説明

血液成分の測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置

血液のヘマトクリット(Hct)値を高精度及び高信頼性で測定することにより血液成分量を正確に補正可能な血液成分の測定方法及びそれに用いるセンサを提供する。 血液成分測定用センサにおいて、第1の分析部及び第2の分析部を形成する。前記第1の分析部は、第1の電極系(11、12)と試薬層(14)を有
し、前記試薬層(14)は、前記血液成分の酸化還元酵素とメディエータを有する。前記第1の分析部でメディエータの存在下、血液成分を前記酸化還元酵素で酸化還元し、電圧印加した際の酸化還元電流を前記第1の電極(11、12)で検出して前記血液成分を測定する。前記第2の分析部は、作用極及び対極を有し、前記作用極には、メディエータが配置されておらず、対極上にはメディエータが配置されており、前記電極系に前記血液を導入し、電圧印加し、これにより流れる電流値を検出することで前記血液のHct値を測定する。このHct値により前記血液成分量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分の測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査や糖尿病患者の血糖値自己測定等において、血液成分測定用センサが従来から使用されている。血液成分測定用センサは、例えば、その表面に作用極および対極が形成された絶縁基板の上に、スペーサーを介してカバーが配置されている構成である。前記作用極および対極の上には、酸化還元酵素およびメディエータ(電子伝達体)等を含む試薬が配置されており、この部分が分析部となる。この分析部には、血液を導入するための流路の一端が連通しており、前記流路の他端は外部に向かって開口しており、ここが血液供給口となる。このようなセンサを用いた血液成分の分析(例えば、血糖値)は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、まず、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。そして、指先等をランセットで傷つけて出血させ、これに前記センサの血液供給口を接触させる。血液は、毛細管現象によりセンサの流路に吸い込まれ、これを通って分析部に導入され、ここで、前記試薬と接触する。そして、血液中の成分と、酸化還元酵素とが反応して酸化還元反応が起こり、これによりメディエータを介して電流が流れる。この電流を検出し、この電流値に基づき、前記測定装置において血液成分量を算出し、これを表示する。
【0003】
上記のようにして、センサを用いて血液成分を測定することができるが、その測定値は、ヘマトクリット(Hct)の影響を受ける場合があるので、正しい測定値を得るためには、Hct値を測定し、この値に基づき血液成分量の値を補正する必要がある。例えば、2つの作用極と、1つの参照電極とによるHct値の測定により、血液成分量を補正するセンサがある(特許文献1参照)。この他に、メディエータを用いてHct値を測定する方法もある(特許文献2参照)。しかしながら、従来の技術では、測定されるHct値の精度および信頼性に問題があり、十分かつ正確な補正ができなかった。
【特許文献1】特表2003−501627号公報
【特許文献2】特許第3369183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、Hct値を高精度および高信頼性で測定することにより血液成分量を十分かつ正確に補正可能な血液成分の測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の測定方法は、メディエータの存在下、血液中の血液成分を酸化還元酵素で酸化還元し、その際に生じる酸化電流若しくは還元電流を電極系で検出し、前記電流値に基づき前記血液成分量を算出する血液成分の測定方法であって、さらに、前記血液中のHct値を測定し、このHct値により前記血液成分値を補正する補正工程を含み、前記Hct値の測定は、作用極および対極を有する電極系を準備し、前記両電極のうち作用極上には、メディエータを配置せず、対極上にはメディエータを配置し、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記両電極間に流れる酸化電流若しくは還元電流を検出し、この電流値に基づきHct値を算出する方法である、血液成分の測定方法である。
【0006】
また、本発明のセンサは、血液成分を酸化還元し、その反応による酸化電流若しくは還元電流を電極で検出することにより前記血液成分を測定するためのセンサであって、第1の分析部および第2の分析部を有し、前記第1の分析部は、第1の電極系を有し、前記第2の分析部は、第2の電極系を有し、前記第1の電極系上には、少なくとも前記血液成分を基質とする酸化還元酵素とメディエータとが配置され、前記第1の分析部において、メディエータの存在下、前記血液成分を前記酸化還元酵素で酸化還元し、電圧印加した際に生じる酸化電流若しくは還元電流を前記第1の電極系で検出して前記血液成分を測定し、前記第2の分析部において、前記第2の電極系は、作用極および対極を有し、前記2つの電極のうち作用極上には、メディエータが配置されておらず、対極上にメディエータが配置されており、前記第2の電極系に前記血液を導入し、この状態で前記血液に電圧を印加し、これにより作用極と対極の間に流れる酸化電流もしくは還元電流の電流値を検出することにより前記血液のHct値を測定するセンサである。
【0007】
そして、本発明の測定装置は、血液成分の測定装置であって、前記本発明のセンサを保持する保持手段と、前記センサの第1の電極系に電圧を印加する手段と、前記第1の電極系に流れる酸化電流若しくは還元電流を検出する検出手段と、前記検出された電流値から前記血液成分量を算出する算出手段と、前記センサの第2の電極系に電圧を印加する印加手段と、前記センサの第2の電極系に流れる酸化電流若しくは還元電流を検出する手段と、前記検出された電流値から前記血液中のHct値を算出する算出手段とを有する測定装置である。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明では、Hct値の測定に特徴を有する。すわなち、Hct値を測定するにあたり、対極のみにメディエータを配置することにより、Hct値を反映した電流を、高精度および高信頼性で簡単に検出することが可能である。このため、本発明の測定方法、センサおよび測定装置では、この高精度および高信頼性で測定したHct値に基づき血液成分の量を補正するため、十分かつ正確な補正が可能となり、この結果、補正後の血液成分量の値も、高精度および高信頼性となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[図1]図1は、本発明のセンサの一例を示す分解斜視図である。
[図2]図2は、前記センサの断面図である。
[図3]図3は、前記センサの平面図である。
[図4]図4は、本発明のセンサのその他の例を示す分解斜視図である。
[図5]図5は、前記センサの断面図である。
[図6]図6は、前記センサの平面図である。
[図7]図7Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における試薬層の配置状態を示す図であり、図7Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図7Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図8]図8Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における試薬層の配置状態を示す図であり、図8Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図8Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図9]図9Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における試薬層の配置状態を示す図であり、図9Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図9Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図10]図10Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における試薬層の配置状態を示す図であり、図10Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