説明

衝撃吸収装置及び車両

【課題】連結された車両間に生じる衝撃を緩衝し、車両同士の衝突による車体の損傷を軽減する。
【解決手段】相互に連結された車両10間に、複数の衝撃吸収体21を有した衝撃吸収装置100が設けられる。衝撃吸収体21は妻面30の側端部に取り付けられる。連結された車両10間に衝撃圧縮力が生じると、衝撃吸収体21が、妻面30に衝突し、衝突による衝撃エネルギーを吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に連結された車両同士の衝突による衝撃エネルギーを緩和する衝撃吸収装置及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車同士の追突事故や列車と障害物の衝突事故が起こると、列車を編成する後続車両間に衝撃圧縮力が生じる。車両同士の連結時の衝撃や列車の加減速時に生じる車両間の圧縮、引張などを吸収する装置として、連結器の後方に、緩衝装置が設けられている。しかし、衝撃が大きい場合は、緩衝装置によって衝撃を吸収することができず、緩衝装置が破損する。そして、連結器も破損し、車端部同士が衝突し、車体が損傷する。このような車両同士の衝突を緩和する装置として、例えば、特許文献1の図4,5に、車両間の直撃防止用緩衝装置が開示されている。この緩衝装置は、車両の妻面の上端部及び側端部などに油バッグを配置させ、車両同士の衝撃を油バッグによって緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両の妻面の側端部には、乗客がプラットホームから車両間の隙間に転落することを防止する転落防止装置(外ホロ)が取り付けられる。このため、車両の妻面において、緩衝装置と転落防止装置との位置関係を明確にすることが要求される。しかし、特許文献1には、緩衝装置と転落防止装置との位置関係について明記されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、新たな設置スペースを確保することなく、同編成内の車端部同士の衝突による衝撃を緩和する衝撃緩衝機能と乗客が車両間の隙間へ転落することを防止する転落防止機能とを併せ持つ衝撃吸収装置及びこれを用いた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の衝撃吸収装置は、相互に連結された車両同士の衝突時の衝撃を緩和するとともに乗客がプラットホームから車両間の隙間へ転落することを防止する衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収装置が、相互に連結された車両間に配置されるものであり、車両の妻面の側端部に取り付けられ、且つ、塑性変形することによって衝突時の衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収体を有しており、相互に連結された2両の車両のうち一方の車両の妻面の側端部に取り付けられた衝撃吸収体が、対向する他方の車両の妻面に向けて延在する。
【0007】
本発明によると、車両間に衝撃圧縮力が生じると、衝撃吸収体が対向する妻面に衝突し塑性変形することによって衝撃を吸収する。これによって、車両間に大きな衝撃圧縮力が生じても、車端部(車体)の損傷を軽減することができる。また、本発明の衝撃吸収装置によって車両間に生じる隙間が塞がれる。これにより、乗客がプラットホームから車両間の隙間へ転落することを防止することができる。このように、本発明に係る装置は、衝撃緩衝機能及び転落防止機能を併せ持つ。さらに、本発明の衝撃吸収装置は、転落防止装置取り付け用のスペースに取り付けられるので、衝撃吸収装置を取り付けるための新たな設置スペースを確保しなくてよい。
【0008】
また、本発明の衝撃吸収装置は、上述の衝撃吸収体の先端に他方の車両の妻面に向けて延設された弾性体をさらに有していることが好ましい。列車の走行路線には曲線路線が存在するので、曲線路線の走行中に、対向する妻面に取り付けられた衝撃吸収体同士が接触したり、衝撃吸収体が対向する妻面に接触したりしないように衝撃吸収体が形成される。路線条件によっては衝撃吸収体の長手方向の長さが短くなり、衝撃吸収体だけでは車両間の隙間を十分に塞ぐことができないが、衝撃吸収体の先端に設けられた弾性体によって車両間の隙間を塞ぐことができる。このように、列車の走行路線に応じて衝撃吸収体の形状を変更しても、本発明の衝撃吸収装置は衝撃緩衝機能及び転落防止機能を十分に発揮する。
