衝撃荷重伝達構造
【課題】各部材に伝達される衝撃荷重を低減できるようにした衝撃荷重伝達構造を提供することを課題とする。
【解決手段】移動体に搭載される衝撃荷重伝達構造であって、衝撃荷重Fa(Fb)が入力されると、当該衝撃荷重Fa(Fb)を、スライド機構1(2)がスライドすることによって、複数の部材2b,2a(1a,1b)に伝達するようにし、当該スライド機構1(2)により衝撃荷重Fa(Fb)を分散して伝達し、各部材2b,2a(1a,1b)に伝達される衝撃荷重を低減するようにする。
【解決手段】移動体に搭載される衝撃荷重伝達構造であって、衝撃荷重Fa(Fb)が入力されると、当該衝撃荷重Fa(Fb)を、スライド機構1(2)がスライドすることによって、複数の部材2b,2a(1a,1b)に伝達するようにし、当該スライド機構1(2)により衝撃荷重Fa(Fb)を分散して伝達し、各部材2b,2a(1a,1b)に伝達される衝撃荷重を低減するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃荷重を伝達する衝撃荷重伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
正面衝突時に、車両にかかる衝撃荷重(衝突荷重)を、荷重入力点から離れた衝撃吸収部材へ剛体フレーム構造を介して伝達する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−264750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記公報を始めとした車両にあっては、伝達される衝撃荷重を低減することが望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、伝達される衝撃荷重を低減できる衝撃荷重伝達構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による衝撃荷重伝達構造は、移動体に搭載される衝撃荷重伝達構造であって、衝撃荷重が入力されると、スライドしながら衝撃荷重を複数の部材に伝達するスライド機構を備えたことを特徴としている。
【0007】
このような衝撃荷重伝達構造によれば、衝撃荷重が入力されると、当該衝撃荷重は、スライド機構がスライドすることによって複数の部材に伝達される。従って、スライド機構により衝撃荷重は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重が低減される。
【0008】
ここで、上記作用を効果的に奏する具体的な構成としては、スライド機構は、衝撃荷重が入力される荷重入力部、及び、この荷重入力部に連結された荷重伝達部を有し、衝撃荷重が荷重入力部に入力されると、スライドしながら、衝撃荷重を荷重入力部から一の部材に伝達すると共に荷重伝達部から他の部材に伝達する構成が挙げられる。
【0009】
また、スライド機構は第1のスライド機構とされると共に、当該第1のスライド機構とは別の第2のスライド機構を備え、第2のスライド機構は、他の部材、及び、他の部材に連結された一の部材を有し、衝撃荷重とは別の衝撃荷重が他の部材に入力されると、スライドしながら、別の衝撃荷重を他の部材から第1のスライド機構の荷重伝達部に伝達すると共に一の部材から第1のスライド機構の荷重入力部に伝達する構成であると、第1、第2のスライド機構が相互的に活用されて、複数の方向から作用する衝撃荷重、具体的には、一の方向から作用する衝撃荷重、これとは反対側から作用する衝撃荷重の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重をそれぞれ分散して伝達できる。
【0010】
また、荷重入力部と一の部材との間、及び、荷重伝達部と他の部材との間には、衝撃吸収部材がそれぞれ設けられていると、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重が一層低減される。
【0011】
ここで、移動体としては、車両以外に航空機が挙げられる。第1、第2のスライド機構を有する構成であれば、例えば、機体(胴体)の底梁に衝撃荷重が作用する衝突の場合と、これとは逆に機体の天梁に衝撃荷重が作用する横転衝突の場合の両方に対処できる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、衝撃荷重を分散して伝達でき、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す衝撃荷重伝達構造に衝撃荷重が作用したときの動作説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す平面模式図である。
【図4】図3中の衝撃荷重伝達構造の右側部分を示す斜視図である。
【図5】図4に示す衝撃荷重伝達構造に前突荷重が作用したときの動作説明図である。
【図6】図4に示す衝撃荷重伝達構造に後突荷重が作用したときの動作説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す正面模式図である。
【図8】図7中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図である。
【図9】図8に示す衝撃荷重伝達構造に側突荷重が作用したときの動作説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた航空機を示す側面模式図である。
【図11】図10中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による衝撃荷重伝達構造の好適な実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1及び図2は、本発明の第1実施形態を、図3〜図6は、本発明の第2実施形態を、図7〜図9は、本発明の第3実施形態を、図10及び図11は、本発明の第4実施形態をそれぞれ示すものであり、先ず、図1及び図2に示す第1実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を示す斜視図であり、本発明の基本構成を示すものである。
【0016】
ここに示す衝撃荷重伝達構造は、移動体に搭載されるものであり、2個の四角筒1,2を備える。この衝撃荷重伝達構造にあっては、上側の四角筒1に対して、下側の四角筒2が平面視において180°方向を変えて配設されると共に、上側の四角筒1の底壁1aより上に、下側の四角筒2の上壁2bが位置し、上側の四角筒1内に、下側の四角筒2の上壁2bが進入する構成とされている。
【0017】
また、この衝撃荷重伝達構造では、上側の四角筒1の上壁1bと下側の四角筒2の上壁2bとの間に、上側の衝撃吸収部材3が配設されると共に、上側の四角筒1の底壁1aと下側の四角筒2の底壁2aとの間に、下側の衝撃吸収部材4が配設されている。そして、ここでは、上側の四角筒1が第1のスライド機構を構成し、下側の四角筒2が第2のスライド機構を構成している。
