説明

行動認識システム及びその方法

【課題】複数の人物が同一画像内に存在する場合においても特定の人物の行動を認識すること。
【解決手段】所定の空間を含む第1撮影空間の距離画像を取得する距離画像カメラ1と、所定の空間を含む第2撮影空間の撮影画像を取得するカメラ2と、距離画像の距離情報に基づいて対象人物を特定し、撮影画像において距離画像上で特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定し、対象人物の撮影画像を連続的に取得し、取得した連続撮影画像を用いて対象人物の行動を認識する情報処理装置3とを具備する行動認識システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は行動認識システム及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭でユーザの生活を補助、支援、介護するロボットや愛玩用のロボット等が開発されている。また、近年では、イベント会場や展示会場においてロボットが見物客に対してサービスを提供することも多く見られるようになっている。
このように、特定の人物に対してロボットがサービスを行う場合、その対象となる人物を特定し、その人物の行動を認識する必要がある。
例えば、特許文献1には、移動ロボットが備える視覚カメラ等で撮影した人物の画像を用いて、人物の行動を認識する技術が提案されている。具体的には、特許文献1には、人物の動画像を取得し、その動画像から人物の手や頭の動作パターンを抽出し、その動作パターンから人物の行動を認識する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−215927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている行動認識システムでは、複数の人物が同一画像内に存在しており、これらの他の人物の動きが対象となる人物と重なっている場合に、画像上では対象とする人物の動きであるか、或いは、背景にいる他の人物の動きかであるか区別できなくなり、行動認識が困難となるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、複数の人物が同一画像内に存在する場合においても特定の人物の行動を認識することのできる行動認識システム及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、所定の空間を含む第1撮影空間の距離画像を取得する距離画像取得手段と、前記所定の空間を含む第2撮影空間の撮影画像を取得する撮像手段と、前記距離画像の距離情報に基づいて、対象人物を特定する第1特定手段と、前記撮影画像において、前記第1特定手段によって特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する第2特定手段と、前記撮像手段によって連続的に取得される前記対象人物の撮影画像を用いて、前記対象人物の行動を認識する行動認識手段とを具備する行動認識システムを提供する。
【0006】
このような構成によれば、所定の空間を含む第1撮影空間の距離画像が距離画像取得手段により取得されるとともに、該所定の空間を含む第2撮影空間の撮影画像が撮像手段により取得される。ここで、第1撮影空間と第2撮影空間とは、同一空間であってもよいし、該所定の空間が共通する互いに異なる空間であってもよい。第1撮影空間と第2撮影空間とが同一空間でない場合には、共通する所定の空間に、対象人物が存在している必要があるとともに、距離画像と撮影画像とにおいて互いの画像内の位置の対応付けがなされている必要がある。
【0007】
続いて、取得された距離画像において距離情報に基づき対象人物が第1特定手段により特定され、この対象人物に対応する撮影画像上の人物が対象人物として第2特定手段により特定される。そして、このように撮影画像上において対象人物が特定された後は、この対象人物の撮影画像が連続的に取得され、この連続画像を用いて行動認識手段により該対象人物の行動認識が行われる。
このように、本発明の行動認識システムによれば、距離画像を用いて対象人物を特定するので、例えば、撮影画像からは判別できなかった奥行方向に配置されている人物の切り分けを容易に行うことが可能となる。これにより、行動認識を行う場合において、背後にいる人物や移動体の動きを排除して、対象人物の動作パターンのみを抽出でき、この結果、対象人物の行動認識を高い精度で行うことができる。
上記撮影画像は、2値の画像(明暗画像)であってもよいし、カラー画像であってもよい。
【0008】
上記行動認識システムは、前記第1特定手段によって特定された対象人物を前記距離画像から抽出し、2値画像を作成する2値画像作成手段を備え、前記第2特定手段は、前記2値画像作成手段によって作成された2値画像を前記撮影画像に重ね合わせることにより、撮影画像上における前記対象人物を特定することとしてもよい。
【0009】
このようにすることで、撮影画像上において容易に対象人物を特定することができる。
【0010】
上記行動認識システムにおいて、前記第1特定手段は、前記距離画像において、予め設定されている所定距離に存在する人物を前記対象人物として特定することとしてもよい。
【0011】
これにより、容易に対象人物を特定することが可能となる。
【0012】
