説明

血管新生抑制剤

【課題】
低分子の硫酸化フコース含有多糖を有効成分とした、血管新生抑制のための組成物を提供すること、及び当該組成物を含有する医薬又は食品を提供すること。
【解決手段】
硫酸化フコース含有多糖の低分子化物、硫酸化フコース含有オリゴ糖及び/又は薬理学的に許容されるその塩を含有することを特徴とする組成物の血管新生抑制作用を証明する。ここで使用される、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物、硫酸化フコース含有オリゴ糖としては、褐藻類由来のものが好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管新生抑制に有効な組成物、特に食用の組成物、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の血管から新しい血管が形成されることを血管新生とよび、最近の研究の進展によって、癌、糖尿病性網膜症、動脈硬化症などの生活習慣病は血管新生異常を基本病態とし、その病像の成立・悪性化に血管新生が深く関わっていることが明らかにされている(例えば非特許文献1および2)。
【0003】
生体に発生した腫瘍は、通常生体内の栄養分を利用して大きくなっていくが、ある程度の大きさになると栄養分を大量に吸収するために、生体の血管を腫瘍に向かって新生させ、血液から大量の栄養分を取り込むようになる。そのため、腫瘍増殖を抑制する方法の一つとして、腫瘍への血管新生を抑制する方法が注目されている。腫瘍への血管新生を抑制する物質は種々検討されており、抑制作用を持つ物質は次々と見出されているが、現時点では医薬品や機能性食品として販売されているものはない。
【0004】
血管新生抑制作用を持つ物質として、ヒバマタ由来の分子量10万程度のフコイダンに関する報告があるが(例えば、非特許文献3)、同じ海藻由来のフコイダンでも、分子量4000のものでは、血管新生を促進するという報告がある(例えば、非特許文献4)。また、マコンブ由来のフコイダンを実験に使用したグループからは、分子量3万のものには血管新生抑制作用があるが、1万5千から2万のものでは、血管新生促進作用があるということが報告されている(例えば、非特許文献5)。
すなわち、低分子のフコイダンでは血管新生を促進させるということが、公知事項となっている。
【0005】
【非特許文献1】Folkman,J.,1995,Nature Med.,1:P27−31
【非特許文献2】Battegay,E.J.,1995,J.Mol.Med.,73:333−346
【非特許文献3】Glycoconjugate J., 1991,8, P350−353
【非特許文献4】Molecular Pharmacology, 2003, 64, P696−702
【非特許文献5】International J Molecular Medicine, 2005, 15, P695−699
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低分子の硫酸化フコース含有多糖を有効成分とした、血管新生抑制用の組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、天然物由来の血管新生抑制作用を有する物質について研究を重ねた結果、低分子化した硫酸化フコース含有多糖が血管新生を顕著に抑制することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の第1の発明は、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物及び/又は薬理学的に許容されるその塩を含有することを特徴とする、血管新生抑制のための組成物に関する。本発明の第1の発明において、例えば、褐藻類由来の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を含有する組成物が例示され、当該低分子化物としては、硫酸化フコース含有多糖及び/又は硫酸化フコース含有多糖含有物を酵素処理又は酸処理することにより得られる硫酸化フコース含有多糖の低分子化物が例示される。また、本発明の第1の発明において、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーで測定した際のプルラン換算の平均分子量が4000〜8000である硫酸化フコース含有多糖の低分子化物が例示される。
【0009】
本発明の第2の発明は、2〜11糖で構成される硫酸化フコース含有オリゴ糖及び/又は薬理学的に許容されるその塩を含有することを特徴とする、血管新生抑制のための組成物に関する。本発明の第2の発明において、2〜11糖で構成される硫酸化フコース含有オリゴ糖としては、下記一般式(化1)〜(化6)から選択される少なくとも1つの化合物が例示される。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

(全式中、RはH又はSOHであり、Rの少なくとも1つはSOHである。)
【0016】
本発明の第3の発明は、本発明の第1又は第2の発明の組成物を有効成分として含有することを特徴とする医薬に関する。
【0017】
