説明

血液粘性度測定装置

【課題】 被験者に2個のカフを装着するだけで自動的に血液の粘性度が測定できる簡易な測定装置を提供する。
【解決手段】 被験者の身体に取付けて血圧の測定を行う第1カフ10と、前記第1カフ10と所定の距離を有して取付けた第2カフ20を構成し、前記第1カフ10と第2カフ20に前記距離の測定手段15、25を構成すると共に、前記第1カフ10と第2カフ20によって測定された血圧に関するデータに基づいて血液の粘性度を計算する演算手段50を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液の粘性度を簡易に測定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一度の測定で血圧および血液粘性度を同時に算出する装置が提案されていた。
例えば特許文献1に示す発明は、外部静水圧と血流量とから血圧および血液粘度を測定する装置である。
この発明によれば、空気ポンプ2を制御して、指Fに巻かれたカフ1により2段階のカフ圧を与え、各カフ圧における血流量を血流量センサ5により検出する。カフ圧は圧力センサ4により検出される。
【特許文献1】特開2005−218501
【0003】
そして、コントローラ7の記憶部7bに、血圧および血液粘性度を測定演算プログラムが格納され、コントローラ7の演算部7aによって、検出された2段階のカフ圧およびそのときの血流量を用いて、血圧・血液粘度演算プログラムにより血圧および血液粘性度を算出するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記血圧・血液粘度測定装置によれば、被験者の最高・最低血圧値を予め別の血圧計で測定しておき、その測定結果を被験者の初期データとして記憶させる必要があるため操作が煩雑であると共に、血流量の測定は一般に困難であるという問題もあった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、被験者に2個のカフを所定の距離をおいて装着するだけで自動的に血液の粘性度が測定できる簡易な測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、被験者の身体に取付けて血圧の測定を行う第1カフと、前記第1カフと所定の距離を有して取付けた第2カフを構成し、前記第1カフと第2カフに前記距離の測定手段を構成すると共に、前記第1カフと第2カフによって測定された血圧に関するデータに基づいて血液の粘性度を計算する演算手段を構成した血液粘性度測定装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記の如き構成であるため、被験者に装着した第1カフと第2カフの距離の測定値と、2個のカフから得られる血圧に関するデータから自動的に血液の粘性度を計算できるため、操作が簡易で正確な血液粘性度が測定できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態は、被験者の腕の上腕部に取付けて血圧の測定を行う第1カフと、前記第1カフと所定の距離を有して手首に取付けて血圧の測定を行う第2カフを構成すると共に、前記第1カフと第2カフに前記距離を自動的に測定できる赤外線の測定手段を構成する。そしてこの測定された距離と、前記第1カフと第2カフによって測定された血圧の差等に基づいて血液の粘性度を計算する演算手段を構成した血液粘性度測定装置である。
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。
図1は使用態様を示す説明図、図2は同一部拡大図、図3は回路構成例を示すブロック図及び図4は測定手順を示すフローチャートである。
【0010】
本実施形態は、図1に示すように卓上に置いて使用する血液粘性度測定装置の操作部30と、この操作部30とチューブ11を介して連結された第1カフ10と、チューブ21を介して連結された第2カフ20からなる。
【0011】
前記第1カフ10は、卓上に置いて腕Aの上腕部の血圧を測定するものであり、第2カフ20は手首に巻装してその部分の血圧を測定するものである。
この第2カフ20には赤外線発信機25を構成し、第1カフ10には赤外線受信機15を構成してあり、この赤外線発信機25と赤外線受信機15で測定部位の血管の長さを検出するのである。
【0012】
前記操作部30の内部には、第1カフ10、第2カフ20の各々にエアを送って加圧したり、あるいは減圧するポンプ部18、28と、第1カフ10、第2カフ20にかかる圧力を検出する圧力センサ13、23が内蔵されている。
さらに前記操作部30の内部には第1カフ10、第2カフ20から送られてきた血圧等のデータを計算する演算手段を備えたCPU50やプリンター(図示せず)を備えている。
【0013】
前記操作部30の表面には、測定装置のオンオフ用のメインスイッチ31、血圧測定を開始する測定スイッチ32、血圧や粘性度等の測定結果を表示したり各種の指示を表示する表示部33、テンキー34及び測定データをプリントした記録紙の取出口35を備えている。
【0014】
次に、本実施形態の作用について説明する
図1、図2に示すように、被験者はメインスイッチ31をオンにしてから腕Aを第1カフ10に通し手首に第2カフ20を巻装し、その後測定スイッチ32をオンにして測定装置を作動せしめる。これにより上腕部と手首の血圧値が得られる。
その後演算手段であるCPU50によって血液の粘性度が計算され、そのデータは表示部33に表示され、あるいはプリントアウトされるのである。
【0015】
次に本実施形態による血液粘性度の算出方法について説明する。本実施形態の測定方法は、ハーゲン・バアズイユの法則に基づいている。すなわち、2個のカフを所定の距離を有して取り付け、その第1カフ10、第2カフ20によって得られる血圧の圧力差を基準として計算されるものである。
【0016】
(ステップS1)
メインスイッチ31をオンにした後、ステップS1で被験者の個人情報である定数を読み込む。この定数は次に示すものである。
【数1】