図10Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図11]図11Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における試薬層の配置状態を示す図であり、図11Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図11Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図12]図12Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における試薬層の配置状態を示す図であり、図12Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図12Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図13]図13Aは、比較例のセンサにおける試薬層の配置状態を示す図であり、図13Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図13Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図14]図14Aは、その他の比較例のセンサにおける試薬層の配置状態を示す図であり、図14Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図14Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図15]図15Aは、さらにその他の比較例のセンサにおける試薬層の配置状態を示す図であり、図15Bは、前記例における電圧の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図15Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図16]図16Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(0.5V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図16Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図17]図17Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(1.0V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図17Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図18]図18Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(1.5V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図18Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図19]図19Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(2.0V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図19Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図20]図20Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(2.5V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図20Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図21]図21Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(3.0V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図21Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図22]図22Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(3.5V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図22Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図23]図23Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(4.0V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図23Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図24]図24Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(4.5V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図24Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図25]図25Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(5.0V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図25Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図26]図26Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(5.5V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図26Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図27]図27Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(6.0V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図27Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図28]図28Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(6.5V)の印加に対するHct測定の応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図28Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
[図29]図29は、本発明の測定装置の一例を示す斜視図である。
[図30]図30は、本発明のセンサのさらにその他の例を示す平面図である。
[図31]図31は、前記例の測定装置の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0010】
11、12、13、21、22、23、24、81、82、111、112、113、114 電極
14、25、83 試薬部(試薬層)
15、26、84 流路
16、27、85 空気抜孔
101、201、801 絶縁基板
102、202、802 スペーサー
103、203、803 カバー
121 センサ
122 検体供給口
130、123 測定装置
124 表示部
125 装着口
131 CPU
132 LCD
133 基準電圧源
134 A/D変換回路
135 電流/電圧変換回路
136 切換回路
137a、137b、137c、137d コネクタ
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0012】
本発明の血液成分の測定方法およびセンサにおいて、前記Hct値の測定若しくは前記第2の分析部におけるメディエータは、特に制限されず、例えば、フェリシアン化物、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン、フェロセン誘導体があげられる。この中で、フェリシアン化物が好ましく、より好ましくはフェリシアン化カリウムである。前記メディエータの配合量は、特に制限されず、1回の測定当り若しくはセンサ1個当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは1〜500mMであり、より好ましくは、10〜200mMである。