本発明の第4の発明は、本発明の第1又は第2の発明の組成物を有効成分として含有することを特徴とする食品に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の組成物、当該組成物を含有する医薬又は食品は、血管新生抑制を要する疾患、例えば癌、糖尿病性網膜症、緑内障、血管腫、アテローム性動脈硬化症、乾癬症、慢性炎症疾患、リウマチ性関節炎に対して極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは鋭意研究の結果、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物、特に特定の硫酸化フコース含有オリゴ糖や、硫酸化フコース含有多糖の酸分解物が血管新生抑制作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
本発明で開示される血管新生抑制のための組成物は硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を含有することを特徴とする。なお、本明細書において、硫酸化フコース含有多糖とは、硫酸化フコースを構成糖として含む多糖(フコイダン、フコイジンとも称される)を意味する。本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は、下記の硫酸化フコース含有多糖及び/又は硫酸化フコース含有多糖含有物を酵素学的手法、化学的手法、物理学的手法等の公知の方法又はこれらの方法を組み合わせて低分子化することにより得ることができる。また、当該組成物としては、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を含んでいればよく、その原料、例えば海藻やナマコ由来の成分が混合されていてもよい。
【0021】
本発明において硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の製造に用いられる硫酸化フコース含有多糖としては特に限定はなく、例えば、海藻類やナマコ由来の硫酸化フコース含有多糖を使用することができ、特に好適には褐藻類由来の硫酸化フコース含有多糖が使用される。ここで褐藻類としては特に限定はないが、例えば、ガゴメ、トロロコンブ、マコンブ、レッソニア ニグレッセンス、ワカメ、アラメ、カジメ、ジャイアントケルプ等のコンブ目海藻、モズク、オキナワモズク、マツモ等のナガマツモ目海藻、ヒバマタ、ヒジキ、ホンダワラ等のヒバマタ目海藻を使用することができ、好適にはコンブ目に属する海藻を使用することができる。これらの褐藻類由来の硫酸化フコース含有多糖は構成糖として硫酸化フコースを多く含むことから、本発明においてより好適に使用できる。なお、海藻由来の硫酸化フコース含有多糖は、その由来となる海藻の種類によって構造が異なることが知られており(バイオサイエンスとインダストリー,Vol.60,No.6(2002))、本発明において、特に好適に使用される海藻類はガゴメである。
【0022】
本発明において、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の製造に用いられる硫酸化フコース含有多糖の分子種としては、特に限定はないが、例えば硫酸化フカン(例えば、国際公開第99/41288号パンフレット、国際公開第03/062412号パンフレット、及び国際公開第2004/001031号パンフレット参照)、硫酸化グルクロノフカン(例えば、国際公開第01/81560号パンフレット参照)、硫酸化フコガラクタン(例えば、国際公開第03/023036号パンフレット参照)、硫酸化フコグルクロノマンナン(例えば、国際公開第02/086166号パンフレット参照)、F-フコイダン(フコース硫酸含有多糖−F;例えば、国際公開第97/26896号パンフレット参照),U−フコイダン(フコース硫酸含有多糖−U;例えば、国際公開第97/26896号パンフレット参照)、これらの混合物が使用できる。本発明において特に好適には、コンブ目海藻由来の硫酸化フカンが使用される。なお、本明細書において、硫酸化フカンとは硫酸基とフコシル基を主要構成成分とする硫酸化フコース含有多糖のことを意味する。コンブ目海藻由来の硫酸化フカンの主鎖は一般の糖結合よりも酸に対して弱いL−フコシル結合でつながっているため、加熱や酸処理により容易に低分子化することができる。特にガゴメ(Kjellmaniella crassifolia)、マコンブ(Laminaria japonica)、あるいはレッソニア ニグレッセンス(Lessonia nigrescens)等の海藻は硫酸化フカンの含有量が多く原料として好適である。また、本発明の所望の効果の発現の観点からは、ガゴメ由来の硫酸化フカンの低分子化物を使用するのが好適である。
【0023】
本発明で使用する硫酸化フカンは公知の方法、例えば特開2003−199596に記載の方法により製造することができる。例えば、褐藻類の水溶性画分を公知の方法、例えばpHが4〜9、温度は100℃以下での抽出により得ることができる。また、上記抽出液中のアミノ酸や低分子の色素等は限外ろ過により効率よく除去できる。疎水性物質の除去には活性炭処理等も有効である。
【0024】
このようにして褐藻類の硫酸化フカン含有画分を得ることができる。また、該画分を陰イオン交換カラムによる分離に供すれば、より純度の高い硫酸化フカンを得ることもできる。本発明においては、該硫酸化フカン含有画分や純度の高い硫酸化フカンのいずれも、後述の低分子化処理に使用可能である。
【0025】
