衛星通信装置
【課題】 この発明は、送信電力及び回線速度制御のための回線を使用せずに送信電力制御を行うことができる衛星通信装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 受信部2を経て復調部3にて受信波を受信する。復調部3は、制御部7と制御/状態情報をやりとりするとともに、受信波を復調し、端末4へ受信データを送出する。また、復調部3は受信C/Nデータを測定し、制御部7の受信C/Nマージン演算部8へ出力する。制御部7では、受信C/Nマージン演算部8で演算された受信C/Nマージンが送信電力演算部9に入力され、送信電力演算部9で送信電力制御値を演算し、送信電力値を変調部5に設定することにより、送信波の電力を制御する。変調部5は、制御部7から制御を受け、端末4から入力される送信データを変調し、送信波を送信部6を通じて衛星回線に送出する。
【解決手段】 受信部2を経て復調部3にて受信波を受信する。復調部3は、制御部7と制御/状態情報をやりとりするとともに、受信波を復調し、端末4へ受信データを送出する。また、復調部3は受信C/Nデータを測定し、制御部7の受信C/Nマージン演算部8へ出力する。制御部7では、受信C/Nマージン演算部8で演算された受信C/Nマージンが送信電力演算部9に入力され、送信電力演算部9で送信電力制御値を演算し、送信電力値を変調部5に設定することにより、送信波の電力を制御する。変調部5は、制御部7から制御を受け、端末4から入力される送信データを変調し、送信波を送信部6を通じて衛星回線に送出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムにおける衛星通信装置の送信電力は、一般的に通信場所や天候の変化を考慮して、所望の回線が必要とする電力値に対してある程度のマージンを積んだ回線設計を行う。この場合、良好な環境で使用する時、このマージン値は余剰電力となるため、衛星中継器の使用効率から考えて効率的とは言えない。そこで、この余剰電力を計算し、送信電力値や送信回線速度に反映することによって、効率的な電力マネジメントを行う方法が用いられる。従来の方法としては、特開2003−278004号公報に記載のように受信電力のマージン値を制御回線を用いて送信側へ伝える方法がある。また、特開2002−335198号公報には、衛星からのビーコンレベルを測定し、衛星のダウンリンクの送信電力を制御する方法が、特開2005−268973号公報には、統制する局が送信局の位置を把握しており、送信局へ送信電力値を伝える方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−278004号公報
【特許文献2】特開2002−335198号公報
【特許文献3】特開2005−268973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1又は特許文献3に記載された方法では、自局衛星通信装置と相手局衛星通信装置との間に本来伝送しようとする音声・映像やデータ以外に、送信電力制御情報をやりとりするための回線を別途確保する必要があり、余分なオーバーヘッドの増大につながるという問題点があった。また、特許文献2に記載された方法では、衛星本体にダウンリンクを制御する機能が必要となり、このような衛星における機能化による部品・コスト上昇が問題点であるとともに、さらには既存の衛星(ダウンリンク制御しない衛星)との制御インタフェースを衛星通信装置に備える必要が生じる可能性もあり、機能の複雑化によるコスト上昇が問題点となる。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、送信電力及び回線速度制御のための回線を使用せずに送信電力制御を行うことができる衛星通信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る衛星通信装置は、相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクとの規定電力差を差し引いて送信電力制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明に係る衛星通信装置は、相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクの規定電力差を差し引いた値に基づいて送信回線速度制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、リターンリンクにより受信した受信信号の電力レベルに基づいて、フォワードリンクの送信電力制御を行うので、相手局衛星通信装置との間に送信電力情報を通知するための回線を不要とすることができ、衛星回線の帯域を占有する余分な制御データによるオーバーヘッドの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置による送信電力制御の模式図である。
【図3】規定電力差に関し衛星局の送受信ビームにより説明する模式図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。
【図5】送信電力制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。
【図6】送信電力制御シーケンスにおける送信電力制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。
【図7】送信電力制御シーケンスにおける送信電力制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図8】送信電力変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図9】送信電力制御シーケンスにおける送信電力制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置による送信回線速度制御の模式図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。
【図13】送信回線速度制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。
【図14】送信回線速度制御シーケンスにおける送信回線速度制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。
【図15】送信回線速度制御シーケンスにおける送信回線速度制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図16】送信回線速度変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図17】送信回線速度制御シーケンスにおける送信回線速度制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。
【図18】この発明の実施の形態3に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
