説明

衛星通信システム、通信統制局、統合ゲートウェイ装置及びそれらに用いる優先制御方法

【課題】 高い優先度の通話要求への回線の割り当てまでの時間を短縮可能な衛星通信システムを提供する。
【解決手段】 通信統制局1は各衛星回線201〜203毎のトラフィックを監視して各衛星回線201〜203毎の輻輳状態を監視し、監視結果を基に各衛星回線201〜203毎に事前に優先制御と帯域制御とを行うために統合GW装置2−1〜2−3を制御する。通信統制局1は衛星回線201〜203のトラフィックが予め設定された閾値を超えると、優先度が下位の通信を制限するために、統合GW装置2−1〜2−3に制限状態情報を通知する。統合GW装置2−1〜2−3は制限状態情報を受信すると、その制限状態に応じて予め設定された優先度の通信の新規受付、当該優先度の通信の切断等の優先制御及び帯域制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛星通信システム、通信統制局、統合ゲートウェイ装置及びそれらに用いる優先制御方法に関し、特に複数の衛星回線を用いる衛星通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信衛星を用いた衛星通信システムにおいては、通話要求が行われる毎に空いている回線を割り当てるDAMA(Demand Assignment Multiple Access:要求時割り付け多元接続)方式による回線接続(例えば、特許文献1、2参照)、あるいは、特定の局に特定の回線を常時固定して割り当てるPAMA(Pre−Assignment Multiple Access:固定割り付け多元接続)方式による回線接続が行われている。
【0003】
上記のPAMA方式による回線接続は、いちいち通話要求を発する必要がないので、簡単な仕組みで構築することができるが、通信量が少ない局にも常に回線を割り当てておかなければならないため、衛星回線を効率的に活用することができない。これに対し、DAMA方式による回線接続では、通話要求が行われる毎に空いている回線を割り当てるため、資源に制限のある衛星回線を効率的に活用することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−151490号公報
【特許文献2】特開2000−307498号公報
【特許文献3】特開平11−027316号公報
【特許文献4】特開2001−308925号公報
【特許文献5】特開2003−078554号公報
【特許文献6】特開2005−277835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のDAMA方式による回線接続では、衛星回線において通話要求によってすべての回線がふさがってしまうと、それ以降の通話要求が拒否されることとなるので、通話要求に対する優先制御が望まれている。
【0006】
この場合、DAMA方式による回線接続において、単に通話要求の優先度が高いか、低いかに応じて優先制御を行っても、高い優先度の通話要求がきた時にすべての回線がふさがっている場合には、低い優先度の通話要求で使用されている回線を開放してから、高い優先度の通話要求に回線を割り当てるため、その回線の割り当てまでに時間がかかってしまうという問題がある。
【0007】
尚、上記の優先制御については、特許文献3〜6等に開示されている。
【0008】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、高い優先度の通話要求への回線の割り当てまでの時間を短縮することができる衛星通信システム、通信統制局、統合ゲートウェイ装置及びそれらに用いる優先制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による衛星通信システムは、複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行うための統合ゲートウェイ装置と、少なくとも前記衛星回線毎に回線割り当て制御及び前記統合ゲートウェイ装置の制御を行う通信統制局とを含む衛星通信システムであって、前記通信統制局は、前記衛星回線毎の通信状況を監視する回線制御手段と、前記監視手段の監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報を前記統合ゲートウェイ装置に通知する通信統制手段とを備え、前記統合ゲートウェイ装置は、前記通信統制局からの前記制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行う手段を備えている。
【0010】
