説明

血管障害、異常脂質血症および関連疾患の治療用の新規治療標的

本発明は、HDLレベルの調節および/またはそれを必要とする患者における血管障害、異常脂質血症あるいは関連疾患の治療のための組成物と方法を扱う。本発明はまた、ここでの新規治療標的の同定に基づく前記疾患の治療のための治療物質の同定のための方法を含む。本発明はまた、ここで示された治療標的を用いる診断および薬理ゲノミクスの組成物および方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年6月27日に出願された合衆国仮出願60/391878号の優先権を主張し、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、病気の診断および治療、特に低アルファ蛋白血症(hypoalphalipoproteinemia)を含む異常脂質血症および低HDL疾患等の心疾患の診断および治療のための新規治療標的である遺伝子95の発見に関し、また、前記疾患の予防、治療あるいはそうでなければ改善に有用な治療因子およびその治療因子のスクリーニングおよび同定方法の発見に関する。
【背景技術】
【0003】
疫学研究は、血漿高比重リポ蛋白コレステロール(HDL−C)濃度と、血管障害、特に心疾患(CVD)および冠動脈疾患(CAD)の発生とが反比例の関係にあることを相次いで示してきた。HDL−Cレベルは大きく等級分けされ、また独立した心血管系危険因子である。増加したHDL−Cの保護効果は、80歳まで持続する。低HDL−Cは、正常総血漿コレステロールレベル(<5.2mmol/l)であっても、CAD危険性の増加に関連する。他の異常脂質血症あるいは二次因子に直面しても、HDL−CレベルはCADの重要な予測判断材料である。低HDLコレステロール(重症例では低アルファ蛋白血症と呼ばれる)はまた、脳血管疾患、冠動脈再狭窄および抹消血管障害に関わる。
【0004】
低HDL−Cレベルの薬理学的介入は、今までのところ十分に証明されてはいない。現在、直接的で有効な方法でHDLレベルを調節するFDAの承認した治療物質はない。HDLの調節に関する現在の研究方法は、ApoA1の産生の増加、逆コレステロール輸送(RCT)の速度の促進およびHDLの異化代謝の減少を含む。例えば、ApoA1レベルの増加は、転写の小分子上向き調節を介して、あるいはApoA1タンパク質の注入により可能であろう。あるいは、ABCA1作用薬の作成および抹消組織からのコレステロール流出の増加によりRCTの上向き調節が可能であろう(PCT公開WO00/55318参照、参照としてここに組込まれている)。HDLの異化代謝は、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)を含む多くの酵素により調節され、これはまたHDL調節のための適切な治療標的であり得る。
【0005】
ヒトにおいてHDLレベルを調節するように働くさらなる遺伝子と対応するタンパク質の同定は、薬剤開発における追求のための治療方法の合理的な選択を可能にするだろう。本発明は、血管障害および異常脂質血症の治療における治療上の介入のための新規標的の発見と、低HDLレベルおよび付随する障害の症状の軽減に有用な治療物質を選別し、同定するための前記標的の使用に関する。
【発明の開示】
【0006】
(発明の簡単な要約)
本発明は、ヒト由来の完全遺伝子95cDNAヌクレオチド配列(配列番号3)および遺伝子95アミノ酸配列(配列番号4)を提供する。本発明はさらに、ヒトの遺伝性低HDL疾患に関連する遺伝子の突然変異型の同定により、HDLコレステロールレベルの主要な調節因子としての遺伝子95の役割と機能を同定する。
【0007】
一態様において、本発明は遺伝子95の精製核酸配列と精製および半精製形態を含むその断片を提供し、また遺伝子95ヌクレオチド成分を含む組換細胞系(cell line)およびウイルスあるいは細胞抽出物を提供する。
【0008】
他の態様において、本発明は、精製遺伝子95タンパク質と精製および半精製形態を含むその断片を提供し、また遺伝子95生物学的活性を持つ細胞あるいは細胞抽出物および抗遺伝子95抗体、そのようなポリペプチドの作成方法を提供する。
【0009】
一態様において、本発明は、HDLレベルを調節し、かつ/または血管障害あるいは異常脂質血症を治療する候補化合物か否かを判断するための方法を提供する。この方法は、(a)遺伝子95遺伝子あるいはタンパク質の生物学的活性の測定、(b)この生物学的活性を促進する条件下での、この生物学的活性の発生源と候補化合物の接触、および(c)前記接触の結果としての前記遺伝子あるいはタンパク質の生物学的活性における変化の測定を含む。ここで生物学的活性の変化は、前記生物学的活性を調節し、HDLレベルの調節および/または血管障害、異常脂質血症あるいは関連疾患の治療に有用である化合物として、候補化合物あるいは候補化合物の類似体を同定する。遺伝子95活性を分析する他の方法はまた、本発明によって明確に意図されている。
【0010】
他の態様において、本発明は、HDLレベルを調節し、かつ/または血管障害あるいは異常脂質血症を治療するための化合物をコンピュータにより同定するための方法を提供する。この方法は、(a)(例えば、X線結晶学あるいはその他の技術を介して)選択された遺伝子95タンパク質の活性部位を決定し、(b)コンピュータによるモデリングを介した、活性部位と相互作用する化合物の同定、それによるHDLレベルの調節および/または血管障害、異常脂質血症あるいは関連疾患の治療に有用な化合物としての化合物あるいはその類似体の同定を含む。
【0011】
他の態様において、本発明は、必要とするヒトに、遺伝子95遺伝子あるいはタンパク質の活性を調節する化合物を投与することを含む、HDLレベルの調節および/または血管障害、異常脂質血症あるいは関連疾患の治療のための方法を提供する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、遺伝子95遺伝子あるいはタンパク質の突然変異、例えば配列番号6から9あるいは表1中に特定された突然変異の同定を含む、血管障害および異常脂質血症の診断のための手段および/または血管障害および異常脂質血症を治療するための治療物質の薬理ゲノム学を提供する。
【0013】
(定義)
ここで用いられるように、以下の用語は、別に明示されない限り、指定された意味を持つ。
【0014】
ここで用いられるように、“遺伝子95に相当する遺伝子”の意味での“相当”という用語は、遺伝子が指定されたヌクレオチド配列を持つか、あるいは指定された配列によりエンコードされるものと同じRNAを実質的にエンコードすることを意味し、“実質的に”という用語は、遺伝子95生物学的活性を持つタンパク質をエンコードする配列の全体と最低約50%同一であることを意味し、より好ましくは最低約60%、70%、80%、90%あるいはそれ以上同一であり、他で定義されるように、その接合変異体を含む。
【0015】
“遺伝子95に相当する”はまた、他の生物由来の遺伝子95の同族体(homologs)あるいはオーソログ(orthologs)および、ヌクレオチドあるいはアミノ酸レベルで最低約50%の同一性、より好ましくは約60%、70%、80%、90%あるいはそれ以上の相同性を持つその配列変異体を含む。好ましくは、前記遺伝子は真核生物由来であり、より好ましくは哺乳類、より好ましくはげっ歯類あるいはヒト由来である。本明細書に記載されているヒト遺伝子およびタンパク質は、他の種から得られる幅広い種類の同族体、オーソログおよび類似体の代表である。これらの同族体、オーソログおよび/または類似体、およびこれらの適当な変異体は、本発明の組成物および方法に用いることができる。例えば、記載されたヒト遺伝子のマウス同族体を用いるスクリーニング分析はまた、ヒトを治療するための潜在的な治療物質を同定するためのスクリーニング分析に用いることができる。
【0016】
そのようなものとして、本発明は、これらの他の種由来のアイソフォーム(isoform)、同族体、および領域基盤により領域上に確認されたように、翻訳されたときに、アイソフォームの生物学的活性を保持する類似配列の使用に関する。前記類似配列は、配列番号3あるいは配列番号4と好ましくは50%以上の同一性を共有し、より好ましくはここに記されたアイソフォームと60%、70%、80%および最も好ましくは最低約90%の同一性を共有する。これらの配列の全ては、生物学的活性の調節における試験化合物の効果を測定するために十分な治療標的生物学的活性を保持するのであれば、本発明の方法の実施において有用であり得る。前記理解は、ここに開示された示唆に基づいて、この分野における通常の知識を有する者が利用可能である。
【0017】
さらに本発明にしたがって、“パーセント同一性”あるいは“パーセント同一性の”という用語は、配列を示す場合には、配列が、比較される配列(“比較配列”)の、開示あるいは請求された配列(“参照配列”)との位置合わせ(アライメント)の後に、請求あるいは開示された配列と比較されることを意味する。その後パーセント同一性は以下の公式にしたがって測定される:
パーセント同一性=100[1−(C/R)]
ここでCは、参照配列と比較配列との間のアライメントの全長にわたる参照配列と比較配列との間の差異の数であり、ここで(i)比較配列中に対応するアライメントされた塩基あるいはアミノ酸のない参照配列中の各塩基あるいはアミノ酸および(ii)参照配列中の各ギャップおよび(iii)比較配列中のアライメントされた塩基あるいはアミノ酸と異なる参照配列中のアライメントされた各塩基あるいはアミノ酸が差異を構成し、Rは、参照配列中に構成されたギャップも塩基あるいはアミノ酸として数に入れた、比較配列とのアライメントの全長の参照配列中の塩基あるいはアミノ酸の数である。
【0018】
アライメントが比較配列と参照配列との間に存在し、それに対する上記のように計算されたパーセント同一性が規定の最小パーセント同一性と同等あるいはそれ以上である場合には、たとえアライメントが、上記の算出されたパーセント同一性が規定のパーセント同一性以下である場合に存在したとしても、比較配列は参照配列に対して規定の最小パーセント同一性を持つ。
【0019】
ここで用いられるように、“部位”、“分節”および“断片”という用語は、ポリヌクレオチドに関して用いられた場合、ヌクレオチド残基の連続した配列を示し、この配列はより大きな配列の一部を形成する。前記用語は、前記ポリヌクレオチドの任意の共通エンドヌクレアーゼでの処理により産生された生成物、あるいは合成的に合成することが可能なポリヌクレオチドの伸長を含む。これらは、対応遺伝子のエキソンおよびイントロン配列を含み得る。
【0020】
ここで用いられる場合の“治療標的生物学的活性”(あるいは“生物学的活性”のみ)は、以下の(a)から(d)に示された実施例を含むがこれに限定されない治療標的遺伝子およびタンパク質の直接あるいは間接的に測定可能で同定可能な生物学的活性の全てに関連する非常に広い用語である。
【0021】
(a)精製された治療標的タンパク質に関し、治療標的生物学的活性は、全ての生物学的プロセス、リガンド、タンパク質、膜成分あるいは(小有機化合物等の)その他の化合物の相互作用あるいは結合、結合様式、結合活性関係、pKa、pD、酵素反応速度、安定性およびタンパク質の機能評価を含むがこれらに限定されない。
【0022】
(b)細胞画分、再構成細胞画分あるいは細胞全体における治療標的生物学的活性に関し、これらの活性は、リガンドあるいは抗体の結合様式、およびシグナル伝達系、細胞成分の流出、流入あるいは蓄積、安定性あるいは劣化、膜構成および様式、細胞増殖、進行あるいは様式および治療標的活性のその他の直接あるいは間接的効果の測定等の、この効果の測定可能な全ての結果を含むがこれらに限定されない。
【0023】
(c)治療標的遺伝子および転写に関し、治療標的生物学的活性は、治療標的mRNAあるいはその代わりの転写産物を産生するDNAの転写の割合、規模あるいは範囲、前記転写の調節タンパク質の影響、前記転写の調節タンパク質の調節因子の影響、加えて、mRNA転写産物、転写後プロセッシング、mRNA量および折り返しの安定性および様式、mRNAのポリペプチド配列への翻訳の全ての測定結果を含む。
【0024】
生物における治療標的生物学的活性に関し、これは、これらの生物における異常な治療標的生物学的活性により引き起こされる疾病過程あるいは障害において、欠如あるいは欠乏により同定される生物学的活性を含むがこれらに限定されない。大まかに言って、治療標的生物学的活性は、この分野において知られているタンパク質および遺伝子の生物学的性質を分析するための全ての方法によって測定することができる。
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明にしたがって、ヒトのHDLレベルの維持に関連する遺伝子およびタンパク質は、実施例1に示されたポジショナルクローニング法を用いた、低HDLレベルを持つファミリーにおける遺伝子の突然変異型の同定により、判定される。
【0026】
BC−11Mファミリーの系統は図1に示される。連鎖を定義するために用いられるファミリーの表現型は、高い浸透度の常染色体優性種における低HDL(低アルファ蛋白血症)形質を分離する。他の脂質条件(トリグリセリド(TG)および低比重リポタンパク質(LDL))は、このファミリーでは正常であり、他の交絡因子(肥満および糖尿病等)はない。このファミリーでは特に心疾患および冠動脈疾患の強い徴候があり、多数が心事故(心筋梗塞(MI)、発作および狭心症)を経験し、この疾患の症状についての治療(冠動脈バイパスグラフト(CABG)等)を受けている。このファミリーの一部は(狼瘡および自己免疫疾患に関連する)ベーチェット症候群であり、他の一部はセリアック病(グルテン不耐性)であり、残りは甲状腺に異常を持つ。
【0027】
このファミリーは、ABCA1のコード領域には野生型配列を持つため、これまでに同定されたABCA1中の低HDLを引き起こす突然変異により識別する。加えて、ABCA1遺伝子は、このファミリーの遺伝的特徴に基づいて、またこのファミリーの病気の個体由来の培養線維芽細胞における正常コレステロール流出測定結果に基づいて除外される。
【0028】
NL−003ファミリーの系統は図2に示される。発端者(II:35)は5分の1百分率(fifth percentile)(年齢および性別修正済み)以下のHDLレベルを持つ。体重超過/肥満(BMI>25>30)はほとんどないが、この状態はHDL条件と十分に共分離しておらず、したがって関連していないこともある。
【0029】
NL−120ファミリーの系統は図3に示される。この場合もやはり、発端者(II:01)は5分の1百分率(fifth percentile)(年齢および性別修正済み)以下のHDLレベルを持つ。NL−003およびNL−120の両方において、多くの低HDLの個体が観察される。NL−003ファミリーにおいて、低HDL、心疾患および心事故(MI)の個体が観察される。
【0030】
したがって、本発明にしたがって同定された遺伝子は、第9染色体上、9q22バンド上あるいはその近傍に位置する。この遺伝子座の標識(マーカー)は同定され、以下の通りである:9q22ca7(配列番号1)および9q22ca17(配列番号2)。他のマーカーは共有財産として入手可能である。
【0031】
遺伝子95およびその突然変異の説明
遺伝子95は知られており、ここではP1G95、遺伝子95、G95あるいはHDL調節タンパク質として記載されている。遺伝子95の性状は、公共データベース中の様々な情報源で開示されている。
【0032】
ゴールデンパス ジーン(Goldenpath Gene)ID:ENSG00000136925、転写産物ID:ENST00000259452を含む(ヒトゲノムプロジェクトワーキングドラフトのゴールデンパス アセンブリ、www.genome.ucsc.eduあるいはアンサンブルウェブサイトwww.ensembl.org、2001年8月実施版で見られる)。
【0033】