【0011】
この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置について図1乃至図10を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。図1において、1は衛星との間で電波を送受信するアンテナ、2は受信部、3は受信波を復調し端末4へ出力する復調部、5は端末4からの送信データを変調する変調部、6は送信部、7は復調部3及び変調部5を制御する制御部である。制御部7において、8は復調部3で測定した受信C/Nデータに基づき受信C/Nマージンを演算する受信C/Nマージン演算部、9は受信C/Nマージンに基づき送信電力制御値を演算する送信電力演算部である。
【0012】
この衛星通信装置の動作について説明する。受信部2を経て復調部3にて受信波を受信する。復調部3は、制御部7と制御/状態情報をやりとりするとともに、受信波を復調し、端末4へ受信データを送出する。また、復調部3は受信C/Nデータを測定し、制御部7の受信C/Nマージン演算部8へ出力する。制御部7では、受信C/Nマージン演算部8で演算された受信C/Nマージンが送信電力演算部9に入力され、送信電力演算部9で送信電力制御値を演算し、送信電力値を変調部5に設定することにより、送信波の電力を制御する。変調部5は、制御部7から制御を受け、端末4から入力される送信データを変調し、送信波を送信部6を通じて衛星回線に送出する。
【0013】
次に衛星通信装置による送信電力制御について図2を用いてその概略を説明する。図2はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信装置による送信電力制御の模式図である。図2において10は衛星局、11は自局衛星通信装置(以下、自局11と呼ぶ。)、12は相手局衛星通信装置(以下、相手局12と呼ぶ。)である。自局11と相手局12とは衛星局10を介して通信を行っており、自局11から相手局12への送信回線をフォワードリンク、相手局12から自局11への送信回線をリターンリンクとして表記する。送信電力制御は、概ね次の(1)から(4)の手順よりなる。(1)自局11にてリターンリンク回線で相手局12からの送信波を受信する。(2)自局11はリターンリンクの受信マージンから自局のフォワードリンクの送信電力のマージン値を計算する。(3)自局11は、計算した送信電力のマージン値を自局の送信電力に反映する。(4)自局11は、反映された自局の送信電力で電波発射する。とくに(2)の送信電力のマージン値の計算において、規定電力差ΔPを考慮することが本発明の1つの特徴である。
【0014】
規定電力差ΔPについて図3を用いて説明する。図3は規定電力差ΔPに関し衛星局12の送受信ビームにより説明する模式図である。図3(a)は衛星局10に搭載した送信アンテナ13のビームカバレッジを示しており、送信アンテナ13の利得Qtは送信アンテナ13固定の仰角θ、方位角φの関数Qt(θ、φ)として表せる。また、図3(b)は衛星局10に搭載した受信アンテナ14のビームカバレッジを示しており、受信アンテナ14の利得Qrは受信アンテナ14固定の仰角θ、方位角φの関数Qr(θ、φ)として表せる。なお便宜上、送信アンテナ13と受信アンテナ14のそれぞれに固定した座標系である仰角θ、方位角φは同一であるとしておく。いま、この座標系でみて、自局11が(θ1、φ1)に、相手局12が(θ2、φ2)に位置するものとする。このとき、自局11が図2のリターンリンクにより受信する受信信号の電力における衛星局10搭載アンテナの利得寄与分Q1はQ1=Qr(θ1、φ1)+Qt(θ2、φ2)となる。一方、相手局12が図2のフォワードリンクにより受信する受信信号の電力における衛星局10搭載アンテナの利得寄与分Q2はQ2=Qr(θ2、φ2)+Qt(θ1、φ1)となる。
【0015】
そうすると、リターンリンクにおける自局11の受信レベルと、フォワードリンクにおける相手局12の受信レベルとの間には、少なくともQ1−Q2の電力差を生じ得ることがわかる。ここで、関数Qt(θ、φ)及びQr(θ、φ)は、アンテナ設計上の理論解、又はアンテナ製造後の性能試験データにより既知となるので、自局11及び相手局12の位置(θ1、φ1)及び(θ2、φ2)を任意のすべての位置に変化させて調べることにより、電力差(Q1−Q2)の最大値を求めることができる。規定電力差ΔPを予め決めておく1つの方法は、電力差(Q1−Q2)の最大値をΔPとするものである。
【0016】
また、規定電力差ΔPを予め決めておく別の方法は、電力差(Q1−Q2)の上側3σ値をΔPとするものである。また、最大値や上側3σ値にマージン量を加えて規定電力差ΔPとすることや、さらにはリターンリンクとフォワードリンクの他の要素(例えば衛星
局12内のアンプの周波数特性等)を加えることなど、規定電力差ΔPを決める手法は種々考え得る。上述した規定電力差ΔPの設定は1つの例であり、これは衛星局10による中継の利得差に基づき規定電力差ΔPを設定したものであると言える。
【0017】
次に送信電力制御の手順について図4乃至図9を用いて詳細に説明する。図4はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。図4に示す処理シーケンスを送信電力制御シーケンスと定義し、図4に示す各段階(1)〜(7)による処理が行われる。(1)は送信電力制御の開始を判定する段階であり、この処理シーケンスの開始条件として自局11の電波発射と自局11の復調部3における受信同期を条件とする。(2)は受信C/Nを測定する段階であり、送信電力制御シーケンスの開始後に、相手局12の送信電力制御シーケンスの開始との時間差吸収のため、整合タイマをt1時間設け、その後t2時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(3)は送信電力制御を実施する段階であり、t2時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信電力の制御を実施する。
【0018】
(4)は再度受信C/Nを測定する段階であり、送信電力制御実施後、相手局12の送信電力制御実施との時間差吸収のため、整合タイマt3時間を設け、その後t4時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(5)は段階(4)後の送信電力制御を実施する段階であり、t4時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信電力の制御を実施する。(6)は更なる繰り返しの段階であり、段階(4)と(5)を繰り返すことによって周期的に送信電力制御を実施する。(7)は終了判定を行う段階であり、送信電力制御シーケンスの終了は自局11または相手局12のどちらか一方の停波を受けて受信非同期を確認することを条件とする。このとき、受信復調が非同期状態になれば自動的に停波する。
【0019】