本発明に使用される硫酸化フカンの1例としては、下記一般式(化7)で表される主骨格のものが例示される。下記一般式(化7)において、nは1以上の整数であり、例えば1〜20,000の範囲、さらに好ましくは1〜10,000の範囲のものが本発明に使用される硫酸化フカンに含まれる。また、本発明に使用される硫酸化フカンには、上記範囲であれば、下記一般式(化7)が連続的に繰り返した構造を持つもの、及び他の構造が介在して、非連続的に下記一般式(化7)が含有される構造を持つもののいずれもが含まれる。
【0026】
【化7】

(式中、RはH又はSOHであり、Rの少なくとも1つはSOHである。)
【0027】
また、本発明において使用される硫酸化フコース含有多糖含有物としては、例えば上記の海藻類藻体やその乾燥処理物、細断物、粉砕物、抽出物等が使用できる。当該抽出物の抽出方法としては、公知の方法により行えばよく特に限定はないが、例えば、海藻の乾燥物からの熱水抽出物を硫酸化フコース含有多糖含有物として使用することができる。当該熱水抽出物としては、抽出工程において塩化カルシウムを添加することで褐藻に含まれているアルギン酸を低減させた抽出物や、脱塩処理等を施した抽出物を硫酸化フコース含有多糖含有物として使用することもできる。さらに後述の低分子化処理を効率的に行うという観点から、当該抽出物から高分子画分を除去することもできる。例えば、排除分子量3万の限外ろ過膜を使用し、高分子画分を除去することもできる。
【0028】
本発明において、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は、上記の硫酸化フコース含有多糖及び/又は硫酸化フコース含有多糖含有物を、酵素学的手法、化学的手法、物理学的手法等の公知の方法やこれらの方法を組み合わせることにより製造することができる。当該低分子化物の分子量としては、例えば糖残基の数で、2〜500糖、好適には2〜300糖、特に好適には2〜100糖の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を使用することができる。なお、本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物のうち、2〜20糖で構成されるものについては硫酸化フカンオリゴ糖と称する。本発明には前記式(化1)〜(化6)に示される2〜11糖で構成される硫酸化フカンオリゴ糖が好適に使用され、さらに好適には10糖未満のものが使用される。
【0029】
以下、酵素学的手法により得られる硫酸化フコース含有多糖の低分子化物について説明する。本発明において、酵素学的手法により得られる硫酸化フコース含有多糖の低分子化物としては、特に限定はないが、例えば、アルテロモナス sp SN−1009(FERM BP−5747、後にフカノバクター リティカス SN−1009と改名、特開2003−199596参照)より調製される硫酸化フカン分解酵素、フラボバクテリウム sp SA−0082株(FERM BP−5402)より調製されるエンド型フコイダン分解酵素や硫酸化フコガラクタン分解酵素を使用することにより製造することができる。なお、これらの分解酵素の調製法や酵素処理方法、得られる分解物については、それぞれ特開2003−199596、国際公開第97/26896号パンフレット、国際公開第00/50464号パンフレットに開示されている。なお、前記の各酵素は国際公開第99/11797号パンフレット、国際公開第03/023036号パンフレットに記載の遺伝子工学的手法により調製することもできる。
【0030】
本発明に使用される硫酸化フカンの低分子化物は、硫酸化フカン分解酵素を硫酸化フカン及び/又は硫酸化フカン含有物に作用させることによって調製することができる。硫酸化フカン含有物としては、例えば硫酸化フカンの部分精製品、褐藻類由来の硫酸化フコース含有多糖画分、褐藻類の水性溶媒抽出物、褐藻類藻体、もしくはこれらの混合物が好適に使用できる。
【0031】
本発明において、特に好適にはガゴメ由来の硫酸化フカン及び/又は硫酸化フカン含有物を硫酸化フカン分解酵素により消化することで得られる硫酸化フカンの低分子化物を使用することができる。硫酸化フカン分解酵素は、硫酸化フカンやその低分子化物などに作用して、フコシル基とフコシル基の間のα−L−フコシル結合をエンド的に加水分解し、還元性末端にL−フコシル基を持つオリゴ糖を生成させる。本発明に使用される硫酸化フカンの低分子化物としては、硫酸化フカンに硫酸化フカン分解酵素を作用させて得られる還元性末端糖がL−フコースであるオリゴ糖が例示される。
【0032】
硫酸化フカン分解酵素の調製は、前述のフカノバクター リティカス SN−1009を培養して、特開2003−199596に記載の方法で調製することができる。また、上記フカノバクター リティカス SN−1009の他にフカノバクター リティカス SN−1009の自然的又は人工的変異株、その他アルテロモナス属、フカノバクター属に属する菌種等であって、本発明に使用する硫酸化フカン分解酵素生産能を有する微生物を用いても調製することができる。
【0033】
