説明

血管の過敏反応と関連した皮膚状態を治療する方法および組成物

【課題】本発明は、慢性または反復発作性の紅潮または赤面、および/または酒さなどの、血管の過敏反応により特徴付けられる皮膚状態を有する患者を治療する方法および組成物を提供する。
【解決手段】この方法は、局所用組成物を、患者の皮膚の患部に適用することを含む。局所用組成物は、皮膚の微小血管系における血管拡張を減少させる有効量のボツリヌス神経毒素と、ボツリヌス毒素を皮膚の微小血管系に有効に輸送するための担体とを含む。本発明は、それにより、皮膚における血管の過敏反応を治療する、安全、有効、快適、および/または好都合な方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年4月1日出願の米国特許仮出願第61/165,701の利益を主張する。
【0002】
電子データにより提出されたテキストファイルの説明
本明細書とともに電子データによりに提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:Sequence Listingのコンピュータで読み取り可能なフォーマットのコピー(ファイル名:REVA 003_01WO SeqList_ST25.txt、データ記録日:2010年3月30日、ファイルサイズ4キロバイト)。
【0003】
発明の分野
本発明は、血管の過敏反応、または過敏性の血管拡張により特徴付けられる皮膚状態の治療に関する。特に、本発明は、酒さなどの状態を治療するため、または酒さの進行を予防するかまたは遅延させるための、ボツリヌス神経毒素の局所用製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
酒さは、顔の表面の血管の拡張、赤いドーム状の丘疹、灼熱感およびそう痒感、および赤い、団子鼻に進行する可能性のある、顔面の発赤を特徴とする慢性状態である。酒さには、1400万を超えるアメリカ人が罹患しており(National Rosacea Society、2009)、発症のピーク年齢は30歳〜60歳の間である。
【0005】
酒さは、様々に症状の異なる少なくとも4つのサブタイプに分類することができ、患者は、同時に1つまたは複数のサブタイプに罹患する場合がある(Wilkinら (2004)、J Am Acad Dermatol、Vol. 50 (6): 907-12)。紅斑毛細血管拡張性酒さは、頬、額、および鼻の持続性の紅斑(すなわち発赤)によって特徴付けられ、患者は、すぐに赤面および紅潮する傾向を有する。典型的には、小血管が、皮膚の表面近くで目に見え(例えば、毛細血管拡張症)、個体は、灼熱感またはそう痒感を経験することがある。丘疹膿疱性の酒さは、そのうちのいくつかは膿がたまっており(膿疱)、赤い丘疹を伴う顔の中央を横切るいくらかの持続性の発赤の存在のために、ざ瘡と容易に混同される可能性がある。腫瘤状(phymatous)酒さは、皮脂腺過形成による鼻の腫大である鼻瘤に最もよく付随するサブタイプである。腫瘤状酒さの症状は、皮膚の肥厚、表面が凸凹した小結節形成、および腫大を含み得、これはまた顎先、額、頬、眼瞼、および耳に影響を及ぼすこともある(Jansen and Plewig G (1998)、Facial Plast Surg、Vol. 14 (4): 241-53)。第4のサブタイプは、眼性酒さとしても知られているが、眼に主に影響を及ぼし、充血した刺激眼、目のゴロゴロ感、眼瞼の腫脹、反復性のものもらい、ならびにそう痒感および灼熱感を特徴とする。
【0006】
酒さの症状は、多くの患者にとって社会的に不具合があり、この状態は数年間持続する場合があり、治療せずにそれ自体が回復することはほとんどない。治療は、典型的には、症状のタイプおよび重症度が様々であることから、個人に合わせて調整される。抗生物質、レチノイド、過酸化ベンゾイル、およびβブロッカーを含む様々な経口および局所薬物療法が、状態を管理下におくために最初に処方され、これは長くて1〜2年かかることがある。状態の寛解を維持するために、長期の治療が必要となることが多い。酒さのより進行した段階は、目に見える表面の血管を除去するため、広範囲の発赤を減少させるため、または鼻の美観が損なわれた状態を改善するために、レーザー、強度の光源、または外科的処置を必要とすることがある。
【0007】
酒さおよび関連した症状のために現在利用可能である治療は、費用対効果が低く、実質的な医学的リスクを有する可能性がある。さらに、局所的治療は好ましくない全身の毒性を回避するという利点を有するが、局所的治療の有効性は、例えば、患部の皮膚の面積が広いこと、皮膚の微小血管系の深さが様々であること、および患者の皮膚の個々の変動によって、限定的である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酒さに有効な治療、ならびに酒さの進行を予防するために有効な治療を含む、血管の過敏反応と関連した皮膚状態のためのより有効な治療が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、皮膚の微小血管系における血管拡張を治療する、減少させる、または改善する方法および組成物を提供する。したがって、本発明は、酒さなどの状態を特徴付ける血管の過敏反応を治療または改善するために有用である。さらに、本発明の方法および組成物は、慢性または反復発作性の(episodic)紅潮および赤面などの症状を緩和し、それらの酒さへの進行を予防することができる。
【0010】
一態様において、本発明は、慢性もしくは反復発作性の紅潮もしくは赤面などの皮膚血管の過敏反応、または酒さを特徴とする皮膚状態を有する患者を治療する方法を提供する。この方法は、局所用組成物を患者の皮膚の患部に適用することを含む。局所用組成物は、皮膚の微小血管系における血管拡張を減少させるのに有効量のボツリヌス神経毒素と、ボツリヌス毒素を皮膚の微小血管系に有効に輸送するための担体とを含む。例えば、ある特定の実施形態では、ボツリヌス神経毒素は、HIV−TATまたは逆HIV−TATアミノ酸配列などの1つまたは複数のタンパク質膜伝達ドメイン(またはトランスポータードメイン)を有する、正荷電ペプチド担体(例えば、ポリリシン)とともに製剤化される。この方法は、局所用ボツリヌス毒素の患部への単回の適用を伴う場合があり、または、ある特定の実施形態では、反復適用を伴う場合がある。
【0011】
本発明は、有効量のボツリヌス毒素が皮膚の患部に制御可能に適用されること、および下層の微小血管系に制御可能に送達されることを可能にする。本発明はそれによって、酒さを治療する、改善する、もしくはその進行を予防するように、および/または慢性もしくは反復発作性の血管の過敏反応が酒さなどの状態に進行するのを予防するように、皮膚血管の過敏反応を治療する安全な、有効な、および快適な方法を提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、皮膚血管の過敏反応の治療のためにボツリヌス神経毒素を局所的に投与するための組成物、製剤、キット、および/または他のビヒクルもしくはデバイスを提供する。例えば、本発明は、ボツリヌス神経毒素および担体を好都合に、安全に、快適におよび/または制御可能に患者の皮膚の患部に適用できるようにするクリーム剤、ローション剤、ゲル剤、およびパッチ剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、皮膚の微小血管系における血管拡張を治療する、減少させる、または改善する方法および組成物を提供する。したがって、本発明は、酒さなどの状態を特徴付ける血管の過敏反応を治療する、または改善するために有用である。本発明は、局所用組成物を患者の皮膚の患部に適用することを含む。局所用組成物は、皮膚の微小血管系における血管拡張を減少させる有効量のボツリヌス菌神経毒と、ボツリヌス毒素を皮膚の微小血管系に有効に輸送する担体とを含む。
【0014】
ボツリヌス毒素は、(一般に注射によって)軟組織においてアセチルコリンの作用を媒介することが知られており、発汗を減少させ、筋肉の痙攣を阻害するために有効に使用されてきた。しかしながら、本発明によると、ボツリヌス毒素は、皮膚の微小血管系における血管拡張を減少させるために局所的に投与され、それにより皮膚血管の過敏反応を減少させる。本発明は、孤立性の状態としての慢性または反復発作性の紅潮または赤面を減少させるかもしくは解消するか、および/または、酒さの進行性疾患、例えば、紅潮、丘疹、および結果として生じる鼻瘤を遅らせるかまたは予防する。
【0015】