図5は送信電力制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。運用開始後、ステップS1の送信電力制御シーケンス開始判定を経て、ステップS2の送信電力制御シーケンス実施に移行する。また、ステップS2の送信電力制御シーケンス実施とステップS3の送信電力制御シーケンス継続判定は並列に処理する。なお、図5乃至図9に示す制御処理フローチャートは各衛星通信装置内において実行されている。
【0020】
図6は図5で示した送信電力制御シーケンスにおけるステップS1の送信電力制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。ステップS11において、制御部7は復調部3及び変調部5へ初期化処理として既知の所要電力としてのノミナル値を設定し、自局11の電波発射(ステップS12)と自局11の復調部3での受信同期(ステップS13)を送信電力制御シーケンス実施(ステップS2)の開始判定とする。
【0021】
図7は図5で示した送信電力制御シーケンスにおけるステップS2の送信電力制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。制御部7は、相手局12との送信電力制御シーケンスの開始までのタイミングの時間差を吸収する整合タイマのt1時間後(ステップS21)を設け、その後、t2時間の間、復調部3から入力される受信C/Nデータの平均化処理を受信C/Nマージン演算部8により行う(ステップS22)。t2時間後、受信C/Nマージン演算部8は、測定した受信C/N平均値と既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信電力を変更する(ステップS23)。送信電力の変更後は、再度相手局12との送信電力制御の実施のタイミング誤差を吸収するための整合タイマのt3時間を設け(ステップS24)、その後、t4時間の間、受信C/Nマージン演算部8により受信C/Nの平均化処理を実施する(ステップS25)。ステップS23、S24、S25の各ステップを繰り返すことにより、周期的に送信電力制御を実施する。
【0022】
図8は図7で示したステップS23の送信電力変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。この図8により説明するフローチャートにおいて、上述の規定電力差ΔPを用いるものであり、このΔPは制御しないレベル差として用いる。まず、ステップS231において、送信電力演算部9は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより小さいかまたは等しい場合は、ステップS232に移行して変調部5の送信電力は制御しない。ステップS231において、送信電力演算部9は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより大きい場合、ステップS233に移行し、受信C/Nマージンの正負にしたがって処理を分岐する。送信電力演算部9は、変調部5に受信C/NマージンからΔPを差し引いた値を反映する(ステップS234、S235)。リターンリンクで受信する既知の所要電力からの受信マージンを自局11が電波発射するフォワードリンクのマージンとして反映するため、規定電力差ΔPを越えた送信電力の変更を行うと、フォワードリンクのマージン以上の変更となる可能性がある。したがって、ΔPを制御しないレベル差として設定している。
【0023】
図9は図5で示した送信電力制御シーケンスにおけるステップS3の送信電力制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。送信電力制御シーケンス実施時の自局11における復調部3の受信同期(ステップS31)によって送信電力制御シーケンスの継続を判定するものであり、自局11における復調部3の受信非同期により、自局11の変調部5を停波し(ステップS32)、その後、送信電力制御シーケンス開始判定(ステップS1)に移行する。
【0024】
以上のように、この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置によって、自局11はリターンリンクの受信C/Nマージンに規定電力差ΔPを制御しない電力差として考慮し、フォワードリンクの送信電力制御を行うので、送信電力の過剰制御による相手局12の受信エラーを防ぐことができる。また、この方法によって、自局11と相手局12との間に送信電力のマージン値を通知するための制御回線が不要となるので、衛星回線の帯域を占有する余分な制御データによるオーバーヘッドの発生を防ぐことができる。
【0025】
実施の形態2
【0026】
この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置について図10乃至図17を用いて説明する。図10はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。図10において、15は入力される受信C/Nマージンに基づき送信回線速度制御値を演算し、この値を変調部5に設定することにより、送信波の送信回線速度を制御する送信回線速度演算部である。このとき変調部5は、制御部7からの制御を受け、端末4から入力される送信データを変調し、送信波を送信部6を通じて衛星回線に送出する。なお、図10において図1と同一の符号を付した回路及び部品は、図1におけるそれらの回路及び部品と同一又は相当する回路及び部品である。
【0027】
次に衛星通信装置による送信電力制御について図11を用いてその概略を説明する。図11はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信装置による送信回線速度制御の模式図である。送信回線速度制御は、概ね次の(1)から(4)の手順よりなる。(1)自局11にてリターンリンク回線で相手局12からの送信波を受信する。(2)自局11はリターンリンクの受信マージンから自局のフォワードリンクの送信電力のマージン値を計算する。(3)自局11は、計算した送信電力のマージン値を自局の送信回線速度に反映する。(4)自局11は、反映された自局の送信回線速度で電波発射する。とくに(2)の送信電力のマージン値の計算において規定電力差ΔPを考慮する点が本発明の1つの特徴である。なお、規定電力差ΔPについては実施の形態1において図3を用いて説明したとおりであるので、本実施の形態においては説明を省略する。
【0028】
次に送信回線速度制御の手順について図12乃至図17を用いて詳細に説明する。図12はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。図12に示す処理シーケンスを送信回線速度制御シーケンスと定義し、図12に示す各段階(1)〜(7)による処理が行われる。(1)は送信回線速度制御の開始を判定する段階であり、この処理シーケンスの開始条件として自局11の電波発射と自局11の復調部3における受信同期を条件とする。(2)は受信C/Nを測定する段階であり、送信回線速度制御シーケンスの開始後に、T1時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(3)は送信回線速度制御を実施する段階であり、T1時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信回線速度の制御を実施する。
