説明

血漿においてタンパク質を検出する方法

本発明は、血漿においてタンパク質を検出する方法を提供し、該方法は、該タンパク質を少なくとも1つの検出可能なフラグメントに消化する能力を有するプロテアーゼに血漿を接触させる工程、ならびに高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析を使用して、少なくとも1つの検出可能なフラグメントを検出する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、血漿においてタンパク質を検出する方法を提供し、該方法は、該タンパク質を少なくとも1つの検出可能なフラグメントに消化する能力を有するプロテアーゼに血漿を接触させる工程、ならびに高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析を使用して、少なくとも1つの検出可能なフラグメントを検出する工程を含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
治療用タンパク質は、現在、広範な疾患を処置するために使用されている。治療用タンパク質は、50アミノ酸より短い小さな合成ポリペプチドからより大きな組換えタンパク質の範囲の大きさであり、融合タンパク質およびモノクローナル抗体またはそのフラグメントを含み得る。典型的に、治療用タンパク質は、非タンパク質の医薬品より大きく、そのため、組織、血清および血漿におけるその濃度を決定することに特有の問題を有する。しかしながら、安全性および有効性を評価するために、臨床試験の間および後で、治療用タンパク質の薬力学的性状を決定しなければならない。通常、比色分析、蛍光定量または発光などの検出方法を用いる免疫化学的な技術を使用して、治療用タンパク質の濃度が検出される。しかし、免疫化学的な技術はただ、非選択的な結果を提供する。
【0003】
さらに、ヒトを含む哺乳動物は、天然に、特定の疾患についてのバイオマーカーとして、または特定の治療に対する応答を予測するために使用され得る内在性タンパク質を産生している。例えば、哺乳動物による特定のサイトカインの天然の産生は、疾患および障害ならびに炎症に付随し得る。さらに、特定の腫瘍に付随するタンパク質は、特定の型のガンに罹患している哺乳動物によって産生され得る。さらに、哺乳動物は、小さな分子、ポリペプチドおよび抗体を含む治療に免疫原性応答を有し得、そのため、哺乳動物に投与される治療学に対して内在性の抗体を産生する。したがって、血漿から治療用および/または内在性のタンパク質を検出するための、強力で感度の高い方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明は、血漿においてタンパク質を検出する方法を提供し、該方法は、該タンパク質を少なくとも1つの検出可能なフラグメントに消化する能力を有するプロテアーゼに血漿を接触させる工程、ならびに高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析を使用して、少なくとも1つの検出可能なフラグメントを検出する工程を含む。タンパク質は、治療用タンパク質および/または内在性のタンパク質であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、配列番号:1のアミノ酸配列であって、配列番号:2の特異的なペプチドフラグメントに下線を付している。
【図2】図2は、エンドプロテアーゼLys−Cを用いた[1513]−GLP1Mの消化で生じたアミノ酸[1513]−GLP1M(配列番号:3)およびGLP−1ペプチドフラグメント(配列番号:2)を示す。
【図3】図3は、エンドプロテアーゼLys−Cを用いた[1513]−GLP1Mの消化で生じたGLP−1特異的なペプチドフラグメント(配列番号:2)の構造を示す。
【図4】図4は、高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析方法およびELISA法を使用して得られたデータについての方法の相関関係のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
用語の解説
本明細書で使用する「治療用タンパク質」は、哺乳動物に医薬品として投与され得る任意のポリペプチド、タンパク質、タンパク質バリアント、融合タンパク質および/またはそのフラグメント意味する。例えば、治療用タンパク質としては、限定するものではないが、インスリン、インクレチン模倣剤、ホルモン、モノクローナル抗体(マウス、ヒト、ヒト化またはキメラであり得る)、抗体フラグメント、ドメイン抗体、融合タンパク質および/または天然のポリペプチドのフラグメント、バリアントおよび/もしくは抱合体が挙げられる。
【0007】
本明細書で使用する「内在性タンパク質」は、ヒトを含む哺乳動物によって天然に産生される任意のポリペプチドを意味する。例えば、内在性タンパク質としては、限定するものではないが、抗体、ホルモン、サイトカイン、腫瘍付随タンパク質、膜貫通タンパク質およびイオンチャネルを含む膜結合タンパク質、天然のペプチドリガンド、バイオマーカーおよび核調節因子、ならびに天然のGLP−1、グルカゴンおよびインスリンが挙げられる。
【0008】
本明細書で使用する「GLP−1アゴニスト組成物」は、インスリン(限定するものではないが、インクレチンホルモンを含む)の分泌を刺激し得るいずれの組成物も意味する。
本明細書で使用する「インクレチンホルモン」は、インスリン分泌を増強する任意のホルモンを意味する。インクレチンホルモンの1つの例は、GLP−1である。GLP−1は、食物の消化に応答して、腸管L細胞(intestinal L cell)から分泌されるインクレチンである。GLP−1は、健康な個体において、膵臓によるグルコース依存性のインスリン分泌を刺激することによって、食後の血糖レベルを調節する重要な役割を担っており、末梢でのグルコースの吸収増加をもたらす。GLP−1はまた、グルカゴンの分泌を抑制し、肝臓でのグルコースのアウトプットの減少をもたらす。さらに、GLP−1は、胃内容排出時間を遅延させ、小腸運動を緩やかにし、食物の吸収を遅延させる。GLP−1は、グルコース依存性インスリン分泌に関与する遺伝子の転写を刺激すること、およびベータ細胞の新生を促進することによって、連続したベータ細胞応答能を促進する(Meier, et al. Biodrugs 2003; 17 (2): 93-102)。
【0009】
本明細書で使用する「GLP−1活性」は、天然のヒトGLP−1の活性の1つまたは複数を意味し、限定するものではないが、血中または血漿中グルコースの低下、グルコース依存性インスリン分泌を刺激すること、グルカゴンの分泌を抑制すること、胃内容排出を遅延させること、およびベータ細胞応答能および新生を促進することを含む。
【0010】
本明細書で使用する「インクレチン模倣剤」は、インスリン分泌を増強し得る化合物である。インクレチン模倣剤は、インスリン分泌を刺激し、ベータ細胞の新生を増加させ、ベータ細胞のアポトーシス抑制し、グルカゴンの分泌を抑制し、胃内容排出を遅延させ、かつ、哺乳動物にて満腹を誘発し得る化合物である。インクレチン模倣剤としては、限定するものではないが、インクレチンホルモン、限定するものではないが、GLP−1、GLP−1フラグメント、バリアントおよび/または融合物、その任意のフラグメントおよび/またはバリアントを含むエキセンディン3およびエキセンディン4、および/または抱合体を含む、GLP−1活性を有する任意のポリペプチドである。
【0011】