【0017】
(ステップS2)
このとき、前記定数を予めCPU50に記憶させてある場合には、ステップS2で予め決めてあるメモリー番号を入れてステップ6へ進む。
【0018】
(ステップS3)
前記定数を予めCPU50に記憶させてない場合には、表示部33に表示される指示に従って、被験者の定数、すなわち性別、体重、身長、血液密度をテンキー34によって入力する。この場合、血液密度は血球と血漿の成分により変動するが、一般的には1.050〜1.060である。
【0019】
(ステップS4)
前記入力した被験者の定数をCPU50に記憶させる場合には、新たなメモリー番号を入力してその定数の内容を記憶させてステップS5からステップS6に進む。また、記憶させない場合にはそのままステップS6に進む。
【0020】
(ステップS6)
次に、被験者の腕Aの上腕部に第1カフ10を装着した後、手首に第2カフ20を装着する。これは通常のカフの装着と同様に行う。
【0021】
(ステップS7)
その後、測定スイッチ32をオンにする。これによってポンプ部18、28からそれぞれチューブ11、21を介して第1カフ10と第2カフ20にエアが送られて下記に示す測定項目の測定が開始される。
【数2】

【0022】
(ステップS8)
前記測定は、まずCPU50からの指示で第2カフ20に取付けた赤外線発信機25より赤外線が発信され、第1カフ10に取付けた赤外線受信機15で受信される。これによって両カフ10、20間の距離すなわち測定血管長Lが測定される。
【0023】
(ステップS9)
操作部30に内蔵した圧力センサ13、23は増幅器等を備えてCPU50と接続しているから、第1カフ10と第2カフ20によって検出されたデータはCPU50に取り込まれる。これによって、脈拍数、中枢部最高血圧、中枢部最低血圧、抹消部最高血圧、抹消部最低血圧が測定されるのである。
【0024】
(ステップS10)
次に、前記ステップS2,S3で入力された定数とステップS8、S9で測定された測定項目の数値に基づいてCPU50に備えた演算手段によって演算が行われる。ここで使用される物理量・指数は下記の数式に示すものである。
【数3】

前記の演算で得られた値に基づいて、次の数式によって血液の粘性度が計算される。
【数4】

これ以外にも血液の粘性度(簡便値)の計算に次の数式を用いることもできる。
【数5】

前記血液の粘性度及びその簡便値を求める数式に使用された、定数k,kkは、サンプリングで決定する。
【0025】
(ステップS11)
前記のステップS10によって得られた数値のうち、血液の粘性度、脈拍数、中枢部最高血圧、中枢部最低血圧、BMI指数が表示部33に表示される。なお、これ以外の数値を表示することもできる。
【0026】
(ステップS12)
前記表示された数値をプリントする場合には、表示部33の指示に従って必要なテンキー34を押すなどして、ステップS13でプリントして記録紙を取出口35より取り出して終了となる。プリントアウトしない場合にも終了となる。
【0027】
前記ステップS10によって得られた血液の粘性度を段階的に分類して健康の目安とすることができる。発明者は次の対象者からサンプリングデータを収集した。
対象者 健常者200例
内訳 男性 79例
女性 121例
年齢 13〜87歳(平均年齢 39.5歳)
上記のすべての対象者に対し本実施形態の血液粘性度測定装置を使用して、前述の定数、測定項目等を入力、演算して200例のサンプリングデータを収集したところ血液の粘性度について次の値を得た。なお、これは血液の粘性度(簡便値)によって計算したものである。
最小0
最大176
平均34.8
標準偏差31.8
【0028】
前記サンプリングデータに基づく血液の粘性度の分布に基づき、血液のさらさら度を6段階に分類した。これによって本実施形態の血液粘性度測定装置を使用して自己の血液のさらさら度を容易に知ることができ、健康の指針にできるのである。
血液の粘性度 <5 さらさら度6
血液の粘性度 <15 さらさら度5(標準)
血液の粘性度 <25 さらさら度4
血液の粘性度 <35 さらさら度3
血液の粘性度 <45 さらさら度2
血液の粘性度 45≦ さらさら度1
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の使用態様を示す説明
【図2】本発明の一実施形態の一部拡大図
【図3】本発明の一実施形態の回路構成例を示すブロック図
【図4】本発明の一実施形態の測定手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0030】
10 第1カフ
11 チューブ
13 圧力センサ
18 ポンプ部
20 第2カフ
21 チューブ
23 圧力センサ
28 ポンプ部
30 操作部
31 メインスイッチ
32 測定スイッチ
33 表示部
34 テンキー
35 取出口
50 CPU(演算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体に取付けて血圧の測定を行う第1カフと、前記第1カフと所定の距離を有して取付けた第2カフを構成し、前記第1カフと第2カフに前記距離の測定手段を構成すると共に、前記第1カフと第2カフによって測定された血圧に関するデータに基づいて血液の粘性度を計算する演算手段を構成した血液粘性度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−295657(P2008−295657A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143831(P2007−143831)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(507178257)
【Fターム(参考)】