上記行動認識システムは、前記撮影画像において、顔検出を行う顔検出手段を備え、前記第1特定手段は、前記距離画像において、前記顔検出手段によって検出された顔の位置から所定距離内の領域に存在する物体を前記対象人物として特定することとしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、顔検出手段によって顔が検出され、続いて、距離画像において顔と略同じ距離に存在する物体、即ち、胴体、足、手等が検出され、これらが一体として対象人物として特定される。これにより、対象人物までの距離が不定の場合でも、顔から対象人物を特定することが可能となる。この結果、例えば、対象人物が移動している場合等においてもその人物を認識することが可能となる。
【0014】
上記行動認識システムにおいて、前記顔検出手段は、複数の顔が検出された場合に顔の表情の変化を検出し、この変化に基づいていずれか一つの顔を選択することとしてもよい。
【0015】
このようにすることで、複数の顔が検出された場合には、予めどのような表情をしている人物を対象人物として特定するかを決めておくことで、複数の人物から特定の人物を対象人物として選択することが可能となる。
例えば、笑っている人物を対象人物としたい場合には、口の周りの動きが大きい人物を選定すればよい。
【0016】
上記行動認識システムは、前記距離画像取得手段と対象人物との距離を検出する距離検出手段を備え、前記第1特定手段は、前記距離画像において、前記距離検出手段によって検出された距離に存在する人物を前記対象人物として特定することとしてもよい。
【0017】
このように距離検出手段を備えるので、対象人物までの距離が不明であった場合でも、対象人物までの距離を取得することができ、距離画像において対象人物を特定することが可能となる。
【0018】
上記行動認識システムにおいて、前記距離検出手段は、予め設定されている所定の位置付近に存在する人物の距離を検出することとしてもよい。
【0019】
例えば、イベント会場などで、所定の展示物の前に立っている人を対象人物として特定したい場合に、その対象人物までの距離が不明であるため、距離画像において対象人物を特定することができない。このような場合において、所定の位置付近、例えば、展示物付近に存在する人物の距離を距離検出手段によって検出することにより、所望の場所に存在する人物の一人を対象人物として特定することが可能となる。
【0020】
上記行動認識システムにおいて、前記距離検出手段は、前記所定空間の上方に設けられた撮像装置であってもよい。
【0021】
上方に設けられている撮像装置により距離を計測することにより、対象人物との距離を確実に測ることが可能となる。
【0022】
上記行動認識システムにおいて、前記距離検出手段は、対象人物が携帯しているICタグと通信するタグリーダであってもよい。
【0023】
タグリーダを用いることで、対象人物がICタグを携帯している場合には、簡易な装置により距離を測定することが可能となる。ICタグは、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)である。
【0024】
本発明は、全方位の距離を取得する全方位距離取得手段と、所定空間の撮影画像を取得する撮像手段と、前記距離取得手段によって取得された距離情報と前記撮像手段によって取得された撮影画像とを用いて、前記所定空間の距離画像を生成する距離画像生成手段と、前記距離画像生成手段によって生成された前記距離画像の距離情報に基づいて対象人物を特定する第1特定手段と、前記撮影画像において、前記第1特定手段によって特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する第2特定手段と、前記撮像手段によって連続的に取得される前記対象人物の撮影画像を用いて、前記対象人物の行動を認識する行動認識手段とを具備する行動認識システムを提供する。
【0025】
このような構成によれば、全方位の距離取得手段によって取得された360度方位における距離情報と、撮像手段によって取得された撮影画像とを用いて距離画像が生成される。
続いて、生成された距離画像において距離情報に基づき対象人物が第1特定手段により特定され、この対象人物に対応する撮影画像上の人物が対象人物として第2特定手段により特定される。そして、このように撮影画像上において対象人物が特定された後は、この対象人物の撮影画像が連続的に取得され、この連続画像を用いて行動認識手段により該対象人物の行動認識が行われる。
このように、本発明の行動認識システムによれば、距離画像を用いて対象人物を特定するので、例えば、撮影画像からは判別できなかった奥行方向に配置されている人物の切り分けを容易に行うことが可能となる。これにより、行動認識を行う場合において、背後にいる人物や移動体の動きを排除して、対象人物の行動パターンのみを抽出でき、この結果、対象人物の行動認識を高い精度で行うことができる。
【0026】
本発明は、所定の空間を含む第1撮影空間の距離画像を取得する過程と、前記所定の空間を含む第2撮影空間の撮影画像を取得する過程と、前記距離画像の距離情報に基づいて、対象人物を特定する過程と、前記撮影画像において、前記距離画像上で特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する過程と、前記対象人物の撮影画像を連続的に取得し、取得した連続撮影画像を用いて前記対象人物の行動を認識する過程とを有する行動認識方法を提供する。