本明細書で使用する「血糖降下薬」は、血糖を減少させ得る任意の化合物または化合物を含む組成物を意味する。血糖降下薬としては、限定するものではないが、インクレチンホルモンまたはインクレチン模倣剤、GLP−1および/またはそのフラグメント、バリアントおよび/もしくは抱合体を含む任意のGLP−1アゴニストが挙げられる。他の血糖降下薬としては、限定するものではないが、インスリンの分泌を増加させ(例えば、スルホニル尿素(SU)およびメグリチニド(meglitinide))、グルコースの利用を増加させ(例えば、グリタゾン)、肝臓でのグルコース産生を低下させ(例えば、メトホルミン)、およびグルコースの吸収を遅延させる薬物(例えば、α-グルコシダーゼインヒビター)が挙げられる。
【0012】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合によって互いに連結された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質、すなわち、ペプチドアイソスターをいう。「ポリペプチド」は、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと一般にいわれる短鎖、および、タンパク質と一般にいわれる長鎖の両方をいう。「ポリペプチド」は、遺伝子をコードする20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。「ポリペプチド」は、翻訳後のプロセッシングなどの天然のプロセス、または当該分野にて知られている化学修飾技術のいずれかによって修飾されるアミノ酸配列を含む。そのような修飾は、基本書およびより詳細な研究論文、ならびに多くの研究文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノもしくはカルボキシル末端を含む、ポリペプチドのいずれの場所にも生じ得る。所定のポリペプチド中、複数の場所にて、同じまたは異なる程度で、同じ型の修飾が存在し得ることが理解されるだろう。また、所定のポリペプチドは、多くの型の修飾を含み得る。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として、分枝していてもよく、分枝を有するかまたは有しない環状であり得る。環状、分枝および分枝で環状のポリペプチドは、天然の翻訳後プロセスから生じてもよく、あるいは、合成方法によって製造されてもよい。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、糖鎖付加、GPIアンカーの形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション(selenoylation)、硫酸化、アミノ酸のタンパク質へのトランスファーRNA媒介性付加(アルギニル化など)ならびにユビキチン化が挙げられる。例えば、PROTEINS - STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993、およびWold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983;Seifter, et al., “Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors”, Meth. Enzymol. (1990) 182:626-646、およびRattan, et al., “Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging”, Ann NY Acad Sci (1992) 663:48-62を参照のこと。
【0013】
本明細書で使用する用語「バリアント」は、関連のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとはそれぞれ異なるものの、本質的な特性は残しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。ポリヌクレオチドの典型的なバリアントは、ヌクレオチド配列が別の関連ポリヌクレオチドと異なる。バリアントのヌクレオチド配列の変化は、関連ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させてもよく、または変化させなくてもよい。ヌクレオチドの変化は、上記のとおり、関連ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドにおいて、アミノ酸の置換、負荷、欠失、融合および短縮化をもたらし得る。ポリペプチドの典型的なバリアントは、別の、関連のポリペプチドとアミノ酸配列が異なる。一般に、関連ポリペプチドおよびバリアントの配列が全体に密接に類似する、多くの領域で同一であるように、差異は限定されている。バリアントおよび関連ポリペプチドのアミノ酸配列は、1つまたは複数の置換、付加、欠失のいずれかの組合せで異なり得る。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであってもよく、そうでなくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのバリアントは、対立遺伝子バリアントなどの天然であってもよく、天然で生じることが知られていないバリアントであってもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの非天然のバリアントは、変異誘発技術または直接的な合成によって製造され得る。
【0014】
本明細書で使用する「フラグメント」は、ポリペプチドに関連して使用する場合、天然のポリペプチド全体のアミノ酸配列と部分として(全部ではない)同じであるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。フラグメントは、「独立」しているか、1つのより大きなポリペプチド中に含まれて、1つのより大きなポリペプチドにおいて1つの連続した領域として部分または領域を形成してもよい。例えば、天然のGLP−1のフラグメントは、天然のアミノ酸1〜36のアミノ酸7〜36を含むだろう。さらに、ポリペプチドのフラグメントはまた、天然の部分配列のバリアントであり得る。例えば、天然のGLP−1のアミノ酸7〜30を含むGLP−1のフラグメントはまた、その部分配列内でアミノ酸の置換を有するバリアントであり得る。
【0015】
本明細書で使用する「抱合体」または「抱合型」は、互いに結合した2つの分子をいう。例えば、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドに共有結合または非共有結合で結合され得る。第1のポリペプチドは、化学的なリンカーによって共有結合してもよく、第2のポリペプチドに遺伝学的に融合してもよく、第1および第2のポリペプチドは、共通のポリペプチド骨格を共有する。
【0016】
本明細書にて使用する「直列に配置された」とは、同じ分子の部分として互いに隣接している2つ以上のポリペプチドをいう。これらの分子は、共有結合または非共有結合のいずれかで連結され得る。2つ以上の直列に配置されたポリペプチドは、同じポリペプチド骨格の部分を形成し得る。直列に配置されたポリペプチドは、直接もしくは逆の配置を有してもよく、および/または他のアミノ酸配列によって分離されていてもよい。
【0017】
本明細書で使用する血糖を「減少する」または「減少すること」は、血糖降下薬の投与後の患者の血中にて観察される血糖の量の減少をいう。
【0018】
本明細書で使用する「血糖の上昇に付随する疾患」としては、限定するものではないが、I型およびII型糖尿病ならびに高血糖が挙げられる。
【0019】
