説明

血小板多血漿の調製方法

本発明の課題は、活性の高い血小板多血漿を容易にかつ安価に提供することである。
採血して得られた全血に、水溶性高分子を添加する工程を含む血小板多血漿の調製方法による。例えば、ポリ−L−グルタミン酸等のポリアミン、ヒアルロン酸等の酸性多糖類、ビニルポリマを全血に添加し、一定時間静置させることで、赤血球を選択促進的に凝集沈降させ、上清には血小板の他、フィブリノゲンを多く含む血漿成分や白血球を含む活性の高い血小板多血漿を得ることができる。本発明は、該血小板多血漿およびその組織および/または器官修復促進剤等の使用、ならびに、血小板多血漿調製用キットにもおよぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本出願は、参照によりここに援用されるところの、日本特許出願番号2002−226277からの優先権を請求する。
[技術分野]
本発明は、医療の分野で使用される血小板多血漿(platelet−rich plasma)およびその調製方法に関する。
【背景技術】
現在、失われた組織の再生の分野において、医学、工学はますます進歩を遂げている。
しかし、近年、医療用として使われている血液製剤や、動物(特に牛)から作製された生理的活性物質を使用することで、それらに混入するウイルス、プリオン等による感染により、安全を脅かされる事件が多数おこっており、社会的問題となっている。このようなことから、医療すべてに対する安全性について、非常に関心が高まっている。
また、日常の臨床応用の場においては、安全というだけでなく、その操作が確実、簡便なこともまた、重要なことである。
こういった背景から、以前から術後の止血、創傷治癒促進剤として効果が認められてきたフィブリン製剤から発展させ、自己の血液成分を用いて、創傷治癒を早めるという治療方法が脚光を浴びるようになってきた。例えば、活性化された血小板は、創傷治癒早期において、細胞の遊走、分化を誘導する物質を分泌するため、手術の前に、自己の血液より血小板を濃縮した血漿(血小板多血漿:platelet−rich plasma、以下「PRP」という場合もある。)を作っておき、術部に血小板を活性化させたPRPを塗布して、治癒の促進を図ろうというものである。多数の臨床家によって、この方法による創傷治癒の促進が図られたという報告がなされるようになった(R.E.Marxら、Oral Surgery Oral Medicen Oral Pathology,Vol.85,638−646,1998,A.K.Gargら、The Nippon Dental Review,62巻,No.10,131−143,2002)。自己の血液を使うことは、非常に安全な方法の上に、確実な成績が得られる。
しかしながら、自己の血液を使うことは、その操作法の複雑さ、危険性、手間、熟練した人手を必要とすること、高価な器具の購入、保守経費の増大等の問題点がある。
臨床検査に使用する血小板多血漿は、前腕正中静脈より採血し、3.1w/v%クエン酸ナトリウムを1.5mL含むプラスチックチューブに全血を4.5mLずつ加え、転倒混和したものを50g15分間22℃で遠心した上清により得られる(臨床検査法提要第31版第400頁)。組織治癒の促進をめざしたPRPの採取も、採血量や遠心分離条件に違いはあるものの基本的に本法に準じて取得される。血小板はきわめて反応性に富んでおり、分離の過程で凝集反応や放出反応をおこし、その機能を消失しやすい。このため、分離作業では熟練者が特に注意を払いながら調製する必要がある。また、他の血球成分に比べ、血小板は時間の経過による機能低下が著しいため、採血後できるだけ早い時間に分離する必要があることも、取り扱い性を著しく低下させる原因のひとつであった。
近年、組織治癒の促進に使用するPRPを、簡便に取得するためのキットが販売されている。しかしながら、従来のPRPの取得方法は、基本的に遠心分離技術を用いたものであり(細川隆司ら、Dental Outlook,100巻、No.6、1230−1243,2002)、上記の操作の煩雑さの改善は十分ではなかった。実際、操作の煩雑さについては本発明者らのみの実感ではなく、細川らも上記論文の1239ページの図12の説明文に於いて「操作は多少煩雑である」と明記している。さらに、こうした遠心分離法によって取得したPRPでは、赤血球の分離は十分であるものの、全血中に含まれる白血球も分離されるために調製されたPRP中には白血球はほとんど含まれず、フィブリノゲン等の重要な血漿成分の一部も遠心分離されてしまうことがあった。
術後の止血、創傷治癒促進剤として使用する血小板多血漿に求められる特性としては、組織治癒の遅延をもたらす赤血球が少ないこと、血小板が多く含まれていること、血小板の活性が高く保たれていること、血小板に加えて白血球やフィブリノゲンなどの血液成分を多く含むことがあげられ、このような活性の高い血小板多血漿を簡便に取得する方法の開発が望まれていた。
【発明の開示】
本発明の課題は、活性の高い血小板多血漿を簡便に取得しこれを提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、水溶性高分子化合物またはその薬理学的に許容できる塩を全血などの赤血球を含む血漿に添加すると、血小板多血漿が迅速かつ簡便に分離できるばかりか、このようにして得られた血小板多血漿が、従来方法で得たものに比べ、きわめて高い組織治癒活性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
1.血液から、赤血球を選択促進的に凝集沈降させる工程を含むことを特徴とする血小板多血漿の調製方法、
2.血液が、採血して得られた全血である前項1に記載の血小板多血漿の調製方法、
3.赤血球を選択促進的に凝集沈降させる方法が、血液に水溶性高分子化合物を添加する工程を含む前項1または2に記載の調製方法、
4.血液に水溶性高分子化合物を添加する工程を含むことを特徴とする血小板多血漿の調製方法、
5.前記水溶性高分子化合物が分子量1000〜500万の高分子化合物である前項3または4に記載の調製方法、
6.前記水溶性高分子化合物を、血液量に対して0.0001〜10w/v%添加する前項3または4に記載の調製方法、
7.前記水溶性高分子化合物が、以下に示す化合物から選択される少なくとも前項3または4に記載の調製方法:
1)アミノ酸および/またはアミノ酸の薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸
2)酸性多糖類および/またはその薬理学的に許容される塩
3)ビニルポリマ
8.前記ポリアミノ酸が、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジンまたはポリアスパラギンから選択される少なくとも1種である前項7に記載の調製方法、
9.前記ポリアミノ酸を構成するアミノ酸もしくはアミノ酸の薬理学的に許容される塩が、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジンおよびアスパラギンから選択される少なくとも1種以上またはそれらの薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸である前項7に記載の調製方法、
10.前記ポリアミノ酸を構成するアミノ酸のうち、少なくとも20%以上がグルタミン酸および/もしくはアスパラギン酸またはそれらの薬理学的に許容される塩である前項9に記載の調製方法、