【0029】
(4)は再度受信C/Nを測定する段階であり、T2時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(5)は段階(4)後の送信回線速度制御を実施する段階であり、T2時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信回線速度の制御を実施する。(6)は更なる繰り返しの段階であり、段階(4)と(5)を繰り返すことによって周期的に送信回線速度制御を実施する。(7)は終了判定を行う段階であり、送信回線速度制御シーケンスの終了は自局11または相手局12のどちらか一方の停波を受けて受信非同期を確認することを条件とする。このとき、受信復調が非同期状態になれば自動的に停波する。
【0030】
図13は送信回線速度制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。運用開始後、ステップS4の送信回線速度制御シーケンス開始判定を経て、ステップS5の送信回線速度制御シーケンス実施に移行する。また、ステップS5の送信回線速度制御シーケンス実施とステップS6の送信回線速度制御シーケンス継続判定は並列に処理する。なお、図13乃至図17に示す制御処理フローチャートは各衛星通信装置内において実行される。
【0031】
図14は図13で示した送信回線速度制御シーケンスにおけるステップS4の送信回線速度制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。ステップS41において、制御部7は復調部3及び変調部5へ初期化処理として既知の回線速度としてのノミナル値を設定し、自局11の電波発射(ステップS42)と自局11の復調部3での受信同期(ステップS43)を送信回線速度制御シーケンス実施(ステップS5)の開始判定とする。
【0032】
図15は図13で示した送信回線速度制御シーケンスにおけるステップS5の送信回線速度制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。制御部7は、T1時間の間、復調部3から入力される受信C/Nデータの平均化処理を受信C/Nマージン演算部8により行う(ステップS51)。T1時間後、受信C/Nマージン演算部8は、測定した受信C/N平均値と既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信回線速度を変更する(ステップS52)。送信回線速度の変更後は、再度T2時間の間、受信C/Nマージン演算部8により受信C/Nの平均化処理を実施する(ステップS53)。ステップS52、S53の各ステップを繰り返すことにより、周期的に送信回線速度制御を実施する。
【0033】
図16は図15で示したステップS52の送信回線速度変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。この図16により説明するフローチャートにおいて、上述の規定電力差ΔPを用いるものであり、このΔPは制御しないレベル差として用いる。まず、ステップS521において、送信回線速度演算部15は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより小さいかまたは等しい場合は、ステップS522に移行して変調部5の送信回線速度は制御しない。ステップS521において、送信回線速度演算部15は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより大きい場合、ステップS523に移行し、変調部5に受信C/NマージンからΔPを差し引いた値を元にした送信回線速度を反映する。リターンリンクで受信する既知の所要電力からの受信マージンを自局11が電波発射するフォワードリンクのマージンとして反映するため、規定電力差ΔPを越えた送信回線速度の変更を行うと、フォワードリンクのマージン以上の変更となる可能性がある。したがって、ΔPを制御しないレベル差として設定している。
【0034】
図17は図13で示した送信回線速度制御シーケンスにおけるステップS6の送信回線速度制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。送信回線速度制御シーケンス実施時の自局11における復調部3の受信同期(ステップS61)によって送信回線速度制御シーケンスの継続を判定するものであり、自局11における復調部3の受信非同期により、自局11の変調部5を停波し(ステップS62)、その後、送信電力制御シーケンス開始判定(ステップS4)に移行する。
【0035】
以上のように、この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置によって、自局11はリターンリンクの受信C/Nマージンに規定電力差ΔPを制御しない電力差として考慮し、フォワードリンクの送信回線速度制御を行うので、送信回線速度の過剰制御による相手局12の受信エラーを防ぐことができる。また、この方法によって、自局11と相手局12との間に送信電力のマージン値を通知するための制御回線が不要となるので、衛星回線の帯域を占有する余分な制御データによるオーバーヘッドの発生を防ぐことができる。
【0036】
実施の形態3
【0037】
この発明の実施の形態3に係る衛星通信装置について図18を用いて説明する。図18はこの発明の実施の形態3に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。図18に示す衛星通信装置は、制御部7に送信電力演算部9及び送信回線速度演算部15の両方を備えるものである。なお、図15において図1と同一の符号を付した回路及び部品は、図1におけるそれらの回路及び部品と同一又は相当する回路及び部品である。
【0038】
図18に示す衛星通信装置では、制御部7において、受信C/Nマージン演算部8で演算された受信C/Nマージンを送信電力演算部9による送信電力制御に用いるか、それとも送信回線速度演算部15による送信回線速度制御に用いるかを選択する。選択自体は、装置の操作者が消費電力又は回線速度のいずれを優先するかにより衛星通信装置にユーザーI/Fから設定するものであってもよいし、好ましい送信電力や送信回線速度を予め衛星通信装置に設定しておき、現在値からのずれ量の割合が大きい方の制御を選択するようにしてもよく、いずれの制御を行うかの選択は種々の方法により行うことができる。
【0039】
このように、制御部7において送信電力制御及び送信回線速度制御のいずれかが選択された状態でのそれぞれの制御については、実施の形態1及び実施の形態2で説明したとおりである。
【符号の説明】
【0040】
3 復調部
5 変調部
7 制御部
8 受信C/Nマージン演算部
9 送信電力演算部
10 衛星局
11 自局衛星通信装置
12 相手局衛星通信装置
15 送信回線速度演算部