本明細書で使用する「同時投与」または「同時投与すること」は、同じ患者への2つ以上の化合物の投与をいう。そのような化合物の同時投与は、同時またはおよそ同時(例えば、同じ時刻)であり得るか、または互いに数時間または数日内であり得る。例えば、第2の化合物を毎日投与する一方、第1の化合物を1週間に1回投与してもよい。
【0020】
「組換え発現系」は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生のために、宿主細胞または宿主細胞可溶化液に導入または形質転換された本発明の発現系またはそのタンパク質またはポリヌクレオチドをいう。
【0021】
「単離された」は、その天然の状態から「人為的」に変化されたこと、すなわち、天然で生じた場合、その本来の環境から変化および/または取り出されたことを意味する。例えば、生物中に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然の状態で一緒に存在する材料から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていると本明細書で用いる。さらに、形質転換、遺伝学的操作またはいずれの他の組換え方法によって生物に導入されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、生物(生存していても非生存でもよい)内にまだ存在している場合でも、単離されている。
【0022】
インタクトな抗体としては、少なくとも2つの重鎖および2つの軽鎖を含むヘテロ四量体の糖タンパク質が挙げられる。IgMを除いては、インタクトな抗体は、通常、約150Kdaのヘテロ四量体の糖タンパク質であり、2つの同一の軽鎖(L鎖)および2つの同一の重鎖(H鎖)からなる。典型的に、各軽鎖は、1つの共有結合的なジスルフィド結合によって重鎖に連結する一方、異なる免疫グロブリンの重鎖間の多数のジスルフィド結合は異なっている。各重鎖および軽鎖はまた、鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)、それに続いて、定常領域を有している。各軽鎖は、可変ドメイン(VL)および他方の末端に定常領域を有し;軽鎖の定常領域は、重鎖の第1の定常領域と並んでおり、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並んでいる。大部分の脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列に基づいてカッパおよびラムダと呼ばれる2つの型の一方に割り当てられ得る。重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、ヒト抗体は、5つの異なるクラス(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)に割り当てられ得る。IgGおよびIgAは、サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4;ならびに、IgA1およびIgA2)にさらに分けられ得る。種バリアントがマウスおよびラットで存在し、少なくともIgG2aおよびIgG2bを有する。抗体の可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる特定の可変性を示す特定の領域と一緒に、抗体に結合特異性を与える。可変領域のより保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。インタクトな重鎖および軽鎖の可変ドメインは、3つのCDRに結合した4つのFRをそれぞれ含む。各鎖中のCDRは、FR領域に近接して一緒に保持されており、その他の鎖由来のCDRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、Fcγ受容体への結合を介した食作用、新生児型Fc受容体(FcRn)を介した半減/排出速度、および補体カスケードのC1q補体を介した補体依存性細胞傷害での関与など、種々のエフェクター機能を示す。
【0023】
二重特異性抗体は、少なくとも2つのエピトープについて結合特異性を有する抗体である。そのような抗体の作製方法は、当該分野にて公知である。従来、二重特異性抗体のリコンビナントな作製は、2つの免疫グロブリンH鎖−L鎖ペアの共発現に基づいており、2つのH鎖は、異なる結合特異性を有する(Millstein et al, Nature 305 537-539 (1983)、国際公開93/08829号およびTraunecker et al EMBO, 10, 1991, 3655-3659を参照のこと)。HおよびL鎖のランダムな取り合わせが原因で、そのうちのわずか1つが所望の結合特異性を有する異なる抗体構造の考え得る混合物が産生される。別のアプローチは、所望の結合特異性を有する可変ドメインを、ヒンジ領域CH2およびCH3領域の少なくとも部分を含む重鎖の定常領域に融合させることを含む。融合物の少なくとも1つに存在する、軽鎖の結合に必要な部位を含むCH1領域を有することが好ましい。これらの融合物、ならびに所望によりL鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、次いで、適切な宿主生物に同時導入される。2つまたは3つ全ての鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能であると考えられている。二重特異性抗体は、一方の腕の第1の結合特異性を有するH鎖、および他方の鎖の第2の結合特異性提供するH−L鎖からなり得る。国際公開94/04690号を参照のこと。また、Suresh et al Methods in Enzymology 121, 210, 1986も参照のこと。
【0024】
抗体フラグメントは、抗体のFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ScFvフラグメントなどの、インタクトおよび/またはヒト化および/またはキメラ抗体の機能的な抗原結合フラグメントであり得る。従来、そのようなフラグメントは、パパイン消化などによるインタクトな抗体のタンパク質消化によって作製されていたが(例えば、国際公開94/29348号を参照のこと)、組換えにより形質転換した宿主細胞から直接作製することもできる。ScFvの作製について、Bird et al. (1988) Science, 242, 423-426を参照のこと。さらに、抗体フラグメントは、以下に記載する種々の操作技術を使用しても作製され得る。
【0025】