【0013】
本発明の血液成分の測定方法およびセンサにおいて、不純物の付着防止および酸化防止等の目的で、前記Hct値の測定および第2の分析部のメディエータを配置しない電極は、高分子材料により被覆されていることが好ましい。前記高分子材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリジン等のポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸重合体およびその塩、アガロースゲルおよびその誘導体、などがあげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。高分子材料による電極の被覆は特に制限されず、例えば、高分子材料溶液を準備し、これを電極表面に塗布し、ついで乾燥させて前記塗膜中の溶媒を除去すればよい。
【0014】
本発明の血液成分の測定方法およびセンサにおいて、前記Hct値の測定および第2の分析部の前記作用極と対極の間の印加電圧が、水が電気分解する電圧以上であるのが好ましく、より好ましくは1〜10Vの範囲、さらに好ましくは1〜6.5Vの範囲である。水が電気分解する電圧以上の電圧を印加することで、ヘマトクリットにのみ依存した電流をさらに高感度で測定することができ、血液中に存在する他の酸化還元物質の影響を受けず、個体差(個人差)に依存しない安定した電流が得られる。また、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒である。
【0015】
本発明の血液成分の測定方法およびセンサにおいて、前記Hct値の測定および第2の分析部における前記作用極と対極の間の最近接距離が、0.05mm以上であるのが好ましい。このように0.05mm以上の電極間距離があれば、測定値の信頼性が向上する。より好ましい電極間距離は、0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。
【0016】
本発明の血液成分の測定方法において、前記Hct値による補正は、予め作成したHct値と血液成分量との検量線および検量テーブルのいずれかに基づく補正であることが好ましい。
【0017】
本発明の血液成分の測定方法において、血液成分の測定とHct値の測定との測定順序は特に制限されないが、後述のように、電極を共有する場合は、まず血液成分を測定してから、その後、Hct値を測定することが好ましい。すなわち、血液成分測定における作用極が、Hct値測定では対極として使用される場合である。この電極には、最初は酸化状態のメディエータ(例えば、フェリシアン化カリウム)が配置されている。これが血液成分の測定によって酵素反応により一旦還元され、血液成分測定のために再び酸化される。このため、血液成分測定後の該電極界面には、フェリシアン化イオンが支配的に存在する。一方、対極での電解還元反応が律速過程になることを抑制するために、Hct測定における対極近傍には多量のフェリシアン化イオンが存在することが好ましい。よって、血液成分測定時の作用極を、その測定後にHct測定における対極として併用することが、好ましい。
【0018】
本発明の血液成分の測定方法において、前記血液成分測定における前記酸化電流若しくは還元電流を検出する電極系は、作用極および対極を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の血液成分の測定方法において、さらに、前記測定環境温度を測定し、これにより前記血液成分量を補正することが好ましい。酵素反応は、その環境温度に影響されるからである。この場合、前記温度による補正は、予め作成した検量線および検量テーブルのいずれかに基づく補正であることが好ましい。
【0020】
本発明の血液成分の測定方法およびセンサにおいて、測定対象の血液成分は、例えば、グルコース、乳酸、尿酸、ビリルビンおよびコレステロール等である。また、前記酸化還元酵素は、測定対象の血液成分に応じ適宜選択される。前記酸化還元酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼなどがある。前記酸化還元酵素の量は、例えば、センサ1個当り、若しくは1回の測定当り、例えば、0.01〜100Uであり、好ましくは、0.05〜10Uであり、より好ましくは、0.1〜5Uである。このなかでも、グルコースを測定対象にすることが好ましく、この場合の酸化還元酵素は、グルコースオキシダーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼが好ましい。
【0021】
本発明の血液成分測定用センサにおいて、前記第1の電極系は、作用極と対極を有することが好ましい。さらに、本発明のセンサにおいて、前記第1の電極系および第2の電極系において、前記第1の電極系に包含される、いずれかの電極、あるいは全ての電極が前記第2の電極系の対極を兼ねることが好ましい。より好ましくは、前記第1の電極系および第2の電極系において、前記第1の電極系の前記作用極のみが前記第2の電極系の対極を兼ねることである。
【0022】
本発明の血液成分測定用センサにおいて、前記第1の電極系上に配置されるメディエータは、特に制限されず、例えば、フェリシアン化物、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン、フェロセン誘導体があげられる。この中で、フェリシアン化物が好ましく、より好ましくはフェリシアン化カリウムである。前記メディエータの配合量は、特に制限されず、1回の測定当り若しくはセンサ1個当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは1〜500mMであり、より好ましくは、10〜200mMである。
【0023】
本発明の血液成分測定用センサは、さらに、絶縁基板を有し、この上に第1の分析部および第2の分析部と、前記各分析部に血液を導入するための流路とが形成され、前記流路の一端は、センサ外部に開口して血液供給口となっていることが好ましい。この場合、前記血液供給口は一つであり、前記流路は、その途中で分岐しており、分岐した各流路の端部は前記各分析部に連通している構成であってもよい。その他、前記流路の途中に第2の分析部が位置し、その後方に第1の分析部が位置している構成であってもよい。
【0024】
本発明の血液成分測定用センサは、さらに、スペーサーおよびカバーを有し、前記絶縁基板の上に、前記スペーサーを介して前記カバーが配置されている構成が好ましい。
【0025】
本発明の血液成分測定用センサにおいて、第1の電極系上に、さらに、高分子材料、酵素安定化剤および結晶均質化剤が配置されていることが好ましい。
【0026】
前記高分子材料は、電極表面への不純物の付着や電極表面の酸化を防止し、電極表面を保護する。前記高分子材料としては、例えば、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリジン等のポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸重合体およびその塩、アガロースゲルおよびその誘導体、などがあげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。この中で、好ましいのは、CMCである。前記高分子材料の割合は、試薬部を作製するための試薬液全体に対し、例えば、0.001〜10重量%であり、好ましくは、0.005〜5重量%であり、より好ましくは0.01〜2重量%である。
【0027】
前記酵素安定化剤としては、例えば、糖アルコールがあげられる。前記糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、アラビニトール、グリセロール、リビトール、ガラクチトール、セドヘプチトール、ペルセイトール、ボレミトール、スチラシトール、ポリガリトール、イジトール、タリトール、アリトール、イシリトール、還元澱粉糖化物、イシリトールなどの鎖状の多価アルコールや環式糖アルコールがあげられる。また、これらの糖アルコールの立体異性体、置換体または誘導体であってもよい。これらの糖アルコールは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。これらの中で、好ましいのは、マルチトールである。前記酵素安定化剤の配合量は、1回の測定当り若しくは1センサ当り、例えば、0.1〜500mMの範囲であり、好ましくは、0.5〜100mMの範囲であり、より好ましくは1〜50mMの範囲である。
