説明

衣服

【課題】製造工程が簡易でありながらも、3段階に締付け力の異なる部分を備えた衣服を提供することを目的とする。
【解決手段】伸縮性の第1の布地11の一部に、伸縮性の第2の布地12を重ねた衣服(水着10)であり、第1の布地11と第2の布地12との間であってその一部の領域に伸縮性の接合シート13が挟まれ、接合シート13と第1,2の布地11,12が接合されている。第1の布地11のみのベース部14、第1,2の布地11,12の2層構造の中パワー部15、更に接合シート13が配置された3層構造の強パワー部16が形成され、3段階に締付け力が異なる衣服となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水着、スピードスケート用ウエア、体操のレオタードなどのスポーツウエアや、ガードル、ボディスーツなどの補整用下着(ファンデーション)といった身体にフィットする衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば競泳の分野では、水の抵抗の如何によって選手の記録が左右されることから、競泳用の水着には、水の抵抗を極力減らし得る形状や素材を有するものが求められる。この形状に関する技術として、選手の身体を水の抵抗の少ない形に矯正するため、身体に加える締付け力を部分的に異ならせた水着が提案されている。
【0003】
またガードルなどの補整用下着の分野では、理想的な体形に補整するため、特定の箇所を締め付ける構成にしている。
【0004】
締付け力を部分的に強くする手法としては、例えば、身ごろを形成する伸縮性のベース布地(第1の布地)に、伸縮性の第2の布地を部分的に重ね合わせて縫着することが挙げられ、これにより第1,第2の布地の重なった箇所の締付け力を増大させることができる。
【0005】
第2の布地の取付け方としては、上記縫着に代えて、第2の布地の縁部に融着性テープを挟み込んで熱圧着する方法や、縁部を接着剤で接着する方法が知られている。また第2の布地の全面を接着剤のシートによって熱圧着する方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
締付け力を部分的に強くする手法には、上記の他、ポリウレタン樹脂フィルムを所定箇所に熱融着する方法や(例えば特許文献2参照)、緊締力の付与が可能な素材の合成樹脂インクを用いて所定箇所に捺染する方法も知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3510621号公報
【特許文献2】実開平6−33909号公報(段落[0005])
【特許文献3】特開2001−226805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記背景技術では締付け力を2段階に異ならせたものを示したが、2枚重ねの領域の特定部分に更に締付け力の強い部分を設ける場合には、第1,2の布地を重ねた上に、第3の布地を重ねることになる。その製造法では、第1の布地に第2の布地を重ねて取り付ける工程を経た後に、第3の布地を更に重ねて取り付ける工程を行うことから、製造工程が煩雑となる。
【0009】
そこで本発明では、製造工程が簡易でありながらも、締付け力の異なる部分を備えた衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る衣服は、伸縮性を有する第1の布地の一部または全面に、伸縮性を有する第2の布地を重ねた衣服であり、前記第1の布地と前記第2の布地との間であって一部の領域に接合シートが挟まれており、この接合シートと前記第1の布地が接合され、前記接合シートと前記第2の布地が接合されており、前記接合シートが伸縮性を有することを特徴とする。
【0011】
上記接合シートはそれ自身が伸縮性を有するので、第1,2の布地の伸縮力に接合シートの伸縮力が加わり、より強力な締付け力を発揮する部分を形成する。つまり接合シートは、第1の布地と第2の布地を接合するだけでなく、締付け力の強い部分を形成する。こうして第1の布地のみの箇所、接合シートを挟まずに第1の布地と第2の布地を重ねた箇所(第2の布地は透け防止の効果もあるが、以下、この箇所を「中パワー部」と称することがある)、第1の布地と第2の布地の間に接合シートを挟んだ箇所(以下、この箇所を「強パワー部」と称することがある)の3段階に締付け力を異ならせた衣服となる。上記強パワー部は、第1の布地と第2の布地を接合する操作にて形成されるので、製造工程が簡易である。