GenBank Accession 番号:AK056453、XM_088573(www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcqiで入手可能である)。この分野における通常の知識を有する者は、遺伝子95の正確な全長ヌクレオチドコード配列を提供せず、また翻訳されたときに遺伝子95の正確なアミノ酸配列も提供しないことを認識するであろう。
【0034】
遺伝子95(P1G95)の全長cDNA配列は、配列番号3に示され、5′UTRおよび3′末端を含む4333bp転写産物を含む。遺伝子95のエキソン/イントロン構造は、図4に示される。前記遺伝子は、エキソン6(“エキソン6alt”あるいはE6a)およびエキソン9(“エキソン9alt”あるいはE9a)に対する可能性のある代替転写産物を伴う10エキソンを含む。図4は、予想される10エキソン構成およびE6aあるいはE9aを用いた他の可能性のある転写産物を示す。
【0035】
遺伝子95タンパク質は、516アミノ酸タンパク質(配列番号4)を含む。代替メチオニン開始部位の使用は、489アミノ酸の配列を生成し得る。遺伝子95のタンパク質配列の分析は、ヒトの血清脂質恒常性の維持に関連する水溶性タンパク質の特徴を持つことを示している。前記タンパク質は、一つあるいはそれ以上の以下の特徴を含むと思われる:N−グリコシル化部位(PS00001)、グリコサミノグリカン結合部位(PS00002)、4cAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位(PS00004)、12タンパク質キナーゼCリン酸化部位(PS00005)、8カゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006)、8N−ミリストイル化(myristoylation)部位(PS00008)、ジンクフィンガーC2H2型領域(ドメイン)(PS50157)、システインに富む(Cysteine−rich;システインリッチ)領域(PS50311)。
【0036】
配列番号3について、残基1から400は5′−UTR(非翻訳領域)に相当し、一方3′UTRは残基1952から末端までを含む。配列番号6の突然変異配列について、T1802G突然変異を示し、5′−UTR領域は残基1から400によって示され、3′−UTR領域は残基1952から末端までによって示される。配列番号8の突然変異配列について、1706C1707突然変異を示し、5′−UTR領域は残基1から400によって示され、3′−UTR領域は残基1952から末端までによって示される。
【0037】
遺伝子95は、仮定的で、まだ特徴が分かっていない細菌タンパク質のグループに最も密接に関連するロダネーゼ様(Rhodanese−like)ドメインを持つ。例示的なロダネーゼ様ドメインはアミノ酸304から406に見られる。仮定的あるいは“ロダネーゼ様”もしくは“スルフルトランスフェラーゼ関連”タンパク質以外に、この遺伝子と類似する他のヒト遺伝子はない。ロダネーゼドメインは、チオ硫酸スルフルトランスフェラーゼ(例えば、ロダネーゼ;IPR001307)中に見られる。公共データベースの検索は、ヒトゲノム中の21個をロダネーゼドメインと認定した。一つは血小板粘着分子であり、残りはホスファターゼである。DnaJセントラルドメイン(例えば[CXXCXGXG]4;アミノ酸422から480)、XSジンクフィンガードメイン(例えばアミノ酸458−465)およびインテグラーゼ部位(例えば、アミノ酸452−465)等の他のドメインもまた示される。
【0038】
図5は、個々のエキソン、プロモーター(ゲノムの)からのいくつかの配列およびイントロン領域(特にスプライス部位接合部)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。説明:小文字は、成熟mRNAあるいはcDNAの一部を形成しないイントロン領域である。“...”は、公共データベースから入手可能なイントロン領域であり、ここでは含まれない。大文字は、ヌクレオチド塩基あるいはアミノ酸(文中で示されるように、標準表記記号が用いられている)である。“*”は、終止コドンである。+1、+2、+3は、核酸の翻訳のフレームシフトである。正確なアミノ酸配列の前後の短読み取り枠(ショートオープンリーディングフレーム)は完全性のために用いられるが、遺伝子95タンパク質の一部を形成しないと思われる。ここで、エキソンE1は配列番号18の一部であり、エキソンE2は配列番号19の一部であり、エキソンE3は配列番号20の一部であり、エキソンE4は配列番号21の一部であり、エキソンE5は配列番号22の一部であり、エキソンE6は配列番号23の一部であり、エキソンE7は配列番号24の一部であり、エキソンE8は配列番号25の一部であり、エキソンE9は配列番号26の一部であり、エキソンE10は配列番号27の一部であり、エキソンE6aは配列番号28の一部であり、エキソンE9aは配列番号29の一部である。ここでエキソン6aは、代替エキソン6(“エキソン6alt”)(不完全タンパク質(truncates protein))であり、一方エキソン9aは、代替エキソン9(“エキソン9alt”)(より長いが、不完全である)である。加えて、ctttga(配列番号30)は、新規イントロン配列の開始点を示す。遺伝子95配列は、ゲノムDNAの約34kbにわたる。完全に示されていないイントロンは、公共ヒトゲノム配列データベース、ゴールデンパスから得ることができる。文中で指示されたように、小文字はイントロンおよびプロモーター領域を示し、大文字はcDNAあるいはmRNA中のヌクレオチドまたはアミノ酸を示す。エキソン1およびエキソン2は一つあるいはそれ以上の星印(“”)を持つ。推定上の終止コドンがある。真の開始メチオニンは、星印の後のエキソン2中の最初のメチオニンだと思われる。星印はまたエキソン10にも見られる。最初の星印は、516アミノ酸のポリペプチドを産生する、予想される終結部位である。残りのアミノ酸翻訳物は、完全にすることを目的として示されており、機能性タンパク質にはならないと思われる。エキソン6aおよびエキソン9aは終止コドンを含む。これらの代替エキソンが用いられた場合、これらは図のように不完全タンパク質になると思われる。
【0039】
相同性:全長タンパク質中で、ヒト遺伝子95に最も近い同族体は、ロダネーゼ関連スルフルトランスフェラーゼ(Salmonella thphimuriumおよびBrucella melitensis)およびジヒドロ葉酸還元酵素(Schizosaccharomyces pombe)と29から34%の同一性を持つ。相同性の最も高い仮定的な細菌タンパク質は、Q9RVC9_DEIRA/119−216;Q55613_SYNY3/113−210;Q9Z7H1_CHLPN;084632_CHLPN/113−212;084632_CHLTR/113−212;034131_LACLA/116−213;031457_BACSU/116−213(YBFQタンパク質)を含む。
【0040】
本発明はまた、遺伝子95の最初の非ヒト哺乳類同族体である、マウス遺伝子95タンパク質(配列番号5)を開示し、請求する。この配列はヒト遺伝子95と、タンパク質の全長にわたっておおよそ76%の配列同一性を持つ。ヒトおよびマウスアミノ酸配列は、図6に並べられている。共通するアミノ酸は、保存性および非保存性変換とともに、示されている。
【0041】
他の哺乳類由来の短核酸配列分節についてのさらなる調査は、哺乳類種がヌクレオチドレベルで、概ね保存された遺伝子95配列を共有することを示す。特に、
ヒト:ウシは、重複配列に基づいて514/565(90%)同一である。ヒト:ラットは、重複配列に基づいて338/401(84%)同一である。ヒト:ブタは、重複配列に基づいて228/265(86%)同一である。ヒト:マウスは、重複配列に基づいて266/307(86%)同一である。
【0042】
発現パターン:EST検証に基づいて、前記遺伝子は以下の組織および細胞系中に発現することが示されている:奇形癌、脳、胎座、卵巣腫瘍、リンパ腫、メラノーマ、神経芽細胞腫。実施例2および3のデータは、幅広い組織中での発現を確認している。
【0043】
BC−11Mファミリー中に見られる突然変異1は、Ser468Ala 突然変異、配列番号7を引き起こす1802T>G(配列番号6)として同定された。突然変異は、13体の病気に冒されたファミリー構成員中に存在し、10体の病気に冒されなかったファミリー構成員中に存在しなかった。突然変異は、198のコントロール染色体中に存在せず、また高HDLの個体由来の164の染色体中にも存在しなかった。両コントロール群は、BC−11Mファミリーと類似した民族性であった。前記突然変異は、推定上のタンパク質キナーゼAリン酸化部位(PKA−basic−basic−neutral−Ser)の消失をもたらし得る。この突然変異は、マウスタンパク質中に保存されているセリン残基を変換する。
【0044】
5分の1百分率未満のHDLレベルを持つNL−003ファミリー中の個体由来の突然変異2は、1706C1707挿入配列番号8を含む。この挿入は、Q436のコドンの第二塩基中であり、Q436Pおよび、成熟前終止コドン475aa全体(配列番号9および残基14のメチオニンから計数)を産生する39の追加の特異アミノ酸をもたらす。突然変異2はまた、5分の1百分率未満のHDLを持つNL−120ファミリー由来の個体中に観察される。突然変異2は、民族性の類似する228のコントロール染色体中には観察されなかった。
【0045】
突然変異1および突然変異2のアミノ酸配列とヒト遺伝子95の野生型アミノ酸配列を並べたものが図7に示される。
【0046】
遺伝子95のコード領域の一塩基変異多型(cSNPs)およびその他の多型は同定され、表1に示される。これらのcSNPsは、もしあれば、同定されたアミノ酸変換をもたらす。遺伝子95のエキソンあるいはイントロン領域中のその他のcSNPsおよび多型はまた、この分野における通常の知識を有する者が同定することができる。
【0047】
開始RNA転写産物の最終mRNAへの変換において行われるプロセッシングのために、ここに開示されたヌクレオチド配列は、完全ゲノム配列未満に相当し得る。前記遺伝子およびcDNA配列は、これらが共に類似RNA配列をエンコードするため、相当する遺伝子と考えられる。したがって、限定されない実施例のみの目的で、短mRNAに変換されるRNA転写産物をエンコードする遺伝子は、前記RNAsの両方をエンコードし、したがってcDNAに(通常のワトソン−クリック相補性法則を用いて)相補的なRNA、すなわちcDNA(例えば、ここに開示された配列)によってエンコードされているRNAをエンコードしていると見なされる。したがって、ここに開示された配列は、細胞中に含まれる遺伝子に相当し、これらの配列は同一の配列に相当し、あるいはこれらの遺伝子によりエンコードされるRNAsと相補的であるため、発現の相対的レベルを測定するために用いられる。前記遺伝子はまた、本発明の方法で用いられる細胞中に発現し得る異なる対立遺伝子およびスプライス変異体を含む。
【0048】
したがって、本発明のスクリーニング分析に用いるための、ここに開示された遺伝子配列等のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドが、配列番号3を持つポリヌクレオチドによりエンコードされているか、あるいはハイブリダイゼーション等により相補的なRNAの配列と最低50%同一、好ましくは最低70%、80%、90%同一、そしてより好ましくは最低95%あるいは98%同一、また特にこのRNAの配列を持つRNA(自然発生スプライス変異体および対立遺伝子を含む変換あるいは未変換)をエンコードする場合には、遺伝子95に“相当する”。加えて、配列番号3と最低50%同一、好ましくは前記配列と最低約70%、80%、90%同一、より好ましくは前記配列と最低約98%同一、また最も好ましくは前記配列を含む配列を含む遺伝子は、これらの配列に相当する遺伝子として、特に本発明の全ての方法により意図されている。加えて、これらの配列のいずれかと同じポリペプチドおよびタンパク質をエンコードする配列はまた、前記配列のパーセント同一性に関わらず、これらがどのように開示あるいは限定されているかに関わらず、前記配列のいずれかあるいは全てに依存する本発明の任意の方法によって特に意図されている。したがって、前記配列は、本発明にしたがって開示された任意の方法の実施において用いることができる。前記配列はまた、遺伝子95間に存在する、ここに定義されているとおりの読み取り枠を含む。前記配列は、配列番号6および配列番号8の突然変異遺伝子95配列を含み、また図5に示された代替エキソンを含む配列を含む。
【0049】
前記にしたがって、本発明は、ポリヌクレオチド配列あるいはこのポリヌクレオチド配列の完全相補体を含む単離されたポリヌクレオチドを含む。ここで、前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号3と、最低65%、好ましくは最低75%、より好ましくは最低85%、特に最低90%、最も好ましくは95%あるいはさらに98%同一であり、特に好ましくは配列番号3の配列である。本発明はまた、配列番号4に示されたアミノ酸配列を持つポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0050】
遺伝子95タンパク質(配列番号4)に関し、本発明は、配列番号4に相当するタンパク質、ポリペプチドおよびアミノ酸配列の全てを含む。配列番号4に相当する前記配列は、全長タンパク質あるいは遺伝子95タンパク質の生物学的活性を保持するその断片を含む。前記配列は、好ましくは配列番号4と最低約50%同一であり、より好ましくは配列番号4と約60%、70%、80%および最も好ましくは最低約90%あるいは95%同一である。前記配列は、任意の生物、好ましくは真核生物、より好ましくは哺乳類、最も好ましくはげっ歯類あるいはヒト由来の遺伝子95タンパク質のオーソログあるいは同族体を含み、また前記配列と最低約50%、60%、70%、80%、また最も好ましくは最低約90%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む。前記配列は、突然変異配列配列番号7および配列番号9、遺伝子95ヌクレオチド配列の代替読み取り枠に相当する配列および図5における代替スプライスエキソン中に見られる配列を含む。
【0051】
前記にしたがって、本発明は、配列番号4に示されたアミノ酸配列と最低65%、好ましくは最低75%、より好ましくは最低85%、特に最低90%、最も好ましくは95%あるいはさらに98%の同一性を持つアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを含む。ここで、配列番号4の配列を含むポリペプチドは、特に好ましい。
【0052】
本発明はまた、核酸ベクターを含む単離されたポリヌクレオチドおよび組み換え宿主細胞を含む、核酸ベクターに関する。本発明はまた、ポリペプチドの産生を支持する条件下での請求項49に記載の宿主細胞の培養を含む、配列番号4のポリペプチドを産生するための方法を含む。この方法は全て、ここでの開示を考慮に入れて、この分野における通常の知識を有する者に良く知られている。
【0053】
遺伝子95を用いたスクリーニング分析
本発明は、治療物質、特に低HDLレベルに拮抗する物質の同定に用いるための遺伝子95遺伝子および/またはタンパク質を用いたスクリーニング分析を提供する。一つのプロトコルは、ヒトを含む動物におけるHDLレベル、特に血漿レベルの増加等によりHDL活性を増加させるために遺伝子95の活性を上向きあるいは下向きに調節する能力についての化学物質の分析を含む。遺伝子95遺伝子、あるいはその活性断片あるいはタンパク質の活性を変換する物質、あるいは遺伝子95によりエンコードされたポリペプチドの活性を調節し得る物質、あるいは前記遺伝子の活性を調節するための転写因子として働くポリペプチド、あるいは、エンハンサーもしくは、シス型様式あるいはトランス型様式で働く遺伝子95の活性を調節する他の調節遺伝要素等の他の関連遺伝子分節は、それにより同定され、逆コレステロール輸送あるいは他の脂質関連プロセスの改善等により低HDLレベル、あるいは低HDLレベルの影響、あるいは低HDLレベルに関連する疾患の予防、治療あるいは改善において有用であること、および/または心疾患、アテローム性動脈硬化症および他の疾患等の疾患に有用であることを証明し得る。
