説明

血糖降下作用増強剤

【課題】 血糖降下剤の血糖降下作用を効果的に増強させる血糖降下作用増強剤を提供する。
【解決手段】 ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖降下剤の血糖降下作用を増強させる血糖降下作用増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変化により、糖尿病、肥満等の生活習慣病(成人病)患者又はその予備軍が増加している。例えば糖尿病は、糖代謝の異常によって起こる疾患であり、血糖値(血液中のグルコース濃度)が病的に高まることによって、様々な特徴的な合併症をきたす危険性のある疾患である。糖尿病の治療においては食事療法が必須であるが、食事療法のみで充分な効果が得られないときは、インスリン又は経口血糖降下剤が使用される。
【0003】
経口血糖降下剤の1つであるα−グルコシダーゼ(二糖類分解酵素)阻害剤は、二糖類から単糖類への分解、吸収を遅らせる作用を有するため、腸管でのデンプン等の糖類の消化吸収を遅らせることにより、食後の血糖上昇を抑えることができる薬剤である。しかしながら、α−グルコシダーゼ阻害剤は、食事以外の高血糖の治療には有効ではなく、空腹時の血糖値を下げることはできなかった。このため、このような血糖降下剤の血糖降下作用をより増強させることが望まれていた。また、α−グルコシダーゼ阻害剤は、鼓腸、膨満感、腹部不快感、下痢などの強い副作用があった。
【0004】
特許文献1には、α−グルコシダーゼ阻害作用物質と非病原性の乳酸産生生菌を組み合せてなる糖消化抑制剤、及び糖消化抑制組成物が開示されている。特許文献1では、α−グルコシダーゼ阻害作用物質に乳酸産生生菌を組み合せることにより、下痢等を防止することができたとされている。非特許文献1には、アカルボースと共に乳酸菌L.casei YIT9029を投与すると、腹部膨満等のアカルボースによる副作用が改善されたことが開示されている。また、特許文献2及び3には、副作用の恐れがなく、肥満を防止又は改善し、かつ、糖尿病等の生活習慣病を予防又は改善するための健康食品用組成物として、α−グルコシダーゼ活性阻害作用を有する成分、乳酸菌等の腸内環境改善作用を有する成分等を含有する健康食品用組成物が開示されている。特許文献2及び3では、乳酸菌等の腸内環境改善作用を有する成分を含有することにより、腸内の腐敗が抑制され、便通を整え、便秘を防ぐ効果があるので、肥満の解消、大腸がんの予防も期待されるとされている。特許文献4には、乳酸菌菌体を有効成分として含有する血糖降下剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4及び非特許文献1には、血糖降下剤の血糖降下作用を増強させることについては開示がなく、糖尿病、肥満等の生活習慣病の予防又は治療に有用な、より優れた血糖降下作用が得られるようにするための改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−2647号公報
【特許文献2】特開2007−330124号公報
【特許文献3】特開2006−20606号公報
【特許文献4】特開平10−7577号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】成宮 学 他、「アカルボースの乳酸菌製剤の併用による腸内細菌叢の改善と腹部症状の改善効果についての検討」、臨床と研究 83巻、8号、149−154頁、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、血糖降下剤の血糖降下作用を効果的に増強させる血糖降下作用増強剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ね、種々の物質について血糖降下作用を検討した結果、α−グルコシダーゼ阻害剤及び乳酸菌等の菌を動物に投与すると、α−グルコシダーゼ阻害剤と乳酸菌等の菌との特異的な相乗効果によって、絶食下において血中グルコース値(血中グルコース濃度)を有意に低下させることができることを見出した。α−グルコシダーゼ阻害剤及び乳酸菌等の菌をそれぞれ単独で投与した場合には、いずれの場合にも血中グルコース値を有意に低下させず、α−グルコシダーゼ阻害剤と乳酸菌等の菌とを併用した場合に、絶食下における血糖降下作用が相乗的に増強されることは、新しい知見であった。
【0010】
本発明者らはさらに、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において、単糖であるグルコースを経口投与した場合にも、α−グルコシダーゼ阻害剤と乳酸菌等の菌とを併用することによって血糖降下効果が相乗的に増強され、血中グルコース値を有意に低下させることができることを見出した。なお、α−グルコシダーゼ阻害剤のみを投与した場合及び乳酸菌等の菌のみを投与した場合には、いずれもOGTTにおいて血中グルコース値をほとんど低下させなかった。これらの知見から本発明者らは、α−グルコシダーゼ阻害剤と乳酸菌等の菌とを組み合わせた場合、血糖降下作用が相乗的に増強されることを見出した。
【0011】
絶食下における消化管の二糖類は、食後と比較して少ないと考えられること、及び経口ブドウ糖負荷試験では単糖であるグルコースを投与することから、乳酸菌等の菌とα−グルコシダーゼ阻害剤との併用により得られる優れた血糖降下作用は、α−グルコシダーゼ阻害剤による二糖類の分解抑制が増強されたためでなく、乳酸菌等の菌とα−グルコシダーゼ阻害剤を併用することで初めて、絶食下及びグルコース負荷状態における血糖降下作用が相乗的に増強されたためであると考えられる。さらに、α−グルコシダーゼ阻害剤と乳酸菌等の菌とを組み合わせて投与する場合には、α−グルコシダーゼ阻害剤の投与量を通常用いられる投与量より少なくしても、絶食下及び糖負荷状態のいずれにおいても効果的に血中グルコース値を低下させることができることを見出し、副作用を軽減しつつ、血糖降下作用を効果的に増強させることができることに想到した。
【0012】
さらに、武田薬品工業社の「ベイスン錠(商品名)開発経緯3.インスリン分泌、膵島病変に対する影響」(http://www2.takedamed.com/content/search/doc1/067/kaihatsu/kai067_4.html)によると、耐糖能異常を特徴とするGKラットにα−グルコシダーゼ阻害剤であるボグリボースを混餌投与(0.005%:4.1mg/kg/日)して9週間飼育すると耐糖能の改善が認められたとされている。一方、本発明者らは耐糖能異常を示すKK−Aマウスにボグリボースを混餌投与(0.0003%:0.6mg/kg/日)して6週間飼育した際には耐糖能の改善は認められないものの、この飼料にビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を追加することにより6週間の飼育で耐糖能の改善が認められることを見出した。このことは、α−グルコシダーゼ阻害剤と乳酸菌等とを併用することにより、α−グルコシダーゼ阻害剤を単独で投与した場合よりも少量で、かつ短期間投与で有効な血糖降下効果が得られることを示すものである。
本発明者らは、上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)に関する。
(1)ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強剤。
(2)さらに、α−グルコシダーゼ阻害剤を含む前記(1)に記載の血糖降下作用増強剤。
(3)α−グルコシダーゼ阻害剤が、一般式(I)
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Aは、水酸基、フェノキシ、チエニル、フリル、ピリジル、シクロヘキシル、置換されていてもよいフェニル基を有しうる炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、水酸基、ヒドロキシメチル基、メチル基、アミノ基を有しうる炭素数5又は6員の環状炭化水素基又は糖残基を示す)で表わされるバリオールアミン誘導体、一般式(II)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリエナミンN−置換誘導体、一般式(III)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリダミンのN−置換誘導体、又は一般式(IV)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分枝状若しくは環式の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素環、芳香環又はヘテロ環であり、Rは、−H、−OH、−OR′、−SH、−SR′、−NH、−NHR′、−N(R′)(R′′)、NHCH−、NHR′−CH−、NR′R′′−CH−、−COOH、−COOR′、HO−CH−、R′CO−NHCH−、R′CO−NR′′CH−、R′SONHCH−、R′SO−NR′′CH−、R′−NH−CO−NH−CH−、R′−NH−CS−NH−CH−R′−O−CO−NH−CH−、−SOH、−CN、−CONH、−CONHR′又は−CONR′R′′であり、R′及びR′′は、同一又は異なって、それぞれRと同義である。Rが−CHOHであり、かつRが水素原子又は−OHである場合;Rが水素原子であり、かつRが水素原子、−OH、−SOH、−CN又−CH−NHである場合;又はRが−CH−NHであり、かつRが−OHである場合には、Rは、水素原子でない。)で表わされる3,4,5−トリヒドロキシピペリジンである前記(1)又は(2)に記載の血糖降下作用増強剤。
【0022】
(4)α−グルコシダーゼ阻害剤を含むことを特徴とするビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用増強剤。
(5)さらに、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含む前記(4)に記載の血糖降下作用増強剤。
(6)α−グルコシダーゼ阻害剤が、前記一般式(I)で表わされるバリオールアミン誘導体、前記一般式(II)で表わされるバリエナミンN−置換誘導体、前記一般式(III)で表わされるバリダミンのN−置換誘導体、又は、前記一般式(IV)で表わされる3,4,5−トリヒドロキシピペリジンである前記(4)又は(5)に記載の血糖降下作用増強剤。
【0023】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の血糖降下作用増強剤を含むことを特徴とする医薬品。
(8)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の血糖降下作用増強剤を含むことを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強用飲食品組成物。
(9)前記(4)〜(6)のいずれかに記載の血糖降下作用増強剤を含むことを特徴とするビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用増強用飲食品組成物。
(10)α−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用を増強するための、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の使用。
(11)ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用を増強するための、α−グルコシダーゼ阻害剤の使用。
(12) ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用の発現促進剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明の血糖降下作用増強剤は、血糖降下剤の血糖降下作用を相乗的に増強することができるため、糖尿病、肥満等の生活習慣病の予防又は改善に有効である。さらに、血糖降下剤の血糖降下作用を相乗的に増強させることにより、その投与量を低減させることができることから、血糖降下剤による副作用を軽減することもできる。さらに、α−グルコシダーゼ阻害剤の投与を通常使用されるよりも少量かつ短期間としても優れた血糖降下効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、糖尿病モデルマウスの空腹時血糖上昇に対する本発明の血糖降下作用増強剤の抑制効果を示す図である。
