説明

血管形成のsiRNA阻害のための組成物及び方法

血管内皮成長因子(VEGF)遺伝子、並びにVEGFレセプター遺伝子Flt1及びFlk−1/KDRに特異的な小型干渉性RNAを利用するRNA干渉は、これらの遺伝子の発現を阻止する。VEGFの過剰発現により刺激される血管形成を含む病気、例えば糖尿病性網膜症、加齢関連黄斑変性及び多くの種類の癌は、これらの小型の干渉性RNAの投与によって治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に、血管形成を含む病気又は異常の治療のための、小型の干渉性RNAによる遺伝子発現の制御に関係する。
【背景技術】
【0002】
血管形成(新しい毛細血管の成長又は「新血管新生」として定義される)は、成長及び発生において、基礎的役割を演じる。成熟したヒトにおいて、血管形成を開始する能力は、すべての組織に存在するが、厳格な制御下に維持されている。血管形成の鍵となるレギュレーターは、血管内皮成長因子(VEGF)(血管透過性因子(「VPF」)とも呼ばれる)である。VEGFは、ヒトにおいて、少なくとも4つの異なる選択的スプライス型(VEGF121、VEGF165、VEGF189及びVEGF206)で存在する(これらすべては、類似の生物学的活性を発揮する)。
【0003】
血管形成は、分泌されたVEGFがFlt−1及びFlk−1/KDRレセプター(VEGFレセプター1及びVEGFレセプター2とも呼ばれる)に結合した場合に開始され、これらは、内皮細胞の表面で発現されている。Ftl−1及びFlk−1/KDRは、膜貫通タンパク質チロシンキナーゼであり、VEGFの結合は、細胞シグナルカスケードを開始し、これは、周囲の組織における最終的な新血管新生を生じる。
【0004】
異所的血管形成(又は、新血管の病的成長)は、多くの異常に関連している。これらの異常の内には、糖尿病性網膜症、乾癬、滲出作用又は「湿型」加齢関連黄斑変性(「ARMD」)、リウマチ様関節炎及び他の炎症性疾患、並びに殆どの癌がある。これらの異常に関連する病気の組織又は腫瘍は、異常に高レベルのVEGFを発現し、且つ高度の新血管新生又は血管透過性を示す。
【0005】
特にARMDは、臨床的に重要な血管形成性疾患である。この異常は、加齢しつつある個人の一方又は両方の眼における脈絡膜新血管新生により特徴付けられ、工業国における失明の主要な原因である。
【0006】
多くの治療の戦略は、異所的血管形成の阻止のためにあり、それらは、VEGFの産生又は効果を減じることを意図している。例えば、抗VEGF又は抗VEGFレセプター抗体(Kim ES等、(2002), PNAS USA 99: 11399-11404)及び可溶性VEGF「トラップ」(これらは、内皮細胞レセプターとVEGF結合について競合する)(Holash J 等、(2002),PNAS USA 99:11393-11398)が開発されている。古典的なVEGF「アンチセンス」又はアプタマー療法(VEGF遺伝子発現に向けられたもの)も又、提供されている(Uhlmann等の米国特許出願公開2001/0021772)。しかしながら、これらの療法で用いられた抗血管形成剤は、VEGF又はVEGFレセプターの化学量論的減少を生じることができるだけであり、これらの剤は、典型的には、病気の組織によるVEGFの異常に高い産生によって圧倒される。それ故、利用可能な抗血管形成療法により達成された結果は、不満足なものであった。
【0007】
RNA干渉(以後「RNAi」)は、多くの真核生物で保存されている転写後遺伝子制御の方法である。RNAiは、細胞中に存在する短い(即ち、30ヌクレオチド未満)二本鎖RNA(「dsRNA」)分子によって誘導される(Fire A等、(1998), Nature 391:806-811)。これらの短いdsRNA分子(「短い干渉性RNA」又は「siRNA」と呼ばれる)は、1ヌクレオチド分離内でsiRNAとの配列相同性を共有するメッセンジャーRNA(「mRNA」)の破壊を引き起こす(Elbashir SM等(2001), Genes Dev, 15:188-200)。siRNA及び標的のmRNAは、「RNA誘導されたサイレンシング複合体」又は「RISC」に結合し、これが標的mRNAを開裂させると考えられている。このsiRNAは、見かけ上、マルチプルターンオーバー酵素とよく似て、再利用され、一つのsiRNA分子が、約1000のmRNA分子の開裂を誘導することができる。それ故、siRNA媒介のmRNAのRNAiによる分解は、標的遺伝子の発現を阻止するための現在利用可能な技術より一層有効である。
【0008】
Elbashir SM等(2001),(前出)は、21及び22ヌクレオチド長の合成siRNA(及び短い3’オーバーハングを有する)が、ショウジョウバエ細胞溶解物中の標的mRNAのRNAiを誘導することができることを示している。培養哺乳動物細胞も又、合成siRNAによるRNAi分解を示し(Elbashir SM等(2001)Nature, 411:494-498)、合成siRNAにより誘導されるRNAi分解が、最近、生きたマウスにおいて示された(McCaffrey AP等(2002), Nature, 418:38-39;Xia H等(2002), Nat.Biotech. 20:1006-1010)。siRNA誘導されたRNAi分解の治療的潜在能力が、siRNAに指図されたHIV−1感染の阻止(Novina CD等(2002), Nat.Med.8:681-686)及び神経毒性ポリグルタミン病タンパク質の発現の低下(Xia H等(2002), 前出)を含む幾つかの最近のイン・ビトロ研究において示された。
【0009】
それ故、必要とされるものは、触媒的量又は化学量論的量より少量でVEGF又はVEGFレセプターの発現を選択的に阻害する薬剤である。
【0010】
発明の要約
本発明は、特異的に標的を定めて、VEGF、Flt−1及びFlk−1/KDR遺伝子からのmRNAの、RNAiに誘導される分解を引き起こすsiRNAに向けられている。この発明のsiRNA化合物及び組成物は、特に癌性腫瘍、加齢関連黄斑変性及び他の血管形成性疾患の治療のために、血管形成を阻止するために利用される。
【0011】
従って、この発明は、ヒトのVEGFmRNA、ヒトのFlt−1mRNA、ヒトのFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体(cognate)を標的とする単離されたsiRNAを提供する。このsiRNAは、二本鎖RNAを形成するセンスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含む。このセンスRNA鎖は、標的mRNA中の約19〜25の隣接ヌクレオチドの標的配列と同一のヌクレオチド配列を含む。
【0012】
この発明は又、この発明のsiRNAを発現する組換えプラスミド及びウイルスベクター並びにこの発明のsiRNA及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬組成物をも提供する。
【0013】
この発明は、更に、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、ヒトFlk-1/KDRmRNA、これらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体の発現を阻止する方法であって、患者に有効量のこの発明のsiRNAを投与し、それで標的mRNAを分解することを含む当該方法をも提供する。
【0014】
この発明は、更に、患者における血管形成を阻止する方法であって、患者に、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、ヒトFlk-1/KDRmRNA、これらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体を標的とする有効量のsiRNAを投与することを含む当該方法をも提供する。
【0015】
この発明は、更に、血管形成性疾患を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、ヒトFlk-1/KDRmRNA、これらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体を標的とする有効量のsiRNAを投与し、それで血管形成性疾患と関連する血管形成を阻止することを含む当該方法をも提供する。
【0016】
図面の簡単な説明
図1A及び1Bは、siRNAで処理してない(「−」);非特異的siRNAで処理した(「非特異的」);又はヒトVEGFmRNAを標的とするsiRNAで処理した(「VEGF」)酸素欠乏293及びHela細胞におけるVEGF濃度(pg/ml)の棒グラフである。酸素欠乏でない293及びHela細胞におけるVEGF濃度(pg/ml)も示してある。各棒は、4つの実験の平均を表しており、誤差は、平均の標準偏差である。
図2は、siRNAで処理してない(「−」);非特異的siRNAで処理した(「非特異的」);又はヒトVEGFmRNAを標的とするsiRNAで処理した(「VEGF」)酸素欠乏NIH3T3細胞である。各棒は、6つの実験の平均を表しており、誤差は、平均の標準偏差である。
図3は、GFPsiRNA(濃い灰色の棒)又はヒトVEGFsiRNA(薄い灰色の棒)の存在下でヒトVEGFを発現するアデノウイルス(「AdVEGF」)を注入したマウスの網膜におけるヒトVEGF濃度(pg/全タンパク質)の棒グラフである。各棒は、5つの眼の平均を表し、誤差棒は、平均の標準誤差を表している。
図4は、GFPsiRNAの網膜下注入を受けた対照用眼(N=9;「GFPsiRNA」)、及びマウスVEGFsiRNAの網膜下注入を受けた眼(N=7;「マウスVEGFsiRNA」)においてレーザー誘導されたCNVの平均面積(mm2)を示す棒グラフである。誤差棒は、平均の標準誤差を表す。
図5は、pAAVsiRNA(この発明の組換えAAVウイルスベクターの生成に使用するシス作動性プラスミド)の図式表示である。「ITR」:AAV逆向き末端反復;「U6」:U6RNAプロモーター;「センス」:siRNAセンスコード配列;「アンチ」:siRNAアンチセンスコード配列;「ポリT」:ポリチミジン停止シグナル。
図6は、(A)網膜下又は(B)硝子体にマウス抗VEGFsiRNA(「mVEGF1.siRNA」)又は対照用siRNA(「GFP1.siRNA」)を注入したマウスの眼における処理おいてレーザー誘導されたCNVの平均面積(mm2)の棒グラフを示している。誤差棒は、平均の標準誤差を表している。(C)は、硝子体に、レーザー誘導後1日目に、siRNAを含まないリン酸緩衝塩溶液(「PBS」;レーザー誘導後14日目にCNV面積測定);レーザー誘導後14日目に、対照用siRNA(「GFP1.siRNA」;レーザー誘導後21日目にCNV面積測定);又はレーザー誘導後14日目に、マウス抗VEGFsiRNA(「mVEGF1.siRNA」;レーザー誘導後21日目にCNV面積測定)を注入されたマウスの眼においてレーザー誘導されたCNVの平均面積(mm2)の棒グラフである。誤差棒は、平均の標準誤差を表している。
図7は、ヒト抗VEGFsiRNA(「Cand5」)及び対照用siRNA(「GFP1.siRNA」)を、注入後0(n=2;プレ−siRNA注入)、6(n=3)、10(n=3)及び14(n=3)日目で網膜下に注入されたマウスの眼におけるVEGFタンパク質のパーセント(「VEGF%」)のグラフである。VEGF%=(Cand5眼中の[VEGF]/GFP1.siRNA眼中の[VEGF])*100。
【0017】
発明の詳細な説明
別途示さない限り、本明細書中では、すべての核酸配列を、5’から3’への向きで与える。又、すべての核酸配列中のデオキシリボヌクレオチドは、大文字で表され(例えば、デオキシチミジンは、「T」である)、核酸配列中のリボヌクレオチドは、小文字で表される(例えば、ウリジンは、「u」である)。
【0018】
VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRmRNAを標的とするsiRNAを含む組成物及び方法は、特に血管形成性疾患の治療のために、血管形成を阻止するために有利に利用される。この発明のsiRNAは、これらのmRNAのRNAi媒介の分解を引き起こし、それで、VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR遺伝子のタンパク質産物は生成されないか又は減少した量で生成されると考えられる。Flt−1又はFlk−1/KDRレセプターに対するVEFGの結合が、血管形成の開始及び維持に必要とされるので、VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRmRNAのsiRNA媒介の分解は、血管形成過程を阻止する。
【0019】
それ故、この発明は、標的mRNAに狙いを定めた約17〜29ヌクレオチド長の、好ましくは約19〜25ヌクレオチド長の短い二本鎖RNAを含む単離されたsiRNAを提供する。このsiRNAは、標準的なワトソン−クリック塩基対形成相互作用(以後、「塩基対合」)により一緒にアニールしたセンスRNA鎖及び相補的アンチセンスRNA鎖を含む。以下で一層詳細に記載するように、このセンス鎖は、標的mRNAに含まれる標的配列と同一の核酸配列を含む。
【0020】