Fvフラグメントは、Fabフラグメントよりも低い、2つの鎖の相互作用エネルギーを有するらしい。VHおよびVLドメインの会合を安定化させるために、VHおよびVLドメインがペプチド(Bird et al, (1988) Science 242, 423-426, Huston et al, PNAS, 85, 5879-5883)、ジスルフィド架橋(Glockshuber et al, (1990) Biochemistry, 29, 1362-1367)および「穴の中のノブ」変異(Zhu et al (1997), タンパク質 Sci., 6, 781-788)で連結されている。ScFvフラグメントが、当該分野にて周知の方法によって作製されている。Whitlow et al (1991) Methods companion Methods Enzymol, 2, 97-105およびHuston et al (1993) Int.Rev.Immunol 10, 195-217を参照のこと。ScFvは、E.coliなどの細菌細胞にて作製してもよいが、より好ましくは真核生物の細胞にて作製される。ScFvの1つの不利益は、多価結合に起因する結合活性の増加を妨げる製造物の一原子価性、および短い半減期である。これらの課題を解決する試みとして、化学的なカップリング(Adams et al (1993) Can.Res 53, 4026-4034 and McCartney et al (1995) Protein Eng. 8, 301-314)によるか、または対合していないC末端のシステイン残基を含むScFvの自発的で部位特異的な二量体形成(Kipriyanov et al (1995) Cell. Biophys 26, 187-204を参照のこと)による、さらなるC末端のシステインを含むScFVから作製した二価(ScFv’)が挙げられる。あるいは、ペプチドリンカーを3〜12残基に短縮することで、多量体を形成させ、「二重特異性抗体」を形成することもできる(Holliger et al PNAS (1993), 90, 6444-6448を参照のこと)。リンカーをさらに減少させることで、ScFV三量体(「三重特異性抗体(triabody)」、Kortt et al (1997) Protein Eng, 10, 423-433を参照のこと)および四量体(「四重特異性抗体」、Le Gall et al (1999) FEBS Lett, 453, 164-168を参照のこと)を得ることもできる。二価のScFV分子の構築はまた、「ミニ抗体」(Pack et al (1992) Biochemistry 31, 1579-1584を参照のこと)および「ミニボディ(minibody)」(Hu et al (1996), Cancer Res. 56, 3055-3061を参照のこと)を形成するためのタンパク質二量体化モチーフとの遺伝学的な融合によって達成され得る。ScFv−Sc−Fvタンデム((ScFV)2)はまた、第3のペプチドリンカーによる2つのScFvの連結によっても作製され得る(Kurucz et al (1995) J.Immol.154, 4576-4582を参照のこと)。二重特異性抗体が、別の抗体のVLドメインへの短いリンカーによって連結された1つの抗体由来のVHドメインからなる2つの単一の鎖の融合産物の非共有結合的な会合によって作製され得る(Kipriyanov et al (1998), Int.J.Can 77,763-772を参照のこと)。そのような二重特異性抗体の安定性が、上記のジスルフィド架橋または「穴の中のノブ」変異の導入、または単一二重特異性抗体(ScDb)(2つのハイブリッドScFvフラグメントがペプチドリンカーを介して連結されている)の形成によって増強され得る(Kontermann et al (1999) J.Immunol.Methods 226 179-188を参照のこと)。四価二重特異性分子が、ヒンジ領域を介したScFvフラグメントのIgG分子のCH3ドメインまたはFabフラグメントへの融合によって利用可能である(Coloma et al (1997) Nature Biotechnol. 15, 159-163を参照のこと)。あるいは、四価二重特異性分子が、二重特異性単一二重特異性抗体の融合によって作製されている(Alt et al, (1999) FEBS Lett 454, 90-94を参照のこと)。より小さな四価二重特異性分子が、ScFv−ScFvタンデムのへリックス−ループ−へリックスモチーフを含むリンカーとの二量体化(DiBiミニ抗体、Muller et al (1998) FEBS Lett 432, 45-49を参照のこと)、または、分子内対合を妨げる方向にある4つの抗体可変ドメイン(VHおよびVL)を含む単一の鎖分子(tandem diabody, see Kipriyanov et al, (1999) J.Mol.Biol. 293, 41-56を参照のこと)によって形成され得る。二重特異性F(ab’)フラグメントが、Fab’フラグメントの化学的なカップリング、またはロイシンジッパーを介したヘテロ二量体化(Shalaby et al, (1992) J.Exp.Med. 175, 217-225 and Kostelny et al (1992), J.Immunol. 148, 1547-1553を参照のこと)によって作製され得る。また、単離されたVHおよびVLドメイン(Domantis plc)が利用可能である(US 6, 248,516; US 6,291,158; US 6, 172,197を参照のこと)。
【0026】
ヘテロ抱合体抗体は、任意で以前からある架橋方法を使用して形成された2つの共有結合した抗体からなる。U.S. Patent No. 4,676,980を参照のこと。
【0027】
血糖降下薬は、血中のグルコース濃度を低下させるために、I型およびII型糖尿病の処置にて使用され得る。インスリン分泌性ペプチドは、糖尿病の処置のための考え得る治療剤としてみなされている。インスリン分泌性ペプチドとしては、限定するものではないが、胃抑制ポリペプチド(GIP)およびグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)などのインクレチンホルモン、ならびにそのフラグメント、バリアントおよび/または抱合体が挙げられる。インスリン分泌性ペプチドとしてはまた、エキセンディン3およびエキセンディン4が挙げられる。GLP−1は、36アミノ酸の長さのインクレチンホルモンであり、食物の摂取に応答して腸管L細胞から分泌される。GLP−1は、生理的およびグルコース依存的な様式でインスリンの分泌を刺激し、グルカゴンの分泌を減少させ、胃内容排出を抑制し、食欲を減少させ、β細胞の増殖を刺激することが示されている。非臨床的な実験にて、GLP−1は、グルコース依存的なインスリンの分泌に重要な遺伝子の転写を刺激し、ベータ細胞の新生を促進することによって、連続したベータ細胞応答能を促進する(Meier, et al. Biodrugs. 2003; 17 (2): 93-102)。
【0028】
健康な個体において、GLP−1は、食後の血糖レベルを調節する重要な役割を担っており、膵臓によるグルコース依存的なインスリンの分泌を刺激することによって、末梢でのグルコースの吸収を増加させる。GLP−1はまた、グルカゴンの分泌を抑制し、肝臓のグルコース排出を低下させる。さらに、GLP−1は、胃内容排出および小腸運動を遅延させ、食物の吸収を遅延させる。
【0029】
II型糖尿病を有する人達において、食後のGLP−1の正常な上昇は、欠落しているか、または低下している(Vilsboll T, et al., Diabetes. 2001. 50; 609-613)。したがって、外因的なGLP−1、インクレチンホルモンまたはインクレチン模倣剤を投与するための理論的根拠は、食事に付随するインスリン分泌を増加させ、グルカゴンの分泌を低下させ、胃腸運動を緩やかにするために、内在性GLP−1を置き換えることである。天然のGLP−1は、非常に短い血中半減期(<5分間)を有する。そのため、GLP−1を模倣するために使用されるインクレチン模倣剤は、典型的に、内在性GLP−1より長い半減期を有する。
【0030】
本発明は、哺乳動物由来の血漿において少なくとも1つのタンパク質を検出する方法であって、少なくとも1つの該タンパク質を少なくとも1つの検出可能なフラグメントに消化する能力を有する第1のプロテアーゼに血漿を接触させる工程、ならびに高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析を使用して、少なくとも1つの検出可能なフラグメントを検出する工程を含む方法を提供する。1つの態様において、少なくとも1つのタンパク質は、治療用タンパク質である。別の態様において、少なくとも1つのタンパク質は、前記哺乳動物についての内在性タンパク質である。さらに別の態様において、哺乳動物はヒトである。本発明の方法はさらに、少なくとも1つの治療用および/または内在性タンパク質の薬物動態パラメータを計算する工程をさらに含む。