【0054】
ここに開示された本発明にしたがって、生物学的活性あるいは遺伝子95の発現を調節する化合物の投与により、低HDL−C、血管障害、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症あるいは関連疾患を患う患者の治療のための、もしくは体内の逆コレステロール輸送の改善のための組成物および方法が提供される。
【0055】
本発明は特にスクリーニング分析を意図し、例えばここで広範な化合物が、治療標的生物学的活性の調節における活性について選別され得る。ここに開示された前記分析の全てに関しては、前記調節は治療標的生物学的活性の増加あるいは減少を含み得る。
【0056】
この分野における通常の知識を有する者は、ローあるいはハイスループットスクリーニング分析に効果的に組込むことができる治療標的の測定可能な生物学的活性を同定することができる。前記分析の限定されない例が、例示目的でここに開示される。これらの示唆に基づいて、治療標的スクリーニング分析の他の実施例は、そのまま実施できるであろう。
【0057】
本発明はまた、前記治療化合物およびその類似体の同定のための分析を提供する。遺伝子95遺伝子あるいはタンパク質の生物学的活性を調節する化合物は、本発明において有用であると考えられる。前記化合物の同定のための典型的なスクリーニング分析(試験管内(in vitro)あるいは生体内(in vivo))およびコンピュータを利用した分析(コンピュータ内(in silico))は、以下に詳述される。本発明のスクリーニング分析は、低HDLおよび/または血管障害、異常脂質血症あるいは関連疾患の治療および予防のための治療物質の評価、同定および開発を簡単にする。一般的に、スクリーニング方法は、天然物抽出物あるいは、さらに評価され、いくつかの活性中心構造体に凝縮される大集団(例えば化学ライブラリー)由来の関心のある合成化合物の選択のための容易な方法を提供する。前記中心構造体の多数の類似体は、改善された治療物質としての性質を持つ好ましい類似体を同定するために、開発および試験され得る。
【0058】
本発明はまた、その活性が高比重リポタンパク質(HDL)活性を変換するポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)前記活性を促進する条件下で、候補化合物を遺伝子95に相当するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの生物学的活性の変化を測定することを含み、
ここで、前記活性の変化は、試験化合物を、前記ポリペプチド生物学的活性を調節する物質として同定する。
【0059】
このプロセスの一つの実施例において、ステップb)における生物学的活性の変化は、ポリペプチドの活性の減少あるいは増加である。好ましい実施例において、前記活性は、酵素の活性を測定することにより測定され、例えばここで、ポリペプチド自体は、直接的あるいは間接的に分析することができる酵素活性を持つ。前記分析はin vitroあるいはin vivoで行われ得る。
【0060】
好ましい実施例において、前記ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を持ち、別の実施例において、前記ポリヌクレオチドは配列番号3を持つ。
【0061】
別の実施例において、前記ポリペプチドは、細胞抽出物、リポソームあるいは無傷細胞中に存在する。本発明は特に、細胞が異種遺伝子95構成を含む組換細胞系である実施例を意図する。他の実施例において、前記細胞あるいは抽出物は、遺伝子組換え技術以外により処理され、例えばここでポリペプチドの活性は、増強されるものであり、細胞は前記ポリペプチドを含むかあるいはその表面に持つように処理され、しかしここで前記ポリペプチドは、前記細胞中に含まれる遺伝子の発現を通してではなく、前記細胞の膜あるいは細胞質中への前記ポリペプチドの物理的な挿入により存在する。
【0062】
本発明はまた、遺伝子95活性を調節する物質を同定するための方法に関し、ここで前記方法は、
a)試験化合物を、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと、前記ポリペプチドの活性を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定することを含み、
ここで前記活性の変化は、試験化合物を、遺伝子95活性を調節する物質として同定する。
【0063】
前記のステップb)において測定された活性の変化は、活性の減少あるいは増加であり得る。一つの実施例において、前記活性は、酵素の活性を測定することにより測定される。前記方法の他の実施例において、前記ポリペプチドは資質二重層中に存在し、ここでこの脂質二重層はリポゾームの一部であることを含む。加えて、前記ポリペプチドは無傷細胞の一部であり得る。例えばここで無傷細胞は、前記ポリペプチドを含むように処理された細胞であり、例えばここで無傷細胞は、前記ポリペプチドを発現するように遺伝子組換えが行われている組換細胞であり、好ましくはここで前記細胞は、前記組換えがなければ前記ポリペプチドを発現しない。全ての場合において、無傷細胞は好ましくは哺乳類細胞である。
【0064】
本発明はまた、HDL増強物質を同定するための方法に関し、前記方法は、動物に、ここに開示された任意の分析を用いて調節活性を持つと分かった物質の有効量を投与し、前記投与の結果としての前記動物中の血漿HDL活性の増加を検出し、それによりHDL活性の増強に有用な物質を同定することを含む。
【0065】
好ましい実施例において、前記動物は前記物質の投与の前は、低HDL活性を示す。他の好ましい実施例において、HDL増強活性は、前記動物中のHDLレベルの増加であり、最も好ましくは血漿HDLレベルの増加であり、また好ましくはここで、前記動物はヒト患者である。
【0066】
本発明はさらに、低HDL関連疾患に苦しむ動物における前記疾患を治療するための方法に関し、ここで前記方法は、前記動物に、本発明の任意の分析を用いてHDL増強活性を持つと分かった物質の有効量を投与することを含む。好ましい実施例において、治療される動物はヒト患者である。さらなる好ましい実施例において、治療される疾患は、低HDL疾患、血管障害および異常脂質血症より成るグループから選択される。
【0067】
本発明のプロセスにしたがって同定される物質はまた、患者のHDL状態に関わらず、冠動脈疾患の治療あるいは予防に有用である。例えば、冠動脈疾患の家族暦を持つ正常HDLレベルの患者であっても、HDLレベルを増加させ、さらに冠動脈疾患の危険性を減少させるために本発明にしたがった治療物質の服用を勧められるであろう。したがって、前記患者は、本発明にしたがった治療に適するために、異常脂質血症である必要はない。一般的に、本発明のスクリーニング方法は、あらゆるin vitroあるいはin vivo試験システムの適用により治療活性物質のためのあらゆる化合物のスクリーニングを含む。前記化合物の同定に有用な方法の例はここに詳述される。
【0068】
本発明の方法は、低HDLレベルならびに心疾患(CVD)および異常脂質血症の治療および予防のための活性物質の評価、同定および開発を簡単にする。一般的に、スクリーニング方法は、天然物抽出物あるいは、さらに評価されいくつかの活性および選択材料に凝縮される大集団由来の関心のある化合物の選択のための迅速な方法を提供する。この集団からの陽性の候補者は、続いてそのHDL−上昇、抗CVDあるいは抗異常脂質血症活性もしくはその両方を測定するために、本発明の方法において精製され、評価される。陽性の候補者は、治療物質として直接用いられ得る。あるいはこれらは、構造活性相関(SAR)分析および好ましい治療物質となるさらなる類似体の開発のための情報を与える構造を提供し得る。
【0069】
HDL調節に関与するスルフルトランスフェラーゼとしての遺伝子95の評価
ヒトの遺伝的情報が、遺伝子95の機能がヒトのHDLレベルを維持することを立証した一方で、遺伝子95の働きの特異的メカニズムはまだ立証されていない。働きのメカニズムについての任意の理論に拘束されることなく、発明者は、遺伝子95がスルフルトランスフェラーゼあるいは類似の種類の酵素として機能し得ることを示唆する。これは、タンパク質中に見られるロダネーゼドメインの比較に基づく。ロダネーゼドメインは、スルフルトランスフェラーゼ活性については活性的であるとして、またホスファターゼ活性については活性的であるとして、あるいは触媒不活性であるとして分類され得る。ヒトおよびマウスG95は、ロダネーゼドメイン内のスルフルトランスフェラーゼについての一致を含む。ロダネーゼドメイン内のホスファターゼについての陽性一致は、ヒト中には認められるが、マウスG95中には保存されない。加えて、この一致を持つ別のヒト遺伝子は、スルフルトランスフェラーゼ活性として注記される。
【0070】
いくつかの種類の証拠は、これらの活性をHDL代謝と関連付ける。例えば、チオレドキシン結合タンパク質Txnipは、高脂血症マウス表現型に基づく脂質代謝に関連することが知られている。
【0071】
遺伝子95スルフルトランスフェラーゼ生物学的活性を用いたスクリーニング分析は、シアン化合物、チオレドキシンおよびジヒドロリポ酸塩等のスルフルトランスフェラーゼの既知の基質を用いるように設計できることが知られている。あるいは、スクリーニング分析は、前記のスルフルトランスフェラーゼ分析に基づいて設計され得る。チオシアン酸塩生成物についての一つの比色分析において、前記分析はチオ硫酸塩およびシアン化合物の亜硫酸塩およびチオシアン酸塩への変換を測定する。チオレドキシン還元酵素によるNADPH酸化の分析において、前記分析は、チオ硫酸塩およびチオレドキシンの亜硫酸塩およびチオレドキシン過硫化物への変換を測定する。遺伝子95の相互作用を介してこれらの変換を作用させあるいは拮抗させる化合物は、本発明の調節因子である。
【0072】
機能分析は、遺伝子95に相当するとしてここに開示された一つあるいはそれ以上のポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドの活性に基づき得る。前記ポリヌクレオチドは、前記遺伝子と最低90%あるいは95%同一のポリヌクレオチドあるいは前記遺伝子によりエンコードされたポリペプチドと高い相同性を持つポリペプチド等の、高い相同性を持つ候補を含む。前記分析は、ポリペプチドの活性に起因する分析条件の変化に応じて色を変化させるための種々の色素の能力等(これに限定されない)の薬剤スクリーニング技術を用いることができる。
【0073】
薬剤スクリーニング分析はまた、他のタンパク質と相互作用する遺伝子95ポリペプチドの能力に基づくことができる。前記相互作用タンパク質は、例えば、放射性免疫沈降法、共免疫沈降、および酵母ツーハイブリッドスクリーニングを含む、この分野において知られた種々の方法により同定することができる。タンパク質−タンパク質相互作用を作用あるいは拮抗させる試験化合物の能力は、用いることができるスクリーニング分析の標準型である。前記相互作用は、蛍光偏光あるいはシンチレーション近接法を含むがこれらに限定されない方法により分析することができる。薬剤選別は、形質転換あるいはノックアウトマウスの作成上見られる機能あるいは特徴に基づいて、あるいはin vitroでの哺乳類細胞中におけるタンパク質あるいはタンパク質断片の過剰発現に基づいて行うことができる。さらに、酵母あるいはC.elegans中の哺乳類(例えばヒト)遺伝子95ポリペプチドの発現は、野生型および突然変異系における候補化合物のスクリーニングを可能とし、また低HDL表現型を増強あるいは抑制する突然変異の選別を可能にする。変更遺伝子選別はまた、形質転換あるいはノックアウトマウスにおいて行うことができる。
【0074】
この分野における通常の知識を有する者にとって、ここでの開示が遺伝子95と相互作用し、また/あるいは遺伝子95を調節する化合物を同定するための標準スクリーニング分析への遺伝子95の組み込みを容易にすることは明らかであろう。前記分析は、タンパク質/化合物結合分析、遺伝子発現分析および多くのその他の種類を含む。標準分析に加えて、遺伝子95の既知の特徴が用いることができるより特異的な分析を示唆する。例えば、推定リン酸化反応部位は、遺伝子95のリン酸化反応の速度、量あるいは時期に影響を及ぼす試験化合物の傾向を測定する分析が、本発明の有用な調節因子であり、またここに示された疾患の潜在的な治療物質あるいはその類似体であり得る。スクリーニングに用いるために利用できる遺伝子95の特徴は、N−グリコシル化部位、グリコサミノグリカン結合部位、4cAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位、12タンパク質キナーゼCリン酸化部位、8カゼインキナーゼIIリン酸化部位、8N−ミリストイル化部位、ジンクフィンガーC2H2型ドメイン、およびシステインリッチ領域を含む。測定に有用だと思われる他の特徴は、ロダネーゼ様ドメイン、DnaJ中央ドメイン、XSジンクフィンガードメインおよびインテグラーゼ部位を含む。
【0075】
前記にしたがって、本発明は、その発現がin vivoで高比重リポタンパク質(HDL)活性を修正するポリヌクレオチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化合物を、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドと、前記ポリヌクレオチド発現を促進する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリヌクレオチドの発現の変化を測定することを含み、
ここで前記発現の変化が、試験化合物を、その発現が高比重リポタンパク質(HDL)活性を修正するポリヌクレオチドの活性を調節する物質として同定する。
【0076】
前記プロセスの特異的な実施例において、ステップb)における発現の変化は、前記ポリヌクレオチドあるいは遺伝子の発現の減少あるいは増加であり得る。
【0077】
他の態様において、本発明は遺伝子95活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化合物を、遺伝子95プロモーターと作動可能に結合するレポーター遺伝子を含む遺伝子構造体と、前記レポーター遺伝子の転写を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の転写の変化を測定することを含み、
ここで前記転写の変化は、試験化合物が遺伝子95活性を調節する物質であることを示す。
【0078】
前記の測定された変化は、前記転写の増加あるいは減少であり得る。またここで転写は、前記レポーター遺伝子によりエンコードされた発現産物の量を測定することにより判断され、前記発現産物はRNAあるいはポリペプチドを含む。好ましい実施例において、レポーター遺伝子は、リポゾームあるいは哺乳類細胞等の無傷細胞中に存在し得る。前記方法の好ましい実施例は、ヒトプロモーター、好ましくは配列番号15に示されるプロモーター、あるいはマウスプロモーター、好ましくは配列番号14のプロモーター配列を持つプロモーター等の哺乳類遺伝子95プロモーターの使用を含む。全ての場合において、レポーター遺伝子は、通常その発現が容易に測定される遺伝子であり、また遺伝子95自体以外のものである。しかしながら後者はレポーター遺伝子として用いるためには除外されない。
【0079】