【0028】
前記結晶均質化剤は、試薬部の結晶状態を均質にするためのものであり、例えば、アミノ酸があげられる。前記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、サルコシン、ベタイン、タウリン、これらの塩、置換体および誘導体があげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。これらのなかで、グリシン、セリン、プロリン、トレオニン、リシン、タウリンが好ましく、より好ましくは、タウリンである。前記結晶均質化剤の配合量は、1回の測定当り若しくは1センサ当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは、10〜500mMであり、より好ましくは20〜200mMである。
【0029】
本発明の血液成分測定用センサは、さらに、血液検知電極を有し、この血液検知電極は、前記血液供給口から前記各分析部の少なくとも一つよりも後方に位置し、この血液検知電極により、前記各分析部の少なくとも一つに確実に血液が導入されたことが検知可能であることが好ましい。より好ましくは、前記血液検知電極が、前記各分析部の最後方に位置することである。
【0030】
つぎに、本発明の測定装置において、さらに、前記Hct値により、前記血液成分量を補正する補正手段を有することが好ましい。また、本発明の測定装置において、前記第2の電極系に印加される電圧が、水が電気分解する値以上の電圧であることが好ましく、より好ましくは1〜10Vの範囲であり、さらに好ましくは1〜6.5Vの範囲である。
【0031】
図29の斜視図に、本発明のセンサを装着した状態の本発明の測定装置の一例を示す。図示のように、この測定装置123は、その一端にセンサの装着口125を有し、ここにセンサ121を装着して保持する。なお、122は、センサ121の検体供給口である。また、この測定装置123の略中央には表示部124を有し、ここに測定結果を表示する。
【0032】
本発明の測定装置において、コネクタ、切換回路、電流/電圧変換回路、A/D変換回路、基準電圧源、CPUおよび液晶表示部(LCD)を有することが好ましい。これらによって、本発明のセンサにおける第1の電極系および第2の電極系に対し、電圧を印加することができ、また、前記両電極系において流れる電流値を検出し、これから血液成分量若しくはHct値を算出し、さらに、前記Hct値に基づき前記血液成分量を補正し、この補正値を表示することができる。なお、本発明の測定装置の回路構成は、例えば、後述の例がある。
【0033】
つぎに、本発明の血液成分測定用センサの実施例について、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0034】
図1、図2および図3に、本発明の血液成分測定用センサの一例を示す。図1は、前記センサの分解斜視図であり、図2は断面図であり、図3は平面図であり、前記三図において、同一部分には同一符号を付している。
【0035】
図示のように、このセンサは、絶縁基板101の上に、3個の電極11、12および13が形成されている。これらの電極は、作用極と対極に切り換え可能である。電極13の表面は、CMC等の高分子材料で被覆されている。電極11および12が形成する電極部には試薬層14が配置されている。試薬層14は、グルコースデヒドロゲナーゼ等の酸化還元酵素、メディエータを含み、任意成分として、高分子材料、酵素安定化剤、結晶均質化剤を含む。これらの試薬の種類や配合割合は、前述のとおりである。前記絶縁基板101の上には、一方の端部(図において右側端部)を残してスペーサー102を介しカバー103が配置されている。このセンサには、電極13および電極11、12に血液を導入するための流路15が形成されている。この流路15は、途中から分岐したT字形状であり、各分岐端は、前記各電極部に連通しており、また前記流路の先端は、センサの他方の端部(図において左側端部)まで延びており、外部に対し開口して、血液供給口となっている。前記の3個の電極11、12および13は、それぞれリードと連結し、これらのリードは、前記一方の端部側に延びており、リードの先端はカバーに覆われずに露出している。前記カバー103の流路15の分岐端に対応する部分には、2つの空気抜孔16が形成されている。
【0036】
本発明において、前記絶縁基板の材質は特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、モノマーキャストナイロン(MC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ガラス等が使用でき、このなかで、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)が好ましく、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。絶縁基板の大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅2〜50mm、厚み0.05〜2mmであり、好ましくは、全長7〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.1〜1mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.1〜0.6mmである。
【0037】
絶縁基板上の電極およびリードは、例えば、金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法あるいは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザーにより特定の電極パターンに加工することで形成できる。レーザーとしては、例えば、YAGレーザー、COレーザー、エキシマレーザー等が使用できる。なお、電極パターンについては、実施例等に開示されたもののみには限定されず、本発明における効果を実現できるものであれば、電極パターンに制限はない。電極13の表面の被覆は、例えば、高分子材料の溶液を調製し、これを前記電極表面に滴下若しくは塗布し、ついで乾燥させることにより実施できる。乾燥は、例えば、自然乾燥、風乾、熱風乾燥、加熱乾燥などがある。
【0038】
前記試薬部14は、例えば、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、PQQ−GDHを0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM添加して溶解させて試薬溶液を調製し、これを、前記基板の電極11および12の上に滴下し、乾燥させることで形成できる。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよいが、高温過ぎると酵素が失活するおそれがあるから、50℃前後の温風が好ましい。
【0039】
つぎに、本発明において、スペーサーの材質は、特に制限されず、例えば、前記絶縁基板と同様の材料が使用できる。また、スペーサーの大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅2〜50mm、厚み0.01〜1mmであり、好ましくは、全長7〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.5mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.05〜0.25mmである。スペーサーには、血液導入のための流路となるT字形状の切り欠き部が形成されているが、その大きさは、例えば、血液供給口から分岐部までの長さ0.5〜20mm、分岐部から分岐端までの長さ1〜25mm、幅0.1〜5mm、好ましくは、血液供給口から分岐部までの長さ1〜10mm、分岐部から分岐端までの長さ1.5〜10mm、幅0.2〜3mm、より好ましくは、血液供給口から分岐部までの長さ1〜5mm、分岐部から分岐端までの長さ1.5〜5mm、幅0.5〜2mmである。この切り欠き部は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、スペーサーの形成時に、切り欠き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。
【0040】
