説明

表示システム

【課題】災害によって停電が起こっても、人々に災害時情報を提供する。
【解決手段】外部電源201で稼動する表示システム211であって、外部電源201から供給される電力により充電される予備電源203と、外部電源201が不用意に遮断されたことを検出する検出回路202と、検出回路202が外部電源201の不用意な遮断を検出した時に制御部210により予備電源203に蓄えられた電力を用いて表示部206に災害時情報を表示させる。また、表示部206に電気泳動方式を用いることで災害時情報の不揮発性表示を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の人に対し視覚的に情報を提供すると共に、災害により停電が発生した時には災害時情報を提供する表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震、台風などの天災や、火事、テロなどの予測できない災害は、一旦発生すると多大な被害をもたらす。この被害を最小限に抑えるためには、災害に関する情報や避難情報(以下、災害時情報という)を確実に多くの人々に伝えることが重要である。このため、非常口や避難場所を示す表示体が各所に常設されている。また、刻一刻と変化する災害情報はテレビやラジオだけでなく、最近ではパソコンや携帯電話を通じて得ることが可能になっている。
【0003】
一方、様々な広告を示す表示体や平時の案内などを示す表示体は、屋内外を問わず溢れており、災害時情報の表示体はこれらにうずもれてしまう傾向がある。また、これらは需要が多く、それゆえ表示体の設置可能な場所の多くを占めているため、有事の時のみ必要となる災害時情報を示す表示体を更に大きく、かつ多く設置することは困難である。
【0004】
刻一刻と変化する災害時情報は、テレビやラジオだけでなく、パソコンや携帯電話を通じて得ることが可能になっているが、テレビ、ラジオ、パソコンは、必ずしもその場にあるとは限らず、携帯電話も含めて電源の確保が難しい状況下では、災害時情報の取得は難しい。さらに、これらの装置は、一旦外部衝撃や浸水などで故障すると、それ以降は全く災害時情報取得の用を成さなくなる。
【0005】
公共の場に多く設置され、使用されているLED(Light Emitting Diode)やLCD(Liquid Crystal Display)またはPDP(Plasma Display Panel)からなる表示装置も、テレビと同様、電源の確保問題や故障後は役に立たなくなる問題を有している。
また、災害時、特に大規模な停電を伴う災害時には、人々がパニックに陥り、二次災害を招く可能性が高まるにも関わらず、前記常設の表示体の大きさや数は足りず、テレビなどの装置は役に立たない。
【0006】
災害で引き起こされる停電によってシステムやソフト等が破壊される不具合を避けるために、予備電源を設け、大元の電源遮断が検知されると、予備電源を使ってシステムを安全に終了させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−137882
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術によれば、停電が復旧した後も、装置は再び稼働させることが可能である。しかしながら、一旦災害が発生したならば、復旧後のことより、災害時に起こる二次災害を未然に防ぐ方が重要である。
また、停電を伴った災害は、その災害による直接の被害もさることながら、停電によりパニックに陥って二次災害を招く可能性があるため、停電時も災害時情報を提供できる装置であることが望ましい。
【0008】
予備電源として、バッテリ等の二次電池を備えることは容易に考えられることである。二次電池には、自動車等で広く用いられている鉛蓄電池、携帯電話や小型電子機器、ノートパソコンなどで広く採用されていたニッケルカドミウム電池、現在の主流であるリチウム・イオン電池などの種類がある。これら二次電池には、蓄えられる電力量や取り出せる電圧など特徴を有しているが、内部へ液補充を要する、充放電回数に限りがある、内容物が流出すると危険であるなどの問題があり、いつ訪れるか分からない災害に備えて二次電池を定期的に保守交換しなければならず、しかも、災害で破壊されたりするおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたものであり、公共の場に設置されて、平時は広告や案内など様々な情報を表示し、有事時には災害時情報を表示するとともに、不測の事態で故障した後も災害時情報を表示することが可能な表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、外部電源で稼動する表示システムであって、表示部と、前記外部電源から供給される電力により充電される予備電源と、災害などで前記外部電源が不用意に遮断されたことを検出する検出手段と、前記検出手段が前記外部電源の不用意な遮断を検出した時に前記予備電源に蓄えられた電力を用いて前記表示部に所定の表示を行う制御部を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の表示システムにおいて、前記予備電源は電気二重層キャパシタであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1に記載の表示システムにおいて、前記制御部はセンターとの間で有線または無線によりデータ通信を行う通信手段を備え、前記検出手段が前記外部電源の不用意な遮断を検出した時に前記予備電源に蓄えられた電力を用いて、前記通信手段で通信されるデータを前記表示部に表示することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1に記載の表示システムにおいて、前記制御部は災害時情報を格納する記憶回路を備え、前記検出手段が前記外部電源の不用意な遮断を検出した時に前記予備電源に蓄えられた電力を用いて、前記記憶回路から出力される災害時情報を前記表示部に表示することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1に記載の表示システムにおいて、前記制御部は通常時表示データを格納する第2記憶手段を備え、前記外部電源からの電力により稼動されている時に前記第2記憶手段から出力される表示データを前記表示部に表示することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1に記載の表示システムにおいて、前記表示部は不揮発性表示方式であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6記載の表示システムにおいて、前記不揮発性表示方式が電気泳動方式であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示システムによれば、通常時は各種案内や広告を表示していながら、停電を含む外部電源の不用意な遮断により事態が深刻と考えられる災害時には、外部電源の不用意な遮断を検出手段により検出して所定の表示、例えば、最寄りの避難先への誘導情報を予備電源に蓄えられた電力を用いて表示することが可能である。これにより、人々がパニックに陥らず、的確に避難行動をとることが可能になる。また、予備電源に蓄えられた電力に余裕があり、有線または無線の通信手段がまだ使用可能であれば、所定のデータセンター、例えば国や自治体の災害対策本部からの情報をリアルタイムに表示することも可能である。
【0015】
また、本発明の表示システムによれば、予備電源に電気二重層キャパシタを使用することにより、万一、表示システムが破壊されても、電気二重層キャパシタは危険な内容物を含まないため、安全である。さらに、二次電池のような定期的な何らかの補充や交換が不要であるため、設置、保守が容易である。
【0016】
また、本発明の表示システムによれば、表示部の表示方式に不揮発性表示方式、より具体的には電気泳動方式を採用することにより、予備電源を使い切った後、また災害時情報を表示したところで表示システムが何らかの破壊を被った場合であっても、最後に表示した災害時情報を表示したままにしておくことができる。このため、表示システムが稼働できなくなった後も、災害時情報を人々に伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明にかかる表示システムの実施の形態について図面を参照して説明する。
図2は本実施の形態における表示システムの全体の構成を示すブロック図である。この実施の形態における表示システム211は、表示システム211全体に外部から電力を供給する外部電源(主電源)201、災害などで外部電源201が不用意に遮断されたことを検出する遮断検出回路202、外部電源201から供給される電力により充電される予備電源203、表示システム211全体を制御し管理するMPU(Micro Processor Unit)204、MPU204で処理された表示データを表示信号に変換して出力する表示出力回路205、表示出力回路205からの表示信号により駆動される表示部206、データセンター等との間で通信を行う有線または無線通信回路207、災害時情報を格納する記憶回路208、通常時表示データを格納する記憶回路209で構成されている。外部電源201に遮断検出回路202が接続され、この遮断検出回路202の検出信号はMPU204に取り込まれるようになっている。また、MPU204、表示出力回路205、通信回路207、記憶回路208及び209は制御部210を構成する。
【0018】
次に、本実施の形態における表示システム211の動作について説明する。
通常時、外部電源201からの電力は、遮断検出回路202を通過し、予備電源203を充電しながら制御部210に供給される。予備電源203には、液補充、部品交換が不要で、内容物が漏れだすおそれのない複数の電気二重層キャパシタが使用される。この電気二重層キャパシタは、ニチコン(株)JDシリーズのものである。
【0019】
表示部206には、電気泳動方式として、米国E Ink社のFPL(Front Plane Laminate)を採用した。図1に、この電気泳動方式の表示部206の説明図を示す。
E Ink社のFPLは、マイクロカプセル型電気泳動方式と称されるもので、マイクロカプセル101中に、帯電した白顔料102と、これとは逆極性で帯電した黒顔料103とが透明分散媒と共に封入されている。マイクロカプセル101は、透明導電膜付き樹脂フィルム104の透明導電膜上に単層で敷き詰められている。マイクロカプセル101の透明導電膜付き樹脂フィルム104と反対の側には接着剤105が設けられており、この接着剤105を介して、背面駆動用電極106を有する背面支持基板107に貼付けられている。
【0020】
透明導電膜付き樹脂フィルム104である透明導電膜と背面駆動用電極106に電圧を印加すると、電圧の正、負の向きに応じて、帯電している白顔料102および黒顔料103は電気泳動現象により移動する。その結果、透明導電膜付き樹脂フィルム104側に白顔料102があれば白、黒顔料103があれば黒を表示することができる。
この場合、一旦移動した白顔料102および黒顔料103は、電圧が除去された後もその場に留まるため、電力を消費することなく表示を維持することができる。FPLの場合、駆動電圧は15Vであるため、この電圧が出せるよう表示出力回路205で適宜昇圧を施した。