前記プロセスは特に、低HDLレベルおよび疾患およびその徴候に対して有効な物質を同定するために用いられる。前記物質あるいはその化学的類似体はまた、遺伝子95遺伝子あるいはタンパク質を調節するために、そして/または心疾患の治療あるいは予防のために有用である。ヒト遺伝子95プロモーター配列を含む構造の一つの例は、配列番号15に示され、ここでプロモーター配列(最初の約1500塩基)は配列の開始部分にあり、そしてエキソン1(塩基1502から始まる)が続き、その後にイントロン1があり、配列の最後にエキソン2がある。一方、マウスプロモーター(約1500ヌクレオチド残基)を組込んだ配列が配列番号14に示され、プロモーターを配列の開始位置に持ち、そしてエキソン1(残基1501から始まる)が続き、その後にイントロン1があり、配列の最後にエキソン2がある。エキソン配列はmRNAに認められた。本発明は前記エキソンおよびプロモーター配列を含む。
【0080】
他の態様において、本発明は、HDLレベルの調節および/または血管障害あるいは異常脂質血症の治療のための化合物をコンピュータにより同定するための方法を提供する。前記方法は、(a)(例えばX線結晶学あるいはその他の技術を介した)遺伝子95タンパク質の活性部位の決定、および(b)コンピュータによるモデリングを介した、活性部位と相互作用する化合物の同定、それによるHDLレベルの調節および/あるいは血管障害、異常脂質血症あるいは関連疾患の治療に有用な化合物としての化合物あるいはその類似体の同定を含む。
【0081】
本発明はさらに、治療物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)化学物質を、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドと、前記ポリヌクレオチドの発現を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリヌクレオチドの発現の変化を測定することを含み、
ここで前記発現の変化は、治療物質を同定する。
【0082】
さらなる実施例において、本発明はin vivoで高比重リポタンパク質(HDL)活性に影響を与えるポリペプチドの活性を調節する治療物質を同定するための方法を含み、前記方法は、
a)試験化合物を、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと、前記ポリペプチドの活性を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定することを含み、
ここで前記活性の変化は、試験化合物をHDL活性に影響を与えるポリペプチドの活性を調節する治療物質として同定する。
【0083】
これらの好ましい実施例において、前記ポリペプチドは配列番号4に相当し、そして/または前記ポリヌクレオチドは配列番号3に相当する。
【0084】
好ましくは哺乳類の、最も好ましくはげっ歯類あるいはヒトの遺伝子95ポリペプチドは、モノクローナル抗体を含む抗体をもたらす抗原として用いることができる。前記抗体は、遺伝子95生物学的活性を調節するための治療上の使用、機能性研究、および薬剤スクリーニング分析および診断学の開発を含むがこれらに限定されない幅広い目的に対して有用であり得る。本発明にしたがって同定された遺伝子95ポリペプチドの発現あるいは生物学的活性への物質(例えば、小有機化合物)の影響の観察は、基礎薬剤スクリーニングだけでなく臨床試験においても適用することができる。例えば、ここに開示されたスクリーニング分析により遺伝子発現、タンパク質レベルあるいは生物学的活性を増加あるいは減少させると認められた物質の有効性は、不適切な遺伝子発現、タンパク質レベルあるいは生物学的活性に起因した低HDLレベルを示す被験者の臨床試験において観察することができる。または、スクリーニング分析により、遺伝子95および、構造的および機能的に関連する遺伝子、それらと高い相同性を持つ遺伝子の発現、タンパク質レベルあるいは生物学的活性を調節すると認められた物質の有効性は、減少した修正された遺伝子発現、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性を示す被験者の臨床試験において観察することができる。前記臨床試験において、ここに開示された遺伝子あるいはポリペプチド、好ましくは例えば心疾患に関連する他の遺伝子の発現あるいは活性は、特定の薬剤の有効性を解明するために用いることができる。
【0085】
例えば、そして限定目的ではなく、遺伝子95、あるいはその任意の発現産物の活性、もしくは(例えばここに開示されたスクリーニング分析において同定された)前記遺伝子の活性を調節するポリペプチドの活性を調節する物質(例えば、化合物、薬剤あるいは小分子)を用いた治療により細胞中で調節される遺伝子は、同定することができる。したがって、例えば臨床試験においてコレステロールレベルあるいは心疾患への物質の効果を研究するために、細胞を単離し、RNAを調整し、遺伝子95および、類似あるいは関連疾患に関連する他の遺伝子の発現のレベルについて分析することができる。遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロット(Northern blot)分析あるいはRT−PCRにより、もしくはこの分野において知られた多くの方法の一つによって生成されたタンパク質の量を測定することにより、あるいは前記遺伝子あるいはその他の遺伝子によりエンコードされたポリペプチドの生物学的活性のレベルを測定することにより、定量することができる。このように、前記遺伝子発現は、前記物質に対する前記細胞の生理学的反応の指標である、標識として働くことができる。したがって、この反応状態は、前記物質を用いた個人の治療の前、およびその間の様々な時点で測定され得る。
【0086】
好ましい実施例において、物質(例えば、ここに開示されたスクリーニング分析により同定された作用薬、拮抗薬、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、抗遺伝子95抗体、アンチセンス分子、核酸、小分子、あるいは他の薬剤候補)を用いた被験者の治療の有効性を観察するための方法を提供し、前記方法は、(i)前記物質の投与前に、被験者から投与前サンプルを取得し、(ii)投与前サンプル中のHDL活性レベルあるいは、遺伝子95タンパク質、mRNAあるいはゲノムDNAの発現レベルを検出し、(iii)被験者から一つあるいはそれ以上の投与後サンプルを取得し、(iv)投与後サンプル中の遺伝子95タンパク質、mRNA、あるいはゲノムDNAもしくはHDLの発現あるいは活性のレベルを検出し、(v)投与前サンプルと対応する投与後サンプル中の前記タンパク質、mRNA、あるいはゲノムDNAの発現あるいは活性のレベルを比較し、(vi)それに応じて被験者への前記物質の投与を修正するステップを含む。例えば、前記物質の投与の増加は、遺伝子95あるいはそのエンコードされたポリペプチドの発現あるいは活性を増加させること、あるいは血漿HDLレベル等のHDL活性を検出されたレベルよりも高いレベルに増加させること、すなわち前記物質の有効性を増加させることについて望ましいであろう。または、前記物質の投与の減少は、前記ポリペプチドあるいは遺伝子の発現あるいは活性を減少させることに望ましく、ここで過剰発現はHDL活性あるいはレベルの低減の一因となる。
【0087】
動物中の低HDLレベルの誘導等のHDL調節に関連するとしてここに開示された遺伝子95遺伝子は用いることができ、あるいはその断片はタンパク質を発現させるための道具として用いることができ、ここで前記遺伝子は、in vitroあるいはin vivoでの適当な細胞中でタンパク質をエンコードし(遺伝子治療)、あるいは薬剤スクリーニング用のin vitro分析への使用のための十分量のタンパク質を産生するために用いることができる発現ベクター中に複製することができる。用いることができる発現システムは、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、細菌システム、およびCHO細胞等の真核生物システムを含む。裸のDNA(naked DNA)およびDNA−リポゾーム複合体もまた用いることができる。
【0088】
前記活性の分析は、細胞内相互作用タンパク質への結合、遺伝子あるいはポリペプチド活性を上向き調節するタンパク質との相互作用、HDL粒子あるいは成分との相互作用、HDLあるいはその成分との相互作用を促進する他のタンパク質との相互作用、およびコレステロール流出の測定を含む。さらに、分析は蛍光−タンパク質バイオセンサーを用いた高分子、代謝産物およびイオンの分子力学に基づき得る。または、発現あるいは活性に対する候補調節因子の効果は、ウェスタンブロッティング(Western blotting)あるいは特異的な抗体を用いた免疫沈降等の標準免疫学的検出技術と組合せた同じ一般的な手法を用いて、タンパク質産生のレベルで測定することができる。さらに、有用なコレステロール調節あるいは抗CVD治療調節因子は、増加したHDLレベル、特に試験被験者の血漿中での増加したHDLレベルと関連する活性の変化を誘導するものとして同定される。
【0089】
候補調節因子(すなわち試験化合物)は、精製された(あるいは実質的に精製された)分子であるか、あるいは化合物の混合体(例えば、組合せライブラリー、あるいは細胞から得られた抽出物あるいは上清)の一つの構成要素であり得る。混合化合物分析において、遺伝子発現は、単一化合物あるいは最小化合物集合がHDLレベルに有益な効果を持つ形で遺伝子あるいはタンパク質の活性あるいは発現を調節することが示されるまで、(例えば、標準精製技術、例えばHPLCあるいはFPLC;Ausubel et al.により産生された)候補化合物プールの徐々に少なくなる集団に対して試験される。
【0090】
遺伝子95の細胞中の遺伝子発現あるいは遺伝子転写レベルを調節するであろう特異的化合物は、アンチセンス核酸、リボザイム(ribozymes)および他の核酸組成物を含み、また前記遺伝子(前記遺伝子のエキソンあるいはイントロンを含む)と特異的にハイブリダイズする(hybridize)配列特異的結合化合物あるいは遺伝子95のRNA転写産物を含む。これらの特定的な化合物は本発明の化合物であり、前記の疾患の治療に有用である。前記化合物の設計および製造は、本明細書の開示に基づいて、この分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる。
【0091】
遺伝子95ポリペプチドの活性を調節する特異的化合物は、前記ポリペプチドのエピトープに特定的に結合する抗体(ポリクローナルあるいはモノクローナル)を含む。これらの特異的化合物は本発明の化合物であり、前記疾患の治療に有用である。前記化合物の設計および製造はこの分野における通常の知識を有する者によく知られている。
【0092】
一つあるいはそれ以上の遺伝子95のエピトープ、あるいは遺伝子95の保存変異体のエピトープ、もしくは遺伝子95のペプチド断片はまた、本発明により含まれる。前記抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(MAbs)、ヒト化あるいはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab′)2断片、Fab発現ライブラリーにより産生された断片、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体、および上記のもののいずれかのエピトープ結合断片を含むがこれに限定されない。これらはここに開示された任意の疾患を治療するために用いることができる。
【0093】
この分野における通常の知識を有する者に周知のように、完全にヒト化された抗体の使用は、これらが一般的に免疫原性が少なく、ヒトに投与された場合により長い半減期を持つため、一般的に好ましい。主要な利用可能な技術は、抗体についてのヒト遺伝子の全組を持つ形質転換マウスを用いるMedarex,Inc(Princeton,NJ)により扱われたUltiMabヒト抗体開発システム(sm)、およびマウス抗体遺伝子発現は抑制され、ヒト抗体遺伝子発現と機能的に置換さら、マウス免疫システムの残りの部分はそのままであるマウスの遺伝子組換えされた系統を用いるAbgenix,Inc.(Fremont,CA)のゼノマウス(Xenomouse)技術を含む。
【0094】
これらのマウスは、ハイブリドーマ技術を用いて大規模生成物に変換される完全ヒト化ポリクローナル抗体を発生させるように誘導することができる。一つの実施例において、前記方法は、遺伝子95タンパク質あるいはその断片の精製あるいは濃縮生成を伴う、ヒト重鎖トランス遺伝子およびヒト軽鎖トランス遺伝子を含むゲノムを持つ、形質転換非ヒト動物、例えば形質転換マウスに免疫性を与えることを含む。前記動物のB細胞(例えば脾臓B細胞)は続いて獲得され、遺伝子95タンパク質に対するヒトモノクローナル抗体を分泌する不死のハイブリドーマ細胞を形成するために、ミエローマ細胞と融合される。
【0095】
ヒト化抗体はまた、例えば抗体の免疫原性部位を、対応するが非免疫原性の部位と置換することにより産生できる(すなわちキメラ抗体)(Robinson,R.R.et al.,国際特許公報PCT/U.S.86/02269;Akira,K.et al.,ヨーロッパ特許出願184,187;Taniguchi,M.,ヨーロッパ特許出願171,496;Morrison,S.L.et al.,ヨーロッパ特許出願173,494;Neuberger,M.S.et al.,PCT出願WO86/01533;Cabilly,S.et al.,ヨーロッパ特許出願125,023;Better,M.et al.,Science 240;1041−1043(1988);Liu,A.Y.et al.,J.Immunol.139:3521−3526(1987);Sun,L.K.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:214−218(1987);Nishimura,Y.et al.,Canc.Res.47:999−1005(1987);Wood,C.R.et al.,Nature 314:446−449(1985);Shaw et al.,J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559(1988))。“ヒト化”キメラ抗体の一般的見解は、Morrison,S.L.(Science,229:1202−1207(1985))およびOi,V.T.et al.,BioTechniques4:214(1986)により提供される。または、適切な“ヒト化”抗体は、CDRあるいはCEA置換により産生することができる(Jones,P.T.et al.,Nature 321:552−525(1986);Verhoeyan et al.,Science 239:1534(1988);Beidler,C.B.et al.,J.Immunol.141:4053−4060(1988))。
【0096】
抗体の産生のために、種々の宿主細胞が、遺伝子95、遺伝子95ペプチド(例えばタンパク質の機能ドメインに対応する一つ)、不完全遺伝子95ポリペプチド(一つあるいはそれ以上のドメインが削除された遺伝子95)、遺伝子95の機能的相当物あるいは遺伝子95の突然変異体の注入により免疫性を与えることができる。前記宿主動物は、いくつか例を挙げると、ウサギ、マウス、ヤギおよびラットを含むがこれらに限定されない。種々の補助物質(adjuvants)は、宿主種に依存して免疫学的応答を増加させるために用いることができ、フロインド(完全および不完全)、アルミニウム水酸化物等のミネラルゲル、リゾレシチン等の表面活性物質、プルロニックポリオール、多価陰イオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリア・バルヴム等の潜在的に有用なヒト補助物質を含むがこれらに限定されない。ポリクローナル抗体は、免疫性を与えられた動物の血清から得られた抗体分子の異種集団である。
【0097】