【図2】図2は、糖尿病モデルマウスにおける糖負荷後の血糖値上昇に対する本発明の血糖降下作用増強剤の抑制効果を示す図である。
【図3】図3は、糖尿病モデルマウスにおける糖負荷後の血糖値の曲線下面積(AUC)を指標とした、本発明の血糖降下作用増強剤の血糖値上昇抑制効果を示す図である。
【図4】図4は、4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置におけるノズルエッジ部分の内部構造を示す図である。
【図5】図5は、糖尿病モデルマウスにおける糖負荷後の血糖値上昇に対する本発明の血糖降下作用増強剤の抑制効果を示す図である。
【図6】図6は、糖尿病モデルマウスにおける糖負荷後の血糖値の曲線下面積(AUC)を指標とした、本発明の血糖降下作用増強剤の血糖値上昇抑制効果を示す図である。
【図7】図7は、糖尿病モデルマウスにおける糖負荷後の血糖値上昇に対する本発明の血糖降下作用増強剤の抑制効果を示す図である。
【図8】図8は、糖尿病モデルマウスにおける糖負荷後の血糖値の曲線下面積(AUC)を指標とした、本発明の血糖降下作用増強剤の血糖値上昇抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第一の態様の血糖降下作用増強剤(以下、単に「本発明1の血糖降下作用増強剤」、ともいう)は、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強剤である。該菌を含むことにより、α−グルコシダーゼ阻害剤の血糖降下作用を増強させることができる。本発明1の血糖降下作用増強剤は、さらに、α−グルコシダーゼ阻害剤を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の第二の態様の血糖降下作用増強剤(以下、単に「本発明2の血糖降下作用増強剤」、ともいう)は、α−グルコシダーゼ阻害剤を含むビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用増強剤である。α−グルコシダーゼ阻害剤を含むことにより、上記菌が有する血糖降下作用を増強させることができる。本発明2の血糖降下作用増強剤は、さらに、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことが好ましい。
【0028】
本発明1の血糖降下作用増強剤及び本発明2の血糖降下作用増強剤(以下、これらを「本発明の血糖降下作用増強剤」ともいう)においては、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とα−グルコシダーゼ阻害剤とを組合わせて用いることにより、該菌及び/又はα−グルコシダーゼ阻害剤の血糖降下作用を特異的に、相乗的に増強することができ、優れた血糖降下作用を発揮することができる。従って、本発明の血糖降下作用増強剤を用いると、糖尿病、肥満等の生活習慣病を効果的に予防又は改善することができる。また、α−グルコシダーゼ阻害剤と上記菌とを組合わせて用いることにより、α−グルコシダーゼ阻害剤の投与量を通常用いられる量より少なくしても、効果的に血中グルコース値を低下させることができるため、副作用を軽減しつつ、血糖降下作用を効果的に増強させることができる。さらに、α−グルコシダーゼ阻害剤の投与量を、その血糖降下作用を発揮させることを目的として通常用いられる量(単独で用いられる量)より少量としても、短期間で優れた血糖降下作用を発揮させることができる。
【0029】
本発明において、「予防」には発症を抑制する又は遅延させることが含まれる。「改善」には、症状又は疾病を完全に治癒させることの他、症状を緩和することも含まれる。
【0030】
本発明の血糖降下作用増強剤について、さらに詳細に説明する。
本発明において使用されるα−グルコシダーゼ阻害剤としては、例えば、特開昭57−200335号公報、特開昭58−59946号公報、特開昭58−162597号公報、特開昭58−216145号公報、特開昭59−73549号公報、特開昭59−95297号公報、特公平7−2647号公報、特開平11−236337号公報等の明細書に記載の一般式(I)
【0031】
【化5】

(式中、Aは、水酸基、フェノキシ、チエニル、フリル、ピリジル、シクロヘキシル、置換されていてもよいフェニル基を有しうる炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、水酸基、ヒドロキシメチル基、メチル基、アミノ基を有しうる炭素数5又は6員の環状炭化水素基又は糖残基を示す)で表わされるバリオールアミン誘導体が好ましい。
【0032】
上記一般式(I)におけるAには、例えば、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基が含まれ、置換されていてもよいフェニル基には、例えば低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、フェニル等により置換されていてもよいフェニル基が含まれる。
【0033】
糖残基とは糖類の分子から水素原子1個を除いた残りの基を意味し、例えば単糖類、少糖類から導かれた糖残基が挙げられる。
【0034】
上記一般式(I)で表わされるN−置換バリオールアミン誘導体の具体例としては(1)N−フェネチルバリオールアミン、(2)N−(3−フェニルアリル)バイオールアミン、(3)N−フルフリルバイオールアミン、(4)N−チエニルバリオールアミン、(5)N−(3−ピリジルメチル)バリオールアミン、(6)N−(4−ブロモベンジル)バイオールアミン、(7)N−[(R)−β−ヒドロキシフェネチル]バリオールアミン、(8)N−[(S)−β−ヒドロキシフェネチル]バリオールアミン、(9)N−(β−ヒドロキシ−2−メトキシフェネチル)バイオールアミン、(10)N−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)バイオールアミン、(11)N−(シクロヘキシルメチル)バリオールアミン、(12)N−ゲラニルバリオールアミン、(13)N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)バリオールアミン、(14)N−(1,3−ジヒドロキシ−1−フェニル−2−プロピル)バリオールアミン、(15)N−[(R)−α−(ヒドロキシメチル)ベンジル]バイオールアミン、(16)N−シクロヘキシルバリオールアミン、(17)N−(2−ヒドロキシシクロヘキシル)バリオールアミン、(18)N−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]バリオールアミン、(19)N−(2−ヒドロキシシクロペンチル)バリオールアミン、(20)メチル 4−[(1S,2S)−(2,4,5(OH)/3,5)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]アミノ−4,6−ジデオキシ−α−D−グルコビラノシド、(21)メチル 4−[(1S,2S)−(2,4,5(OH)/3,5)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]アミノ−4−デオキシ−α−D−グルコピラノシド、(22)[(1S,2S)−(2,4,5(OH)/3,5)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル][(1R,2S)−(2,6/3,4)−4−アミノ−2,3−ジヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]アミン、(23)N−[(1R,2S)−(2,4/3,5)−2,3,4−トリヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]バリオールアミン、(24)N−[(1R,2S)−(2,6/3,4)−4−アミノ−2,3−ジヒドロキシ−6−メチルシクロヘキシル]バリオールアミン、(25)N−[(1R,2S)−(2,6/3,4)−2,3,4−トリヒドロキシ−6−メチルシクロヘキシル]バリオールアミン、(26)N−[(1R,2S)−(2,4,6/3)−2,3,4−トリヒドロキシ−6−メチルシクロヘキシル]バリオールアミン、(27)4−O−α−[4−[((1S)−(1,2,4,5(OH)/3,5)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル)アミノ]−4,6−ジデオキシ−D−グルコピラノシル]−D−グルコピラノース、(28)1,6−アンヒドロ−4−O−α−[4−[((1S)−(1,2,4,5(OH)/3,5)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−5−C−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル)アミノ]−4,6−ジデオキシ−D−グルコピラノシル]−β−D−グルコピラノースなどが挙げられる。
【0035】
中でも、N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)バリオールアミン、すなわち[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]バリオールアミン又は1L(1S)−(1(OH),2,4,5/1,3)−5−[[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]アミノ]−1−C−(ヒドロキシメチル)−1,2,3,4−シクロヘキサンテトロール(一般名:ボグリボース)が特に好ましい。
【0036】
本発明におけるα−グルコシダーゼ阻害剤として、特開昭57−64648号公報等に記載の一般式(II)
【0037】
【化6】

【0038】
(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリエナミンN−置換誘導体、特開昭57−114554号公報等に記載の一般式(III)
【0039】
【化7】

【0040】
(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリダミンのN−置換誘導体等も好適に使用される。上記一般式(II)で表わされるバリエナミンN−置換誘導体としては、アカルボース(一般名)[BAYg5421、ナツールヴイツセンシヤフテン(Naturwissenschaften)、第64巻、535〜537頁(1977年)、特公昭54−39474号公報](化学名:O−4,6−ジデオキシ−4−[[(1S,4R,5S,6S)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]アミノ]−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコピラノース)が好ましい。
【0041】
本発明におけるα−グルコシダーゼ阻害剤として、米国特許第4,639,436号の明細書等に記載されている一般式(IV)
【0042】
【化8】

【0043】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分枝状若しくは環式の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素環、芳香環又はヘテロ環であり、Rは、−H、−OH、−OR′、−SH、−SR′、−NH、−NHR′、−N(R′)(R′′)、NHCH−、NHR′−CH−、NR′R′′−CH−、−COOH、−COOR′、HO−CH−、R′CO−NHCH−、R′CO−NR′′CH−、R′SONHCH−、R′SO−NR′′CH−、R′−NH−CO−NH−CH−、R′−NH−CS−NH−CH−R′−O−CO−NH−CH−、−SOH、−CN、−CONH、−CONHR′又は−CONR′R′′であり、R′及びR′′は、同一又は異なって、それぞれRと同義である。Rが−CHOHであり、かつRが水素原子又は−OHである場合;Rが水素原子であり、かつRが水素原子、−OH、−SOH、−CN又−CH−NHである場合;又はRが−CH−NHであり、かつRが−OHである場合には、Rは、水素原子(−H)でない。)で表わされる3,4,5−トリヒドロキシピペリジンも好適である。