本発明による通信統制局は、複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行うための統合ゲートウェイ装置の制御と前記衛星回線毎に回線割り当て制御とを少なくとも行う通信統制局であって、前記衛星回線毎の通信状況を監視する回線制御手段と、前記監視手段の監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報を前記統合ゲートウェイ装置に通知する通信統制手段とを備え、前記統合ゲートウェイ装置が前記通信統制手段からの前記制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行っている。
【0011】
本発明による統合ゲートウェイ装置は、少なくとも衛星回線毎に回線割り当て制御を行う通信統制局の制御に基づいて、複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行う統合ゲートウェイ装置であって、前記通信統制局から、前記衛星回線毎の通信状況の監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報が送られてきた時にその制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行う手段を備えている。
【0012】
本発明による優先制御方法は、複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行うための統合ゲートウェイ装置と、少なくとも前記衛星回線毎に回線割り当て制御及び前記統合ゲートウェイ装置の制御を行う通信統制局とを含む衛星通信システムに用いる優先制御方法であって、前記通信統制局が、前記衛星回線毎の通信状況を監視する処理と、その監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報を前記統合ゲートウェイ装置に通知する処理とを実行し、前記統合ゲートウェイ装置が、前記通信統制局からの前記制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行う処理を実行している。
【0013】
すなわち、本発明の衛星通信システムは、各衛星回線のトラフィックが予め設定された閾値を超えると、優先度が下位の通信を制限するために、通信統制局から統合GW装置に制限状態情報が制限情報として通知され、統合GW装置がこの制限状態情報に基づいて予め設定された優先度の通信の新規受付の抑止、当該優先度の通信の切断/接続等の優先制御及び帯域制御を各衛星回線の輻輳状態が検出される前に行うことを特徴とする。
【0014】
したがって、本発明の衛星通信システムでは、高い優先度の通話要求があった場合でも、下位の優先度の通話を切断しなくとも、高い優先度の通話要求への回線の割り当てが可能となるので、切断処理が終了するまでの時間を待つ必要がなくなり、その割り当て処理の時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、高い優先度の通話要求への回線の割り当てまでの時間を短縮することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態による衛星通信システムの構成を示すブロック図である。図1において、本実施の形態による衛星通信システムは、通信統制局1と、統合GW(GateWay)装置2−1〜2−3と、衛星GW[X−CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)]3−1〜3−3と、衛星GW[X−FDMA(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多元接続)]4−1〜4−3と、衛星GW(Ku)5−1〜5−3とを含む。ここでは、統合GW装置2−1がネットワーク101を介して端末6−1〜6−3に接続され、統合GW装置2−2がネットワーク102を介して端末6−4〜6−6に接続され、統合GW装置2−3がネットワーク103を介して端末6−7〜6−9に接続される場合について示している。また、衛星GW(X−CDMA)3−1〜3−3の間が衛星回線201で結ばれ、衛星GW(X−FDMA)4−1〜4−3の間が衛星回線202で結ばれ、衛星GW(Ku)5−1〜5−3の間が衛星回線203で結ばれるようになっている。
【0017】
衛星回線201はXバンド(8〜12GHzの周波数帯)のCDMAの通信衛星(図示せず)に対応する回線であり、衛星回線202はXバンドのFDMAの通信衛星(図示せず)に対応する回線である。衛星回線203はKuバンド(12〜18GHzの周波数帯)の通信衛星(図示せず)に対応する回線である。尚、上記の衛星回線以外にも本発明の実施の形態は適用可能である。
【0018】