完全抗体および抗体断片の産生のために用いることができる種々の発現システムがある。これらは、細菌あるいは哺乳類細胞培養および形質転換動物あるいは植物を含む。一般に好まれる発現システムは、この分野における通常の知識を有する者に知られているように、対象とする用途および望まれる生産により決定される。例えば、動物細胞培養および遺伝子組換え発現システムは、抗体のグリコシル化が求められる場合に望ましく、一方、細菌発現システムは、非グリコシル化抗体、Fab断片およびその他類似のものの産生により有用である。Chad,HE and Chamow,SM.2001.Curr.Opin.Biotech.12:188−193参照。
【0098】
遺伝子95に対する完全ヒトモノクローナル抗体を生成するために、HuMab抗体は、任意の標準方法にしたがって精製されあるいは濃縮された遺伝子95あるいはその断片の生成を用いて免疫性を与えることができる。HuMabマウスは、内因性ミューおよびカッパ鎖遺伝子座を不活性にする標的突然変異と共に、再配列されないヒト重鎖(ミューおよびガンマ)およびカッパ軽鎖免疫グロブリン配列をエンコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を含む(Lonberg,N.et al.(1994)Nature.368(6474):856−859)。これらのマウスは、マウスIgMあるいはカッパの発現の減少を示し、また免疫付与に応じて、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランス遺伝子は、高親和性ヒトIgGカッパモノクロナルを生成するために、クラススイッチと体細胞変異を受ける。
【0099】
好ましくは、マウスは最初の免疫付与のとき、6から16週齢である。最初の免疫付与は、完全フロインドアジュバント中の抗原を用いて腹腔内(IP)に行われ、続いて一週間おきに、不完全フロインドアジュバント中の抗原を用いてIP免疫付与(全6回まで)が行われる。免疫応答は、後眼窩(retroorbital)出血により得られた血漿サンプルを用いた免疫付与プロトコルの経過全体で観察することができる。血漿は、例えばELISAあるいはフローサイトメトリーにより選別でき、抗遺伝子95ヒト免疫グロブリンの十分な力価を持つマウスは、融合のために用いることができる。マウスは、解剖および脾臓の摘出の3日前に、静脈内に抗原が高められる。各抗原について2から3の融合が、成功のためには必要である。
【0100】
遺伝子95に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成のために、マウス脾細胞は最初に単離され、PEGを用いて標準プロトコルに基づいたマウスミエローマ細胞系と融合される。その結果生じたハイブリドーマは、続いて抗原特異的抗体の産生について選別される。例えば、免疫付与マウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁は、50%PEGで6分の1(one−sixth)のP3X63−Ag8.653非分泌マウスミエローマ細胞(ATCC,CRL 1580)と融合される。細胞は、平底マイクロタイタープレート(microtiter plate)におおよそ2×10で播種され、続いて20%ウシ胎仔血清、18%“653”調整培地、5%origen(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50ユニット/ml ペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシン(gentamycin)および1×HAT(Sigma;HATは、融合後24時間で添加される)を含む選択培地中で2週間培養される。2週間後、細胞はHATがHTと差し替えられた培地中で培養される。各ウェルはその後、ヒト抗遺伝子95モノクローナルIgMおよびIgG抗体についてのELISAにより選別される。大規模なハイブリドーマ増殖が起こると、培地は通常10から14日後観察される。抗体分泌ハイブリドーマは取り出され、再び選別され、ヒトIgGに対して陽性であれば、抗遺伝子95抗体は、限界希釈法により最低2倍の下位複製(subclone;サブクローン)ができる。その後安定したサブクローンは、特性化のための組織培養培地中で少量の抗体を産生するためにin vitroで培養される。
【0101】
ヒト抗遺伝子95抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製用の2リッタースピナーフラスコ(spinner flask)中で増殖させることができる。上清はろ過され、タンパク質A−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー(Pharmacia,Piscataway,NJ.)の前に濃縮される。溶出されたIgGは、ゲル電気泳動と、純度を確実にするための高速液体クロマトグラフィーにより調べることができる。緩衝液はPBSに変換でき、濃度は1.43吸光係数を用いてOD280により測定できる。モノクローナル抗体は等分され、本発明の方法にしたがって使用するまで、−80℃で保存される。
【0102】
HDLレベルを増加させ、また/あるいはここに開示された疾患を治療するように働くことができる他の組成物は、遺伝子95遺伝子を含み、遺伝子治療輸送手段中に組み合わされる核酸構成体である。前記輸送手段は、(裸のDNA輸送のための)単純水性緩衝液、ウイルス関連輸送手段あるいは非ウイルス(特に脂質関連)輸送手段であり得る。これらの特異的化合物は本発明の化合物であり、前記の疾患の治療に有用である。前記化合物の設計および製造は、本明細書に基づいてこの分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる。
【0103】
細胞発現あるいは活性のレベルの調節に効果的であると思われる作用薬、拮抗薬あるいはミメティクス(mimetics)は、動物モデル(例えば、霊長類、マウス、ブタ、イヌ、ウサギあるいはニワトリ)において有用であることが確認され得る。例えば、前記化合物はマウスあるいはニワトリ低アルファ蛋白血症の低HDLレベルを改善し得る。
【0104】
HDL産生を促進する機能を持つ遺伝子あるいはポリペプチドの発現もしくは活性の増加を促進する化合物は、本発明において特に有用であると思われる。前記分子は、例えばHDLのレベルあるいは活性を増加し、それにより動物(例えばヒト)の低HDL状態を治療するための治療物質として用いることができる。
【0105】
本発明は、HDL活性調節において役割を果たし、そのためHDLレベルに関連する他の遺伝子の研究においてその突然変異が重要であり得る他のHDL関連遺伝子の同定を可能にする。したがって例えば、遺伝子95タンパク質を安定させ、あるいはそうでなければHDLレベルの増加に寄与するように働く突然変異は、価値がある。前記突然変異は、低HDL−Cレベルの治療のために行われる任意のタンパク質治療あるいは遺伝子治療に組み込むことができる。同様に、野生型遺伝子95ポリペプチドの安定性を高め、あるいはその異化代謝を低下させる化合物はまた、低HDL−Cあるいは低HDLレベルの結果としての任意の他の状態の治療に有用であり得る。ここで同定された遺伝子95の突然変異型はまた、この目的に有用である。さらなる突然変異および化合物はここに開示された方法を用いて同定することができる。
【0106】
一つの実施例において、突然変異を持つ遺伝子95ポリペプチドを発現する細胞は、翻訳中に一時的代謝的に標識され、前記ポリペプチドの半減期は、標準技術を用いて測定される。ポリペプチドの半減期を増加させる突然変異は、タンパク質安定性を高めるものである。これらの突然変異は、続いてHDL関連生物学的活性について評価することができる。これらはまた、対応するmRNAあるいは他のタンパク質の安定性に作用するタンパク質の同定に用いることができる。続いて、前記ポリペプチドを結合させるために、これらの因子あるいはこれらの因子の安定性に作用する化合物の分析ができる。他の実施例において、野生型遺伝子95ポリペプチドを発現する細胞は、翻訳中に一時的代謝的に標識され、候補化合物と接触させられ、前記ポリペプチドの半減期は、標準技術を用いて測定される。前記ポリペプチドの半減期を増加させる化合物は、本発明において有用な化合物である。
【0107】
他の実施例において、本発明の作用薬を用いた治療は、他のHDL増加あるいは抗CVDもしくは抗異常脂質血症治療、あるいはHDL管理を必要とする他の状態と組み合わせることができる。
【0108】
本発明の分析は、タンパク質に基づく分析を含む。遺伝子95遺伝子(精製あるいは未精製)によりエンコードされたポリペプチドは、(HDL活性に関連することが知られているタンパク質と特異的に相互作用すると思われるタンパク質を含むがこれに限定されない)他のタンパク質を結合させる能力を測定するための分析に用いることができる。いくつかの例は、ABCA1タンパク質およびアポリポタンパク質を含む。この結合に対する化合物の作用は続いて測定される。
【0109】
ここに開示された遺伝子によりエンコードされたポリペプチドについての結合分析の他の種類において、遺伝子95ポリペプチド(あるいはそのポリペプチド断片、もしくはエピトープ標識型あるいはその断片)は、適切な資料源から(例えば、原核生物発現システム、真核細胞、無細胞システムから、あるいは発現細胞からの免疫沈降により)獲得される。続いてポリペプチドは、適切な支持体(例えば、ニトロセルロースあるいは抗体、もしくは例えば前記ポリペプチドのhis標識(his−tagged)型の場合は金属アガロースカラム)に結合される。支持体への結合は、好ましくは前記ポリペプチドと関連するタンパク質が前記ポリペプチドとの関連を維持できる条件下で行われる。前記条件は、タンパク質−タンパク質相互作用の妨害を最小限にする緩衝液の使用を含み得る。結合ステップは、前記ポリペプチドと他の分子との間の相互作用を妨げる能力について試験された化合物の存在あるいは不在下で行うことができる。必要に応じて、他のタンパク質(例えば細胞溶解物)が添加され、前記ポリペプチドと十分に結び付けられる。続いて固定化したポリペプチドは、前記ポリペプチドあるいは支持体と非特異的に結合できるタンパク質あるいは他の細胞構成体を除去するために洗浄される。続いて固定化したポリペプチドは支持体から解離され、そして結合していたタンパク質は(例えば加熱により)解離され、あるいはまた、結合したタンパク質は、支持体からのポリペプチドの解離なしに、前記ポリペプチドから解離される。解離されたタンパク質および他の細胞構成要素は、例えばSDS−PAGEゲル電気泳動、ウェスタンブロッティングおよび特異的抗体を用いた検出、ホスホアミノ酸分析、プロテアーゼ消化、タンパク質配列決定あるいは等電点電気泳動により、分析することができる。前記ポリペプチドの正常および突然変異型は、特定の因子が前記ポリペプチドのどの部位に結合するかについてのさらなる情報を得るために、これらの分析に用いることができる。加えて、不完全に精製されたポリペプチドが用いられた場合、前記タンパク質の正常型と突然変異型との比較は、真の結合タンパク質の識別に役立てるために用いることができる。
【0110】
前記分析の特定の実施例において、前記分析は、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと相互作用することが知られている精製あるいは半精製タンパク質あるいは他の分子を用いて行われる。この分析は、以下のステップを含み得る。
【0111】
1.遺伝子95ポリペプチドの獲得および前記ポリペプチドへの適切な蛍光標識の結合;
2.相互作用タンパク質(あるいは他の分子)の第2の異なる蛍光標識での標識。お互いが密に近接している場合と物理的に離れている場合とで異なる消失パターンを形成する色素(すなわち、互いに近接する場合にはそれぞれ消え、密に近接していない場合には蛍光を発する)の使用;
3.相互作用分子の、前記二つの相互作用を妨げる能力について試験される化合物の存在下あるいは不在下での、固定化したポリペプチドへの露出;および
4.蛍光読み出し情報の収集。
【0112】
別の分析は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)分析を含む。この分析は、以下のように実施できる。
【0113】
1.遺伝子95タンパク質あるいはその適切なポリペプチド断片の用意、および適切なFRETドナー(例えば、ニトロ−ベンゾオキサジアゾール(nitro−benzoxadiazole)(NBD))の結合;
2.相互作用タンパク質(あるいは他の分子)のFRETアクセプター(例えばローダミン)での標識;
3.アクセプター−標識相互作用分子の、前記二つの相互作用を妨げる能力について試験される化合物の存在下あるいは不在下での、ドナー−標識ポリペプチドへの露出;および
4.蛍光共鳴エネルギー移動の測定。
【0114】
消失およびFRET分析は関連付けられる。どちらか一つが、どちらの蛍光組が分析において用いられるかに依存して、任意のケースに用いることができる。
【0115】
遺伝子95は、イオンに対する膜の透過性等の膜透過性を変換することにより働くことができる。前記活性は、リポゾームあるいは無傷細胞等の小胞の使用について分析することができる。ここで前記構造体は、本発明の遺伝子95ポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、前記小胞、好ましくは無傷細胞、哺乳類組換え細胞等に発現し、前記細胞の膜の透過性は、前記発現の存在あるいは不在下で測定される。同様に、続いて前記透過性は、遺伝子95の活性を調節することが知られている化学物質の存在および不在下において分析することができる。したがって、前記膜輸送に作用することが知られているタンパク質の活性の増強におけるこれらの物質の有用性は、容易に測定することができる。同様に、脂質等の他の分子、特にHDLの前記膜を横断する輸送に作用するこれらの物質の能力は、同じく容易に測定される。
【0116】
前記分析の実施において、遺伝子95あるいは前記遺伝子に相当するポリヌクレオチドを発現する前記哺乳類組換え細胞等の試験細胞は、イオンを検出可能なレポーター分子(特定のイオンを結合した場合にその蛍光特性が変化する蛍光イオン指示因子等)を取り付けられ、あるいはまた外部媒体が前記分子に取り付けられる。小胞外にある場合と比べて小胞内にある場合に異なる特性を示す分子は用いられ得る。例えば、高濃度の場合に消失特性を持ち、低濃度の場合に消失特性を持たない分子は、適していると思われる。または、膜を横断するイオン(Ca、K、Na、金属その他類似のもの)の輸送の効果は、その効果が培地あるいは細胞中に入れられた色素を消失させあるいは消失させないものであれば、測定することができる。このプロセスに作用する能力について試験される化合物の存在下あるいは不在下で、帯電した分子の動き(あるいはその動かす能力あるいはその動きの反応速度)は測定することができる。
【0117】
また別の分析において、小胞内へ、あるいは小胞からの放射性同位体の吸収は、測定することができる。前記小胞は小胞外培地から分離され、小胞中および培地中の放射能活性は定量され比較される。既に示されたとおり、本発明はまた、ここに開示された一つあるいはそれ以上の遺伝子の転写因子を使用し得る分析に関する。試験されるポリヌクレオチドと結合因子の関係は、タンパク質結合DNAと非タンパク質結合DNAとを識別する任意のシステム(例えば、ゲル妨害分析(gel retardation assay))を用いて判断することができる。前記DNAへの因子の結合における化合物の効果は、前記分析を用いて判断される。結合分析に加えて、遺伝子の調節領域がレポーター遺伝子に結合するin vitro分析もまた実施することができる。好ましい実施例において、前記ポリヌクレオチドは、遺伝子95に相当するものであり、最も好ましくはここで前記ポリヌクレオチドは配列番号3を持つ。
【0118】
本発明は、遺伝子95遺伝子構成体を含む組換え細胞系を含む。対応するタンパク質を発現する組換え細胞系は、試験化合物への露出により調節することができるタンパク質の関連生物学的活性を同定するために試験される。化合物は、それらが同定された生物学的活性を調節するか否かについて評価するために体系的に選別され、有効に働くものは本発明にしたがった治療物質、あるいはその類似体である。