【0012】
なお4段階以上に締付け力を異ならせる場合には、上記接合シートを複数枚用いてこれを重ねることにより、更に締付け力を強化した箇所を形成することができる。
【0013】
接合シートの配置箇所(強パワー部)が第2の布地の縁部に位置する場合には、第2の布地の捲れ防止になる。なお強パワー部が縁部に位置しない場合には、従来と同様の融着性テープを配置し、第2の布地の捲れを防止すると良く、上記接合シートに熱融着性のものを用いた場合には、該接合シートの箇所と上記融着性テープの箇所とを同時に熱圧着できる。
【0014】
上記のように接合シートによって第1,2の布地の接合と締付け力強化との両方を行う手法は、第1の布地の一部に第2の布地を重ねる場合だけでなく、第1の布地の全面に第2の布地を重ねる場合(衣服全体が第1,2の布地を重ねたものとなる)にも適用できる。この場合は、締付け力の強化箇所が衣服の表裏面いずれにも表れないので、表裏面とも滑らかなものとなる。また強化箇所を表側面に現さないリバーシブル衣服にできる。
【0015】
更に本発明においては、前記接合シートが帯状であり、その最小幅が15mm以上であることが好ましい。
【0016】
幅の狭い帯状の接合シートを用いて、強パワー部に所望の締付け力を発揮させようとした場合は、その細い強パワー部が皮膚にくい込むようになり、着用感を損なってしまう。この点において、上記のように最小幅が15mm以上の帯状接合シートによれば、皮膚へのくい込みが少ない。加えて、幅を15mm以上と広くすることで、強い締付け力(高い伸長時応力)を発揮する強パワー部を形成することができる。
【0017】
なお接合シートとして、細幅のテープ状物を複数本ストライプ状に配置した場合には、このストライプ全体としてその最小幅を15mm以上とすると良い。
【0018】
帯状の接合シートの最小幅として、より好ましくは18mm以上であり、更に好ましくは20mm以上である。
【0019】
そしてこの様な帯状の接合シートの配置を、臀部下方から鼠蹊部にかけた位置とした場合には、臀部を引き上げることができ、その結果、骨盤の安定性が高められ、水泳に際して水の抵抗をできるだけ減らした姿勢をとりやすくなる。また接合シートの配置位置周辺(強パワー部周辺)の筋肉が締め付けられることにより、筋肉の振動(ブレ)が抑制され、筋肉の力を安定して発揮することができる。従って水泳においてキックを打ちやすくなる。
【0020】
本発明において前記接合シートは、10mm幅当たりの50%伸長時応力が5.0N/cm以上であることが好ましい。接合シートの物性として、50%伸長時応力があまりに低い場合は、強パワー部における締付け力の強化に繋がらないからである。より好ましくは6.2N/cm以上であり、更に好ましくは7.0N/cm以上である。
【0021】
50%伸長時応力は、幅10mm×長さ100mmの試験片を用い、これを島津製作所製の品番AGS−500Gの試験機に取り付け、その試験片を下記条件で50%まで引き伸ばし、伸長力(N)を測ることによって求める。試験条件は、「試験幅」を10mm、「つかみ間隔」を40mm(試験機によるつかみ深さ30mm)、「初荷重」をなしとし、「引張速度」は1分間あたり300mm伸長とする。試験片として幅10mmのものを採取できない場合には、比率により算出する。なお接合シート単独で測定し難い場合には、衣服における接合シートを有する箇所の値から、接合シートのみがない箇所の値を差し引いて、接合シートの50%伸長時応力とする。
【0022】
また前記接合シートの幅全体の50%伸長時応力としては7.5N/cm以上であることが好ましい。強パワー部に十分な締付け力を発揮させるためである。より好ましくは9.3N/cm以上であり、更に好ましくは10.5N/cm以上である。
【0023】
前記接合シートの構成としては、基材シートの表裏面に、この基材シートより融点の低い融着層を備えたものであることが好ましい。
【0024】
この接合シートによれば、熱圧着の方法により、第1,第2の布地を融着することができる。そして融着に際し、表側の融着層が第1の布地に含浸し、裏側の融着層が第2の布地に含浸し、それぞれ固まることから、アンカー効果により接合シートと第1の布地が強固に接合されると共に、接合シートと第2の布地が強固に接合される。一方基材シートは溶融せずにその厚みを保つので、接合シートは強パワー部における十分な締付け力の発揮に寄与する。