血管収縮は、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)または前シナプス小胞中に含まれる他のペプチドの放出を阻害することによって媒介され得る。血管拡張性ニューロペプチドは、ヒト真皮の微小血管系における酸化窒素形成を強化することによる、末梢循環の血管緊張に関与している。理論に拘束されることなく、ボツリヌス神経毒素は、汗腺神経終末からアセチルコリンとともに同時放出されるCGRPおよびVIPなどの血管拡張性ニューロペプチドの放出をブロックすることによって、皮膚の微小血管系における血管拡張を減少させ得る。したがって、ボツリヌス神経毒素を用いて血管拡張剤の放出を阻害することにより、血管収縮または血管拡張の回避ならびに皮膚の赤面および紅潮、したがってその後の酒さの進行性疾患の発症の回避をもたらすことができる。
【0016】
酒さのための既存の治療は、局所および経口による抗生物質、過酸化ベンゾイル、レチノイド、βブロッカー、コルチゾンクリーム、およびレーザーまたは超短パルス光治療を含む。これらの治療のすべては、1つまたは複数の不利点を伴う。局所および経口による抗生物質は、死に至る可能性のある、細菌の多剤耐性およびアレルギー反応を助長するリスクを有する。過酸化ベンゾイルおよびレチノイドは、皮膚に対する刺激となる可能性があり、コルチゾンクリームは短期間の使用に限定され、停止したときに反動による急激な再燃を引き起こす可能性がある。βブロッカーは、倦怠感および性機能障害などの好ましくない副作用を生じる可能性がある。レーザーおよび超短パルス光治療による関連リスクは、瘢痕、挫傷、長期の回復、高額な費用、および痛みを含む。
【0017】
本明細書に記載されている局所用ボツリヌス神経毒素組成物および関連した治療は、酒さのための既存の治療に関連する不利点を克服する。組成物は、広い面積に対してに適用することができ、痛みを引き起こさず、長期間の緩和をもたらし、慢性状態における抗生物質濫用のリスクを解消する。加えて、局所用製剤は、注入用ボツリヌス神経毒素を使用する技術的困難のいくつかを克服する。例えば、注入用ボツリヌス神経毒素の投与は、処置者によるところが大きく、顔面神経および筋肉に深すぎる深さまで注射され、結果として機能障害および顔面の非対称をもたらす可能性がある。血管過敏性の皮膚状態を適当に治療するために必要とされる、ボツリヌス神経毒素を顔、首および胸部の広い表面積に注射することは、極めて困難である。注射は、連続的ではなく、したがって、均一な適用については拡散に依存する。ボツリヌス神経毒素の血管過敏性患者の皮膚への注射は、皮膚をより敏感にし、赤くし、傷をつける可能性が高く、したがって、治療される特定の皮膚状態を刺激する。本発明の組成物は、皮膚の表層を標的とするように設計され、広い面積に対して均一に適用できるボツリヌス毒素の希釈局所剤形を提供する。
【0018】
本発明は、それにより、酒さを治療または改善するため、および/または慢性または反復発作性の血管の過敏反応が酒さなどの状態に進行するのを予防するために、慢性または反復発作性の血管の過敏反応を含む皮膚血管の過敏反応を治療する、安全な、有効な、快適な、および/または好都合な方法を提供する。
【0019】
皮膚血管の過敏反応を特徴とする状態
治療される患者は、限定はしないが、紅潮、赤面、および酒さなどの皮膚血管の過敏反応に関連した皮膚状態を有する。
【0020】
紅潮は、顔、首および頻繁ではないが上部体幹および腹部の温感または灼熱感を伴う皮膚の発赤の反復性の発作である。紅潮を、感光性、急性の接触反応、または日光弾性線維症の持続性の紅斑と区別するのは、その発作の一過性の性質である(Greaves (1998) Flushing and flushing syndromes, rosacea and perioral dermatitis. In: Champion RHら編、Rook/Wilkinson/Ebling textbook of dermatology、第6版、Vol. 3: 2099-2104)。
【0021】
赤面は紅潮に関するが、典型的には、強度は低く、顔または頬の発赤に限定される。長期間にわたって反復される紅潮は、毛細血管拡張症および顔の酒さ(Greaves (1998) Flushing and flushing syndromes, rosacea and perioral dermatitis. In: Champion RHら編、Rook/Wilkinson/Ebling textbook of dermatology、第6版、Vol. 3: 2099-2104)をもたらす可能性がある。酒さの最初の赤面および紅潮は、持続性の発赤、丘疹、嚢胞、および結果として生じる鼻瘤を特徴とする酒さの進行した段階またはサブタイプをもたらし得る。
【0022】
紅潮または赤面は、社会恐怖症(例えば全般性不安障害、パニック障害)、アルコール中毒、更年期障害および月経前症候群、糖尿病、肺障害または肺疾患(例えば肺気腫、慢性気管支炎)、虫刺されアレルギー、妊娠、肥満細胞症、ソトス症候群、ゾリンジャーエリソン症候群、クッシング症候群、ホジキン病、敗血症、黄熱、ナイアシン誘導体、アシピモックス、急性ストレス障害、副腎癌、抗コリン作動性症候群、出血熱、自律神経反射異常症候群、カルチノイド症候群、副腎髄質機能亢進症、充血、高血糖症、性腺刺激ホルモン過剰性卵巣不全、胃腸膵臓神経内分泌腫瘍形成、高マグネシウム血症、甲状腺機能亢進症、延髄甲状腺癌腫、僧帽弁膜症、オピオイド離脱、神経芽細胞腫、ナイアシン毒性、腫瘍随伴性自己免疫症候群、下垂体腺疾患、脊髄自律神経反射異常、胸腺癌、および甲状腺癌を含むがこれらに限定されない、基礎となる状態または疾患から生じ得る。
【0023】
ある特定の実施形態では、患者は、紅斑毛細血管拡張性酒さ、丘疹膿疱性の酒さ、腫瘤状酒さ、および/または眼性酒さの1つまたは複数のような酒さを有する(例えば、それを有すると診断されている)。これらのまたは他の実施形態において、患者は、酒さの1つまたは複数の症状を有する。酒さの1つまたは複数の症状は、紅斑、紅潮、赤面、毛細血管拡張症、丘疹、膿疱、鼻瘤、灼熱感、およびそう痒感を含む。そのような1つまたは複数の症状は、本発明に従って向上または改善される。
【0024】
ある特定の実施形態では、患者は酒さを有するが、腫瘤状酒さとともに、または酒さの進行した段階において頻繁に起こる鼻瘤はまだ有していない。鼻瘤は、鼻の先の皮脂腺の肥大によって引き起こされる、ゆっくりと成長する鼻の良性腫瘍である。これらの実施形態によれば、本発明の組成物および方法は、鼻瘤の発症を予防することができる。
【0025】
ボツリヌス毒素
本発明の方法および組成物は、本明細書に記載の局所送達のために製剤化された、ボツリヌス神経毒素を含む。ボツリヌス毒素またはボツリヌス神経毒素は、グラム陽性細菌であるボツリヌス菌(Clostridium botulinum)により産生される神経毒であり、人に知られている最も致死的な物質の1つである。この神経毒は、神経筋接続部のシナプス前神経終末からのアセチルコリンの放出を妨げることによって筋肉の麻痺を生じさせることがよく知られている。この神経毒は、そのうえ、自律神経系のコリン作動性シナプスにおけるシナプス伝達を阻害することができる。
【0026】
ボツリヌス毒素は、血清学的に関連しているが区別できる8種の神経毒に分類される。これらのうち、7種、すなわち、ボツリヌス神経毒素血清型A、B、C、D、E、FおよびGは麻痺を引き起こすことができる。これらの血清型のそれぞれは、型特異的抗体を用いた中和によって区別される。各血清型は、細菌から単離することができ、または、組換えによって作製することができる。7種すべての毒素血清型に関して、精製された活性なボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、約150kDaであり、これは100kDaの重鎖および50kDaの軽鎖を含む。細菌によって放出されるボツリヌス毒素は、150kDaのボツリヌス毒素タンパク質分子を、結合した(associated with)非毒性タンパク質と一緒に含む複合体である。ボツリヌス毒素A型複合体は、クロストリジウム属(Clostridia)細菌によって、900kDa、500kDaおよび300kDaフォームとして産生されることができる。ボツリヌス毒素B型およびC型は、700kDaまたは500kDa複合体として産生されことができる。ボツリヌス毒素D型は、300kDaおよび500kDa複合体の両方として産生され、一方、ボツリヌス毒素E型およびF型は、約300kDa複合体としてのみ産生される。150kDaのボツリヌス毒素と結合した非毒性タンパク質は、変性に対する安定性を提供する、および、毒素が摂取されたときの消化器酸に対する保護を提供すると考えられる。上記のボツリヌス神経毒素の複合形態は、本明細書に記載の組成物および方法と関連して使用され得るが、本発明のある特定の実施形態において、ボツリヌス毒素は精製され(例えば、アクセサリータンパク質と結合していない)、約150kDaの分子量を有する。