【0009】
また、本発明の衝撃吸収装置において、連結された2両の車両のうち一方の車両の妻面の側端部に取り付けられた前記衝撃吸収体と、対向する他方の車両の妻面の側端部に取り付けられた前記衝撃吸収体とが、上下方向に相互にずれて配設されることが好ましい。これによると、列車の走行路線に曲線路線が存在し、列車の走行中に対向する妻面同士が接近しても、対向する妻面の各々に取り付けられた衝撃吸収体同士が接触することがない。このため、列車の走行路線に応じて衝撃吸収体の形状を変更する必要がない(例えば、衝撃吸収体の車両への取付部から先端部までの長手方向の長さを短く調整する必要がない)。これによって、簡易な構成で、連結された車両間の衝撃を十分に吸収できるとともに連結された車両間の隙間を塞ぐことができる。
【0010】
また、本発明の衝撃吸収装置において、上記衝撃吸収体が、金属製の材料からなることが好ましい。これによると、金属製の衝撃吸収体によって衝撃をより十分に吸収することができる。また、簡易な構造で、かつメンテナンスに優れた装置となる。
【0011】
また、本発明の連結された複数の車両は、相互に連結された車両間に配置された上述の衝撃吸収装置を備えていることが好ましい。これによると、衝撃吸収装置によって、同編成内の車端部同士の衝突による衝撃を吸収できるので、車体の損傷を軽減することができる。また、衝撃吸収装置によって、相互に連結された車両間の隙間が塞がれるため、乗客がプラットホームから車両間の隙間へ転落することを防止することができる。さらに、衝撃吸収装置を取り付けるための新たな設置スペースを確保する必要がないため、既存の車両に衝撃吸収装置を取り付けることができ、簡易な構成で衝撃緩衝機能及び転落防止機能を発揮する。
【0012】
また、上述の車両において、衝撃吸収体の強度が、衝撃吸収体に対向する車両の妻面の強度より低いことが好ましい。これによると、衝撃吸収体、又は弾性体が延設された衝撃吸収体が対向する妻面に衝突しても、衝撃吸収体が確実に塑性変形して衝撃エネルギーを吸収する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の衝撃吸収装置及び車両によると、同編成内の車端部同士の衝突による衝撃を衝撃吸収体によって吸収し緩和できるので、車体の損傷を軽減することができる。また、衝撃吸収装置が、相互に連結された車両間に設けられるので、車両間に生じる隙間を塞ぐことができる。このため、本発明は、衝撃緩衝機能とともに車両間の隙間への転落防止機能を発揮する。さらに、衝撃吸収装置が転落防止装置取り付け用のスペースに設置されるので、車両に新たな設置スペースを確保する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による車両の一部の側面図である。
【図2】図1の対向する妻面の正面図であり、(a)は図1における左側の車両の妻面、(b)は図1における右側の車両の妻面を示している。
【図3】本発明の第2実施形態による車両の一部の側面図である。
【図4】本発明の変形例による衝撃吸収装置及び車両の一部の側面図である。
【図5】本発明の変形例による衝撃吸収装置及び車両の一部の側面図である。
【図6】図5に示す対向する妻面の正面図であり、(a)は図5における左側の車両の妻面、(b)は図5における右側の車両の妻面を示している。
【図7】本発明の他の変形例による車両の妻面の正面図であり、(a)は対向する一方の妻面、(b)は対向する他方の妻面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<第1実施形態>
ここでは、図1,2を用いて、本発明に係る車両及び衝撃吸収装置の第1実施形態を説明する。なお、図2は、図1に示す対向する2面の妻面を示している。また、図1,2では、衝撃吸収体が取り付けられる位置を主に示しており、衝撃吸収体を除く部材の記載を省略している。
【0017】
図1に示すように、車両1は、複数の車両10から編成されている。車両10は、連結器3によって相互に連結されている。連結器3の後方には緩衝装置4が配設されている。対向する妻面30同士の間には、隙間5が存在する。この隙間5に、衝撃吸収装置100が配置されている。また、対向する妻面30間に、ホロ6が掛け渡されている。
