説明

衣料用洗剤組成物

【課題】洗浄性能、再汚染防止性能、及び柔軟化性能に優れた衣料用洗剤組成物を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)、粘土鉱物(b)、及び一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)を含有する衣料用洗剤組成物である。
1−O−(AO)m−(EO)n−SO3M (I)
(式中、R1は炭素数6〜22の炭化水素基、AOは炭素数3及び/又は4のオキシアルカンジイル基、EOはオキシエチレン基を示し、mは1〜10、nは0〜20である。)
2−O−(C362)x−H (III)
(式中、R2は炭素数6〜22の炭化水素基を示し、xは1〜7の数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟化性能等に優れた衣料用洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣料用洗剤に関する消費者の期待としては、汚れに対する高い洗浄性能、汚れの再汚染防止に加えて、洗濯後の柔軟性等が挙げられ、これらを両立させることが衣料用洗剤の課題の一つである。
衣料を洗濯すると、繊維処理剤の脱落や塩類の付着等によって柔らかさを失い、ごわごわした感触になるが、これを防止して衣料の風合いに柔軟性を付与するために、粘土鉱物による柔軟性の付与が検討されている。
例えば、スメクタイト型粘土鉱物を含む洗浄剤組成物(特許文献1)、ベントナイトとペンタエリスリトール化合物との併用による布帛柔軟化製品(特許文献2)、ベントナイトと可溶性カリウム塩との併用による柔軟用洗剤組成物(特許文献3)、粘土鉱物と凝集剤との併用による布地柔軟性付与成分を含む洗剤組成物(特許文献4)等が知られている。
【0003】
また、油汚れ等に対する洗浄力強化の一環として、主界面活性剤として非イオン性界面活性剤が配合されるようになってきている。例えば、非イオン界面活性剤と、特定比率の陽イオン界面活性剤/陰イオン界面活性剤とを組み合わせることで、皮脂汚れに対し高い洗浄性能を有し、また柔軟化効果に優れるとされた液体洗浄剤組成物(特許文献5)が提案されている。
しかしながら、洗浄性能、汚れの再汚染防止性能、及び柔軟化性能の全てを両立して満足できる衣料用洗剤は得られていない。
【0004】
【特許文献1】特開昭49−85102号公報
【特許文献2】特開平5−140869号公報
【特許文献3】特表平8−506843号公報
【特許文献4】特表2002−541342号公報
【特許文献5】特開平11−217585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、洗浄性能、再汚染防止性能、及び柔軟化性能に優れた衣料用洗剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、柔軟性付与効果についての粘土鉱物と陰イオン界面活性剤との相互作用に着目し、特定の界面活性剤と粘土鉱物を組み合わせることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)、粘土鉱物(b)、及び一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)を含有する衣料用洗剤組成物を提供する。
1−O−(AO)m−(EO)n−SO3M (I)
(式中、R1は炭素数6〜22の炭化水素基を示し、AOは炭素数3及び/又は4のオキシアルカンジイル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、m及びnは付加モル数を示し、mは1〜10、nは0〜20である。)
2−O−(C362)x−H (III)
(式中、R2は炭素数6〜22の炭化水素基を示し、xはグリセリン縮合度を示し1〜7の数である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗浄性能、再汚染防止性能、及び柔軟化性能に優れた衣料用洗剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の衣料用洗剤組成物は、一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)、粘土鉱物(b)、及び一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)を含有することを特徴とする。
【0009】