【0027】
ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、F、およびGから選択することができる。ある特定の実施形態において、ボツリヌス毒素は、A1型、A2型および/またはA3型を含むボツリヌス毒素血清型Aである。例示的なA型産生株は、Hall株(A1型)、Kyoto F(A2型)、およびNCTC2916(A1型)を含む。Jacobsonら、Analysis of Neurotoxin Cluster Genes in Clostridium botulinum Strains Producing Botulinum Neurotoxin Serotype A Subtypes、Appl.Environ.Microbiol.74(9):2778~2786(2008)を参照されたい。本発明の方法および組成物において使用するのに適したボツリヌス毒素は、クロストリジウム属細菌によって産生させ、精製するか、または代替として組換え技術または合成技術によって作製することができる。例えば、毒素は、組換えペプチド、融合タンパク質、または異なるボツリヌス毒素血清型のサブユニットもしくはドメインから調製されたハイブリッド神経毒であってもよい(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,444,209号を参照されたい)。
【0028】
7種すべてのボツリヌス毒素血清型(A、B、C、D、E、F、およびG)は、Sigma−AldrichおよびMetabiologics,Inc.(マディソン、ウィスコンシン州)、ならびに他の供給源から市販されている。少なくとも2つの型のボツリヌス毒素、A型およびB型は、ある特定のヒトの状態の治療のための製剤として市販されている。A型は、例えば、BOTOX(登録商標)(Allergan)およびDYSPORT(登録商標)(Ipsen)中に含有されており、B型は、MYOBLOC(登録商標)(Elan)中に含有されている。
【0029】
ボツリヌス毒素は、代替として、ボツリヌス毒素誘導体、例えば、ボツリヌス毒素活性を有するが、天然に存在するかまたは組換えのネイティブなボツリヌス毒素と比べて1つまたは複数の化学的または機能的改変を含有する化合物であってもよい。例えば、ボツリヌス毒素は、修飾された神経毒(例えば、ネイティブな、または組換えにより作製された神経毒と比較して、そのアミノ酸の少なくとも1つが欠失した、修飾された、または置き換えられた神経毒)とすることができる。例えば、ボツリヌス毒素は、1個〜約20個、または1個〜約10個、または1個〜約5個の、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を(集合的に)有するA型(A2型またはA3型を含む)またはB型毒素であってもよい。ボツリヌス毒素は、必要なボツリヌス毒素活性を有する全体の分子の部分であってもよく、そのような場合、それ自体で、または組合せ分子もしくはコンジュゲート分子、例えば、融合タンパク質の一部として、使用されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型の組合せである。例えば、本発明は、ボツリヌス毒素血清型Aおよび血清型Bの組合せを用いてもよい。
【0031】
担体分子
本発明によると、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素を皮膚の微小血管系に有効に輸送するための担体とともに製剤化される。本発明は、有効量のボツリヌス毒素が、皮膚の患部(広い面積であってもよい)に制御可能に適用されること、および下層の微小血管系に制御可能に送達されることを可能にする。本発明によると、担体は、ペプチド担体または非ペプチドポリマー担体であり、一般に、正に荷電している。
【0032】
担体は、参照により本明細書に組み込まれる、WO 2008/082885において記載されている、HIV−TATまたは逆HIV−TATアミノ酸配列などの、少なくとも1つのタンパク質膜伝達ドメインまたは輸送ドメインを含むことができる。例示的な輸送ドメインは、HIV−TAT塩基性領域(天然HIV−TATタンパク質のアミノ酸49〜57)の逆配列に相当するアミノ酸配列を有する。HIV−TAT塩基性領域(RRRQRRKKR(配列番号1))の逆配列は、以後、「逆HIV−TAT」と称する。
【0033】
例示的な担体は、したがって、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO 2009/015385において記載されているペプチドを含む。例えば、担体は、HIV−TAT配列または逆HIV−TAT配列をN末端またはC末端、またはN末端とC末端の両方に含む陽イオン性ペプチドであってもよい。例えば、ペプチド担体は、Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg(配列番号2)などのHIV−TAT配列、または、Arg−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Lys−Lys−Arg(配列番号1)などの逆HIV TAT配列を、N末端もしくはC末端またはN末端とC末端の両方に有していてもよい。
【0034】
一実施形態において、担体は、HIV−TATまたは逆HIV−TAT配列であるN末端部分、HIV−TATまたは逆HIV−TAT配列であるC末端部分、およびN末端部分とC末端部分の間の1つまたは複数の陽イオン性残基(例えば、LysまたはArg)を含む。例えば、ペプチドは、N末端部分とC末端部分の間にLysなどの5〜20個の陽イオン性残基、例えば約12個、約15個、または約17個の陽イオン性残基などを有していてもよい。例示的な担体は、したがって、Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg−Gly−(Lys)n−Gly−Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg(配列番号3)、またはArg−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Lys−Lys−Arg−Gly−(Lys)n−Gly−Arg−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Lys−Lys−Arg(配列番号4)を含み、nは約5〜約20、例えば、約10〜約20などである。一実施形態において、ペプチドのN末端部分は、HIV−TAT配列であり、ペプチドのC末端部分はHIV−TAT配列である。代替として、または加えて、担体は、N末端部分が逆HIV−TAT配列であり、C末端部分が逆HIV−TAT配列であるペプチドを含んでいてもよい。例えば、ペプチドは、以下のアミノ酸配列:Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg−Gly−(Lys)15−Gly−Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg(配列番号5)を有していてもよい。
【0035】
一般に、担体は、ArgおよびLys残基の含有量が特に高いと特徴付けられる。例えば、担体は、集合的に、少なくとも約50%のArgおよびLysアミノ酸残基を含有し得るが、ArgおよびLys残基を少なくとも約75%、または少なくとも約80%含有し得る。これらのまたは他の実施形態において、そのような誘導体は、配列番号3、4、または5に対して1、2、3、または4個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含む、1個〜5個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失(集合的に)を有する配列番号3、4、または5のアミノ酸配列を有し得る。ある特定の実施形態では、そのような置換、挿入、または欠失は、HIV−TATまたは逆HIV−TAT配列内に位置する。
【0036】
担体は、約15アミノ酸〜約100アミノ酸の長さを有するペプチドであってもよい。ある特定の実施形態では、担体は、長さが約25〜約50、または約25〜約40アミノ酸である。本発明の例示的な実施形態において、担体ペプチドは、長さが約35アミノ酸である。担体の長さは、担体の長さを変えることによって、ボツリヌス神経毒素を皮膚中の異なる浸透深さまで運ぶように設計することができる。例えば、より長いポリマー担体は、皮膚のより深い層まで浸透する。
