説明

表示ユニットおよびヘッドマウントディスプレイ

【課題】単眼用の表示ユニット16を両眼用に容易に拡張できる構成とすることにより、表示ユニット16の製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避する。
【解決手段】表示ユニット16に、他の表示ユニット16とHMDケーブル5cを介して接続可能な接続端子を設ける。この接続端子は、出力用接続端子43および入力用接続端子51の少なくとも一方で構成される。制御ユニット4から一方の表示ユニット16Aに入力された差動シリアル信号は、その内部で分岐され、一方の差動シリアル信号は表示ユニット16Aの映像表示部42に供給され、その映像表示部42にて映像が表示される。他方の差動シリアル信号は表示ユニット16Aの出力用接続端子43に供給され、その出力用接続端子43からHMDケーブル5cを介して他の表示ユニット16Bの入力用接続端子51に入力され、表示ユニット16Bの映像表示部42にて映像が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者の一方の眼前に配置され、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する表示ユニットと、複数の表示ユニットを含み、観察者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する)とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、観察者の頭部に装着されて表示素子(例えばLCD)にて表示された映像を観察者に提供するHMDが種々提案されている。例えば、特許文献1のHMDは、表示素子およびその駆動部を有する本体と、ケーブルを介して本体に映像信号を供給するアダプタ部とで構成されている。表示素子は両眼に対応して2つ設けられており、これによって両眼での映像観察が可能となっている。
【0003】
ところで、上記のケーブルは、映像信号(例えば8ビット)、同期信号(水平同期信号および垂直同期信号)、クロックなどの送信や電源供給などを行うために、通常、20本くらいの信号線の束で構成されている。このようにケーブル内の線数が多いと、放射ノイズの増大や、特殊なケーブルとなるためにケーブル自体のコスト増大が生じる。
【0004】
そこで、例えば特許文献2および3のHMDでは、制御側のユニット(制御ユニット)から表示側のユニット(表示ユニット)に対してケーブルを介して差動シリアル信号を送信し、その差動シリアル信号に基づいて表示ユニットにて映像表示を行うようにしている。差動シリアル信号を用いることにより、映像信号、同期信号、クロックなどの送信を2本の線で行うことができるので、ケーブル内の線数を減らして上記の不都合を解消することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−146917号公報
【特許文献2】特開平11−88800号公報
【特許文献3】特開2003−172899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来、単眼用のHMDに適用される表示ユニットは、単眼用のHMDへの適用のみを想定した構成となっており、両眼用のHMDへの適用を想定した構成とはなっていない。このため、表示ユニットを単眼用と両眼用とで区別して製造しており、表示ユニットの製造効率が低下するとともに、HMDの量産性が低下するという問題が生ずる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、単眼用の表示ユニットであっても、他の表示ユニットとの組み合わせによって両眼用に容易に拡張することができ、これによって表示ユニットの製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避することができる表示ユニットと、その表示ユニットを用いて構成される両眼用のHMDとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表示ユニットは、観察者の一方の眼前に配置され、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する表示ユニットであって、観察者の他方の眼前に配置される他の表示ユニットとケーブルを介して接続可能な接続端子を備え、上記接続端子は、他の表示ユニットへの差動シリアル信号の出力が可能な出力用接続端子と、他の表示ユニットからの差動シリアル信号の入力が可能な入力用接続端子とのうちの少なくとも一方で構成されていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、当該表示ユニットは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示するので、他の表示ユニットとの間のケーブル内の線数を減らして、放射ノイズの増大やケーブル自体のコスト増大を回避することができる。
【0010】