【0031】
当該分野に理解されるように、血中、血漿中および/または他の組織での有効な化合物の濃度などの薬物動態学的なデータを収集、測定および評価するために、種々の方法を用いてもよい。また、当該分野に理解されるように、限定するものではないが、血中、血漿中および/または他の組織でのグルコース、インスリン、Cペプチド、グルカゴンおよび他のバイオマーカーなどの薬力学的なデータを収集、測定および評価するために、種々の方法を用いてもよい。当業者は、本明細書に記載する薬物動態学的(例えば、限定するものではないが、Cmax、AUC、Tmax、血中半減期)および薬力学的パラメータ(例えば、限定するものではないが、血清、血漿および血中グルコースレベル)を測定および計算する種々の方法を理解するだろう。さらに、当業者は、本明細書に記載する薬物動態学的および薬力学的パラメータの統計比較(例えば、限定するものではないが、処置群におけるベースラインから処置後の比較)および/または解析をするための種々の方法を理解するだろう。さらに、当業者は、薬物動態学的、薬力学的および他の臨床データを収集および分析するための他の種々の方法を理解するだろうし、用いることができる。
【0032】
本発明の方法の治療用タンパク質は、インクレチン模倣剤であってもよい。インクレチン模倣剤は、インクレチンホルモンおよび/あるいはそのフラグメント、バリアントおよび/または抱合体、ならびにGLP−1アゴニストおよび/あるいはそのフラグメント、バリアントおよび/または抱合体の群から選択され得る。インクレチン模倣剤は、少なくとも1つの融合パートナーと抱合したヒトGLP−1の少なくとも1つのフラグメントおよび/またはバリアントを含み得る。GLP−1のフラグメントおよび/またはバリアントは、GLP−1(7−36(A8G))を含んでもよく、野生型GLP−1のアラニン8がグリシン(以下、A8Gと記載する、例えば、U.S. Pat. No. 5,545,618(出典明示によって、その全体を本明細書に組込む)にて開示される変異)に変異している。GLP−1のフラグメントおよび/またはバリアントは、ヒト血清アルブミンに遺伝学的に融合され得る。GLP−1のフラグメントおよび/またはバリアントは、直列でヒト血清アルブミンに遺伝学的に融合された少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))を含む。GLP−1(7−36(A8G))は、ヒト血清アルブミンのN末端に遺伝学的に融合され得る。本発明の治療用タンパク質は、配列番号:1を含み得る。
【0033】
GLP−1(7−37)のバリアントとしては、例えば、Glu22−GLP−1(7−37)OH(GLP−1(7−37)OHの位置22で通常見出されるグリシンがグルタミン酸に置換されている);Val−Glu22−GLP−1(7−37)OH(GLP−1(7−37)の位置8で通常見出されるアラニンおよび位置22で通常見出されるグリシンがバリンおよびグルタミン酸でそれぞれ置換されている)が示される。GLP−1のバリアントの例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
【0034】
【表1】

【0035】
GLP−1のバリアントとしてはまた、限定するものではないが、1つまたは複数のアミノ酸側基の化学的修飾を有するGLP−1またはGLP−1フラグメントが挙げられる。化学的修飾としては、限定するものではないが、化学的部分の付加、新たな結合の付加および化学的部分の除去が挙げられる。アミノ酸側基での修飾としては、限定するものではないが、リジン−ε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジンまたはリジンのN−アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギンカルボン酸基のアルキル化、ならびにグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が挙げられる。アミノ基末端の修飾としては、限定するものではないが、脱アミノ、N−低級アルキル、N−ジ−低級アルキルおよびN−アシル修飾が挙げられる。カルボキシ基の修飾としては、限定するものではないが、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミドおよび低級アルキルエステル修飾が挙げられる。さらに、1つもしくは複数の側基、または末端基が、当該分野にて公知の保護基によって保護され得る。
【0036】
GLP−1フラグメントまたはバリアントとしてはまた、1つまたは複数のアミノ酸が、該フラグメントまたはバリアントのGLP−1(7−37)OHのN末端および/またはC末端に付加されているポリペプチドが挙げられる。N末端および/またはC末端にアミノ酸が付加されているGLP−1中のアミノ酸は、GLP−1(7−37)OH中の対応するアミノ酸と同じ番号で示される。例えば、GLP−1(7−37)OHのN末端に2つのアミノ酸を付加することによって得られるGLP−1化合物のN末端アミノ酸は、位置5であり;GLP−1(7−37)OHのC末端に1つのアミノ酸を付加することによって得られるGLP−1化合物のC末端アミノ酸は、位置38である。そのため、これらのGLP−1化合物の両方において、GLP−1(7−37)OHとして、位置12はフェニルアラニンであり、位置22はグリシンである。N末端に付加されたアミノ酸を有するGLP−1のアミノ酸1〜6は、GLP−1(1−37)OHの対応する位置のアミノ酸と同じかまたは保存的置換であり得る。C末端に付加されたアミノ酸を有するGLP−1のアミノ酸38−45は、グルカゴンまたはエキセンディン−4の対応する位置のアミノ酸と同じかまたは保存的置換であり得る。
【0037】
本発明の治療用タンパク質の融合パートナーは、少なくとも1つのポリペプチド、そのバリアントおよび/またはフラグメント、またはアルブミン、トランスフェリンおよびIgGのFc部分から選択されるポリペプチドを含み得る。本発明の治療用タンパク質は、エキセンディン3、エキセンディン4、ヒトGLP−1、およびそのフラグメント、バリアントおよび/または抱合体の群から選択され得る。治療用タンパク質としてはまた、単離されたポリペプチドフラグメント、そのバリアントおよび/または抱合体、モノクローナル抗体(マウス、ヒト、ヒト化またはキメラ)およびそのフラグメントまたはドメイン抗体が挙げられる。
【0038】
本明細書にて、哺乳動物由来の血漿において少なくとも1つの内在性タンパク質を検出する方法であって、少なくとも1つのタンパク質を少なくとも1つの検出可能なフラグメントに消化する能力を有する第1のプロテアーゼに血漿を接触させる工程、ならびに高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析を使用して、少なくとも1つの検出可能なフラグメントを検出する工程を含む方法が提供される。内在性タンパク質は、抗体、サイトカイン、腫瘍付随性タンパク質、少なくとも1つのバイオマーカーおよび膜貫通タンパク質の群から選択され得る。
【0039】