【0044】
一般式(IV)のR及びRにおいて、置換されていてもよい直鎖状、分岐若しくは環式の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。R、R′及びR′′は、同一又は異なって、好ましくは、炭素数1〜30(より好ましくは炭素数1〜18、さらに好ましくは炭素数1〜10)の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜18の置換されていてもよいアルケニル基、炭素原子、置換されていてもよい炭素数3〜10の単環式、二環式又は三環式の脂肪族炭化水素、芳香環、ヘテロ環等である。中でも、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。置換基としては、水酸基等が好ましい。Rは、好ましくは、水素原子、−CH、−CHOH、−CH−NH、NHR′−CH−、NR′R′′CH−、R′CONH−CH−、R′CO−NR′′CH−、X−CH−(Xは、ハロゲン原子を表す)、R′O−CH−、R′COOCH−、R′SOO−CH−、R′SONHCH−、R′SO−NR′′CH−、R′NH−CO−NH−CH−、R′NHCS−NH−CH−、R′O−CO−NH−CH−、−CN、−COOH、−COOR′、−CONH、−CONHR′又は−CONR′R′′(R′及びR′′は、同一又は異なって、それぞれ上記と同様に、Rと同義である)である。
【0045】
一般式(IV)で表わされる3,4,5−トリヒドロキシピペリジンとしては、Rが−CH−CH−OHであり、Rが水素原子であり、Rが−CH−OHである化合物(一般名:ミグリトール、化学名:(−)−(2R,3R,4R,5S)−1−(2−ヒドロキシメチル)ピペリジン−3,4,5−トリオール)が特に好ましい。
【0046】
さらに、トレスタチン[(trestatin)、ザ・ジャーナル・オブ・アンテイバイオテイクス(J.Antibiotics)第36巻、1157〜1175頁(1983年)及び第37巻、182〜186頁(1984年)、特開昭54−163511号公報]、アデイポシン[(adiposins)、ザ・ジャーナル・オブ・アンテイバイオテイクス(J.Antibiotics)第35巻、1234〜1236頁(1982年);澱粉化学(J.Jap,Soc.Starch Sci.)第26巻、134〜144頁(1979年)、第27巻、107〜113頁(1980年);特開昭54−106402号公報;特開昭54−106403号公報;特開昭55−64509号公報;特開昭56−123986号公報;特開昭56−125398号公報]、アミロスタチン[(amylostatins)、アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric.Biol.Chem.)第46巻、1941〜1945頁(1982年);特開昭50−123891号公報;特開昭55−71494号公報;特開昭55−157595号公報]、オリゴスタチン[(oligostatins)、SF−1130X、特開昭53−26398号公報;特開昭56−43294号公報、ザ・ジャーナル・オブ・アンテイバイオテイクス(J.Antibiotics)、第34巻、1424〜1433頁(1981年)]、アミノ糖化合物(特開昭54−92909号公報)などが使用できる。なお、上記の化合物を含む微生物起源のα−グルコシダーゼ阻害物質については、エー・トルシヤイト(E.Truscheit)らの総説[アンゲバンテ・ヘミー(Angewandte Chemie)第93巻、738〜755頁(1981年)]が報告されている。これらの化合物も、本発明におけるα−グルコシダーゼ阻害剤として使用することができる。
【0047】
さらにまた、アカルボース(acarbose)及びオリゴスタチンC(oligostatins C)のメタノリシスにより得られるメチル4−[(1S,6S)−(4,6/5)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2−シクロヘキセン−1−イル]アミノ−4,6−ジデオキシ−α−D−グルコピラノシド[第182回アメリカ化学会講演要旨集(182nd ACS National meeting Abstracts paper)MEDI 69、1981年8月、ニューヨーク;ザ・ジャーナル・オブ・アンテイバイオテイクス(J.Antibiotics)、第34巻、1429〜1433頁(1981年);及び特開昭57−24397号公報]、1−デオキシノジリマイシン[(1−deoxynojirimycin)、ナツ−ルヴイツセンシヤフテン(Naturwissenschaften)、第66巻、584〜585頁(1979年)]及びそのN−置換誘導体、例えば、BAYo1248[ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)、第14巻(2−II)、47(1984);ダイアベトロジア第27巻(2)、288A、346A、323A(1984)]なども、本発明におけるα−グルコシダーゼ阻害剤として使用しうる。
【0048】
本発明におけるα−グルコシダーゼ阻害剤としては、ボグリボース(一般名)、アカルボース(一般名)又はミグリトール(一般名)が特に好ましく、ボグリボース又はアカルボースが最も好ましい。
【0049】
さらに、本発明におけるα−グルコシダーゼ阻害剤としては、上述した化合物以外に、通常飲食品に使用されるα−グルコシダーゼ阻害作用を有する物質も好適である。このような物質として、例えば、マルスエキス、サラシア、桑葉エキス及び茶種エキスの中から選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0050】
マルスエキスは、植物の抽出成分で、α−グルコシダーゼ活性を阻害して、糖質の体外排出を促す作用をする。また、サラシアは、スリランカで自生するニシキギ科のツル性の植物で、成分サラシノールは、インドでは約5000年前から根を茶として飲むことでダイエットに利用していたと言われており、糖尿病に有用なものとされている。茶種(TS)エキスは、お茶の成分の一つで、消化管で糖を吸収するのに必要なグリコシターゼ活性を阻害することにより、糖分(グルコース)の吸収を強力に阻害する。この作用により、糖質からの摂取エネルギーを減少させ、摂取カロリーと消費カロリーのバランスを整える。茶種エキスとしては、茶種(TS)エキス(商品名、タングルウッド社製)等が好ましい。
【0051】
本発明において使用される菌は、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌であって、具体的には例えば、Bifidobacterium bifidum、B. longum、 B. breve、B. adolescentis、B. infantis、B.pseudolongum、B.thermophilum等のビフィズス菌;例えば、Lactobacillus acidophilus、L. casei、L. gasseri、L. plantarum、L. delbrueckii subsp bulgaricus、L. delbrueckii subsp lactis、L. fermentum、L. helveticus、L. johnsonii、L. paracasei subsp. paracasei、L. reuteri、L. rhamnosus、L. salivarius、L. brevis等の乳酸桿菌;例えば、Leuconostoc mesenteroides、Streptococcus(Enterococcus) faecalis、Streptococcus(Enterococcus) faecium、 Streptococcus(Enterococcus) hirae、Streptococcus thermophilus、 Lactococcus lactis、L. cremoris、Tetragenococcus halophilus、Pediococcus acidilactici、P. pentosaceus、Oenococcus oeni等の乳酸球菌;例えば、Bacillus subtilis、Bacillus mesentericus、Bacillus polyformenticus等の糖化菌;例えば、Bacillus coagulans等の有胞子性乳酸菌; Bacillus toyoi、B.licheniformis、Clostridium butyricum等の酪酸菌;その他の有用菌が挙げられる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0052】
本発明で使用する菌としては、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌が好ましく、ビフィズス菌、乳酸菌及び糖化菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌がより好ましく、乳酸菌及び/又はビフィズス菌がさらに好ましい。中でも、ビフィズス菌がより好ましく、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium breveがさらに好ましく、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longumが特に好ましい。複数の菌を組み合わせて使用する場合には、ビフィズス菌と乳酸菌と糖化菌、ビフィズス菌と乳酸菌、ビフィズス菌と糖化菌、又は乳酸菌と糖化菌の組み合わせが好ましく、(i)Bifidobacterium bifidum、(ii)Lactobacillus acidophilus、(iii)Lactobacillus gasseri、(iv)Streptococcus(Enterococcus) faecalis、(v)Streptococcus(Enterococcus) faecium、(vi)Bacillus subtilis、(vii)Bacillus mesentericusの(i)〜(vii)のうちの2種以上の組み合わせが好ましく、中でも、(i)Bifidobacterium bifidum G9-1、(ii)Lactobacillus acidophilus KS-13、(iii)Lactobacillus gasseri、(iv)Streptococcus(Enterococcus) faecalis 129 BIO 3B、(v)Streptococcus(Enterococcus) faecium、(vi)Bacillus subtilis 129 BIO H(α)、(vii)Bacillus mesentericusの(i)〜(vii)のうちの2種以上の組み合わせがより好ましい。本発明における菌として、Bifidobacterium bifidum G9-1、Lactobacillus acidophilus KS-13、Streptococcus(Enterococcus) faecalis 129 BIO 3B、及びBacillus subtilis 129 BIO H(α)からなる群より選択される1又は2以上がさらに好ましく、Bifidobacterium bifidum G9-1、Streptococcus(Enterococcus) faecalis 129 BIO 3B、及びBacillus subtilis 129 BIO H(α)からなる群より選択される1又は2以上が特に好ましい。ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌のうちの2種以上を組み合わせて用いる場合の配合比率は特に限定されない。
【0053】