【0027】
本発明は、360度方位の距離を取得する過程と、所定空間の撮影画像を取得する過程と、360度方位の距離情報と前記撮影画像とを用いて、前記所定空間の距離画像を生成する過程と、前記距離画像の距離情報に基づいて、対象人物を特定する過程と、前記撮影画像において、前記距離画像上で特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する過程と、前記対象人物の撮影画像を連続的に取得し、取得した連続撮影画像を用いて前記対象人物の行動を認識する過程とを有する行動認識方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の人物が同一画面内に存在する場合においても特定人物の行動を認識することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係る行動認識システム及びその方法は、例えば、住居内等の比較的狭い空間、又は、展示会場や博覧会等の比較的広いイベント会場、若しくは、商業施設等、様々な場所において、移動ロボットが特定の人物に対して、その人物の行動に応じた適切なサービスを提供できるように、その特定人物の行動を認識する目的で用いられるものである。
以下、本発明に係る行動認識システム及びその方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る行動認識システムは、所定の空間を含む第1撮影空間の距離画像を取得する距離画像カメラ(距離画像取得手段)1と、所定の空間を含む第2撮影空間の撮影画像を取得するカメラ(撮像手段)2と、距離画像カメラ1から距離画像を取得するとともに、カメラ2から撮影画像を取得し、これらの画像から対象人物を特定し、更に特定した対象人物の行動認識を行う情報処理装置3とを備えている。
【0031】
上記第1撮影空間と第2撮影空間とは、同一空間であってもよいし、所定の空間が共通する互いに異なる空間であってもよい。第1撮影空間と第2撮影空間とが同一空間でない場合には、共通する所定の空間に、対象人物が存在している必要があるとともに、距離画像と撮影画像とにおいて互いの画像内の位置の対応付けがなされている必要がある。本実施形態においては、説明の便宜上、距離画像カメラ1とカメラ2とが、同一空間の画像を同時に撮影する場合を想定して説明する。
【0032】
情報処理装置3は、いわゆるコンピュータであり、CPU(中央演算処理装置)、RAM(Random Access
Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk
Drive)等を備えており、ROM等の記憶装置に格納されている各種プログラムをCPUがRAMに読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0033】
図2は、情報処理装置3により実現される機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、情報処理装置3は、第1特定部31、2値画像作成部32、第2特定部33、行動認識部34を備えている。
【0034】
第1特定部31は、距離画像カメラ1により取得された距離画像の距離情報に基づいて、対象人物を特定する。2値画像作成部32は、第1特定部31によって特定された対象人物を距離画像から抽出し、抽出した対象人物を白で、その他の部分を黒で表した2値画像を作成する。第2特定部33は、2値画像作成部32によって作成された2値画像をカメラ2によって取得された撮影画像に重ね合わせることにより、撮影画像において、第1特定部31によって特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する。行動認識部34は、カメラ2によって連続的に取得される対象人物の撮影画像を用いて、対象人物の行動を認識する。
【0035】
次に、本実施形態に係る行動認識システムの作動について図3を参照して説明する。
まず、距離画像カメラ1及びカメラ2が同時に作動することにより、同時期における同一の空間の距離画像と撮影画像とが取得される(図3のステップSA1)。
【0036】
図4に距離画像の一例を、図5に撮影画像の一例を示す。図4に示すように、距離画像においては、例えば、同じ距離の箇所が同じ色で表されている。また、ここでは、一例として、3人の人物が空間内に存在する場合を例に挙げている。
【0037】
距離画像カメラ1によって取得された距離画像及びカメラ2によって取得された撮影画像は、情報処理装置3に送信される。
情報処理装置3の第1特定部31は、入力された距離画像において、予め設定されている所定距離(例えば、1.5m)に存在する人物を対象人物として特定する(図3のステップSA2)。ここで、予め設定されている所定距離とは、ユーザが任意に設定可能な値である。例えば、展覧会やイベント会場などで、所定の展示物の前に立っている人を対象人物として特定したい場合には、距離画像カメラ1と該展示物との距離を予め計測しておき、この距離を所定距離として登録することが考えられる。
【0038】
次に、2値画像作成部32は、第1特定部31によって特定された対象人物を距離画像から抽出し、この部分を白、その他の部分を黒で表した2値画像を作成する(図3のステップSA3)。