衛星GW(X−CDMA)3−1〜3−3は衛星回線201を用いた通信を行うためのゲートウェイ装置である。衛星GW(X−FDMA)4−1〜4−3は衛星回線202を用いた通信を行うためのゲートウェイ装置である。衛星GW(Ku)5−1〜5−3は衛星回線203を用いた通信を行うためのゲートウェイ装置である。
【0019】
端末6−1〜6−9はネットワーク101〜103を通してIP(Internet Protocol)電話等のIP通信を可能とするIP通信機能を備えている。統合GW装置2−1〜2−3はネットワーク101〜103を通した端末6−1〜6−9からのIP通信を衛星回線201〜203を通して通信へと変換して衛星GW(X−CDMA)3−1〜3−3、衛星GW(X−FDMA)4−1〜4−3、衛星GW(Ku)5−1〜5−3へと分配する機能と、通信統制局1からの制御に基づいて各衛星回線201〜203毎の優先制御と帯域制御とを行う機能とを備えている。
【0020】
通信統制局1は各衛星回線201〜203毎のトラフィックを監視して各衛星回線201〜203毎の輻輳状態を監視する機能と、監視結果を基に各衛星回線201〜203毎に事前に優先制御と帯域制御とを行うために統合GW装置2−1〜2−3を制御する機能とを備えている。
【0021】
本実施の形態では、衛星回線201〜203のトラフィックが予め設定された閾値を超えると、優先度が下位の通信を制限するために、通信統制局1から統合GW装置2−1〜2−3に制限状態情報(制限情報)が通知される。統合GW装置2−1〜2−3は制限状態情報を受信すると、その制限状態に応じて予め設定された優先度の通信の新規受付、当該優先度の通信の切断等の優先制御及び帯域制御を行う。
【0022】
このように、本実施の形態では、衛星回線201〜203のトラフィックに応じた制限状態に基づいて衛星回線201〜203毎の優先制御や帯域制御を行うことによって、高い優先度の通話要求への回線の割り当てまでの時間を短縮することが可能となる。つまり、高い優先度の通話要求があった場合でも、必ずしも下位の優先度の通話を切断しなくとも、高い優先度の通話要求への回線の割り当てができるので、切断処理が終了するまでの時間を待つ必要がなくなり、その割り当て処理の時間を短縮することができる。
【実施例】
【0023】
図2は本発明の実施例による衛星通信システムの動作を示す図である。本実施例による衛星通信システムは上記の図1に示す衛星通信システムと同様の構成となっているので、これら図1及び図2を参照して、本衛星通信システムの動作について説明する。尚、図2では、図1の統合GW装置2−1〜2−3、衛星GW(X−CDMA)3−1〜3−3、衛星GW(X−FDMA)4−1〜4−3、衛星GW(Ku)5−1〜5−3、端末6−1〜6−9をそれぞれ参照番号2、3、4、5、6で1台ずつ示し、通信統制局1の図示を省略している。
【0024】
端末6から新規パケットが送信されると[図2の(1)参照]、統合GW装置2は端末6からのパケットをパケット保持部21に一時保持し[図2の(2)参照]、予め設定された既定経路[本実施例では、衛星GW(X−CDMA)3]にパケットを送信する[図2の(3)参照]。
【0025】
この時、XバンドのCDMAの通信衛星に対応する衛星回線201に輻輳が発生していると、衛星GW(X−CDMA)3から統合GW装置2に接続不可通知及び次経路指示が送られてくる[図2の(4)参照]。この場合、統合GW装置2はパケット保持部21に一時保持したパケットを、「指示された」次経路[本実施例では、衛星GW(Ku)5]へ送信する[図2の(5)参照]。衛星GW(Ku)5はKuバンドの通信衛星に対応する衛星回線203における回線の割り当てに成功すると、接続通知を統合GW装置2に送る[図2の(6)参照]。
【0026】
図3は本発明の実施例による通信統制局の構成例を示すブロック図である。図3においては、XバンドのCDMAの通信衛星に対応する衛星回線201を用いる通信制御について図示しているが、XバンドのFDMAの通信衛星に対応する衛星回線202、Kuバンドの通信衛星に対応する衛星回線203についても、衛星回線201を用いる通信の場合と同様の処理となる。
【0027】
また、図3では、衛星GW(X−CDMA)3−1,3−2の図示を省略しており、衛星GW(X−CDMA)3−1,3−2と衛星回線201との間に設ける衛星通信器材(モデム等)8−1,8−2と、統合GW装置2−1,2−2及び衛星通信器材8−1,8−2と通信統制局1との間に設けられる衛星通信制御装置7−1,7−2とを図示している。
【0028】