本発明に使用される硫酸化フカンオリゴ糖を調製するにあたり、硫酸化フカンもしくは硫酸化フカン含有物の溶解は通常の方法で行えばよく、溶解液中の硫酸化フカン、もしくは該硫酸化フカン含有物の濃度はその最高溶解濃度でもよいが、通常はその操作性、反応に使用する硫酸化フカン分解酵素の量を考慮して選定すればよい。硫酸化フカンの溶解液としては、水、緩衝液等より目的に応じて選択すればよい。溶解液のpHは通常中性付近で、酵素反応は通常30℃付近で行う。反応に使用する硫酸化フカン分解酵素の配合比率や使用量、反応液の組成、反応時間等を調整することによって、硫酸化フカンオリゴ糖の分子量を調整することもできる。上記の様にして得られた硫酸化フカンオリゴ糖を分子量分画あるいは陰イオン交換カラムにより分画することによって、更に均一な分子量あるいは均一な荷電密度分布の硫酸化フカンオリゴ糖を調製することができる。分子量分画は通常よく使用されている方法を適用することができ、例えばゲルろ過法や分子量分画膜を使用すればよい。低分子化物は、必要に応じて更にイオン交換樹脂処理、活性炭処理等の精製操作を行ってもよく、必要に応じて脱塩処理、無菌処理、凍結乾燥処理をすることもできる。この方法により、後述するごとく、NMR分析により構造決定可能な均一な構造の本発明の硫酸化フカンオリゴ糖を得ることができる。
【0034】
このようにして得られた硫酸化フカンオリゴ糖としては、特に限定はないが例えば、上記一般式(化1)〜(化6)で表される化学構造を有する硫酸化フカンオリゴ糖が例示される。なお、当該オリゴ糖はガゴメやレッソニア由来の硫酸化フコース含有多糖を硫酸化フカン分解酵素により消化することで得られるオリゴ糖である(特開2003−199596参照)。本発明において、特に好適には上記一般式(化1)〜(化4)で表されるガゴメ由来の硫酸化フカンオリゴ糖が例示される。
【0035】
また、化学的手法による本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の製造方法として、例えば酸分解法が例示される。硫酸化フコース含有多糖の酸分解条件としては、特に限定はないが、例えば硫酸化フコース含有多糖やその含有物を酸水溶液に溶解又は懸濁するか、もしくは固体酸の存在下で酸分解反応を行うことにより、本発明の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物が生成する。酸分解反応のpHとしては、1〜6が好適である。また、反応時に加熱することにより、本発明に使用される低分子化物の生成に必要な時間が短縮される。使用できる酸としては、特に限定はないが、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、アスコルビン酸、リンゴ酸等の有機酸が例示される。また固体酸としては陽イオン交換樹脂、陽イオン交換繊維、陽イオン交換膜等が例示される。操作上の観点から、特に好適には陽イオン交換樹脂が使用される。使用される陽イオン交換樹脂は特に限定はないが、例えば、三菱化学(株)製のダイヤイオンSK−HやPK208LHが例示される。
【0036】
本発明に使用される酸分解法による硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の平均分子量としては、特に限定するものではないが、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーで測定したプルラン換算の平均分子量が例えば4000〜8000、好適には4500〜7500、より好適には5000から7000の範囲である低分子化物が例示される。さらに好適には分子量5900のプルランを指標として本発明の低分子化物の平均分子量をコントロールするのが好ましい。なお、本発明者らは、ガゴメ由来の硫酸化フカンオリゴ糖の1つとして下記式(化8)で表される化合物を分離しており(例えば、特開2003−199596)、当該オリゴ糖の分子量を上記と同様の方法で測定したところ約5900であった。すなわち、本発明で使用される酸分解法による硫酸化フコース含有多糖の低分子化物としては、糖残基数が約7糖である低分子化物が好適に使用される。
【0037】
【化8】

【0038】
酸の濃度についても特に限定はないが、好ましくは0.001〜5規定、より好ましくは0.01〜1規定程度の濃度で使用可能である。また、反応温度も特に限定はないが、0〜200℃、好ましくは20〜130℃、さらに好ましくは60〜100℃に設定すればよい。
【0039】
また、反応時間も特に限定するものではないが、好ましくは数秒〜数日間に設定すれば良く、好適には30分〜5時間、特に好適には1時間〜4時間が例示される。なお、上記の使用できる酸や酸の濃度、反応温度、反応時間については、本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の生成量や調製する低分子化物の分子量に応じて適宜設定することができる。
【0040】
なお、本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の製造方法としては、原料、例えば褐藻からの公知の硫酸化フコース含有多糖の抽出工程の際に前述の酵素学的手法や化学的手法を施すことにより、より効率的に本発明の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を製造することもできる。
【0041】