<一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)>
本発明で用いられる陰イオン界面活性剤(a)は、下記一般式(I)で表されるアルキルエーテル硫酸エステル塩である。
1−O−(AO)m−(EO)n−SO3M (I)
(式中、R1は炭素数6〜22の炭化水素基を示し、AOは炭素数3及び/又は4のオキシアルカンジイル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、m及びnは付加モル数を示し、mは1〜10、nは0〜20である。)
【0010】
一般式(I)中のR1である炭化水素基としては、好ましくは炭素数8〜16、より好ましくは炭素数10〜14、特に好ましくは炭素数12〜14のアルキル基が好ましい。更に、起泡力、乳化力等の性能面やカーボンニュートラルという環境面から、油脂原料由来の直鎖アルキル基であることが好ましい。
一般式(I)中の(AO)であるオキシアルカンジイル基としては、オキシトリメチレン基、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,3−ジイル基、オキシブタン−2,3−ジイル基、オキシテトラメチレン基、及びこれらの2種以上の組合せが挙げられる。これらの中では、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,2−ジイル基がより好ましい。
一般式(I)中のmは、(AO)の付加モル数であり、1〜10の数であるが、製造時における反応性と柔軟化性能向上の観点から、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3である。
一般式(I)中のnは、(EO)の付加モル数であり、0〜20の数であり、柔軟化性能向上等の観点から、好ましくは0〜10であり、より好ましくは0〜5である。
【0011】
また、一般式(I)中のMは、塩を形成する陽イオン基であり、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、及びアルカノールアンモニウムイオン等が挙げられる。
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム等が挙げられ、アルカノールアンモニウムイオンとしては、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。これらの中では、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
前記陰イオン界面活性剤(a)は、取り扱い性の観点から、粉末状であることが好ましいが、含水ペースト等の形態であってもよい。
【0012】
一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)の製法は特に限定されない。例えば、以下の工程(I)〜(III)を含む方法により製造することができる。
工程(I):炭素数6〜22の炭化水素基を有するアルコール1モルに炭素数3及び/又は4のアルカンジイルオキシドを1〜10モル付加させる工程
工程(II):上記工程(I)で得られたアルカンジイルオキシド付加物にエチレンオキシドを0〜20モル付加させる工程
工程(III):上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和する工程
【0013】
上記の方法で得られる陰イオン界面活性剤(a)は、下記一般式(i)〜(iv)で表されるアルキルエーテル硫酸エステル塩の混合物であるが、一般式(I)を満たすものは(ii)と(iv)の化合物である。
1−O−SO3M (i)
1−O−(AO)x−SO3M (ii)
1−O−(EO)y−SO3M (iii)
1−O−(AO)z−(EO)z’−SO3M (iv)
なお、一般式(ii)〜(iv)中のx、y、z、z'は、それぞれ1以上の整数であり、R1及びMは、一般式(I)におけるR1及びMと同じである。
本発明の衣料用洗剤組成物中における陰イオン界面活性剤(a)の含有量は、本発明の目的・効果が達せられる程度の有効量であればよく、本発明の衣料用洗剤組成物中には、一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)ではないもの、すなわち〔m=1〜10〕及び/又は〔n=0〜20〕ではないアルキルエーテル硫酸エステル塩、例えば上記(i)や(iii)の化合物を含んでいてもよい。かかる観点から、全アルキルエーテル硫酸エステル塩中の前記陰イオン界面活性剤(a)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