つぎに、本発明において、カバーの材質は、特に制限されず、例えば、前記絶縁基板と同様の材料が使用できる。カバーの試料供給路の天井部に相当する部分は、親水性処理することが、更に好ましい。親水性処理としては、例えば、界面活性剤を塗布する方法、プラズマ処理などによりカバー表面に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入する方法がある。カバーの大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.01〜0.5mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.25mmであり、より好ましくは、全長15〜30mm、幅5〜10mm、厚み0.05〜0.2mmである。カバーには、空気抜孔が形成されていることが好ましく、形状は、例えば、円形、楕円形、多角形などであり、その大きさは、例えば、最大直径0.01〜10mm、好ましくは、最大直径0.025〜5mm、より好ましくは、最大直径0.025〜2mmである。また、空気抜孔を複数個設けてもかまわない。この空気抜孔は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、カバーの形成時に、空気抜き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。つぎに、このセンサは、絶縁基板、スペーサーおよびカバーをこの順序で積層し、一体化することにより製造できる。一体化には、前記3つの部材を接着剤で貼り付けたり、若しくは熱融着してもよい。前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、また熱硬化性接着剤(ホットメルト接着剤等)、UV硬化性接着剤等が使用できる。
【0041】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。すなわち、まず、専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。そして、出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により、血液をセンサ内部に導入させる。そして、このセンサによる分析は、つぎのステップにより行われる。
【0042】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
電極11、電極13の両電極間に電圧を印加し、血液の導入に伴う電流値の変化により血液の導入を検知する。血液の導入を確認したら、以降のステップを開始する。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1Vである。
【0043】
(ステップ2:グルコースの測定)
血液中のグルコースとグルコース酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、電極11を作用極、電極12を対極とし、前記両電極に電圧を印加し、酵素反応により電極11の上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは0.5〜30秒、より好ましくは1〜10秒である。ステップ2での印加電圧および印加時間は、例えば、0.05〜1V、好ましくは0.1〜0.8V、より好ましくは0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは0.1〜10秒、より好ましくは1〜5秒である。
【0044】
(ステップ3:Hct値の測定)
電極13を作用極、電極11を対極として、前記両電極に電圧を印加することにより、血液成分の電解酸化反応に基づくHct値に依存する電流が検出することができる。なお、検出した電流からHct値への換算は、予め検量線または検量線テーブルを求めておくことにより行うことができる。この補正では、予め作成された電流とHct値との検量線から求めたHct値を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧および印加時間は、例えば、1〜10V、好ましくは1〜6.5V、より好ましくは2〜3Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒である。このステップにおいて、作用極である電極13にはメディエータが配置されず、かつ電極13と電極11との間は一定の間隙があり、この間隙にはメディエータなど試薬が配置されておらず血液のみ存在するので、試薬の影響を受けることなくHct値に依存した酸化電流が検出できる。このステップ3は、ステップ2の終了後に実施されることが好ましい。また、対極は、この例では電極11としたが、電極12を対極としても測定は可能である。電極11および12の双方を対極としてもよい。なお、電極13の表面に高分子材料等による被覆をしない場合においても、測定は可能である。
【0045】
(ステップ4:血液成分の補正)
ステップ3で検出したHct値により、ステップ2で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。なお、上述のように一旦、Hct値を求めてからグルコース量を補正するのではなく、ステップ3にて検出したHct値に依存した電流をそのまま用いてグルコース量を補正してもよい。
【実施例2】
【0046】
図4、図5および図6に、本発明の血液成分測定用センサのその他の例を示す。図4は、前記センサの分解斜視図であり、図5は断面図であり、図6は平面図であり、前記三図において、同一部分には同一符号を付している。
【0047】
図示のように、このセンサは、絶縁基板201の上に、4個の電極21、22、23および24が形成されている。これらの電極は、作用極と対極に切り換え可能である。電極24の表面は、前述のようにして高分子材料で被覆されている。電極21、22および23が形成する電極部には試薬層25が配置されている。試薬層25は、グルコースデヒドロゲナーゼ等の酸化還元酵素、メディエータを含み、任意成分として、高分子材料、酵素安定化剤、結晶均質化剤を含む。これらの試薬の種類や配合割合は、前述のとおりである。前記絶縁基板201の上には、一方の端部(図において右側端部)を残してスペーサー202を介しカバー203が配置されている。このセンサには、前記試薬部25に血液を導入するための流路26が形成されている。この流路26は、一直線(I字形状)であり、また前記流路の先端は、センサの他方の端部(図において左側端部)まで延びており、外部に対し開口して、血液供給口となっている。前記4個の電極は、前記流路に直列に並んでおり、血液供給口側から、電極22は最も後方に位置している。前記の4個の電極21、22、23および24は、それぞれリードと連結し、これらのリードは、前記一方の端部側に延びており、リードの先端はカバーに覆われずに露出している。前記カバー203の流路26の後方に対応する部分には、空気抜孔27が形成されている。
【0048】
この例において、前記絶縁基板の材質および大きさ等は、特に制限されず、実施例1と同様である。また、電極、リード、高分子材料による電極表面の被覆および試薬部も実施例1と同様である。そして、スペーサーの材質、大きさおよび加工方法も実施例1と同様である。この例のスペーサーには、血液導入のための流路となるI字形状の切り欠き部が形成されているが、その大きさは、例えば、全長0.5〜50mm、幅0.1〜5mm、好ましくは、全長1〜10mm、幅0.2〜3mm、より好ましくは、全長1〜5mm、幅0.5〜2mmである。この切り欠き部は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、スペーサーの形成時に、切り欠き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。カバーの材質、大きさ、親水性処理および空気抜き孔も、実施例1と同様である。そして、この例のセンサの製造方法も実施例1と同様である。
【0049】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。すなわち、まず、専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。そして、出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により、血液をセンサ内部に導入させる。そして、このセンサによる分析は、つぎのステップにより行われる。
【0050】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