本発明のsiRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、2つの相補的な、一本鎖RNA分子を含むことができ、又は 2つの相補的な部分が塩基対合して一本鎖の「ヘアピン」領域によって共有結合された単一の一本鎖分子を含むことができる。如何なる理論に拘束されることも望まないが、後者の型のsiRNA分子のヘアピン領域は、「ダイサー」タンパク質(又は、その同等物)により細胞内で開裂されて、2つの別個の塩基対合したRNA分子のsiRNAを形成すると考えられる(Tuschl, T. (2002)、前出、参照)。
【0021】
ここで用いる場合、「単離された」は、ヒトの介入によって自然状態から変更され又は取り出されたことを意味する。例えば、生きた動物中に自然に存在するsiRNAは、「単離された」とはいえないが、合成siRNA又は、自然状態で共存していた物質から部分的に若しくは完全に分離されたsiRNAは、「単離された」といえる。単離されたsiRNAは、実質的に精製された形態で存在してもよいし、非自然環境例えば、siRNAが送達された細胞中に存在してもよい。
【0022】
ここで用いる場合、「標的mRNA」は、ヒトVEGF、Flt−1若しくはFlk−1/KDRmRNA、ヒトVEGF、Flt−1若しくはFlk−1/KDRmRNAに由来する変異体若しくは選択的スプライス型、又は同源のVEGF、Flt−1若しくはFlk−1/KDR遺伝子に由来するmRNAを意味する。
【0023】
ここで用いる場合、ヒトVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRと「同源の」遺伝子又はmRNAは、ヒトVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRと相同な他の哺乳動物種に由来する遺伝子又はmRNAである。例えば、マウス由来の同源VEGFmRNAは、SEQ ID NO:1に与えてある。
【0024】
VEGF121(SEQ ID NO:2)、VEGF165(SEQ ID NO:3)、VEGF189(SEQ ID NO:4)及びVEGF206(SEQ ID NO:5)を含むヒトVEGFのスプライス変異体が知られている。ヒトVEGF、Flt−1(SEQ ID NO:6)又はFlk−1/KDR(SEQ ID NO:7)遺伝子から転写されたmRNAを、当分野で周知の技術を利用して、更なる選択的スプライス型について分析することができる。かかる技術には、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロッティング及びイン・シトゥーハイブリダイゼーションが含まれる。mRNA配列を分析するための技術は、例えば、Busting SA (2000), J.Mol.Endocrinol.25:169-193に記載されている(その全開示を、参考として本明細書中に援用する)。選択的スプライシングを受けたmRNAの同定のための代表的技術も又、以下に記載する。
【0025】
例えば、所定の病気遺伝子に関係するヌクレオチド配列を含むデータベースを利用して、選択的スプライシングを受けたmRNAを同定することができる。かかるデータベースには、GenBank、Embase及びthe Cancer Genome Anatomy Project (CGAP)データベースが含まれる。例えば、CGAPデータベースは、様々な種類のヒトの癌から発現された配列タグ(EST)を含む。VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR遺伝子に由来するmRNA又は遺伝子配列を利用して、かかるデータベースに問い合わせて選択的スプライシングを受けたmRNAを表すESTがこれらの遺伝子について発見されているかどうかを決定することができる。
【0026】
「RNアーゼ防護」と呼ばれる技術を利用して、選択的スプライシングを受けたVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRmRNAを同定することもできる。RNアーゼ防護は、遺伝子配列の合成RNAへの翻訳を含み、これは、他の細胞(例えば、新血管新生の部位にある又はその近くの組織に由来する細胞)に由来するRNAとハイブリダイズする。ハイブリダイズしたRNAを、次いで、RNA:RNAハイブリッドミスマッチを認識する酵素と共にインキュベートする。予想された断片より小さいことは、選択的スプライシングを受けたmRNAの存在を示す。推定の選択的スプライシングを受けたmRNAを、当業者に周知の方法によって、クローン化して配列決定することができる。
【0027】
RT−PCRは又、選択的スプライシングを受けたVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRmRNAを同定するためにも利用することができる。RT−PCRにおいて、病気の組織に由来するmRNAを、当業者に周知の方法を利用して、逆転写酵素によってcDNAに変換する。次いで、このcDNAの完全なコード配列を、3’未翻訳領域内に位置するフォワードプライマー及び5’未翻訳領域内に位置するリバースプライマーを利用するPCRによって増幅する。それらの増幅された産物を、選択的スプライス型について、例えば、増幅産物のサイズを通常のスプライシングを受けたmRNAから予想される産物のサイズと例えばアガロースゲル電気泳動によって比較することにより、分析することができる。この増幅産物のサイズの如何なる変化も、選択的スプライシングを示しうる。
【0028】
変異型VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR遺伝子から生成されたmRNAも又、選択的スプライス型を同定するための上に記載した技術によって容易に同定することができる。ここで用いる場合、「変異型」VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR遺伝子又はmRNAは、ここに示したVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR配列と配列が異なるヒトのVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR遺伝子又はmRNAを包含する。従って、これらの遺伝子のアレル型及びそれらから生成されたmRNAは、この発明の目的に関して「変異型」と考えられる。
【0029】
ヒトVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRmRNAが、それらの各選択的スプライス型、同源体又は変異体と共通の標的配列を含みうるということは、理解される。それ故、かかる共通の標的配列を含む単一のsiRNAは、その共通の標的配列を含む種々のRNA型の、RNAi媒介の分解を誘導しうる。
【0030】
この発明のsiRNAは、部分的に精製されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、又は組換えにより生成されたRNA並びに少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変化によって天然のRNAと異なる変化されたRNAを含むことができる。かかる変化は、siRNAの末端などへの又はsiRNAの内部の少なくとも1つのヌクレオチドへの非ヌクレオチド物質の付加を含みうる(siRNAをヌクレアーゼ消化に対して耐性にする改変を含む)。
【0031】
この発明のsiRNAの一方又は両方の鎖は又、3’オーバーハングをも含むことができる。ここで用いる場合、「3’オーバーハング」は、二本鎖形成したRNA鎖の3’末端から伸びる少なくとも1つの未対合のヌクレオチドを指す。
【0032】
従って、一具体例において、この発明のsiRNAは、少なくとも1つの1〜約6ヌクレオチド長の、好ましくは1〜約5ヌクレオチド長の、一層好ましくは1〜約4ヌクレオチド長の、特に好ましくは約2〜4ヌクレオチド長の3’オーバーハング(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含む)を含む。
【0033】
このsiRNA分子の両鎖が3’オーバーハングを含む具体例において、それらのオーバーハングの長さは、各鎖について同じであっても異なってもよい。最も好適な具体例において、3’オーバーハングは、このsiRNAの両鎖に存在して、2ヌクレオチド長である。例えば、この発明のsiRNAの各鎖は、ジチミジル酸(「TT」)又はジウリジル酸(「uu」)の3’オーバーハングを含むことができる。
【0034】
本発明のsiRNAの安定性を増大させるために、3’オーバーハングを、分解に対して安定化させることもできる。一具体例において、これらのオーバーハングは、プリンヌクレオチド例えばアデノシン又はグアノシンヌクレオチドを含むことにより安定化される。或は、ピリミジンヌクレオチドの改変アナログによる置換例えば3’オーバーハング内のウリジンヌクレオチドの2’−デオキシチミジンによる置換は許容されて、RNAi分解の効率に影響しない。特に、2’−デオキシチミジン中の2’ヒドロキシルの不在は、組織培養培地において、3’オーバーハングのヌクレアーゼ耐性を有意に増大させる。
【0035】
ある具体例において、この発明のsiRNAは、配列AA(N19)TT又はNA(N21)を含み、ここに、Nは、任意のヌクレオチドである。これらのsiRNAは、約30〜70%のGCを含み、好ましくは、約50%のG/Cを含む。センスsiRNA鎖の配列は、それぞれ、(N19)TT又はN21(即ち、3〜23位)に対応する。後者の場合、センスsiRNAの3’末端は、TTに変換される。この配列変換の原理は、センス及びアンチセンス鎖3’オーバーハングの配列組成に関して、対称的な二本鎖を生成することである。このアンチセンスRNA鎖を、次いで、センス鎖の1〜21位に対する相補鎖として合成する。
【0036】
これらの具体例における23ntセンス鎖の1位は、配列特異的な仕方でアンチセンス鎖によって認識されないので、このアンチセンス鎖の最も3’側のヌクレオチド残基は、意図的に選択することができる。しかしながら、アンチセンス鎖の末位から二番目のヌクレオチド(両具体例における23ntセンス鎖の2位に相補的)は、一般に、標的配列に対して相補的である。
【0037】
他の具体例において、この発明のsiRNAは、配列NAR(N17)YNNを含み、ここに、Rは、プリン(例えば、A又はG)であって、Yは、ピリミジン(例えば、C又はU/T)である。それ故、この具体例の代表的な21ntのセンス及びアンチセンスRNA鎖は、一般に、プリンヌクレオチドで始まる。かかるsiRNAは、polIIIプロモーターからのRNAの発現は、最初の転写されるヌクレオチドがプリンの場合には効率的であると考えられているだけなので、ターゲティング部位に変化を有しないpolIII発現ベクターから発現させることができる。
【0038】
この発明のsiRNAは、標的mRNA配列(「標的配列」)の何れかにおいて約19〜25の隣接するヌクレオチドの任意のストレッチを標的とすることができる。siRNAのための標的配列を選択するための技術は、例えば、Tuschl T等、「The siRNA User Guide」2002年10月11日改訂(その全開示を参考として本明細書中に援用する)に与えられている。「The siRNA User Guide」は、ドイツ国、Gottingen、37077、AG 105、マック−スプランク生物物理化学研究所、細胞生化学部門、Thomas Tuschl博士が維持しているwwwサイトで入手でき、マックス−プランク研究所のウェブサイトにアクセスして、キーワード「siRNA」を用いて検索することにより見出すことができる。従って、本発明のsiRNAのセンス鎖は、標的mRNA中の約19〜25ヌクレオチドの任意の隣接ストレッチと同一のヌクレオチド配列を含む
【0039】
一般に、標的mRNA上の標的配列は、標的mRNAに対応する所定のcDNA配列から選択することができる(好ましくは、開始コドンの50〜100nt下流即ち3’側から始まる)。しかしながら、この標的配列は、5’若しくは3’非翻訳領域内、又は開始コドンの近くの領域内に位置することができる(例えば、下記の表1内のSEQ ID NO:73及び74の標的配列を参照されたい)(これらはVEGF121cDNAの5’末端の100nt内にある)。
【0040】
他の例において、VEGF121cDNA配列内の適当な標的配列は:
【化1】

である。
【0041】
従って、この配列を標的とし、且つ各鎖に3’unオーバーハング(太字で示す)を有するこの発明のsiRNAは:
【化2】

である。
【0042】
この同じ配列を標的とし、但し、各鎖に3’TTオーバーハング(太字で示す)を有するこの発明のsiRNAは:
【化3】

である。
【0043】
この発明のsiRNAを誘導することのできる他のVEGF121標的配列を、表1に与える。表1に列記したすべてのVEGF121標的配列は、すべてのヒトVEGF選択的スプライス型に共通するVEGF121の選択的スプライス型の部分内にあるということは理解される。従って、表1のVEGF121標的配列は又、VEGF165、VEGF189及びVEGF206mRNAをも標的とすることができる。特定のVEGFイソ型を標的とする標的配列も又、容易に同定することができる。例えば、VEGF165mRNAを標的とするが、VEGF121mRNAを標的としない標的配列は、AACGTACTTGCAGATGTGACA(SEQ ID NO:13)である。ヒトFlt−1の代表的な標的配列を、SEQ ID NO:91〜504に与え、ヒトFlk−1/KDRの代表的標的配列はを、SEQ ID NO:505〜864に与える。
【0044】
【表1】





【0045】