【0014】
工程(I)におけるアルコールの炭化水素基としては、汎用性、取り扱い性の観点から、炭素数8〜16のアルキル基が好ましく、炭素数10〜14のアルキル基がより好ましく、炭素数12〜14のアルキル基が特に好ましい。さらに、起泡力及び乳化力性能の観点から、直鎖アルキル基であることが好ましい。
また、炭素数3及び/又は4のアルカンジイルオキシドの使用量は、上記アルコール1モルに対するアルカンジイルオキシドの付加モル数が1〜10となる量である。
工程(II)におけるエチレンオキシドの使用量は、工程(I)で得られたアルカンジイルオキシド付加物1モルに対するエチレンオキシドの付加モル数が0〜20となる量である。
工程(I)、(II)の実施は、従来公知の方法により行うことができる。すなわち、反応容器にアルコールと、アルコールに対し0.5〜1モル%のKOH等を触媒として仕込み、昇温・脱水し、130〜160℃の温度で、それぞれ所定量のアルカンジイルオキシド及びエチレンオキシドをブロック付加反応させることにより製造できる。
【0015】
工程(III)における硫酸化の方法としては、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸等を用いる方法が挙げられるが、特に、廃硫酸及び廃塩酸等の発生を防止する観点から、三酸化硫黄をアルコキシレートと同時にガス状又は液状で連続的に供給する方法が好ましい。
得られた硫酸化物の中和方法に限定はなく、所定量の中和剤中に硫酸化物を添加・攪拌しながら中和するバッチ式、硫酸化物と中和剤を配管内へ連続的に供給し、攪拌混合機で中和する連続式等を採用できる。使用できる中和剤としてはアルカリ金属水溶液、アンモニア水、トリエタノールアミン等が挙げられるが、アルカリ金属水溶液が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0016】
<粘土鉱物(b)>
本発明で用いられる粘土鉱物(b)に特に制限はなく、天然品でも合成品でもよく、その形態は、パウダー状及び粒状のいずれであってもよい。粘土鉱物(b)を粘土造粒物とした場合は、造粒時等に使用した凝集剤や添加物等を含んだものを意味する。
粘土鉱物(b)としては、例えば、タルク、パイロフィライト、スメクタイト(サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スティーブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト等)、バーミキュライト、雲母(金雲母、黒雲母、チンワルド雲母、白雲母、パラゴナイト、セラドナイト、海緑石等)、緑泥石(クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ペナンタイト、スドーアイト、ドンバサイト等)、脆雲母(クリントナイト、マーガライト等)、スーライト、蛇紋石(アンチゴライト、リザーダイト、クリソタイル、アメサイト、クロンステダイト、バーチェリン、グリーナライト、ガーニエライト等)、カオリン(カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト等)等が挙げられる。
これらの中では、タルク、スメクタイト、膨潤性雲母、バーミキュライト、クリソタイル、カオリンが好ましく、スメクタイトがより好ましい。
これらはそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0017】
粘土鉱物(b)としては、柔軟化性能の観点から、一般式(II)で表されるスメクタイト型層状粘土鉱物を主成分とする粘土鉱物又は粘土造粒物がより好ましく、モンモリロナイトやヘクトライト、中でも特にモンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物又は粘土造粒物好ましい。
[Si8(MgaAlb)O20(OH)4X-・X/n[Me]n+ (II)
(式中、a、b及びxは、それぞれ0<a≦6及び0≦b≦4、0.2≦x=12−2a−3b≦1.2であり、MeはLi、Na、Ka、Ca、Mg及びNH4の少なくとも1種を示し、nはMeの価数を示す。)
スメクタイト型層状粘土鉱物は、層構造が液体媒体中で膨張し、これが分散して衣料に吸着することにより、柔軟化性能を発現すると考えられる。ここで「主成分とする」とは、一般式(II)で表される粘土鉱物が、全粘土鉱物中の90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上であることを意味する。
