子72に到達する透過光量または反射光量に基づく容積脈波信号(動脈容積信号PGdc)、および、容積脈波信号をHPF(High-pass filter)回路で処理することにより得られる容積脈波信号の交流成分の動脈容積変化信号PGacを、CPU100に出力する。たとえば、HPF回路のフィルタ定数を0.6Hzとして、0.6Hzを超える信号は交流成分とする。
【0040】
圧力センサ32は、静電容量型の圧力センサでありカフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU100に出力する。CPU100は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換し圧力を検知する。
【0041】
図4は、動脈の力学特性を示すグラフである。図4のグラフは、横軸に動脈内外圧差Ptr、縦軸に動脈容積Vをとり、動脈内外圧差Ptrと動脈容積Vとの関係を示している。動脈内外圧差Ptrは、動脈内圧Paと、生体の外部からカフによって印可されるカフ圧(生体外圧)Pcとの差を示す。
【0042】
このグラフに示されるように、動脈の力学特性は、一般的に強い非線形性を示している。動脈内外圧差Ptrが0(平衡状態)のとき、すなわち、動脈壁が無負荷状態のとき、動脈のコンプライアンス(脈動による容積の変化量)が最大となる。つまり、圧力変化に対する容積変化の追従性(進展性)が最大となる。
【0043】
一般的な容積補償法では、検出される動脈容積が常時、動脈内外圧差Ptrが0となる時点の容積値V0になるように、生体外圧(カフ圧)を逐次制御することで血圧を測定する。そのために、血圧測定の前に、内外圧差Ptrが0となる時点の容積値、すなわち、制御目標値V0を決定する必要がある。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。図5を参照して、まず、CPU100は、電源スイッチ41Aが押下される操作の入力を待つ(ステップST1)。
【0045】
電源スイッチ41Aが押下されると、CPU100は、初期化処理を行なう(ステップST2)。具体的には、CPU100は、初期化処理として、メモリ部42のこの処理に用いられるメモリ領域を初期化し、空気袋21の空気を排気し、圧力センサ32の0mmHg補正を行なう。
【0046】
次に、CPU100は、測定スイッチ41Bが押下される操作の入力を待つ(ステップST3)。測定スイッチ41Bが押下されると、CPU100は、制御目標値検出処理を実行する(ステップST4)。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。図6を参照して、まず、CPU100は、メモリ部42に記憶される、動脈容積変化信号の最大値PGacmax’およびカフ圧値Pc0’を初期化する(ステップST11)。なお、以下の処理において動脈容積変化信号の最大値PGacmax’およびカフ圧値Pc0’は、随時更新されるものであるので、最終的に確定するまでの値は仮の値である。
【0048】
次に、CPU100は、ポンプ駆動回路53を駆動制御して、カフ圧を加圧する(ステップST12)。カフ圧を加圧する段階において、CPU100は、動脈容積検出回路74からの信号(動脈容積信号PGdc,動脈容積変化信号PGac)を検出する(ステップST13)。
【0049】
図7は、本発明の実施の形態において制御目標値を決定する方法を説明するためのグラフである。図7を参照して、3段目のグラフのうち上下に細かく振動しながら押圧力(カフ圧)の増加に応じて増加しているグラフは、動脈容積信号PGdcを示す。また、2段目のグラフは、動脈容積変化信号PGacを示す。
【0050】
図6に戻って、また、1心拍周期ごとに動脈容積信号PGdcの振幅の最大点を検出し、それらの最大点を任意の曲線(ここでは直線)により補間する。この曲線は、1心拍ごとの最低血圧の時点での動脈容積信号の値を結んだものである。この曲線をPGdc_DIAとする。また、1心拍周期ごとに動脈容積信号PGdcの振幅の最小点を検出し、それらの最小点を任意の曲線(ここでは直線)により補間する。この曲線は、1心拍ごとの最高血圧時点の動脈容積値を結んだものである。この曲線をPGdc_SYSとする。このように、CPU100は、曲線PGdc_DIA,PGdc_SYSを算出する(ステップST14)。
【0051】
図7を再度参照して、3段目のグラフのうち動脈容積信号PGdcのグラフの、上のグラフが曲線PGdc_DIAを示し、下のグラフが曲線PGdc_SYSを示す。
【0052】
なお、ここでは、直線補間した曲線PGdc_DIA,PGdc_SYSを算出するようにしたが、これに限定されず、スプライン曲線で補間した曲線PGdc_DIA,PGdc_SYSを算出するようにしてもよい。
【0053】