【0119】
組換え細胞系はまた、精製タンパク質分析が必要な場合、精製タンパク質の調整に好ましい。この分野における通常の知識を有するものは、組換え細胞系の産生および高精製タンパク質を含むタンパク質画分の抽出が可能である。これらのサンプルは、前記タンパク質と相互作用する化合物を同定するための種々の結合分析に用いることができる。相互作用する化合物は、本発明の治療物質あるいはその類似体である。
【0120】
本発明はまた、遺伝子95の上流非翻訳領域およびプロモーター領域を含む。ポロモーター領域の分節は、図5に含まれる。このプロモーター領域のより広い部分は、本開示を用いて、この分野における通常の知識を有する者により同定することができる。5′UTR(非翻訳領域)は配列番号3、6、8および図5に開示される。前記ゲノム領域あるいは非翻訳領域は、同定された遺伝子の発現を調節する化合物を同定するための分析において用いられるプラスミドに含まれ得る。前記分析の一つにおいて、上流ゲノム領域はレポーター遺伝子に結合し、発現プラスミド中に組込まれる。プラスミドは細胞中に入れられ(トランスフェクト)、組換え細胞は試験化合物に露出される。レポーター遺伝子の発現を増加あるいは減少させるこれらの化合物は、その結果、遺伝子/タンパク質の調節因子であり、そして本発明の治療物質であると考えられる。
【0121】
ここに開示された遺伝子はまた、コレステロール流出の調節に関連し得る。前記活性についての輸送に基づく分析は、in vivoあるいはin vitroで行うことができる。例えば前記分析は、コレステロールあるいはリン脂質流出等の、培養液中で容易に再形成される逆コレステロール輸送プロセスの任意の一部に基づき得る。または、前記分析は標識基質(コレステロール等)を用いて判断されるように、生物全体における純量コレステロール輸送に基づき得る。
【0122】
ハイスループットスクリーニングに関し、蛍光脂質は脂質流出の測定のために用いることができる。リン脂質について、蛍光前駆体C6−NBD−ホスファチジン酸は用いることができる。この脂質は細胞に取り込まれ、ホスファチジン酸ホスホヒドロラーゼにより脱リン酸化される。その産物であるNBD−ジグリセリドはその結果グリセロリン脂質様ホスファチジルコリンの合成の前駆体である。NBD−ホスファチジルコリンの流出は、細胞培養液中の適切なアクセプターへのNBDの蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を検出することにより観察することができる。適切なアクセプターは、ローダミン標識ホスファチジルエタノールアミン、細胞に容易に取り込まれないリン脂質を含む。単鎖前駆体の使用は、培養液中でのリン脂質輸送タンパク質の必要性を取り除く。コレステロールに関し、NBD−コレステロールエステルはLDLに再構築することができる。前記LDLはこの脂質を、LDL受容体経路を介して細胞に効率よく輸送できる。NBD−コレステロールエステルはリソソーム中で加水分解され、その結果、もとの原形質膜へ輸送でき、細胞から流出するNBD−コレステロールを生じる。前記流出は前記FRET分析により観察することができ、その中でNBDはその蛍光共鳴エネルギーをローダミン−ホスファチジルエタノールアミンアクセプターへ輸送する。
【0123】
動物モデルはまた、本発明の分析に有用である。任意の上記分析において活性を持つと判断された化合物は続いて、ブタ、ウサギまたはニワトリにおおよそ有効量投与された化合物によりHDLレベルが増加するかどうかを調べるために、前記動物を含むがこれらに限定されない使用可能な動物モデルシステム中で選別される。試験化合物は、標準方法にしたがってこれらの動物に投与される。試験化合物はまた、コレステロール輸送を妨げる突然変異を持つマウス中で試験され得る。加えて化合物は、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドとApoAI、ApoAIIあるいはApoE等のHDL粒子構成要素との間の相互作用を増強する能力について選別され得る。
【0124】
前記コレステロール流出分析は、コレステロールを細胞外アクセプター分子へ輸送する細胞の能力を測定し、通常ABCA1等の輸送分子の存在に依存する。したがって、ここに開示された遺伝子は、ABCA1の活性の調節に関与し得る。例えばここで、ここに開示されたポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドは、ABCA1の活性あるいは他のHDL関連タンパク質に結合し、調節する。この方法において、細胞は任意の複数の生化学的プロセスにより放射性標識コレステロールを持っている(Marcil et al.,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19:159−169,1999)。続いてコレステロール流出は、HDL3あるいは精製ApoAIの存在下で、種々の時間(通常0から24時間)培養した後、測定される。コレステロール流出は、種々の時間の培養後の培養液中の全コレステロールの割合として測定される。この分析においてコレステロール流出を調節する化合物は、遺伝子95タンパク質標的に作用し得る。好ましくは、細胞は遺伝子95構成体を含む組換え細胞系である。
【0125】
本発明はまた、(例えば相同組み換えにより)不活化した遺伝子95の一つあるいは両方の対立遺伝子を持った、マウス等の遺伝子組換え動物、あるいは逆に遺伝子95の一つあるいはそれ以上のさらなる複製、もしくは遺伝子95のさらなる突然変異複製を持つマウスを含む。遺伝子組換えマウスを含む前記マウスは、HDL−Cレベルを上昇させる化合物を選別するための有用な動物モデルに相当する。前記マウスはまた、生物系での遺伝子95の役割を判断するための実験的目的に有用である。前記動物は、標準技術を用いて作成することができる。試験化合物の最初の選別に加えて、前記遺伝子の異なる型を持つ動物は、ここに開示された他のスクリーニング法の一つを用いて最初に同定された薬剤あるいは物質の有効性と安全性のさらなる試験に有用である。前記動物から採取され、培養液中に置かれた細胞はまた、試験化合物に露出することができる。HDL−Cレベルは、ここに開示されたもの等の標準技術を用いて測定することができる。
【0126】
本発明の一つあるいはそれ以上の分析を用いてHDL活性の増加に有用であると最初に同定された化合物は、単一剤形における薬学的許容希釈剤、担体あるいは賦形剤と共に投与され得る。従来の薬務は、前記組成物を患者に投与するための適切な剤形あるいは配合を提供するために用いられ得る。経口投与が好ましいが、任意の適切な投与経路、例えば非経口、静脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、脳室内、嚢内、髄腔内、大槽内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾルあるいは経口投与を用いることができる。治療剤形は溶液あるいは懸濁液の形状であり得る。経口投与用には、剤形は錠剤あるいはカプセルの形状であり得る。また鼻腔内投与用には、剤形は粉末、点鼻薬あるいはエアロゾルの形状であり得る。
【0127】
通常、成功した遺伝子95調節治療物質は、以下の基準のいくつかあるいは全てを備える。経口可用性は、20%かあるいはそれ以上であるべきである(したがって最低20%が血流中に吸収される)。動物モデル有効性は、約2mg/kg未満で、標的ヒト投薬は50および250mg/70kgの間であるべきであるが、この範囲外の投薬も受容可能である。治療指数(あるいは薬用量に対する中毒量の比)は100より大きい。有効性(IC50値により示される)は約10μM未満、好ましくは1μM以下、最も好ましくは100nM以下である。前記物質は可逆性結合(すなわち競合的阻害)を示し、関連しない標的あるいは不要な副作用を引き起こす関連標的に適度に選択的である。必須の投薬量は、わずか一日に一回あるいは二回、もしくは食事時である。
【0128】
剤形を作成するためのこの分野においてよく知られた方法は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,(19th ed.)ed.A.R. Gennaro AR.,1995,Mack Publishing Company,Easton,PAに見られる。非経口投与のための剤形は例えば、賦形剤、滅菌水あるいは生理食塩水、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物油もしくは水素化ナフタレンを含む。生体適合性、生体分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド(glycolide)コポリマー、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン コポリマーは、前記化合物の放出を制御するために用いることができる。本発明の作用薬のための他の潜在的に有用な非経口輸送システムは、エチレンビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入システム、およびリポソームを含む。吸入用の剤形は、賦形剤、例えばラクトースを含み得る。あるいは例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含む水溶液であり得る。もしくは点鼻薬の形状であるいはゲルとして投与するための油性溶液であり得る。
【0129】
通常、異常なコレステロールレベルおよび/またはCVDあるいは異常脂質血症の治療のための新規薬剤は、自然物あるいは合成(もしくは半合成)抽出物両方の大ライブラリーから、あるいはこの分野において知られる方法にしたがった、組み合わせ化学ライブラリーを含む化学ライブラリーから同定される。この分野あるいは薬剤の発見および開発の分野における通常の知識を有する者は、試験抽出物あるいは化合物の的確な源が本発明のスクリーニング法に不可欠ではないことを理解するだろう。したがって、事実上あらゆる化学抽出物あるいは化合物を、ここに開示された典型的な方法を用いて選別することができる。前記抽出物あるいは化合物の例は、植物由来、真菌由来、原核生物由来あるいは動物由来の抽出物、発酵培養液および合成化合物、加えて既存の化合物の調整が含まれるがこれらに限定されない。多くの方法はまた、糖類由来、脂質由来、ペプチド由来、おおび核酸由来化合物を含むがこれらに限定されないあらゆる化合物のランダム合成あるいは直接合成(例えば、半合成あるいは完全合成)を起こすために利用できる。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates(Merrimack,NH)およびAldrich Chemical(Milwaukee,WI)から市販されている。または、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形状の自然化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex,UK)、Xenova(Slough,UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft.Pierce,FL)およびPharmaMar,U.S.A.(Cambridge,MA)を含む、多くの提供源から市販されている。加えて、自然産生および合成的産生ライブラリーは、必要に応じて、この分野において知られた方法にしたがって、例えば標準抽出および分画法により作成される。さらい必要に応じて、任意のライブラリーあるいは化合物は、標準化学、物理あるいは生化学法を用いて容易に調整される。
【0130】
加えて、薬剤の発見および開発の分野における通常の知識を有する者は、脱複製(dereplication)(例えば、分類学的脱複製、生物学的脱複製、および化学的脱複製あるいはそれらの任意の組合せ)あるいは、そのHDL上昇、抗CVDおよび/または抗異常脂質血症活性について既知の物質の複製あるいは反復の除去についての方法が、可能ならいつでも用いられることを容易に理解する。
【0131】
粗抽出物がコレステロール調節活性あるいは抗CVD活性もしくはその両方を持つと思われる場合には、観察される効果の原因である化学構成成分を単離するために、陽性優位抽出物のさらなる分画が必要である。したがって、抽出、分画および精製プロセスの目的は、コレステロール調節活性あるいは抗CVD活性を持つ粗抽出物中の化学構成要素の入念な特徴づけおよび同定である。化合物の混同における活性の検出のためのここに開示された同じin vivoおよびin vitro分析は、活性成分を精製するために、またその誘導体を試験するために用いることができる。前記異種抽出物の分画および精製方法は、この分野において知られている。必要であれば、病原性の治療に有用な物質であることが示された化合物は、この分野において知られた方法にしたがって化学的に調整される。治療上価値があると判断された化合物は続いて、この分野において知られた標準動物モデルを用いて分析される。
【0132】
本発明はさらに、治療物質としての遺伝子95タンパク質あるいはタンパク質断片の使用を含み、また遺伝子95の生物学的活性を保持する遺伝子95の調整型を含む。これらの治療物質は、これを必要とする患者に投与することができ、前記患者は、投与すると局所的、局部的あるいは体全体で遺伝子95生物学的活性が増加し、それにより恩恵を受ける患者である。前記患者は、低HDL、異常脂質血症、心疾患および他の疾患を被る患者を含むがこれらに限定されない。
【0133】
機能的遺伝子95タンパク質およびその溶解性誘導体、例えば遺伝子95の機能的ドメインに対応するペプチドあるいは遺伝子95タンパク質の調整型は、この分野において知られた標準方法により産生することができる。患者への投与は、静脈内、経口、腹腔内あるいはこの分野において知られた他の方法により行うことができる。
【0134】
遺伝子95を用いた診断および薬理ゲノミクス
相対的および絶対的遺伝子発現、および生物学的活性、また突然変異分析は、それぞれ低HDLの診断手段として用いることができる。したがって、遺伝子配列の遺伝的サブタイピングの決定は、低HDL表現型が、本発明にしたがって用いられたファミリーと同様に、特定のタンパク質機能に関連するか否かを判断するために低HDL個体あるいはファミリーをサブタイプ(subtype)する場合に用いることができる。この診断プロセスは、HDL増加薬の投与による副作用の予測を含む、患者の遺伝子型にしたがった薬剤治療の仕立て(tailoring)(ここでは薬理ゲノミクスと称される)をもたらすことができる。薬理ゲノミクスは、個体の遺伝子型に基づいた個体の治療あるいは予防処置のための物質(例えば薬剤)の選別を可能にする(例えば、個体の遺伝子型は、特定の物質に反応する個体の能力を判断するために検査される)。
【0135】
本発明はさらに、疾患の存在、特にその初期段階における存在を診断する、あるいは前記疾患の発症の危険性を診断するプロセスに関する。したがって別の態様において、本発明は、疾患に苦しんでいると思われる患者の疾患の存在を診断するためのプロセスに関し、前記プロセスは、前記患者のゲノム中の遺伝子95遺伝子における突然変異を検出することを含む。好ましい実施例において、本発明は前記診断プロセスに関し、ここで前記突然変異は配列番号6および/または配列番号8および/または表1に示された核酸配列中の突然変異である。
【0136】
前記プロセスの特定の実施例において、突然変異は、前記患者から得られたDNAのサンプル中で検出される。前記サンプルは、血液サンプル、生検(バイオプシー)あるいはその他の方法等の前記サンプルを獲得するために通常用いられる方法で獲得することができる。さらに本発明のプロセスにしたがって、前記検出はin vivoで行うことができ、例えばここで、in situ法は、患者の突然変異遺伝子95遺伝子あるいは核酸配列の存在を検出するために用いられる。検出することができる疾患は、低HDL、異常脂質血症、心疾患および既に開示され、含まれている他の疾患に限定されない。