上記の様にして得られた硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を分子量分画あるいは陰イオン交換カラムにより分画することによって、更に均一な分子量あるいは均一な荷電密度分布の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を調製することができる。分子量分画は通常よく使用されている方法を適用することができ、例えばゲルろ過法や分子量分画膜を使用すればよい。低分子化物は、必要に応じて更にイオン交換樹脂処理、活性炭処理等の精製操作を行ってもよく、必要に応じて脱塩処理、無菌処理、凍結乾燥処理をすることもできる。
【0042】
本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は、硫酸基を分子中に有しており、該基は種々の塩基と反応し、塩を形成する。本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は、塩になった状態が安定であり、例えばナトリウム及び/又はカリウム及び/又はカルシウム等の塩の形態で提供される。これらの物質の塩はダウエックス50W等の陽イオン交換樹脂を利用することによって遊離の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物に導くことが可能である。また、これらは、必要に応じ公知慣用の塩交換を行い所望の種々の塩に交換することができる。
【0043】
本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の塩としては、薬学的に許容される塩を用いることができ、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のアルカリ土類金属、アンモニウム等の塩が挙げられる。
【0044】
また、本発明の組成物としては、上記の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物及び/又は薬理学的に許容されるその塩を含有する他、その他の成分を含有していても良い。ここでその他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記に示すような医薬に使用される公知の担体を含有していてもよい。
【0045】
本発明の組成物、すなわち硫酸化フコース含有多糖の低分子化物及び/又は薬理学的に許容されるその塩を含有する組成物は血管新生抑制に極めて有用である。
【0046】
本発明の医薬としては、前記の本発明の組成物の他、前記の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物(以下、本発明の有効成分または前記有効成分と称することがある)そのものであってもよく、また本発明の組成物を含む組成物であってもよい。本発明の医薬は、例えば、前記組成物を当該組成物と同じ用途に使用可能な他の成分、すなわち血管新生抑制作用を有する組成物などと配合して使用することができる。
【0047】
また、本発明で使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は、前述のInternational J Molecular Medicine, 2005, 15, P695−699に記載されたマコンブ由来の分子量3万のフコイダンと比較しても明らかに高い血管新生抑制作用を有している。すなわち、当該文献によれば臍帯内皮細胞のin vitroでの管腔形成におけるマコンブ由来の分子量3万のフコイダンの作用が開示されており、フコイダン濃度が50μg/ml以下では効果が見られなかったことが記載されている。これに対し、本発明で使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物、例えばガゴメ由来の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は後述の実施例2において前述の文献と同様の試験を行なっているが、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の濃度が10μg/mlであっても血管形成抑制作用が示されている。
【0048】
さらに、本発明に使用される硫酸化フコース含有多糖の低分子化物は、経口投与した場合、高分子のフコイダンに比べて吸収性も高く、経口的に摂取する医薬や健康食品としての利用に極めて適している。なお、癌などの血管新生が関与する疾患の治療は長期間にわたって投与されるものが多いため、本発明のように経口摂取により効果を発揮するものが好ましい。
【0049】
また、本発明の医薬が血管新生抑制作用を示すことにより治療又は予防効果が期待される疾患としては、特に限定はないが、例えば癌、糖尿病性網膜症、緑内障、血管腫、アテローム性動脈硬化症、乾癬症、慢性炎症疾患、リウマチ性関節炎が例示され、特に癌の転移抑制や癌の増殖抑制への効果が期待される。
【0050】
本発明の医薬としては、前記の本発明の組成物の他、前記の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物(以下、本発明の有効成分または前期有効成分と称することがある)そのものであってもよく、また本発明の組成物を含む組成物であってもよい。本発明の医薬は、たとえば、前記組成物を当該組成物と同じ用途に使用可能な他の成分、すなわち血管新生抑制作用を有する組成物などと配合して使用することができる。
【0051】