図6に戻って、CPU100は、ステップST13で検出された動脈容積変化信号PGacの1心拍周期の振幅が、カフ圧の加圧を開始してからこれまでの動脈容積変化信号PGacの振幅の最大値PGacmax’より大きいか否かを判断する(ステップST15)。大きいと判断した場合、CPU100は、そのときの振幅の値で最大値PGacmax’を更新し、そのときのカフ圧Pc0’も更新する(ステップST16)。
【0054】
図7を再度参照して、1段目のグラフは、動脈容積変化信号PGacの振幅の値を繋いだ線、つまり、包絡線を示す。動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’が定まると、CPU100は、その最大値PGacmax’に、所定の定数(たとえば0.7および0.5)を乗じて、2つの閾値TH_DIAおよびTH_SYSを算出する。
【0055】
そして、CPU100は、最大値PGacmax’が検出された時点のカフ圧MEANよりもカフ圧が低い側において、閾値TH_DIAと包絡線とが交わった点におけるカフ圧を最低血圧(Dia,Diastolic blood pressure、拡張期血圧)として推定する。
【0056】
また、CPU100は、カフ圧MEANよりもカフ圧が高い側において、閾値TH_SYSと包絡線とが交わった点におけるカフ圧を最高血圧(Sys,Systolic blood pressure、収縮期血圧)として推定する。このようにして、最高血圧および最低血圧を決定する方法を、容積振動法という。
【0057】
図6に戻って、CPU100は、容積振動法によって最低血圧を決定したか否かを判断する(ステップST17)。最低血圧を決定したと判断した場合、CPU100は、ステップST14で算出した曲線PGdc_DIAの最低血圧時の値を最低血圧時動脈容積値V0_DIAと決定する(ステップST18)。
【0058】
また、CPU100は、容積振動法によって最高血圧を決定したか否かを判断する(ステップST19)。最高血圧を決定したと判断した場合、CPU100は、ステップST14で算出した曲線PGdc_SYSの最高血圧時の値を最高血圧時動脈容積値V0_SYSと決定する(ステップST20)。
【0059】
図7を再度参照して、最低血圧を示す線と曲線PGdc_DIAとが交差する点における動脈容積信号PGdcの値が、最低血圧時動脈容積値V0_DIAである。また、最高血圧を示す線と曲線PGdc_SYSとが交差する点における動脈容積信号PGdcの値が、最高血圧時動脈容積値V0_SYSである。
【0060】
図6に戻って、CPU100は、カフ圧が所定圧に達したか否かを判断する(ステップST21)。所定圧は、被測定者の最高血圧より十分に高い圧力であって、たとえば、200mmHgである。所定圧に達していないと判断した場合、CPU100は、ステップST12に処理を戻し、ステップST20までの処理を繰返す。
【0061】
カフ圧が所定圧に達したと判断した場合、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を確定し、最大値PGacmax’となったときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値を制御目標値の初期値V0として算出し、そのときのカフ圧Pc0’を制御初期カフ圧Pc0として確定する(ステップST22)。その後、CPU100は、実行する処理をこの処理の呼出元の処理に戻す。
【0062】
図5に戻って、CPU100は、カフ圧を図6のステップST22で確定された制御初期カフ圧Pc0に設定する(ステップST5)。次に、CPU100は、制御目標値切替処理を実行する(ステップST6)。なお、初回の制御目標値切替処理においては、図6のステップST22で決定された制御目標値の初期値V0が制御目標値として設定される。
【0063】
図8は、本発明の実施の形態における制御目標値切替処理の流れを示すフローチャートである。図8を参照して、まず、CPU100は、動脈容積信号PGdcの立上がり点を検出したか否かを判断する(ステップST31)。
【0064】
図9は、本発明の実施の形態における制御目標値を切替える方法を説明するためのグラフである。図9を参照して、CPU100は、1段目のグラフで示される動脈容積信号PGdcから、2段目のグラフで示される微分波形を算出する。そして、CPU100は、2段目のグラフで示される微分波形の1心拍周期の最大点(極大点)を検出したときに、動脈容積信号PGdcの立上がり点を検出したと判断する。立上がり点は、動脈容積信号PGdcの1心拍周期の最小点(極小点)である。
【0065】
図8に戻って、動脈容積信号PGdcの立上がり点を検出したと判断した場合、CPU100は、初期値を図6のステップST20で決定された最高血圧時動脈容積値V0_SYSに設定する(ステップST32)。
【0066】
次に、CPU100は、動脈容積信号PGdcの立下がり点を検出したか否かを判断する(ステップST33)。
【0067】