【0137】
前記にしたがって、本発明は遺伝子95関連疾患に苦しんでいると疑われる患者における遺伝子95関連疾患の存在を診断するためのプロセスに関し、前記プロセスは、前記患者のゲノムあるいはmRNA中の遺伝子95遺伝子における突然変異の検出を含む。
【0138】
好ましい実施例において本発明は前記プロセスに関し、ここで前記突然変異は患者から採取されたDNAのサンプル中で検出され、もっとも好ましくはここで、前記突然変異は配列番号6あるいは配列番号8あるいは表1の突然変異である。
【0139】
多くの様々な技術が、前記突然変異の存在あるいは不在を検出することで知られている。好ましい実施例において前記検出は、配列番号1の配列の突然変異部位に相補的な最低15の隣接するヌクレオチドを含む核酸プローブの能力を測定することにより行われる。もっとも好ましくはここで、前記プローブは最低30の隣接するヌクレオチドを含み、特にここで前記プローブは最低50の隣接するヌクレオチドを含む。
【0140】
ここに開示されたプロセスはまた、患者の前記疾患の一つあるいはそれ以上を発症する危険性の判断に有用である。したがって本発明はまた、患者の疾患の発症の危険性を判断するためのプロセスに関し、ここで前記患者はそれらの危険性があると疑われるものであり、前記患者のゲノムあるいはmRNA中の遺伝子95遺伝子における突然変異の検出を含む。前記検出は、前記に沿って、in vitroあるいはin vivo法により行われ得る。好ましい実施例において、前記疾患は低HDL、異常脂質血症および/または心疾患である。好ましい実施例において、前記突然変異は配列番号1に相当する遺伝子における突然変異である。
【0141】
組織あるいは身体サンプル中の遺伝子95タンパク質の検出、特に突然変異遺伝子95タンパク質、あるいは突然変異あるいは正常遺伝子95タンパク質のレベルの検出を用いて疾患を診断することもまた同様に、本発明の実施例である。前記検出は種々の方法により得ることができるが、通常、標準ELISA分析における抗遺伝子95抗体の使用を含む。本開示に基づいて、この分野における通常の知識を有する者は、種々の疾患の診断のために、患者サンプル中の突然変異あるいは正常遺伝子95を検出するための診断手段を開発することができる。
【0142】
遺伝子95遺伝子あるいは遺伝子産物に対する促進作用あるいは抑制作用を持つ物質あるいは調節因子は、低HDL活性あるいはレベルと関連する疾患の治療のために個体に投与することができる。前記治療とともに、個体の薬理ゲノミクス(すなわち、個体の遺伝子型と、外来化合物あるいは薬剤に対する個体の反応との間の関連の研究)が考慮され得る。治療の有効性における差異は、投薬と薬理的活性薬剤の血中濃度との関係の変更により、毒性あるいは治療上の不具合に役立つようにすることができる。したがって個体の薬理ゲノミクスは、個体の遺伝子型を考慮したうえでの予防あるいは治療処置に有効な物質(例えば薬剤)の選択を可能にする。前記薬理ゲノミクスはさらに、適切な投薬量と治療計画を決定するために用いることができる。したがって、ここに開示された遺伝子についての個体の遺伝子相補体は、前記個体の治療あるいは予防処置のための適切な物質を選別するために決定することができる。
【0143】
薬理ゲノミクスは、変化した薬剤の性質と病気のヒトにおける異常な作用を引き起こす、薬剤に対する応答における臨床上の重要な遺伝的変異に取り組む(Eichelbaum,M.,Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.,23:983−985,1996;Linder,M.W.,Clin.Chem.,43:254−266,1997)。通常、二つの型の薬理ゲノミクスの状態に区別することができる。遺伝的条件は、薬剤の身体への働き方を変える(変化した薬剤作用)単一因子として伝達され、あるいは遺伝的条件は、身体の薬剤への働き方を変える(変化した薬剤代謝)単一因子として伝達された。変化した薬剤作用は、遺伝子95のプロモーター、イントロンあるいはエキソン配列中に多型(例えば、一塩基変異多型あるいはSNP)を持つ患者に起こり得る。したがって、多型の存在および普及率の測定により、特定の治療物質に対する患者の反応の予測が可能となる。特に、プロモーター領域中の多型は、HDL欠乏症およびCVDの危険性の判断に重要であり得る。突然変異に加えて、遺伝子95の多型は同様に、ここに開示された分析を用いて同定された物質の同定および使用に関連し得る。
【0144】
加えて、種々の物質が、特徴となる遺伝子組の遺伝子に作用する種々の能力を持ち得る。例えば、潜在的な治療物質、例えば物質Aが低HDLレベルに関連する遺伝子あるいは遺伝子群の発現の減少の原因となる場合、そのような場合にはより低量のmRNAが前記遺伝子から発現し、あるいはより少ないタンパク質が前記mRNAから産生されるが、第二の潜在的な物質、例えば物質Bが前記遺伝子と同一あるいは関連する遺伝子の活性を調節しながら前記発現を半分にまで減少させる場合、そのような場合には物質Aと比べて半分のmRNAのみが転写され、あるいは半分のタンパク質のみが前記mRNAから翻訳される。したがって、物質Bは、物質Aの2倍の治療潜在性を持つと考えられる。
【0145】
本発明はまた、試験データの生成を含む産物の産生のための方法を含むプロセスに関し、前記プロセスは、前記物質(すなわちここに開示された分析法にしたがって同定された治療物質)を同定するための開示されたプロセスの一つにしたがって物質を同定することを含み、ここで前記産物は前記同定プロセスあるいは分析の結果としての前記物質に関して集められたデータであり、またここで前記データは、前記物質の化学的特徴および/または構造および/または性質を伝達するのに十分なものである。例えば、本発明は特に、本発明の分析の使用者が希望のポリペプチド、例えば酵素、調節活性あるいは遺伝子発現調節活性を持つ化合物を選別するために前記分析を用い、そして化合物を同定し、続いてその情報(すなわち構造、投薬量その他についての情報)を、本発明にしたがって治療あるいは研究目的で前記物質を再生産し、それを投与するために前記情報を利用する他の使用者に伝達するといった状況を意図する。例えば、前記分析の使用者(使用者1)は、多数の試験化合物を前記化合物の構造あるいは同一性を知らずに選別し(例えばここで多数のコード番号が用いられ、最初の使用者は前記コード番号が付されたサンプルが与えられるだけである)、本発明の一つあるいはそれ以上の分析プロセスを用いてスクリーニングプロセスを実施した後、続いて口頭あるいは文書で、もしくは同等の方法で、特定の調節活性を持つ化合物を同定するのに十分な情報(例えば対応する結果を伴ったコード番号)を次の使用者(使用者2)に伝える。この使用者1から使用者2への情報の伝達は、本発明により特に意図される。
【0146】
前記にしたがって、本発明は試験化合物の調節活性に関する試験データを生成するための方法に関し、前記方法は、
(a)試験化合物を、遺伝子95ポリヌクレオチドあるいは遺伝子95ポリペプチドもしくは遺伝子95プロモーターに作動可能に結合するレポーター遺伝子を含むポリヌクレオチド構成体と、前記ポリヌクレオチドあるいはレポーター遺伝子が転写され、あるいは前記ポリペプチドが活性化する条件下で接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性、あるいは前記ポリヌクレオチドあるいはレポーター遺伝子の転写の変化を測定し、
(c)測定されたポリヌクレオチドあるいはレポーター遺伝子の転写の変化あるいは測定されたポリペプチドの活性の変化に基づく前記試験化合物の調節活性に関する試験データを生成することを含み、ここで前記変化は調節活性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0147】
(実施例1)
ヒトにおいて低HDLを引き起こす遺伝子95中の突然変異
方法
患者確認とサンプル収集
Dutch originの親族BC11Mは、ブリティッシュ コロンビア大学の遺伝医学学科とブリティッシュ コロンビア、バンクーバーのセントポール病院との共同制作の一環として特定された。この親族は、他の脂質および臨床的異常(例えば肥満や糖尿病)のない状態で、低アルファ蛋白血症表現型(<5分の1百分率)に基づいて確認された。冠動脈疾患の病歴は、この親族において確認の段階で明らかであった。さらなるDutch親族NL−003、NL−120は、異常コレステロールレベルに基づいて、アムステルダムのアカデミッククリニカルセンターで、脂質医療への患者紹介プログラムの一環として確認された。normolipidemicな個体(HDLが20分の1百分率より高く、80分の1百分率より低い)のコントロール集団が、突然変異の原因となる性質を確認するために用いられた。
【0148】
標識および遺伝子型特定
遺伝子標識に関する情報は、Genome DatabaseおよびGenBankから得られた。ゲノム走査と精度の高い解読(fine mapping)に用いた全ての標識は、事前にMarshfieldマップで局所化された。“X”は内用の標識名の多くに付加された。ゲノムDNAは、GeneMapperソフトウェアを作動させるApplied Biosystems Prism 3100 Genomic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて、遺伝子型特定された。対立遺伝子のメンデル遺伝は、PedCheckプログラムを用いて検証された。
【0149】
連鎖解析
二点連鎖解析はFASTLINKソフトウェアパッケージのMLINKプログラムv4.1pを用いて行われ、多点連鎖解析はVITESSE v1.0を用いて行われた。常染色体優性遺伝モデルが用いられ、集団中の全低HDL(<5分の1百分率)の10%が遺伝子の突然変異に起因すると想定された。疾患対立遺伝子頻度は、非保因者において、98%浸透率と4.5%の表現型複写割合で0.25%であると思われる。標識対立遺伝子頻度は、アメリカとヨーロッパの膨大なサンプルから推定された。ハプロタイプは手動で再構築され、SIMWALK v2.8を用いて交差確認された。
【0150】
結果
BC11Mファミリーの連鎖解析
BC11Mファミリーの24個体は、優性遺伝子種の単離された低アルファ蛋白血症を隔離した12の多重化系統の400マーカーゲノムスキャンに組込まれる。能力分析は、BC11M親族が常染色体優性モデルでの近接に基づく連鎖(MaxE(Zmax 5cM)=4.762)を用いたHDL遺伝子座の同定に適切であったことを示した。ゲノムスキャンデータの二点連鎖解析は、染色体9に示唆的なLODスコアを与えた(D9S1677 LOD=2.285)。このLODスコアについては、広範な系統に対して多点連鎖分析、浸透遺伝子型特定およびさらなる標識を用いたハプロタイプ特定が引き続き行われた。染色体9上の領域は、多点連鎖分析により裏付けられ、多点LODは、20.91cMの間隔のみの影響を示す8.0に達した(間隔1;D9S1780から9q22xca17)(表2)。この間隔はさらに、影響を受けない個体の染色体切断点に基づいて、サブ領域に分けられるであろう(間隔2;9q22xca7から9q22x−ca17)(間隔3;D9S1812からD9S1803x)(表2)。間隔2は、最も広範囲の突然変異検出の焦点であった。
【0151】


【0152】
(実施例2)
オリジーン(Origene)cDNAパネルを用いた遺伝子95の組織区分
マルチウェルPCRプレートに配置された24連続希釈(直線的な増幅を確実にするための4ログ範囲)cDNA複製は、オリジーン(Rockville,MD)から得られた。PCRは、遺伝子95(ここで時々“G95”)の遺伝子特異的プライマーを用いて行われた。反応物は10μl中で、1.0μlの10×緩衝液(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN,USA)、0.25mMの各dNTP(Boehringer Mannheim)、5pモルのフォワード(forward)プライマーとリバース(reverse)プライマー、および0.25ユニットのTaqDNAポリメラーゼ(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN,USA)が含まれる。
【0153】

【0154】
増幅した断片はエキソン4と6の間にあり、230bpのサイズを持つ。
【0155】
DNA Engine Tetrad cyclers(MJ Research,Inc.,Waltham,MA,USA)がPCR増幅のために用いられた。PCRの条件は、94℃で3分間の変性ステップ、続いて94℃で30秒間、50℃で30秒間、そして72℃で1分間の35サイクルであった。72℃で7分間の最終伸長ステップが行われ、サンプルは10℃で保存された。PCR産物は、1×TBE中の2%アガロースゲル上で電気泳動により分析された。100bpラダー(ladder)(Gibco−BRL、Rockville,MD,USA)がサイズ基準として用いられた。
【0156】

【0157】
G95cDNAの相対量は表XXに示される。H=高、M=中間、L=低。
【0158】
(実施例3)
ノーザンブロットによる組織発現
遺伝子95転写産物の定量および定寸は、ヒト12−レーン多組織ノーザンブロット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA,USA)の使用により分析された。ヒトブロットは、遺伝子95のエキソン6から9に対する401bpプローブでハイブリダイズされた。予想どおり、4.4kbのバンドが同定された。アクチンは、コントロールとして用いられた。
【0159】

【0160】
結果(図9)は、遺伝子95が筋肉および心臓中に最高レベルで遍在的に発現することを示す。これらの結果は、マウス組織のノーザンブロット分析により確認された(データは図示せず)。前記実施の一つにおいて、線維芽細胞を用いて、コレステロール治療のおおよそ24時間前に、2×10個の細胞が次の日に50から70%の密集度を得るために6ウェルフォーマットの各ウェルに播種された。細胞は最終濃度30μg/mlのコレステロールで24時間処理され、続いて全RNA調整が行われた。コントロールは、影響のない細胞系から得られた遺伝子95発現であった。
【0161】
(実施例4)
患者線維芽細胞中の遺伝子95発現
遺伝子95のエキソン10におけるSerからAlaへの突然変異が、4つの患者線維芽細胞(400、558、549および575)中に存在した。我々はこれらの線維芽細胞における遺伝子95の発現を正常コントロール(226、475および485)と比較することにした。この分析は、脂質代謝と遺伝子95との関係を調査するために、外因性コレステロールの不在下あるいは存在下で行われた。定量リアルタイムPCR(あるいは“TaqMan”)分析は、以下のように行われた。ヒト遺伝子95プライマーとそのプローブは、プライマーエキスプレスソフトウェア(Primer Express software)(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて設計された。
【0162】

【0163】
RT−PCRは、1×TaqmanワンステップRT−PCRマスターミックス(Applied Biosystem,CA)中に120ngのヒト遺伝子95の全RNAあるいは50ngのヒトapoA1のRNA、200μMのプライマー、および600μMのプローブを含む25ulの最終量で、ABI7900配列検出システムで実施された。GAPDHあるいは18s(ヒト)(Applied Biosystems)は内部コントロールとして用いられた。データの定量化と分析は、製造者のプロトコルにしたがって行われた。簡単にいうと、キャリブレータおよびサンプルのΔCは、関連する遺伝子のFAM C値から18sRNAあるいはGAPDHのVIC C値を差し引くことにより得られた。ΔΔCは、ΔC(サンプル)から平均ΔC(キャリブレータ)値を差し引くことにより算出された。キャリブレータに対するmRNA量は1×サンプルとして現され、他の全ての量はキャリブレータに関連した多数の割合変化として表される。各サンプルは3組で分析され、標準誤差(SE)が算出された。RNAのないRT−PCR反応およびRNAがあるが逆転写酵素のない反応が、ネガティブコントロールとして用いられた。PCR産物のサイズは、アガロースゲルにより確認した。