さらに、哺乳動物由来の血漿において少なくとも1つのタンパク質を検出する方法であって、少なくとも1つのタンパク質を少なくとも1つの検出可能なフラグメントに消化する能力を有する第1のプロテアーゼに血漿を接触させる工程を含む方法が提供され、当該方法において、プロテアーゼは、Lys−C、トリプシン、Asp−N、Arg−C、Asn−C、ポストプロリン切断酵素およびCNbrの群から選択される。いくつかの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0040】
さらに、本明細書にて、安定で検出可能な標準ペプチドを調製する工程をさらに含む方法が提供される。安定で検出可能な標準ペプチドは、少なくとも1つのタンパク質とは別の容器にて調製される。そのような実施態様において、安定で検出可能な標準ペプチドは、別の容器にて消化されてもよく、または消化されなくてもよい。別の実施態様において、検出可能な標準マーカーは、合成ペプチドであってもよい。安定で検出可能な標準ペプチドは、上記方法を使用して、血漿中の少なくとも1つのタンパク質の量を定量するために使用され得る。別の態様において、安定で検出可能なペプチドが血漿に接触した方法が提供される。安定で検出可能なペプチドは、所望により、第2のプロテアーゼを使用して消化してもよい。この第2のプロテアーゼは、少なくとも1つのタンパク質を調製するために使用したプロテアーゼと同じであってもよく、異なるプロテアーゼであってもよい。安定で検出可能な標準ペプチドは、目的のタンパク質として、同じサンプルから検出され得る。1つの態様において、安定で検出可能な標準ペプチドが、同位体で標識される。
【0041】
別の態様において、前記タンパク質のペプチドライブラリーを作製する工程をさらに含む方法が提供される。さらなる方法は、前記プロテアーゼで消化する際に生じる少なくとも1つのタンパク質のフラグメントを選択する工程を含む。フラグメントは、以下の特徴:質量、電荷、大きさ、二次構造および三次構造の1つまたは複数に基づいて、プロテアーゼによって生じた治療用タンパク質のその他のフラグメントから分離され得る。
【0042】
さらに別の態様において、哺乳動物由来の血漿において少なくとも1つの内在性タンパク質を検出するハイスループットな方法が提供される。別の態様において、方法は定量的である。
【0043】
本発明の方法を、血漿中の少なくとも1つのタンパク質の迅速な検出のためのいくつかの他の技術と組み合わせてもよい。例えば、本発明の方法を、質量分析を使用してサンプルの検出および定量のための、マイクロフルイディック分析システムを含む、マイクロアレイ技術および/またはナノテクノロジーと組み合わせてもよい。マイクロフルイディック分析システムの例が、Andersson, et al., Anal. Chem. 79:4022-4030 (2007)に記載されている。
【0044】
以下の実施例は、本発明の種々の態様を示す。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1−ヒト血漿中の配列番号:1
以下のパラメータを評価した:
・選択性、感度および直線性
・バイアスおよび精度
・室温での、ヒト血漿中の配列番号:1の安定性
・ヒト血漿中の配列番号:1の安定性に対する凍結−融解の効果
・処理したサンプル中の配列番号:1の安定性
・定量化の上限(HLQ)より上のサンプルを希釈する能力
【0046】
検証手順
配列番号:1は、組換えヒト血清アルブミンに直列で結合した2つの修飾された30アミノ酸GLP−1ペプチドからなる、73012ダルトン(645アミノ酸)の遺伝学的融合タンパク質である。この実施例では、ヒト血漿中の配列番号:1の測定のためのHPLC MS/MS法について記載する。配列番号:1を投与したヒト由来のヒト血漿サンプル200μlを、同位体標識したGLP−1内部標準、[1513]−GLP1M (配列番号:3)(図3)と組合せ、エンドプロテアーゼ酵素Lys−Cを使用して消化した。配列番号:1および[1513]−GLP1M由来の2つのGLP−1特異的ペプチドフラグメント(1005および1012Da)を、固相抽出によって、200μlのヒト血漿から抽出した。TurboIonSpray(商標)インターフェースおよび多重反応モニタリングを使用するHPLC MS/MSによって、抽出物を分析した。
【0047】
サンプル調製
ヒト血漿を1.2mlのポリプロピレン96−ウェルチューブ(Micronic Systems, Lelystad, Holland)に移した。[1513]−GLP1Mを各血漿サンプルに添加した。エンドプロテアーゼlys−Cを使用して血漿を酵素的に消化して、配列番号:1および[1513]−GLP1Mの両方について特異的なペプチドフラグメントを作製した(図3および2を参照のこと)。酸性の水を添加することによって、消化を停止させた。調製したサンプルを混合型強キャット−イオン交換プレート(mixed mode strong cat-ion exchange plate)にロードし、洗浄し、溶出し、窒素下で乾燥させ、再構成し、分析のためにHPLC-MS/MSにインジェクションした。熱アシストエレクトロスプレーイオン化(TurboIonSpray(商標))および多重反応モニタリングを用いたAPI4000(Applied Biosystems/MDS Sciex)トリプル四極子装置にて、MS/MS検出を実施した。
【0048】
以下の工程を使用して、サンプルを調製した:
・200μlのヒト患者由来の血漿、標準またはQCを、ポリプロピレン96−ウェルチューブに分注し;
・50ulの同位体で標識されたGLP−1内部標準([1513]−GLP1M)を、全ての血漿サンプルに添加し、
・50ulのDI水を添加し、ブランクサンプルを倍にし、
・100μlのエンドプロテアーゼlys−C(60mIU)を、全ての血漿サンプルに添加し、室温で24時間インキュベートし;
・300μlのMilli−Q中0.1N HCLを、全ての血漿サンプルに添加し;
・500μlのメタノールをStrata X−C 10mg/ウェル(Phenomenex)SPE96ウェル抽出プレートに添加し、続いて、前処理のために500μlの0.01N HClを添加し;
・調製したサンプルをプレートにロードし、約5分間静置し、真空乾燥させ;
・洗浄のために、500μlの0.01N HCl、続いて500μlのメタノールをプレートに添加し;
・500μlのメタノール中5% NHOHをプレートに添加して、サンプルを溶出させ;
・各サンプルを、窒素下、50℃で減圧乾燥させ;
・200μlの0.1%ギ酸/アセトニトリル(70/30、v/v)を添加して、各サンプルを再構成し;そして、
・再構成した各サンプルを、分析のために、HPLC−MS/MSシステムに直接インジェクションした。
サンプル調製のための試薬を、以下の表1に記載する。
【0049】
【表2】

【0050】
高速液体クロマトグラフィー
HPLC−MS/MSデータを所得し、商標にかかるソフトウェアアプリケーションAnalyst(バージョン1.4.1、Applied Biosystems/MDS Sciex、カナダ)を使用して処理した。配列番号:1の濃度に対する分析物/内部標準ピーク領域の割合の較正プロットを構築し、加重(1/x2)直線回帰(シグマ(m*x+c−y)^2)をデータに適用した。較正サンプルにおける配列番号:1の濃度を、構築した較正線から決定、使用し、方法のバイアスおよび精度を計算した。
HPLCの条件を表2に記載し、MS/MSの条件を表3に記載する。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
試験化合物および生物学的マトリックス