通信統制局1は、統合GW装置2−1,2−2に優先制御を行わせるために帯域制限情報を衛星通信制御装置7−1,7−2に送信する通信統制部11と、衛星通信器材8−1,8−2に対して衛星回線201への回線割り当てを行わせるために回線割り当て情報を衛星通信制御装置7−1,7−2に送信する回線制御部12とを備えている。尚、図示していないが、通信統制局1は衛星回線201に対応する回線制御部12だけでなく、衛星回線202、203にそれぞれ対応する回線制御部を備えている。帯域制限情報と回線割り当て情報はまとめて前述した制限状態情報と呼ばれても良い。
【0029】
回線制御部12は衛星通信制御装置7−1,7−2及び衛星通信器材8−1,8−2を通して衛星回線201のトラフィックを監視し、その監視結果を衛星リソースとして通信統制部11に通知する。通信統制部11は回線制御部12から通知される衛星リソースを基に、衛星回線201の帯域を事前に制御するために優先制御や帯域制御を行うかを判断し、その判断結果を帯域制限情報として衛星通信制御装置7−1,7−2を通して統合GW装置2−1,2−2に送る。
【0030】
統合GW装置2−1,2−2は通信統制部11からの帯域制限情報に基づいて、優先度が下位の通信を制限するために優先制御や帯域制御を行う。この場合、例えば、統合GW装置2−1,2−2は衛星回線201のトラフィックが増加して予め設定された第1の閾値を超えると、最下位の優先度の通話要求が新規にあってもその受付けを抑止する。統合GW装置2−1,2−2はさらに衛星回線201のトラフィックが増加して次の第2の閾値を超えると、現在接続されている最下位の優先度の通話そのものを切断して最上位の優先度の通話要求が新規に発生した場合にその通話要求を受付けられるようにしておく。
【0031】
これによって、本実施例では、高い優先度の通話要求があった場合、必ずしも下位の優先度の通話を切断しなくとも、高い優先度の通話要求への回線の割り当てができるので、切断処理が終了するまでの時間を待つ必要がなくなり、その割り当て処理の時間を短縮することができる。
【0032】
図4は本発明の実施例による通話要求の受付けの優先度の設定例を示す図である。図4(a)は「接続」における優先度の設定例を示している。「a1」の場合が「必ず回線を確保」であり、「a2」の場合が「先優先処理(通話要求が複数ある場合に先に回線を割り当てる処理)」であり、「a3」の場合が「空き状況により許可」である。この場合、「a3」→「a2」→「a1」の順に優先度が高くなる。
【0033】
図4(b)は「接続後の帯域割り当て」における優先度(「強制切断に関する処理」)の設定例を示している。「b1」の場合が「絶対に強制切断されない」であり、「b2」の場合が「手動強制切断を許す(オペレータによる手動での強制切断を許可する)」であり、「b3」の場合が「自動強制切断を許す」である。この場合、「b3」→「b2」→「b1」の順に優先度が高くなる。
【0034】
図4(c)は「接続後の帯域割り当て」における優先度(「空き帯域がある場合の処理」)の設定例を示している。「c1」の場合が「帯域拡大を許す、その後も帯域保証」であり、「c2」の場合が「帯域拡大を許す、その後、輻輳が発生した場合に手動により帯域を低減」である。また、「c3」の場合が「帯域拡大を許す、その後、輻輳が発生した場合に自動により帯域を低減」であり、「c4」の場合が「帯域拡大を許さない」である。この場合、「c4」→「c3」→「c2」→「c1」の順に優先度が高くなる。
【0035】
図5は本発明の一実施例による衛星通信の制御で発生し得る問題とその対策との一覧を示す図である。図5において、まず番号「1」の場合、「衛星回線の強制切断による空き帯域を取得する際の制御時間」が問題となる。この場合、「衛星回線の強制切断を伴う優先制御の発動を可能な限り少なくする」という対策を取ることで、制御時間を短くすることが可能となる。
【0036】
次に、番号「2」の場合、「衛星回線リソース不足によるBoD(Bandwidth on Demand)の帯域増加限界」が問題となる。この場合、「衛星回線リソースが不足した場合にシェイパ値が大きくならないように統合GW装置2,2−1〜2−3を制御する」という対策を取ることで、帯域増加限界とならないようにすることが可能となる。
【0037】
さらに、番号「3」の場合、「BoDにより帯域を減少させ、空き帯域を取得する際の制御時間」が問題となる。この場合、「衛星回線のBoDを伴う優先制御の発動を可能な限り少なくする」という対策を取ることで、制御時間を短くすることが可能となる。
【0038】
図6は図3の通信統制局1における各部の状態遷移を示す図である。図7及び図8は図3の通信統制局1の動作を示すフローチャートであり、図9は図3の統合GW装置2の動作を示すフローチャートである。これら図3〜図9を参照して本発明の実施例による衛星通信システムの動作について説明する。尚、図6では、図3において述べたように、通信統制局1が衛星回線201に対応する回線制御部12−1に加えて、衛星回線202、203にそれぞれ対応する回線制御部12−2、12−3を備えることを示している。また、統合GW装置が2−1〜2−nのn個備えられる場合について示している。