この発明のsiRNAは、当業者に公知の多くの技術を利用して得ることができる。例えば、このsiRNAは、化学合成することができ又は当分野で公知の方法例えばTuschl等の米国特許出願公開2002/0086356号(その全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されたようなキイロショウジョウバエのイン・ビトロ系を利用して、組換えにより生成することもできる。
【0046】
好ましくは、この発明のsiRNAを、適当に保護されたリボヌクレオシドホスホルアミダイト及び慣用のDNA/RNA合成機を利用して化学合成する。このsiRNAは、2つの別個の相補的なRNA分子として合成することができ、又は2つの相補的領域を有する単一のRNA分子として合成することもできる。合成RNA分子又は合成用試薬の商業的供給者には、Proligo(Hamburg, Germany)、Dharmacon Research(Lafayette, CO, USA)、Pierce Chemical(Perbio Scienceの部分、米国、イリノイ、Rockford在)、Glen Research(米国、バージニア、Sterling在)、ChemGenes(米国、マサチューセッツ、Ashland在)及びCruachem(英国、Glasgow在)が含まれる。
【0047】
或は、siRNAは又、組換え環状又は直鎖状DNAプラスミドから、任意の適当なプロモーターを利用して発現させることもできる。この発明のsiRNAのプラスミドからの発現に適したプロモーターには、U6又はH1RNApolIIIプロモーター配列及びサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適当なプロモーターの選択は、当業者の内にある。この発明の組換えプラスミドは又、特定の組織又は特定の細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導性の又は制御可能なプロモーターをも包含することができる。
【0048】
組換えプラスミドから発現されたsiRNAは、標準的技術によって、培養細胞発現系から単離することができ、又は細胞内で若しくは新血管新生の領域の近くでイン・ビボで発現させることができる。この発明のsiRNAの細胞へのイン・ビボでの送達のための組換えプラスミドの利用は、以下で一層詳細に論じる。
【0049】
この発明のsiRNAは、組換えプラスミドから、2つの別々の相補的RNA分子として、又は2つの相補的領域を有する単一のRNA分子として発現させることができる。
【0050】
この発明のsiRNAの発現に適したプラスミドの選択、該siRNAの発現のための核酸配列をプラスミドに挿入するための方法、及び組換えプラスミドを関心ある細胞に送達する方法は、当業者の内にある。例えば、Tuschl, T.(2002), Nat.Biotechnol,20:446-448;Brummelkamp TR等(2002), Science 296:550-553;Miyagishi M等(2002), Nat.Biotechnol.20:497-500;Paddison PJ等(2002), Genes Dev.16:948-958;Lee等(2002), Nat.Biotechnol.20:500-505;及びPaul CP等(2002), Nat.Biotechnol.20:505-508(これらの全開示を、参考として本明細書中に援用する)を参照されたい。
【0051】
この発明のsiRNAの発現のための核酸配列を含むプラスミドを、以下の実施例7に記載する。そのプラスミド(pAAVsiRNAと呼ばれる)は、ポリT停止配列に操作可能に結合されたセンスRNA鎖をコードする配列をヒトU6RNAプロモーターの制御下に含み、ポリT停止配列に操作可能に結合されたアンチセンスRNA鎖をコードする配列をヒトU6RNAプロモーターの制御下に含む。プラスミドpAAVsiRNAは、最終的に、この発明のsiRNAの発現のための同じ核酸配列を含む組換えアデノ随伴ウイルスベクターの生成における利用を意図している。
【0052】
ここで用いる場合、「ポリT停止配列に操作可能に結合された」は、センス又はアンチセンス鎖をコードする核酸配列が、5’方向からポリT停止シグナルと直接隣接することを意味する。プラスミドからのセンス又はアンチセンス配列の転写に際して、これらのポリT停止シグナルは、転写を停止させるように作用する。
【0053】
ここで用いる場合、プロモーターの「制御下に」は、センス又はアンチセンス鎖をコードする核酸配列が、そのプロモーターの3’側に位置し、それで、該プロモーターが、それらのセンス及びアンチセンスコード配列の転写を開始することができることを意味する。
【0054】
この発明のsiRNAは又、細胞内で、イン・ビボの新血管新生部位又はその近くで、組換えウイルスベクターから発現させることもできる。この発明の組換えウイルスベクターは、この発明のsiRNAをコードする配列及びこれらのsiRNA配列の発現のための任意のプロモーターを含む。適当なプロモーターには、例えば、U6又はH1RNApolIIIプロモーター配列及びサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適当なプロモーターの選択は、当業者の技能内にある。この発明の組換えウイルスベクターは又、特定の組織又は特定の細胞内環境でのsiRNAの発現のための誘導又は調節可能なプロモーターをも含むことができる。この発明のsiRNAの、イン・ビボでの、細胞への送達のための組換えウイルスベクターの利用は、以下で一層詳細に論じる。
【0055】
この発明のsiRNAは、組換えウイルスベクターから、2つの別個の相補的なRNA分子として又は2つの相補的領域を有する単一のRNA分子として発現させることができる。
【0056】
こ(れら)の発現させるべきsiRNA分子のコード配列を受け入れることのできる任意のウイルスベクター、例えば、アデノウイルス(AV);アデノ随伴ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルスなどに由来するベクターを利用することができる。これらのウイルスベクターの親和性も又、該ベクターの他のウイルスからのエンベロープタンパク質又は他の表面抗原によるシュードタイピングによって改変することができる。例えば、この発明のAAVベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、モコラウイルスなどからの表面タンパク質によりシュードタイプすることができる。
【0057】
この発明で用いるのに適した組換えウイルスベクターの選択、siRNAの発現のための核酸配列を該ベクターに挿入する方法、及び該ウイルスベクターを関心ある細胞に送達する方法は、当業者の技能の内にある。例えば、Dornburg R (1995), Gene Therap.2:301-310;Eglitis MA (1988), Biotechniques 6:608-614;Miller AD (1990), Hum Gene Therap.1:5-14;及びAnderson WF (1998), Nature 392:25-30 (これらの全開示を、参考として、本明細書中に援用する)を参照されたい。
【0058】
好適なウイルスベクターは、AV及びAAVに由来するものである。特に好適な具体例において、この発明のsiRNAは、2つの別個の相補的な一本鎖RNA分子として、例えばU6若しくはH1RNAプロモーター又はサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む組換えAAVベクターから発現される。
【0059】
この発明のsiRNAの発現に適したAVベクター、該組換えAVベクターを構築する方法、及び該ベクターを標的細胞に送達する方法は、Xia H等 (2002), Nat.Biotech.20:1006-1010に記載されている。
【0060】
この発明のsiRNAの発現に適したAAVベクター、該組換えAAVベクターを構築する方法、及び該ベクターを標的細胞に送達する方法は、Samulski R等 (1987), J.Virol.61:3096-3101;Fisher KJ等 (1996), J.Virol.,70:520-532;Samulski R等 (1989), J.Virol.63:3822-3826;米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願No.WO94/13788;及び国際特許出願No.WO93/24641(これらの全開示を、参考として、本明細書中に援用する)に記載されている。この発明の組換えAAVベクターを生成するための典型的な方法は、下記の実施例7に記載されている。
【0061】
所定の標的配列を含むsiRNAの、標的mRNAのRNAi媒介による分解を引き起こす能力は、細胞中のRNA又はタンパク質のレベルを測定するための標準的技術を利用して評価することができる。例えば、この発明のsiRNAを、培養細胞に送達して、標的mRNAのレベルを、ノーザンブロット若しくはドットブロッティング技術により、又は定量的RT−PCRによって測定することができる。或は、培養細胞中のVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRレセプタータンパク質のレベルを、ELISA又はウエスタンブロットにより測定することができる。本発明のsiRNAの標的mRNA又はタンパク質レベルに対する効果を測定するための適当な細胞培養系は、下記の実施例1に記載してある。
【0062】
所定の標的配列を含むsiRNAによる標的mRNAのRNAi媒介による分解は又、新血管新生の動物モデル例えばROP又はCNVマウスモデルを用いて評価することもできる。例えば、ROP又はCNVマウスにおける新血管新生の領域を、siRNAの投与の前後に測定することができる。siRNAの投与に際して、これらのモデルにおいて、新血管新生の領域が減少したならば、それは、標的mRNAのダウンレギュレーションを示している(下記の実施例6参照)。
【0063】
上記のように、この発明のsiRNAは、VEGF、Flt−1若しくはFlk−1/KDRのmRNA又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体を標的として、それらのRNAi媒介による分解を引き起こす。本発明のsiRNAによる標的mRNAの分解は、VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR遺伝子からの機能的遺伝子産物の生成を低減させる。従って、この発明は、患者におけるVEGF、Flt−1又はFlk−1/KDRの発現を阻止する方法であって、有効量のこの発明のsiRNAを患者に、標的mRNAが分解するように投与することを含む当該方法を提供する。VEGF、Flt−1又はFlk−1/KDR遺伝子の産物は、血管形成を開始して維持するのに必要であるので、この発明は、患者における血管形成を、本発明のsiRNAによる標的mRNAのRNAi媒介による分解によって阻止する方法をも提供する。
【0064】
ここで用いる場合、「患者」は、ヒト又は非ヒト動物を包含する。好ましくは、患者は、ヒトである。
【0065】
ここで用いる場合、siRNAの「有効量」は、標的mRNAのRNAi媒介による分解を引き起こすのに十分な量、又は患者における血管形成の進行を阻止するのに十分な量である。
【0066】
標的mRNAのRNAi媒介による分解は、患者の細胞における標的mRNA又はタンパク質のレベルを、上記のようにmRNA又はタンパク質を単離して定量するための標準的技術を利用して測定することにより検出することができる。
【0067】
血管形成の阻止は、患者における病原性又は非病原性の血管形成の進行を、例えば新血管新生領域の大きさをこの発明のsiRNAによる処理の前後で観察することにより、直接測定することによって評価することができる。血管形成の阻止は、新血管新生領域の大きさが同じか減少しているならば示される。患者における新血管新生領域の大きさを観察して測定する技術は、当業者の技能の内にあり;例えば、脈絡膜新血管新生の領域を、検眼鏡査法によって観察することができる。
【0068】
血管形成の阻止は又、血管形成と関係する病状の変化又は逆戻りの観察から推断することもできる。例えば、ARMDにおいて、視力の喪失を遅らせ、停止させ又は逆戻りさせることは、脈絡膜における血管形成の阻止を示す。腫瘍については、腫瘍の成長を遅らせ、停止させ若しくは逆戻りさせること、又は腫瘍の転移を遅らせ若しくは停止させることは、その腫瘍部位における又はその近くにおける血管形成の阻止を示す。非病原性の血管形成の阻止は、例えば、この発明のsiRNAの投与の際の脂肪の喪失又はコレステロールレベルの低減から推断することもできる。
【0069】
この発明のsiRNAが、化学量論的量未満の量で、標的mRNAを分解する(従って血管形成を阻止する)ことができるということは理解される。如何なる理論に束縛されることも望まないが、この発明のsiRNAは、触媒的方法で、標的mRNAの分解を引き起こすと考えられる。従って、標準的な抗血管形成療法と比較して、治療効果を有するために、新血管新生部位又はその近くに送達されることが必要なsiRNAは、有意に少ない。
【0070】
当業者は、患者の大きさ及び体重;新血管新生又は病気の浸透の程度;患者の年齢、健康及び性別;投与経路;及び投与を局所投与にするか全身投与にするかなどの因子を考慮して、所定の患者に投与すべきこの発明のsiRNAの有効量を容易に決定することができる。一般に、この発明のsiRNAの有効量は、新血管新生部位又はその近くでの、約1ナノモル(nM)から約100nMへの、好ましくは約2nMから約50nMへの、一層好ましくは約2.5nMから約10nMへの細胞間濃縮を含む。一層多い又は一層少ない量のsiRNAを投与することができることは、企図されている。