【0037】
本発明と関連して使用するために適した他の担体は、皮膚バリアを通過して下層の真皮の所望の深さまでボツリヌス毒素を送達するための正荷電ポリマー担体を含む。そのような担体は、ともにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2004/0220100号およびWO 2005/084410において開示されているポリマー担体を含む。これらの実施形態において、正荷電ポリマー担体は、ポリマーの主鎖に接続している正荷電分岐基を含む。本明細書において使用される場合、「正に荷電した」とは、担体が、生理的に適合性の条件下で正の電荷を有することを意味する。
【0038】
一般に、正荷電ポリマー担体は、生理的pHで正の電荷を保有する、鎖中の基、または主鎖から伸びている側鎖に接続している正の電荷を保有する基のいずれかを有する、原子の直鎖である。正荷電主鎖それ自体は、規定の酵素的または治療的な生物活性を有する必要はない。直鎖状主鎖は炭化水素主鎖であり、いくつかの実施形態において、窒素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンから選択されるヘテロ原子が割り込んでいる。主鎖原子の大部分は炭素である。さらに、主鎖は、繰り返し単位(例えば、アミノ酸、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンアミン)、ポリアルキレンイミンなど)のポリマーとすることができるが、代替として、ヘテロポリマーであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマー主鎖は、正荷電ポリペプチド(例えば、ポリリシン)である。別の実施形態では、正荷電主鎖は、多数のアミン窒素原子が正の電荷を保有するアンモニウム基(四置換された)として存在するポリプロピレンアミンである。
【0039】
正荷電主鎖は、約10,000〜約2,500,000、または約100,000〜約1,800,000、または約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、ポリアルキレンイミンなどのヘテロポリマーまたはホモポリマーであってもよい非ペプチジルポリマー、例えば、ポリエチレンイミンまたはポリプロピレンイミンであってもよい。ポリマー担体の長さは、担体の長さを変えることによって、ボツリヌス神経毒素を皮膚の異なる浸透深さまで運ぶように設計することができる。例えば、より長いポリマー担体は、皮膚のより深い層まで浸透する。
【0040】
ある特定の実施形態では、主鎖は、正荷電基(例えば、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、グアニジニウム基、またはアミジニウム基)を含む、複数の側鎖部分を接続している。側鎖部分は、一定または異なる間隔で、主鎖に沿って配置されていてもよい。さらに、側鎖の長さは、同様でも、または異なっていてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、側鎖は、1個〜20個の炭素原子を有し、上記の正荷電基の1つの遠位端(主鎖から離れた)で終結している直鎖状または分岐状の炭化水素鎖とすることができる。
【0041】
担体と生物活性剤(例えば、ボツリヌス毒素)の間の結合は、一般に、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワァールス力、またはこれらの組合せによるものなどの、非共有結合性相互作用によるものである。
【0042】
いくつかの実施形態では、正荷電主鎖は、複数の正荷電側鎖基(例えば、リシン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニンなど)を有するポリペプチドである。好ましくは、ポリペプチドは、約10,000〜約1,500,000、または約25,000〜約1,200,000、または約100,000〜約1,000,000の分子量を有する。担体中でアミノ酸が使用される場合、側鎖は結合中心で、D型またはL型(R配置またはS配置)のいずれかを有することができることを、当業者は理解するであろう。あるいは、主鎖は、ペプトイドなどのポリペプチド類似体であってもよい。例えば、Kessler, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., Vol. 32:543 (1993);Zuckermannら、Chemtracts-Macromol. Chem., Vol. 4:80 (1992);およびSimonら、Proc. Nat’l. Acad. Sci USA, Vol. 89:9367 (1992)を参照されたい。簡潔には、ペプトイドは、側鎖が、主鎖のα−炭素原子ではなく、窒素原子に接続したポリグリシンである。側鎖の一部は正荷電基末端であることができ、正荷電主鎖成分を提供する。ペプトイドの合成は、例えば、米国特許第5,877,278号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中で使用される場合、ペプトイド主鎖構造を有する正荷電主鎖は、α−炭素位置で天然に産生する主鎖を有するアミノ酸からなるものではないため、「非ペプチド」であると考える。
【0043】
例えば、ペプチドのアミド結合が、エステル結合、チオアミド(−CSNH−)、逆チオアミド(−NHCS−)、アミノメチレン(−NHCH−)または他の逆メチレンアミノ(−CHNH−)基、ケトメチレン(−COCH−)基、ホスフィン酸塩(−PORCH−)、ホスホンアミデートおよびホスホンアミデートエステル(−PORNH−)、逆ペプチド(−NHCO−)、trans−アルケン(−CR=CH−)、フルオロアルケン(−CF=CH−)、ジメチレン(−CHCH−)、チオエステル(−CHS−)、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH−)、メチレンオキシ(−CHO−)、テトラゾール(CN)、スルホンアミド(−SONH−)、メチレンスルホンアミド(−CHRSONH−)、逆スルホンアミド(−NHSO−)のような代替物で置換された、ポリペプチドの立体的または電子的模倣物を利用する様々な主鎖、ならびにマロン酸エステルおよび/またはgem−ジアミノ−アルキルサブユニットを有する主鎖を使用することができ、これらはFletcherらにより考察され((1998) Chem. Rev., Vol. 98:763)、そこで引用される参考文献中に詳述される。前述の置換の多くは、α−アミノ酸から形成される主鎖に関連した、ほぼ等立体配置の(isosteric)ポリマー主鎖をもたらす。
【0044】
上述の各主鎖において、正荷電基を担持する側鎖基を付加することができる。例えば、スルホンアミド結合主鎖(−SONH−および−NHSO−)は、窒素原子に接続した側鎖基を有することができる。同様に、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH−)結合は、ヒドロキシ置換基に接続した側鎖基を有することができる。当業者であれば、標準的合成方法を使用して正荷電側鎖基を提供するために、他の結合科学を容易に適用することができる。
【0045】
1つの実施形態において、正荷電ポリマー担体は、分岐基(有効(efficiency)基とも呼ばれる)を有するポリペプチドである。本明細書中において、有効基または分岐基とは、組織または細胞膜を介した正荷電ポリマー担体の移行を促進する効果を有する任意の物質である。分岐基または有効基の非限定的な例は、HIV−TATもしくは逆HIV−TAT(記載されたような)またはそれらのフラグメント、アンテナペディアのタンパク質導入ドメインまたはそのフラグメント、あるいは(gly)n1−(arg)n2(式中、n1は約0〜約20、または0〜約8、または2〜約5の整数である。n2は独立して約5〜約25、または約7〜約17、または約7〜約13の奇数である)を含む。
【0046】
他の実施形態は、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)(配列番号6)、(gly)−YGRKKRRQRRR−(gly)(配列番号7)または(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(配列番号8)(式中、pおよびqは、それぞれ独立して0〜20の整数である)を有するHIV−TATフラグメントまたは逆HIV−TAT配列を使用し、フラグメントはフラグメントのC末端またはN末端を介して主鎖に接続する。HIV−TATフラグメントは、pおよびqが、それぞれ独立して0〜約8、たとえば2〜約5の整数であるものを含む。