【技術分野】
【0001】
この発明は、相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムにおける衛星通信装置の送信電力は、一般的に通信場所や天候の変化を考慮して、所望の回線が必要とする電力値に対してある程度のマージンを積んだ回線設計を行う。この場合、良好な環境で使用する時、このマージン値は余剰電力となるため、衛星中継器の使用効率から考えて効率的とは言えない。そこで、この余剰電力を計算し、送信電力値や送信回線速度に反映することによって、効率的な電力マネジメントを行う方法が用いられる。従来の方法としては、特開2003−278004号公報に記載のように受信電力のマージン値を制御回線を用いて送信側へ伝える方法がある。また、特開2002−335198号公報には、衛星からのビーコンレベルを測定し、衛星のダウンリンクの送信電力を制御する方法が、特開2005−268973号公報には、統制する局が送信局の位置を把握しており、送信局へ送信電力値を伝える方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−278004号公報
【特許文献2】特開2002−335198号公報
【特許文献3】特開2005−268973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1又は特許文献3に記載された方法では、自局衛星通信装置と相手局衛星通信装置との間に本来伝送しようとする音声・映像やデータ以外に、送信電力制御情報をやりとりするための回線を別途確保する必要があり、余分なオーバーヘッドの増大につながるという問題点があった。また、特許文献2に記載された方法では、衛星本体にダウンリンクを制御する機能が必要となり、このような衛星における機能化による部品・コスト上昇が問題点であるとともに、さらには既存の衛星(ダウンリンク制御しない衛星)との制御インタフェースを衛星通信装置に備える必要が生じる可能性もあり、機能の複雑化によるコスト上昇が問題点となる。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、送信電力及び回線速度制御のための回線を使用せずに送信電力制御を行うことができる衛星通信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る衛星通信装置は、相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクとの規定電力差を差し引いて送信電力制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明に係る衛星通信装置は、相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクの規定電力差を差し引いた値に基づいて送信回線速度制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、リターンリンクにより受信した受信信号の電力レベルに基づいて、フォワードリンクの送信電力制御を行うので、相手局衛星通信装置との間に送信電力情報を通知するための回線を不要とすることができ、衛星回線の帯域を占有する余分な制御データによるオーバーヘッドの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置による送信電力制御の模式図である。
【図3】規定電力差に関し衛星局の送受信ビームにより説明する模式図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。
【図5】送信電力制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。
【図6】送信電力制御シーケンスにおける送信電力制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。
【図7】送信電力制御シーケンスにおける送信電力制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図8】送信電力変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図9】送信電力制御シーケンスにおける送信電力制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置による送信回線速度制御の模式図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。
【図13】送信回線速度制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。
【図14】送信回線速度制御シーケンスにおける送信回線速度制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。
【図15】送信回線速度制御シーケンスにおける送信回線速度制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図16】送信回線速度変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。
【図17】送信回線速度制御シーケンスにおける送信回線速度制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。
【図18】この発明の実施の形態3に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
【0011】
この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置について図1乃至図10を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。図1において、1は衛星との間で電波を送受信するアンテナ、2は受信部、3は受信波を復調し端末4へ出力する復調部、5は端末4からの送信データを変調する変調部、6は送信部、7は復調部3及び変調部5を制御する制御部である。制御部7において、8は復調部3で測定した受信C/Nデータに基づき受信C/Nマージンを演算する受信C/Nマージン演算部、9は受信C/Nマージンに基づき送信電力制御値を演算する送信電力演算部である。
【0012】
この衛星通信装置の動作について説明する。受信部2を経て復調部3にて受信波を受信する。復調部3は、制御部7と制御/状態情報をやりとりするとともに、受信波を復調し、端末4へ受信データを送出する。また、復調部3は受信C/Nデータを測定し、制御部7の受信C/Nマージン演算部8へ出力する。制御部7では、受信C/Nマージン演算部8で演算された受信C/Nマージンが送信電力演算部9に入力され、送信電力演算部9で送信電力制御値を演算し、送信電力値を変調部5に設定することにより、送信波の電力を制御する。変調部5は、制御部7から制御を受け、端末4から入力される送信データを変調し、送信波を送信部6を通じて衛星回線に送出する。