【0018】
図2は、図1に示す衝撃荷重伝達構造に衝撃荷重が作用したときの動作説明図である。上側の四角筒1に対して上方から下方に向かう衝撃荷重Faが入力されると、上側の四角筒1は下方にスライドし、このとき、上側の四角筒1の上壁1bは、荷重入力部として上側の衝撃吸収部材3を押圧して当該衝撃吸収部材3を圧縮すると共に、上側の四角筒1の底壁1aは、荷重入力部に連結された荷重伝達部として下側の衝撃吸収部材4を押圧して当該衝撃吸収部材4を圧縮し、衝撃荷重Faは、上側の衝撃吸収部材3を介して一の部材としての下側の四角筒2の上壁2bに伝達されると共に、下側の衝撃吸収部材4を介して他の部材としての下側の四角筒2の底壁2aに伝達される。
【0019】
また、これとは逆に、下側の四角筒2に対して下方から上方に向かう衝撃荷重Fbが入力されると、下側の四角筒2は上方にスライドし、このとき、下側の四角筒2の底壁2aは、下側の衝撃吸収部材4を押圧して当該衝撃吸収部材4を圧縮すると共に、下側の四角筒2の上壁2bは、上側の衝撃吸収部材3を押圧して当該衝撃吸収部材3を圧縮し、衝撃荷重Fbは、下側の衝撃吸収部材4を介して上側の四角筒1の底壁1aに伝達されると共に、上側の衝撃吸収部材3を介して上側の四角筒1の上壁1bに伝達される。
【0020】
このように、本実施形態においては、衝撃荷重Faが入力されると、当該衝撃荷重Faは、スライド機構を構成する四角筒1がスライドすることによって、複数の部材である四角筒2の上壁2bと、四角筒2の底壁2aに伝達されるため、衝撃荷重Faは分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0021】
また、衝撃荷重Faと反対方向の衝撃荷重Fbが入力されると、スライド機構を構成する四角筒2がスライドすることによって、複数の部材である四角筒1の底壁1aと、四角筒1の上壁1bに伝達されるため、衝撃荷重Fbは分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0022】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構1,2が相互的に活用されて、複数の方向から作用する衝撃荷重、具体的には、一の方向から作用する衝撃荷重Fa、これとは反対側から作用する衝撃荷重Fbの各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重Fa,Fbをそれぞれ分散して伝達できる。
【0023】
さらにまた、上側の四角筒1の上壁1bと下側の四角筒2の上壁2bとの間、上側の四角筒1の底壁1aと下側の四角筒2の底壁2aとの間に、衝撃吸収部材3,4がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材3,4により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0024】
図3は、本発明の第2実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す平面模式図、図4は、図3中の衝撃荷重伝達構造の右側部分を示す斜視図であり、ここに示す衝撃荷重伝達構造は、車両に搭載されるものである。
【0025】
この衝撃荷重伝達構造は、左右(車両の幅方向)に延びるフロントバンパー11と、このフロントバンパー11の両側の上下にそれぞれ連結され前後方向に延びる左右上下側のサイドメンバー12a,12bと、この左右上下側のサイドメンバー12a,12bにその両側の上下がそれぞれ連結され左右方向に延びるリアダッシュパネル13と、を有する第1のスライド機構14を備える。
【0026】
また、この衝撃荷重伝達構造は、左右に延びるリアバンパー21と、このリアバンパー21の両側の側部に各後端がそれぞれ連結され前後方向に延びる左右横側のサイドメンバー12c,12dと、この左右横側のサイドメンバー12c,12dにその側部がそれぞれ連結され左右方向に延びるフロントダッシュパネル23と、を有する第2のスライド機構24を備える。左横側のサイドメンバー12c、右横側のサイドメンバー12dは、各々一対で構成され、左横側のサイドメンバー12c,12c、右横側のサイドメンバー12d,12dは、それぞれが左右方向に離間して配設され、左右横側のサイドメンバー12c,12dのうちの内側のサイドメンバーは、リアダッシュパネル13に設けられたスリット13aを通されその前端がフロントダッシュパネル23に、その後端がリアバンパー21にそれぞれ連結されている。
【0027】
第1のスライド機構14を構成するフロントバンパー11と第2のスライド機構24を構成するフロントダッシュパネル23との間には、フロント衝撃吸収部材15が配設されると共に、第2のスライド機構24を構成するリアバンパー21と第1のスライド機構14を構成するリアダッシュパネル13との間には、リア衝撃吸収部材25が配設される。
【0028】
そして、第1のスライド機構14は、設定以上の前突衝撃荷重(以下単に前突荷重と呼ぶ)F1がフロントバンパー11に作用すると、後方に向かうスライド移動が可能とされ、第2のスライド機構24は、設定以上の後突衝撃荷重(以下単に後突荷重と呼ぶ)F2がリアバンパー21に作用すると、前方に向かうスライド移動が可能とされている。
【0029】
図5は、図4に示す衝撃荷重伝達構造に前突荷重が作用したときの動作説明図である。フロントバンパー11に対して前突荷重F1が入力されると、第1のスライド機構14、すなわち、フロントバンパー11、左右上下側のサイドメンバー12a,12b、リアダッシュパネル13が後方にスライドし、このとき、フロントバンパー11は、荷重入力部としてフロント衝撃吸収部材15を押圧して当該衝撃吸収部材15を圧縮すると共に、リアダッシュパネル13は、荷重入力部に連結された荷重伝達部としてリア衝撃吸収部材25を押圧して当該衝撃吸収部材25を圧縮し、前突荷重F1は、フロント衝撃吸収部材15を介して一の部材としてのフロントダッシュパネル23に伝達されると共に、リア衝撃吸収部材25を介して他の部材としてのリアバンパー21に伝達される。
【0030】
図6は、図4に示す衝撃荷重伝達構造に後突荷重が作用したときの動作説明図である。リアバンパー21に対して後突荷重F2が入力されると、第2のスライド機構24、すなわち、リアバンパー21、左右横側のサイドメンバー12c,12d、フロントダッシュパネル23が前方にスライドし、このとき、リアバンパー21は、リア衝撃吸収部材25を押圧して当該衝撃吸収部材25を圧縮すると共に、フロントダッシュパネル23は、フロント衝撃吸収部材15を押圧して当該衝撃吸収部材15を圧縮し、後突荷重F2は、リア衝撃吸収部材25を介してリアダッシュパネル13に伝達されると共に、フロント衝撃吸収部材15を介してフロントバンパー11に伝達される。