電極24、電極22の両電極間に電圧を印加することにより、血液が、流路の端まで導入されたかを検知する。血液が流路の端まで導入されたことを確認したら、以降のステップを開始する。また、流路の端まで導入されない場合は、検体量不足となり、測定装置はエラーを表示することになる。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1Vである。なおこの場合、電極22とそれ以外のいずれかの電極(21、23、24)間における電流変化を検知することで、検体の検知が可能である。
【0051】
(ステップ2:グルコースの測定)
血液中のグルコースとグルコース酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、電極21を作用極、電極23を対極として、前記両電極に電圧を印加し、酵素反応により電極21の上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは0.5〜30秒、より好ましくは1〜10秒である。ステップ2での印加電圧および印加時間は、例えば、0.05〜1V、好ましくは0.1〜0.8V、より好ましくは0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは0.1〜10秒、より好ましくは1〜5秒である。
【0052】
(ステップ3:Hct値の測定)
電極24を作用極、電極21を対極として、前記両電極に電圧を印加することにより、Hct値に依存する電流が検出でき、これに基づきHct値を測定する。このHct値は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電流とHct値との検量線から求めたHct値を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧および印加時間は、例えば、1〜10V、好ましくは1〜6.5V、より好ましくは2〜3Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒である。このステップにおいて、作用極である電極24にはメディエータが配置されておらず、かつ電極24と電極21との間は一定の間隙があり、この間隙にはメディエータなど試薬が配置されておらず血液のみ存在するので、試薬の影響を受けることなくHct値に依存した酸化電流が検出できる。このステップ3は、ステップ2の終了後に実施されることが好ましい。なお、この例では、電極21単独で対極としたが、本発明はこれには限定されず、電極23単独、電極22単独、電極21と電極22の組み合わせ、電極21と電極23の組み合わせ、電極22と電極23の組み合わせ、電極21と電極22と電極23の組み合わせを、それぞれ対極としてもよい。また、電極13の表面に高分子材料等による被覆をしない場合においても、測定は可能である。
【0053】
(ステップ4:血液成分の補正)
ステップ3で検出したHct値により、ステップ2で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。
【実施例3】
【0054】
本実施例では、6種類のセンサ(3−1〜3−6)を作製し、それぞれのセンサにおいて、Hct測定における作用極もしくは対極に対するメディエータを含む試薬層の配置を変えて、応答電流および感度差を測定した。また、併せて、比較例1として、3種類のセンサ(3−7〜3−9)を作製し、それぞれのセンサにおいて、Hct測定における作用極もしくは対極に対するメディエータを含む試薬層の配置を変えて、応答電流および感度差を測定した。なお、検体(血液)およびグルコースの測定、ならびに血液成分の補正は、実施例2と同様にして行った。前記各センサは、試薬層の配置以外は、基本的には実施例2と同様にして作製した。なお、試薬層は、フェリシアン化カリウム(量:60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を、電極上に滴下した後、乾燥させて作製した。作用極および対極の間の距離は、0.1mm以上とした。また、Hct値を、25、45および65に調整した、3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料について、前記各センサにより、印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件で、前記各センサの前記両電極に流れる電流を測定し、Hct値の測定における応答電流値および感度差の測定をおこなった。以下、前記各センサの試薬層の配置パターンと、前記測定結果を、図7〜図15に示す。なお、図7〜図15において、図Aは、試薬層25の配置パターンを示す図であり、図Bは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図Cは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフであり、図4〜6と同一部分には同一符号を付している。
【0055】
(3−1)
図7Aに示すように、この例のセンサでは、試薬層25を、Hct測定用の対極21からはみ出るように配置しており、対極21表面上と、前記血液成分測定用の両電極間の対極側の一部とに、試薬層25が存在している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図7Bおよび図7Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確かつ良好に検出することができた。
【0056】
(3−2)
図8Aに示すように、この例のセンサでは、試薬層25を、対極21の表面上のみに配置している。このセンサの作用極24および対極21に流れる電流を測定した結果を、図8Bおよび図8Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確かつ良好に検出することができた。
【0057】
(3−3)
図9Aに示すように、この例のセンサでは、試薬層25を、対極21からはみ出るように配置しており、対極21表面上と、前記両電極間とに、試薬層25が存在している。なお、作用極24上には酸化還元物質は存在していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図9Bおよび図9Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0058】
(3−4)
図10Aに示すように、この例のセンサでは、Hct測定用の作用極24と対極21の配置を入れ替えており、試薬層25は、対極21表面上と、前記血液成分測定用の両電極間の対極側の一部に形成している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図10Bおよび図10Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができたが、上記(3−1)、(3−2)、(3−3)の例に比べると、感度差が若干小さかった。
【0059】
(3−5)
図11Aに示すように、この例のセンサでは、試薬層25を、対極21からはみ出るように配置しており、対極21表面の一部上と、前記両電極間の一部とに、試薬層25が存在している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図11Bおよび図11Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、電圧を印加した直後の1秒間(図中3〜4秒の間)においては、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0060】
(3−6)
図12Aに示すように、この例のセンサでは、試薬層25を、対極21からはみ出るように配置しており、対極21表面の一部に、試薬層25が存在している。なお、前記両電極間には、酸化還元物質は存在していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図12Bおよび図12Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、電圧を印加した直後の1秒間(図中3〜4秒の間)においては、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0061】
(3−7)
図13Aに示すように、この比較例のセンサでは、試薬層25を、作用極24、対極21および前記両電極間の全てに配置している。このセンサの前記両電極間に流れる電流を測定した結果を、図13Bおよび図13Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できなかった。
【0062】
(3−8)