ここで、2値画像作成部32によって作成される2値画像を図6に示す。ここでは、図4に示された距離画像において、右端の人物が対象人物であると第1特定部31によって特定された場合の2値画像を示している。
【0039】
続いて、第2特定部33は、図7に示されるように、2値画像作成部32によって作成された2値画像を撮影画像に重ね合わせることにより、撮影画像上における対象人物を特定する(図3のステップSA4)。
これにより、撮影画像上において対象人物が特定されることとなる。このようにして、対象人物が撮影画像上において特定されると、行動認識部34は、連続的にカメラ2によって取得される撮影画像を用いて、対象人物の動作パターンを分析し、この動作パターンから行動認識を行う(図3のステップSA5)。
【0040】
行動認識部34により解析された行動認識結果は、例えば、対象人物の周辺にいるロボット5に送信される。これにより、ロボット5はこの対象人物の行動パターンに応じたサービスを対象人物に対して提供することが可能となる。
【0041】
以上説明してきたように、本実施形態に係る行動認識システムによれば、距離画像を用いて対象人物を特定するので、例えば、撮影画像からは判別できなかった奥行方向に配置されている人物の切り分けを容易に行うことが可能となる。これにより、行動認識を行う場合において、背後にいる人物や移動体の動きを排除して、対象人物の行動パターンのみを抽出でき、この結果、対象人物の行動認識を高い精度で行うことが可能となる。
【0042】
上記撮影画像は、2値の画像(明暗画像)であってもよいし、カラー画像であってもよい。また、上記距離画像カメラに代えて、レーザレーダ、ステレオカメラ、フラッシュ式の距離計器を使用することとしてもよい。
【0043】
なお、上記実施形態においては、2値画像作成部32によって作成された2値画像を用いて、撮影画像上の対象人物を特定することとしたが、このような2値画像を用いることなく、距離画像と撮影画像の各画素の対応付けに基づいて、撮影画像上における対象人物を特定することとしてもよい。この場合には、上述した2値画像作成部32を省略することが可能である。
【0044】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る行動認識システム及びその方法について説明する。以下、本実施形態の行動認識システムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0045】
図8は、本実施形態に係る行動認識システムの情報処理装置3aが備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図8に示されるように、情報処理装置3aは、撮影画像において顔検出を行う顔検出部35を更に備えている。
このような構成を備える行動認識システムにおいては、上述した第1の実施形態に係る行動認識システムと同様に、距離画像カメラ1及びカメラ2により距離画像及び撮影画像がそれぞれ取得され、情報処理装置3aに入力される。情報処理装置3aの顔検出部35は、撮影画像において顔検出を行い、その結果を第1特定部31aに出力する。
【0046】
第1特定部31aは、距離画像において、顔検出部35によって検出された顔から所定距離内の領域に存在する物体を対象人物として特定する。具体的には、第1特定部31aは、顔から前後30cmの範囲に存在する物体を対象人物として特定する。
一般に、手、足、胴体等の体の各部は、頭を中心として厚み±30cm以内に収まると考えられる。従って、第1特定部31aが顔から前後30cmの範囲に存在する物体を顔検出部35によって検出された顔と同一人物に属するものであると判断し、これらの物体を対象人物として特定する。その後の処理は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る行動認識システムによれば、対象人物までの距離が不定の場合でも、顔から対象人物を特定することが可能となる。この結果、例えば、対象人物が移動している場合等においてもその人物を認識することが可能となり、対象人物の行動認識を確実に行うことが可能となる。
また、顔は手や足などと比較して、他の人物と重なることが少ないため、顔に基づいて人物を特定することで、対象人物以外の人物との切り分けを容易に且つ確実に行うことが可能となる。
【0048】
また、上記第2の実施形態において、撮影画像中に複数の顔が検出された場合に、顔検出部35は、各顔の表情の変化を検出し、この変化に基づいていずれか一つの顔を選択することとしてもよい。例えば、笑っている人物を対象人物として選択するという条件が予め設定されていた場合には、口の周りの動きが大きい顔を選択する。
このようにすることで、複数の顔が検出された場合でもそのうちの一つを選択することができるので、対象人物を特定することが可能となる。
【0049】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る行動認識システム及びその方法について説明する。本実施形態に係る行動認識システムは、例えば、どの人物を対象人物にするかが予め決められているにもかかわらず、距離画像カメラ1とその人物との距離が不明であるために、距離画像カメラにおいて取得された距離画像において、対象人物を特定できない場合に、有効に機能する。