【0047】
正荷電側鎖または分岐鎖は、アンテナペディア(Antp)タンパク質導入ドメイン(PTD)またはそれらのフラグメントであって活性を保持するものであり得る。例えばConsoleら、J. Biol. Chem., Vol. 278:35109 (2003)からのもののように、これらは技術分野で公知である。
【0048】
正荷電ポリマー担体は、正荷電分岐基を、全担体重量の百分率として、少なくとも約0.05%、例えば約0.05〜約45%、または約0.1〜約30%の量で含み得る。式−(gly)n1−(arg)n2を有する正荷電分岐基については、その量は約0.1〜約25%であり得る。
【0049】
特定の実施形態において、担体の主鎖部分はポリリシンであり、(上述したような)正荷電分岐基はリシン側鎖アミノ酸に接続している。ポリリシンは、約10,000〜約1,500,000、たとえば約25,000〜約1,200,000、または約100,000〜約1,000,000の分子量を有し得る。これは、任意の市販のポリリシン(Sigma Chemical Company、セントルイス、ミズーリ州、米国)、たとえば、MW>70,000を有するポリリシン、70,000〜150,000のMWを有するポリリシン、150,000〜300,000のMWを有するポリリシン、およびMW>300,000を有するポリリシンなどであることができる。適切なポリリシンの選択は、組成物の残りの成分に依存し、組成物に全体で正味の正荷電を提供し、負荷電成分の合計長の好ましくは1倍〜4倍の長さを与えるのに十分であろう。
【0050】
他の実施形態において、担体は、比較的短いポリリシンまたはポリエチレンイミン(PEI)主鎖(直鎖状または分岐状であり得る)であって、正荷電分岐基を有するものであり得る。輸送効率を劇的に減少させる、治療用組成物中における主鎖とボツリヌス毒素との制御されない凝集を最小化するために、そのような担体は有用であり得る。担体が比較的短い直鎖ポリリシンまたはPEI主鎖である場合、主鎖は、約75,000未満、または約30,000未満、または約25,000未満の分子量を有するであろう。しかしながら、担体が比較的短い分岐ポリリシンまたはPEI主鎖である場合、主鎖は、約60,000未満、または約55,000未満、または約50,000未満の分子量を有するであろう。しかしながら、もし本明細書に記載の分配剤が組成物中に含まれる場合、分岐ポリリシンおよびPEI主鎖の分子量は、最大約75,000までであることができ、一方、直鎖ポリリシンおよびPEI主鎖の分子量は、最大約150,000までであることができる。
【0051】
組成物および製剤
本発明の方法において使用される組成物は、好ましくは、有効量のボツリヌス毒素を含む。「有効量」は、有益なまたは所望の臨床結果に影響を及ぼすために十分な量、例えば、皮膚血管の過敏反応を減少させるために十分な量である。各実施形態における有効量は、ボツリヌス毒素の血清型、使用される毒素の形態(例えば、複合体または精製された二重鎖)に基づき、およびいくつかの実施形態においては、年齢、治療される状態(例えば、紅潮、赤面、酒さの特定のサブタイプ)、治療される皮膚面積の大きさ、および症状の重症度を含む患者に特有の因子に基づくであろう。
【0052】
いくつかの実施形態において、有効量は、精製されたボツリヌス神経毒素(例えば、血清型A)約0.1ng〜約2.0ngである。有効量は、精製されたボツリヌス神経毒素(例えば、血清型Aまたはボツリヌス神経毒素A型複合体)約0.2ng〜約1.5ng、または約0.5ng〜約1.0ngであってもよい。有効量は、本明細書において記載されている通り、治療を必要としている面積の大きさに応じて、クリーム剤またはゲル剤約0.5ml〜約10ml中に組み合わされてもよい。
【0053】
本発明の方法において使用するための組成物は、特定の治療を必要としている対象または患者、すなわち、ヒトまたは別の哺乳動物の皮膚または上皮への適用のために製剤化される。一般に、組成物は、ボツリヌス毒素を担体(上記)と、および任意選択により1つまたは複数のさらなる薬学的に許容される希釈剤または賦形剤と混合することによって調製される。担体のボツリヌス毒素に対する比は、質量で約10:1〜約1:10(例えば、約1:1)の範囲とすることができる。この比は、それぞれ約6:1〜約1.5:1であってもよい。そのような実施形態において、担体は、配列番号3、4、または5のペプチドとすることができる。
【0054】
組成物は、皮膚科学的または薬学的に許容される担体、ビヒクルまたは媒体(すなわち、それらが適用される組織と適合性の担体、ビヒクルまたは媒体)を含む、局所用医薬または薬用化粧品組成物において典型的な別の成分を含有していてもよい。「皮膚科学的にまたは薬学的に許容される」という用語は、本明細書において使用される場合、そのように記載されている組成物またはその構成成分が、これらの組織と接触させて使用するため、または一般に、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー応答などを示さない患者において使用するために、適していることを意味する。適切な場合、本発明の方法において使用するために適した組成物は、対象としている分野において、特に、化粧品および皮膚科学において従来から使用されている任意の成分を含むことができる。組成物はまた、ある量の小さな陰イオン、好ましくは、多価の陰イオン、例えば、リン酸、アスパラギン酸、またはクエン酸を含むことができる。
【0055】
剤形に関して、局所用ボツリヌス毒素組成物は、液剤、乳剤(マイクロエマルジョンを含む)、懸濁剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉剤、軟膏または皮膚および組成物が使用され得る別の組織への適用に使用される別の典型的な固体または液体組成物を含むことができる。そのような組成物は、ボツリヌス毒素および担体に加えて、抗菌物質、保湿剤および水和剤、浸透剤、防腐剤、乳化剤、天然油または合成油、溶媒、界面活性剤、洗浄剤、皮膚軟化剤、酸化防止剤、芳香剤、充填剤、増粘剤、ワックス、臭気吸収剤、色素、着色剤、粉剤などの、そのような製品において典型的に使用される別の成分を含有していてもよく、任意選択により、麻酔薬、かゆみ止め添加剤、植物性抽出物、コンディショニング剤、暗色化剤または美白剤、グリッター、湿潤剤、マイカ、ミネラル、ポリフェノール、シリコーンまたはその誘導体、日焼け止め、ビタミン、および薬用植物を含む。
【0056】
ある特定の実施形態では、組成物は、ゲル化剤および/または粘性調節剤を含む。これらの薬剤は、一般に、組成物の適用をより容易で正確にするように、組成物の粘性を増加させるために添加される。さらに、これらの薬剤は、ボツリヌス毒素の活性の減少を引き起こしやすいボツリヌス毒素/担体水溶液の乾燥を防ぐのに役立つ。例示的な薬剤は、荷電しておらず、皮膚を通過する際のボツリヌス毒素活性または毒素担体複合体の効率を妨げないものである。ゲル化剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの、特定のセルロース系ゲル化剤であってもよい。いくつかの実施形態において、ボツリヌス毒素/担体複合体は、HPC2〜4%を有する組成物中に製剤化される。代替として、ボツリヌス毒素/担体複合体を含有する溶液の粘性は、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することによって改変されてもよい。別の実施形態では、ボツリヌス毒素/担体溶液は、予め混合された、Cetaphil(登録商標)保湿剤などの粘性剤と組み合わされる。
【0057】
ある特定の実施形態では、組成物は、ポロキサマー系希釈剤をさらに含む。ポロキサマー希釈剤は、凍結乾燥されたタンパク質の希釈、次いで、規定の皮膚面積に適用され、そこにとどまるのに十分な粘性までのゲル化を行いやすいコポリマー界面活性剤である。ポロキサマーは、約10%〜20%で、例えば、0.9%生理食塩水中に存在していてもよい。約15%で、ポロキサマーは熱感受性である。換言すれば、組成物は、20℃以下の温度で液体のままであり、局所的な適用では20〜35℃の範囲の温度でゲル生成物が形成される。
【0058】