【0071】
本発明の方法を利用して、非病原性の血管形成(即ち、患者における正常の過程から生じる血管形成)を阻止することができる。非病原性の血管形成の例には、子宮内膜新血管新生、及び脂肪組織又はコレステロールの生成に関与する過程が含まれる。従って、この発明は、非病原性血管形成を、例えば、体重を制御し又は脂肪喪失を促進するため、コレステロールレベルを低減させ、又は妊娠中絶などのために阻止する方法を提供する。
【0072】
本発明の方法は又、血管形成性疾患(即ち、病原性が不適当な血管形成又は制御されない血管形成と関連している病気)と関連する血管形成を阻止することもできる。例えば、殆どの癌様固形腫瘍は、その腫瘍部位の内部及び周囲に血管形成を誘導することによってそれら自身に十分な血液供給を生ぜしめる。この腫瘍に誘導された血管形成は、しばしば、腫瘍の成長に必要であり、転移細胞が血流に入ることをも可能にする。
【0073】
他の血管形成性疾患には、糖尿病性網膜症、加齢関連黄斑変性(「ARMD」)、乾癬、リウマチ様関節炎及び他の炎症性疾患が含まれる。これらの病気は、新血管新生領域において新たに形成された血管による正常組織の破壊により特徴付けられる。例えば、ARMDにおいては、脈絡膜が毛細血管により侵されて破壊される。ARMDにおける脈絡膜の、血管形成に駆動される破壊は、最終的に、部分的な又は完全な失明へと導く。
【0074】
好ましくは、この発明のsiRNAを利用して、癌例えば乳癌、肺癌、頭頚部癌、脳癌、腹部癌、大腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胃腸癌、神経膠腫、肝臓癌、舌癌、神経芽細胞腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、多発性骨髄腫;皮膚癌(例えば、メラノーマ)、リンパ腫及び血液癌と関連する固形腫瘍の成長又は転移を阻止する。
【0075】
一層好ましくは、この発明のsiRNAを利用して、加齢関連黄斑変性における脈絡膜新血管新生を阻止する。
【0076】
血管形成性疾患を治療するために、この発明のsiRNAを、本発明のsiRNAと異なる医薬と共に、患者に投与することができる。或は、この発明のsiRNAを、血管形成性疾患の治療のためにデザインされた他の治療方法と組み合せて、患者に投与することができる。例えば、この発明のsiRNAを、癌を治療し又は腫瘍の転移を阻止するために現在採用している治療方法(例えば、放射線療法、化学療法、及び外科手術)と組み合せて投与することができる。腫瘍を治療するために、この発明のsiRNAを、好ましくは放射線療法と組み合せて、又は化学療法剤例えばシスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、アドリアマイシン、ダウノルビシン又はタモキシフェンと組み合せて患者に投与する。
【0077】
本発明の方法において、本発明のsiRNAを、患者に、裸のsiRNAとして、送達用試薬と一緒に、又はこのsiRNAを発現する組換えプラスミド若しくはウイルスベクターとして投与することができる。
【0078】
本発明のsiRNAと共に投与するのに適した送達用試薬には、Mirus Transit TKO親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;又はポリカチオン(例えば、ポリリジン)又はリポソームが含まれる。好適な送達用試薬は、リポソームである。
【0079】
リポソームは、siRNAの、特定の組織例えば網膜又は腫瘍組織への送達を助成することができ、siRNAの血中半減期を増大させることもできる。この発明で利用するのに適したリポソームは、標準的な小胞形成性脂質から形成され、これらは、一般に、中性又は負に帯電したリン脂質及びステロール例えばコレステロールを包含する。脂質の選択は、一般に、所望のリポソームの大きさ及びそれらのリポソームの血流中での半減期などの因子を考慮することにより左右される。リポソームの製造のために、様々な方法が知られており、例えば、Szoka等(1980), Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467;及び米国特許第4,235,871号、4,501,728号、4,837,028号及び5,019,369号(これらの全開示を、本明細書中に参考として援用する)に記載されている。
【0080】
好ましくは、本発明のsiRNAを含むリポソームは、そのリポソームを血管形成部位又はその近くの特定の細胞又は組織を標的とするようにさせるリガンド分子を含む。腫瘍又は血管内皮細胞で優勢なレセプターに結合するリガンド例えば、腫瘍抗原又は内皮細胞表面抗原に結合するモノクローナル抗体は、好適である。
【0081】
特に好ましくは、本発明のsiRNAをカプセル封入したリポソームを、単核マクロファージ及び細網内皮系によるクリアランスを、例えば、構造表面に結合したオプソニン作用阻害成分を有することによって回避するように改変する。一具体例において、この発明のリポソームは、オプソニン作用阻害成分とリガンドの両方を含むことができる。
【0082】
この発明のリポソームの製造において利用するためのオプソニン作用阻害成分は、典型的には、そのリポソーム膜に結合された大きい親水性ポリマーである。ここで用いる場合、オプソニン作用を阻害する成分は、例えば膜自体への脂溶性アンカーの相互作用により、又は膜脂質の活性基に直接結合することによって、化学的又は物理的に膜に結合された場合にリポソーム膜に「結合」される。これらのオプソニン作用を阻害する親水性ポリマーは、マクロファージ−単球系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によるリポソームの取込みを有意に減少させる保護表面層を形成する(米国特許第4,920,016号に記載されており、その全開示を、参考として本明細書中に援用する)。従って、オプソニン作用阻害成分で改変したリポソームは、未改変のリポソームよりも遥かに長く循環中に残る。この理由の故に、かかるリポソームは、ときに、「ステルス」リポソームと呼ばれる。
【0083】
ステルスリポソームは、多孔性又は「漏出性」微小血管系により養われる組織に蓄積することが知られている。従って、かかる微小血管系の欠損により特徴付けられる標的組織例えば固形腫瘍は、これらのリポソームを効率的に蓄積する(Gabizon等(1988), P.N.A.S., USA, 18:6949-53参照)。加えて、RESによる減少した取込みは、ステルスリポソームの毒性を、肝臓及び脾臓における有意の蓄積を妨げることによって低下させる。従って、この発明のオプソニン作用阻害成分で改変されたリポソームは、本発明のsiRNAを腫瘍細胞に送達することができる。
【0084】
リポソームの改変に適したオプソニン作用阻害成分は、好ましくは、約500〜40,000ダルトンの、一層好ましくは約2,000〜20,000ダルトンの数平均分子量を有する水溶性ポリマーである。かかるポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体例えばメトキシPEG又はPPG、及びPEG又はPPGステアレート;合成ポリマー例えばポリアクリルアミド又はポリN−ビニルピロリドン;直鎖、分枝鎖又は樹木状ポリアミドアミン;ポリアクリル酸;ポリアルコール、例えばポリビニルアルコール及びポリキシリトール(カルボキシル基又はアミノ基が化学結合したもの)並びにガングリオシド例えばガングリオシドGM1が含まれる。PEGのコポリマー、メトキシPEG又はメトキシPPG、又はこれらの誘導体も又、適している。加えて、オプソニン作用を阻害するポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖類、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン又はポリヌクレオチドの何れかとのブロックコポリマーであってよい。オプソニン作用を阻害するポリマーは又、アミノ酸又はカルボン酸を含む天然の多糖類例えばガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラギーナン;アミノ化多糖類又はオリゴ糖類(直鎖又は分枝鎖);又はカルボキシル化多糖類又はオリゴ糖類(例えば、カルボキシル基の生じた結合を有する炭酸の誘導体と反応したもの)であってもよい。
【0085】
好ましくは、このオプソニン作用阻害成分は、PEG、PPG又はこれらの誘導体である。PEG又hPEG誘導体により改変されたリポソームは、ときに、「PEG化(PEGylated)リポソーム」と呼ばれる。
【0086】
オプソニン作用阻害成分は、リポソーム膜に、多くの周知の技術の内の任意のものによって結合することができる。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルをホスファチジル−エタノールアミン脂溶性アンカーに結合し、次いで、膜に結合させることができる。同様に、デキストランポリマーを、Na(CN)BH3及びテトラヒドロフランと水などの溶媒混合物(60℃で、30:12比)を利用する還元アミノ化により、ステアリルアミン脂溶性アンカーによって誘導体化することができる。
【0087】
この発明のsiRNAを発現する組換えプラスミドは、上で論じている。かかる組換えプラスミドは又、直接投与することもできるし、適当な送達試薬と共に投与することもでき、該送達試薬には、Mirus Transit LT1親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;ポリカチオン(例えば、ポリリジン)又はリポソームが含まれる。この発明のsiRNAを発現する組換えウイルスベクターも又、上で論じており、かかるベクターを患者の新血管新生領域に送達する方法は、当業者の技能の内にある。
【0088】
この発明のsiRNAは、該siRNAを新血管新生領域又はその近くの組織の細胞に送達するのに適した任意の手段によって患者に投与することができる。例えば、このsiRNAを、遺伝子銃、エレクトロポレーションにより又は他の適当な非経口若しくは腸内投与経路によって投与することができる。
【0089】
適当な腸内投与経路には、経口送達、直腸送達又は鼻内送達が含まれる。
【0090】
適当な非経口投与経路には、血管内投与(例えば、静脈内ボーラス注射、静脈内点滴、動脈内ボーラス注射、動脈内点滴及び脈管構造内へのカテーテル点滴注入);組織周囲及び組織内投与(例えば、腫瘍周囲及び腫瘍内への注入、網膜内注入又は網膜下注入);皮下注射又はデポジション(浸透圧ポンプなどによる皮下点滴を含む);新血管新生の部位又はその近くの領域への例えばカテーテル又は他の配置用デバイス(例えば、角膜ペレット又は坐薬、眼滴瓶、又は多孔性若しくは非多孔性又はゼラチン状物質を含むインプラント)による直接適用(例えば、局所適用);及び吸入が含まれる。適当な配置用デバイスには、米国特許第5,902,598号及び6,375,972号に記載された眼内インプラント及び米国特許第6,331,313号に記載された生物分解性の眼内インプラントが含まれる(これらの全開示を、参考として本明細書中に援用する)。かかる眼内インプラントは、Control Delivery Systems, Inc.(マサチューセッツ、Watertown)及びOculex Pharmaceuticals, Inc.(カリフォルニア、Sunnyvale)から入手できる。
【0091】
好適具体例において、このsiRNAの注入又は点滴は、新血管新生の部位又はその近くに与える。一層好ましくは、このsiRNAは、眼に、例えば、当業者の技能内にあるが、液体又はゲル形態で下眼瞼又は結膜円蓋へ局所的に投与する(例えば、Acheampong AA等、2002, Drug Metabol. and Disposition 30:421-429参照、この全開示を、参考として本明細書中に援用する)。
【0092】
典型的には、この発明のsiRNAは、眼に、約5〜75マイクロリットルの量で、例えば約7〜50マイクロリットルの量で、好ましくは約10〜30マイクロリットルの量で局所的に投与される。75マイクロリットルにより大きい容積のsiRNAの眼における局所的点滴注入は、こぼれること及び排液によるsiRNAの眼からの喪失を生じうるということは理解される。従って、高濃度のsiRNA(例えば、100〜1000nM)を可能な限り小容積で投与することは好ましい。
【0093】
特に好適な非経口投与経路は、眼内投与である。本発明のsiRNAの眼内投与は、その投与経路がsiRNAが眼に入ることを可能にするならば、眼への注射又は直接(例えば、局所)投与によって達成することができるということは理解される。上記の眼への投与の局所経路に加えて、適当な眼内投与経路には、硝子体内、網膜内、網膜下、テント下、眼窩周囲及び眼窩後、経角膜及び強膜投与が含まれる。かかる眼内投与経路は、当業者の技能の内にあり、例えばAcheampong AA等、2002, 前出;及びBennett等(1996), Hum.Gene Ther.7:1763-1769及びAmbati J等、2002, Progress in Retinal and Eye Res.21:145-151を参照されたい(これらの全開示を、参考として本明細書中に援用する)。
【0094】