【0018】
〔衝撃吸収装置100〕
衝撃吸収装置100は、複数の棒状の衝撃吸収体21を有している。衝撃吸収体21は、車両10の妻面30の両側端部に取り付けられており、衝撃吸収体の長手方向が妻面30に垂直になるように取り付けられている。なお、妻面30の両側端部には、通常、転落防止用の外ホロが取り付けられるが、本実施の形態では、外ホロに代わって衝撃吸収体21が取り付けられている。
【0019】
妻面30における衝撃吸収体21が取り付けられる位置を詳細に説明する。図1における対向する妻面30のうち一方(左側)の妻面30(図2(a))には、左右両側端部において、高さ方向に関して中央より少し上方の位置から下方に向かって等間隔だけ離れて、衝撃吸収体21が左右両側に3本ずつ取り付けられている。また、対向する妻面30のうち他方(右側)の妻面30(図2(b))には、左右両側端部において、高さ方向における中央付近から下端まで等間隔だけ離れて、衝撃吸収体21が左右両側に3本ずつ取り付けられている。ここで、図2(a),(b)における等間隔は、同じ間隔であり、車両10の高さ方向における中央から下端部を複数に等分割した間隔である。このように、衝撃吸収体21は対向する2面の妻面30の同位置に取り付けられていないため、図2(a)に示す妻面30と図2(b)に示す妻面30を対向させると、対向する各々の妻面30に取付けられた衝撃吸収体21が、対向せず、上下方向に相互にずれる(図1)。なお、衝撃吸収体21を取り付ける位置や数は、本実施形態に係る図2(a),(b)に示す位置に限られない。
【0020】
〔衝撃吸収体21〕
衝撃吸収体21は、棒状の中空部材21aと、中空部材の先端を覆う平板21b及び後端を覆う平板21cとを有している。中空部材21a及び平板21b,21cは、アルミニウム合金からなる。アルミニウム合金は、車両10の車体(妻面を含む)の強度より低い強度を有している。中空部材21aの断面は、中央に仕切りが形成された日の字形状に形成されている。中空部材21aの先端を覆う平板21bは中空部材21aの断面と略同形状の平面を有しており、中空部材の後端を覆う平板21cは中空部材21aの断面よりも少し大きい平面を有している。平板21b,21cの各々は、中空部材21aの先端及び後端の各々に溶接されている。
【0021】
衝撃吸収体21を妻面30の側端部に取り付けるときは、衝撃吸収体21の後端である平板21cを、ボルトなどを用いて妻面30に固定する。このとき、衝撃吸収体21は、中空部材21aの断面が日の字形状になるように配置される。妻面30に取り付けられた衝撃吸収体21は、図1に示すように、衝撃吸収体21の長手方向が妻面30に垂直になり、妻面30への取付部(衝撃吸収体21の後端)から対向する妻面30に向けて車両10の長手方向に延在している。本実施の形態に係る衝撃吸収体21は、衝撃吸収体21の先端が対向する妻面30間の中央付近に位置する長さに形成されている。
【0022】
連結された車両10間に衝撃圧縮力が生じると、対向する妻面30が近接し、衝撃吸収体21の先端(平板21b)が対向する妻面30に衝突する。車体(妻面30)より強度の低い衝撃吸収体21(中空部材21a)は、塑性変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。
【0023】
なお、本実施の形態では、衝撃吸収体21にアルミニウム合金を用いているが、アルミニウム合金以外の軽合金や鉄鋼材又は発泡アルミニウムなどを使用してもよい。この衝撃吸収体21に用いられる材料は、車両10の車体の強度より低い強度を有した材料であることが好ましい。また、衝撃吸収体21の形状は、本実施の形態において用いた棒状の形状に限られない。
【0024】
〔連結器3〕
連結器3は、車両10の床下端部に設けられている。先行車両の後端に設けられた連結器3と後続車両の先端に設けられた連結器3とが連結しており、これによって2両の車両10が相互に連結されている。
【0025】
〔緩衝装置4〕
連結器3の後方には緩衝装置4が設けられている。緩衝装置4は、車両間に相互に発生する圧縮力や引張力などの衝撃力を吸収し、衝撃を緩和する。
【0026】
〔ホロ6〕