【0031】
このように、本実施形態においては、前突荷重F1が入力されると、当該前突荷重F1は、第1のスライド機構14がスライドすることによって、複数の部材であるフロントダッシュパネル23と、リアバンパー21に伝達されるため、前突荷重F1は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0032】
また、前突荷重F1と反対方向の後突荷重F2が入力されると、第2のスライド機構24がスライドすることによって、複数の部材であるリアダッシュパネル13と、フロントバンパー11に伝達されるため、後突荷重F2は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0033】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構14,24が相互的に活用されて、前突荷重F1、後突荷重F2の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重F1,F2をそれぞれ分散して伝達できる。
【0034】
さらにまた、フロントバンパー11とフロントダッシュパネル23との間、リアバンパー21とリアダッシュパネル13との間に、衝撃吸収部材15,25がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材15,25により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0035】
図7は、本発明の第3実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す正面模式図、図8は、図7中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図であり、ここに示す衝撃荷重伝達構造は、車両に搭載されるものである。
【0036】
この衝撃荷重伝達構造は、断面コの字状を成し前後方向に延びる一方のサイドメンバー31と、このサイドメンバー31の下側を連結し車両室内の底部を構成するフロア32と、このフロア32に連結され他方のサイドメンバー41の内側部分を構成する他方のサイドメンバーの内側部分41aと、を有する第1のスライド機構34を備える。
【0037】
また、この衝撃荷重伝達構造は、断面コの字状を成し前後方向に延びる他方のサイドメンバー41と、このサイドメンバー41の両側の側部にその一方側の端部がそれぞれ連結され左右方向に延びるリンクバー42と、このリンクバー42の他方側の端部にその前後端が連結され一方のサイドメンバー31の内側部分を構成する一方のサイドメンバーの内側部分31aと、を有する第2のスライド機構44を備える。
【0038】
第1のスライド機構34を構成する一方のサイドメンバー31と第2のスライド機構44を構成する一方のサイドメンバーの内側部分31aとの間には、一方のサイド衝撃吸収部材35が配設されると共に、第2のスライド機構44を構成する他方のサイドメンバー41と第1のスライド機構34を構成する他方のサイドメンバーの内側部分41aとの間には、他方のサイド衝撃吸収部材45が配設される。
【0039】
そして、第1のスライド機構34は、設定以上の一方側からの側突衝撃荷重(以下単に側突荷重と呼ぶ)F3が一方のサイドメンバー31に作用すると、他方のサイドメンバー41に向かうスライド移動が可能とされ、第2のスライド機構44は、設定以上の他方側からの側突荷重F4が他方のサイドメンバー41に作用すると、一方のサイドメンバー31に向かうスライド移動が可能とされている。
【0040】
図9は、図8に示す衝撃荷重伝達構造に側突荷重が作用したときの動作説明図である。一方のサイドメンバー31に対して側突荷重F3が入力されると、第1のスライド機構34、すなわち、一方のサイドメンバー31、フロア32、他方のサイドメンバーの内側部分41aが他方のサイドメンバー41に向かってスライドし、このとき、一方のサイドメンバー31は、荷重入力部として一方のサイド衝撃吸収部材35を押圧して当該衝撃吸収部材35を圧縮すると共に、他方のサイドメンバーの内側部分41aは、荷重入力部に連結された荷重伝達部として他方のサイド衝撃吸収部材45を押圧して当該衝撃吸収部材45を圧縮し、側突荷重F3は、一方のサイド衝撃吸収部材35を介して一の部材としての一方のサイドメンバーの内側部分31aに伝達されると共に、他方のサイド衝撃吸収部材45を介して他の部材としての他方のサイドメンバー41に伝達される。
【0041】
また、他方のサイドメンバー41に対して図7に示す側突荷重F4が入力されると、第2のスライド機構44、すなわち、他方のサイドメンバー41、リンクバー42、一方のサイドメンバーの内側部分31aが一方のサイドメンバー31に向かってスライドし、このとき、他方のサイドメンバー41は、他方のサイド衝撃吸収部材45を押圧して当該衝撃吸収部材45を圧縮すると共に、一方のサイドメンバーの内側部分31aは、一方のサイド衝撃吸収部材35を押圧して当該衝撃吸収部材35を圧縮し、側突荷重F4は、他方のサイド衝撃吸収部材45を介して他方のサイドメンバーの内側部分41aに伝達されると共に、一方のサイド衝撃吸収部材35を介して一方のサイドメンバー31に伝達される。
【0042】
このように、本実施形態においては、一方側からの側突荷重F3が入力されると、当該側突荷重F3は、第1のスライド機構34がスライドすることによって、複数の部材である一方のサイドメンバーの内側部分31aと、他方のサイドメンバー41に伝達されるため、側突荷重F3は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0043】
また、側突荷重F3と反対方向の側突荷重F4が他方側から入力されると、第2のスライド機構44がスライドすることによって、複数の部材である他方のサイドメンバーの内側部分41aと、一方のサイドメンバー31に伝達されるため、側突荷重F4は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構34,44が相互的に活用されて、側突荷重F3,F4の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重F3,F4をそれぞれ分散して伝達できる。
【0045】
さらにまた、一方のサイドメンバー31と一方のサイドメンバーの内側部分31aとの間、他方のサイドメンバー41と他方のサイドメンバーの内側部分41aとの間に、衝撃吸収部材35,45がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材35,45により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0046】