図14Aに示すように、この比較例のセンサでは、試薬層25を、作用極24および対極21のそれぞれ配置しており、前記両電極間の一部にも試薬層25が位置している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図14Bおよび図14Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できなかった。
【0063】
(3−9)
図15Aに示すように、この比較例のセンサでは、試薬層25を配置していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図15Bおよび図15Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を検出できなかった。
【実施例4】
【0064】
本実施例では、印加電圧を0.5〜6.5Vの範囲で変化させて、Hct測定における応答電流および感度差を測定した。検体(血液)およびグルコースの測定、ならびに血液成分の補正は、実施例2と同様にして行った。この測定に使用したセンサは、実施例3と同様にして作製した。なお、試薬層25は、対極21上に配置し、作用極24には配置しなかった(図7A参照)。また、応答電流値および感度差の測定も、実施例3と同様にして行った。この測定結果を、図16〜図28の各グラフに示す。なお、図16〜図28において、図Aは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図Bは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【0065】
図16に示すように、0.5Vの印加電圧であってもHct値を反映した応答電流を検出できたが、1〜6.5Vで印加すると、図17〜図28に示すように、さら明確に応答電流が検出可能であり、最も好ましいのは、図17〜図21に示すように、1〜3Vで印加した場合であった。なお、5V以上で印加すると、時間の経過により波形が乱れるが、印加直後から短い時間内であれば、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できる。なお、本実施例では、一定の条件下で印加電圧を変化させてHct値に基づく電流を検出したが、本発明は、これに限定されず、印加電圧が本実施例で示した範囲に無くても、電極間距離、酸化還元物質の種類や量等のその他の条件を適宜設定することで、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することが可能であり、これに基づき血液成分量を補正できる。
【実施例5】
【0066】
図30の平面図に、本発明のセンサのさらにその他の例を示す。このセンサは、前記実施例1〜4で示したセンサの電極パターンとは、異なる電極パターンを有する。図示のように、このセンサは、絶縁基板の上において、血液の流れの上流側に、Hct測定用の第2の分析部を構成する2つの電極111、112を有し、さらに、下流側に、血液成分測定用の第1の分析部を構成する2つの電極113、114を有する。このセンサにおいて、第1の分析部と第2の分析部のそれぞれに試薬層(図示せず)が配置される。第1の分析部に配置される試薬層は、グルコースデヒドロゲナーゼ等の酸化還元酵素、メディエータを含み、任意成分として、高分子材料、酵素安定化剤、結晶均質化剤を含み、その配置は特に制限されない。一方、第2の分析部に配置される試薬層は、メディエータを含み、任意成分として高分子材料を含む。第2の分析部において、試薬層は、対極のみに配置される。これら以外については、実施例1もしくは2に例示したセンサと同様である。
【0067】
つぎに、図31に本発明の測定装置の構成の一例を示す。この測定装置は、例えば、実施例2で示したセンサが装着可能である。図示のように、この測定装置130は、4つのコネクタ137a〜137d、切換回路136、電流/電圧変換回路135、A/D変換回路134、基準電圧源133、CPU131、および液晶表示装置(LCD)132を主要構成要素としている。なお、基準電圧源133は、グランドとしてもよい。センサの各電極21、22、23、24は、コネクタ137a〜137d、および切換回路136を介して電流/電圧変換回路135と基準電圧源133とに接続されている。電流/電圧変換回路135は、A/D変換回路134を介してCPU131に接続されている。
【0068】
この測定装置において、血液成分量の測定は、例えば、次のようにして実施される。
【0069】
まずCPU131の指令により、切換回路136により、血液成分量を測定するための作用極となる電極21がコネクタ137aを介して電流/電圧変換回路135に接続され、血液の導入を検地するための検知極となる電極22がコネクタ137bを介して基準電圧源133に接続される。CPU131の指令により電流/電圧変換回路135および基準電圧源133から、電極21および電極22間に一定の電圧が印加され、血液が導入されると、電極21、22間に電流が流れる。この電流は、電流/電圧変換回路135によって電圧に変換され、その電圧値は、A/D変換回路134によってデジタル値に変換されて、CPU131に出力される。CPU131はそのデジタル値をもとに血液が導入されたことを検出する。
【0070】
血液が導入されたことを検知後、血液成分量の測定がおこなわれる。血液成分量の測定は次のようにして実施される。まずCPU131の指令により、切換回路136により血液成分量の測定のための作用極となる電極21がコネクタ137aを介して電流/電圧変換回路135に接続され、血液成分量の測定のための対極となる電極23がコネクタ137cを介して基準電圧源133に接続される。
【0071】
なお、例えば血液中グルコースとその酸化還元酵素とを一定時間反応させる間は、電流/電圧変換回路135および基準電圧源133をオフしておき、一定時間の経過後に、CPU131の指令により、上記電極21と23間に一定の電圧を印加する。電極21、23間に電流が流れ、この電流は、電流/電圧変換回路135によって電圧に変換され、その電圧値は、A/D変換回路134によって、デジタル値に変換されてCPU131に出力される。CPU131はそのデジタル値をもとに血液成分量に換算する。
【0072】
血液成分量の測定後、Hct値の測定がおこなわれる。Hct値の測定は例えば次のようにしておこなわれる。まず、CPU131の指令により、切換回路136によりHct値の測定のための作用極となる電極24がコネクタ137dを介して電流/電圧変換回路135に接続され、Hct値の測定のための対極となる電極21が基準電圧源133に接続される。
【0073】
CPU131の指令により、電流/電圧変換回路135および基準電圧源133から電極24と21間に一定の電圧が印加される。電極24と21間に流れる電流は、電流/電圧変換回路135によって電圧に変換され、その電圧値は、A/D変換回路134によって、デジタル値に変換されてCPU131に出力される。CPU131はそのデジタル値をもとにHct値に換算する。
【0074】
上記の測定で得られたHct値と血液成分量を用い、予め求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、血液成分量をHct値で補正し、その補正された結果をLCD132に表示する。
【0075】
以上、グルコースを測定する実施例を示し本発明を説明したが、本発明は、それに限定されるものではない。既に述べたが、本発明は、乳酸、コレステロールのような他の血液成分の測定にも有用である。また、本発明の測定方法およびセンサは、センサに導入される試料の種類に応じた電流応答が得られることから、その結果に基づき、試料の種類を判別することもできる。したがって、本発明の測定方法およびセンサは、例えば、センサ較正用の標準液、血漿、および血液の判別も容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明の血液成分の測定方法およびこれに用いるセンサならびに測定装置は、Hct値を電気化学的に高精度および高信頼度で、しかも簡単に測定することができ、これに基づき血液成分量を補正することができる。したがって、本発明の測定方法およびセンサならびに測定装置は、生物学、生化学および医学等の血液成分を測定するあらゆる分野に好ましく使用でき、特に臨床検査の分野に好適である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディエータの存在下、血液中の血液成分を酸化還元酵素で酸化還元し、その際に生じる酸化電流若しくは還元電流を電極系で検出し、前記電流値に基づき前記血液成分量を算出する血液成分の測定方法であって、さらに、前記血液中のHct値を測定し、このHct値により前記血液成分値を補正する補正工程を含み、前記Hct値の測定は、作用極および対極を有する電極系を準備し、前記両電極のうち作用極上には、メディエータを配置せず、対極上にはメディエータを配置し、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記両電極間に流れる酸化電流若しくは還元電流を検出し、この電流値に基づきHct値を算出する方法である、血液成分の測定方法。