【0025】
なお上記基材シートは1層に限らず、2層以上で構成されたものであっても良い。
【0026】
また前記基材シートがポリウレタンシートであることが好ましい。伸縮性に乏しい基材シートの場合は、強パワー部での締付け力が極端に強くなり過ぎるが、ポリウレタンの基材シートであれば伸縮性が良好であるので、締付け力の程度を調整し易いからである。水着の場合は、耐塩素性ポリウレタンシートであることがより好ましい。
【0027】
更に前記融着層がポリウレタン層であることが好ましい。第1,第2の布地に含浸した部分についても、締付け力を極端に上げることなく、良好な伸縮性によって締付け力の程度を調整し易いからである。水着の場合は、耐塩素性ポリウレタン層であることがより好ましい。
【0028】
加えて前記第1の布地及び前記第2の布地がポリウレタンを含有することが好ましい。融着層のポリウレタンに対して親和性が良く、第1,2の布地と接合シートが良好に接合されるからである。なお第1,第2の布地はポリウレタン単独で構成しても良いし、或いは他の素材、例えばポリアミドとの混紡、交織、交編等であっても良い。
【0029】
また本発明において、前記接合シートが、織物、編物、不織布、ネット、或いは複数の孔を備えたフィルム状物よりなる群から選択される1以上であることが好ましい。接合シートが基材シートと融着層との多層構造の場合には、それぞれの層について上記の如く織物等で構成し、これらを積層すると良い。この際、例えば基材シートを織物、融着層をネットというように、異なるものを組合せても良い。
【0030】
上記の様な接合シートであれば、通気性が良好であるので、該接合シートを配置した強パワー部においても通気性が良好となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る衣服は、第1,2の布地の間に挟んだ接合シートが接合と締付け力強化の両方の機能を発揮することから、その製造工程が簡易でありながらも、所望の箇所に強パワー部を配置することができる。こうして特定の箇所に強パワー部を設けることにより、運動サポート効果や姿勢サポート効果を発揮する衣服とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態1に係る衣服を着用した様子を表す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図(但し、腕は省略している)、(c)は背面図である。
【図2】図1(c)にA−A矢視線で示す箇所の断面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る衣服における強パワー部付近の断面図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る衣服における強パワー部付近の断面図である。
【図5】本発明の実施形態4に係る衣服における強パワー部付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る衣服を使用者60が着用した様子を表す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図(但し、腕は省略している)、(c)は背面図である。図2は図1(c)にA−A矢視線で示す箇所の断面図である。
【0034】
実施形態1の衣服は、女性用のハーフスパッツタイプの競泳用水着である。この水着10は、第1の布地11をベース生地として水着10の身ごろ全体の形が構成されている。そして第1の布地11の裏面における胸部から腹部、及び臀部に、第2の布地12が重ねられている。また臀部下方から鼠蹊部にかけた位置において、第1の布地11と第2の布地12の間に帯状の接合シート13(一定幅のもの、幅W:18mm)が挟まれている。
【0035】
この第1の布地11−接合シート13−第2の布地12と重なった3層構造の部分が強パワー部16となる(図1に示す濃いグレーの部分)。接合シート13を挟まずに第1の布地11と第2の布地12の重なった2層構造部分が中パワー部15で(図1に示す薄いグレーの部分)、第1の布地11のみの1層構造部分がベース部14である。このようにベース部14、中パワー部15、強パワー部16と、3段階に締付け力が異なる。