粘土鉱物(b)は、パウダーとして用いる場合、その平均粒径は、0.1〜40μmが好ましく、0.5〜35μmがより好ましく、1〜30μmが更に好ましく、1〜25μmが特に好ましい。
ここで、粘土鉱物(b)の平均粒径は、例えば乾式測定ユニットを有したレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0018】
また、溶解性の観点から、一般式(II)で表される粘土鉱物中のNaの含有量は、粘土鉱物中1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。また、粘土造粒物である場合には、NaとCaの質量比(Na/Ca)は、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。
(Na/Ca)質量比が高い粘土鉱物を得るには、天然品であれば産地を選択すればよいし、粘土造粒物を製造する場合は、例えば、粘土鉱石スラリー又は粘土鉱物粉砕物に炭酸ナトリウム等のNa塩を添加して調製することができ、合成品であれば公知の方法により調製することができる。
粘土造粒物中の(Na/Ca)の質量比は、粘土造粒物を乳鉢で粉砕し、目開き125μmの篩を通過した試料0.1gをマイクロウェーブ湿式灰化装置(自動)で硫酸−過酸化水素分解した後、メスフラスコにて50mLにメスアップして、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置で測定してNaとCa量を定量して算出することができる。
【0019】
粘土造粒物の嵩密度は、非分級性の観点から、好ましくは500〜1200g/L、より好ましくは600〜1100g/L、特に好ましくは700〜1050g/Lである。ここで嵩密度の測定はJIS K3362に準拠して行う。
粘土造粒物の平均粒径は、低発塵性、非分級性の観点から、好ましくは100〜2000μm、より好ましくは200〜900μm、特に好ましくは300〜800μmである。ここで平均粒径は、JIS Z8801の標準篩を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる重量分率から求めることができる。
粘土造粒物の含水量は、粒子強度の観点から、好ましくは18質量%以下、より好ましくは16質量%以下、特に好ましくは14質量%以下である。
【0020】
一般式(II)で表される粘土鉱物(b)の市販品例としては、ズード・ケミ社製の商品名:「ラウンドロジルDGA212」、「ラウンドロジルPR414」、「ラウンドロジルDG214」、「ラウンドロジルDGAパウダー」、「フラソフト−1パウダー」、ラヴィオッサ社製の商品名:「デタソフトGIS」、「デタソフトGIB」、「デタソフトGISW」、ホージュン社製の商品名:「ベンゲルブライト11」、「ベンゲルブライト23」、CSM社製の商品名:「クエストソフト」、「ピュアベントナイト」、「スタンダードベントナイト」、「プレミアムベントナイト」、黒崎白土工業株式会社製の「オドソルブK−400」等が挙げられる。
上記市販品の中には、バインダー成分を添加し、造粒された顆粒タイプのものも存在するが、バインダー成分は本発明の効果を損なわない限り添加されていてもよい。
【0021】
<一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)>
本発明の衣料用洗剤組成物は、柔軟化性能を更に高める観点から、下記一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)を含有する。
2−O−(C362)x−H (III)
(式中、R2は炭素数6〜22の炭化水素基を示し、xはグリセリン縮合度を示し1〜7の数である。)
ここで一般式(III)中のR2である炭化水素基としては、好ましくは炭素数8〜16、より好ましくは炭素数10〜14、特に好ましくは炭素数12〜14のアルキル基が好ましい。更に、起泡力、乳化力等の性能面やカーボンニュートラルという環境面から、油脂原料由来の直鎖アルキル基であることが好ましい。
また、一般式(III)中のxは、グリセリン縮合度であり、1〜7の数であるが、製造時における反応性等の観点から、好ましくは2〜6であり、より好ましくは3〜5である。
好ましくは1.2〜5であり、より好ましくは1.5〜3である。