図10は、本発明の第4実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた航空機を示す側面模式図、図11は、図10中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図であり、ここに示す衝撃荷重伝達構造は、航空機に搭載されるものである。
【0047】
この衝撃荷重伝達構造は、前後方向に延びる機体(胴体)の底梁51と、この底梁51の前後部にそれぞれ連結され上側に開放されるU字状を成すロードパスフレーム52と、このロードパスフレーム52にその前後部がそれぞれ連結された天井53と、を有する第1のスライド機構54を備える。
【0048】
また、この衝撃荷重伝達構造は、前後方向に延びる機体の天梁61と、この天梁61の前後部にそれぞれ連結され下側に開放されるU字状を成すロードパスフレーム62と、このロードパスフレーム62にその前後部がそれぞれ連結されたフロア63と、を有する第2のスライド機構64を備える。乗客スペースSは、フロア63、天井53、前後部のロードパスフレーム52,52(62,62)で囲まれる領域に設定される。
【0049】
第1のスライド機構54を構成する底梁51と第2のスライド機構64を構成するフロア63との間には、床下衝撃吸収部材55が配設されると共に、第2のスライド機構64を構成する天梁61と第1のスライド機構54を構成する天井53との間には、天井衝撃吸収部材65が配設される。
【0050】
そして、第1のスライド機構54は、設定以上の接地衝撃荷重(以下単に接地荷重と呼ぶ)F5が底梁51に作用すると、天梁61に向かうスライド移動が可能とされ、第2のスライド機構64は、設定以上の横転衝撃荷重(以下単に横転荷重と呼ぶ)F6が天梁61に作用すると、底梁51に向かうスライド移動が可能とされている。なお、図10において符号99は翼を示している。
【0051】
図11に示すように、底梁51に対して接地荷重F5が入力されると、第1のスライド機構54、すなわち、底梁51、ロードパスフレーム52、天井53が天梁61に向かってスライドし、このとき、底梁51は、荷重入力部として床下衝撃吸収部材55を押圧して当該衝撃吸収部材55を圧縮すると共に、天井53は、荷重入力部に連結された荷重伝達部として天井衝撃吸収部材65を押圧して当該衝撃吸収部材65を圧縮し、接地荷重F5は、床下衝撃吸収部材55を介して一の部材としてのフロア63に伝達されると共に、天井衝撃吸収部材65を介して他の部材としての天梁61に伝達される。
【0052】
また、天梁61に対して横転荷重F6が入力されると、第2のスライド機構64、すなわち、天梁61、ロードパスフレーム62、フロア63が底梁51に向かってスライドし、このとき、天梁61は、天井衝撃吸収部材65を押圧して当該衝撃吸収部材65を圧縮すると共に、フロア63は、床下衝撃吸収部材55を押圧して当該衝撃吸収部材55を圧縮し、横転荷重F6は、天井衝撃吸収部材65を介して天井53に伝達されると共に、床下衝撃吸収部材55を介して底梁51に伝達される。
【0053】
このように、本実施形態においては、接地荷重F5が入力されると、当該接地荷重F5は、第1のスライド機構54がスライドすることによって、複数の部材であるフロア63と、天梁61に伝達されるため、接地荷重F5は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0054】
また、接地荷重F5と反対方向の横転荷重F6が入力されると、第2のスライド機構64がスライドすることによって、複数の部材である天井53と、底梁51に伝達されるため、横転荷重F6は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構54,64が相互的に活用されて、接地荷重F5、横転荷重F6の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重F5,F6をそれぞれ分散して伝達できる。
【0056】
さらにまた、底梁51とフロア63との間、天梁61と天井53との間に、衝撃吸収部材55,65がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材55,65により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0057】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、第1、第2のスライド機構を設け、両方向(一方向及びこれとは反対方向)からの衝撃荷重をそれぞれ分散して伝達できるようにし、第2実施形態では、車両の前突、後突、第3実施形態では、車両の左側突、右側突、第4実施形態では、航空機の接地、横転に対処できるようにしているが、スライド機構を一つとして、一方向のみに対処できる構成としても良く、この場合にも、衝撃荷重を分散して伝達できるという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1,14,34,54…第1のスライド機構(スライド機構)、1a,13,41a,53…荷重伝達部、1b,11,31,51…荷重入力部、2,24,44,64…第2のスライド機構(スライド機構)、2a,21,41,61…他の部材、2b,23,31a,63…一の部材、3,4,15,25,35,45,55,65…衝撃吸収部材、F1〜F6,Fa,Fb…衝撃荷重。
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃荷重を伝達する衝撃荷重伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
正面衝突時に、車両にかかる衝撃荷重(衝突荷重)を、荷重入力点から離れた衝撃吸収部材へ剛体フレーム構造を介して伝達する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−264750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記公報を始めとした車両にあっては、伝達される衝撃荷重を低減することが望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、伝達される衝撃荷重を低減できる衝撃荷重伝達構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による衝撃荷重伝達構造は、移動体に搭載される衝撃荷重伝達構造であって、衝撃荷重が入力されると、スライドしながら衝撃荷重を複数の部材に伝達するスライド機構を備えたことを特徴としている。
【0007】