上記菌体は、公知の条件又はそれに準じる条件で培養することにより得ることができる。例えば、ビフィズス菌又は乳酸菌の場合は、通常、グルコ−ス、酵母エキス、及びペプトン等を含む液体培地で前記ビフィズス菌や乳酸菌の1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気又は嫌気培養し、培養液から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。また、糖化菌の場合は、通常、肉エキス、カゼイン製ペプトン、塩化ナトリウム等を含む寒天培地で1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気培養し、培地から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。
【0054】
本発明において用いるビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌としては、生菌が好ましいが、菌の処理物を用いてもよい。菌の処理物とは、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌に何らかの処理を加えたものをいい、その処理は特に限定されない。該処理物として具体的には、該菌体の超音波などによる破砕液、該菌体の培養液又は培養上清、それらを濾過又は遠心分離など固液分離手段によって分離した固体残渣などが挙げられる。また、細胞壁を酵素又は機械的手段により除去した処理液、トリクロロ酢酸処理又は塩析処理などして得られるタンパク質複合体(タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質など)又はペプチド複合体(ペプチド、糖ペプチド等)なども該処理物として挙げられる。さらに、これらの濃縮物、これらの希釈物又はこれらの乾燥物なども該処理物に含まれる。また、該菌体の超音波などによる破砕液、該細胞の培養液又は培養上清などに対し、例えば各種クロマトグラフィーによる分離などの処理をさらに加えたものも本発明における該処理物に含まれる。ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の死菌体も本発明における該処理物に含まれる。前記死菌体は、例えば、酵素処理、約100℃程度の熱をかける加熱処理、抗生物質などの薬物による処理、ホルマリンなどの化学物質による処理、γ線などの放射線による処理などにより得ることができる。
【0055】
本発明において使用される菌は、乾燥物(菌体乾燥物)であってもよく、菌体乾燥物としては、シングルミクロンの菌体乾燥物が好ましい。菌体乾燥物とは、通常は乾燥された個々の菌体又は乾燥された菌体の集合物をいう。また、シングルミクロンとは、小数第1位を四捨五入して1〜10μmをいう。本発明に使用されるビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌として、シングルミクロンの菌体乾燥物を使用すると、製剤中の生菌率が上がるため、血糖降下作用増強効果が高まる結果、糖尿病、肥満等の生活習慣病の予防及び改善効果が高くなる。
【0056】
菌体乾燥物の好ましい製造方法について説明する。上記菌体を溶媒に分散して菌体液とする。溶媒は、当業界で用いられる公知の溶媒を用いてよいが、水が好ましい。また、所望によりエタノールを加えてよい。エタノールを加えることによって、最初にエタノールが気化し、ついで水が気化するから、段階的な乾燥が可能となる。さらに、菌体液は、懸濁液であってもよい。溶媒は上記で示したものと同じでよい。また、懸濁させる際、懸濁剤、例えばアルギン酸ナトリウム等を使用してもよい。
また、上記菌体液には、さらに保護剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、又は静電気防止剤など当業界で一般に用いられている添加剤を通常の配合割合で添加してもよい。
【0057】
上記菌体液を、菌体乾燥物を製造するために噴霧乾燥装置による乾燥操作に付する。噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できる微粒化装置を備えた噴霧乾燥装置が好ましい。非常に粒径の小さな噴霧液滴にすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなり、乾燥温風との接触が効率よく行われるため、生産性が向上する。
ここでシングルミクロンの液滴とは、噴霧液滴の粒径が小数第1位を四捨五入して1〜10μmであるものをいう。
【0058】
噴霧乾燥装置には、微粒化装置が、例えばロータリーアトマイザー(回転円盤)、加圧ノズル、又は圧縮気体の力を利用した2流体ノズルや4流体ノズルである噴霧乾燥装置が挙げられる。
噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できるものであれば、上記形式のいずれの噴霧乾燥装置であってもよいが、4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置を使用するのが好ましい。
【0059】
4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置では、4流体ノズルの構造としては、気体流路と液体流路とを1系統として、これを2系統ノズルエッジにおいて対称に設けたもので、ノズルエッジに流体流動面となる斜面を構成している。
また、ノズルエッジの先端の衝突焦点に向かって、両サイドから圧縮気体と液体を一点に集合させる外部混合方式の装置がよい。この方式であれば、ノズル詰まりがなく長時間噴霧することが可能となる。
【0060】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置について図4を用いてさらに詳しく説明する。4流路ノズルのノズルエッジにおいて、液体流路3又は4から湧き出るように出た菌体液が、気体流路1又は2から出た高速気体流により流体流動面5で薄く引き伸ばされ、引き伸ばされた液体はノズルエッジ先端の衝突焦点6で発生する衝撃波で微粒化させることにより、シングルミクロンの噴霧液滴7を形成する。
【0061】
圧縮気体としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス等を用いることができる。とくに、酸化されやすいもの等を噴霧乾燥させる場合は、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。
圧縮気体の圧力としては、通常約1〜15kg重/cm、好ましくは約3〜8kg重/cmである。
ノズルにおける気体量は、ノズルエッジ1mmあたり、通常約1〜100L/分、好ましくは約10〜20L/分である。
【0062】
通常、その後、乾燥室において、その噴霧液滴に乾燥温風を接触させることで水分を蒸発させ菌体乾燥物を得る。
乾燥室の入り口温度は、通常約2〜400℃、好ましくは約5〜250℃、より好ましくは約5〜150℃である。入り口温度が約200〜400℃の高温であっても、水分の蒸発による気化熱により乾燥室内の温度はそれほど高くならず、また、乾燥室内の滞留時間を短くすることにより、生菌の死滅や損傷をある程度抑えることができる。
出口温度は、通常約0〜120℃、好ましくは約5〜90℃、より好ましくは約5〜70℃である。
【0063】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置では、液体流路が2流路あるので、異なった2種の菌体液又は菌体液と他の溶液若しくは懸濁液をそれぞれの液体流路から、同時に噴霧することにより、これらが混合された菌体乾燥物を製造できる。
例えば、異なった2種類の菌体の菌体液を同時に噴霧することにより、該2種の菌体を含有する菌体乾燥物が得られる。
【0064】
上記のように菌体乾燥物の粒径を小さくすることにより、生菌率が上がり、生菌率の多い製剤を提供できるという利点がある。
すなわち、シングルミクロンの菌体乾燥物を得るためにはシングルミクロンの噴霧液滴を噴霧するのが好ましい。噴霧液滴の粒径を小さくすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなるので、乾燥温風との接触が効率よく行われ、乾燥温風の熱による菌体の死滅又は損傷を極力抑えることができる。その結果として、生菌率が上がり生菌数の多い菌体乾燥物が得られる。
【0065】
本発明におけるビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌と、α−グルコシダーゼ阻害剤との組合わせは特に限定されないが、例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤が上記一般式(I)で表わされる化合物(好ましくは、ボグリボース(一般名))の場合、ビフィズス菌、乳酸菌及び糖化菌からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、中でも、ビフィズス菌が特に好ましく、ビフィズス菌と共に、乳酸菌及び/又は糖化菌を用いることも好ましい。α−グルコシダーゼ阻害剤が上記一般式(II)で表わされる化合物(好ましくは、アカルボース(一般名))の場合、乳酸菌、糖化菌及びビフィズス菌からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、中でも、乳酸菌及び/又は糖化菌がより好ましく、乳酸菌及び糖化菌が特に好ましい。乳酸菌及び糖化菌と共に、ビフィズス菌を用いてもよい。α−グルコシダーゼ阻害剤及び菌をこのような組合わせで用いると、α−グルコシダーゼ阻害剤及び/又は該菌の血糖降下作用を顕著に増強させることができる。
例えば、ビフィズス菌を含むボグリボースによる血糖降下作用増強剤、乳酸菌を含むアカルボースによる血糖降下作用増強剤、ボグリボースを含むビフィズス菌による血糖降下作用増強剤、アカルボースを含む乳酸菌による血糖降下作用増強剤等は、本発明の好ましい実施態様の1つである。
【0066】
本発明1の血糖降下作用増強剤は、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌と、他の成分とを混合することにより容易に製造される。本発明2の血糖降下作用増強剤は、上記α−グルコシダーゼ阻害剤と、他の成分とを混合することにより容易に製造される。他の成分は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。本発明の血糖降下作用増強剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の形態として用いることができる。このような、本発明の血糖降下作用増強剤を含む医薬品も、本発明の1つである。
【0067】
本発明において、α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とを組み合せて投与する方法としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤を含有する製剤(組成物)と、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含有する製剤(組成物)とを別々に調製し、両製剤を同時に、又は時を異にして投与する方法、α−グルコシダーゼ阻害剤及びビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の双方を含有する製剤(組成物)を投与する方法が挙げられるが、両成分を含有する製剤を調製して投与することが好ましい。
【0068】