ボツリヌス毒素組成物は、任意選択により、分配剤(partitioning agent)を含むことができる。本明細書において使用される場合、「分配剤」は、正荷電ポリマー担体を含むボツリヌス毒素の好ましくないまたは制御されない凝集を予防または最小化するという特性を有する任意の物質または添加剤である。分配剤は、例えば、容量の制約から濃縮されたボツリヌス毒素溶液が用いられるとき、特に有用である。そのような実施形態において、分配剤は、ボツリヌス毒素の分散を保ち、それにより、分配剤なしでは起こる事態になると思われる毒素の凝集を予防する。一般に、分配剤は、(1)非刺激性である、(2)ボツリヌス毒素を破壊しない、(3)透過性の増加を付与しない、(4)確実および安定な粒径を与える、(5)荷電していない、および(6)毒素とポリマー担体の複合体を妨げない。
【0059】
適した分配剤の例は、エタノール(EtOH)である。例えば、EtOHは、組成物の20%未満、例えば、組成物の約5%未満などで存在していもよい。例のために、容量制約から100Uのボツリヌス毒素を2.5mlではなく0.5mlの溶液中で再構成することを必要とする場合、典型的には、ボツリヌス毒素が望ましくない凝集、したがって低下した活性を示すことが観察される。しかしながら、1%EtOHを分散剤として添加することによって、完全な活性が、24時間後であっても、この濃度で維持される。別の例として、0.9%NaCl1.0ml再構成のBotox(登録商標)は完全な活性を有し、一方、0.9%NaCIを加えた1%および5%EtOH中での0.5mlの再構成は、完全な活性を有する溶液をもたらす。
【0060】
本発明のある特定の実施形態において、オリゴアニオンまたはポリアニオン架橋を、ボツリヌス毒素組成物に添加して、正荷電担体との毒素の複合体形成を向上させる。そのような架橋は、ボツリヌス毒素複合体が組成物において使用されるときに特に有用である。複合体タンパク質の一部は正に荷電しており、一部は負に荷電している。毒素の構成成分の厳密な分布は、毒素の供給源に応じて変化するため、特定の供給源のボツリヌス毒素は、本明細書に記載の正荷電ポリマー担体と複合体形成する傾向がより低い恐れがある。しかしながら、オリゴアニオンまたはポリアニオン架橋をそのようなボツリヌス毒素複合体に添加することによって、局所投与の効率および効力は劇的に増加する。そのようなオリゴアニオン/ポリアニオン架橋の適した例は、リン酸ナトリウム(5%)、PBSまたは5%ポリ−L−アスパラギン酸(例えば、3000のMWを有する)を含む。
【0061】
本発明による組成物は、ボツリヌス毒素および担体がカプセル化されているか、またはそうでなければ経時的に制御されながら皮膚上に放出されるような材料中に含有されている、制御放出または持続放出組成物の形態とすることができる。ボツリヌス毒素および担体は、マトリックス、リポソーム、小胞、マイクロカプセル、ミクロスフェアなど内に、または固体粒子材料内に含有されていてもよく、これらはすべて、ボツリヌス毒素を経時的に放出するよう選択および/または構築される。ボツリヌス毒素および担体は、一緒に(例えば、同じカプセル中に)または別々に(別個のカプセル中に)カプセル化されていてもよい。
【0062】
局所用組成物の適用
組成物は、医師または別の医療専門家の指示によって、またはその指示のもとで、本発明の方法に従って投与される。組成物は、単回治療において、または経時的な一連の周期的治療において投与することができる。治療の作用は、約3、4、5、または6カ月継続することが予想される。したがって、局所用組成物は、1回投与されてもよく、または繰り返して、または常法に従って投与されてもよい。治療の頻度は変わり得るが、例えば、1か月に1回、または1年間に2回〜10回、例えば、1年間に2回〜5回であってもよい。治療は非刺激性であり、基礎にある状態を悪化させないため、必要であれば、1年、2年、3年、または4年以上の間の長期の治療が、可能である。
【0063】
本明細書に記載の本発明の方法によるボツリヌス毒素の局所送達では、上述の組成物が、作用が所望される皮膚の1箇所または複数箇所(例えば、皮膚の患部)に局所的に適用される。ボツリヌス毒素/担体水溶液を直接皮膚に適用する実施形態では、毒素活性の減少をもたらすと思われる溶液の乾燥を防ぐために、治療された領域を覆う(例えば、Cetaphil(登録商標)保湿剤で)か、または治療された領域をバリア(例えば、Telfa)でふさぐことが好ましい。その性質のために、最も好ましくは、適用されるボツリヌス毒素の量は、任意の有害なまたは望まない結果を生じさせずに所望の結果をもたらす適用比率および適用の頻度で、注意して適用されるべきである。したがって、例えば、本発明の局所用組成物は、皮膚表面の1cm当たりボツリヌス毒素約1U〜約20,000U、好ましくは約1U〜約10,000Uの比率で適用されるべきである。これらの範囲内のより高い投薬量は、例えば、制御放出材料(例えば、パッチ剤など)と併用して、好ましくは用いることができ、または除去前の皮膚上で短い滞留時間を可能にする。
【0064】
いくつかの実施形態において、血管の過敏反応により特徴付けられる皮膚状態を有する患者を治療する方法は、局所用ボツリヌス毒素組成物の適用の前に皮膚表面を準備することをさらに含む。ある特定の実施形態では、ボツリヌス毒素/担体組成物の適用前の皮膚表面の準備は、液剤の効力を促進する。例えば、適用前の皮膚表面の油の清浄化を目的とする皮膚の表面上への界面活性剤の導入は、界面活性剤がボツリヌス毒素の活性を破壊すると考えられるため、逆効果であり得る。これは、その後、ボツリヌス毒素/担体溶液の適用前に皮膚を水で数回洗浄した場合でも起こる。乳児用ワイプにおいて見られるものなどの、さらに非常に低刺激性の界面活性剤であっても、この現象を引き起こすようである。したがって、ある特定の実施形態では、皮膚は、水のみを使用して予め清浄化される。水のみで洗浄することはまた、ボツリヌス毒素の経皮輸送も中程度に向上させるようである。
【0065】
キットおよび送達デバイス
本発明は、血管の過敏反応により特徴付けられる皮膚状態を有する患者を治療するための経皮デバイスを提供する。そのようなデバイスは、本明細書に記載のようにボツリヌス毒素および担体を含有する。そのようなデバイスは、皮膚パッチ剤と同じ程度に構築が簡単であってもよく、または、組成物を分配するための手段およびその分配をモニタリングするための手段と、任意選択により、対象の状態をモニタリングする(例えば、分配されている物質に対する対象の反応をモニタリングする)ための手段とを含むより複雑なデバイスであってもよい。一実施形態において、本発明は、有効量の記載されているボツリヌス毒素および担体を含む皮膚パッチ剤を提供する。
【0066】
送達デバイスを構築するための材料は、デバイス表面上でのボツリヌス毒素の分解または好ましくない吸着のいずれかによる、ボツリヌス毒素/担体溶液の活性の喪失をもたらさないものとすることができる。そのような望まない挙動は、例えば、水溶液中のボツリヌス毒素/担体がポリプリピレン表面と接触するときに観察されているが、ボツリヌス毒素/担体溶液がポリ塩化ビニル(PVC)表面と接触するときには観察されていない。
【0067】
一般に、組成物は、デバイス中に予め製剤化および/または予め導入することができ、あるいは、例えば、2つの成分(ボツリヌス毒素および担体)を別々に含むが、適用時または適用前にこれらを組み合わせるための機構を提供するキットを使用して、より後に調製することができる。「と併用して」により、2つの構成成分(ボツリヌス毒素および担体)が、組合せ手順において投与されることを意味し、これは、組成物中でこれらの構成成分を組み合わせ、これをその後対象に投与すること、またはこれらの構成成分を別々に投与するが、これらの構成成分が一緒に作用して有効量のボツリヌス毒素の必要な送達をもたらすような方法であること、のいずれかを伴い得る。
【0068】
例えば、担体を含有する組成物はまず、患者の皮膚に適用されて、その後、ボツリヌス毒素を含有する皮膚パッチ剤または別のデバイスを適用してもよい。この2つが一緒に作用して、結果として所望の経皮送達をもたらすように、ボツリヌス毒素を、皮膚パッチ剤または別の分配デバイス中に乾燥形態で組み込むことができ、一方、正荷電ポリマー担体を、パッチ剤の適用前にクリーム剤またはローション剤で皮膚表面に適用することができる。したがって、この2つの物質(担体およびボツリヌス毒素)は、組み合わせて作用し、または相互作用してin situで組成物または組合せを形成することができる。
【0069】
したがって、本発明はまた、血管の過敏反応により特徴付けられる皮膚状態を治療するためのキットを提供する。キットは、本明細書において記載されている、有効量のボツリヌス毒素と、担体と、ポロキサマー希釈剤などの希釈剤とを含む。一実施形態において、皮膚状態は酒さである。いくつかの実施形態において、ボツリヌス毒素は、キット中で他の構成成分とは別々に包装されている。例えば、ボツリヌス毒素は、担体および/または希釈剤とは別個のバイアル中で凍結乾燥および保管することができる。別の実施形態において、ボツリヌス毒素は、デバイス中、例えば、皮膚パッチ剤中に包装されている。