11.前記ポリアミノ酸が、酸性ポリアミノ酸である前項9または10に記載の調製方法、
12.前記酸性多糖類および/またはその薬理学的に許容される塩が、デキストラン誘導体、グリコサミノグリカン、セルロース誘導体、キトサン誘導体、ガラクツロン酸およびアルギン酸から選択される少なくとも1種またはその薬理学的に許容される塩である前項7に記載の調製方法、
13.前記酸性多糖類および/またはその薬理学的に許容される塩が、ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容される塩である前項7に記載の調製方法、
14.前記ビニルポリマが、酸性ポリマまたはその薬理学的に許容される塩を含む化合物から選択される少なくとも1種である前項7に記載の調製方法、
15.前項1〜14に記載の何れかの方法で調製された血小板多血漿、
16.前項15に記載の血小板多血漿を含む組織および/または器官修復促進剤、
17.前項15に記載の血小板多血漿を含む組織および/または器官修復促進剤、歯科インプラント周囲の骨造成の添加剤、骨欠損部への骨もしくは人工骨の移植の際の添加剤、創傷治癒促進剤、形成および/または美容を目的とした治療後もしくは処置後の組織治癒促進剤、皮膚疾患治療剤、皮膚潰瘍治療剤、神経組織修復剤および/または外科手術後の組織修復剤、
18.前項15に記載の血小板多血漿を投与することによる以下に示すいずれかの治療方法または処置方法:
1)歯科インプラント周囲の骨造成
2)皮膚疾患
3)形成および/または美容のための組織修復
4)骨欠損部修復
5)神経組織修復
6)外科手術後の組織修復
19.血液に水溶性高分子化合物を添加する工程を含む方法により血小板多血漿を調製するために使用する水溶性高分子化合物のうち、以下に示す少なくとも1種以上の成分を含む血小板多血漿調製用試薬または試薬キット:
1)アミノ酸および/もしくはアミノ酸の薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸
2)酸性多糖類および/もしくはその薬理学的に許容される塩
3)ビニルポリマ
20.血液に、以下に示す水溶性高分子化合物のうち少なくとも1種以上の成分を添加することにより血小板多血漿を調製するための器具:
1)アミノ酸および/もしくはアミノ酸の薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸
2)酸性多糖類および/もしくはその薬理学的に許容される塩
3)ビニルポリマ
21.前項19に記載の試薬もしくは試薬キットおよび前項20に記載の器具を含む血小板多血漿調製キット、からなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、末梢血の微分干渉顕微鏡写真の模式図である(実施例1)。
第2図は、末梢血上清の微分干渉顕微鏡写真の模式図である(実施例1)。
第3図は、試料2にて得られた上清の像の模式図である(実施例1)。
第4図は、血液凝固がみられた試料1の上清の像の模式図である(実施例1)。
第5図は、試料4の像の模式図である(実施例1)。
第6図は、各種ポリアミノ酸を添加して1時間静置したときの効果を示す図である(実施例4)。
第7図は、各重量のヒアルロン酸を添加して40分静置したときの効果を示す図である(実施例5)。
第8図は、各種の水溶性高分子を添加して30分静置したときの結果を示す図である(実施例7)。
第9図は、各種の水溶性高分子を添加して30分静置したときの結果を示す図である(実施例8)。
第10図は、本発明法PRPの創傷治癒効果を示す図である(実験例4)。
第11図は、術後4日目における本発明法PRPの創傷治癒効果と従来法PRPの創傷治癒効果を示す図である(実験例5)。
第12図は、術後4日目における従来法PRPと従来法PRPに白血球を加えた場合の創傷治癒効果を示す図である(実験例6)。
【符号の説明】
▲1▼ 赤血球
▲2▼ 白血球
▲3▼ 血小板
▲4▼ 無処理(コントロール)
▲5▼ 本発明法PRP投与
▲6▼ 従来法PRP投与
▲7▼ 従来法PRPに白血球を加えたものを投与
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の血小板多血漿は、血小板のみならず、フィブリノゲンを多く含む血漿成分を含むことが望ましく、また白血球を含めた血液成分を含んでいることがより望ましい。血小板は損傷した内皮下組織に粘着・凝集して血栓を形成し、止血に際して、また、他の細胞を遊走、分化誘導する物質の貯蔵、放出に関して、非常に重要な役割を果たしている。フィブリンは、血漿中のフィブリノゲンにトロンビンが作用して生じるもので、血液凝固の最終段階に関わるものである。さらに、組織修復のために細胞が浸潤し細胞分化するための足場としても重要である。また、白血球は細菌や有害な微生物などの浸入を防ぐ働きがあり、免疫機能や殺菌機能を有し、損傷組織を保護することで組織修復を促進する。白血球のなかでも単球/マクロファージは、組織修復にも重要な役割を担っていることが知られている。
血小板は、刺激や採血からの時間の経過とともに急速に機能が失われる。このため、血小板に対する刺激が少なく短時間に分離可能な遠心分離以外の手法では、高い機能を保持した血小板を得ることは不可能であった。全血を静置すると次第に赤血球が沈降するが、通常この速度は非常に遅いため、高度の炎症反応時などの病的な血液以外では、数時間以上放置しても血小板を含む血漿は得られないことが知られている。
本発明の血小板多血漿を調製する方法によって、全血から選択促進的に赤血球を沈降させることができ、上清中に血小板ばかりか白血球、フィブリノゲンなどの組織修復に不可欠な成分を、高い機能を保持したままで得ることができる。
本発明において、選択促進的に赤血球を凝集沈降させる工程とは、処理開始後3時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、更に好ましくは30分以内に、全血に含まれる赤血球を80%以上好ましくは90%以上を凝集させることによって沈降させ、全血液量の少なくとも15%以上の血小板多血漿を得る工程をいう。
本発明の血小板多血漿の調製に使用する全血は、ヒトまたはヒトを除く動物において、通常採血する方法に従って取得すればよい。また、採血した全血はそのままでは凝固してしまうため、採血後抗凝固剤を予め加えておくことが望ましい。抗凝固剤としては、通常使用されているものであって、生体に対して毒性を示さないものであればよく、例えば、クエン酸ナトリウム、ACD、EDTA、ヘパリン、低分子ヘパリン、フサン、ヒルジン、アルガトロバンなど、一般的に使用されるものであれば良い。
本発明の血小板多血漿を調製のための処理血液の量は特に制限されずその用途によって異なり、使用目的、使用量に応じて適切な量を選択することができる。本発明の方法は、例えば、自己の血液を採血したものについて適用させることができ、献血などで得られた血液にも適用させることができる。本発明は、このように高い活性を有する血小板を簡便に得る方法であるので、血小板製剤の調製にも用いることができる。
(水溶性高分子化合物)
採取して得られた血液から本発明の血小板多血漿を調製するために、水溶性高分子化合物を該血液に添加し、静置すればよい。