α−グルコシダーゼ阻害剤、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌のそれぞれ単独を含有する製剤、両者を同時に含有する複合剤の剤形は、それぞれの成分の物理化学的性質、生物学的性質等を考慮して投与に好適な剤形とすればよい。医薬品の場合には、経口投与に適しており、内服剤とすることが好ましい。内服剤の剤型としては、例えば、錠剤、ペレット、細粒剤、散剤、顆粒剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等が挙げられる。中でも、錠剤又は散剤が好ましい。さらに、それぞれの製剤は、α−グルコシダーゼ阻害剤及び/又はビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の他に、賦形剤(例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース又はリン酸ナトリウム等)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えばデンプン、カルメロースナトリウム等)、滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、マクロゴール、ショ糖脂肪酸エステル等)、安定剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)、着色剤、賦香剤、光沢剤等、当業界で使用される公知の添加剤等を適宜含有していてもよい。製剤中に含まれるビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の量は、通常、最終製剤中に約0.000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。製剤中に含まれるα−グルコシダーゼ阻害剤の量は、通常、最終製剤中に約0.0001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0069】
α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とを含有する組成物の調製は、製剤の常法によって両成分を混合し、製造することができるが、その場合、該組成物におけるα−グルコシダーゼ阻害剤と、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の配合比率は、α−グルコシダーゼ阻害剤約0.05〜500mgに対し、該菌を約10〜1012個とすることが好ましく、α−グルコシダーゼ阻害剤約0.01〜300mgに対し、該菌を約10〜1011個とすることが特に好ましい。
【0070】
なお、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌は、一般に嫌気性で乾燥状態では空気又は酸素に対して弱く、また、高温と湿気に弱いため、組成物の製剤化に際してはできるだけ、不活性ガスの存在下又は真空、低温下で、処理することが好ましい。
【0071】
α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とを含有する組成物を固形製剤にする場合、乾燥法によって、単に粉末同士を混合してもよいし、またその粉末を圧縮して顆粒にしたり、錠剤にしたりしてもよい。湿式法により顆粒、錠剤を製造する場合は、結合剤の水溶液を用いて練合、乾燥し、目的の固形剤とすることができる。さらに、この様にして得られた粉末又は顆粒をカプセルに充填して、カプセル剤とすることもできる。
【0072】
例えば、錠剤を製造する場合は、公知の打錠機を用いるとよい。該打錠機としては、例えば単発式打錠機又はロータリー型打錠機等が挙げられる。また、丸剤、チュアブル剤又はトローチ剤の製造方法は、公知の方法に従って行われてよく、例えば錠剤を製造するのと同じ手段で作ることができる。
【0073】
微量の有効成分(α−グルコシダーゼ阻害剤及び/又はビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌)を大量の他の粉末と混合し均一な混合物を得るためには、いわゆる段階的混合法を採るのがよい。例えば、有効成分をその100〜200容量倍の粉末と混合して均一な粉末を得、これを残りの粉末と混合すると均一な粉末を得ることができる。
含水物からの乾燥には、L−乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などの手段をとることができる。ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の乾燥菌体を得るには、適当な安定剤、例えばグルタミン酸モノナトリウム塩、アドニトールなどを加えた中性の緩衝液に菌を懸濁させておき、自体公知の方法で乾燥することもできる。
【0074】
本発明において、α−グルコシダーゼ阻害剤の投与量は、通常約0.001〜500mg/大人/回、好ましくは約0.001〜100mg/大人/回、より好ましくは約0.002〜100mg/大人/回であり、これを通常1日2回〜4回食前1時間〜食後2時間の間に経口投与するのが好ましい。特にα−グルコシダーゼ阻害剤が上記一般式(I)で表わされるバイオールアミン誘導体である場合は、該化合物を通常約0.001〜20mg/大人/回(より好ましくは約0.002〜20mg/大人/回)、1日2〜4回の投与であり、これを好ましくは食前1時間〜食後2時間の間の適当な時期に経口投与するのが効果的である。
【0075】
本発明において、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の投与量は、生菌を用いる場合には、生菌の菌数にして通常約10〜1012個/大人/回、好ましくは10〜1010個/大人/回、より好ましくは10〜1010個/大人/回を含む製剤を、通常1日2〜4回、好ましくは食前約1時間〜食後約2時間の間に経口投与するのが効果的である。ここで、製剤中の生菌数の測定は菌体によって異なるが、例えば日本薬局方外医薬品規格に記載されたそれぞれの菌体の定量方法により容易に測定できる。
【0076】
本発明の血糖降下作用増強剤は、例えば、糖尿病、高血圧、高脂血症、循環器疾患、心臓疾患等の生活習慣病又はそのおそれのある個体(動物)に好適に適用することができる。また、肥満又は肥満予備軍の減量を必要とする個体も、好適な対象である。さらに、肥満を中心として糖尿病や高脂血症等の併発(メタボリックシンドローム)した個体又はそのおそれのある個体がより好適である。中でも、肥満及び/又は糖尿病を発症した個体又はそのおそれのある個体がより好適であり、肥満及び/又は糖尿病を発症した個体がさらに好適であり、糖尿病を発症した個体が特に好適である。個体としてはヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等の哺乳類が好ましく、特にヒトが好ましい。
【0077】
本発明の血糖降下作用増強剤は、少量の使用でも、α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌との併用によって、α−グルコシダーゼ阻害剤及び/又は前記菌の血糖降下作用が相乗的に増強されるので、肥満や糖尿病の予防、治療に有効なものであり、投与の方法も簡単で、しかも副作用がほとんどないものである。
【0078】
本発明1及び本発明2の血糖降下作用増強剤は、上述した医薬品として用いることができるほか、機能性食品、特定保健用食品又はドリンク剤などの飲食品として用いることができるものである。本発明1の血糖降下作用増強剤を含むα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強用飲食品組成物も、本発明の1つである。本発明2の血糖降下作用増強剤を含む乳酸菌による血糖降下作用増強用飲食品組成物も、本発明の1つである。本発明に係る飲食品組成物を、糖尿病、肥満等の生活習慣病又はそのおそれのあるヒトを含む哺乳動物に摂取させることにより、該生活習慣病を予防又は改善することができる。飲食品組成物中に含まれるビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の量は、通常、最終組成物中に約0.000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。飲食品組成物中に含まれるα−グルコシダーゼ阻害剤の量は、通常、最終組成物中に約0.0001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0079】
本発明において、α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とを摂取させる方法としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤を含有する組成物と、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含有する組成物とを別々に調製し、両組成物を同時に、又は時を異にして摂取させる方法、α−グルコシダーゼ阻害剤及びビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の双方を含有する組成物を摂取させる方法が挙げられるが、両成分を含有する組成物を調製して摂取させることが好ましい。
【0080】
本発明の血糖降下作用増強剤を飲食品組成物として用いる場合、その形態は特に限定されない。また、飲食品組成物は、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、又はドリンク剤等の加工形態とすることもできる。さらに、本発明にかかる飲食品組成物は、アルコール飲料又はミネラルウォーターに用時添加する易溶性製剤としてもよい。より具体的には、本発明に係る飲食品組成物は、例えばビスケット、クッキー、ケーキ、キャンディー、チョコレート、チューインガム、和菓子などの菓子類;パン、麺類、米飯又はその加工品;清酒、薬用酒などの発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネーズなどの畜農食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶などの飲料等の形態とすることができる。
【0081】
また、本発明に係る飲食品組成物は、例えば、医師の食事箋に基づく栄養士の管理の下に、病院給食の調理の際に任意の食品に本発明の飲食品組成物を加え、その場で調製した食品の形態で患者に与えることもできる。本発明の飲食品組成物は、液状であっても、粉末や顆粒などの固形状であってもよい。
【0082】
本発明に係る飲食品組成物は、食品分野で慣用の補助成分を含んでいてもよい。前記補助成分としては、例えば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、微量元素、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などが挙げられる。
【0083】
本発明に係る飲食品組成物の摂取量は、摂取する哺乳動物の生活習慣病の状態、年齢、性別などによって異なるので、一概には言えないが、α−グルコシダーゼ阻害剤及びビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を、それぞれ上述した医薬品の場合と同様の量摂取させることが好ましい。
【0084】
本発明は、α−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用を増強するための、乳酸菌の使用も包含する。本発明はさらに、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用を増強するための、α−グルコシダーゼ阻害剤の使用も包含する。本発明で用いられるα−グルコシダーゼ阻害剤、並びにビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌やその好ましい態様等は、上述した血糖降下作用増強剤におけるものと同様である。
【0085】
本発明は、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用の発現促進剤も包含する。α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とを併用することにより、α−グルコシダーゼ阻害剤の投与量を、該阻害剤がその血糖降下作用を発揮させる目的で単独で使用される場合より少量としても、該阻害剤を単独で通常使用される量使用した場合と比較して短期間の投与で有効な血糖降下効果を得ることができる。従って、上記菌とα−グルコシダーゼ阻害剤とを併用すると、α−グルコシダーゼ阻害剤の使用量を少なくしても、該阻害剤による血糖降下作用を短期間で効果的に発現させることができる。
【0086】