この発明のsiRNAは、単一投与量で投与することもできるし、多数の投与量で投与することもできる。この発明のsiRNAの投与を点滴による場合には、その点滴は、単一の持続的投与であってもよいし、多数の点滴により送達されてもよい。この薬剤の組織への直接的注射は、好適な新血管新生の部位又はその近くに行なう。この薬剤の、新血管新生部位又はその近くの組織への多数の注射は、特に好適である。
【0095】
当業者は又、この発明のsiRNAの、所定の患者への投与のための適当な投薬養生法を容易に決定することができる。例えば、このsiRNAを、患者に、新血管新生部位又はその近くへの単一の注射又はデポジションによって一回投与することができる。或は、このsiRNAを、毎日又は毎週、多数回、患者に投与することができる。例えば、このsiRNAを、患者に、約3〜28週間の、一層好ましくは約7〜10週間の期間にわたって、週一回投与することができる。好適な投薬養生法においては、このsiRNAを、新血管新生部位又はその近くに(例えば、硝子体内に)、7週間にわたって、週一回注射する。この発明のsiRNAの周期的投与が、慢性的な新血管新生性疾患例えば湿型ARMD又は糖尿病性網膜症の患者については、無期限の長さで必要でありうるということは理解される。
【0096】
投薬養生法が多数投与を含む場合には、患者に投与された有効量のsiRNAが、全投薬養生法にわたって投与されたsiRNAの全量を含みうるということが理解される。
【0097】
この発明のsiRNAは、好ましくは、患者への投与前に、当分野で公知の技術によって、医薬組成物として配合される。本発明の医薬組成物は、少なくとも無菌で且つ発熱物質を含まないことを特徴とする。ここで用いる場合、「医薬配合物」は、ヒトへの使用及び獣医学での利用のための配合物を包含する。この発明の医薬組成物の製造方法は、当業者の技能の内にあり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 17版、Mack Publishing Company, ペンシルベニア、Easton,(1985)(この全開示を、参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0098】
本発明の医薬配合物は、この発明のsiRNA(例えば、0.1〜90重量%)又は生理学的に許容しうるその塩を、生理学的に許容しうるキャリアー媒質と混合して含む。好適な生理学的に許容しうるキャリアー媒質は、水、緩衝された水、塩溶液(例えば、通常の塩溶液又は平衡化塩溶液例えばハンクス又はアールの平衡化塩溶液)、0.4%塩溶液、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。
【0099】
この発明の医薬組成物は又、慣用の製薬用賦形剤及び/又は添加剤をも含む。適当な製薬用賦形剤には、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、緩衝剤、及びpH調節剤が含まれる。適当な添加剤には、生理学的に生体適合性の緩衝剤(例えば、トロメタミンヒドロクロリド)、キレート剤の添加(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミドなど)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミド)、又は、随意のカルシウム若しくはナトリウム塩の添加(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)が含まれる。この発明の医薬組成物は、液体形態での使用のためにパッケージ化することができ、又は凍結乾燥することができる。
【0100】
この眼への局所的投与のために、慣用の眼内送達用試薬を利用することができる。例えば、局所的眼内送達のためのこの発明の医薬組成物は、上記のような塩溶液、角膜透過性増強剤、不溶性粒子、ペトロラタム又は他のゲルベースの軟膏、眼への点滴注入に際して粘度が増大するポリマー、又は粘膜付着性ポリマーを含むことができる。好ましくは、眼内送達用試薬は、角膜透過性を増大させ、又は粘性効果により若しくは角膜上皮を覆うムチン層との物理化学的相互作用を確立することによってsiRNAの前眼保持を長くする。
【0101】
局所的眼内送達に適当な不溶性粒子には、Bell等の米国特許第6,355,271号(その全開示を、参考として本明細書中に援用する)に記載されたリン酸カルシウム粒子が含まれる。眼内への点滴注入に際して粘度が増大する適当なポリマーには、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー例えばポロキサマー407(例えば、25%の濃度で)、セルロースアセトフタレート(例えば、30%の濃度で)、又は低アセチルゲランガム例えばゲルライト(登録商標)(CP Kelco, デラウェア、Wilmingtonより入手可能)が含まれる。適当な粘膜付着性ポリマーには、多数の親水性官能基例えばカルボキシル、アミド及び/又は硫酸基を有する親水コロイド;例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、高分子量ポリエチレングリコール(例えば、200,000より大きい数平均分子量)、デキストラン、ヒアルロン酸、ポリガラクツロン酸、及びキシロカンが含まれる。適当な角膜透過性増強剤には、シクロデキストリン、塩化ベンザルコニウム、ポリオキシエチレングリコールラウリルエーテル(例えば、Brij(登録商標)35)、ポリオキシエチレングリコールステアリルエーテル(例えば、Brij(登録商標)78)、ポリオキシエチレングリコールオレイルエーテル(例えば、Brij(登録商標)98)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジギトニン、タウロコール酸ナトリウム、サポニン及びポリオキシエチル化ヒマシ油例えばクレマフォーELが含まれる。
【0102】
固体組成物のためには、慣用の無毒性固体キャリアー;例えば、医薬等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、シュークロース、炭酸カルシウムなどを利用することができる。
【0103】
例えば、経口投与のための固体の医薬組成物は、上に列記した任意のキャリアー及び賦形剤及び10〜95%の、好ましくは25〜75%の、この発明の少なくとも一のsiRNAを含むことができる。エアゾール(吸入)投与のための医薬組成物は、上記のリポソームにカプセル封入された0.01〜20重量%の、好ましくは1〜10重量%の、この発明の少なくとも一のsiRNA、及び噴射剤を含むことができる。所望であれば、キャリアー(例えば、鼻内送達のためのレシチン)を含むこともできる。
【実施例】
【0104】
この発明を、今から、下記の非制限的実施例を用いて説明する。これらの実施例4〜6及び8〜9に記載した動物実験は、研究における動物の世話及び利用に関するペンシルベニア大学施設ガイドラインを用いて行なった。実施例10に記載した動物実験は、Sierra Biomedical, 587 Dunn Circle, Sparks, NV, 89431の標準的操作手順に従って行なう。
【0105】
実施例1 − イン・ビトロでのsiRNAトランスフェクション及び低酸素症の誘導
siRNAのデザイン − ヒトのVEGFmRNAの5’末端から329ntに位置する19ntの配列:AAACCTCACCAAGGCCAGCAC (SEQ ID NO:51)を標的配列として選択した。それが、如何なる他の遺伝子に由来するmRNAにも含まれないことを確実にするために、この標的配列を、NCBIにより提供されたBLASTサーチエンジンにエンターさせた。BLASTアルゴリズムの利用は、Altschul等(1990), J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul等(1997), Nucleic Acids Res.25:3389-3402(これらの開示を、参考として、本明細書中にそっくりそのまま援用する)に記載されている。この標的配列を含む他のmRNAは見出されなかったので、siRNA二本鎖を、この配列を標的とするように合成した(Dharmacon Research, Inc., CO, Lafayette)。
【0106】
このsiRNA二本鎖は、下記のセンス鎖及びアンチセンス鎖を有した。
センス:
【化4】

アンチセンス:
【化5】

【0107】
一緒に、これらのsiRNAセンス鎖及びアンチセンス鎖は、各鎖の3’側にオーバーハング(太字で表示)を有する19ntの二本鎖siRNAを形成した。このsiRNAは、「候補5」又は「Cand5」と呼ばれた。ヒトVEGFmRNAを標的とする他のsiRNAをデザインして、記載したように、Cand5について試験した。
【0108】
グリーン蛍光タンパク質(GFP)mRNA中の下記の配列を標的とするsiRNAを、非特異的対照として利用した:GGCTACGTCCAGCGCACC (SEQ ID NO:79)。このsiRNAを、Dharmacon(Lafayette, CO)から購入した。
【0109】
イン・ビトロでのsiRNAトランスフェクション及び低酸素症の誘導 − ヒト細胞株(293;Hela及びARPE19)を、別々に、24ウェルプレート中に、250マイクロリットルの完全DMEM培地中に、トランスフェクションの1日前に、トランスフェクション時に約50%集密となるように播種した。細胞を、2.5nM Cand5 siRNA、及び対照としてのsiRNAなしの対照又は2.5nMの非特異的siRNA(GFPを標的とする)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションを、すべての細胞株において、「Transit TKO Transfection」試薬を、製造者(Mirus)の勧めるように用いて行なった。
【0110】
トランスフェクションの24時間後に、これらの細胞において、デスフェロキサミドメシレートを、各ウェル当たり130マイクロモルの終濃度で加えることにより低酸素症を誘導した。トランスフェクションの24時間後に、細胞培養培地をすべてのウェルから取り出して、ヒトVEGF ELISA(R&D system, ミネソタ、Minneapolis)を、その培養培地について、Quantikine ヒトVEGF ELISAプロトコール(製造者より入手、その全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されたように行なった。
【0111】
図1で見られるように、Cand5 siRNAにより誘導されたRNAi分解は、低酸素症の293及びHeLa細胞により生成されるVEGFの濃度を有意に低下させる。siRNAなしの対照又は非特異的siRNA対照の何れかで処理した低酸素症の細胞により生成されるVEGFの量において本質的に差異はなかった。類似の結果が、同じ条件下で処理したヒトARPE19細胞においても見られた。従って、VEGFを標的とするsiRNAによるRNA干渉は、イン・ビトロでヒトの培養細胞におけるVEGFの病原性のアップレギュレーションを破壊する。
【0112】
上で概説した実験を、マウスのNIH3T3細胞について、マウス特異的VEGF siRNAを用いて反復し(実施例6参照)、VEGF生成を、マウスVEGF ELISA (R&D systems, ミネソタ、Minneapolis)を用いて、Quantikine マウスVEGF ELISAのプロトコール(製造者より入手可能、その全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されたようにして定量した。ヒトの細胞株について図1に示したのと類似の結果が得られた。
【0113】
実施例2 − siRNA濃度の増大の、ヒト培養細胞におけるVEGF生成に対する効果
実施例1で概説した実験を、ヒト293、HeLa及びARPE19細胞で、濃度10〜50nMの範囲のsiRNAを利用して反復した。Cand5 siRNAの、VEGF生成をダウンレギュレートする能力は、約13nM siRNAまで穏やかに増大したが、これより高濃度では平坦効果が見られた。これらの結果は、平坦効果が、このsiRNAをトランスフェクトされなかった少数の細胞からのVEGF生成を反映しているようなので、mRNAのsiRNA媒介のRNAi分解の触媒的性質を強調している。このsiRNAをトランスフェクトされた細胞の大部分について、低酸素症により誘導された増大したVEGFmRNA生成は、約13nMより高いsiRNA濃度において、標的mRNAのsiRNA誘導された分解により追い越される。
【0114】
実施例3 − siRNAターゲティングの特異性
NIH3T3マウス繊維芽細胞を、24ウェルプレート中で、標準的条件下で、これらの細胞が、トランスフェクションの1日前に約50%集密になるように生育させた。ヒトVEGF siRNA Cand5を、NIH3T3マウス繊維芽細胞に実施例1におけるようにトランスフェクトした。次いで、低酸素症を、トランスフェクトされた細胞において誘導して、マウスVEGF濃度を、ELISAによって、実施例1におけるように測定した。
【0115】
ヒトVEGF siRNA Cand5により標的とされた配列は、マウスVEGF mRNAと1ヌクレオチドだけ違っている。図2で見られるように、ヒトVEGF siRNAは、マウス細胞のマウスVEGFを低酸素症後に調節する能力に対して影響を有しない。これらの結果は、siRNA誘導されたRNAi分解が、1ヌクレオチド分離内まで配列特異的であることを示している。
【0116】
実施例4 − siRNAのマウス網膜色素上皮細胞へのイン・ビボ送達