本発明における水溶性高分子化合物は、常温である25度において蒸留水または生理食塩水に0.01w/v%が溶けるものであれば良い。該水溶性高分子化合物の分子量は大きいほうが好ましいが、溶解液が高粘度になり混和され難いなどの問題もあり、具体的には平均分子量として1000〜500万、好ましくは3000〜100万、より好ましくは1万から30万の範囲から選択され、更に好ましくは約2万〜15万である。なお本発明における分子量は、分子量の定まったデキストランを標準物質とし、溶媒を蒸留水としたGPC法によって測定するものとする。
本発明における水溶性高分子化合物は、合成物でもあっても天然物であっても良く、また天然物を化学的に修飾したものであってもよい。
本発明における水溶性高分子化合物は、合成物でもあっても天然物であっても良く、また天然物を化学的に修飾したものであってもよい。
本発明における水溶性高分子化合物は、1)アミノ酸および/またはアミノ酸の薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸、2)酸性多糖および/またはその薬理学的に許容される塩、3)ビニルポリマに示される化合物から選択される。本発明の目的を達成するために、上記に示す化合物のうち1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明における薬理学的に許容しうる塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などの無機塩基との間で形成された塩、又はジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩などの有機塩基を選択し、用いることができる。
(ポリアミノ酸)
本発明で使用するポリアミノ酸またはその薬理学的に許容できる塩としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、ヒスチジン等のα−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸等がペプチド結合により結合された単一重合体あるいは共重合体が例示され、D体、L体、DL体は特に問わない。具体的には、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン、ポリヒスチジン及びこれらの薬理学的に許容できる塩を例示することができる。
また、本発明においては、その分子の主鎖または側鎖中に、20種類のタンパク質を構成するアミノ酸のほかにも、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を含んでいても差し支えない。
またこれらのポリアミノ酸は、線状構造を有するものであっても、分岐状構造を有するものであっても良い。
本発明で使用できるポリアミノ酸の平均分子量としては、好ましくは1000〜500万の範囲であり、より好ましくは1000〜100万である。
なお、ポリアミノ酸の分子量は、重合条件の調整(温度,時間,溶媒,触媒など)でコントロール可能なほか、ジシクロカルボジイミド(DCC)などを用いての重合後に重合体同士の再縮合させることよっても調整することができる。
また本発明では、無水ポリ酸性アミノ酸例えば、ポリアスパラギン酸の無水物、ポリグルタミン酸の無水物等を使用することも可能である。これらのうち、工業的入手のし易さの点で、ポリアスパラギン酸の無水物であるポリコハク酸イミドが好ましく用いられる。
本発明において、酸性ポリアミノ酸は特に好ましく用いることができる。ここでいう酸性ポリアミノ酸は、生理条件的なpH条件下で負に荷電しているポリアミノ酸をさす。帯電の状況は等電点電気泳動や摘定などの手法で把握できる。簡便には、酸性ポリアミノ酸を、分子中のカルボキシル基とアミノ基の数の割合において、カルボキシル基の数がアミノ基の数よりも多いポリアミノ酸とすることも可能である。
本発明におけるポリアミノ酸では、その構成アミノ酸中に、グルタミン酸および/またはアスパラギン酸を20%以上含有するもの、好ましくは30%、より好ましくは50%以上含有するものが用いられる。特にポリアスパラギン酸あるいはポリグルタミン酸は、構造が簡単で合成しやすいため、特に好ましく用いられる。
グルタミン酸および/またはアスパラギン酸は、分子中にランダムに分布していても、あるいはブロック状に分布していても良い。また、グラフト・コポリマーも用いることができる。
本発明のポリグルタミン酸は、ポリ−L−グルタミン酸であっても、ポリ−D−グルタミン酸あるいはその混合物であっても良い。またL体D体の共重合体も用いることができる。また同様に本発明でのポリアスパラギン酸は、ポリ−L−アスパラギン酸であっても、ポリ−D−アスパラギン酸あるいはその混合物であっても良い。またL体D体の共重合体も用いることができる。
ここで、ポリアスパラギン酸が主鎖の基本骨格である場合には、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、β結合である場合がある。すなわち、ポリアスパラギン酸及びその共重合体の場合は、アスパラギン酸もしくは共重合体単位のアミノ基と、アスパラギン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。本発明では、その結合様式は特に限定されず、α結合、β結合がそれぞれ単独であっても混在しても良い。
また同様に、ポリグルタミン酸の場合の主鎖基本骨格は、主鎖中のアミド結合がα結合である場合とγ結合、さらには両者が混在する場合があるが、同様に本発明ではその結合様式は特に限定されない。
本発明に用いるポリアミノ酸のうち、例えばポリアスパラギン酸またはその塩は、ポリコハク酸イミドを加水分解したもの、発酵法あるいは酵素法により製造したもの、アスパラギン酸−4−エステルのN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物(NCA)を重合し、エステル基を除去するなどの方法で製造することができる。ポリコハク酸イミドは、通常、主鎖の一部あるいは全部が、イミド環であるため、このイミド環をアルカリや求核剤と反応させて開環させることによりポリアスパラギン酸またはその塩を得ることができる。
ポリ−α−グルタミン酸は、例えばグルタミン酸γベンジルエステルのN−カルボン酸無水物を重合させ、臭化水素で脱ベンジル化することによって得ることができる。
また、本発明におけるポリアミノ酸は、微生物によって生合成されたものでも良い。例えば、ポリ−γ−グルタミン酸は、納豆菌に代表される微生物による醗酵法によっても作製することができる。
(酸性多糖類)
本発明における酸性多糖類とは、生理的pH条件下で負に荷電しているものをいう。荷電の状況は、電気泳動や摘定などの手法で容易に把握することが可能である。具体的例として、グリコサミノグリカン、ガラクツロン酸およびアルギン酸等をあげることができる。グリコサミノグリカンは、「遊離状態またはタンパク質と結合して、広く結合組織に存在するアミノ糖を含む一群の酸性多糖であり、ムコ多糖ともよばれる。構造的にはアミノ糖とウロン酸(またはラクトース)からなる二糖の繰り返し長鎖構造をもち、硫酸化されているものといないものとがある」(生化学辞典第二版 東京化学同人)とされる。グリコサミノグリカンの代表例として、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケタラン硫酸があげられる。本発明においては、血液中に入れた際に、血小板を分離する作用以外に強い作用をもたないものが好ましく、ヒアルロン酸はこの条件を満たしているため特に好ましく用いられる。