このような衝撃荷重伝達構造によれば、衝撃荷重が入力されると、当該衝撃荷重は、スライド機構がスライドすることによって複数の部材に伝達される。従って、スライド機構により衝撃荷重は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重が低減される。
【0008】
ここで、上記作用を効果的に奏する具体的な構成としては、スライド機構は、衝撃荷重が入力される荷重入力部、及び、この荷重入力部に連結された荷重伝達部を有し、衝撃荷重が荷重入力部に入力されると、スライドしながら、衝撃荷重を荷重入力部から一の部材に伝達すると共に荷重伝達部から他の部材に伝達する構成が挙げられる。
【0009】
また、スライド機構は第1のスライド機構とされると共に、当該第1のスライド機構とは別の第2のスライド機構を備え、第2のスライド機構は、他の部材、及び、他の部材に連結された一の部材を有し、衝撃荷重とは別の衝撃荷重が他の部材に入力されると、スライドしながら、別の衝撃荷重を他の部材から第1のスライド機構の荷重伝達部に伝達すると共に一の部材から第1のスライド機構の荷重入力部に伝達する構成であると、第1、第2のスライド機構が相互的に活用されて、複数の方向から作用する衝撃荷重、具体的には、一の方向から作用する衝撃荷重、これとは反対側から作用する衝撃荷重の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重をそれぞれ分散して伝達できる。
【0010】
また、荷重入力部と一の部材との間、及び、荷重伝達部と他の部材との間には、衝撃吸収部材がそれぞれ設けられていると、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重が一層低減される。
【0011】
ここで、移動体としては、車両以外に航空機が挙げられる。第1、第2のスライド機構を有する構成であれば、例えば、機体(胴体)の底梁に衝撃荷重が作用する衝突の場合と、これとは逆に機体の天梁に衝撃荷重が作用する横転衝突の場合の両方に対処できる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、衝撃荷重を分散して伝達でき、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す衝撃荷重伝達構造に衝撃荷重が作用したときの動作説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す平面模式図である。
【図4】図3中の衝撃荷重伝達構造の右側部分を示す斜視図である。
【図5】図4に示す衝撃荷重伝達構造に前突荷重が作用したときの動作説明図である。
【図6】図4に示す衝撃荷重伝達構造に後突荷重が作用したときの動作説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す正面模式図である。
【図8】図7中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図である。
【図9】図8に示す衝撃荷重伝達構造に側突荷重が作用したときの動作説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた航空機を示す側面模式図である。
【図11】図10中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による衝撃荷重伝達構造の好適な実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1及び図2は、本発明の第1実施形態を、図3〜図6は、本発明の第2実施形態を、図7〜図9は、本発明の第3実施形態を、図10及び図11は、本発明の第4実施形態をそれぞれ示すものであり、先ず、図1及び図2に示す第1実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を示す斜視図であり、本発明の基本構成を示すものである。
【0016】
ここに示す衝撃荷重伝達構造は、移動体に搭載されるものであり、2個の四角筒1,2を備える。この衝撃荷重伝達構造にあっては、上側の四角筒1に対して、下側の四角筒2が平面視において180°方向を変えて配設されると共に、上側の四角筒1の底壁1aより上に、下側の四角筒2の上壁2bが位置し、上側の四角筒1内に、下側の四角筒2の上壁2bが進入する構成とされている。
【0017】
また、この衝撃荷重伝達構造では、上側の四角筒1の上壁1bと下側の四角筒2の上壁2bとの間に、上側の衝撃吸収部材3が配設されると共に、上側の四角筒1の底壁1aと下側の四角筒2の底壁2aとの間に、下側の衝撃吸収部材4が配設されている。そして、ここでは、上側の四角筒1が第1のスライド機構を構成し、下側の四角筒2が第2のスライド機構を構成している。
【0018】
図2は、図1に示す衝撃荷重伝達構造に衝撃荷重が作用したときの動作説明図である。上側の四角筒1に対して上方から下方に向かう衝撃荷重Faが入力されると、上側の四角筒1は下方にスライドし、このとき、上側の四角筒1の上壁1bは、荷重入力部として上側の衝撃吸収部材3を押圧して当該衝撃吸収部材3を圧縮すると共に、上側の四角筒1の底壁1aは、荷重入力部に連結された荷重伝達部として下側の衝撃吸収部材4を押圧して当該衝撃吸収部材4を圧縮し、衝撃荷重Faは、上側の衝撃吸収部材3を介して一の部材としての下側の四角筒2の上壁2bに伝達されると共に、下側の衝撃吸収部材4を介して他の部材としての下側の四角筒2の底壁2aに伝達される。
【0019】
また、これとは逆に、下側の四角筒2に対して下方から上方に向かう衝撃荷重Fbが入力されると、下側の四角筒2は上方にスライドし、このとき、下側の四角筒2の底壁2aは、下側の衝撃吸収部材4を押圧して当該衝撃吸収部材4を圧縮すると共に、下側の四角筒2の上壁2bは、上側の衝撃吸収部材3を押圧して当該衝撃吸収部材3を圧縮し、衝撃荷重Fbは、下側の衝撃吸収部材4を介して上側の四角筒1の底壁1aに伝達されると共に、上側の衝撃吸収部材3を介して上側の四角筒1の上壁1bに伝達される。
【0020】
このように、本実施形態においては、衝撃荷重Faが入力されると、当該衝撃荷重Faは、スライド機構を構成する四角筒1がスライドすることによって、複数の部材である四角筒2の上壁2bと、四角筒2の底壁2aに伝達されるため、衝撃荷重Faは分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0021】
また、衝撃荷重Faと反対方向の衝撃荷重Fbが入力されると、スライド機構を構成する四角筒2がスライドすることによって、複数の部材である四角筒1の底壁1aと、四角筒1の上壁1bに伝達されるため、衝撃荷重Fbは分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0022】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構1,2が相互的に活用されて、複数の方向から作用する衝撃荷重、具体的には、一の方向から作用する衝撃荷重Fa、これとは反対側から作用する衝撃荷重Fbの各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重Fa,Fbをそれぞれ分散して伝達できる。