また、一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)において、柔軟化性能、洗浄性能の観点から、〔R2−O−(C36235−H/R2−O−(C36217−H〕の質量比は、好ましくは0.3以上である、より好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
【0022】
前記非イオン界面活性剤(c)は、低温での洗浄性能、及び柔軟性能の観点から、一般式(III)中のグリセリンの縮合度xが異なる複数の化合物を含み、xの異なる化合物を2種以上、特に3種以上含むことが好ましい。前記非イオン界面活性剤(c)の中では、グリセリンの縮合度xが3〜5のものが最も高い洗浄性能を示す。しかしこの範囲であっても、グリセリンの縮合度xが単一のもののみからなる場合、結晶化しやすいため、特に低温で水への溶解性が劣り、その結果、洗浄力は低下する傾向を示す。一方、前記非イオン界面活性剤(c)がグリセリンの縮合度xの異なる複数の化合物を含む場合、結晶化が抑制されるため低温でも高い溶解性を示し、その結果良好な洗浄性能が得られる。従って、前記非イオン界面活性剤(c)中のグリセリンの縮合度xが3〜5であるもののうち、2種以上、更に3種全部(x=3、4、5)を含むことがより好ましい。
【0023】
また、洗浄力の観点から、非イオン界面活性剤(c)の原料であるグリセリンの縮合度xは4が最も好ましく、グリセリン縮合度が1〜7であるグリセリルエーテル中、該縮合度xが4であるグリセリルモノエーテルの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。
また、洗浄力や再汚染防止性の観点から、非イオン界面活性剤(c)中、グリセリン縮合度xが2であるグリセリルモノエーテル等の含有量は、好ましくは50質量%未満、より好ましくは35質量%以下である。更に、非イオン界面活性剤(c)中、グリセリン縮合度xが1であるグリセリルモノエーテルの含有量は、好ましくは30質量%未満、更に好ましくは20質量%以下である。
【0024】
前記非イオン界面活性剤(c)の具体例としては、ポリグリセリンと、炭素数8〜22のアルキル基とのエーテルが好ましく、例えばポリグリセリンオクチルエーテル、ポリグリセリンデシルエーテル、ポリグリセリンラウリルエーテル、ポリグリセリンミリスチルエーテル、ポリグリセリンパルミチルエーテル、ポリグリセリンイソステアリルエーテル、ポリグリセリンステアリルエーテル、ポリグリセリンオレイルエーテル、ポリグリセリンベヘニルエーテル等のポリグリセリンアルキルエーテルが挙げられる。これらの中では、縮合度3〜5のポリグリセリンと、炭素数10〜14の直鎖アルキル基とのモノエーテルがより好ましい
【0025】
(衣料用洗剤組成物)
本発明の衣料用洗剤組成物中における前記の陰イオン界面活性剤(a)、粘土鉱物(b)、及び非イオン界面活性剤(c)の含有量は、特に限定されないが、洗浄性能、再汚染防止性能、及び柔軟化性能の観点から、以下のとおりである。
陰イオン界面活性剤(a)の含有量は、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは2〜70質量%、更に好ましくは4〜60質量%、特に好ましくは6〜50質量%である。
粘土鉱物(b)の含有量は、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは2〜60質量%、更に好ましくは3〜40質量%、特に好ましくは3〜30質量%である。粘土鉱物(b)が天然品である場合、クォーツ、クリストバライト、カルサイト、長石等の不純物を含有するが、粘土鉱物(b)の含有量は、これらの不純物も含んだものを意味する。
非イオン界面活性剤(c)の含有量は、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0.5〜70質量%、更に好ましくは1〜50質量%であり、特に好ましくは3〜25質量%である。
【0026】
本発明の衣料用洗剤組成物は、前記各成分を混合し、適宜乾燥して得られるが、本発明の効果を阻害しないかぎり、当分野において通常用いられる他の界面活性剤、アルカリ剤、無機塩、ゼオライト、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、漂白活性化剤、粘度調整剤、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤、増泡剤、消泡剤、防腐剤、セルラーゼやプロテアーゼ等の酵素、色素、香料等を配合することができる。