他の酸性多糖類として、デキストラン硫酸、カルボキシル化デキストラン等のデキストラン誘導体、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルキトサンなどのキトサン誘導体やグアポリカルボン酸等が好ましく用いられる。
また、食品や化粧品用などとして市販されている調製品(例えば、食品級コンドロイチン硫酸である、『ムコテイン−DK』など)を利用することも可能である。さらに本発明では、酸性多糖類の薬理学的に許容される塩ももちろん好ましく用いられる。
(水溶性ビニルポリマ)
本発明の水溶性ビニルポリマの例として、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムやポリアクリル酸アンモニウムなどのポリアクリル塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル酢酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコール、エチレンイミン系ポリマ酸塩、ポリアミジン、ポリイソプレンスルホン酸、またそれぞれの誘導体も用いることができる。さらに例示できるが、特に限定されない。
水溶性ビニルポリマのうち、酸性のビニルポリマおよびその薬理学的に許容される塩はより好ましく用いられる。ここでいう酸性ビニルポリマとは、生理的pH条件で負に荷電しているビニルポリマをさし、具体的には、分子中に、カルボキシル基、スルホン酸性、リン酸基などの酸性基を含むビニルポリマ、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウムポリメタクリル酸およびその塩、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸が好ましい。
(血小板多血漿の調製方法)
本発明の血小板多血漿を調製するために、抗凝固剤を含む血液量1.5mLに対して、上記水溶性高分子化合物を、0.0015〜150mg、好ましくは0.15〜45mg、より好ましくは1.5〜4.5mg添加することができる。換算すると、約0.0001〜10w/v%、好ましくは0.01〜3w/v%、より好ましくは0.1〜0.3w/v%となる。より多量の血小板多血漿を調製する場合には、血液量を増加し、上記と同じ割合で水溶性高分子化合物を添加することができる。
上記水溶性高分子化合物は、採血した血液を入れる容器に加えておくこともできるし、採血用注射筒に直接加えておくこともできる。
上記の範囲から選択される量の水溶性高分子化合物を、抗凝固剤を含む血液に添加し、該化合物が血液全体にいきわたるように静かに混和後、静置しておくことにより選択促進的に赤血球の沈降が認められ、上清には血小板のみならず血漿成分や白血球等の血液成分を含む血小板多血漿を得ることができる。赤血球の沈降は、遅くとも3時間、好ましくは2時間以内で認められ、早ければ処理開始後10分程度で認められ、20分から30分程度で、本発明の目的の血小板多血漿を得ることができる。
また、赤血球の分離が不十分な場合やより短時間での分離が必要な場合には、従来の赤血球の凝集を引き起こさない程度の弱い遠心分離をさらに行うこともできる。具体的には、142Gで5分以下の遠心分離を加えることができる。
(本発明の血小板多血漿の使用)
本発明の方法により調製された血小板多血漿は、創傷治癒剤、歯科インプラント周囲の骨造成の添加剤、骨欠損部への骨もしくは人工骨の移植の際の添加剤、創傷治癒促進剤、皮膚疾患治療剤、皮膚潰瘍治療剤、形成あるいは美容を目的とした治療もしくは処置後の組織治癒促進剤、外科手術後の組織修復剤、整形外科領域の術後の組織修復剤、神経組織修復剤などあらゆる組織、器官における治癒促進剤として適用することが可能である。つまり、本発明の血小板多血漿により、上記の疾患や皮膚もしくは組織の損傷等を治療することができる。
本発明の血小板多血漿は、ヒトのみならず、ヒトを除く哺乳類にも適用することができる。哺乳類の例としては、特に地上に生息する動物が挙げられ、一般的にペットとして飼育されるイヌ、ネコ、ハムスター等にも適用することができる。また、競走馬や闘牛用ウシのように、スポーツにおいて活用される動物等に対しても適用することができる。
本発明の方法により、自己の血液から調製された血小板多血漿は、上記の治療または処置の目的で使用することができる。また、血液型が適合すれば自己の血液由来でなくとも使用することももちろん可能である。
使用方法として、具体的には創傷部位に本発明の血小板多血漿を必要量塗布する、注入する等の投与方法を適用することができる。
(調製用試薬、器具ならびにキット)
本発明の血小板多血漿は、上述したように自己の血液から簡便かつ容易に、治療等に効果的な血小板多血漿を調製できることが最大の特徴である。簡便かつ容易に調製するためには、本発明の調製方法に使用する水溶性高分子化合物を試薬として備えておくことにより達成される。
具体的には上記「水溶性高分子化合物」の欄で説明した各種の水溶性高分子化合物を、バイヤルやアンプル等の適当な容器に充填した試薬、これらの試薬を複数含むもの、あるいは溶解液などを含む試薬キットなども本発明に含まれる。さらに、本発明の調製方法に使用される器具、具体的には、採血に使用するシリンジや採血管、さらには採血された血液に水溶性高分子化合物を添加するための滅菌処理されたプラスチックなどの容器もしくは試験管などが挙げられる。本発明の血小板多血漿調製キットは、上記例示した試薬や器具から選択される試薬および器具をキット化したものが挙げられる。本キットを使用することで、採血したベッドサイド等で容易に本発明の血小板多血漿を容易に調製することができる。
さらに、本発明の水溶性高分子を、採血の際に用いるシリンジや容器にあらかじめ充填したものも好ましく用いられる。抗凝固剤として広く使用されるクエン酸ナトリウムやACDの中に、本水溶性高分子を溶かし込んでおき、それを上述のシリンジや容器に充填したものも特に好ましく用いられる。
【実施例】
以下、本発明を実施例および実験例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
(目的)
本実施例は、全血(末梢血)へのポリ−L−グルタミン酸ナトリウム(分子量21,270)(SIGMA CHEMICAL.CO.製)の添加による赤血球の沈降への影響と上清の出現、およびその上清中の細胞数の計測、微分干渉顕微鏡による細胞の形態観察を目的とする。
(材料と方法)
赤沈速度の差を比べるために、次の方法で4種の試料を調製した。抗凝固剤としてのクエン酸ナトリウム溶液は3.13w/v%となるように調製した。
試料1:血液1.5mLに、2mgのポリ−L−グルタミン酸ナトリウム添加する。
試料2:クエン酸ナトリウム溶液0.15mLに血液を1.35mL加え、全体を1.5mLとしたものに、2mgのポリ−L−グルタミン酸ナトリウムを添加する。
試料3:クエン酸ナトリウム溶液0.15mLに血液を1.35mL加え、全体を1.5mLとする。
試料4:リン酸緩衝液(PBS)1.5mLに、2mgのポリ−L−グルタミン酸ナトリウムを添加する。
(結果)
1)赤血球の沈降について
上記各試料を30分間静置した後の赤血球の沈降状況は次のとおりである。
試料1では観察の途中で血液凝固してしまい、赤血球の沈降は認められなかった。試料3にくらべ、試料2はポリ−L−グルタミン酸ナトリウムを混入することによって、赤血球の沈降促進を認め、上清が観察された。
2)血小板数