【0021】
48×96個の駆動用電極106を有する背面支持基板107にFPLを貼付けた。図示しないが、駆動用電極106は、それぞれ駆動ドライバIC(Integrated Circuit)に接続されており、表示出力回路205の命令で個別に電圧が印加できるようになっている。
【0022】
有線/無線通信回路207を介した制御部210との通信は、専用プログラムを搭載したパソコンにて行う。まず、記憶回路208に災害時情報データを格納し、次に、通常時表示データを記憶回路209に格納した。記憶回路209に格納された表示データは、逐一MPU204が処理し、表示出力回路205を通して表示部206に表示される。通常時表示データを次々と送信、表示させている間に、予備電源203の充電が行われ、その充電は完了している。
【0023】
ここで、いきなり外部電源201のコンセントが不用意に引き抜かれた場合、この行為による外部電源201の遮断を遮断検出回路202が検知し、MPU204に対して遮断検出信号を発信する。これにより、表示部206を含む制御部210への電力供給は予備電源203に切り替わる。これにより、外部電源201が不用意に遮断されても表示システム211が停止することはなかった。
【0024】
遮断検出回路202が遮断を検出したことにより、MPL204は、記憶回路209ではなく、記憶回路208に格納されている災害時情報データが読み出され、表示部206に災害時情報が表示される。
このような災害時情報を表示部206に表示し続けた結果、予備電源203の充電電力がなくなった場合、表示システム211の動作が停止する。しかしながら、表示部206はマイクロカプセル型電気泳動方式であるため、表示部206には災害時情報の表示が維持される。
【0025】
また、表示部206に金属球を衝突させたところ、衝突を受けた部分のマイクロカプセル101がつぶれて表示が崩れてしまったが、それ以外の表示は維持されており、災害時情報を判別することが可能である。
【産業上の利用の可能性】
【0026】
本発明は、通常時の案内、広告などの情報表示と、災害時の災害時情報表示を、一つの表示システムでこなすことを可能とするため、あらゆる場所に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電気泳動方式表示部の説明用断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における表示システムの全体の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
101……マイクロカプセル、102……白顔料、103……黒顔料、104……透明導電膜付き樹脂フィルム、105……接着剤、106……背面駆動用電極、107……背面支持基板、201……外部電源(主電源)、202……遮断検出回路、203……予備電源(電気二重層キャパシタ)、204……MPU、205……表示出力回路、206……表示部(電気泳動方式)、207……有線/無線通信回路、208……記憶回路、209……記憶回路、210…制御部、211…表示システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源で稼動する表示システムであって、
表示部と、
前記外部電源により充電される予備電源と、
災害などで前記外部電源が不用意に遮断されたことを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記外部電源の不用意な遮断を検出した時に前記予備電源に蓄えられた電力を用いて前記表示部に所定の表示を行わせる制御部を備える、
ことを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記予備電源は電気二重層キャパシタであることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記制御部はセンターとの間で有線または無線によりデータ通信を行う通信回路を備え、前記検出手段が前記外部電源の不用意な遮断を検出した時に前記予備電源に蓄えられた電力を用いて、前記通信回路で通信されるデータを前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記制御部は災害時情報を格納する第1記憶手段を備え、前記検出手段が前記外部電源の不用意な遮断を検出した時に前記予備電源に蓄えられた電力を用いて、前記第1記憶手段から出力される災害時情報を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項5】
前記制御部は通常時表示データを格納する第2記憶手段を備え、前記外部電源からの電力により稼動されている時に前記第2記憶手段から出力される表示データを前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項6】
前記表示部は不揮発性表示方式であることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項7】
前記不揮発性表示方式が電気泳動方式であることを特徴とする請求項6記載の表示システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−233583(P2008−233583A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73969(P2007−73969)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】