【0039】
通信統制局1の通信統制部11には回線制御部12−1〜12−3から衛星回線リソースの利用状況が逐次通知されているので[図6の(1)参照]、通信統制部11は衛星回線リソースの空き状況を見て、帯域制限状態の変更の有無を判断する[図6の(2)参照]。
【0040】
帯域制限状態の変更がある場合、通信統制部11は衛星回線201のX−CDMAの下りCSC(Common Signalling Channel)回線を用いて、子DAMA(Demand Assignment Multiple Access:要求時割り付け多元接続)経由で各統合GW装置2−1〜2−nに帯域制限状態の変更を通知する[図6の(3)参照]。尚、地上統合GW装置やXバンドの覆域外の統合GW装置については、データ回線等の他の方法で帯域制限状態の変更が通知される。
【0041】
以下、通信統制部11による帯域制限状態の変更の有無の判断と、各統合GW装置2−1〜2−nへの帯域制限状態の変更の通知について説明する。尚、以下の説明では、衛星リソースの占有率をR1IN,R2IN,R3IN,R1OUT,R2OUT,R3OUTとし、持続時間をT1IN,T2IN,T3IN,T1OUT,T2OUT,T3OUTとし、これらの値はシステム設定情報によって可変可能な値である。
【0042】
通信統制部11は使用中の衛星リソースがR1IN%以下であれば、統合GW装置2−1〜2−nに通常状態を通知する(図7ステップS1)。各統合GW装置2−1〜2−nは通常状態が通知されると(図9ステップS21)、回線/セッションの接続要求があるたびに接続を行う(図9ステップS22)。
【0043】
通信統制部11は通常状態を通知している時に、使用中の衛星リソースがR1IN%以上になった状態がT1IN秒以上続く場合(図7ステップS2)、各統合GW装置2−1〜2−nに帯域制限#1を通知する(図7ステップS3)。各統合GW装置2−1〜2−nは帯域制限#1の通知を受けると(図9ステップS23)、空き帯域があっても、優先度c3のセッションについて最低保証帯域以上に帯域確保をせず、優先度a3の新規セッションを接続しない(図9ステップS24)。
【0044】
通信統制部11は帯域制限#1を通知している時に、使用中の衛星リソースがR2IN%なった状態がT2IN秒以上続くと(図7ステップS4)、各統合GW装置2−1〜2−nに帯域制限#2を通知する(図7ステップS5)。各統合GW装置2−1〜2−nは帯域制限#2の通知を受けると(図9ステップS25)、空き帯域があっても、優先度c3のセッションについては衛星リソースがR2OUT%以下になるように切断し、優先度a3のセッションを接続しない(図9ステップS26)。
【0045】
通信統制部11は帯域制限#2を通知している時に、衛星リソースがなくなった状態がT3IN秒以上続くと(図7ステップS6)、各統合GW装置2−1〜2−nに接続制限状態を通知する(図7ステップS7)。各統合GW装置2−1〜2−nは、空き帯域が完全に不足している状態なので、回線及びセッションの強制切断/接続によって、優先制御を行う(図9ステップS28)。この場合、優先接続の対象は優先度a1であり、切断対象は優先度a3である。
【0046】
通信統制部11は接続制限状態を通知している時に、使用中の衛星リソースがR3OUT%以下になった状態がT3OUT秒以上続くと(図8ステップS8)、各統合GW装置2−1〜2−nに帯域制限#2を通知する(図8ステップS9)。各統合GW装置2−1〜2−nは帯域制限#2の通知を受けると(図9ステップS25)、空き帯域があっても、優先度c3のセッションについては衛星リソースがR2OUT%以下になるように切断し、優先度a3のセッションを接続しない(図9ステップS26)。
【0047】
通信統制部11は帯域制限#2を通知している時に、使用中の衛星リソースがR2OUT%以下になった状態がT2OUT秒以上続くと(図8ステップS10)、各統合GW装置2−1〜2−nに帯域制限#1を通知する(図8ステップS11)。各統合GW装置2−1〜2−nは帯域制限#1の通知を受けると(図9ステップS23)、空き帯域があっても、優先度c3のセッションについて最低保証帯域以上に帯域確保をせず、優先度a3の新規セッションを接続しない(図9ステップS24)。
【0048】
通信統制部11は帯域制限#1を通知している時に、使用中の衛星リソースがR1OUT%以下になった状態がT1OUT秒以上続くと(図8ステップS12)、各統合GW装置2−1〜2−nに通常状態を通知する(図8ステップS13)。各統合GW装置2−1〜2−nは通常状態の通知を受けると(図9ステップS21)、回線/セッションの接続要求があるたびに接続を行う(図9ステップS22)。