以下、本実施形態の行動認識システムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0050】
図9は、本実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示した図である。図9に示すように、本実施形態に係る行動認識システムは、上述した第1の実施形態に係る行動認識システムの構成要素に加えて、距離画像カメラ1と対象人物との距離を検出するための距離検出手段を備えている。距離検出手段としては、例えば、天井に設けられたカメラ6が採用される。具体的には、カメラ6は、その撮影範囲に距離画像カメラ1と対象人物とが入るように天井に設置されている。
【0051】
このような構成を備える行動認識システムにおいては、上述した第1の実施形態に係る行動認識システムと同様に、距離画像カメラ1及びカメラ2により距離画像及び撮影画像がそれぞれ取得され、情報処理装置3に入力される。また、カメラ6により距離画像カメラ1と対象人物との距離が計測され、この距離情報が情報処理装置3に入力される。
情報処理装置3の第1特定部31は、距離画像において、カメラ6によって計測された距離に存在する人物を対象人物として特定する。その後の処理は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る行動認識システムによれば、対象人物までの距離が不明であった場合でも、距離画像カメラ1と対象人物との距離を計測することで、距離画像において対象人物を特定することが可能となる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、対象人物までの距離を検出する距離検出手段としてカメラ6を採用したが、距離画像カメラと対象人物までの距離を計測する手段としてはこの例に限られない。例えば、対象人物がRFID(Radio Frequency IDentification)等のICタグを携帯している場合には、距離検出手段として、ICタグリーダを採用することとしてもよい。この場合には、例えば、距離画像カメラの近傍にICタグリーダを設置しておき、ICタグリーダが受電したICタグからの信号の電波強度で距離を計測することができる。このようにICタグを用いることで、システム構成を簡略化することが可能となる。
【0054】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る行動認識システム及びその方法について説明する。
例えば、展覧会やイベント会場などで、所定の展示物の前に立っている人を対象人物として特定したい場合がある。このような場合に、その対象人物までの距離が不確定であるため、距離画像において対象人物を特定することができないということが考えられる。本実施形態に係る行動認識システム及びその方法は、このように、予め決められている所定のエリア付近にいる人物を対象人物として特定する場合に、有効に機能する。
以下、本実施形態の行動認識システムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0055】
図10は、本実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示した図である。図10に示すように、本実施形態に係る行動認識システムは、上述した第1の実施形態に係る行動認識システムの構成要素に加えて、距離画像カメラ1と対象人物との距離を検出するカメラ7を備えている。
例えば、所定の展示物50の近傍に存在する人物を対象人物として特定したい場合には、カメラ7は展示物の周辺の人を観察できる位置に配置されるとともに、距離画像カメラ1と対象人物との距離を計測するできる場所、例えば、展示物50付近の天井に設置される。
【0056】
このような構成を備える行動認識システムにおいては、上述した第1の実施形態に係る行動認識システムと同様に、距離画像カメラ1及びカメラ2により距離画像及び撮影画像がそれぞれ取得され、情報処理装置3に入力される。また、カメラ7により距離画像カメラ1と対象人物との距離が計測され、この距離情報が情報処理装置3に入力される。
情報処理装置3の第1特定部31は、距離画像において、カメラ7によって計測された距離に存在する人物を対象人物として特定する。その後の処理は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態に係る行動認識システム及びその方法によれば、例えば、イベント会場などで、所定の展示物の前に立っている人を対象人物として特定したい場合であって、かつ、その対象人物までの距離が不明確な場合であっても、展示物付近に存在する人物の距離を検出することができ、この結果、所望の場所に存在する人物の一人を対象人物として特定することが可能となる。
【0058】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態に係る行動認識システム及びその方法について説明する。上述した各実施形態においては、距離画像を取得する距離画像カメラ1を備え、この距離画像カメラ1によって取得された距離画像を用いて、その距離情報から対象人物を特定していた。これに対し、本実施形態に係る行動認識システムは、図11に示されるように、360度方位(全方位)の距離情報を取得可能な全方位距離センサ21によって取得された距離情報と、所定空間の撮影画像を取得するカメラ2とによって取得された撮影画像を用いて、距離画像を作成する点で、上述した各実施形態にかかる行動認識システムと異なる。