配列番号:1のアミノ酸配列を図1に示し、そのGLP−1特異的なペプチドフラグメント(配列番号:2)を図3に示す。同位体で標識されたGLP−1内部標準[1513]−GLP1M(配列番号:3)およびそのGLP−1特異的なペプチドフラグメント(配列番号:4)のアミノ酸配列を図2に示す。検証サンプルの調製のためにプールしたコントロールヒト血漿(EDTA)、および方法の選択性を確立するための6人の志願者由来のコントロールヒト血漿の十分な体積を、Bioreclamation Inc.(Hicksville, NY)から入手し、−80℃で凍結保存した。
【0054】
較正標準および検証サンプルの調製
方法のバイアスおよび精度を確立するための検証サンプルを、分析標準溶液の独立したセットから調製して、表4にて特定する希釈スケジュールに従い、50、200、2000、40000および50000ng/mlのヒト血漿中での配列番号:1の濃度を得た。
【0055】
【表5】

【0056】
ブランクおよび較正標準の2つのセットに加えて、各検証サンプルの濃度の6つの複製を、HPLC-MS/MS方法によって、3つの別々の場合にて分析した。[1513]−GLP1Mの凍結乾燥させた粉末を、適当な量の水にて再構成し、1.0mg/mlのストック溶液を得た。
【0057】
質コントロール/検証サンプルの調製
質コントロール(QC)および検証サンプル(VS)を表5の希釈に従って調製し、よく混合した。複製1.4mlのアリコートを適当なアッセイチューブに移し、−80℃で保存した。
【0058】
【表6】

【0059】
消化手順:
以下の工程に従って、サンプルを消化に供した:
・200μlのサンプル、標準またはQCを、ミクロニック(micronic)チューブに分注し;
・50ulのI.S.(5000ng/ml)を添加し、混合する。
・100mM 重炭酸ナトリウム緩衝液中の100μlのLys C溶液,pH8.5を全てのチューブに添加し;そして
・全てのチューブにフタをして、2分間混合し、5分間遠心分離し、24時間、室温にて攪拌する。
【0060】
回帰モデル:
1/x2加重直線回帰を用いたピーク領域の割合
配列番号:1フラグメントの選択
配列番号:2、配列番号.:1の1005Daフラグメントを、エンドプロテアーゼ酵素Lys−Cを使用して作製したペプチドマップの分析に基づくモニタリングのために選択した。このフラグメントは、融合タンパク質のGLP−1部分に特異的なアミノ酸配列を含み、このタンパク室内に含まれる類似のアミノ酸配列(Lys−Cで消化した場合形成され得る)が存在しない。GLP−1の2つの直列のコピーがヒト血清アルブミンの1つの分子に連結されているので、配列番号:2が2/1のモル比で配列番号:1から放出される。ヒト血漿中の1005フラグメントの選択性を、以下の検証の選択性段階の間、確認した。
【0061】
選択性、感度および直線性
m/z 503の前駆体イオンは、GLP−1親イオンフラグメントの[M+2H]2+イオンである。m/z503から616および[M+H]1+507から623への生成物イオン転移への特徴的な前駆体[M+2H]2+が、配列番号:1および内部標準とそれぞれ一致し、高い選択性を確保するために、多重反応モニタリングとして使用する。6人の志願者由来のコントロールヒト血漿のサンプルの分析によって、方法の選択性を確立した。また、検証アッセイにおいてプールしたコントロールヒト血漿から調製したブランクおよび二重ブランクサンプルの含有によって、方法の選択性を評価した。ブランクおよび検証サンプルのHPLC-MS/MSクロマトグラムを視覚的に調べ、クロマトグラムの整合性および考え得る干渉について比較した。配列番号.:1およびその内部標準配列番号:2および3の保持時間での許容されない干渉は観察されなかった。
【0062】
50〜50000ng/mlの範囲で、分析物/内部標準ピーク領域の割合の直線的な反応が観察された。1/x2加重曲線回帰を使用して入手した相関係数は、0.9964より良好であった。
【0063】
バイアスおよび精度
検証サンプルにおける配列番号:1の濃度を、各場合における較正線から決定し、精度および正確性の値と一緒に表6に示す。調べた全ての検証サンプルで、バイアスは15%未満であり、許容可能であった。観察された最大のバイアスは−12.8%であった。調べた全ての検証サンプルの濃度で、走行精度内または間の値は、15%以下であり、許容可能であった。観察された走行精度内または間の最大の値は、それぞれ4.3%および8.6%であった。低いまたは高い検証サンプル濃度処理の許容可能な精度および正確性によって規定されるように、200μLのヒト血漿に基づく配列番号:1についての方法の検証された範囲は、50〜50000ng/mlである。ヒト血漿中の配列番号:1についてのバイアス、精度および各サンプル濃度を、表6に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
HLQを超える濃度で配列番号:1を含むサンプルを希釈する能力を、250000ng/mlで添加したヒト血漿サンプルの10倍希釈物の6つの複製物を実施することで示した。これらのマトリックス希釈サンプル中の配列番号:1の濃度を測定して、希釈因子について補正した。バイアスおよび走行精度内の値は、15%(実際には、それぞれ−3.4%および4.5%)未満であり、上記の配列番号:1を含むヒト血漿サンプルの10倍希釈物が妥当なものであることが示された。
【0066】
結論
この方法は、ヒト血漿中の配列番号:1について50.0〜50000ng/mlの範囲で首尾よく検証され、高感度で、正確でかつ的確なものであることが証明された。固相抽出および定量的タンデム質量分析前の特異的なタンパク質分解性消化の使用は、非常に成功したアプローチであり、従来の免疫化学的な方法に対して頑強性を増加させることが証明された。この方法に基づき、臨床での配列番号:1のサンプルを、多くの低分子定量的タンデム質量分析法とおよそ同じ期間、処理してもよい。
【0067】
実施例2
サンドイッチELISA技術を使用して入手される結果と、ヒトでの臨床試験のサンプルから得られた結果を比較することによって、方法の性能のさらなる評価を決定した。
検証されたELISAの手順において、分析の前に、臨床サンプルをサンプル緩衝液で100倍に希釈した。ウサギ抗ヒトGLP−1(7−36)アミドを使用して、融合タンパク質を獲得し、ビオチンに結合させたウサギ抗HSAを使用して検出した。ストレプトアビジンHRP抱合体を、化学発光基質と組み合わせて、検出酵素として使用した。サンプル濃度を、検量線からの内挿(加重(1/x)を使用して適合させた)によって決定した。4つのパラメータロジスティック方程式。10ulのヒト血漿に基づくこのアッセイの検証された範囲は、50〜15000ng/mlである。
【0068】
実施例1の高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析法およびこの実施例のELISA法を使用して得られたデータについての方法相関プロットを、612個の臨床サンプルから入手したサンプル結果を使用して得た。方法相関プロットを図4に示す。直線回帰分析により、方法間で、−83.4ng/ml(p<0.001)の切片および0.725(p<0.001)の勾配と一緒に、0.9692の相関係数(r)が得られた。直線回帰分析から得られた統計結果から、切片および勾配が0(p<0.001)および1(p<0.001)から有意に異なるものの;観察されたネガティブな勾配バイアスが、組み合わせた方法の正確性の範囲内であることが示された。サンプル濃度の結果の差異が2つの方法の間で存在するにもかかわらず、臨床PKデータの全てのパターンが同じであることに留意すべきである。
【0069】
実施例3
アッセイの頑強性および再現性の両方を確認するために、臨床サンプルの被サンプル(incurred sample)再分析を実施した。健康およびII型糖尿病患者の両方由来の臨床サンプルを、3つの別々の場合について再分析した。3つの被サンプルの再現性を確認した。3つの走行についての走行CV間の差異が≦15%である場合、被サンプルの再現性が確認される。被サンプルの再分析由来の結果を表7に示す。被サンプルの再現性を、健康およびII型糖尿病患者の両方において確認した。