ホロ6は、連結された車両10間の通路を構成する貫通幌であり、ホロ布とホロ布を蛇腹状に保持するホロ骨(図示せず)とを有している。ホロ6は、対向する妻面30のうち一方の妻面30に設けられたホロ座20から他方の妻面30に設けられたホロ座20に掛け渡されている。
【0027】
以上のように、本実施の形態の車両1及び衝撃吸収装置100によると、下記の効果を奏する。衝撃吸収装置100を備えていない車両において、相互に連結された車両間に大きな圧縮衝撃力が生じると、緩衝装置4の有する緩衝容量だけでは衝撃力を緩和することができなくなり、緩衝装置4及び連結器3が破損する。そして、対向する車端部同士が衝突し、車体が損傷する。しかし、本実施の形態の車両1では、相互に連結された車両10間に大きな圧縮衝撃力が生じると、妻面30の側端部に取り付けられた衝撃吸収体21が対向する妻面30(車端部)に衝突し、塑性変形して衝撃エネルギーを吸収する。これによって、対向する妻面30(車端部)の損傷を防ぐことができる。また、妻面30に取り付けられた複数の衝撃吸収体21によって2両の車両10間に生じる隙間5が塞がれる。これによって、乗客がプラットホームから隙間5へ転落することを防止することができる。このように、本発明の衝撃吸収装置100及び車両1は、衝撃緩衝機能及び転落防止機能を発揮する。さらに、衝撃吸収体21は外ホロが取り付けられる妻面30の側端部に取り付けられるので、装置の新たな設置スペースを確保する必要がない。
【0028】
また、相互に連結された2両の車両10のうち、一方の車両10の妻面30の側端部に取り付けられた衝撃吸収体21と、対向する他方の車両10の妻面30の側端部に取り付けられた衝撃吸収体21とが、上下方向に相互にずれて配設される。この構成によって、列車の走行路線に曲線路線などが存在し、列車の走行中に対向する2面の妻面30が接近しても、各々の妻面30に取り付けられた衝撃吸収体21同士が接触することがない。このため、衝撃吸収体21の長手方向の長さ(中空部材21aの長手方向の長さ)を短く調整する必要がなく、簡易な構成で、連結された車両10間に生じる衝撃を吸収できるとともに隙間5を塞ぐことができる。
【0029】
また、衝撃吸収体21が、中空アルミニウム合金からなるため、連結された車両10間に生じる衝撃圧縮力を十分に吸収することができる。また、衝撃吸収装置100の構造が簡易になり、メンテナンス性に優れた衝撃吸収装置100になる。さらに、複数の衝撃吸収体21のうち一部の衝撃吸収体21だけが損傷したときは、損傷した衝撃吸収体21だけを交換することができる。
【0030】
また、衝撃吸収体21が車体の強度より低い強度を有した中空アルミニウム合金からなるので、衝撃吸収体21は対向する妻面30に衝突すると確実に塑性変形して衝撃エネルギーを吸収する。これにより、車体の損傷を軽減することができる。
【0031】
<第2実施形態>
続いて、本発明に係る車両及び衝撃吸収装置の第2実施形態を、図3を用いて説明する。なお、本発明の第1実施形態と同様なものに関しては、同符号で示し説明を省略する。
【0032】
第2実施形態における衝撃吸収装置200では、第1実施形態における衝撃吸収体21の代わりに、衝撃吸収体221を用いている。また、衝撃吸収体221の先端には、弾性体231が設けられている。衝撃吸収体221の長手方向の長さは、第1実施形態における衝撃吸収体21の長手方向の長さより短い。なお、これ以外は第1実施形態とほぼ同様なものであるので説明を省略することがある。
【0033】
〔衝撃吸収体221〕
本実施の形態における衝撃吸収体221は、棒状の中空部材221aと、中空部材の先端を覆う平板21b及び後端を覆う平板21cとを有している。中空部材221aは、第1実施形態における中空部材21aと同様に中央に仕切りが形成された日の字形状の断面を有しており、長手方向の長さが第1実施形態の中空部材21aの長手方向の長さの略半分の長さに形成されている。平板21b,21cは、中空部材221aの前端及び後端の各々に溶接されている。
【0034】