【0049】
図10は図6に示す統合GW装置2−1〜2−nにて用いる優先制御及び帯域制御用のテーブルである。統合GW装置2−1〜2−nの記憶装置(図示せず)には、図10に示すような優先制御及び帯域制御用のテーブルが記憶されており、端末(図示せず)からの通信要求に対してそのテーブルを参照して優先制御及び帯域制御を行う。
【0050】
図10においては、IPアドレス「135.10.19.1」とポート番号「p1」とで特定される端末に、「接続」における優先度として「a1」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(強制切断に関する処理)として「b1」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(空き帯域がある場合の処理)として「c1」が設定されている。一方、IPアドレス「135.10.19.2」とポート番号「p2」とで特定される端末には、「接続」における優先度として「a2」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(強制切断に関する処理)として「b2」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(空き帯域がある場合の処理)として「c2」が設定されている。次に、IPアドレス「135.10.19.3」とポート番号「p3」とで特定される端末には、「接続」における優先度として「a3」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(強制切断に関する処理)として「b3」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(空き帯域がある場合の処理)として「c3」が設定されている。さらに、IPアドレス「135.10.19.4」とポート番号「p4」とで特定される端末には、「接続」における優先度として「a4」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(強制切断に関する処理)として「b3」、「接続後の帯域割り当て」における優先度(空き帯域がある場合の処理)として「c4」が設定されている。以下、同様にして以降の端末に、「接続」における優先度、「接続後の帯域割り当て」における優先度(強制切断に関する処理)、「接続後の帯域割り当て」における優先度(空き帯域がある場合の処理)が設定される。
【0051】
各統合GW装置2−1〜2−nは通信統制部11から通常状態の通知を受けると、上記のIPアドレスとポート番号とから特定される端末から回線/セッションの接続要求があるたびに接続を行う。
【0052】
また、各統合GW装置2−1〜2−nは通信統制部11から帯域制限#1の通知を受けると、空き帯域があっても、優先度c3以下のセッション、つまりIPアドレス「135.10.19.3」とポート番号「p3」とで特定される端末及びIPアドレス「135.10.19.4」とポート番号「p4」とで特定される端末からの接続要求について最低保証帯域以上に帯域確保をせず、優先度a3の新規セッション、つまりこれらの端末からの新規の接続要求を接続しない。
【0053】
さらに、各統合GW装置2−1〜2−nは通信統制部11から帯域制限#2の通知を受けると、空き帯域があっても、優先度c3以下のセッション、つまりIPアドレス「135.10.19.3」とポート番号「p3」とで特定される端末及びIPアドレス「135.10.19.4」とポート番号「p4」とで特定される端末からの接続要求については衛星リソースがR2OUT%以下になるように切断し、優先度a3のセッション、つまりこれらの端末からの接続要求を接続しない。
【0054】
各統合GW装置2−1〜2−nは通信統制部11から接続制限状態が通知されると、空き帯域が完全に不足している状態なので、回線及びセッションの強制切断/接続によって優先制御を行う。この場合、優先接続の対象は優先度a1、つまりIPアドレス「135.10.19.1」とポート番号「p1」とで特定される端末であり、切断対象は優先度a3、つまりIPアドレス「135.10.19.3」とポート番号「p3」とで特定される端末及びIPアドレス「135.10.19.4」とポート番号「p4」とで特定される端末である。
【0055】