【0023】
さらにまた、上側の四角筒1の上壁1bと下側の四角筒2の上壁2bとの間、上側の四角筒1の底壁1aと下側の四角筒2の底壁2aとの間に、衝撃吸収部材3,4がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材3,4により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0024】
図3は、本発明の第2実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す平面模式図、図4は、図3中の衝撃荷重伝達構造の右側部分を示す斜視図であり、ここに示す衝撃荷重伝達構造は、車両に搭載されるものである。
【0025】
この衝撃荷重伝達構造は、左右(車両の幅方向)に延びるフロントバンパー11と、このフロントバンパー11の両側の上下にそれぞれ連結され前後方向に延びる左右上下側のサイドメンバー12a,12bと、この左右上下側のサイドメンバー12a,12bにその両側の上下がそれぞれ連結され左右方向に延びるリアダッシュパネル13と、を有する第1のスライド機構14を備える。
【0026】
また、この衝撃荷重伝達構造は、左右に延びるリアバンパー21と、このリアバンパー21の両側の側部に各後端がそれぞれ連結され前後方向に延びる左右横側のサイドメンバー12c,12dと、この左右横側のサイドメンバー12c,12dにその側部がそれぞれ連結され左右方向に延びるフロントダッシュパネル23と、を有する第2のスライド機構24を備える。左横側のサイドメンバー12c、右横側のサイドメンバー12dは、各々一対で構成され、左横側のサイドメンバー12c,12c、右横側のサイドメンバー12d,12dは、それぞれが左右方向に離間して配設され、左右横側のサイドメンバー12c,12dのうちの内側のサイドメンバーは、リアダッシュパネル13に設けられたスリット13aを通されその前端がフロントダッシュパネル23に、その後端がリアバンパー21にそれぞれ連結されている。
【0027】
第1のスライド機構14を構成するフロントバンパー11と第2のスライド機構24を構成するフロントダッシュパネル23との間には、フロント衝撃吸収部材15が配設されると共に、第2のスライド機構24を構成するリアバンパー21と第1のスライド機構14を構成するリアダッシュパネル13との間には、リア衝撃吸収部材25が配設される。
【0028】
そして、第1のスライド機構14は、設定以上の前突衝撃荷重(以下単に前突荷重と呼ぶ)F1がフロントバンパー11に作用すると、後方に向かうスライド移動が可能とされ、第2のスライド機構24は、設定以上の後突衝撃荷重(以下単に後突荷重と呼ぶ)F2がリアバンパー21に作用すると、前方に向かうスライド移動が可能とされている。
【0029】
図5は、図4に示す衝撃荷重伝達構造に前突荷重が作用したときの動作説明図である。フロントバンパー11に対して前突荷重F1が入力されると、第1のスライド機構14、すなわち、フロントバンパー11、左右上下側のサイドメンバー12a,12b、リアダッシュパネル13が後方にスライドし、このとき、フロントバンパー11は、荷重入力部としてフロント衝撃吸収部材15を押圧して当該衝撃吸収部材15を圧縮すると共に、リアダッシュパネル13は、荷重入力部に連結された荷重伝達部としてリア衝撃吸収部材25を押圧して当該衝撃吸収部材25を圧縮し、前突荷重F1は、フロント衝撃吸収部材15を介して一の部材としてのフロントダッシュパネル23に伝達されると共に、リア衝撃吸収部材25を介して他の部材としてのリアバンパー21に伝達される。
【0030】
図6は、図4に示す衝撃荷重伝達構造に後突荷重が作用したときの動作説明図である。リアバンパー21に対して後突荷重F2が入力されると、第2のスライド機構24、すなわち、リアバンパー21、左右横側のサイドメンバー12c,12d、フロントダッシュパネル23が前方にスライドし、このとき、リアバンパー21は、リア衝撃吸収部材25を押圧して当該衝撃吸収部材25を圧縮すると共に、フロントダッシュパネル23は、フロント衝撃吸収部材15を押圧して当該衝撃吸収部材15を圧縮し、後突荷重F2は、リア衝撃吸収部材25を介してリアダッシュパネル13に伝達されると共に、フロント衝撃吸収部材15を介してフロントバンパー11に伝達される。
【0031】
このように、本実施形態においては、前突荷重F1が入力されると、当該前突荷重F1は、第1のスライド機構14がスライドすることによって、複数の部材であるフロントダッシュパネル23と、リアバンパー21に伝達されるため、前突荷重F1は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0032】
また、前突荷重F1と反対方向の後突荷重F2が入力されると、第2のスライド機構24がスライドすることによって、複数の部材であるリアダッシュパネル13と、フロントバンパー11に伝達されるため、後突荷重F2は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0033】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構14,24が相互的に活用されて、前突荷重F1、後突荷重F2の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重F1,F2をそれぞれ分散して伝達できる。
【0034】
さらにまた、フロントバンパー11とフロントダッシュパネル23との間、リアバンパー21とリアダッシュパネル13との間に、衝撃吸収部材15,25がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材15,25により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0035】
図7は、本発明の第3実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた車両を示す正面模式図、図8は、図7中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図であり、ここに示す衝撃荷重伝達構造は、車両に搭載されるものである。
【0036】
この衝撃荷重伝達構造は、断面コの字状を成し前後方向に延びる一方のサイドメンバー31と、このサイドメンバー31の下側を連結し車両室内の底部を構成するフロア32と、このフロア32に連結され他方のサイドメンバー41の内側部分を構成する他方のサイドメンバーの内側部分41aと、を有する第1のスライド機構34を備える。