列車の走行路線に急カーブなどが存在する場合、第1実施形態における衝撃吸収体21(中空部材21a)の長手方向の長さと同じ長さの衝撃吸収体を用いると下記の問題が考えられる。例えば、列車が急カーブを走行すると相互に連結された各々の車両210の車体の中心軸がずれる。そうすると、対向する2面の妻面230に取り付けられた衝撃吸収体221同士が接触したり、妻面230に取り付けられた衝撃吸収体221が対向する妻面230に接触したりして、衝撃吸収体221が損傷することが考えられる。このような衝撃吸収体221の損傷を抑えるため、本実施の形態では、衝撃吸収体221(中空部材221a)の長手方向に関する長さを第1実施形態における衝撃吸収体221の長手方向の長さより短くしている。
【0035】
〔弾性体231〕
衝撃吸収体221の先端には、衝撃吸収体221の長手方向に沿って弾性体231が延設されている。弾性体231として、例えば、弾力性のある樹脂、ゴムなどの弾性変形する部材を用いることができる。弾性体231は平板21bに取り付けられている。弾性体231は、衝撃吸収体221(中空部材221a)の長手方向の長さと略同じ長さを有した棒状の部材である。衝撃吸収体221を妻面230の側端部に取り付けると、図3に示すように、弾性体231が車両210の長手方向に延在する。弾性体231の先端は、長手方向に関して対向する妻面230の中央付近に位置する。このように、隙間5は、衝撃吸収体221及び弾性体231によって塞がれる。なお、列車の走行路線に急カーブが存在し、列車の走行中に弾性体231が対向する妻面230に接触しても、弾性体231は弾性変形し、車体の損傷を抑止できる。
【0036】
また、本実施の形態における衝撃吸収体221(中空部材221a)と弾性体231とは略同じ長さに形成されているが、衝撃吸収体221及び弾性体231の形状は列車の走行路線に応じて適宜変更することができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態の衝撃吸収装置200及び衝撃吸収装置200を採用した車両201においても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。また、本実施の形態においては、衝撃吸収体221(中空部材221a)の長手方向の長さが、第1実施形態における衝撃吸収体21の長手方向の長さより短く形成されているため、列車の走行路線に急カーブが存在しても、列車の走行中に、対向する妻面230に取り付けられた衝撃吸収体221同士が接触したり、衝撃吸収体221が対向する妻面230に接触したりすることを防止できる。また、衝撃吸収体221の先端に弾性体231が延設されているので、衝撃吸収体221及び弾性体231によって隙間5を塞ぐことができる。このように、列車の走行路線に応じて衝撃吸収体221(中空部材221a)の形状(長手方向長さ)を変更しても、衝撃吸収装置200及び車両201は衝撃吸収機能及び転落防止機能を十分に発揮する。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態における衝撃吸収装置100,200における衝撃吸収体21,221及び弾性体231の形状や材料は一例であり、衝撃吸収体21,221及び弾性体231を異なる形状に形成したり、異なる素材を用いたりしてもよい。
【0039】
下記に変形例に係る衝撃吸収装置を説明する。なお、変形例において、本発明の第1実施形態及び第2実施形態と同様なものに関しては、同符号で示し、説明を省略する。また、以下の変形例における衝撃吸収体にも、上述の第1実施形態における衝撃吸収体21と同様な材料を使用することができる。
【0040】
<変形例1>
本変形例における車両301は、相互に連結された車両310から編成されている。また、第1実施形態における衝撃吸収装置100及び第2実施形態における衝撃吸収装置200の代わりに、衝撃吸収装置300を用いている。衝撃吸収装置300は、高さ方向に長尺な板状の衝撃吸収体321と、衝撃吸収体321の先端に延設された弾性体331とを有している。衝撃吸収体321は妻面330の側端部の中央から下端にかけて取り付けられている。なお、これ以外は第1実施形態とほぼ同様なものであるので説明を省略することがある。
【0041】
〔衝撃吸収体321〕