本発明の医薬の製造は、通常、前記有効成分を薬学的に許容できる液状または固体状の担体と配合することにより行われ、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。また、使用前に適当な担体の添加によって液状となし得る乾燥品や、その他、外用剤とすることもできる。
【0052】
担体は、本発明の医薬の投与形態及び財型に応じて選択することができる。固体組成物からなる経口剤とする場合は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等とすることができ、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また経口剤の調製に当たっては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することもできる。例えば、錠剤または丸剤とする場合は、所望によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの糖衣または胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。液体組成物からなる経口剤とする場合は、薬理学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤等とすることができ、例えば、精製水、エタノール等が担体として利用される。また、さらに所望により湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、風味剤、防腐剤等を添加してもよい。
【0053】
一方、非経口剤とする場合は、常法に従い本発明の前記有効成分を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等に溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えることにより調製することができる。また、固体組成物を製造し、使用前に無菌水または無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0054】
外用剤としては、経皮投与用または経粘膜(口腔内、鼻腔内)投与用の、固体、半固体状または液状の製剤が含まれる。また、座剤等も含まれる。例えば、乳剤、ローション剤等の乳濁剤、外用チンキ剤、経粘膜投与用液剤等の液状製剤、油性軟膏、親水性軟膏等の軟膏剤、フィルム剤、テープ剤、パップ剤等の経皮投与用または経粘膜投与用の貼付剤等とすることができる。
【0055】
以上の各種製剤は、それぞれ公知の担体等を利用して、適宜、常法により製造することができる。また、かかる製剤における有効成分の含有量は、その投与形態、投与方法等を考慮し、好ましくは後述の本発明の医薬の投与量範囲で当該有効成分を投与できるような量であれば特に限定されるものではない。例えば、本発明の医薬100重量%中、通常、0.001〜100重量%、好ましくは0.01〜90重量%、より好ましくは0.1〜80重量%である。
【0056】
本発明の医薬を投与することにより、血管新生抑制作用が見られることから、本発明の医薬は前述したように。癌、糖尿病性網膜症、緑内障、血管腫、アテローム性動脈硬化症、乾癬症、慢性炎症疾患、リウマチ性関節炎の治療または予防効果が期待され、特に
種々の癌の増殖を抑制する効果をもつことが期待される。
【0057】
本発明の医薬は、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、内用、外用及び注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、外用剤では、例えば、座剤をその適する投与方法により投与すればよい。なお、本発明の組成物は経口投与での効果が顕著であることから、好適な投与形態としては、内用が挙げられる。
【0058】
本発明の医薬としての投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及び当該医薬の投与対象である患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され一定ではない。一般には、製剤中に含有される前記有効成分の投与量で、ヒト(例えば成人)1日当り0.00001mg〜1000mg/kg体重、好ましくは、0.0001mg〜100mg/kg体重、より好ましくは、0.001mg〜10mg/kg体重である。もちろん投与量は、種々の条件によっても変動するので、上記投与量より少ない量で充分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。投与は所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、または数回に分けて行ってもよく、所定期間に渡って行ってもよい。
【0059】
本発明に係る有効成分には、後述するように特に毒性は認められない。また、副作用の発生の心配もない。それゆえ、該有効成分によれば、安全かつ適切に血管新生抑制作用を発現させることができる。従って、当該有効成分を含んでなる本発明の医薬又は食品は、血管新生の抑制に有効である。特に、本発明の組成物は経口により血管新生抑制作用が期待できることから、本発明の組成物は医薬としてのみではなく、機能性食品素材としても極めて有用であり、血管新生抑制作用による効果の表示を付した機能性食品(特定保健用食品)素材としても極めて有用である。
【0060】