上記各試料を30分間静置した後の上清中の血小板数を日本光電株式会社製全自動血球測定器Celltac α(MEC−6318)により計測した。各試料の上清における血小板数(10/μl)を表1に示した。

3)顕微鏡観察について(図1〜図5)
各試料の上清部分を落射蛍光、微分干渉顕微鏡(Nikon ECLIPSE E600)にて観察し、写真撮影した。
図1は、末梢血を示し、図2は試料3の上清部分を示す倍率1000倍での微分干渉顕微鏡写真を模式的に示した図である。この顕微鏡観察により、大きさ、色および形態から赤血球、白血球および血小板が比較的容易に分類できた。
図3は、試料2にて得られた上清の像の模式図である。図1に比べ、赤血球が少なく、血小板および白血球が多く観察された。
図4は血液凝固がみられた試料1の上清の像の模式図であるが、血小板は全く認められなかった。
図5は、試料4の像の模式図であるが、何も認められなかった。
これらの結果より、抗凝固剤を含む全血にポリ−L−グルタミン酸ナトリウムを混入することで、赤沈の上清に血小板を多く含む血球成分が存在することが示唆された。
【実施例2】
(目的)
本実施例は、添加するポリ−L−グルタミン酸ナトリウム(分子量21,270)(SIGMA CHEMICAL.CO.製)について、同じ分子量であるが添加量を変えた場合の効果を調べることを目的とする。
(材料と方法)
次の方法で5種の試料を調製した。抗凝固剤としてクエン酸ナトリウム3.13w/v%を混入した水溶液0.15mLに血液を1.35mL加え全体を1.5mLとしたものを全血試料とした。各全血試料に各重量のポリ−L−グルタミン酸ナトリウム(SIGMA CHEMICAL.CO.製)を添加した。
試料1:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム 1mg
試料2:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム 2mg
試料3:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム 2.5mg
試料4:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム 3mg
試料5:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム 4mg
(結果)
1)赤血球の沈降について
上記各試料を30分間静置した後の赤血球の沈降は、ポリ−L−グルタミン酸ナトリウムを3mg添加した場合に最も効果的に認められた。その場合の上清の量は0.8mLであった。
2)血小板数
上記各試料を30分間静置した後の上清中の血小板数を実施例1と同様に計測した。全血試料(末梢血)の血小板数は19.7(10/μl)であったのに対し、各試料の上清における血小板数は34.5(10/μl)から37.0(10/μl)と約2倍に増加した。
【実施例3】
(目的)
本実施例は、分子量の異なるポリ−L−グルタミン酸ナトリウムを血液に添加した場合の効果を調べることを目的とする。
(材料と方法)
抗凝固剤としてクエン酸ナトリウム3.8w/v%を混入した水溶液0.15mLに血液を1.35mL加え全体を1.5mLとしたものを全血試料とした。これに分子量の異なるポリ−L−グルタミン酸ナトリウム(SIGMA CHEMICAL.CO.製)を各々3mg添加し、5種の試料を調製した。上記各試料を30分間静置した場合の赤血球の沈降を比較した。
試料1:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム 無添加(コントロール)
試料2:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム (分子量 5,800)
試料3:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム (分子量17,500)
試料4:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム (分子量21,270)
試料5:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム (分子量42,000)
(結果)
1)赤血球の沈降
赤血球の沈降の様子を観察した結果、ポリ−L−グルタミン酸ナトリウムの分子量が大きい方が沈降を速く認め、多くの上清量が確認された。
2)血球測定
上清の血小板の濃度は、試料4および試料5を比べたところ、分子量の大きい試料5の方が高かった。

【実施例4】
(目的)
本実施例は、各種ポリアミノ酸を血液に添加した場合の効果を調べることを目的とする。
(材料と方法)
次の方法で5種の試料を調製した。
抗凝固剤としてクエン酸ナトリウム3.8w/v%を混入した水溶液0.15mLに、採血して得た血液を1.35mL加え全体を1.5mLとしたものを全血試料とした。被験者Aおよび被験者Bから得た血液について各々全血試料を5種ずつ調製し、各全血試料に各重量の以下のポリアミノ酸を添加した。
試料1:ポリアミノ酸無添加 (コントロール)
試料2:ポリ−L−ヒスチジン
(分子量20,000)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料3:ポリ−L−アスパラギン酸ナトリウム
(分子量8,300)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料4:ポリ−L−アスパラギン酸ナトリウム
(分子量35,700)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料5:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
上記各試料を30分間静置した後の上清の出現と血小板数を比較した。
(結果)
1)上清について
上記各試料を30分間静置した後に試料2〜4の全てに上清が認められ、その量は、試料5、3、4、2の順に多く認められた。被験者Aの各試料を1時間静置したときの結果を第6図に示した。
2)血小板数
上記の上清中の血小板数を実施例1と同様に計測し、その結果を表3に示した。その結果、試料2〜4の全てについて、上清中に血小板が多く認められた。

【実施例5】
(目的)
本実施例は、酸性多糖類の1種であるヒアルロン酸ナトリウムを血液に添加した場合の効果を調べることを目的とする。
(材料と方法)
抗凝固剤としてACD3.8w/v%を混入した水溶液0.15mLに血液を1.35mL加え、全体を1.5mLとしたものを全血試料とした。これに各量のヒアルロン酸ナトリウム(鶏冠由来:和光純薬株式会社製)を添加し、5種の試料を調製した。
試料1:ヒアルロン酸ナトリウム 無添加 (コントロール)
試料2:ヒアルロン酸ナトリウム 1mg
試料3:ヒアルロン酸ナトリウム 2mg
試料4:ヒアルロン酸ナトリウム 3mg
試料5:ヒアルロン酸ナトリウム 4mg
上記各試料を40分間静置した後の上清の出現と血小板数を比較した。
(結果)
1)上清について
40分間静置後の上清量を観察した結果、ヒアルロン酸ナトリウムの添加量が多い程上清量は多かったが、ポリ−L−グルタミン酸ナトリウムに比べると少なかった。40分間静置したときの結果を第7図に示した。
2)血小板数について
上記各試料を40分間静置した後の上清中の血小板数を実施例1と同様に計測し、その結果を表4に示した。

【実施例6】
(目的)