図9を再度参照して、CPU100は、2段目のグラフで示される微分波形の1心拍周期うち値がプラスからマイナスに変化する点、つまり0になる点(ゼロクロス点)を検出したときに、動脈容積信号PGdcの立下がり点を検出したと判断する。立下がり点は、動脈容積信号PGdcの1心拍周期の最大点である。
【0068】
図8に戻って、動脈容積信号PGdcの立下がり点を検出したと判断した場合、CPU100は、初期値を図6のステップST18で決定された最低血圧時動脈容積値V0_DIAに設定する(ステップST34)。
【0069】
次に、CPU100は、ステップST32またはステップST34での初期値の設定から現時点まで経過したときの低域通過フィルタ(LPF、Low-pass filter)の出力値を、制御目標値として算出する(ステップST35)。その後、CPU100は、実行する処理をこの処理の呼出元の処理に戻す。
【0070】
具体的には、動脈容積信号の立上がり点から立下がり点までの立下がり時は、CPU100は、最高血圧時動脈容積値V0_SYSを所定の低域通過フィルタに入力した場合の、立上がり点から時間t経過したステップST35の実行時点での所定の低域通過フィルタからの出力値を、制御目標値として算出する。動脈容積信号の立下がり点から次の立上がり点までの立上がり時は、CPU100は、最低血圧時動脈容積値V0_DIAを所定の低域通過フィルタに入力した場合の、立下がり点から時間t経過したステップST35の実行時点での所定の低域通過フィルタからの出力値を、制御目標値として算出する。
【0071】
図9を再度参照して、1段目のグラフで示される動脈容積信号の立下がり時は、3段目のグラフで示されるように、所定の低域通過フィルタに、入力値として、最低血圧時動脈容積値V0_DIAが入力される。これにより、4段目のグラフで示されるような、最高血圧時動脈容積値V0_SYSから最低血圧時動脈容積値V0_DIA近傍まで滑らかに変化する出力値が、所定の低域通過フィルタから出力される。
【0072】
また、1段目のグラフで示される動脈容積信号の立上がり時は、3段目のグラフで示されるように、所定の低域通過フィルタに、入力値として、最高血圧時動脈容積値V0_SYSが入力される。これにより、4段目のグラフで示されるような、最低血圧時動脈容積値V0_DIAから最高血圧時動脈容積値V0_SYS近傍まで滑らかに変化する出力値が、所定の低域通過フィルタから出力される。
【0073】
そして、立上がり点または立下がり点からステップST35の実行時点までの経過時間tでの所定の低域通過フィルタの出力値が、制御目標値として算出される。
【0074】
なお、所定の低域通過フィルタのカットオフ周波数または時定数は、それぞれ、たとえば、立上がり時は、5Hzまたは0.03秒、立下がり時は、1Hzまたは0.16秒程度とすればよい。ここで、血圧の変動においては、立上がり時よりも立下がり時の方が時間が長いので、制御目標値を算出するための所定の低域通過フィルタの時定数も、動脈容積信号PGdcの立上がり時よりも立下がり時の方を長くする。
【0075】
図5に戻って、CPU100は、動脈容積一定制御として、動脈容積信号PGdcの値が制御目標値と一致するように、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御してカフ圧Pcを変更させる(ステップST7)。
【0076】
動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったか否かを判断する(ステップST8)。所定の閾値以下となった場合、動脈容積一定制御が収束したということであるので、CPU100は、そのときのカフ圧Pcを、被測定者の血圧として決定して、決定した血圧値を表示部40に表示させる(ステップST9)。決定した血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。
【0077】
そして、CPU100は、停止スイッチ41Cが操作されることによって停止信号が入力された(オン状態となった)か否かを判断する。停止信号が入力されていない(オフ状態である)と判断した場合、CPU100は、実行する処理をステップST6の処理に戻す。一方、停止信号が入力された(オン状態となった)と判断した場合、CPU100は、この血圧測定処理を終了し、電子血圧計1の電源をオフ状態にする。
【0078】
従来のような容積補償法を用いた血圧測定のように固定の制御目標値V0を用いる場合、図7を参照して、動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値が制御目標値V0として求められる。
【0079】
そして、この固定の制御目標値V0を用いた場合、最低血圧の値は、動脈容器信号PGdcの値がV0の線と曲線PGdc_DIAとの交点の値Aとして算出され、最高血圧の値は、動脈容積信号PGdcの値がV0の線と曲線PGdc_SYSとの交点の値Bとして算出される。
【0080】
このため、固定の制御目標値V0を用いた場合は、真の血圧値との誤差が生じてしまう。