【0070】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物由来の血漿において少なくとも1つのタンパク質を検出する方法であって、該血漿を、少なくとも1つの該タンパク質を少なくとも1つの検出可能なフラグメントに消化する能力を有する第1のプロテアーゼに接触させる工程、ならびに高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析を使用して、少なくとも1つの検出可能なフラグメントを検出する工程を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つのタンパク質が治療用タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのタンパク質が前記哺乳動物の内在性タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
治療用タンパク質がインクレチン模倣剤である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
インクレチン模倣剤が、インクレチンホルモンおよび/あるいはそのフラグメント、バリアントおよび/または抱合体、ならびにGLP−1アゴニストおよび/あるいはそのフラグメント、バリアントおよび/または抱合体の群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
インクレチン模倣剤が、少なくとも1つの融合パートナーと抱合したヒトGLP−1の少なくとも1つのフラグメントおよび/またはバリアントを含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
GLP−1の少なくとも1つのフラグメントおよびバリアントがGLP−1(7−36(A8G))を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
GLP−1の少なくとも1つのフラグメントおよびバリアントが、ヒト血清アルブミンに遺伝学的に融合している、請求項7記載の方法。
【請求項9】
GLP−1の少なくとも1つのフラグメントおよびバリアントが、ヒト血清アルブミンに直列で遺伝学的に融合している少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))が、ヒト血清アルブミンのN末端に遺伝学的に融合している、請求項9記載の方法。
【請求項11】
治療用タンパク質が配列番号:1を含む、請求項4記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの融合パートナーが、少なくとも1つのポリペプチド、そのバリアントおよび/またはフラグメント、またはアルブミン、トランスフェリンおよびIgGのFc部分の群から選択されるポリペプチドを含む、請求項6記載の方法。
【請求項13】
治療用タンパク質が、単離されたポリペプチドのフラグメント、そのバリアントおよび/または抱合体、モノクローナル抗体および/またはそのフラグメントまたはドメイン抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項14】
治療用タンパク質が、エキセンディン3、エキセンディン4、ヒトGLP−1ならびにそのフラグメント、バリアントおよび/または抱合体の群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの内在性タンパク質が、抗体、サイトカイン、腫瘍付随タンパク質、天然の受容体リガンド、ホルモン、GLP−1、グルカゴン、インスリンおよび膜貫通タンパク質の群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項16】
第1のプロテアーゼが、Lys−C、トリプシン、Asp−N、Arg−C、Asn−C、ポストプロリン切断酵素およびCNbrの群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
安定で検出可能な標準ペプチドを調製する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
安定で検出可能な標準ペプチドが少なくとも1つのタンパク質とは別の容器にて調製される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
安定で検出可能な標準ペプチドが血漿と接触する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
安定で検出可能な標準ペプチドが第2のプロテアーゼでさらに消化される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第2のプロテアーゼが、Lys−C、トリプシン、Asp−N、Arg−C、Asn−C、ポストプロリン切断酵素およびCNbrの群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第1および第2のプロテアーゼが同じである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
安定で検出可能な標準ペプチドが同位体で標識されている、請求項18記載の方法。
【請求項25】
治療用タンパク質のペプチドライブラリーを作製する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
プロテアーゼで消化する際に生じるであろう少なくとも1つのタンパク質のフラグメントを選択する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
フラグメントが、以下の特徴:質量、電荷、大きさ、二次構造および三次構造の1つまたは複数に基づいて、プロテアーゼによって生じた治療用タンパク質のその他のフラグメントから分離され得る、請求項26記載の方法。
【請求項28】
ハイスループットな方法である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
定量的である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
血漿における少なくとも1つのタンパク質の少なくとも1つの薬物動態パラメータを計算する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
血漿における少なくとも1つのタンパク質の少なくとも1つの薬力学パラメータを計算する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
サンプルの再現性がELISAによって確認される、請求項1記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−530962(P2010−530962A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512342(P2010−512342)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/066661
【国際公開番号】WO2008/154619
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】