【0013】
次に衛星通信装置による送信電力制御について図2を用いてその概略を説明する。図2はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信装置による送信電力制御の模式図である。図2において10は衛星局、11は自局衛星通信装置(以下、自局11と呼ぶ。)、12は相手局衛星通信装置(以下、相手局12と呼ぶ。)である。自局11と相手局12とは衛星局10を介して通信を行っており、自局11から相手局12への送信回線をフォワードリンク、相手局12から自局11への送信回線をリターンリンクとして表記する。送信電力制御は、概ね次の(1)から(4)の手順よりなる。(1)自局11にてリターンリンク回線で相手局12からの送信波を受信する。(2)自局11はリターンリンクの受信マージンから自局のフォワードリンクの送信電力のマージン値を計算する。(3)自局11は、計算した送信電力のマージン値を自局の送信電力に反映する。(4)自局11は、反映された自局の送信電力で電波発射する。とくに(2)の送信電力のマージン値の計算において、規定電力差ΔPを考慮することが本発明の1つの特徴である。
【0014】
規定電力差ΔPについて図3を用いて説明する。図3は規定電力差ΔPに関し衛星局12の送受信ビームにより説明する模式図である。図3(a)は衛星局10に搭載した送信アンテナ13のビームカバレッジを示しており、送信アンテナ13の利得Qtは送信アンテナ13固定の仰角θ、方位角φの関数Qt(θ、φ)として表せる。また、図3(b)は衛星局10に搭載した受信アンテナ14のビームカバレッジを示しており、受信アンテナ14の利得Qrは受信アンテナ14固定の仰角θ、方位角φの関数Qr(θ、φ)として表せる。なお便宜上、送信アンテナ13と受信アンテナ14のそれぞれに固定した座標系である仰角θ、方位角φは同一であるとしておく。いま、この座標系でみて、自局11が(θ1、φ1)に、相手局12が(θ2、φ2)に位置するものとする。このとき、自局11が図2のリターンリンクにより受信する受信信号の電力における衛星局10搭載アンテナの利得寄与分Q1はQ1=Qr(θ1、φ1)+Qt(θ2、φ2)となる。一方、相手局12が図2のフォワードリンクにより受信する受信信号の電力における衛星局10搭載アンテナの利得寄与分Q2はQ2=Qr(θ2、φ2)+Qt(θ1、φ1)となる。
【0015】
そうすると、リターンリンクにおける自局11の受信レベルと、フォワードリンクにおける相手局12の受信レベルとの間には、少なくともQ1−Q2の電力差を生じ得ることがわかる。ここで、関数Qt(θ、φ)及びQr(θ、φ)は、アンテナ設計上の理論解、又はアンテナ製造後の性能試験データにより既知となるので、自局11及び相手局12の位置(θ1、φ1)及び(θ2、φ2)を任意のすべての位置に変化させて調べることにより、電力差(Q1−Q2)の最大値を求めることができる。規定電力差ΔPを予め決めておく1つの方法は、電力差(Q1−Q2)の最大値をΔPとするものである。
【0016】
また、規定電力差ΔPを予め決めておく別の方法は、電力差(Q1−Q2)の上側3σ値をΔPとするものである。また、最大値や上側3σ値にマージン量を加えて規定電力差ΔPとすることや、さらにはリターンリンクとフォワードリンクの他の要素(例えば衛星
局12内のアンプの周波数特性等)を加えることなど、規定電力差ΔPを決める手法は種々考え得る。上述した規定電力差ΔPの設定は1つの例であり、これは衛星局10による中継の利得差に基づき規定電力差ΔPを設定したものであると言える。
【0017】
次に送信電力制御の手順について図4乃至図9を用いて詳細に説明する。図4はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。図4に示す処理シーケンスを送信電力制御シーケンスと定義し、図4に示す各段階(1)〜(7)による処理が行われる。(1)は送信電力制御の開始を判定する段階であり、この処理シーケンスの開始条件として自局11の電波発射と自局11の復調部3における受信同期を条件とする。(2)は受信C/Nを測定する段階であり、送信電力制御シーケンスの開始後に、相手局12の送信電力制御シーケンスの開始との時間差吸収のため、整合タイマをt1時間設け、その後t2時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(3)は送信電力制御を実施する段階であり、t2時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信電力の制御を実施する。
【0018】
(4)は再度受信C/Nを測定する段階であり、送信電力制御実施後、相手局12の送信電力制御実施との時間差吸収のため、整合タイマt3時間を設け、その後t4時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(5)は段階(4)後の送信電力制御を実施する段階であり、t4時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信電力の制御を実施する。(6)は更なる繰り返しの段階であり、段階(4)と(5)を繰り返すことによって周期的に送信電力制御を実施する。(7)は終了判定を行う段階であり、送信電力制御シーケンスの終了は自局11または相手局12のどちらか一方の停波を受けて受信非同期を確認することを条件とする。このとき、受信復調が非同期状態になれば自動的に停波する。
【0019】
図5は送信電力制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。運用開始後、ステップS1の送信電力制御シーケンス開始判定を経て、ステップS2の送信電力制御シーケンス実施に移行する。また、ステップS2の送信電力制御シーケンス実施とステップS3の送信電力制御シーケンス継続判定は並列に処理する。なお、図5乃至図9に示す制御処理フローチャートは各衛星通信装置内において実行されている。
【0020】
図6は図5で示した送信電力制御シーケンスにおけるステップS1の送信電力制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。ステップS11において、制御部7は復調部3及び変調部5へ初期化処理として既知の所要電力としてのノミナル値を設定し、自局11の電波発射(ステップS12)と自局11の復調部3での受信同期(ステップS13)を送信電力制御シーケンス実施(ステップS2)の開始判定とする。
【0021】
図7は図5で示した送信電力制御シーケンスにおけるステップS2の送信電力制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。制御部7は、相手局12との送信電力制御シーケンスの開始までのタイミングの時間差を吸収する整合タイマのt1時間後(ステップS21)を設け、その後、t2時間の間、復調部3から入力される受信C/Nデータの平均化処理を受信C/Nマージン演算部8により行う(ステップS22)。t2時間後、受信C/Nマージン演算部8は、測定した受信C/N平均値と既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信電力を変更する(ステップS23)。送信電力の変更後は、再度相手局12との送信電力制御の実施のタイミング誤差を吸収するための整合タイマのt3時間を設け(ステップS24)、その後、t4時間の間、受信C/Nマージン演算部8により受信C/Nの平均化処理を実施する(ステップS25)。ステップS23、S24、S25の各ステップを繰り返すことにより、周期的に送信電力制御を実施する。