VEGFは、加齢関連黄斑変性(ARMD)のヒト患者の網膜色素上皮(RPE)細胞においてアップレギュレートされる。機能的siRNAが、RPE細胞にイン・ビボで送達されうることを示すために、GFPを、マウスの網膜で組換えウイルスを用いて発現させ、GFP発現をsiRNAを用いて抑制した(silenced)。
【0117】
5匹のC57/Black6成体マウス(Jackson Labs, メイン、Bar Harbor)の各々の一方の眼に、Bennett等(1996), 前出に記載されたように、網膜下に、CMVプロモーターにより駆動されるeGFPを含むアデノウイルス約1×108粒子及びtransit TKO reagent (Mirus)と結合体化されたeGFPを標的とするsiRNA20ピコモルを含む混合物を注射した。
【0118】
陽性対照として、反対側性の眼に、CMVプロモーターにより駆動されるeGFPを含むアデノウイルス約108粒子及びtransit TKO reagent (Mirus)と結合体化されたヒトVEGFを標的とするsiRNA20ピコモルを含む混合物を注射した。GFPの発現を、眼底検査法により、注射の48及び60時間後に検出した。動物を、注射後48時間又は60時間で犠牲にした。それらの眼を摘出して、4%ホルムアルデヒド中で固定し、検鏡板用試料として調製し又は蛍光顕微鏡検査用に処理して10ミクロンの低温切片とした。
【0119】
GFP蛍光は、5匹のマウスの内の4匹において、GFPmRNAを標的とするsiRNAを受けた眼における眼底検査法によっては検出されなかったが、GFP蛍光は、非特異的な対照用siRNAを受けた反対側性の眼において検出可能であった。蛍光顕微鏡により分析した代表的な検鏡板用試料は、非特異的な対照用siRNAを受けた眼と比較して、GFPsiRNAを受けた眼におけるGFP蛍光の欠如を示した。他の網膜の低温切片は、組換えアデノウイルスが、効率的に、RPE細胞を標的とし、アデノウイルスに、GFPmRNAを標的とするsiRNAが伴う場合には、GFP導入遺伝子の発現が停止することを示した。
【0120】
GFPmRNAを標的とするsiRNAを受けた眼に蛍光顕微鏡により検出可能な幾らかのGFP蛍光がある場合、その蛍光は、非特異的siRNAを受けた対照と比較して、大いに抑制されている。これらのデータは、機能的siRNAが、イン・ビボで、RPE細胞へ送達されうることを示している。
【0121】
実施例5 − マウス網膜におけるヒトVEGFのイン・ビボ発現及びsiRNA誘導されたRNAi分解
siRNAが、イン・ビボで機能化されたVEGFを標的とすることを示すために、外因性のヒトVEGF発現カセットを、実施例4におけるように、網膜下注射により、アデノウイルスによってマウスRPE細胞に送達した。一方の眼は、Cand5 siRNAを受け、反対側性の眼は、GFP mRNAを標的とするsiRNAを受けた。これらの動物を、注射の60時間後に犠牲にして、それらの注射された眼を取り出して、摘出後、液体N2中で急速冷凍した。次いで、それらの眼を、溶解用緩衝液中でホモジェナイズして、総タンパク質を、標準的なBradfordタンパク質アッセイ(Roche, ドイツ国)を利用して測定した。これらの試料を、ヒトVEGFを実施例1に記載したようにELISAによってアッセイする前に、総タンパク質につき標準化した。
【0122】
VEGFの発現は、動物間で幾らか変化した。VEGFレベルの変動は、実施例4のGFP実験において認められたものとによく相関し、注射間の幾らかの誤差、及び各動物において標的遺伝子を送達するアデノウイルスの示差的能力に帰することができる。しかしながら、VEGF siRNAを受けた各眼におけるVEGF発現の、非特異的対照用siRNAを受けた眼と比較しての、有意の減衰があった(図4)。これらのデータは、Cand5 siRNAが、マウスRPE細胞におけるイン・ビボでのヒトVEGF発現の抑制(silencing)において強力且つ有効であったことを示している。
【0123】
実施例6 − マウスCNVモデルにおける脈絡膜新血管新生の阻害
ARMDにおける脈絡膜新血管新生は、RPE細胞におけるVEGFのアップレギュレーションのためであるという証拠がある。このヒトの病状は、レーザーを利用して網膜上の一点を焼くこと(「レーザー光凝固」又は「レーザー誘導」)により、マウスにおいてモデル化することができる。治癒過程に際して、VEGFは、焼かれた領域のRPE細胞においてアップレギュレートされ、これが、脈絡膜の血管再生へと導くと考えられる。このモデルは、マウス脈絡膜新血管新生(「CNV」)モデルと呼ばれる。
【0124】
マウスCNVモデルの救済のために、実施例1のヒト「Cand5」siRNAに由来する1ヌクレオチドの変化を組み込んだマウスsiRNAをデザインした。このマウスsiRNAは、配列 AAACCUCACCAAAGCCAGCAC (SEQ ID NO:80)で、マウスVEGFmRNAを特異的に標的とした。マウスVEGFを標的とする他のsiRNAも又、デザインして試験した。実施例1で非特異的対照として用いたGFP siRNAを、ここでも、非特異的対照として利用した。
【0125】
レーザー誘導の24時間後に、11匹の成体C57/Black6マウス(Jackson Labs, メイン、Bar Harbor)の各々の一方の眼に、実施例4におけるように、CMVプロモーターにより駆動されるLacZを含むアデノウイルス約1×108粒子及びtransit TKO reagent (Mirus)と結合体化したマウスVEGFを標的とするsiRNA20ピコモルを含む混合物を、網膜下に注射した。対照として、反対側性の眼は、CMVプロモーターにより駆動されるLacZを含むアデノウイルス約1×108粒子及びtransit TKO reagent (Mirus)と結合体化されたGFPを標的とするsiRNA20ピコモルを含む混合物を受けた。
【0126】
レーザー処理の14日後に、これらのマウスにフルオレセインを潅流させて、新血管新生領域を、焼いた点の周囲で測定した。反対側性の眼の焼いた点の領域を、対照として利用した。マウスVEGFを標的とするsiRNAを受けた動物の焼いた点の周囲の新血管新生部位は、平均で、対照領域の面積の1/4であった。これらのデータは、ARMDの治療のための、VEGFに向けられたsiRNA(「抗VEGF siRNA」とも呼ばれる)の利用を指示している。
【0127】
実施例7 − siRNAの発現のためのアデノ随伴ウイルスベクターの生成
この発明のsiRNAの送達のための組換えAAVベクターの生成のための「シス作用性」プラスミドを、本質的にSamulski R等(1987), 前出に記載されたようにして、PCRベースのサブクローニングにより生成した。このシス作用性プラスミドは、「pAAV siRNA」と呼ばれる。
【0128】
psub201のrep及びcap遺伝子を、次の配列で、この順序で置き換えた:ヒトU6RNAプロモーターの制御下の操作可能にポリT停止配列と結合させた19ntのセンスRNA鎖コード配列、及びヒトU6RNAプロモーターの制御下の操作可能にポリT停止配列と結合させた19ntのアンチセンスRNA鎖コード配列。pAAV siRNAの図式表示を、図5に与える。
【0129】
組換えAAVsiRNAベクターを、pAAVsiRNAを、Fisher KJ等(1996), 前出に記載されたように、予めE1を欠失させたアデノウイルスを感染させたヒト293細胞にトランスフェクトすることにより得た。これらのAAVrep及びcap機能は、Samulski R等(1989), 前出に記載されたように、トランス作用性プラスミドpAAV/Adにより与えられた。この組換えAAVsiRNAベクターの製造ロットを、ゲノムコピー数/mlに従って、Fisher KJ等(1996), 前出に記載されたようにして力価を測定した。
【0130】
実施例8 − VEGFに向けられたsiRNAは、実験的脈絡膜新血管新生を阻止する
マウスのVEGFに向けられたsiRNAの、実験的レーザー誘導性脈絡膜新血管新生(CNV)をマウスにおいて阻止する能力を、下記のように試験した。
【0131】
雌のC57BL/6成体マウスの網膜を、810nmダイオードレーザーを利用して、レーザー光凝固させた(75um、140mw、0.10秒)(OcuLight Six;IRIS Medical、カリフォルニア、Mountain View)。3つのレーザースポットを各マウスの両眼に加えた。レーザー光凝固の36時間後に、マウスVEGFを標的とするsiRNA(「mVEGF1.siRNA」)を、各マウスの一方の眼の網膜下又は硝子体に送達した。網膜下注射のために、このsiRNAを、Transit TKO トランスフェクション試薬(Mirus)と結合体化して組換えアデノウイルス(rアデノウイルス)と混合した。硝子体内注射のために、このsiRNAを、トランスフェクション試薬及びrアデノウイルスの非存在下で送達した。対照として、各マウスの反対側性の眼は、マウスVEGFに対する相同性を有しないGFPを標的としたsiRNA(「GFP1.siRNA」)と同じ配合物の網膜下又は硝子体内注射を受けた。
【0132】
レーザー処理の14日後に、すべての動物を、高分子量のFITC−デキストランで潅流し、脈絡検鏡板用試料を上記のように調製して、それらの検鏡板用試料を、マスクした仕方で顕微鏡的に写真撮影して分析した。各検鏡板用試料におけるCNVの面積を、オープンラブソフトウェア(Improvision, マサチューセッツ、Boston)を用いて測定した。mVEGF1.siRNAで処理した眼におけるCNVの平均面積は、網膜下(図6A;P<0.003)及び硝子体内(図6B;P<0.04)送達の両方について、GFP1.siRNA処理された眼における面積より有意に小さかった。
【0133】
第二の実験において、雌のC57BL/6成体マウスの網膜を、上記のようにレーザー光凝固させて、それらの動物を対照グループと試験グループとに分けた。レーザー光凝固の1日後に、リン酸緩衝塩溶液を、対照グループの動物の硝子体内に送達し、それらを、レーザー処理の14日後に、デキストラン−フルオレセインで潅流した。次いで,検鏡板用試料を調製して、各検鏡板用試料におけるCNVの面積を上記のように測定した。
【0134】
レーザー光凝固の14日後に、mVEGF1.siRNAを、硝子体内注射により、試験グループの各マウスの一方の眼に注射した。対照として、反対側性の眼に、GFP1.siRNAを注射した。これらの試験グループの動物を、高分子量のデキストラン−フルオレセインでレーザー処理の21日後に潅流した。次いで、検鏡板用試料を調製して、各検鏡板用試料におけるCNVの面積を上記のように測定した。
【0135】
この後者の実験において、抗VEGFsiRNAを、CNVの成長前ではなく、CNVの成長中に投与し、それは、湿型AMDを呈するヒト患者の一層代表的病状である。図6に見られるように、mVEGF1.siRNA処理した眼のCNVの平均面積は、GFP1.siRNA処理した眼において測定された面積より有意に小さかった(図6C;P<0.05)。mVEGF1.siRNA処理した21日目の眼及び14日目の対照用(「PBS」)眼におけるCNVの平均面積は、有意に異ならなった(図6C;P=0.469)。
【0136】
これらの実験結果は、加齢関連黄斑変性を、抗VEGFsiRNAにより治療できることを示している。
【0137】
実施例9 − マウスRPE細胞において抗VEGFsiRNAにより誘導されたヒトVEGFのイン・ビボRNA干渉
Cand5siRNAの、イン・ビボで経時的にVEGFのRNAiを誘導する能力を下記のように評価した。
【0138】
ヒトVEGFをアデノ随伴ウイルスベクターから発現するAAV.CMV.VEGFを、寛大にも、A. Auricchio博士から提供された。AAV.CMV.VEGFを、5匹のC57Bl/6マウスの網膜下に及び両眼に注射した。AAV.CMV.VEGFの注射の28日後に、Cand5siRNAを、硝子体内注射により、一方の眼に送達して、対照用GFP1.siRNAを、硝子体内注射により、各動物の反対側性の眼に送達した。
【0139】
siRNA注射後、0日目(プレ−siRNA注射)、6、10及び14日目に、これらのマウスを犠牲にして、それらの眼を、摘出後、液体窒素中で急速冷凍した。次いで、これらの眼を、溶解緩衝液(Roche, スイス国、Basel)中でホモジェナイズし、全タンパク質を、Bradford アッセイを利用して、上記の実施例5におけるように測定した。2匹のマウスを、0日目の時点のために利用し(n=2)、6、10及び14日目の時点のために、各3匹のマウスを利用した(n=3)。これらの試料を、全タンパク質について標準化してから、ヒトVEGFについて、製造者(R & D systems, ミネソタ、Minneapolis)の勧めに従ってELISAによりアッセイした。各マウスについてのVEGFのパーセント(VEGF%)を、Cand5を注射された眼におけるVEGF濃度(「[VEGF]」)を、GFP1.siRNAを注射された眼における[VEGF]で除して100を乗ずることにより計算した。
【0140】
図7から分かるように、Cand5の単一注射は、siRNAの注射後6日で約70%のVEGFレベルのRNAi媒介による減少を誘導し、VEGF生成の約35%の減少をsiRNA注射後少なくとも14日間持続した。これらの結果は、ヒトVEGFに向けられたsiRNAが、持続的期間にわたるヒトVEGFのイン・ビボでのRNAiを誘導することができることを示している。
【0141】
実施例10 − 抗VEGFsiRNAによるサルにおけるVEGFのイン・ビボでのRNA干渉