【0037】
また、この衝撃荷重伝達構造は、断面コの字状を成し前後方向に延びる他方のサイドメンバー41と、このサイドメンバー41の両側の側部にその一方側の端部がそれぞれ連結され左右方向に延びるリンクバー42と、このリンクバー42の他方側の端部にその前後端が連結され一方のサイドメンバー31の内側部分を構成する一方のサイドメンバーの内側部分31aと、を有する第2のスライド機構44を備える。
【0038】
第1のスライド機構34を構成する一方のサイドメンバー31と第2のスライド機構44を構成する一方のサイドメンバーの内側部分31aとの間には、一方のサイド衝撃吸収部材35が配設されると共に、第2のスライド機構44を構成する他方のサイドメンバー41と第1のスライド機構34を構成する他方のサイドメンバーの内側部分41aとの間には、他方のサイド衝撃吸収部材45が配設される。
【0039】
そして、第1のスライド機構34は、設定以上の一方側からの側突衝撃荷重(以下単に側突荷重と呼ぶ)F3が一方のサイドメンバー31に作用すると、他方のサイドメンバー41に向かうスライド移動が可能とされ、第2のスライド機構44は、設定以上の他方側からの側突荷重F4が他方のサイドメンバー41に作用すると、一方のサイドメンバー31に向かうスライド移動が可能とされている。
【0040】
図9は、図8に示す衝撃荷重伝達構造に側突荷重が作用したときの動作説明図である。一方のサイドメンバー31に対して側突荷重F3が入力されると、第1のスライド機構34、すなわち、一方のサイドメンバー31、フロア32、他方のサイドメンバーの内側部分41aが他方のサイドメンバー41に向かってスライドし、このとき、一方のサイドメンバー31は、荷重入力部として一方のサイド衝撃吸収部材35を押圧して当該衝撃吸収部材35を圧縮すると共に、他方のサイドメンバーの内側部分41aは、荷重入力部に連結された荷重伝達部として他方のサイド衝撃吸収部材45を押圧して当該衝撃吸収部材45を圧縮し、側突荷重F3は、一方のサイド衝撃吸収部材35を介して一の部材としての一方のサイドメンバーの内側部分31aに伝達されると共に、他方のサイド衝撃吸収部材45を介して他の部材としての他方のサイドメンバー41に伝達される。
【0041】
また、他方のサイドメンバー41に対して図7に示す側突荷重F4が入力されると、第2のスライド機構44、すなわち、他方のサイドメンバー41、リンクバー42、一方のサイドメンバーの内側部分31aが一方のサイドメンバー31に向かってスライドし、このとき、他方のサイドメンバー41は、他方のサイド衝撃吸収部材45を押圧して当該衝撃吸収部材45を圧縮すると共に、一方のサイドメンバーの内側部分31aは、一方のサイド衝撃吸収部材35を押圧して当該衝撃吸収部材35を圧縮し、側突荷重F4は、他方のサイド衝撃吸収部材45を介して他方のサイドメンバーの内側部分41aに伝達されると共に、一方のサイド衝撃吸収部材35を介して一方のサイドメンバー31に伝達される。
【0042】
このように、本実施形態においては、一方側からの側突荷重F3が入力されると、当該側突荷重F3は、第1のスライド機構34がスライドすることによって、複数の部材である一方のサイドメンバーの内側部分31aと、他方のサイドメンバー41に伝達されるため、側突荷重F3は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0043】
また、側突荷重F3と反対方向の側突荷重F4が他方側から入力されると、第2のスライド機構44がスライドすることによって、複数の部材である他方のサイドメンバーの内側部分41aと、一方のサイドメンバー31に伝達されるため、側突荷重F4は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構34,44が相互的に活用されて、側突荷重F3,F4の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重F3,F4をそれぞれ分散して伝達できる。
【0045】
さらにまた、一方のサイドメンバー31と一方のサイドメンバーの内側部分31aとの間、他方のサイドメンバー41と他方のサイドメンバーの内側部分41aとの間に、衝撃吸収部材35,45がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材35,45により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0046】
図10は、本発明の第4実施形態に係る衝撃荷重伝達構造を備えた航空機を示す側面模式図、図11は、図10中の衝撃荷重伝達構造を示す斜視図であり、ここに示す衝撃荷重伝達構造は、航空機に搭載されるものである。
【0047】
この衝撃荷重伝達構造は、前後方向に延びる機体(胴体)の底梁51と、この底梁51の前後部にそれぞれ連結され上側に開放されるU字状を成すロードパスフレーム52と、このロードパスフレーム52にその前後部がそれぞれ連結された天井53と、を有する第1のスライド機構54を備える。
【0048】
また、この衝撃荷重伝達構造は、前後方向に延びる機体の天梁61と、この天梁61の前後部にそれぞれ連結され下側に開放されるU字状を成すロードパスフレーム62と、このロードパスフレーム62にその前後部がそれぞれ連結されたフロア63と、を有する第2のスライド機構64を備える。乗客スペースSは、フロア63、天井53、前後部のロードパスフレーム52,52(62,62)で囲まれる領域に設定される。
【0049】
第1のスライド機構54を構成する底梁51と第2のスライド機構64を構成するフロア63との間には、床下衝撃吸収部材55が配設されると共に、第2のスライド機構64を構成する天梁61と第1のスライド機構54を構成する天井53との間には、天井衝撃吸収部材65が配設される。
【0050】
そして、第1のスライド機構54は、設定以上の接地衝撃荷重(以下単に接地荷重と呼ぶ)F5が底梁51に作用すると、天梁61に向かうスライド移動が可能とされ、第2のスライド機構64は、設定以上の横転衝撃荷重(以下単に横転荷重と呼ぶ)F6が天梁61に作用すると、底梁51に向かうスライド移動が可能とされている。なお、図10において符号99は翼を示している。
【0051】
図11に示すように、底梁51に対して接地荷重F5が入力されると、第1のスライド機構54、すなわち、底梁51、ロードパスフレーム52、天井53が天梁61に向かってスライドし、このとき、底梁51は、荷重入力部として床下衝撃吸収部材55を押圧して当該衝撃吸収部材55を圧縮すると共に、天井53は、荷重入力部に連結された荷重伝達部として天井衝撃吸収部材65を押圧して当該衝撃吸収部材65を圧縮し、接地荷重F5は、床下衝撃吸収部材55を介して一の部材としてのフロア63に伝達されると共に、天井衝撃吸収部材65を介して他の部材としての天梁61に伝達される。