α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とを併用すると、例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤の投与量を1回につき約0.02〜100mgとし、この量を1日2〜4回食前に経口投与すると、投与開始から約4〜8週間後に有効な耐糖能改善作用が得られる。ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の好ましい使用量は、上述した血糖降下作用増強剤における使用量と同じである。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用の発現促進剤及びその好ましい態様は、上述したα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強剤と同様である。
【0087】
本発明は、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を、α−グルコシダーゼ阻害剤と組み合わせて動物に投与するα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用を増強させる方法も包含する。
本発明はまた、α−グルコシダーゼ阻害剤を、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌と組み合わせて動物に投与する前記菌の血糖降下作用を増強させる方法も包含する。
本発明はさらに、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を、α−グルコシダーゼ阻害剤と組み合わせて動物に投与するα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用の発現を促進する方法も包含する。
【0088】
本発明の方法における動物としては、上述した糖尿病、高血圧、高脂血症、循環器疾患、心臓疾患等の生活習慣病又はそのおそれのある個体(動物);肥満又は肥満予備軍の減量を必要とする個体;肥満を中心として糖尿病や高脂血症等の併発(メタボリックシンドローム)した個体又はそのおそれのある個体等が好適である。ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌、並びにα−グルコシダーゼ阻害剤の投与方法、投与量等は、上述した血糖降下作用増強剤における投与方法等と同じである。
【実施例】
【0089】
以下実施例を示してさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれによりなんら制限されるものではない。本実施例中、「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0090】
<実施例1>
(ビフィズス菌菌体乾燥物の調製及び該菌体乾燥物中の生菌数の測定)
1.菌(BBG9-1:Bifidobacterium bifidum G9-1)の調製方法
BBG9−1の菌体乾燥物の調製は以下のように行った。すなわち、BBG9−1の凍結保存菌株(ビオフェルミン製薬社保存菌株)を37℃で24時間静置培養後、ビフィズス菌試験用液体培地(1)(日本薬局方外医薬品規格「ビフィズス菌」の項に記載)にこの培養菌液をビフィズス菌試験用液体培地(1)100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間静置培養した。得られた培養菌液を遠心分離し、水で3回洗浄後、適量の水を加え、湿菌体1kgに対し、グルタミン酸塩0.1kg及びデキストリン0.5kgの割合で加えて噴霧乾燥装置にて菌体乾燥物とした。なお、ビフィズス菌BBG9−1株は、医療用医薬品のビオフェルミン錠剤(商品名、ビオフェルミン製薬社製)等の成分として含まれており、該錠剤等から通常行われる方法で精製することによって入手可能である。
【0091】
2.菌体乾燥物中の生菌数の測定
日本薬局方外医薬品規格「ビフィズス菌」の項に記載されているビフィズス菌の定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gを精密に量り、希釈液(2)30mL中に加え、強く振り混ぜ、更に同希釈液を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、この菌液1mLを正確に量り、別に正確に分注した同希釈液9mL中に加える操作(10倍希釈法)を繰り返し、1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったビフィズス菌試験用カンテン培地を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で48〜72時間嫌気培養し、出現したコロニー数及び希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。これにより求めた上記1.で得られた菌体乾燥物の菌数は、生菌数3.4×1011CFU/gであった。
【0092】
<実施例2>
(ビフィズス菌及びα−グルコシダーゼ阻害剤併用による血糖降下増強作用)
乳酸菌として実施例1の方法によって得たBBG9−1を、α−グルコシダーゼ阻害剤としてボグリボースを、それぞれ用いた。ボグリボースとしては、ベイスン(登録商標)錠0.2(武田薬品工業社製)を粉砕したものを用いた。
【0093】
雌性KK−Aマウス(系統名KK−A/TaJcl)を8週齢で購入後(日本クレア社より購入)、個別ケージにて2週間の予備飼育を行った。KK−Aマウスは、糖尿病のモデルマウスである。予備飼育期間中は市販の粉末飼料(商品名CE−2:日本クレア社製)及び上水道水を自由摂取させた。実験開始日には経口糖負荷試験(OGTT)を実施した。すなわち、OGTT実施の前日より絶食とし、実施当日グルコース溶液(2g/5mL/kg)を経口投与した。負荷前ならびに負荷後15、30、60及び120分後に尾静脈から血液を漏出させ、漏出血液中のグルコース濃度を市販の自己検査用グルコース測定器(商品名:アキュチェックアビバ、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて測定した。このときの血糖値の曲線下面積(AUC)を算出し、これを指標にして以下のA〜Dの4群(8匹/群)に群分けし、各試験飼料を自由摂取させた。
【0094】
A群:デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
B群:実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
C群:ボグリボースを0.0003%、デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
D群:実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%、ボグリボースを0.0003%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
【0095】
各群について、上記のように試験飼料を2週間摂餌させた後一晩絶食し、空腹時血糖をアキュチェックアビバにて測定した。更に各試験飼料を4週間、すなわち合計6週間摂餌させた後OGTTを実施し、耐糖能改善作用を評価した。A群に対する各群の有意差はDunnett検定を、2群間の有意差はt検定を用いて評価した。
【0096】
(結果)
A〜D群のマウスに、各試験飼料を2週間摂餌させた後の空腹時血糖を図1に示した。6週間摂餌させた後OGTTを実施した際の血糖値を図2に、AUCを図3に、それぞれ示した。図1から明らかなように、BBG9−1単独及びボグリボース単独では、いずれも空腹時血糖を低下させなかったが、BBG9−1及びボグリボースの併用は空腹時血糖を有意に低下させた。図2から明らかなように、BBG9−1単独及びボグリボース単独では、いずれも血糖値の上昇を抑制しなかったが、BBG9−1及びボグリボースの併用は糖負荷後の血糖値を相乗的に低く推移させた。また、図3に示すようにBBG9−1及びボグリボースの併用は、AUCについてもBBG9−1単独及びボグリボース単独と比較して有意に低下させ、BBG9−1単独及びボグリボース単独の効果よりもKK−Aマウスの耐糖能を相乗的に強く改善することが示された。
なお、実施例2においてBBG9−1以外のビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌又は酪酸菌を用いても、上記と同様の結果が得られる。
【0097】
図1〜3について、詳細に説明する。
図1中の各点は、8個体の平均±標準誤差(SE)を表す。棒グラフにおいて、白はデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(A群)。灰色は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(B群)。斜線はボグリボースを0.0003%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(C群)。黒は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%、及びボグリボースを0.0003%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(D群)。*及び#はそれぞれ、デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(A群)からの有意差(**:p<0.01)、及び実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(B群)からの有意差(#:p<0.05)を表す。
【0098】
図2中の各点は、8個体の平均±標準誤差(SE)を表す。折れ線グラフにおいて、白丸はデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(A群)。白四角は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(B群)。白三角はボグリボースを0.0003%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(C群)。黒四角は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%、及びボグリボースを0.0003%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(D群)。
【0099】
図3中の各点(各群のAUC)は、8個体の平均±標準誤差(SE)を表す。棒グラフにおいて、白はデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(A群)。灰色は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(B群)。斜線はボグリボースを0.0003%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(C群)。黒は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%、及びボグリボースを0.0003%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(D群)。*及び#はそれぞれ、デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(A群)からの有意差(**:p<0.01)、及び実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(B群)からの有意差(#:p<0.05)を表す。
【0100】