また、本発明は、本発明の組成物を含有する食品を提供する。ここで、「含有」とは、含有、添加及び/又は希釈を意味する。本発明の食品又は飲料は、その血管新生抑制作用により、上記の疾患の症状改善に極めて有用である。
【0061】
なお、本明細書において、前記「含有」とは食品中に本発明で使用される有効成分が含まれるという態様を、前記「添加」とは食品の原料に、本発明で使用される有効成分を添加するという態様を、前記「希釈」とは本発明で使用される有効成分に、食品の原料を添加するという態様をいうものである。
【0062】
本発明の食品の製造法に特に限定はない。例えば、配合、調理、加工等は一般の食品のものに従えばよく、それらの製造法により製造することができ、得られた食品に前述の本発明の組成物が含有されていればよい。
【0063】
本発明の食品としては特に限定はないが、例えば、本発明に係る前記有効成分が含有されてなる、穀物加工品(小麦粉加工品、デンプン類加工品、プレミックス加工品、麺類、マカロニ類、パン類、あん類、そば類、麩、ビーフン、はるさめ、包装餅など)、油脂加工品(可塑性油脂、てんぷら油、サラダ油、マヨネーズ類、ドレッシングなど)、大豆加工品(豆腐類、味噌、納豆など)、食肉加工品(ハム、ベーコン、プレスハム、ソーセージなど)、水産製品(冷凍すりみ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げ、つみれ、すじ、魚肉ハム、ソーセージ、かつお節、魚卵加工品、水産缶詰、つくだ煮など)、乳製品(原料乳、クリーム、ヨーグルト、バター、チーズ、練乳、粉乳、アイスクリームなど)、野菜・果実加工品(ペースト類、ジャム類、漬け物類、果実飲料、野菜飲料、ミックス飲料など)、菓子類(ガム、飴、チョコレート、クッキー、ビスケット類、菓子パン類、ケーキ、餅菓子、米菓類など)、アルコール飲料(日本酒、中国酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ブランデー、ジン、ラム酒、ビール、清涼アルコール飲料、果実酒、リキュールなど)、嗜好飲料(緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、清涼飲料、乳酸飲料など)、調味料(しょうゆ、ソース、酢、みりんなど)、缶詰・瓶詰め・袋詰め食品(牛飯、釜飯、赤飯、カレー、その他の各種調理済み食品)、半乾燥または濃縮食品(レバーペースト、その他のスプレッド、そば・うどんの汁、濃縮スープ類)、乾燥食品(即席麺類、即席カレー、インスタントコーヒー、粉末ジュース、粉末スープ、即席味噌汁、調理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープなど)、冷凍食品(すき焼き、茶碗蒸し、うなぎかば焼き、ハンバーグステーキ、シュウマイ、餃子、各種スティック、フルーツカクテルなど)、固形食品、液体食品(スープなど)、香辛料類などの農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品などが挙げられる。
【0064】
本発明の食品には前記有効成分が単独もしくは複数含有、添加及び/又は希釈されており、その血管新生抑制作用を発現するための必要量が含まれていれば特にその形状に限定はなく、タブレット状、顆粒状、カプセル状等の形状の経口的に摂取が容易な形状物も包含する。
【0065】
本発明の食品中の前記有効成分の含有量は特に限定されず、その官能と活性発現の観点から適宜選択できるが、例えば、食品100重量%中、0.01重量%以上、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。また本発明の食品は、好ましくはそれらに含有される有効成分がヒト(例えば成人)1日当り0.00001mg〜1000mg/kg体重、好ましくは0.0001mg〜100mg/kg体重、より好ましくは0.001mg〜10mg/kg体重となるように摂取すればよい。もちろん摂取量は、種々の条件によっても変動するので、上記摂取量より少ない量で充分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0066】
本発明で使用される前記有効成分は、その作用発現にとっての有効量の投与を生物に対し行っても毒性は認められない。例えば経口投与の場合、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の乾燥粉末を1g/kg体重でマウスに単回投与しても死亡例は認められない。また、前記有効成分は、ラットに対し1g/kg体重を経口単回投与しても死亡例は認められない。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
実施例1 硫酸化フコース含有多糖の酸分解物の製造