アルカリ剤としては、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩等の水溶性無機塩類や、結晶性ケイ酸塩等の水難溶解性無機物等が挙げられる。
無機塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等のアルカリ金属塩等が挙げられるが、特に好ましくは塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムである。
その他の洗浄成分としては、クエン酸塩やフマル酸塩等の水溶性有機酸塩、結晶性又は非晶質アルミノケイ酸塩等の水難溶性無機物、及びカルボン酸ポリマー、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、糖類等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
〔1〕洗剤組成物の各成分の製造等
製造例1<陰イオン界面活性剤(a−1)の製造>
炭素数12の直鎖アルコール〔花王株式会社製、商品名:カルコール2098〕2340g及びKOH3.5gを攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えたオートクレーブに仕込み、110℃、1.3kPaにて30分間脱水を行った。脱水後窒素置換を行い、120℃まで昇温した後、プロパン−1,2−ジイルオキシド(以下「PO」という)1460gを仕込んだ。120℃にて付加反応・熟成を行った後、80℃まで冷却し、4.0kPaで未反応のPOを除去した後、酢酸3.8gをオートクレーブ内に加え、80℃で30分間攪拌した後、抜き出しを行い、POの平均付加モル数が2.0であるアルコキシレートを得た。
得られたアルコキシレートをガスクロマトグラフ分析及びNMR分析した結果、PO付加モル数2のものが29質量%、PO付加モル数3のものが22質量%、PO付加モル数1のものが22質量%であった。
得られたアルコキシレートを、SO3ガスを用いて下降薄膜式反応器により硫酸化した。得られた硫酸化物をNaOH水溶液にて中和し、ポリオキシプロパン−1,2−ジイルアルキルエーテル硫酸エステル塩を含む組成物を得た。
ガスクロマトグラフ分析及びNMR分析の結果、得られた組成物には、式(I)で示される陰イオン界面活性剤(a)が98質量%含まれていた。
【0028】
製造例2<陰イオン界面活性剤(a−2)の製造>
製造例1と同様にして炭素数12の直鎖アルコール〔商品名:カルコール2098〕の脱水を行った。脱水後窒素置換を行い、120℃まで昇温した後、POを511g仕込んだ。120℃にて付加反応・熟成を行った後、145℃に昇温し、エチレンオキシド(以下「EO」という)を1107g仕込んだ。145℃にて付加反応・熟成を行った後、80℃まで冷却し、4.0kPaで未反応のEOを除去した。未反応EO除去後、3.8gの酢酸をオートクレーブ内に加え、80℃で30分間攪拌した後、抜き出しを行い、平均PO付加モル数が0.7、平均EO付加モル数が2.0であるアルコキシレートを得た。
得られたアルコキシレートをガスクロマトグラフ分析及びNMR分析した結果、PO付加モル数1のものが45質量%、PO付加モル数2のものが13質量%、PO付加モル数3のものが2質量%、PO付加モル数0のものが39質量%であった。
得られたアルコキシレートを製造例1と同様に硫酸化した後、中和し、アルキルエーテル硫酸エステル塩組成物を得た。
ガスクロマトグラフ分析及びNMR分析の結果、得られた組成物には、一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)(一般式(I)のm=1に相当)が60質量%含まれていた。
【0029】
<その他の陰イオン界面活性剤>
・LAS:ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(ソフト型)、花王株式会社製、商品名:ネオペレックスG−15
・AS :炭素数14の直鎖アルコール〔花王株式会社製、商品名:カルコール4098〕を原料として調製したテトラデシル硫酸エステルナトリウム。アルキル鎖長の質量比:C12/C14=2/98(一般式(I)のm=0に相当)
・AES:炭素数14の直鎖アルコール〔花王株式会社製、商品名:カルコール4098〕を原料として調製したポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸塩。アルキル鎖長の質量比:C12/C14=2/98、EO平均付加モル数=1.0
【0030】
<粘土鉱物(b)>