本実施例は、ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム、ポリアクリル酸を血液に添加したときの効果を調べることを目的とする。
(材料と方法)
抗凝固剤としてACD3.8w/v%を混入した水溶液0.15mLに血液を1.35mL加え、全体を1.5mLとしたものを全血試料とした。これにポリアクリル酸またはポリ−L−グルタミン酸ナトリウムを添加し、4種の試料を調製した。
試料1:水溶性高分子化合物 無添加 (コントロール)
試料2;ポリアクリル酸
(分子量2,000)(Aldrich Chem.Co製) 3mg
試料3:ポリアクリル酸
(分子量2,000)(Aldrich Chem.Co製) 4mg
試料4:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
上記の各試料を静置し、30分後および50分後の上清の出現、および2時間後の上清中の血小板数を測定した。
(結果)
1)上清について
30分間後では、試料2および3については、コントロールとの差は観察されなかったが、試料4はコントロールに比べ多量の上清が観察された。
50分間後では、試料2および3のポリアクリル酸を添加した場合でもコントロールと比較して上清の量が多かった。
2)血小板数
上記各上清中の血小板数を実施例1と同様に計測し、表5に示した。試料2〜4のすべてについて、血小板数は試料1に比べて多かったが、特に試料2および3に多く認められた。

【実施例7】
(目的)
本実施例は、各種水溶性高分子化合物を血液に添加したときの効果を調べることを目的とする。
(材料と方法)
抗凝固剤としてACD3.8w/v%を混入した水溶液0.15mLに血液を1.35mL加え、全体を1.5mLとしたものを全血試料とした。各全血試料に各重量の各種高分子化合物を添加し、11種の試料を調製した。
試料1:水溶性高分子化合物 無添加 (コントロール)
試料2;ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料3:ポリアスパラギン酸ナトリウム
(分子量35,700)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料4:ポリアスパラギン
(分子量10,700)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料5:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 1.5mgとポリアスパラギン酸ナトリウム
(分子量35,700)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 2.5mgとの混合
試料6:ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 2.25mgとポリアスパラギン酸ナトリウム
(分子量35,700)0.75mgとの混合
試料7:ポリ(グルタミン酸ナトリウム−チロシン(4:1))
(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 2mg
試料8:ポリ(グルタミン酸ナトリウム−チロシン(4:1))
(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 4mg
試料9:カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC50)
(五徳薬品株式会社製) 2mg
試料10:ヒアルロン酸ナトリウム
(和光純薬株式会社製) 1.5mgと
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 1.5mgとの混合
試料11:ヒアルロン酸ナトリウム
(和光純薬株式会社製) 1.8mgと
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785))(SIGMA CHEMICAL.CO.製)1.2mgとの混合
上記各試料を30分間静置した後の上清の出現と血小板数を比較した。
(結果)
1)上清について
上記各試料を30分間静置した後の上清は、試料4のポリアスパラギンを添加した場合はほとんど認められなかったが、その他の試料においては、ポリグルタミン酸ナトリウムと同程度またはやや少ない量が認められた。静置後2時間では試料4でも上清が認められた。
30分静置後の結果を第8−1,2図に示した。
2)血小板数について
上記各試料を30分間静置後の上清中の血小板数を実施例1と同様に計測し、表6に示した。

【実施例8】
(目的)
本実施例は、各種水溶性高分子化合物を血液に添加した場合の効果を調べることを目的とする。
(材料と方法)
次の方法で8種の試料を調製した。抗凝固剤としてACD3.8w/v%を混入した水溶液0.15mLに血液を1.35mL加え、全体を1.5mLとしたものを全血試料とした。各全血試料に各重量の以下の高分子化合物を添加した。
試料1:水溶性高分子化合物 無添加 (コントロール)
試料2;ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム
(分子量53,785)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料3:ポリアスパラギン酸ナトリウム
(分子量35,700)(SIGMA CHEMICAL.CO.製) 3mg
試料4:ヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬株式会社製) 3mg
試料5:硫酸デキストラン(MDSコーワ注)
(興和株式会社製) 6mg
試料6:ポリガラクツロン酸ナトリウム(SIGMA CHEMICAL.CO.製)
3mg
試料7:ポリγ−DL−グルタミン酸ナトリウム(直鎖状)
(明治製菓株式会社製) 3mg
試料8:ポリγ−DL−グルタミン酸ナトリウム塩(架橋状)
(明治製菓株式会社製) 3mg
上記各試料を30分間静置した後の上清の出現と血小板数を比較した。
(結果)
1)上清について
上記各試料を30分間静置した後は、試料5および6以外の試料で上清が観察された。30分静置後の結果を第9−1,2,3図に示した。2時間後には、試料5および6においても上清が観察された。
2)血小板数について
上記各試料を30分間静置した後の上清中の血小板数(試料5,6においては処理後約2時間)を実施例1と同様に計測した。

実験例1
(目的)
本実験例は、本発明法により得られた血小板多血漿中の血小板の機能を調べる事を目的とする。高い機能を有する血小板は凝集し、フィブリン塊とともに沈降するので、そのような血小板を含む(上清の)試料は透過率が大きい。この原理を利用し、血小板機能の計測を行う。
(材料と方法)
本発明法によって得られた血小板多血漿390μLに塩化カルシウムを10μL(12.21g/L)、ADPを40μL(0.2mmol)添加したものを測定用試料とした。該本発明法によって採取される上清を、分光光度計(MCM HEMATRACER 212(MCMEDICAL))にて波長690nmにおける透過率を測定した。ここで本発明法により得られた血小板多血漿とは、上記出発原料にポリ−L−グルタミン酸ナトリウム(3mg)を添加し、30分間静置して得られた上清をいう。
(結果)