10匹の自然のままのカニクイザル(Macaca fascicularis)が、両眼の網膜のレーザー光凝固にかけられ、脈絡膜新血管新生(「CNV」)が誘導されることが予想される。下記は、Cand5siRNAの、サルにおけるCNVの面積を減少させる能力を評価するために意図された実験計画を表す。Cand5により標的とされたVEGF RNA配列は、ヒトと M. fascicularisの両方において同じであり、Cand5は、M. fascicularisのVEGF RNAのRNAiを誘導することが予想される。
【0142】
この実験を、Sierra Biomedical (「SBi」), 587 Dunn Circle, Sparks, NV, 89431により、SBi's Standard Operating Proceduresに従って行なう。すべてのサルは、身体検査、血液学的及び眼科学的評価、血清化学、並びに網膜電図検査法(「ERG」)よりなる完全予備研究健康スクリーンを受ける。サルの眼の予備研究のフルオレセイン血管造影法も又、行なって、眼内圧を予備研究及び2つの追加の時点で研究期間中に測定する。
【0143】
0日目に、10匹すべてのサルの両眼をレーザー光凝固させて、脈絡膜新血管新生を誘導する。これらの動物は、実験中、ケージ側面からの観察を、一日2回受け、食物消費の一日一回の定性的評価を受ける。レーザー誘導後14日目に、これらのサルは、硝子体内に、治療用及び対照用配合物の50マイクロリットルの単一投与量を、各眼に、ランダムに、二重盲検法で受ける(下記参照)。例えば、所定の動物は、処理1用量を右眼に、対照用量を左眼に受けることができる。他の動物は、処理1用量を右眼に、処理3用量を左眼に受けることができる。全部で1つの対照及び各4つの眼の4つの処理グループなので、4つの眼が各配合物を受けることが予想される。
【0144】
これらの配合物は:対照 − 平衡化塩溶液(「BSS」)のみ;処理1 − 1mg/ml Cand5(BSS中);処理2 − 2.5mg/ml Cand5(BSS中);処理3 − 5mg/ml Cand5(BSS中);及び処理4 − 10mg/ml Cand5(BSS中)となる。注射前に、各配合物のpH、浸透性、及び260nmでの吸光度が測定されるということが予想される。
【0145】
レーザー誘導後に、毎週、各サルの両眼について、レーザー誘導後7週間にわたって、フルオレセイン血管造影法が行われる。次いで、これらのサルを犠牲にして、全組織収集(硝子体試料を含む約45組織)及び集めた組織の組織病理学的評価を用いて、完全な検屍を行なう。ERGは、検屍前に行なわれる。
【0146】
CNVのレーザー誘導された面積は、Cand5 siRNAの投与に際して減少し、CNV面積は、Can5の投与量を増すと減少するということが予想される。しかしながら、上記の実施例2におけるような平坦効果が認められうる。このCand5 siRNAは、眼の脈絡膜を除いて他の如何なる器官又は組織においても効果を有するとは予想されない。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】siRNAで処理してない(「−」);非特異的siRNAで処理した(「非特異的」);又はヒトVEGFmRNAを標的とするsiRNAで処理した(「VEGF」)酸素欠乏293細胞におけるVEGF濃度(pg/ml)の棒グラフである。
【図1B】siRNAで処理してない(「−」);非特異的siRNAで処理した(「非特異的」);又はヒトVEGFmRNAを標的とするsiRNAで処理した(「VEGF」)酸素欠乏Hela細胞におけるVEGF濃度(pg/ml)の棒グラフである。
【図2】siRNAで処理してない(「−」);非特異的siRNAで処理した(「非特異的」);又はヒトVEGFmRNAを標的とするsiRNAで処理した(「VEGF」)酸素欠乏NIH3T3細胞におけるVEGF濃度(pg/ml)の棒グラフである。
【図3】GFPsiRNA(濃い灰色の棒)又はヒトVEGFsiRNA(薄い灰色の棒)の存在下でヒトVEGFを発現するアデノウイルス(「AdVEGF」)を注入したマウスの網膜におけるヒトVEGF濃度(pg/全タンパク質)の棒グラフである。
【図4】GFPsiRNAの網膜下注入を受けた対照用眼(N=9;「GFPsiRNA」)、及びマウスVEGFsiRNAの網膜下注入を受けた眼(N=7;「マウスVEGFsiRNA」)においてレーザー誘導されたCNVの平均面積(mm2)を示す棒グラフである。
【図5】pAAVsiRNA(この発明の組換えAAVウイルスベクターの生成に使用するシス作動性プラスミド)の図式表示である。
【図6A】網膜下にマウス抗VEGFsiRNA(「mVEGF1.siRNA」)又は対照用siRNA(「GFP1.siRNA」)を注入したマウスの眼における処理おいてレーザー誘導されたCNVの平均面積(mm2)の棒グラフを示している。
【図6B】硝子体にマウス抗VEGFsiRNA(「mVEGF1.siRNA」)又は対照用siRNA(「GFP1.siRNA」)を注入したマウスの眼における処理おいてレーザー誘導されたCNVの平均面積(mm2)の棒グラフを示している。
【図6C】硝子体に、レーザー誘導後1日目に、siRNAを含まないリン酸緩衝塩溶液(「PBS」;レーザー誘導後14日目にCNV面積測定);レーザー誘導後14日目に、対照用siRNA(「GFP1.siRNA」;レーザー誘導後21日目にCNV面積測定);又はレーザー誘導後14日目に、マウス抗VEGFsiRNA(「mVEGF1.siRNA」;レーザー誘導後21日目にCNV面積測定)を注入されたマウスの眼においてレーザー誘導されたCNVの平均面積(mm2)の棒グラフである。
【図7】ヒト抗VEGFsiRNA(「Cand5」)及び対照用siRNA(「GFP1.siRNA」)を、注入後0(n=2;プレ−siRNA注入)、6(n=3)、10(n=3)及び14(n=3)日目で網膜下に注入されたマウスの眼におけるVEGFタンパク質のパーセント(「VEGF%」)のグラフである。
【配列表】

































































































































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
センスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含む単離されたsiRNAであって、該センス及びアンチセンス鎖がRNA二本鎖を形成し、且つ該センス鎖が、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体中の隣接する約19〜25ヌクレオチド標的配列と同じヌクレオチド配列を含む、当該単離されたsiRNA。
【請求項2】
ヒトVEGFmRNAを、VEGF121mRNA(SEQ ID NO:2);VEGF165mRNA(SEQ ID NO:3);VEGF189mRNA(SEQ ID NO:4)及びVEGF206mRNA(SEQ ID NO:5)よりなる群から選択する、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項3】
ヒトVEGFmRNA配列の同源体が、マウスVEGFmRNA(SEQ ID NO:1)である、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項4】
センスRNA鎖が、SEQ ID NO:77を含み、且つアンチセンスRNA鎖が、SEQ ID NO:78を含む、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項5】
センスRNA鎖が、一つのRNA分子を含み、且つアンチセンスRNA鎖が、一つのRNA分子を含む、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項6】
RNA二本鎖を形成するセンス及びアンチセンスRNA鎖が、単一鎖のヘアピンにより共有結合されている、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項7】
siRNAが、非ヌクレオチド物質を更に含む、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項8】
センス及びアンチセンスRNA鎖が、ヌクレアーゼ分解に対して安定化されている、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項9】
3’オーバーハングを更に含む、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項10】
3’オーバーハングが、1〜約6ヌクレオチドを含む、請求項9に記載のsiRNA。
【請求項11】
3’オーバーハングが、約2ヌクレオチドを含む、請求項9に記載のsiRNA。
【請求項12】
センスRNA鎖が、第一の3’オーバーハングを含み且つアンチセンスRNA鎖が、第二の3’オーバーハングを含む、請求項5に記載のsiRNA。
【請求項13】
第一及び第二の3’オーバーハングが、別々に、1〜約6ヌクレオチドを含む、請求項12に記載のsiRNA。
【請求項14】
第一の3’オーバーハングが、2ヌクレオチドを含み且つ第二の3’オーバーハングが、2ヌクレオチドを含む、請求項13に記載のsiRNA。
【請求項15】
第一及び第二の3’オーバーハングを構成する2ヌクレオチドが、ジチミジル酸(TT)又はジウリジル酸(uu)である、請求項14に記載のsiRNA。
【請求項16】
3’オーバーハングが、ヌクレアーゼ分解に対して安定化されている、請求項9に記載のsiRNA。
【請求項17】
請求項1に記載のsiRNAを含む網膜色素上皮細胞。
【請求項18】
センスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含むsiRNAを発現するための核酸配列を含む組換えプラスミドであって、該センス及びアンチセンスRNA鎖が、RNA二本鎖を形成し、且つセンスRNA鎖が、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体中の隣接する約19〜25ヌクレオチドの標的配列と同じヌクレオチド配列を含む、当該組換えプラスミド。
【請求項19】
siRNAを発現するための核酸配列が、誘導性又は調節可能なプロモーターを含む、請求項18に記載の組換えプラスミド。
【請求項20】
siRNAを発現するための核酸配列が、ポリT停止配列に操作可能に結合されたセンスRNA鎖をコードする配列をヒトU6RNAプロモーターの制御下に含み、ポリT停止配列に操作可能に結合されたアンチセンスRNA鎖をコードする配列をヒトU6RNAプロモーターの制御下に含む、請求項18に記載の組換えプラスミド。
【請求項21】
プラスミドが、pAAVsiRNAである、請求項20に記載の組換えプラスミド。
【請求項22】
センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖を含むsiRNAの発現のための核酸配列を含む組換えウイルスベクターであって、該センス及びアンチセンスRNA鎖は、RNA二本鎖を形成し、センスRNA鎖は、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体中の隣接する約19〜25ヌクレオチドの標的配列と同じヌクレオチド配列を含む、上記の組換えウイルスベクター。
【請求項23】
siRNAの発現のための核酸配列が、誘導性又は調節可能なプロモーターを含む、請求項22に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項24】
siRNAの発現のための核酸配列が、ポリT停止配列に操作可能に結合されたセンスRNA鎖をコードする配列をヒトU6RNAプロモーターの制御下に含み、ポリT停止配列に操作可能に結合されたアンチセンスRNA鎖をコードする配列をヒトU6RNAプロモーターの制御下に含む、請求項22に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項25】
組換えウイルスベクターを、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びヘルペスウイルスベクターよりなる群から選択する、請求項22に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項26】
組換えウイルスベクターが、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、又はモコラウイルスからの表面タンパク質によりシュードタイプ分けすることができる、請求項22に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項27】
組換えウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターを含む、請求項25に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項28】
siRNA及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬組成物であって、該siRNAが、センスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含み、該センス及びアンチセンスRNA鎖はRNA二本鎖を形成し、そしてセンスRNA鎖が、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体中の隣接する約19〜25ヌクレオチドの標的配列と同じヌクレオチド配列を含む、上記の医薬組成物。