【0022】
図8は図7で示したステップS23の送信電力変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。この図8により説明するフローチャートにおいて、上述の規定電力差ΔPを用いるものであり、このΔPは制御しないレベル差として用いる。まず、ステップS231において、送信電力演算部9は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより小さいかまたは等しい場合は、ステップS232に移行して変調部5の送信電力は制御しない。ステップS231において、送信電力演算部9は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより大きい場合、ステップS233に移行し、受信C/Nマージンの正負にしたがって処理を分岐する。送信電力演算部9は、変調部5に受信C/NマージンからΔPを差し引いた値を反映する(ステップS234、S235)。リターンリンクで受信する既知の所要電力からの受信マージンを自局11が電波発射するフォワードリンクのマージンとして反映するため、規定電力差ΔPを越えた送信電力の変更を行うと、フォワードリンクのマージン以上の変更となる可能性がある。したがって、ΔPを制御しないレベル差として設定している。
【0023】
図9は図5で示した送信電力制御シーケンスにおけるステップS3の送信電力制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。送信電力制御シーケンス実施時の自局11における復調部3の受信同期(ステップS31)によって送信電力制御シーケンスの継続を判定するものであり、自局11における復調部3の受信非同期により、自局11の変調部5を停波し(ステップS32)、その後、送信電力制御シーケンス開始判定(ステップS1)に移行する。
【0024】
以上のように、この発明の実施の形態1に係る衛星通信装置によって、自局11はリターンリンクの受信C/Nマージンに規定電力差ΔPを制御しない電力差として考慮し、フォワードリンクの送信電力制御を行うので、送信電力の過剰制御による相手局12の受信エラーを防ぐことができる。また、この方法によって、自局11と相手局12との間に送信電力のマージン値を通知するための制御回線が不要となるので、衛星回線の帯域を占有する余分な制御データによるオーバーヘッドの発生を防ぐことができる。
【0025】
実施の形態2
【0026】
この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置について図10乃至図17を用いて説明する。図10はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。図10において、15は入力される受信C/Nマージンに基づき送信回線速度制御値を演算し、この値を変調部5に設定することにより、送信波の送信回線速度を制御する送信回線速度演算部である。このとき変調部5は、制御部7からの制御を受け、端末4から入力される送信データを変調し、送信波を送信部6を通じて衛星回線に送出する。なお、図10において図1と同一の符号を付した回路及び部品は、図1におけるそれらの回路及び部品と同一又は相当する回路及び部品である。
【0027】
次に衛星通信装置による送信電力制御について図11を用いてその概略を説明する。図11はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信装置による送信回線速度制御の模式図である。送信回線速度制御は、概ね次の(1)から(4)の手順よりなる。(1)自局11にてリターンリンク回線で相手局12からの送信波を受信する。(2)自局11はリターンリンクの受信マージンから自局のフォワードリンクの送信電力のマージン値を計算する。(3)自局11は、計算した送信電力のマージン値を自局の送信回線速度に反映する。(4)自局11は、反映された自局の送信回線速度で電波発射する。とくに(2)の送信電力のマージン値の計算において規定電力差ΔPを考慮する点が本発明の1つの特徴である。なお、規定電力差ΔPについては実施の形態1において図3を用いて説明したとおりであるので、本実施の形態においては説明を省略する。
【0028】
次に送信回線速度制御の手順について図12乃至図17を用いて詳細に説明する。図12はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信端末の処理全体を示す処理シーケンス図である。図12に示す処理シーケンスを送信回線速度制御シーケンスと定義し、図12に示す各段階(1)〜(7)による処理が行われる。(1)は送信回線速度制御の開始を判定する段階であり、この処理シーケンスの開始条件として自局11の電波発射と自局11の復調部3における受信同期を条件とする。(2)は受信C/Nを測定する段階であり、送信回線速度制御シーケンスの開始後に、T1時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(3)は送信回線速度制御を実施する段階であり、T1時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信回線速度の制御を実施する。
【0029】
(4)は再度受信C/Nを測定する段階であり、T2時間にかけて受信C/Nの平均化処理を実施する。(5)は段階(4)後の送信回線速度制御を実施する段階であり、T2時間かけて測定した受信C/Nと既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信回線速度の制御を実施する。(6)は更なる繰り返しの段階であり、段階(4)と(5)を繰り返すことによって周期的に送信回線速度制御を実施する。(7)は終了判定を行う段階であり、送信回線速度制御シーケンスの終了は自局11または相手局12のどちらか一方の停波を受けて受信非同期を確認することを条件とする。このとき、受信復調が非同期状態になれば自動的に停波する。
【0030】
図13は送信回線速度制御シーケンスにおける制御処理フローを示すフローチャート図である。運用開始後、ステップS4の送信回線速度制御シーケンス開始判定を経て、ステップS5の送信回線速度制御シーケンス実施に移行する。また、ステップS5の送信回線速度制御シーケンス実施とステップS6の送信回線速度制御シーケンス継続判定は並列に処理する。なお、図13乃至図17に示す制御処理フローチャートは各衛星通信装置内において実行される。
【0031】