このように、動脈を圧迫する過程において動脈の力学的ヒステリシスおよび動脈周辺の生体組織の変形の影響を受けて、実際の動脈容積の変化よりも動脈容積信号PGdcの値が大きく変化してしまう。
【0081】
本実施の形態のように、最低血圧時動脈容積値V0_DIAおよび最高血圧時動脈容積値V0_SYSを切替えて動脈容積一定制御を行なった場合、被測定者の最低血圧として得られる値および最高血圧として得られる値が、真の血圧値に近い値となるので、最低血圧および最高血圧近辺での誤差を少なくすることができる。
【0082】
さらに、最低血圧時動脈容積値V0_DIAおよび最高血圧時動脈容積値V0_SYSとを滑らかに補間した制御目標値を用いているため、1心拍内のすべての時点における制御目標値を擬似的に再現することができるので、最低血圧および最高血圧近辺だけでなく、連続血圧を誤差を少なく算出することができる。
【0083】
次に、上述した実施の形態の変形例について説明する。
(1) 前述した実施の形態においては、所定の低域通過フィルタへの入力値が、動脈容積信号の立上がり点から立下がり点までは最高血圧時動脈容積値V0_SYSであり、動脈容積信号の立下がり点から次の立上がり点までは最低血圧時動脈容積値V0_DIAであるパルス信号であることとした。
【0084】
しかし、これに限定されず、立上がり点から立下がり点までの間に、最低血圧時動脈容積値V0_DIAから最高血圧時動脈容積値V0_SYS近傍まで滑らかに変化し、立下がり点から次の立上がり点までの間に、最高血圧時動脈容積値V0_SYSから最低血圧時動脈容積値V0_DIA近傍まで滑らかに変化するような所定の低域通過フィルタからの出力値が得られる入力値であれば、他の入力値であってもよい。
【0085】
(2) 前述した実施の形態においては、低域通過フィルタのカットオフ周波数および時定数が、動脈容積信号PGdcの立上がり時と立下がり時とでそれぞれ固定であることとした。
【0086】
しかし、これに限定されず、電子血圧計1の起動時に、被測定者の心拍周期の概略を仮に測定して、その心拍周期の立上がりに要する時間および立下がりに要する時間から、それぞれ、立上がり時および立下がり時のカットオフ周波数または時定数を算出して、算出されたカットオフ周波数または時定数を用いるようにしてもよい。
【0087】
これにより、被測定者ごとの心拍周期に応じて制御目標値を変化させることができるので、被測定者に応じて、より正確な血圧測定を行なうことができる。
【0088】
(3) 前述した実施の形態においては、低域通過フィルタのカットオフ周波数および時定数が、動脈容積信号PGdcの立上がり時と立下がり時とでそれぞれ固定であることとした。心拍周期は、変化するが、急激な変化は発生しない。このため、カットオフ周波数および時定数が固定であったとしても、血圧測定において大きな誤差は発生しない。
【0089】
しかし、これに限定されず、立上がり時と立下がり時とのカットオフ周波数または時定数を、1心拍周期ごと、または、複数心拍周期ごとに、切替えるようにしてもよい。
【0090】
たとえば、1心拍周期前、または、複数心拍周期前の心拍周期における立上がりに要する時間と立下がりに要する時間に応じて、立上がり時と立下がり時とのカットオフ周波数または時定数を算出して、算出されたカットオフ周波数または時定数を、その心拍周期、または、その心拍周期から複数回の心拍周期の間に用いるようにしてもよい。
【0091】
これにより、連続血圧測定中に、心拍周期に何らかの変化があった場合であっても、心拍周期に応じて制御目標値を変化させることができるので、心拍周期の変化に応じて、より正確な連続血圧測定を行なうことができる。
【0092】
(4) 前述した実施の形態においては、立上がり点と立下がり点における制御目標値の切替えがスムーズになるために、最低血圧時動脈容積値V0_DIAと最高血圧時動脈容積値V0_SYSとの間を滑らかに補間する所定の低域通過フィルタの出力値を、制御目標値として用いるようにした。しかし、これに限定されず、最低血圧時動脈容積値V0_DIAと最高血圧時動脈容積値V0_SYSとの間を滑らかに補間するものであれば、他の方法であってもよく、正弦波のような、低域通過フィルタの出力曲線とは異なる曲線で補間するものであってもよいし、三角波、のこぎり波のように直線的に補間するものであってもよい。
【0093】
(5) 今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 電子血圧計、10 本体部、20 カフ、21 空気袋、30 エア系、31 エアチューブ、32 圧力センサ、33 発振回路、40 表示部、41 操作部、41A