【0036】
第1,2の布地11,12には、ポリウレタン弾性糸を芯糸としてこれにポリアミド(例えばポリヘキサメチレンアジポアミド)の被覆糸を巻き付けたカバリング糸が用いられている。第1,2の布地11,12は、このカバリング糸を経糸及び緯糸に用いた織物であって、伸縮性を有する。混紡率はポリウレタン40%、ポリアミド60%で、目付が100g/m2であり、染色加工及び耐久撥水加工が施されている。
【0037】
接合シート13は、ポリウレタン製基材シート13aの表裏両面に融着層13bを備えた3層構造のものである。融着層13bは基材シート13aより融点の低いポリウレタンにより構成されている。この接合シート13は、衣服への取付前の状態において、基材シート13aの厚さが60μm、融着層13bの厚さがそれぞれ50μmである(厚さはJIS K 7130により測定)。
【0038】
この接合シート13は、幅(W)が18mm、この幅全体の50%伸長時応力が11.3N/cm、100%伸長時応力が14.1N/cm、破断強度が98.8N/cm、破断伸度800%である。
【0039】
50%伸長時応力の測定法は上述の通りである。100%伸長時応力は、同じく幅10mm×長さ100mmの試験片を用い、これを島津製作所製の品番AGS−500Gの試験機に取り付け、その試験片を下記条件で100%まで引き伸ばし、伸長力(N)を測ることによって求める。試験条件は、「試験幅」を10mm、「つかみ間隔」を40mm(試験機によるつかみ深さ30mm)、「初荷重」をなしとし、「引張速度」は1分間あたり300mmの伸長とする。試験片として幅10mmのものを採取できない場合には、比率により算出する。なお接合シート単独で測定し難い場合には、衣服における接合シートを有する箇所の値から、接合シートのみがない箇所の値を差し引いて、接合シートの100%伸長時応力とする。
【0040】
幅(W)はJIS L 1018により測定する。
【0041】
破断強度及び破断伸度の測定は、幅10mm×長さ100mmの試験片を用い、これを島津製作所製の品番AGS−500Gの試験機に取り付け、その試験片を下記条件で破断強度及び破断伸度を測る。試験条件は、「試験幅」を10mm、つかみ間隔を40mm(試験機によるつかみ深さ30mm)、「初荷重」をなしとし、「引張速度」を1分間あたり300mmの伸長として行う。試験片として幅10mmのものを採取できない場合には、比率により算出する。
【0042】
第1,2の布地11,12と接合シート13とは、熱圧着により接合されている。具体的には、まず接合シート13を第2の布地12に仮止めし、これに第1の布地を合わせ、温度200℃、圧力10N/cm2で、5.0秒間熱圧着する。なお熱圧着の処理条件は、接合シート13の素材により適宜設定すると良い。例えば接合シート13がポリウレタン系合成樹脂からなる場合には、温度160〜200℃、圧力7〜12N/cm2、3.0〜7.0秒間が好ましい。
【0043】
この熱圧着に際し、接合シート13の融着層13bが溶融して第1,2の布地11,12に染み込み、そして固化することにより、接合シート13と第1の布地11、接合シート13と第2の布地12がそれぞれ接合する(図2参照)。第1,2の布地11,12は上記の如くポリウレタンを含有する糸により構成されているから、ポリウレタン製の接合シート13との親和性が良い。従って布地への染み込みによるアンカー効果だけでなく、上記親和性によって、強力に接合される。
【0044】
接合シート13の基材シート13aは熱圧着の温度よりも融点が高いので、溶融せずにその厚みを保ち、強パワー部16での締付け力の増大に寄与する。また第1,2の布地11,12に染み込んだ融着部13bも締付け力の増大に寄与する。
【0045】
因みに、糊剤としてパウダー状の熱融着性樹脂を用いた場合には、パウダーであるために布地の奥まで入ってしまい、反対側面の外観に影響する。しかし上記接合シート13は一体物であるから、融着部13bは溶融により或る程度第1,2の布地11,12に入り込むものの、それは厚み方向の途中までであり、反対側面にまでは至らない。よって外観に影響しない。
【0046】
図1に示す水着10では、臀部下方から鼠蹊部にかけた位置において、第2の布地12の縁部及びその近傍に接合シート13が配置されていることから、この部分において第2の布地12の端縁が捲れる心配はない。