【0052】
また、天梁61に対して横転荷重F6が入力されると、第2のスライド機構64、すなわち、天梁61、ロードパスフレーム62、フロア63が底梁51に向かってスライドし、このとき、天梁61は、天井衝撃吸収部材65を押圧して当該衝撃吸収部材65を圧縮すると共に、フロア63は、床下衝撃吸収部材55を押圧して当該衝撃吸収部材55を圧縮し、横転荷重F6は、天井衝撃吸収部材65を介して天井53に伝達されると共に、床下衝撃吸収部材55を介して底梁51に伝達される。
【0053】
このように、本実施形態においては、接地荷重F5が入力されると、当該接地荷重F5は、第1のスライド機構54がスライドすることによって、複数の部材であるフロア63と、天梁61に伝達されるため、接地荷重F5は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0054】
また、接地荷重F5と反対方向の横転荷重F6が入力されると、第2のスライド機構64がスライドすることによって、複数の部材である天井53と、底梁51に伝達されるため、横転荷重F6は分散して伝達され、各部材に伝達される衝撃荷重を低減できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第1、第2のスライド機構54,64が相互的に活用されて、接地荷重F5、横転荷重F6の各々に対して対処することができ、両方向からの衝撃荷重F5,F6をそれぞれ分散して伝達できる。
【0056】
さらにまた、底梁51とフロア63との間、天梁61と天井53との間に、衝撃吸収部材55,65がそれぞれ設けられているため、分散して伝達される衝撃荷重が、当該衝撃吸収部材55,65により吸収され、各部材に伝達される衝撃荷重を一層低減できる。
【0057】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、第1、第2のスライド機構を設け、両方向(一方向及びこれとは反対方向)からの衝撃荷重をそれぞれ分散して伝達できるようにし、第2実施形態では、車両の前突、後突、第3実施形態では、車両の左側突、右側突、第4実施形態では、航空機の接地、横転に対処できるようにしているが、スライド機構を一つとして、一方向のみに対処できる構成としても良く、この場合にも、衝撃荷重を分散して伝達できるという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1,14,34,54…第1のスライド機構(スライド機構)、1a,13,41a,53…荷重伝達部、1b,11,31,51…荷重入力部、2,24,44,64…第2のスライド機構(スライド機構)、2a,21,41,61…他の部材、2b,23,31a,63…一の部材、3,4,15,25,35,45,55,65…衝撃吸収部材、F1〜F6,Fa,Fb…衝撃荷重。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される衝撃荷重伝達構造であって、
衝撃荷重が入力されると、スライドしながら前記衝撃荷重を複数の部材に伝達するスライド機構を備えたことを特徴とする衝撃荷重伝達構造。
【請求項2】
前記スライド機構は、
前記衝撃荷重が入力される荷重入力部、及び、この荷重入力部に連結された荷重伝達部を有し、
前記衝撃荷重が前記荷重入力部に入力されると、スライドしながら、前記衝撃荷重を前記荷重入力部から一の部材に伝達すると共に前記荷重伝達部から他の部材に伝達することを特徴とする請求項1記載の衝撃荷重伝達構造。
【請求項3】
前記スライド機構は第1のスライド機構とされると共に、当該第1のスライド機構とは別の第2のスライド機構を備え、
前記第2のスライド機構は、
前記他の部材、及び、前記他の部材に連結された前記一の部材を有し、
前記衝撃荷重とは別の衝撃荷重が前記他の部材に入力されると、スライドしながら、前記別の衝撃荷重を前記他の部材から前記第1のスライド機構の前記荷重伝達部に伝達すると共に前記一の部材から前記第1のスライド機構の前記荷重入力部に伝達することを特徴とする請求項2記載の衝撃荷重伝達構造。
【請求項4】
前記荷重入力部と前記一の部材との間、及び、前記荷重伝達部と前記他の部材との間には、衝撃吸収部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の衝撃荷重伝達構造。
【請求項5】
前記移動体は、航空機であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の衝撃荷重伝達構造。
【請求項1】
移動体に搭載される衝撃荷重伝達構造であって、
衝撃荷重が入力されると、スライドしながら前記衝撃荷重を複数の部材に伝達するスライド機構を備えたことを特徴とする衝撃荷重伝達構造。
【請求項2】
前記スライド機構は、
前記衝撃荷重が入力される荷重入力部、及び、この荷重入力部に連結された荷重伝達部を有し、
前記衝撃荷重が前記荷重入力部に入力されると、スライドしながら、前記衝撃荷重を前記荷重入力部から一の部材に伝達すると共に前記荷重伝達部から他の部材に伝達することを特徴とする請求項1記載の衝撃荷重伝達構造。
【請求項3】
前記スライド機構は第1のスライド機構とされると共に、当該第1のスライド機構とは別の第2のスライド機構を備え、
前記第2のスライド機構は、
前記他の部材、及び、前記他の部材に連結された前記一の部材を有し、
前記衝撃荷重とは別の衝撃荷重が前記他の部材に入力されると、スライドしながら、前記別の衝撃荷重を前記他の部材から前記第1のスライド機構の前記荷重伝達部に伝達すると共に前記一の部材から前記第1のスライド機構の前記荷重入力部に伝達することを特徴とする請求項2記載の衝撃荷重伝達構造。
【請求項4】
前記荷重入力部と前記一の部材との間、及び、前記荷重伝達部と前記他の部材との間には、衝撃吸収部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の衝撃荷重伝達構造。
【請求項5】
前記移動体は、航空機であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の衝撃荷重伝達構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−255819(P2011−255819A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133089(P2010−133089)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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