・粘土鉱物1:ズード・ケミ社製、商品名:ラウンドロジルDGA212(ベントナイト顆粒、Na/Caの質量比:2.545)
・粘土鉱物2:ズード・ケミ社製、商品名:ラウンドロジルPR414(ベントナイト顆粒、Na/Caの質量比:0.833)
・粘土鉱物3:ホージュン社製、商品名:ベンゲルブライト23(ベントナイトパウダー、Na/Caの質量比:2.27)
・粘土鉱物4:ホージュン社製、商品名:ベンゲルブライト11(ベントナイトパウダー、Na/Caの質量比:0.025)
【0031】
<非イオン界面活性剤(c−1)>
ラウリルアルコール93.2g(0.50mol)、ランタントリフラート2.94g(0.0050mol)を300mL四つ口フラスコに入れ、窒素気流下、撹拌しながら90℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール148.16g(2.0mol)を24時間で滴下し、そのまま2時間撹拌を続け、反応生成物243.5gを得た。得られた反応生成物をガスクロマトグラフ分析した結果、グリシドール転化率は99.9%以上、ラウリルアルコールの含有量は6.0質量%、ポリグリセリンの含有量は2.2質量%であった。
さらに,本合成品をカラム分離によりグリセリン縮合度1及び2の成分を分取した後、これらを標品としてガスクロマトグラフィーによって、得られたラウリルポリグリセリルエーテル中のグリセリン縮合度1の化合物及びグリセリン縮合度2の化合物を定量した結果、グリセリン縮合度1の化合物は12.2質量%、グリセリン縮合度2の化合物は11.4質量%であった。
また、得られたラウリルポリグリセリルエーテルのうち、グリセリン縮合度xが3〜5のものの割合は、xが1〜7のものの合計に対して43.3質量%であった。よって、該生成物〔c−1〕は、グリセリン縮合度xが異なる複数の化合物を含むことが確認された。
【0032】
<エトキシレートノニオン>
花王株式会社製のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いた。アルキル鎖長:C12/C14=72/28、EO平均付加モル数=6モル
<その他配合成分>
・結晶性シリケート: プリフィード顆粒品(株式会社トクヤマシルテック製)
・石鹸 :炭素数12〜20の脂肪酸塩
・PEG :ポリエチレングリコール(重量平均分子量1万)
・ゼオライト:「ゼオビルダー」(ゼオビルダー社製、メジアン径:3.0μm)
・ポリマー:ポリアクリル酸(GPCによる平均分子量1.5万;ポリエチレングリコール換算)
・酵素 :「セルラーゼK」(バチルス・エスピー KSM−635株を接種して培養、特開昭63−264699号公報参照)、「カンナーゼ24TK」(ノボザイム社製)、「サビナーゼ6.0T」(ノボザイム社製)を3:1:2の質量比で使用
【0033】
〔2〕洗浄性、再汚染防止性、柔軟性の評価方法
実施例1〜9及び比較例1〜5
上記の成分を表1に示す割合で配合して、粉末の衣料用洗剤組成物を調製し、下記の方法で洗浄力、再汚染防止性、柔軟性を評価した。結果を表1に示す。
(1)洗浄力の評価
(襟あか布の調製)
JIS K3362(1998)に準じて、襟あか布を調製した。
(洗浄条件及び評価方法)
JIS K3362(1998)に記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じて、比較例1を基準として各組成の洗浄力を比較した。表1における衣料用洗剤組成物の使用濃度は1.0g/Lとした。
(評価基準)
○:比較例1より優れている
△:比較例1と同等
×:比較例1より劣る
【0034】
(2)カーボン再汚染防止性の評価
洗浄剤組成物1.0gを、20℃の水道水1Lに溶解させた。次にこれに日本油化学協会選定のカーボンブラック(旭カーボン株式会社製、旭洗浄用カーボンブラックが好適)0.25gを添加し、26±1.5kHzの超音波を5分間照射してカーボンブラックを均一に分散させた。
カーボンブラック分散液を20℃にてターゴトメータ(Terg-O-Tometer)の試料カップに移し、6cm×6cmの木綿の白布(日本油化学協会選定の標準品、洗濯科学協会が販売する#2023布)5枚を入れて回転速度80rpmで10分間撹拌した。
次に木綿の白布を取り出し、充分濯いだ後に乾燥させ、下記の式により再汚染防止率を算出した。
再汚染防止率(%)=〔(試験後の木綿の白布の反射率)/(試験前の木綿の白布の反射率)〕×100
反射率は日本電色工業株式会社製の商品名:NDR−10DPで550nmフィルターを使用して測定した。
各洗剤組成物の再汚染防止率を、比較例1を基準として比較した.