電源スイッチ、41B 測定スイッチ、41C 停止スイッチ、41D メモリスイッチ、41E IDスイッチ、42 メモリ部、43 フラッシュメモリ、44 電源、45 タイマ、50 調整機構、51 ポンプ、52 弁、53 ポンプ駆動回路、54 弁駆動回路、70 動脈容積センサ、71 発光素子、72 受光素子、73 発光素子駆動回路、74 動脈容積検出回路、100 CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧の測定部位に装着された場合に前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、前記制御部は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が所定の制御目標値と一致するように、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整する圧力制御手段と、前記圧力制御手段による調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出する抽出手段とを含む、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置であって、
前記制御部は、さらに、
前記カフ圧が所定の方法で算出された最低血圧および最高血圧と一致するときに前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号の値をそれぞれ、最低血圧時の値および最高血圧時の値として決定する決定手段と、
前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出する変化点検出手段と、
前記変化点検出手段によって前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、前記決定手段によって決定された前記最低血圧時の値から前記最高血圧時の値の近傍まで前記所定の制御目標値を変化させる一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、前記決定手段によって決定された前記最高血圧時の値から前記最低血圧時の値の近傍まで前記所定の制御目標値を変化させる変化手段とを含む、血圧測定装置。
【請求項2】
前記変化手段は、前記立上がり時は、前記決定手段によって決定された前記最低血圧時の値から前記最高血圧時の値にステップ変化する波形を低域通過フィルタに入力したときに出力される値に従って前記所定の制御目標値を変化させる一方、前記立下がり時は、前記最高血圧時の値から前記最低血圧時の値にステップ変化する波形を低域通過フィルタに入力したときに出力される値に従って前記所定の制御目標値を変化させる、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記低域通過フィルタの時定数は、前記立上がり時よりも前記立下がり時の方を長くする、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
血圧の測定部位に装着された場合に前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置を制御する制御方法であって、
前記制御部が、
前記カフ圧が所定の方法で算出された最低血圧および最高血圧と一致するときに前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号の値をそれぞれ、最低血圧時の値および最高血圧時の値として決定するステップと、
前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出するステップと、
前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、決定された前記最低血圧時の値から前記最高血圧時の値の近傍まで所定の制御目標値を変化させる一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、決定された前記最高血圧時の値から前記最低血圧時の値の近傍まで前記所定の制御目標値を変化させるステップと、
前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が前記所定の制御目標値と一致するように、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整するステップと、
前記カフの圧力の調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出するステップとを含む、血圧測定装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−206320(P2011−206320A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77939(P2010−77939)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】