【請求項29】
リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン又はリポソームを更に含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
請求項18に記載のプラスミド又は生理的に許容されるその塩、及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬組成物。
【請求項31】
リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン又はリポソームを更に含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
請求項22に記載のウイルスベクター及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬組成物。
【請求項33】
ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、ヒトFlk-1/KDRmRNA、これらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体の発現を阻止する方法であって、患者にセンスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含む有効量のsiRNAを投与し、該センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖はRNA二本鎖を形成し、該センスRNA鎖は、ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体中の隣接する約19〜25ヌクレオチドの標的配列と同じヌクレオチド配列を含み、それでヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体を分解することを含む当該方法。
【請求項34】
患者が、ヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体の発現が、患者の一方又は療法の眼において阻止される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
ヒトVEGFmRNA、ヒトFlt−1mRNA、若しくはヒトFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体の発現が、患者の網膜色素上皮細胞において阻止される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
siRNAの有効量が、約1〜100nMである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
siRNAを、送達用試薬と共に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
送達用薬剤を、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン及びリポソームよりなる群から選択する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
送達用薬剤が、リポソームである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
リポソームが、該リポソームを血管形成部位又はその近くの細胞を標的とさせるリガンドを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
リガンドが、腫瘍細胞又は血管内皮細胞上のレセプターに結合する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
リガンドが、モノクローナル抗体を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
リポソームが、オプソニン作用阻害成分で改変されている、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
オプソニン作用阻害成分が、PEG、PPG又はこれらの誘導体を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
siRNAが、組換えプラスミドから発現される、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
siRNAが、組換えウイルスベクターから発現される、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
組換えウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター又はヘルペスウイルスベクターを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
組換えウイルスベクターが、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、又はモコラウイルスからの表面タンパク質によりシュードタイプ分けすることができる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
組換えウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
siRNAを、腸内投与経路により投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項52】
腸内投与経路を、経口、直腸及び鼻内投与よりなる群から選択する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
siRNAを、非経口投与経路により投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項54】
非経口投与経路を、血管内投与、組織周辺及び組織内投与、皮下注射又はデポジション、皮下点滴、眼内投与、及び新血管新生部位又はその近くへの直接適用よりなる群から選択する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
血管内投与を、静脈内ボーラス注射、静脈内点滴、動脈内ボーラス注射、動脈内点滴及び血管系へのカテーテル点滴注入法よりなる群から選択する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
組織周辺及び組織内注射が、腫瘍周辺への注射又は腫瘍内部への注射を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
眼内投与が、硝子体内、網膜内、網膜下、テント下、眼窩周囲及び眼窩後、経角膜又は経強膜投与を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
新血管新生部位又はその近くへの直接適用が、カテーテル、角膜ペレット、眼滴瓶、坐薬、多孔性物質を含むインプラント、非多孔性物質を含むインプラント、又はゼラチン状物質を含むインプラントによる適用、を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
新血管新生部位が、眼内にあり、新血管新生部位又はその近くへの直接適用が、眼内インプラントによる適用を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
眼内インプラントが、生物分解性である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
患者における血管形成を阻止する方法であって、該方法は、患者に、センスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含むsiRNAの有効量を投与することを含み、該センス及びアンチセンスRNA鎖は、RNA二本鎖を形成し、該センスRNA鎖は、ヒトのVEGFmRNA、ヒトのFlt−1mRNA、ヒトのFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体中の約19〜25の隣接ヌクレオチドの標的配列と同一のヌクレオチド配列を含む当該方法。
【請求項62】
血管形成が、病原性である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
血管形成が、非病原性である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
非病原性血管形成が、脂肪組織の生成又はコレステロール生成と関連している、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
非病原性血管形成が、子宮内膜の新血管新生を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
血管形成を、患者の一方又は両方の眼において阻止する、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
血管形成を、患者の網膜色素上皮細胞において阻止する、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
患者における血管形成性疾患を治療する方法であって、該方法は、かかる治療を必要とする患者に、センスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含む有効量のsiRNAを投与することを含み、該センス及びアンチセンスRNA鎖はRNA二本鎖を形成し、該センスRNA鎖は、ヒトのVEGFmRNA、ヒトのFlt−1mRNA、ヒトのFlk−1/KDRmRNA、又はこれらの選択的スプライス型、変異体若しくは同源体中の約19〜25の隣接ヌクレオチドの標的配列と同一のヌクレオチド配列を含み、それで、血管形成性疾患と関連する血管形成が阻止される当該方法。
【請求項69】
血管形成性疾患が、癌と関連する腫瘍を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
癌を、乳癌、肺癌、頭頚部癌、脳癌、腹部癌、大腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胃腸癌、神経膠腫、肝臓癌、舌癌、神経芽細胞腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、多発性骨髄腫、皮膚癌、リンパ腫及び血液癌よりなる群から選択する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
血管形成性疾患を、糖尿病性網膜症、加齢関連黄斑変性、及び炎症性疾患よりなる群から選択する、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
炎症性疾患が、乾癬又はリウマチ様関節炎である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
血管形成性疾患が、加齢関連黄斑変性である、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
siRNAを、血管形成性疾患を治療するための医薬と共に投与し、該医薬が、siRNAとは異なる、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
血管形成性疾患が癌であり、医薬が化学療法剤を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
化学療法剤を、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、アドリアマイシン、ダウノルビシン及びタモキシフェンよりなる群から選択する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
siRNAを、血管形成性疾患の治療のためにデザインされた他の治療法と組み合せて患者に投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
血管形成性疾患が癌であり、siRNAを、放射線療法、化学療法又は外科手術と組み合せて投与する、請求項77に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−505251(P2006−505251A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−523550(P2004−523550)
【出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/022444
【国際公開番号】WO2004/009769
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(593171363)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルベニア (9)
【Fターム(参考)】