図4に示す衝撃吸収体321は、平板状に形成されており、上下方向(高さ方向)に長い長方形状の平面を有している。衝撃吸収体321には、発泡アルミニウムなどを用いることができる。衝撃吸収体321の幅方向の長さ(衝撃吸収体321の平面の横方向の長さ)は、第2実施形態における衝撃吸収体221の長手方向の長さと略同等の長さに形成されている。衝撃吸収体321の長尺状の一側面にはアルミニウム合金からなる平板321cが接着されている。平板321cは、接着された衝撃吸収体321の一側面より少し大きい平面を有しており、妻面330の側端部において中央より少し高い位置から下端までに固定される。平板321cを妻面330に固定することによって衝撃吸収体321が妻面330の側端部に取り付けられる。衝撃吸収体321は、平面がプラットホームに対向するように(車両310の長手方向に平行になるように)、妻面330の側端部に取り付けられる。また、衝撃吸収体321の他方の側面にも平板が接着されており、この平板に弾性体331が取り付けられている。
【0042】
〔弾性体331〕
弾性体331は、衝撃吸収体321と同様の形状を有した平板状の部材であり、第2実施形態における弾性体331と同様に、例えば、弾力性のある樹脂、ゴムなどの弾性変形する部材が用いられる。弾性体331は、衝撃吸収体321の側面に取り付けられており、衝撃吸収体321の平面方向に沿って延在している。
【0043】
衝撃吸収体321を妻面330の側端部に取り付けると、図4に示すように、弾性体331の先端は対向する2面の妻面330間の中央付近に位置する。このように、隙間5は、高さ方向に関する中央付近から下端までの全体が衝撃吸収体321及び弾性体331によって塞がれる。
【0044】
このように、変形例1においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0045】
また、上述の実施形態及び変形例において、外ホロが設けられない位置に衝撃吸収体をさらに取り付けてもよい。例えば、下記の変形例に示す位置に衝撃吸収体をさらに取り付けることによって、衝撃エネルギーをより吸収することができる。なお、下記の変形例において、本発明の第1実施形態及び第2実施形態と同様なものに関しては、同符号で示し説明を省略する。
【0046】
<変形例2>
本変形例における衝撃吸収装置400は、図5,6に示すように、第1実施形態における衝撃吸収体21を車両410の妻面430の上端部及び両側端部の上部にさらに取り付ける構成としている。図6(a)に示す対向する一方(左側)の妻面430には、両側端部の中央付近に衝撃吸収体21が取り付けられた位置から上方に向かって妻面430の上端部まで、所定の間隔だけ離れて衝撃吸収体21が両側に2本ずつ取り付けられている。また、図6(b)に示す対向する他方(右側)の妻面430には、両側端部の中央付近に衝撃吸収体21が取り付けられた位置から上方に所定の間隔だけ離れて衝撃吸収体21が両側に1本ずつ取り付けられ、また、妻面430の上端において、中央部を挟み左右方向に所定の間隔だけ離れて2本の衝撃吸収体21が取り付けられている。このように、対向する2面の妻面430の側端部に取り付けられた衝撃吸収体21は高さ方向に相互にずれる。また、妻面430の上端部に取り付けられた衝撃吸収体21は左右方向に相互にずれる。このため、図6(a)に示す妻面430と図6(b)に示す妻面430を対向させると、各々の妻面430に取り付けられた衝撃吸収体21は互いに対向せず、上下方向又は左右方向に交互にずれる。なお、本変形例における所定の間隔とは、第1実施形態における隣接する衝撃吸収体21の間隔と略同間隔である。
【0047】
本変形例によると、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、衝撃吸収体21の代わりに、第2実施形態における衝撃吸収体221及び弾性体231を採用すると、第2実施形態と同様な効果が得られる。さらに、車両410間の隙間5の上部にまで衝撃吸収体21が配置されるので、連結された車両410間に生じる衝撃エネルギーをより十分に吸収することができる。
【0048】
<変形例3>
本変形例における衝撃吸収装置500は、図7(a),(b)に示すように、第1実施形態における衝撃吸収体21を妻面530の側端部の少し内側にさらに取り付ける構成を有している。妻面530の側端部より内側に取り付けられる衝撃吸収体21は、高さ方向に関して中央付近から下方に所定の間隔だけ離れて左右両側に3本ずつ取り付けられている。この高さ位置は、妻面530の側端部に取り付けられた衝撃吸収体21の高さと略同じ高さ位置である。図7(a)に示す妻面530と図7(b)に示す妻面530とを対向させると、各々の妻面530に取り付けられた衝撃吸収体21は、互いに対向せず、高さ方向(上下方向)に相互にずれる。なお、本変形例における所定の間隔とは、第1実施形態における隣接する衝撃吸収体21の間隔と略同間隔である。なお、妻面530において衝撃吸収体21を側端部の内側に取り付ける位置は、列車の走行路線に応じて適宜変更することができ、側端部により近い位置に取り付けてもよい。