実施例2においては、KK−Aマウスにボグリボースを混餌投与(0.0003%:0.6mg/kg/日)して6週間飼育した際には耐糖能の改善は認められなかったが、この飼料にビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を追加することにより6週間の飼育で耐糖能の改善が認められた。武田薬品工業社の「ベイスン錠(商品名)開発経緯3.インスリン分泌、膵島病変に対する影響」(http://www2.takedamed.com/content/search/doc1/067/kaihatsu/kai067_4.html)によると、耐糖能異常を特徴とするGKラットにα−グルコシダーゼ阻害剤であるボグリボースを混餌投与(0.005%:4.1mg/kg/日)して9週間飼育すると耐糖能の改善が認められたとされている。実施例2の結果より、α−グルコシダーゼ阻害剤とビフィズス菌等とを併用することにより、α−グルコシダーゼ阻害剤を単独で投与した場合よりも少量で、かつ短期間投与で有効な血糖降下効果が得られることが示された。
【0101】
<実施例3>
(乳酸菌菌体乾燥物の調製及び該菌体乾燥物中の生菌数の測定)
1.菌(3B:Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)の調製方法
3Bの菌体乾燥物の調製は以下のように行った。すなわち、3Bの凍結保存菌株(ビオフェルミン社保存菌株)を37℃で24時間静置培養後、ラクトミン試験用液体培地(2)(日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載)にこの培養菌液をラクトミン試験用液体培地(2)100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間静置培養した。得られた培養菌液を遠心分離し、水で3回洗浄後、適量の水を加え、湿菌体1kgに対し、グルタミン酸塩0.1kg及びデキストリン0.5kgの割合で加えて噴霧乾燥装置にて菌体乾燥物とした。なお、3B株は、医療用医薬品のビオフェルミン(商品名、ビオフェルミン製薬社製)等の成分として含まれており、該散剤等から通常行なわれる方法で精製することによって入手可能である。
【0102】
2.菌体乾燥物中の生菌数の測定
日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載されているラクトミンの定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gを精密に量り、希釈液(2)30mL中に加え、強く振り混ぜ、更に同希釈液を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、この菌液1mLを正確に量り、別に正確に分注した同希釈液9mL中に加える操作(10倍希釈法)を繰り返し、1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったラクトミン試験用カンテン培地(2)を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で24〜72時間好気培養し、出現したコロニー数及び希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。これにより求めた上記1.で得られた菌体乾燥物の菌数は、生菌数7.0×1011CFU/gであった。
【0103】
上記ラクトミン試験用カンテン培地(2)は、上記ラクトミン試験用液体培地(2)にカンテン20gを加え、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。
【0104】
<実施例4>
(糖化菌体乾燥物の調製及び該菌体乾燥物中の生菌数の測定)
1.菌(H(α):Bacillus subtilis 129 BIO H(α))の調製方法
H(α)の菌体乾燥物の調製は以下のように行った。すなわち、H(α)の保存菌株(ビオフェルミン社保存菌株)を滅菌生理食塩液に懸濁し、糖化菌試験用カンテン培地(2)(日本薬局方外医薬品規格「糖化菌」の項に記載)にこの菌懸濁液を糖化菌試験用カンテン培地(2)70に対して2の割合(容量比)で接種し、37℃で72時間静置培養した。この培養培地70に対して18の割合(容量比)の滅菌生理食塩液で洗浄し、得られた菌懸濁液を篩過し、菌懸濁液1Lに対し、デンプン5kgと混和した後篩過し、さらにデンプン5kgと混合し菌体乾燥物とした。なお、糖化菌H(α)株は、医療用医薬品のビオフェルミン(商品名、ビオフェルミン製薬社製)の成分として含まれており、該散剤から通常行なわれる方法で精製することによって入手可能である。
【0105】
2.菌体乾燥物中の生菌数の測定
日本薬局方外医薬品規格「糖化菌」の項に記載されている糖化菌の定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gを精密に量り、希釈液30mL中に加え、強く振り混ぜ、更に同希釈液を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、この菌液1mLを正確に量り、別に正確に分注した同希釈液9mL中に加える操作(10倍希釈法)を繰り返し、1mL中の生菌数が30〜300個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保った糖化菌試験用カンテン培地(2)を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で24〜48時間好気培養し、出現したコロニー数及び希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。これにより求めた上記1.で得られた菌体乾燥物の菌数は、生菌数1.2×10CFU/gであった。
【0106】
<実施例5>
(乳酸菌、糖化菌、及びα−グルコシダーゼ阻害剤併用による血糖降下増強作用)
乳酸菌として実施例3の方法によって得た3B、及び糖化菌として実施例4の方法によって得たH(α)を、α−グルコシダーゼ阻害剤としてアカルボースを、それぞれ用いた。アカルボースとしては、グルコバイ(登録商標)錠100mg(バイエル薬品製)を粉砕したものを用いた。
【0107】
雌性KK−Aマウス(系統名KK−A/TaJcl)を8週齢で購入後(日本クレア社より購入)、個別ケージにて3週間の予備飼育を行った。予備飼育期間中は市販の粉末飼料(商品名CE−2:日本クレア社製)及び上水道水を自由摂取させた。実験開始日には経口糖負荷試験(OGTT)を実施した。すなわち、OGTT実施の前日より絶食とし、実施当日グルコース溶液(2g/5mL/kg)を経口投与した。負荷前ならびに負荷後15、30、60及び120分後に尾静脈から血液を漏出させ、漏出血液中のグルコース濃度を市販の自己検査用グルコース測定器(商品名:アキュチェックアビバ、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて測定した。このときの血糖値の曲線下面積(AUC)を算出し、これを指標にして以下のE〜Hの4群(7匹/群)に群分けし、各試験飼料を自由摂取させた。
【0108】
E群:デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
F群:実施例3の方法によって得た3Bの乾燥菌体(7.0×1011/g)を5%、及び実施例4の方法によって得たH(α)の乾燥菌体(1.2×10/g)を5%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
G群:アカルボースを0.1%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
H群:実施例3の方法によって得た3Bの乾燥菌体(7.0×1011/g)を5%、実施例4の方法によって得たH(α)の乾燥菌体(1.2×10/g)を5%、及びアカルボースを0.1%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
【0109】
各群について、上記のように試験飼料を4週間摂餌させた後OGTTを実施し、耐糖能改善作用を評価した。E群に対する各群の有意差はDunnett検定を、2群間の有意差はt検定を用いて評価した。
【0110】
(結果)
E〜H群のマウスに、各試験飼料を4週間摂餌させた後OGTTを実施した際の血糖値を図5に、AUCを図6に、それぞれ示した。図5から明らかなように、3B及びH(α)併用、並びにアカルボース単独投与では、いずれも血糖値の上昇を抑制しなかったが、3B、H(α)及びアカルボースの併用(H群)は糖負荷後の血糖値を相乗的に低く推移させた。また、図6に示すようにAUCについても、3B及びH(α)併用、及びアカルボース単独投与ではE群に対して有意な低下は認められないのに対し、3B、H(α)及びアカルボースの併用(H群)によりAUCを有意に低下させた。更に3B、H(α)及びアカルボースを併用すると、3B及びH(α)併用並びにアカルボース単独投与と比較してもAUCが有意に低下し、3B及びH(α)併用並びにアカルボース単独の効果よりもKK−Aマウスの耐糖能を相乗的に強く改善することが示された。なお、実施例5において3B及びアカルボース、又はH(α)及びアカルボースを用いても、3B、H(α)及びアカルボースを併用した場合(H群)と同様の結果が得られる。また、3B以外の乳酸菌、H(α)以外の糖化菌を用いても、上記と同様の結果が得られる。
【0111】
図5及び6について、詳細に説明する。
図5中の各点は、7個体の平均±標準誤差(SE)を表す。折れ線グラフにおいて、白丸はデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(E群)。白四角は実施例3の方法によって得た3Bの乾燥菌体(7.0×1011/g)を5%、及び実施例4の方法によって得たH(α)の乾燥菌体(1.2×10/g)を5%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(F群)。白三角はアカルボースを0.1%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(G群)。黒四角は実施例3の方法によって得た3Bの乾燥菌体(7.0×1011/g)を5%、実施例4の方法によって得たH(α)の乾燥菌体(1.2×10/g)を5%、及びアカルボースを0.1%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(H群)。
【0112】
図6中の各群のAUCは、7個体の平均±標準誤差(SE)を表す。棒グラフにおいて、白はデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(E群)。灰色は実施例3の方法によって得た3Bの乾燥菌体(7.0×1011/g)を5%、及び実施例4の方法によって得たH(α)の乾燥菌体(1.2×10/g)を5%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(F群)。斜線はアカルボースを0.1%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(G群)。黒は実施例3の方法によって得た3Bの乾燥菌体(7.0×1011/g)を5%、実施例4の方法によって得たH(α)の乾燥菌体(1.2×10/g)を5%、及びアカルボースを0.1%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(H群)。*、#及び$はそれぞれ、デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(E群)からの有意差(**:p<0.01)、実施例3の方法によって得た3Bの乾燥菌体(7.0×1011/g)を5%、及び実施例4の方法によって得たH(α)の乾燥菌体(1.2×10/g)を5%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(F群)からの有意差(#:p<0.05)及びアカルボースを0.1%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(G群)からの有意差($:p<0.05)を表す。
【0113】
<実施例6>
(ビフィズス菌及びα−グルコシダーゼ阻害剤併用による血糖降下増強作用)