【0070】
さらに別の実施形態において、正荷電ポリマー担体は、患者の皮膚または上皮への適用のために、液剤、ゲル剤、クリーム剤などの中に予め製剤化される。ある特定の実施形態では、キットはさらに、ボツリヌス毒素を正荷電ポリマー担体および希釈剤と混合するための、および局所用混合物を患者の皮膚の患部に適用するための道具および/または塗布具を含むことができる。
【0071】
別の実施形態では、キットは、神経毒治療の間または後に、治療された領域を維持するための構成成分を含むことができる。例えば、キットは、治療後に過剰のボツリヌス毒素組成物を除去するための低刺激性皮膚洗浄剤、発赤抑制ローション剤、酒さ用の1つまたは複数のさらなる局所用治療薬、および/またはSPF15以上の日焼け防止製品を含んでいてもよい。
【0072】
例えば、医院内での(in−office)治療と治療の間、患者に、治療された領域を維持するための治療後局所用神経毒治療系またはキットを提供してもよい。キットは、低刺激性皮膚洗浄剤(患者が朝および/または晩に適用することができる)と、低刺激性皮膚洗浄剤の後に適用することができる局所用発赤抑制ローション剤(例えば、Eucerin(登録商標)Anti-Redness系または甘草を含有する別のローション剤)と、SPF15以上の広スペクトル日焼け止め(日中、治療された領域を保護するため)とを含む。夕方に、患者は再度、低刺激性洗浄剤で洗浄し、その後、例えば、メトロニダゾールゲル剤(0.75%〜1.0%の範囲のUSP)などの1つまたは複数の局所用酒さ治療薬の局所投与を行ってもよい。
【0073】
以下の実施例を、本発明の様々な態様をさらに例示するために含める。
【実施例】
【0074】
(実施例1):ボツリヌス神経毒素の局所用製剤
例示的な製剤は、以下を含む:免疫原性が最小限で、動物またはヒト構成成分を含有しない、精製された150kDaのボツリヌス毒素A型;ボツリヌス毒素の下層の真皮への経皮的な送達を可能にする、担体ペプチド(R−K−K−R−R−Q−R−R−R−G−(K)15−G−R−K−K−R−R−Q−R−R−R配列番号5);および担体のビヒクルとして作用するポロキサマー系希釈剤。
【0075】
ボツリヌス毒素を、ボツリヌス菌(血清型A−Hall株)によって発酵培養物中で産生させ、100kDa重鎖および50kDa軽鎖から構成される完全に活性な二重鎖を、培養培地から精製する。市販されているBOTOX(登録商標)Cosmetic(Allergan)とは異なり、精製された150kDa神経毒は、細菌由来のアクセサリータンパク質のいずれにも結合しておらず、あるいは、ヒト血清アルブミン、ヘマグルチニン、または別のプールされたヒト由来構成成分中で製剤化されていない。
【0076】
精製されたボツリヌス神経毒素を、ペプチド担体と約1:1の質量比で組み合わせ、リン酸緩衝生理食塩水で200μLまで希釈する。結果として得られる混合物を、ポロキサマー系希釈剤(例えば、Pluronic(登録商標)F127、NF Grade、BASF Corp.)1.8mlと組み合わせる。ポロキサマー希釈剤は、凍結乾燥されたタンパク質の希釈、次いで、画定された皮膚領域に適用され、そこにとどまるのに十分な粘性までのゲル化を行いやすいコポリマー界面活性剤である。15%(0.9%生理食塩水で十分量)で、ポロキサマーは熱感受性である。換言すれば、組成物は、20℃以下の温度で液体のままであり、局所的な適用では、20〜35℃の範囲の温度でゲル生成物が形成される。
【0077】
(実施例2):局所用ボツリヌス神経毒素組成物による顔面の紅潮の治療
顔面の紅潮の治療では、凍結乾燥したボツリヌス神経毒素A型1ナノグラムを含有するバイアルを、ペプチド担体を含有する液体希釈剤とポロキサマー系希釈剤とを含有する第2のバイアルと混合する(実施例1を参照されたい)。構成成分を一緒に混合して、局所的に患部(例えば、患者の頬および鼻隆起部)に適用される滑らかな粘性のゲル剤を形成する。
【0078】
治療の2週間以内に、患者は、例えば、安静時および運動時における顔面の紅斑の顕著な改善を認めると予想される。例えば、治療後、紅潮は、治療領域全体においてわずかに知覚できるのみであろう。わずかな毛細血管拡張症は、局所用ボツリヌス神経毒素ゲル剤による治療後、わずかに知覚できるのみであろう。注入用ボツリヌス神経毒素を使用する場合に報告される有害事象である、頬下垂の目に見える徴候がないこともまた予想される。結果は、2カ月以上の間持続することが予想される。
【0079】
(実施例3):局所用ボツリヌス神経毒素組成物による酒さの治療
顔の中央部の中等度の浮腫、紅斑および丘疹を伴うものを含む酒さの治療では、凍結乾燥したボツリヌス神経毒素A型1.2ナノグラムを、担体ペプチドおよびポロキサマー系希釈剤と混合する(実施例1)。組成物を、患者の顔中央の患部のすべてに対して局所的に適用する。
【0080】
治療の約3日後までに、皮膚状態が迅速に改善することが予想される。次いで、局所用ボツリヌス神経毒素ゲル剤の2回目の適用を、約4週間で適用することができ、皮膚の状態は改善を続ける。2回目の治療の4カ月後、患者は、酒さ症状(血管拡張、丘疹)がほとんどないままであることが予想される。
【0081】
下記に列挙されているものを含む、本明細書において論じ引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
参考文献
【化1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚血管の過敏反応を特徴とする皮膚状態を有する患者を治療する方法であって、局所用組成物を患者の皮膚の患部に適用することを含み、前記局所用組成物が、皮膚の微小血管系における血管拡張を減少させるのに有効量のボツリヌス神経毒素と、ボツリヌス毒素を皮膚の微小血管系に輸送するための担体とを含む、方法。
【請求項2】
前記状態が、紅潮または赤面である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が酒さを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酒さが、紅斑毛細血管拡張性酒さ、丘疹膿疱性の酒さ、腫瘤状酒さ、および/または眼性酒さの1つまたは複数である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、紅斑、紅潮、赤面、毛細血管拡張症、丘疹、膿疱、鼻瘤、灼熱感、およびそう痒感から選択される、酒さの1つまたは複数の症状を有する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が酒さを有するが、鼻瘤は有さない、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
ボツリヌス神経毒素が、100kDaの重鎖および50kDaの軽鎖を有する精製されたボツリヌス神経毒素である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ボツリヌス神経毒素が、約450kDa〜約900kDaの範囲の分子量を有する精製されたボツリヌス神経毒素複合体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ボツリヌス神経毒素が、Hall菌株から得られる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
ボツリヌス神経毒素が、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)A型産生菌株由来である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