(評価基準)
◎:比較例1よりも再汚染防止性が高い(比較例1の再汚染防止率の10%以上)
○:比較例1よりも再汚染防止性が比較的高い(比較例1の再汚染防止率の5%以上10%未満)
△:比較例1と同等
×:比較例1よりも再汚染防止性が低い(比較例1の再汚染防止率の5%以下)
【0035】
(3)柔軟性の評価
(評価用タオルの調製)
市販の綿タオル(綿100%)をミニ洗濯機(松下電器産業株式会社製「N−BK2」)を用い、また、その際の前処理剤には非イオン界面活性剤(アルキル鎖長C12,C14の1級アルコールにエチレンオキサイドを平均6モル付加させたもの)、結晶性シリケート(プリフィード顆粒品)、炭酸ナトリウムを1:1:3(質量比)で混合したものを0.5g/Lで使用した。水温20℃で7分洗浄後、遠心脱水、3分ためすすぎ、脱水、3分ためすすぎ、脱水を合計5回繰り返し、処理剤を除去したものを使用した。
(柔軟処理)
20°Cの水5Lに表1の洗剤組成物5.0g、綿タオル0.3kg(70cm×30cmで4枚)を投入し、7分間洗った。脱水後、水5Lで3分ためすすぎ、脱水、3分ためすすぎ、脱水して風乾した。
(評価方法)
洗剤組成物で洗ったタオルと前処理タオルとを一対として、5人の判定者が手触りの柔らかさを官能評価した。差がない場合及び硬くなる場合を0点、わずかに柔らかくなる場合を1点、少し柔らかくなる場合を2点、明らかに柔らかくなる場合を3点とし、5人の合計点を以下のように示した。この際、○以上を合格レベルとした。
(評価基準)
◎:合計10点以上
○:合計6点以上10点未満
○△:合計6点以上9点未満
△:合計3点以上6点未満
×:合計3点未満
【0036】
【表1】

【0037】
表1から、実施例1〜9の衣料用洗剤組成物は、比較例1〜5の衣料用洗剤組成物に比べて、洗浄性能、再汚染防止性能、及び柔軟化性能が格段に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の洗剤組成物は、洗浄性能、再汚染防止性能、及び柔軟化性能に優れており、衣料用洗剤組成物として広範に利用することができるが、木綿衣料用として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤(a)、粘土鉱物(b)、及び一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)を含有する衣料用洗剤組成物。
1−O−(AO)m−(EO)n−SO3M (I)
(式中、R1は炭素数6〜22の炭化水素基を示し、AOは炭素数3及び/又は4のオキシアルカンジイル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、m及びnは付加モル数を示し、mは1〜10、nは0〜20である。)
2−O−(C362)x−H (III)
(式中、R2は炭素数6〜22の炭化水素基を示し、xはグリセリン縮合度を示し1〜7の数である。)
【請求項2】
陰イオン界面活性剤(a)の含有量が1〜80質量%である、請求項1に記載の衣料用洗剤組成物。
【請求項3】
粘土鉱物(b)の含有量が1〜80質量%である、請求項1又は2に記載の衣料用洗剤組成物。
【請求項4】
非イオン界面活性剤(c)の含有量が0.1〜80質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用洗剤組成物。
【請求項5】
一般式(I)のmが1〜3である、請求項1〜4のいずれかに記載の衣料用洗剤組成物。
【請求項6】
一般式(III)で表される非イオン界面活性剤(c)において、〔R2−O−(C36235−H/R2−O−(C36217−H〕の質量比が0.3以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の衣料用洗剤組成物。
【請求項7】
粘土鉱物(b)がスメクタイト型層状粘土鉱物である、請求項1〜6のいずれかに記載の衣料用洗剤組成物。

【公開番号】特開2009−155567(P2009−155567A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338012(P2007−338012)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】