図14は図13で示した送信回線速度制御シーケンスにおけるステップS4の送信回線速度制御シーケンス開始判定部分のフローチャート図である。ステップS41において、制御部7は復調部3及び変調部5へ初期化処理として既知の回線速度としてのノミナル値を設定し、自局11の電波発射(ステップS42)と自局11の復調部3での受信同期(ステップS43)を送信回線速度制御シーケンス実施(ステップS5)の開始判定とする。
【0032】
図15は図13で示した送信回線速度制御シーケンスにおけるステップS5の送信回線速度制御シーケンス実施部分のフローチャート図である。制御部7は、T1時間の間、復調部3から入力される受信C/Nデータの平均化処理を受信C/Nマージン演算部8により行う(ステップS51)。T1時間後、受信C/Nマージン演算部8は、測定した受信C/N平均値と既知の所要電力とから受信C/Nのマージンを計算し、自局11の送信回線速度を変更する(ステップS52)。送信回線速度の変更後は、再度T2時間の間、受信C/Nマージン演算部8により受信C/Nの平均化処理を実施する(ステップS53)。ステップS52、S53の各ステップを繰り返すことにより、周期的に送信回線速度制御を実施する。
【0033】
図16は図15で示したステップS52の送信回線速度変更シーケンス実施部分のフローチャート図である。この図16により説明するフローチャートにおいて、上述の規定電力差ΔPを用いるものであり、このΔPは制御しないレベル差として用いる。まず、ステップS521において、送信回線速度演算部15は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより小さいかまたは等しい場合は、ステップS522に移行して変調部5の送信回線速度は制御しない。ステップS521において、送信回線速度演算部15は、受信C/NマージンΔC/Nの絶対値がΔPより大きい場合、ステップS523に移行し、変調部5に受信C/NマージンからΔPを差し引いた値を元にした送信回線速度を反映する。リターンリンクで受信する既知の所要電力からの受信マージンを自局11が電波発射するフォワードリンクのマージンとして反映するため、規定電力差ΔPを越えた送信回線速度の変更を行うと、フォワードリンクのマージン以上の変更となる可能性がある。したがって、ΔPを制御しないレベル差として設定している。
【0034】
図17は図13で示した送信回線速度制御シーケンスにおけるステップS6の送信回線速度制御シーケンス継続判定部分のフローチャート図である。送信回線速度制御シーケンス実施時の自局11における復調部3の受信同期(ステップS61)によって送信回線速度制御シーケンスの継続を判定するものであり、自局11における復調部3の受信非同期により、自局11の変調部5を停波し(ステップS62)、その後、送信電力制御シーケンス開始判定(ステップS4)に移行する。
【0035】
以上のように、この発明の実施の形態2に係る衛星通信装置によって、自局11はリターンリンクの受信C/Nマージンに規定電力差ΔPを制御しない電力差として考慮し、フォワードリンクの送信回線速度制御を行うので、送信回線速度の過剰制御による相手局12の受信エラーを防ぐことができる。また、この方法によって、自局11と相手局12との間に送信電力のマージン値を通知するための制御回線が不要となるので、衛星回線の帯域を占有する余分な制御データによるオーバーヘッドの発生を防ぐことができる。
【0036】
実施の形態3
【0037】
この発明の実施の形態3に係る衛星通信装置について図18を用いて説明する。図18はこの発明の実施の形態3に係る衛星通信装置の構成を表す機能ブロック図である。図18に示す衛星通信装置は、制御部7に送信電力演算部9及び送信回線速度演算部15の両方を備えるものである。なお、図15において図1と同一の符号を付した回路及び部品は、図1におけるそれらの回路及び部品と同一又は相当する回路及び部品である。
【0038】
図18に示す衛星通信装置では、制御部7において、受信C/Nマージン演算部8で演算された受信C/Nマージンを送信電力演算部9による送信電力制御に用いるか、それとも送信回線速度演算部15による送信回線速度制御に用いるかを選択する。選択自体は、装置の操作者が消費電力又は回線速度のいずれを優先するかにより衛星通信装置にユーザーI/Fから設定するものであってもよいし、好ましい送信電力や送信回線速度を予め衛星通信装置に設定しておき、現在値からのずれ量の割合が大きい方の制御を選択するようにしてもよく、いずれの制御を行うかの選択は種々の方法により行うことができる。
【0039】
このように、制御部7において送信電力制御及び送信回線速度制御のいずれかが選択された状態でのそれぞれの制御については、実施の形態1及び実施の形態2で説明したとおりである。
【符号の説明】
【0040】
3 復調部
5 変調部
7 制御部
8 受信C/Nマージン演算部
9 送信電力演算部
10 衛星局
11 自局衛星通信装置
12 相手局衛星通信装置
15 送信回線速度演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクとの規定電力差を差し引いて送信電力制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えた衛星通信装置。
【請求項2】
相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクの規定電力差を差し引いた値に基づいて送信回線速度制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えた衛星通信装置。
【請求項1】
相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクとの規定電力差を差し引いて送信電力制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えた衛星通信装置。
【請求項2】
相手局衛星通信装置へ送信するフォワードリンクと相手局衛星通信装置から受信するリターンリンクにより衛星局を介して相手局衛星通信装置との間で衛星通信を行う衛星通信装置において、上記リターンリンクにより受信した受信信号を復調し、電力レベルを測定する復調部と、上記フォワードリンクにより送信する送信信号を変調し、送信電力を可変する変調部と、上記復調部により測定した電力レベルから電力マージン値を演算し、リターンリンクとフォワードリンクの規定電力差を差し引いた値に基づいて送信回線速度制御値を演算して上記変調部へ指令する制御部とを備えた衛星通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−199488(P2011−199488A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62638(P2010−62638)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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