ビフィズス菌として実施例1の方法によって得たBBG9−1を、α−グルコシダーゼ阻害剤としてアカルボースを、それぞれ用いた。アカルボースとしては、グルコバイ(登録商標)錠100mg(バイエル薬品製)を粉砕したものを用いた。
【0114】
雌性KK−Aマウス(系統名KK−A/TaJcl)を8週齢で購入後(日本クレア社より購入)、個別ケージにて2週間の予備飼育を行った。予備飼育期間中は市販の粉末飼料(商品名CE−2:日本クレア社製)及び上水道水を自由摂取させた。実験開始日には経口糖負荷試験(OGTT)を実施した。すなわち、OGTT実施の前日より絶食とし、実施当日グルコース溶液(2g/5mL/kg)を経口投与した。負荷前ならびに負荷後15、30、60及び120分後に尾静脈から血液を漏出させ、漏出血液中のグルコース濃度を市販の自己検査用グルコース測定器(商品名:アキュチェックアビバ、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて測定した。このときの血糖値の曲線下面積(AUC)を算出し、これを指標にして以下のI〜Lの4群(9匹/群)に群分けし、各試験飼料を自由摂取させた。
【0115】
I群:デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
J群:実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
K群:アカルボースを0.1%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
L群:実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%、及びアカルボースを0.1%の割合で混合したCE−2を混餌投与するグループ。
【0116】
各群について、上記のように試験飼料を4週間摂餌させた後OGTTを実施し、耐糖能改善作用を評価した。I群に対する各群の有意差はDunnett検定を、2群間の有意差はt検定を用いて評価した。
【0117】
(結果)
I〜L群のマウスに、各試験飼料を4週間摂餌させた後OGTTを実施した際の血糖値を図7に、AUCを図8に、それぞれ示した。図7から明らかなように、BBG9−1単独では、血糖値の上昇を抑制しなかったが、BBG9−1及びアカルボースの併用は糖負荷後の血糖値を相乗的に低く推移させた。また、図8に示すようにAUCについてもBBG9−1単独及びアカルボース単独ではいずれもI群に対して有意な低下は認められないのに対し、BBG9−1及びアカルボースの併用により有意に低下した。更に、BBG9−1及びアカルボースの併用により、BBG9−1単独投与と比較してもAUCが有意に低下し、BBG9−1単独及びアカルボース単独の効果よりもKK−Aマウスの耐糖能を相乗的に強く改善することが示された。なお、実施例6においてBBG9−1以外のビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌又は酪酸菌を用いても、上記と同様の結果が得られる。
【0118】
図7及び8について、詳細に説明する。
図7中の各点は、9個体の平均±標準誤差(SE)を表す。折れ線グラフにおいて、白丸はデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(I群)。白四角は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(J群)。白三角はアカルボースを0.1%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(K群)。黒四角は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%、及びアカルボースを0.1%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(L群)。
【0119】
図8中の各群のAUCは、9個体の平均±標準誤差(SE)を表す。棒グラフにおいて、白はデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(I群)。灰色は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(J群)。斜線はアカルボースを0.1%、及びデキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(K群)。黒は実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%、及びアカルボースを0.1%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウスである(L群)。*及び#はそれぞれ、デキストリンを10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(I群)からの有意差(**:p<0.01)、実施例1の方法によって得たBBG9−1の乾燥菌体(3.4×1011/g)を10%の割合で混合したCE−2を混餌投与したマウス(J群)からの有意差(###:p<0.001)を表す。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の血糖降下作用増強剤は、糖尿病、肥満等の生活習慣病の予防又は改善に有用である。
【符号の説明】
【0121】
1、2 圧縮気体が供給される気体流路
3、4 被乾燥体を含む液体が供給される液体流路
5 流体流動面
6 衝突焦点
7 噴霧液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強剤。
【請求項2】
さらに、α−グルコシダーゼ阻害剤を含む請求項1に記載の血糖降下作用増強剤。
【請求項3】
α−グルコシダーゼ阻害剤が、一般式(I)
【化1】

(式中、Aは、水酸基、フェノキシ、チエニル、フリル、ピリジル、シクロヘキシル、置換されていてもよいフェニル基を有しうる炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、水酸基、ヒドロキシメチル基、メチル基、アミノ基を有しうる炭素数5又は6員の環状炭化水素基又は糖残基を示す)で表わされるバリオールアミン誘導体、一般式(II)
【化2】

(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリエナミンN−置換誘導体、一般式(III)
【化3】

(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリダミンのN−置換誘導体、又は一般式(IV)
【化4】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分枝状若しくは環式の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素環、芳香環又はヘテロ環であり、Rは、−H、−OH、−OR′、−SH、−SR′、−NH、−NHR′、−N(R′)(R′′)、NHCH−、NHR′−CH−、NR′R′′−CH−、−COOH、−COOR′、HO−CH−、R′CO−NHCH−、R′CO−NR′′CH−、R′SONHCH−、R′SO−NR′′CH−、R′−NH−CO−NH−CH−、R′−NH−CS−NH−CH−R′−O−CO−NH−CH−、−SOH、−CN、−CONH、−CONHR′又は−CONR′R′′であり、R′及びR′′は、同一又は異なって、それぞれRと同義である。Rが−CHOHであり、かつRが水素原子又は−OHである場合;Rが水素原子であり、かつRが水素原子、−OH、−SOH、−CN又−CH−NHである場合;又はRが−CH−NHであり、かつRが−OHである場合には、Rは、水素原子でない。)で表わされる3,4,5−トリヒドロキシピペリジンである請求項1又は2に記載の血糖降下作用増強剤。
【請求項4】
α−グルコシダーゼ阻害剤を含むことを特徴とするビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用増強剤。
【請求項5】
さらに、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含む請求項4に記載の血糖降下作用増強剤。
【請求項6】
α−グルコシダーゼ阻害剤が、一般式(I)
【化5】

(式中、Aは、水酸基、フェノキシ、チエニル、フリル、ピリジル、シクロヘキシル、置換されていてもよいフェニル基を有しうる炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、水酸基、ヒドロキシメチル基、メチル基、アミノ基を有しうる炭素数5又は6員の環状炭化水素基又は糖残基を示す)で表わされるバリオールアミン誘導体、一般式(II)
【化6】

(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリエナミンN−置換誘導体、一般式(III)
【化7】

(式中、Aは、前記と同義である)で表わされるバリダミンのN−置換誘導体、又は、一般式(IV)
【化8】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分枝状若しくは環式の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素環、芳香環又はヘテロ環であり、Rは、−H、−OH、−OR′、−SH、−SR′、−NH、−NHR′、−N(R′)(R′′)、NHCH−、NHR′−CH−、NR′R′′−CH−、−COOH、−COOR′、HO−CH−、R′CO−NHCH−、R′CO−NR′′CH−、R′SONHCH−、R′SO−NR′′CH−、R′−NH−CO−NH−CH−、R′−NH−CS−NH−CH−R′−O−CO−NH−CH−、−SOH、−CN、−CONH、−CONHR′又は−CONR′R′′であり、R′及びR′′は、同一又は異なって、それぞれRと同義である。Rが−CHOHであり、かつRが水素原子又は−OHである場合;Rが水素原子であり、かつRが水素原子、−OH、−SOH、−CN又−CH−NHである場合;又はRが−CH−NHであり、かつRが−OHである場合には、Rは、水素原子でない。)で表わされる3,4,5−トリヒドロキシピペリジンである請求項4又は5に記載の血糖降下作用増強剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の血糖降下作用増強剤を含むことを特徴とする医薬品。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の血糖降下作用増強剤を含むことを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用増強用飲食品組成物。
【請求項9】
請求項4〜6のいずれかに記載の血糖降下作用増強剤を含むことを特徴とするビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用増強用飲食品組成物。
【請求項10】
α−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用を増強するための、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の使用。
【請求項11】
ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌による血糖降下作用を増強するための、α−グルコシダーゼ阻害剤の使用。
【請求項12】
ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用の発現促進剤。

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−248185(P2010−248185A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69561(P2010−69561)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(391015351)ビオフェルミン製薬株式会社 (6)
【Fターム(参考)】