【請求項2】
前記Hct値の測定におけるメディエータが、フェリシアン化物である請求項1記載の測定方法。
【請求項3】
前記フェリシアン化物が、フェリシアン化カリウムである請求項2記載の測定方法。
【請求項4】
前記Hct値の測定において、前記メディエータを配置しない作用極が、高分子材料で被覆されている請求項1記載の測定方法。
【請求項5】
前記高分子材料が、カルボキシメチルセルロースである請求項4記載の測定方法。
【請求項6】
前記Hct値の測定における前記印加電圧が、水が電気分解する電圧以上である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記Hct値の測定における前記印加電圧が、1〜10Vである請求項1記載の測定方法。
【請求項8】
前記Hct値の測定における前記印加電圧が、1〜6.5Vである請求項1記載の測定方法。
【請求項9】
前記Hct値による補正は、予め作成したHct値と血液成分量との検量線および検量テーブルのいずれかに基づく補正である請求項1記載の測定方法。
【請求項10】
前記血液成分の量を測定した後、Hct値を測定する請求項1記載の測定方法。
【請求項11】
前記血液成分の酸化電流もしくは還元電流を検出する電極系が、作用極および対極を含む請求項1記載の測定方法。
【請求項12】
さらに、測定環境温度を測定し、これにより前記血液成分量を補正する請求項1記載の測定方法。
【請求項13】
前記温度による補正が、予め作成した血液の温度と血液成分量との検量線および検量テーブルのいずれかに基づく補正である請求項1記載の測定方法。
【請求項14】
測定対象の血液成分が、グルコース、乳酸、尿酸、ビリルビンおよびコレステロールからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1記載の測定方法。
【請求項15】
測定対象の血液成分がグルコースであり、前記酸化還元酵素が、グルコースオキシターゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼの少なくとも一方である請求項1記載の測定方法。
【請求項16】
血液成分を酸化還元し、その反応による酸化電流若しくは還元電流を電極で検出することにより前記血液成分を測定するためのセンサであって、第1の分析部および第2の分析部を有し、前記第1の分析部は、第1の電極系を有し、前記第2の分析部は、第2の電極系を有し、前記第1の電極系上には、少なくとも前記血液成分を基質とする酸化還元酵素とメディエータとが配置され、前記第1の分析部において、メディエータの存在下、前記血液成分を前記酸化還元酵素で酸化還元し、電圧印加した際に生じる酸化電流若しくは還元電流を前記第1の電極系で検出して前記血液成分を測定し、前記第2の分析部において、前記第2の電極系は、作用極および対極を有し、前記2つの電極のうち作用極上には、メディエータが配置されておらず、対極上にメディエータが配置されており、前記第2の電極系に前記血液を導入し、この状態で前記血液に電圧を印加し、これにより作用極と対極の間に流れる酸化電流もしくは還元電流の電流値を検出することにより前記血液のHct値を測定するセンサ。
【請求項17】
測定されたHct値に基づき血液成分の量が補正可能な請求項16記載のセンサ。
【請求項18】
前記第2の電極系における作用極と対極とが、同一の絶縁基材上に、互いに間隔をあけて平面的に配置されている請求項16記載のセンサ。
【請求項19】
前記センサは、血液を導入するための流路を有しており、前記流路の一端から供給された血液の流れの上流側に前記第2の分析部が配置され、下流側に第1の分析部が配置されている請求項16記載のセンサ。
【請求項20】
前記センサは血液を導入するための流路を有しており、前記第2の電極系において、前記流路の一端から供給された血液の流れの上流側に作用極が配置され、下流側に対極が配置されている請求項16記載のセンサ。
【請求項21】
前記第2の電極系のメディエータが、フェリシアン化物である請求項16記載のセンサ。
【請求項22】
前記フェリシアン化物が、フェリシアン化カリウムである請求項21記載のセンサ。
【請求項23】
前記第2の電極系において、メディエータが配置されていない前記作用極が、高分子材料で被覆されている請求項16記載のセンサ。
【請求項24】
前記高分子材料が、カルボキシメチルセルロースである請求項23記載のセンサ。
【請求項25】
前記第2の電極系における前記印加電圧が、水が電気分解する電圧以上である請求項16記載のセンサ。
【請求項26】
前記第2の電極系における前記印加電圧が、1〜10Vである請求項16記載のセンサ。
【請求項27】
前記第2の電極系における前記印加電圧が、1〜6.5Vである請求項16記載のセンサ。
【請求項28】
前記第1の電極系が、作用極と対極を有する請求項16記載のセンサ。
【請求項29】
前記第1の電極系および第2の電極系において、前記第1の電極系に包含されるいずれかの電極もしくは全ての電極が、前記第2の電極系の対極を兼ねる請求項28記載のセンサ。
【請求項30】
前記第1の電極系および第2の電極系において、前記第1の電極系の前記作用極のみが前記第2の電極系の対極を兼ねる請求項28記載のセンサ。
【請求項31】
前記第1の電極系上に配置されたメディエータが、フェリシアン化物である請求項16記載のセンサ。
【請求項32】
前記フェリシアン化物が、フェリシアン化カリウムである請求項31記載のセンサ。
【請求項33】
さらに、絶縁基板を有し、この上に第1の分析部および第2の分析部と、前記各分析部に血液を導入するための流路とが形成され、前記流路の一端は、センサ外部に開口して血液供給口となっている請求項16記載のセンサ。
【請求項34】
前記血液供給口は一つであり、前記流路は、その途中で分岐しており、分岐した各流路の端部は前記各分析部に連通している請求項33記載のセンサ。
【請求項35】
前記流路の途中に第2の分析部が位置し、その後方に第1の分析部が位置している請求項33記載のセンサ。
【請求項36】
さらに、スペーサーおよびカバーを有し、前記絶縁基板の上に、前記スペーサーを介して前記カバーが配置されている請求項33記載のセンサ。
【請求項37】
測定対象の血液成分が、グルコース、乳酸、尿酸、ビリルビンおよびコレステロールからなる群から選択される少なくとも一つである請求項16記載のセンサ。
【請求項38】
測定対象の血液成分がグルコースであり、前記酸化還元酵素が、グルコースオキシターゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼの少なくとも一方である請求項16記載のセンサ。
【請求項39】
第1の電極系上に、さらに高分子材料、酵素安定化剤および結晶均質化剤が配置されている請求項16記載のセンサ。
【請求項40】
さらに、血液検知電極を有し、この血液検知電極は、前記血液供給口から前記各分析部の少なくとも一つよりも後方に位置し、この血液検知電極により、前記各分析部の少なくとも一つに血液が導入されたことを検知可能である請求項16記載のセンサ。
【請求項41】
血液成分の測定装置であって、請求項16記載のセンサを保持する保持手段と、前記センサの第1の電極系に電圧を印加する手段と、前記第1の電極系に流れる酸化電流若しくは還元電流を検出する検出手段と、前記検出された電流値から前記血液成分量を算出する算出手段と、前記センサの第2の電極系に電圧を印加する印加手段と、前記センサの第2の電極系に流れる酸化電流若しくは還元電流を検出する手段と、前記検出された電流値から前記血液中のHct値を算出する算出手段とを有する測定装置。
【請求項42】
前記Hct値により、前記血液成分量を補正する補正手段を有する請求項41記載の装置。
【請求項43】
前記第2の電極系に印加される電圧が、水が電気分解する電圧以上の電圧である請求項41記載の測定装置。

【国際公開番号】WO2005/054840
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515983(P2005−515983)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018020
【国際出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】