A型産生菌株が、A1型、A2型、またはA3型である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複合体が、Kyoto−FまたはNCTC2916菌株のA2型またはA3型ボツリヌス神経毒素遺伝子クラスターとして構成されている、請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ボツリヌス神経毒素が、A型、B型、またはC型である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ボツリヌス神経毒素が、クロストリジウム属(Clostridia)細菌によって産生されるか、または組換えによって作製される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記担体が、正荷電ペプチド担体または正荷電非ペプチドポリマー担体である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担体が、少なくとも1つのタンパク質輸送ドメインをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質輸送ドメインが、HIV−TAT塩基性領域または逆HIV−TAT塩基性領域のアミノ酸配列である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質輸送ドメインが、配列番号1の逆HIV−TATアミノ酸配列である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記担体が、N末端もしくはC末端、またはN末端とC末端の両方に、HIV−TAT塩基性配列(配列番号2)または逆HIV−TAT塩基性配列(配列番号1)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記担体が、HIV−TATまたは逆HIV−TAT塩基性配列であるN末端部分と、HIV−TATまたは逆HIV−TAT塩基性配列であるC末端部分と、N末端部分とC末端部分の間の1つまたは複数の陽イオン性残基とを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記陽イオン性残基が、アルギニンおよび/またはリシンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記陽イオン性残基が、それぞれリシンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記担体が、N末端部分とC末端部分の間に約5個〜約20個の陽イオン性残基を有する、請求項20、21、または22に記載の方法。
【請求項24】
前記担体が、N末端部分とC末端部分の間に約12個、約15個、または約17個からの陽イオン性残基を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記担体が、Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg−Gly−(Lys)n−Gly−Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg(配列番号3)、またはArg−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Lys−Lys−Arg−Gly−(Lys)n−Gly−Arg−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Lys−Lys−Arg(配列番号4)であり、nが約5〜約20である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
nが約10〜約20である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記担体が、Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg−Gly−(Lys)15−Gly−Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg(配列番号5)である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記担体が、約15アミノ酸〜約100アミノ酸の長さを有するペプチドである、請求項15〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記担体が、約25〜約50アミノ酸の長さを有するペプチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記担体が、約25〜約40アミノ酸の長さを有するペプチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記担体が、ポリマー主鎖に接続されている正荷電分岐基を含むポリマー担体である、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
前記主鎖が、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンアミン)、ポリ(アルキレンイミン)から選択される繰り返し単位のポリマーである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマーが、ヘテロポリマーである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記主鎖が、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記分岐基が、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、グアニジニウム基、およびアミジニウム基から独立して選択される、請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記担体が、リシン、アルギニン、オルニチン、およびホモアルギニンから選択されるアミノ酸を有する陽イオン性ポリペプチドである、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリペプチドが、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
有効量のボツリヌス神経毒素が、約0.1ng〜約2.0ngの精製されたボツリヌス神経毒素である、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、希釈剤をさらに含む、請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記担体およびボツリヌス毒素が、希釈剤中に、約10:1〜約1:10の範囲の質量比で溶解される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、ローション剤、またはゲル剤である、請求項38〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、ゲル化剤および/または粘性調節剤を含む、請求項1〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ゲル化剤または粘性調節剤が、ポロキサマー系希釈剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポロキサマー系希釈剤が、約10体積%〜20体積%で存在する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ポロキサマー系希釈剤が、約16体積%で存在する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が1回適用されるか、または、1週間に1回、2週間毎に1回、1か月に1回、もしくは1年間に2回〜10回の投与計画で適用される、請求項1〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜46のいずれか一項に記載の方法を実施するための皮膚パッチ剤またはキット。
【請求項48】
ボツリヌス神経毒素と、低刺激性洗浄剤と、発赤抑制系と、全スペクトル日焼け止め剤SFP15以上と、メトロニダゾールゲル剤とを含むキット。

【公表番号】特表2012−522786(P2012−522786A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503602(P2012−503602)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029183
【国際公開番号】WO2010/114828
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(509168461)ルバンス セラピュティックス インク. (9)
【氏名又は名称原語表記】REVANCE THERAPEUTICS,INC.
【Fターム(参考)】