【0047】
接合テープ13が配置された箇所以外における第2の布地12の縁部(脇から下腹部にかけた縁部等)については、上記接合シート13の幅を狭くして構成した接合テープにより、熱圧着にて接合し、端縁の捲れを防止すると良い。幅の狭い接合テープであれば伸長時応力が低いので、締付け力が殆ど上昇せず、不必要な箇所に強パワー部を形成するということがない。また該接合テープを用いた場合には、この熱融着と上記接合シート13の熱融着を同時に行うことができ、製造工程が簡易である。
【0048】
以上のように本実施形態1では、接合シート13が第1,2の布地11,12の接合機能と締付け力強化機能との両方を兼ね備えることから、簡易な製造方法でありながらも、3段階に締付け力を異ならせた水着10を得ることができる。
【0049】
実施形態1の水着10において、中パワー部15(第1,2の布地11,12からなる2層の部分)により透け防止を図るとともに、身体を締め付けてフィット感を高め、筋肉の揺れを防止する。そして強パワー部16(第1,2の布地11,12及び接合シート13からなる3層の部分)により臀部を引き上げることで骨盤の安定性を高め、水泳に際して水の抵抗をできるだけ減らした姿勢(ストリームライン)をとりやすくする。加えて強パワー部16の強い締め付けによって周辺の筋肉の振動が抑制され、これにより脚の力を安定して発揮でき、水泳でのキックが打ちやすくなる。
【0050】
本実施形態1では、幅18mmの帯状の接合シート13により強パワー部16を形成したが、接合シート13の幅(W)をより広くすることで(例えば20mm、或いは22mm)、更に締付け力を増強することが可能である。
【0051】
<実施形態2>
図3は、本発明の実施形態2に係る衣服における強パワー部付近の断面図である。なお図2と同一の符号を付した箇所は、図2の例と同じ構成部分である。
【0052】
上記実施形態1では、接合シート13を第2の布地12の縁部分に設けた例について説明したが、実施形態2においては、第1の布地11に重ねた第2の布地12の中央の箇所に、接合シート13を配置している。
【0053】
この様に接合シート13を任意の箇所に配置し、強パワー部16を形成できる。
【0054】
<実施形態3>
図4は、本発明の実施形態3に係る衣服における強パワー部付近の断面図である。なお図2と同一の符号を付した箇所は、図2の例と同じ構成部分である。
【0055】
本実施形態3では、第1,2の布地11,12の間に1枚の接合シート17を挟んだ3層構造の箇所(第1の強パワー部16)の他、2枚の接合シート17,18を重ねて挟んだ4層構造の箇所(第2の強パワー部19)を設けている。なお接合シート17は基材シート17aの表裏両面に融着層17bを備えたものであり、接合シート18は基材シート18aの表裏両面に融着層18bを備えたものである。
【0056】
第2の強パワー部19では、2枚の接合シート17,18によって、第1の強パワー部16よりも更に締付け力が強化されている。
【0057】
このように4段階に締付け力を変化させた衣服としても良い。
【0058】
なお接合シート17,18は上記実施形態1と同様に、ポリウレタン製基材シートの表裏両面にポリウレタン製融着層を備えた3層構造のものである。接合シート17,18同士は、これらの融着層同士が融着して強固に接合される。
【0059】
<実施形態4>
図5は、本発明の実施形態4に係る衣服における強パワー部付近の断面図である。なお図2と同一の符号を付した箇所は、図2の例と同じ構成部分である。
【0060】
本実施形態4では、接合シート21(基材シート21aの表裏両面に融着層21bを備えたもの)として、複数の孔22を備えたフィルム状物を用いている。
【0061】
この接合シート21を用いた衣服であれば、強パワー部16の箇所においても、中パワー部の通気性に遜色なく、良好な通気性が確保できる。
【0062】
<その他>
上記実施形態1では、臀部下方から鼠蹊部にかけた位置に強パワー部16を形成した例を示したが、他の箇所に強パワー部16を形成しても勿論良い。また臀部下方から鼠蹊部にかけた位置に強パワー部16を設けずに、他の箇所のみに強パワー部16を設ける構成であっても良い。
【0063】
上記実施形態1では帯状の接合シートを用いているが、この形状に限らず、三日月型や菱形などであっても良い。また接合シートの幅についても、実施形態1で示した18mm、20mm、22mmに限るものではない。幅や形状を種々変えることにより、強パワー部の締付け力を調整することができる。