このように、本実施例では、衛星回線201〜203のトラフィックに応じた制限状態に基づいて衛星回線201〜203毎の優先制御や帯域制御を行うことによって、高い優先度の通話要求があった場合でも、下位の優先度の通話を切断しなくとも、高い優先度の通話要求への回線の割り当てができる。これにより、切断処理が終了するまでの時間を待つ必要がなくなり、その割り当て処理の時間を短縮することができ、高い優先度の通話要求への回線の割り当てまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態による衛星通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例による衛星通信システムの動作を示す図である。
【図3】本発明の一実施例による通信統制局の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施例による通話要求の受付けの優先度の設定例を示す図である。
【図5】本発明の一実施例による衛星通信の制御で発生し得る問題とその対策との一覧を示す図である。
【図6】図3の通信統制局における各部の状態遷移を示す図である。
【図7】図3の通信統制局の動作を示すフローチャートである。
【図8】図3の通信統制局の動作を示すフローチャートである。
【図9】図3の統合GW装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図6に示す統合GW装置にて用いる優先制御及び帯域制御用のテーブルである。
【符号の説明】
【0057】
1 通信統制局
2,2−1〜2−n 統合GW装置
3,3−1〜3−3 衛星GW(X−CDMA)
4,4−1〜4−3 衛星GW(X−FDMA)
5,5−1〜5−3 衛星GW(Ku)
6,6−1〜6−9 端末
7−1,7−2 衛星通信制御装置
8−1,8−2 衛星通信器材
11 通信統制部
12 回線制御部
21 パケット保持部
101〜103 ネットワーク
201〜203 衛星回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行うための統合ゲートウェイ装置と、少なくとも前記衛星回線毎に回線割り当て制御及び前記統合ゲートウェイ装置の制御を行う通信統制局とを含む衛星通信システムであって、
前記通信統制局は、前記衛星回線毎の通信状況を監視する回線制御手段と、該回線制御手段の監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報を前記統合ゲートウェイ装置に通知する通信統制手段とを有し、
前記統合ゲートウェイ装置は、前記通信統制局からの前記制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行う手段を有することを特徴とする衛星通信システム。
【請求項2】
前記通信統制手段は、前記衛星回線毎に、該衛星回線のトラフィックが予め設定された閾値を超える毎に前記優先度が下位の通信を制限するよう制限状態情報を前記制限情報として前記統合ゲートウェイ装置に通知することを特徴とする請求項1記載の衛星通信システム。
【請求項3】
前記優先制御及び帯域制御を行う手段は、少なくとも前記制限状態情報に基づいて予め設定された優先度の通信の新規受付の抑止と当該優先度の通信の切断/接続を行うことを特徴とする請求項2記載の衛星通信システム。
【請求項4】
前記複数の衛星回線は、少なくともXバンドのCDMA(Code Division Multiple Access)の通信衛星に対応する衛星回線と、XバンドのFDMA(Frequency Division Multiple Access)通信衛星に対応する衛星回線と、Kuバンドの通信衛星に対応する衛星回線とを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の衛星通信システム。
【請求項5】
複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行うための統合ゲートウェイ装置の制御と前記衛星回線毎に回線割り当て制御とを少なくとも行う通信統制局であって、
前記衛星回線毎の通信状況を監視する回線制御手段と、
該回線制御手段の監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報を前記統合ゲートウェイ装置に通知する通信統制手段とを有し、
前記統合ゲートウェイ装置が前記通信統制手段からの前記制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行うことを特徴とする通信統制局。
【請求項6】
前記通信統制手段は、前記衛星回線毎に、該衛星回線のトラフィックが予め設定された閾値を超える毎に前記優先度が下位の通信を制限するよう制限状態情報を前記制限情報として前記統合ゲートウェイ装置に通知することを特徴とする請求項5記載の通信統制局。
【請求項7】
前記統合ゲートウェイ装置が、少なくとも前記制限状態情報に基づいて予め設定された優先度の通信の新規受付の抑止と当該優先度の通信の切断/接続を行うことを特徴とする請求項6記載の通信統制局。