本発明法によって採取される上清は、白血球、血小板等を多く含み、かなり懸濁しているため、この上清を142G(1200rpm)で10分間遠心し、血球成分を沈降させた上層部を基準透過率(100%)とした。
塩化カルシウム、ADPを添加して30分静置後に得た上清部の透過率は100%に達し、本発明法で得られた血小板は、高い凝集機能を保持していることが明らかになった。
実験例2
(目的)
本実験例は、本発明法および従来法にて得られた上清中(血小板多血漿中)のフィブリノゲン量を測定することを目的とする。細胞遊走時の足場となるフィブリンの前駆体フィブリノゲンの存在は非常に大切である。本発明法、従来法によって調製された血小板多血漿のフィブリノゲン量を測定した。
(材料と方法)
抗凝固剤としてクエン酸ナトリウム3.8w/v%を混入した0.15mLに全血を1.35mL加え全体を1.5mLとしたものを出発原料とする。ここで本発明法により得られた血小板多血漿とは、上記出発原料にポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(3mg)を添加し、30分間静置して得られた上清をいう。
試料1:本発明法により採取した上清
試料2:出発原料を1回遠心した後の血漿上層(乏血小板血漿:PPP)
(遠心条件:1000G×10分)
試料3:出発原料を2回遠心した後の血漿(多血小板血漿:PRP)
(遠心条件:1000G×10分および700G×8分)
各試料を0.5mL採取し、光散乱法の測定方法によりフィブリノゲン量の測定を行った。
(結果)
その結果、試料1で222mg/dL、試料2のPPPで252mg/dL、試料3のPRPで178mg/dLのフィブリノゲンが測定された。この結果より、本発明法により得られた上清(血小板多血漿)中のフィブリノゲン量は、従来法により作製されたPRP中のそれよりも多いということが判明した。
実験例3
(目的)
本実験例は、従来法により調製された血小板多血漿(以下:従来法PRP)と本発明法により調製された血小板多血漿(以下:本発明法PRP)の各血球数と血小板回収率を計測することを目的する。
(材料と方法)
従来法PRPは、抗凝固剤としてACD3.8w/v%を混入した水溶液0.85mLに血液を加え全体を8.5mLとしたものを出発原料とし、PRP kit(クラサン株式会社製)を用いて調製した。遠心器はHeraeus Labofuge300を用いた。一回目の遠心は3600rpmで15分、2回目の遠心は2400rpmで10分行い、上清を分取し、約0.7mlの血小板多血漿を採取した。
本発明法PRPは、抗凝固剤としてACD3.8w/v%を混入した水溶液0.15mLに血液を1.35mL加え全体を1.5mLとしたものを出発原料とし、出発原料にポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(分子量53,785)を3mg添加し、30分静置して上清を分取し、約0.75mlの血小板多血漿を採取した。
(結果)
各測定結果を表8に示した。血小板の回収率は、次式に従い求めた。その結果、本発明法により得られた血小板多血漿は、従来法によるものよりもより少ない血液で、効率よく血小板多血漿が得られたことが確認された。
回収率の計算方法=
(回収した血小板数/採血時の血小板数)×(採取したPRP量/採血量)

実験例4
(目的)
本実験例は、本発明法PRPをヌードマウスに適用させ(本発明群)、何も投与しない群(対照群)と治癒効果を比較することを目的とする。
(材料と方法)
本発明法PRPは、実験例3の方法に従い調製した。
免疫不全マウスBALB/c−nu/nu(6−11週)を合計10匹用いて次の処理を行った。
1)マウスの背中に10mmの切開を2カ所入れ、そこから上皮を外側へ5mm剥離し、切開創を作製した(第10−1図)。
2)写真右側の切開創に、ヒトの血液から採取した本発明法PRP(約0.7ml)に5%塩化カルシウム(約0.07ml)を加えて活性化させ、凝固した血小板多血漿を50mg挿入し、その後ナイロン糸(4−0)にて2針縫合した。
3)写真左側の切開創には何も添加せず2針縫合し、対照群とした。
(結果)
術後4日目から7日目にかけて、本発明群のほうが対照群に比べ、創部の長さ幅ともに小さく、治癒促進効果が明らかに認められた(第10−2図)。
実験例5
(目的)
本実験例は、本発明法PRPをヌードマウスに適用させ、従来法PRP投与例と治癒効果を比較することを目的とする。各血小板多血漿は、実験例3の方法に従い調製した。
(材料と方法)
免疫不全マウスBALB/c−nu/nu(11週)を合計2匹用いた。
1)マウスの背中に10mmの切開を4カ所入れ、そこから上皮を外側へ5mm剥離し、切開創を作製した。
2)2匹のマウスの写真上部右側の切開創に、ヒトの血液から採取した本発明法PRPを実験例4と同様に活性化させ、凝固した血小板多血漿を50mg挿入し、その後ナイロン糸(4−0)にて2針縫合した(第11−1図)。写真下部右側の切開創には従来法PRPを活性化させ、同量を創部に添加した(第11−2図)。
3)写真上部下部の左側の切開創は何も添加せず、縫合し、対照側とした。
(結果)
本発明法PRPを添加した切開創の方が、傷の長さ幅ともに小さく、従来法PRPに比べて高い治癒の促進効果が見られた(第11−1,2図)。
実験例6
(目的)
本実験例は、従来法PRPとそれに白血球を加えたものとの治癒促進効果を比較することを目的とする。従来法PRPは、実験例3の方法に従い調製した。
本発明法PRPは、血小板の量だけでなく白血球の量も増えており、それが治癒促進効果をさらに高めると予想される。そのため、従来法PRPにも白血球を添加し、添加した白血球がどのように治癒に影響するか確認した。
(材料と方法)
免疫不全マウスBALB/c−nu/nu(11週)を合計4匹用いた。
1)マウスの背中に10mmの切開を4カ所入れ、そこから上皮を外側へ5mm剥離し、切開創を作製した。
2)2匹のマウスの写真上部右側の切開創に、ヒトの血液から作製した従来法PRPを実験例5と同様に活性化させ、凝固した血小板多血漿を50mg挿入し、その後ナイロン糸(4−0)にて2針縫合した(第12−1図)。他の2匹のマウスには同様に従来法PRPに白血球を混入した、従来法PRP+白血球(WBC)を活性化させ、同量を創部に添加した(第12−2図)。
3)写真上部下部の左側の切開創は何も添加せず縫合し、対照側とした。
第12−1図に示すのマウスの写真右側の切開創に、従来法PRPを添加した。従来法PRPの組成は白血球数53×10/μl、血小板数67.1×10/μlであった。
第12−2図に示すマウスの写真右側の切開創に、従来法PRP+白血球(WBC)を添加した。従来法PRPに白血球(WBC)を加えたときの組成は、白血球数180×10/μl、血小板数68.7×10/μlであった。
(結果)
白血球の多い血小板多血漿(従来法PRP+白血球(WBC))のほうが傷の長さ、幅ともに小さく、高い治癒促進効果が見られた(第12−1,2図)。
実験例7
(目的)
本実験例は、従来法により調製された血小板多血漿(以下:従来法PRP)と本発明法により得られた血小板多血漿(以下:本発明法PRP)中に含まれる白血球の殺菌及び消化能を調べる事を目的とする。白血球の殺菌及び消化能はミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase、MPO)活性を指標として計測する。
(材料と方法)