【0064】
また上記実施形態3では、接合シートを複数枚重ねることで、より強力な締付け力を備えた強パワー部を形成するようにしたが、接合シートの厚さを調節することによって強パワー部の締付け力を調整するようにしても良い。なお接合シートの厚さとして好ましくは、衣服への取付前の状態において、その基材シートの厚さが40〜100μmであり、融着層の厚さが30〜100μmである。薄すぎると、十分な締付け力増強効果が期待できないからであり、厚過ぎると、衣服に目立った凸部を生じるからである。加えて融着層の厚さについては、第1,2の布地との融着による接合を十分なものにする観点からも、厚さの下限を上記の通り30μmとするのが好ましい。
【0065】
または接合シートの素材を適宜設定することで、締付け力を調整しても良い。
【0066】
接合シートの形態として、ネット状のものや不織布、編物、織物を用いても良い。
【0067】
上記実施形態1では、第1,2の布地11,12として織物を示したが、編物や不織布であっても良い。
【0068】
第1,2の布地11,12に用いる糸として、実施形態1ではカバリング糸を示したが、これに限らず、双糸や単糸であっても良い。但し、接合シート13との接合性の観点から、第1,2の布地11,12には、接合シート13と同種の素材を含有した糸を用いることが好ましい。またカバリング糸としては、ダブルカバリング糸、シングルカバリング糸のいずれであっても良い。
【0069】
以上、例を挙げて本発明をより具体的に説明したが、本発明はもとより上記例によって制限を受けるものではなく、前記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0070】
10 水着
11 第1の布地
12 第2の布地
13,17,18 接合シート
14 ベース部
15 中パワー部
16 強パワー部(第1の強パワー部)
19 第2の強パワー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する第1の布地の一部または全面に伸縮性を有する第2の布地を重ねた衣服であって、
前記第1の布地と前記第2の布地との間であって一部の領域に接合シートが挟まれており、この接合シートと前記第1の布地が接合され、前記接合シートと前記第2の布地が接合されており、
前記接合シートが伸縮性を有することを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記接合シートは帯状であり、その最小幅が15mm以上である請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記接合シートが、臀部下方から鼠蹊部にかけて配置された請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記接合シートは、10mm幅当たりの50%伸長時応力が5.0N/cm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項5】
前記接合シートが、基材シートの表裏面に、この基材シートより融点の低い融着層を備えたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項6】
前記基材シートがポリウレタンシートである請求項5に記載の衣服。
【請求項7】
前記融着層がポリウレタン層である請求項5または6に記載の衣服。
【請求項8】
前記第1の布地及び前記第2の布地がポリウレタンを含有する請求項7に記載の衣服。
【請求項9】
前記接合シートが、織物、編物、不織布、ネット、或いは複数の孔を備えたフィルム状物よりなる群から選択される1以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−122282(P2011−122282A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283446(P2009−283446)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(591038820)株式会社デサント (42)
【Fターム(参考)】