【0059】
以下、本実施形態の行動認識システムについて、図を参照して説明する。
図11は、本実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示した図である。図11に示すように、本実施形態に係る行動認識システムは、360度方位の距離情報を取得する全方位距離センサ(距離取得手段)21と、所定の空間の撮影画像を取得するカメラ2と、距離センサ21から360度方位における距離情報を取得するとともに、カメラ2から撮影画像を取得し、これらの距離情報及び撮影画像から距離画像を作成し、更に、この距離画像と撮影画像とを用いて対象人物を特定し、特定した対象人物の行動認識を行う情報処理装置23とを備えている。
【0060】
次に、本実施形態に係る行動認識システムの作動について図12を参照して説明する。
まず、全方位距離センサ21により360度方位の距離dが計測され、角度θと距離dとが対応付けられた距離情報が情報処理装置23に送信される(図12のステップSB1)。また、カメラ2により所定の撮影空間の撮影画像が取得され、取得された撮影画像が情報処理装置23に送信される(図12のステップSB2)。ここで、カメラ2の撮影範囲の情報については、カメラ2の位置・向き(方位)等に基づいて予め算出され、この情報が情報処理装置23に登録されているものとする。
【0061】
情報処理装置23は、全方位距離センサ21から受信した距離情報を空間上の座標に展開し、空間展開図を作成する(図12のステップSB3)。図13に全方位距離センサ21によって取得された角度θと距離dとを対応付ける関係図の一例を、図14に図13に示される角度と距離との関係に基づいて作成された空間展開図を示す。
【0062】
次に、情報処理装置23は、ステップSB3において作成した空間展開図において、カメラ2の設置位置からカメラ2を特定するとともに、予め登録されているカメラ2の撮影範囲の情報からカメラ2の撮影範囲を特定する(ステップSB4)。
続いて、図15に示されるように、空間展開図において特定した撮影範囲内に存在する距離計測点の各々とカメラとの距離d´を算出する(ステップSB5)。
【0063】
次に、情報処理装置23は、カメラ2によって取得された撮影画像の各位置と空間展開図における各計測点との対応をとるとともに、ステップSB5において算出した各計測点の距離d´を用いることにより、図16に示すように、カメラ2によって取得された撮影画像における各位置に距離d´情報を付帯させて距離画像を生成する(ステップSB6)。
【0064】
そして、このようにして、距離画像が生成された後の処理については、上述した各実施形態における処理と同様である。例えば、第1の実施形態であれば、距離画像から予め設定されている距離に存在する物体が第1特定部31(図2参照)により対象人物として特定され、この対象人物の行動認識が行われる。
【0065】
以上説明してきたように、本実施形態に係る行動認識システムによれば、全方位距離センサ21によって取得された全方位の距離情報とカメラ2によって取得された撮影画像とに基づいて距離画像が生成されるので、距離画像カメラを用いることなく、距離画像を取得することができる。
【0066】
なお、上述した各実施形態において、対象人物に対してサービスを提供するロボット5(図1参照)がカメラ2の機能を備えている場合には、ロボット5が備えるカメラを上述したカメラ2に代えて使用することとしてもよい。
また、上記各実施形態で説明した各機能は、可能な範囲で組み合わせ可能である。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示した図である。
【図2】図1に示した情報処理装置により実現される機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る行動認識方法の処理過程を示したフローチャートである。
【図4】距離画像の一例を示した図である。
【図5】撮影画像の一例を示した図である。
【図6】2値画像作成部によって作成される2値画像の一例を示した図である。
【図7】撮影画像に2値画像を重ね合わせた画像を示した図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る行動認識システムが備える情報処理装置の機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示した図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示した図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る行動認識システムの概略構成を示した図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る行動認識方法の処理過程を示したフローチャートである。
【図13】全方位距離センサによって取得された角度θと距離dとを対応付ける関係図の一例を示した図である。
【図14】図13に示される角度と距離との関係に基づいて作成された空間展開図を示す。
【図15】図12のステップSB5で行われる処理を説明するための図である。