【0049】
本変形例によると、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、衝撃吸収体21の代わりに、第2実施形態における衝撃吸収体221及び弾性体231を採用すると、第2実施形態と同様な効果が得られる。さらに、妻面530の側端部の内側に取り付けられた衝撃吸収体21によって、妻面530の中央に近い位置においても衝撃エネルギーを吸収することができる。これによって、相互に連結された車両510間に生じる衝撃エネルギーをより十分に吸収することができる。
【0050】
また、上述の実施形態及び変形例において、衝撃吸収体又は弾性体が衝突する位置(対向する妻面)に、衝撃吸収体の強度より高い強度を有した部材を設けてもよい。例えば、妻面の左右両側端部や衝撃吸収体又は弾性体が妻面に衝突する箇所だけに部分的に高強度な部材を設けてもよい。これによって、衝撃吸収体が、確実に塑性変形し、衝撃を吸収する。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
3 連結器
4 緩衝装置
10,210,310,410,510 車両
21,221,321,421,521 衝撃吸収体
30,230,330,430,530 妻面
231,331,431,531 弾性体
100,200,300,400,500 衝撃吸収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に連結された車両同士の衝突時の衝撃を緩和するとともに乗客がプラットホームから車両間の隙間へ転落することを防止する衝撃吸収装置において、
前記衝撃吸収装置が、相互に連結された車両間に配置されるものであり、
車両の妻面の側端部に取り付けられ、且つ、塑性変形することによって衝突時の衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収体を有しており、
相互に連結された2両の車両のうち一方の車両の妻面の側端部に取り付けられた衝撃吸収体が、対向する他方の車両の妻面に向けて延在することを特徴とする衝撃吸収装置。
【請求項2】
前記衝撃吸収体の先端に対向する他方の車両の妻面に向けて延設された弾性体をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収装置。
【請求項3】
連結された2両の車両のうち一方の車両の妻面の側端部に取り付けられた前記衝撃吸収体と、対向する他方の車両の妻面の側端部に取り付けられた前記衝撃吸収体とが、上下方向に相互にずれて配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の衝撃吸収装置。
【請求項4】
前記衝撃吸収体が、金属製の材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝撃吸収装置。
【請求項5】
連結された複数の車両において、
相互に連結された車両間に配置された請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝撃吸収装置を備えていることを特徴とする車両。
【請求項6】
前記衝撃吸収体の強度が、衝撃吸収体に対向する車両の妻面の強度より低いことを特徴とする請求項5に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−269770(P2010−269770A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125772(P2009−125772)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000163372)近畿車輌株式会社 (108)
【Fターム(参考)】