【0164】
全般的にみると、遺伝子95の極端に低いレベルの発現が、コントロールを含む全ての線維芽細胞に見られた。TaqManの結果が、二つの患者細胞系(400と575)における遺伝子95の発現がコレステロール治療を伴うあるいは伴わないコントロールと比較しておおよそ50%下向き調節されたことを示した。患者558における遺伝子95の発現は、コントロールと大きくは異ならなかった。しかし、549における遺伝子95の発現は、コントロールよりも増加した(データは図示せず)。
【0165】
突然変異保因者における遺伝子95発現の減少傾向が指摘された。メッセンジャーRNA発現レベルは、細胞培養条件、細胞密度および継代数に左右されやすいであろう。作用メカニズムについての任意の理論に結びつけられることを望まなくとも、この突然変異保因者における遺伝子95mRNAのレベルの減少傾向は、これらの患者における低HDL状態の根本的なメカニズムであろう。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】BC−11Mファミリーの系統図
【図2】NL−003ファミリーの系統図
【図3】NL−120ファミリーの系統図
【図4】遺伝子95cDNAの予想される10エキソン構成、およびE6aあるいはE9aを持つ他の可能性のある転写産物を含む、遺伝子95の既知の断片から組み立てられた不完全構成を示す図。
【図5A】遺伝子95のエキソンとイントロンおよびアミノ酸翻訳を示す図
【図5B】遺伝子95のエキソンとイントロンおよびアミノ酸翻訳を示す図
【図5C】遺伝子95のエキソンとイントロンおよびアミノ酸翻訳を示す図
【図5D】遺伝子95のエキソンとイントロンおよびアミノ酸翻訳を示す図
【図5E】遺伝子95のエキソンとイントロンおよびアミノ酸翻訳を示す図
【図5F】遺伝子95のエキソンとイントロンおよびアミノ酸翻訳を示す図
【図5G】遺伝子95のエキソンとイントロンおよびアミノ酸翻訳を示す図
【図6】ヒト(配列番号4)およびマウス(配列番号5)の遺伝子95のアミノ酸配列の位置合わせ(アラインメント)を示す図
【図7】ヒト遺伝子95の突然変異1(配列番号7)および突然変異2(配列番号16)のアミノ酸配列の、野生型アミノ酸配列(配列番号4)との位置合わせ(アラインメント)を示す図
【図8】本発明にしたがって同定された突然変異および多型の位置とともに遺伝子95の予想されるエキソン結合を示す図
【図9】実施例3の結果を示す遺伝子95プローブを用いたノーザンブロットを示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子95活性を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化合物を、遺伝子95プロモーターと作動可能に結合するレポーター遺伝子を含む遺伝子構造体と、前記レポーター遺伝子の転写を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の転写の変化を測定することを含み、
ここで前記転写の変化は、試験化合物が遺伝子95活性を調節する物質であることを示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、ステップb)の測定された転写の変化が、転写の減少であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、ステップb)の測定された転写の変化が、転写の増加であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、転写が前記レポーター遺伝子によってエンコードされた発現産物の量を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記発現産物がRNAであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4記載の方法において、前記発現産物がポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記レポーター遺伝子がリポソーム中にあることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記レポーター遺伝子が無傷細胞中にあることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記無傷細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記プロモーターが哺乳類遺伝子95プロモーターであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記遺伝子95プロモーターがヒトプロモーターであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記ヒトプロモーターが配列番号15のプロモーター配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法において、前記遺伝子95プロモーターがマウスプロモーターであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記マウスプロモーターが配列番号14のプロモーター配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記レポーター遺伝子が遺伝子95でないことを特徴とする方法。
【請求項16】
遺伝子95活性を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化合物を、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと、前記ポリペプチドの活性を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定することを含み、
ここで前記活性の変化が、試験化合物を遺伝子95活性を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、ステップb)の測定された活性の変化が、活性の減少であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16記載の方法において、ステップb)の測定された活性の変化が、活性の増加であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16記載の方法において、前記活性が酵素の活性を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項16記載の方法において、前記ポリペプチドが脂質二重層中に存在することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、前記脂質二重層がリポソームの一部であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項16記載の方法において、前記ポリペプチドが無傷細胞の一部であることを特徴する方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記無傷細胞が前記ポリペプチドを含むように処理された細胞であることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22記載の方法において、前記無傷細胞が前記ポリペプチドを発現するように遺伝子組換えが行われた組換え細胞であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、前記細胞が前記組換え処理がないときは前記ポリペプチドを発現しないことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項27】
HDL増強物質を同定するための方法であって、前記方法が、動物に、請求項1、13、24あるいは49のいずれか一項に記載の分析を用いて調節活性を持つと分かった物質の有効量を投与し、前記投与の結果としての前記動物中の血漿HDL活性の増加を検出し、それによりHDL活性の増強に有用な物質を同定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法において、前記動物が前記物質の投与前に低HDL活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27記載の方法において、前記HDL増強活性が前記動物におけるHDLレベルの増加であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記HDLレベルの増加が血漿HDLレベルの増加であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29記載の方法において、前記動物がヒト患者であることを特徴とする方法。
【請求項32】
低HDL関連疾患に苦しむ動物における前記疾患を治療するための方法であって、前記方法が、前記動物に、請求項27記載の分析方法を用いてHDL増強活性を持つと分かった物質の有効量を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記動物がヒト患者であることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32記載の方法において、前記疾患が低HDL疾患、血管障害および異常脂質血症より成るグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項35】
試験化合物の調節活性に関する試験データを生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、遺伝子95ポリヌクレオチドあるいは遺伝子95ポリペプチド、もしくは遺伝子95プロモーターに作動可能に結合するレポーター遺伝子を含むポリヌクレオチド構成体と、前記ポリヌクレオチドあるいはレポーター遺伝子が転写され、あるいは前記ポリペプチドが活性化する条件下で接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性、あるいは前記ポリヌクレオチドあるいはレポーター遺伝子の転写の変化を測定し、
(c)測定されたポリヌクレオチドあるいはレポーター遺伝子の転写の変化あるいは測定されたポリペプチドの活性の変化に基づく前記試験化合物の調節活性に関する試験データを生成することを含み、
ここで前記変化が調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項36】
心疾患の治療あるいは予防のための方法であって、前記方法が、心疾患の治療あるいは予防を必要とする患者に遺伝子95タンパク質生物学的活性あるいは発現を調節する化合物の治療線量あるいは予防線量を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
治療物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)化学物質を、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドと、前記ポリヌクレオチドの発現を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリヌクレオチドの発現の変化を測定することを含み、
ここで前記発現の変化が、治療物質を同定することを特徴とする方法。
【請求項38】
in vivoで高比重リポタンパク質(HDL)活性に作用するポリペプチドの活性を調節する治療物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化合物を、遺伝子95に相当するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと、前記ポリペプチドの活性を支持する条件下で接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定することを含み、
ここで前記活性の変化が、前記試験化合物を、HDL活性に作用するポリペプチドの活性を調節する治療物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、前記ポリペプチドが配列番号4に相当することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項38記載の方法において、前記ポリヌクレオチドが配列番号3に相当することを特徴とする方法。
【請求項41】
ポリヌクレオチド配列あるいはポリヌクレオチド配列の完全相補体を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチド配列が配列番号3と最低95%同一であることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項42】
配列番号4に示されたアミノ酸配列を持つポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項43】
配列番号3に示された配列を持つポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項44】
配列番号4に示されたアミノ酸配列との最低95%の同一性を持つアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項45】
請求項44記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記単離されたポリペプチドが、配列番号4に示されたアミノ酸配列との最低95%の同一性を持つアミノ酸配列を含むことを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項46】
配列番号4に示されたアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項47】
配列番号4に示されたアミノ酸配列より成る単離されたポリペプチド。
【請求項48】
請求項41記載の単離されたポリヌクレオチドを含む核酸ベクター。
【請求項49】
請求項48記載のベクターを含む組換え宿主細胞。
【請求項50】
配列番号4のポリペプチドを産生するための方法であって、前記方法が、請求項49記載の宿主細胞を、前記ポリペプチドの産生を支持する条件下で培養することを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−504407(P2006−504407A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−518026(P2004−518026)
【出願日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/020410
【国際公開番号】WO2004/003159
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(503449801)ゼノン ファーマスーティカルス,インコーポレイテッド (1)
【出願人】(391011308)ワーナー−ランバート・カンパニー、リミテッド、ライアビリティ、カンパニー (37)
【氏名又は名称原語表記】WARNER−LAMBERT COMPANYLLC
【Fターム(参考)】