【図16】図12のステップSB6で行われる処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
1 距離画像カメラ
2、6,7 カメラ
3,3a,23 情報処理装置
21 全方位距離センサ
31 第1特定部
32 2値画像作成部
33 第2特定部
34 行動認識部
35 顔検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間を含む第1撮影空間の距離画像を取得する距離画像取得手段と、
前記所定の空間を含む第2撮影空間の撮影画像を取得する撮像手段と、
前記距離画像の距離情報に基づいて、対象人物を特定する第1特定手段と、
前記撮影画像において、前記第1特定手段によって特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する第2特定手段と、
前記撮像手段によって連続的に取得される前記対象人物の撮影画像を用いて、前記対象人物の行動を認識する行動認識手段と
を具備する行動認識システム。
【請求項2】
前記第1特定手段によって特定された対象人物を前記距離画像から抽出し、2値画像を作成する2値画像作成手段を備え、
前記第2特定手段は、前記2値画像作成手段によって作成された2値画像を前記撮影画像に重ね合わせることにより、撮影画像上における前記対象人物を特定する請求項1に記載の行動認識システム。
【請求項3】
前記第1特定手段は、前記距離画像において、予め設定されている所定距離に存在する人物を前記対象人物として特定する請求項1または請求項2に記載の行動認識システム。
【請求項4】
前記撮影画像において、顔検出を行う顔検出手段を備え、
前記第1特定手段は、前記距離画像において、前記顔検出手段によって検出された顔の位置から所定距離内の領域に存在する物体を前記対象人物として特定する請求項1または請求項2に記載の行動認識システム。
【請求項5】
前記顔検出手段は、複数の顔が検出された場合に顔の表情の変化を検出し、この変化に基づいていずれか一つの顔を選択する請求項4に記載の行動認識システム。
【請求項6】
前記距離画像取得手段と対象人物との距離を検出する距離検出手段を備え、
前記第1特定手段は、前記距離画像において、前記距離検出手段によって検出された距離に存在する人物を前記対象人物として特定する請求項1または請求項2に記載の行動認識システム。
【請求項7】
前記距離検出手段は、予め設定されている所定の位置付近に存在する人物の距離を検出する請求項6に記載の行動認識システム。
【請求項8】
前記距離検出手段は、前記所定空間の上方に設けられた撮像装置である請求項6または請求項7に記載の行動認識システム。
【請求項9】
前記距離検出手段は、対象人物が携帯しているICタグと通信するタグリーダである請求項6に記載の行動認識システム。
【請求項10】
全方位の距離を取得する全方位距離取得手段と、
所定空間の撮影画像を取得する撮像手段と、
前記距離取得手段によって取得された距離情報と前記撮像手段によって取得された撮影画像とを用いて、前記所定空間の距離画像を生成する距離画像生成手段と、
前記距離画像生成手段によって生成された前記距離画像の距離情報に基づいて対象人物を特定する第1特定手段と、
前記撮影画像において、前記第1特定手段によって特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する第2特定手段と、
前記撮像手段によって連続的に取得される前記対象人物の撮影画像を用いて、前記対象人物の行動を認識する行動認識手段と
を具備する行動認識システム。
【請求項11】
所定の空間を含む第1撮影空間の距離画像を取得する過程と、
前記所定の空間を含む第2撮影空間の撮影画像を取得する過程と、
前記距離画像の距離情報に基づいて、対象人物を特定する過程と、
前記撮影画像において、前記距離画像上で特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する過程と、
前記対象人物の撮影画像を連続的に取得し、取得した連続撮影画像を用いて前記対象人物の行動を認識する過程と
を有する行動認識方法。
【請求項12】
360度方位の距離を取得する過程と、
所定空間の撮影画像を取得する過程と、
360度方位の距離情報と前記撮影画像とを用いて、前記所定空間の距離画像を生成する過程と、
前記距離画像の距離情報に基づいて、対象人物を特定する過程と、
前記撮影画像において、前記距離画像上で特定された対象人物に対応する人物を対象人物として特定する過程と、
前記対象人物の撮影画像を連続的に取得し、取得した連続撮影画像を用いて前記対象人物の行動を認識する過程と
を有する行動認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−245363(P2009−245363A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93742(P2008−93742)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度総務省委託研究、「ネットワーク・ヒューマン・インターフェースの総合的な研究開発(ネットワークロボット技術)」に関する研究開発委託契約、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】