(1)ガゴメを充分乾燥後、乾燥物200kgを自由粉砕機(ホソカワミクロン製)により粉砕した。イオン交換水9000リットルに塩化カルシウム二水和物(日本曹達社製)73kgを溶解し、次にガゴメ粉砕物200kgを混合した。液温12℃から液温90℃となるまで水蒸気吹込みにより40分間昇温させ、次いで攪拌下90〜95℃で2時間保温し、次いで冷却し、冷却物11000リットルを得た。次いで固液分離装置(タナベウィルテック社製)を用い、冷却物の固液分離を行い、約9000リットルの上清液を調製した。得られた上清液9000リットルを分画分子量3万の限外ろ過膜(ダイセン・メンブレン・システム社製FE10ーFC−FUS0382)を用い、500リットルまで濃縮した。次いでイオン交換水を加え、また500リットルまで濃縮するという操作を5回行い、含まれていた塩を除去した。脱塩した液を回収後、使用した限外濾過膜を150リットルのイオン交換水で洗浄し、その洗液を濃縮液と混合した。その混合液に、9kgのろ過助剤Silika#600S(中央シリカ社製)を添加し、ろ過助剤Silika#600Sを9kgとCelite#545を31kgでプレコートしたリンターフィルター(内外醸機工業社製)でろ過を行った。得られたろ過液700リットルをガゴメ由来の抽出液とした。
【0069】
(2)上記実施例1−(1)で調製したガゴメ由来の抽出液25リットルにイオン交換水13リットルを添加し、硫酸化フコース含有多糖定量値において15g/リットルに調整した。この液を湯浴にて90℃まで加熱した。このとき熱水で洗浄を行った76gの三菱化学社製樹脂ダイヤイオンSK−104H(0.02g/10ml)を添加した。その後温度を保ちながら30分毎にサンプリングを行い、昭和電工社製ゲルろ過カラムShodex OHpak SB803を用い、高速液体クロマトグラフィーにて平均分子量の測定を行った。加熱3時間が経過した時点で平均分子量が5900であるプルラン標準物質(昭和電工社製)と同じ溶出位置となったため冷却を行った。室温まで冷却した後、100メッシュストレーナーで添加した樹脂を取り除き、加熱処理液を得た。得られた加熱処理液を5%水酸化カルシウム懸濁液でpHを6.6に調整後、凍結乾燥し、硫酸化フコース含有多糖の酸分解物の凍結乾燥物585gを得た。
【0070】
実施例2 血管新生に及ぼす硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の効果
24ウエル細胞培養用プレートに0.3mlのマトリゲルをコートし、各ウエルに2×10個のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)及び種々の濃度の実施例1−(2)で調製した硫酸化フコース含有多糖の酸分解物の凍結乾燥物を含む1mlの5%ウシ胎児血清(FBS)含有培地を添加し、37℃で6時間、5%炭酸ガス気相下で培養した。その後、マトリゲル上に形成された管腔構造体(新生血管)の長さを計測して、硫酸化フコース含有多糖の低分子化物の血管新生に及ぼす効果を評価した。
その結果、実施例1−(2)で調製した硫酸化フコース含有多糖の酸分解物の凍結乾燥物を含まないマトリゲル上には充分量の管腔形成が認められたが、実施例1−(2)で調製した硫酸化フコース含有多糖の酸分解物の凍結乾燥物を含むマトリゲルにおいては、管腔の形成が抑制された。以上の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明により硫酸化フコース含有多糖の低分子化物、硫酸化フコース含有オリゴ糖を含有する血管新生抑制のための組成物、当該組成物を含有する医薬又は食品が提供される。当該医薬又は食品は癌の増殖抑制等に有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸化フコース含有多糖の低分子化物及び/又は薬理学的に許容されるその塩を含有することを特徴とする、血管新生抑制のための組成物。
【請求項2】
褐藻類由来の硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
硫酸化フコース含有多糖及び/又は硫酸化フコース含有多糖含有物を酵素処理することにより得られる硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
硫酸化フコース含有多糖及び/又は硫酸化フコース含有多糖含有物を酸処理することにより得られる硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ゲルろ過カラムクロマトグラフィーで測定した際のプルラン換算の平均分子量が4000〜8000である硫酸化フコース含有多糖の低分子化物を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項6】
2〜11糖で構成される硫酸化フコース含有オリゴ糖及び/又は薬理学的に許容されるその塩を含有することを特徴とする、血管新生抑制のための組成物。
【請求項7】
2〜11糖で構成される硫酸化フコース含有オリゴ糖が、下記一般式(化1)〜(化6)から選択される少なくとも1つの化合物である請求項6記載の組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(全式中、RはH又はSOHであり、Rの少なくとも1つはSOHである。)
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の組成物を有効成分として含有することを特徴とする医薬。
【請求項9】
請求項1〜7いずれか1項記載の組成物を有効成分として含有することを特徴とする食品。



【公開番号】特開2007−8899(P2007−8899A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194717(P2005−194717)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】