【請求項8】
前記複数の衛星回線が、少なくともXバンドのCDMA(Code Division Multiple Access)の通信衛星に対応する衛星回線と、XバンドのFDMA(Frequency Division Multiple Access)通信衛星に対応する衛星回線と、Kuバンドの通信衛星に対応する衛星回線とを含むことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の通信統制局。
【請求項9】
少なくとも衛星回線毎に回線割り当て制御を行う通信統制局の制御に基づいて、複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行う統合ゲートウェイ装置であって、
前記通信統制局から、前記衛星回線毎の通信状況の監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報が送られてきた時にその制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行う手段を有することを特徴とする統合ゲートウェイ装置。
【請求項10】
前記通信統制局からの制限情報は、前記衛星回線毎に、該衛星回線のトラフィックが予め設定された閾値を超える毎に前記優先度が下位の通信を制限するようにするための制限状態情報であることを特徴とする請求項9記載の統合ゲートウェイ装置。
【請求項11】
前記優先制御及び帯域制御を行う手段は、少なくとも前記制限状態情報に基づいて予め設定された優先度の通信の新規受付の抑止と当該優先度の通信の切断/接続を行うことを特徴とする請求項10記載の統合ゲートウェイ装置。
【請求項12】
前記複数の衛星回線が、少なくともXバンドのCDMA(Code Division Multiple Access)の通信衛星に対応する衛星回線と、XバンドのFDMA(Frequency Division Multiple Access)通信衛星に対応する衛星回線と、Kuバンドの通信衛星に対応する衛星回線とを含むことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の統合ゲートウェイ装置。
【請求項13】
複数の衛星回線を用いて端末間の衛星通信を行うための統合ゲートウェイ装置と、少なくとも前記衛星回線毎に回線割り当て制御及び前記統合ゲートウェイ装置の制御を行う通信統制局とを含む衛星通信システムに用いる優先制御方法であって、
前記通信統制局が、前記衛星回線毎の通信状況を監視する処理と、その監視結果に基づいて優先度が下位の通信を前記衛星回線の輻輳状態が検出される前に制限するための制限情報を前記統合ゲートウェイ装置に通知する処理とを実行し、
前記統合ゲートウェイ装置が、前記通信統制局からの前記制限情報に基づいて前記優先度が下位の通信を制限するための優先制御及び帯域制御を行う処理を実行することを特徴とする優先制御方法。
【請求項14】
前記優先度が下位の通信を制限するための制限情報を通知する処理は、前記衛星回線毎に、前記衛星回線のトラフィックが予め設定された閾値を超える毎に前記優先度が下位の通信を制限するよう制限状態情報を前記統合ゲートウェイ装置に通知することを特徴とする請求項13記載の優先制御方法。
【請求項15】
前記優先制御及び帯域制御を行う処理は、少なくとも前記制限状態情報に基づいて予め設定された優先度の通信の新規受付の抑止と当該優先度の通信の切断/接続を行うことを特徴とする請求項14記載の優先制御方法。
【請求項16】
前記複数の衛星回線が、少なくともXバンドのCDMA(Code Division Multiple Access)の通信衛星に対応する衛星回線と、XバンドのFDMA(Frequency Division Multiple Access)通信衛星に対応する衛星回線と、Kuバンドの通信衛星に対応する衛星回線とを含むことを特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の優先制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−300908(P2008−300908A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141364(P2007−141364)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、防衛省、「指揮統制用衛星通信システムの研究試作」試作研究契約、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】