従来法PRPは、ACD3.8w/v%を混入した水溶液1.5mLに血液を加え全体を15mLとしたものを出発原料とし、室温下1100rpm、12分間の遠心分離後に上清を分取し、約7mLの血小板多血漿を調製した。
本発明法PRPは、ACD3.8w/v%を混入した水溶液1.5mLに血液を加え全体を15mLとしたものを出発原料とし、出発原料にポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(分子量53,785)を30mg添加し、30分静置後に上清を分取し、約7mLの血小板多血漿を調製した。
従来法PRPと本発明法PRPそれぞれ2mLを測定用試料とし、3回の凍結融解の後、0.167mg/mL o−ジアニシジン及び0.0005%過酸化水素水と反応させて450nmの吸光度変化を測定し、ヒトMPO標準品(Sigma社製)を用いて定量化した。
(結果)
従来法PRPは0.045U/mL、本発明法PRPは0.72U/mLのMPO活性を示し、本発明法により得られたPRP中のMPO活性が従来法により作製されたPRPのそれよりも明らかに高いことが判明した。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように、本発明の血小板多血漿の調製方法により、活性が高い血小板多血漿を、簡便に提供することができる。特に、自己の血液成分を原料として本発明の方法により得られた血小板多血漿が、組織および/または器官修復促進剤、具体的には歯科インプラント周囲の骨造成の添加剤、骨欠損部への骨もしくは人工骨の移植の際の添加剤、創傷治癒促進剤、形成および/または美容を目的とした治療後もしくは処置後の組織治癒促進剤、皮膚疾患治療剤、皮膚潰瘍治療剤、神経組織修復剤および/または外科手術後の組織修復剤として医療の現場で活用されうる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から、赤血球を選択促進的に凝集沈降させる工程を含むことを特徴とする血小板多血漿の調製方法。
【請求項2】
血液が、採血して得られた全血である請求の範囲第1項に記載の血小板多血漿の調製方法。
【請求項3】
赤血球を選択促進的に凝集沈降させる方法が、血液に水溶性高分子化合物を添加する工程を含む請求の範囲第1項または第2項に記載の調製方法。
【請求項4】
血液に水溶性高分子化合物を添加する工程を含むことを特徴とする血小板多血漿の調製方法。
【請求項5】
前記水溶性高分子化合物が分子量1000〜500万の高分子化合物である請求の範囲第3項または第4項に記載の調製方法。
【請求項6】
前記水溶性高分子化合物を、血液量に対して0.0001〜10w/v%添加する請求の範囲第3項または第4項に記載の調製方法。
【請求項7】
前記水溶性高分子化合物が、以下に示す化合物から選択される少なくとも1種である請求の範囲第3項または第4項に記載の調製方法:
1)アミノ酸および/またはアミノ酸の薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸
2)酸性多糖類および/またはその薬理学的に許容される塩
3)ビニルポリマ
【請求項8】
前記ポリアミノ酸が、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジンまたはポリアスパラギンから選択される少なくとも1種である請求の範囲第7項に記載の調製方法。
【請求項9】
前記ポリアミノ酸を構成するアミノ酸もしくはアミノ酸の薬理学的に許容される塩が、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジンおよびアスパラギンから選択される少なくとも1種以上またはそれらの薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸である請求の範囲第7項に記載の調製方法。
【請求項10】
前記ポリアミノ酸を構成するアミノ酸のうち、少なくとも20%以上がグルタミン酸および/もしくはアスパラギン酸またはそれらの薬理学的に許容される塩である請求の範囲第9項に記載の調製方法。
【請求項11】
前記ポリアミノ酸が、酸性ポリアミノ酸である請求の範囲第9項または第10項に記載の調製方法。
【請求項12】
前記酸性多糖類および/またはその薬理学的に許容される塩が、デキストラン誘導体、グリコサミノグリカン、セルロース誘導体、キトサン誘導体、ガラクツロン酸およびアルギン酸から選択される少なくとも1種またはその薬理学的に許容される塩である請求の範囲第7項に記載の調製方法。
【請求項13】
前記酸性多糖類および/またはその薬理学的に許容される塩が、ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容される塩である請求の範囲第7項に記載の調製方法。
【請求項14】
前記ビニルポリマが、酸性ポリマまたはその薬理学的に許容される塩を含む化合物から選択される少なくとも1種である請求の範囲第7項に記載の調製方法。
【請求項15】
請求の範囲第1〜14項に記載の何れかの方法で調製された血小板多血漿。
【請求項16】
請求の範囲第15項に記載の血小板多血漿を含む組織および/または器官修復促進剤。
【請求項17】
請求の範囲第15項に記載の血小板多血漿を含む組織および/または器官修復促進剤、歯科インプラント周囲の骨造成の添加剤、骨欠損部への骨もしくは人工骨の移植の際の添加剤、創傷治癒促進剤、形成および/または美容を目的とした治療後もしくは処置後の組織治癒促進剤、皮膚疾患治療剤、皮膚潰瘍治療剤、神経組織修復剤および/または外科手術後の組織修復剤。
【請求項18】
請求の範囲第15項に記載の血小板多血漿を投与することによる以下に示すいずれかの治療方法または処置方法:
1)歯科インプラント周囲の骨造成
2)皮膚疾患
3)形成および/または美容のための組織修復
4)骨欠損部修復
5)神経組織修復
6)外科手術後の組織修復
【請求項19】
血液に水溶性高分子化合物を添加する工程を含む方法により血小板多血漿を調製するために使用する水溶性高分子化合物のうち、以下に示す少なくとも1種以上の成分を含む血小板多血漿調製用試薬または試薬キット:
1)アミノ酸および/もしくはアミノ酸の薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸
2)酸性多糖類および/もしくはその薬理学的に許容される塩
3)ビニルポリマ
【請求項20】
血液に、以下に示す水溶性高分子化合物のうち少なくとも1種以上の成分を添加することにより血小板多血漿を調製するための器具:
1)アミノ酸および/もしくはアミノ酸の薬理学的に許容される塩を含むポリアミノ酸
2)酸性多糖類および/もしくはその薬理学的に許容される塩
3)ビニルポリマ
【請求項21】
請求の範囲第19項に記載の試薬もしくは試薬キットおよび請求の範囲第20項に記載の器具を含む血小板多血漿調製キット。

【国際公開番号】WO2004/012750
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【発行日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525813(P2004−525813)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009795
【国際出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(502281493)
【Fターム(参考)】