また、当該表示ユニットは、観察者の一方の眼前に配置されるので、当該表示ユニットにて差動シリアル信号に基づいて表示される映像を、観察者は一方の眼で観察することが可能である。このとき、当該表示ユニットは、観察者の他方の眼前に配置される他の表示ユニットとケーブルを介して接続可能な接続端子を備えているので、当該表示ユニットから接続端子(例えば出力用接続端子)を介して他の表示ユニットに差動シリアル信号を出力したとき、他の表示ユニットはその差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、この場合、観察者は双方の表示ユニットに表示される映像を両眼で観察することが可能となる。
【0011】
また、当該表示ユニットに接続端子(例えば入力用接続端子)を介して他の表示ユニットからの差動シリアル信号が入力されるとき、当該表示ユニットは、その差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。このとき、他の表示ユニットが同じ差動シリアル信号に基づいて映像を表示する構成であれば、観察者は双方の表示ユニットに表示される映像を両眼で観察することが可能となる。
【0012】
このように、当該表示ユニットが接続端子(出力用接続端子および入力用接続端子の少なくとも一方)を備えていることにより、当該表示ユニットが単眼用であっても(単眼での観察専用の表示ユニットであっても)、他の表示ユニットとの組み合わせによって両眼用に容易に拡張することができ、表示ユニットの製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避することができる。
【0013】
本発明の表示ユニットは、制御ユニットからの差動シリアル信号が入力される入力端子と、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部とをさらに備え、上記接続端子は、上記出力用接続端子で構成されており、制御ユニットから上記入力端子に入力された差動シリアル信号は、当該表示ユニット内部で分岐され、一方の差動シリアル信号は、上記映像表示部に供給され、他方の差動シリアル信号は、上記出力用接続端子に供給される構成であってもよい。なお、この構成の表示ユニットを、以下では第1の表示ユニットとも称する。
【0014】
上記の構成によれば、制御ユニットからの差動シリアル信号は、入力端子に入力された後、当該表示ユニットの内部で分岐される。そして、一方の差動シリアル信号は映像表示部に供給され、その映像表示部で差動シリアル信号に基づいて映像が表示される。一方、他方の差動シリアル信号は出力用接続端子に供給されるので、例えばその出力用接続端子を他の表示ユニットとケーブルを介して接続したときには、他方の差動シリアル信号が出力用接続端子を介して他の表示ユニットに出力される。これにより、他の表示ユニットでは、その差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、当該表示ユニットと他の表示ユニットとを組み合わせたときに双方で映像を表示することが確実に可能となり、両眼での映像観察が可能なHMDを確実に構成することが可能となる。
【0015】
本発明の表示ユニットは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部をさらに備え、上記接続端子は、上記入力用接続端子で構成されており、上記映像表示部は、制御ユニットから他の表示ユニットを介して上記入力用接続端子に入力される差動シリアル信号に基づいて映像を表示する構成であってもよい。なお、この構成の表示ユニットを、以下では第2の表示ユニットとも称する。
【0016】
上記の構成によれば、当該表示ユニットの映像表示部にて、制御ユニットから他の表示ユニットを介して入力用接続端子に入力される差動シリアル信号に基づいて映像が表示される。したがって、当該表示ユニットへの差動シリアル信号の供給元となる他の表示ユニットが同じ差動信号に基づいて映像を表示する構成であれば、両眼での映像観察が可能なHMDを構成することができる。
【0017】
本発明の表示ユニットは、制御ユニットからの差動シリアル信号の入力が可能な入力端子と、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部をさらに備え、上記接続端子は、上記出力用接続端子および上記入力用接続端子の2つで構成されており、制御ユニットからの差動シリアル信号が上記入力端子に入力されたときには、上記差動シリアル信号は当該表示ユニット内部で分岐され、一方の差動シリアル信号が上記映像表示部に供給され、他方の差動シリアル信号が上記出力用接続端子に供給され、制御ユニットからの差動シリアル信号が他の表示ユニットを介して上記入力用接続端子に入力されたときには、上記差動シリアル信号が上記映像表示部に供給される構成であってもよい。なお、この構成の表示ユニットを、以下では第3の表示ユニットとも称する。
【0018】
上記の構成によれば、制御ユニットからの差動シリアル信号が入力端子に入力されたとき、その差動シリアル信号は内部で分岐され、一方の差動シリアル信号が映像表示部に供給される。これにより、映像表示部はその差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。また、他方の差動シリアル信号は出力用接続端子に供給されるので、例えばその出力用接続端子を他の表示ユニットとケーブルを介して接続すれば、他方の差動シリアル信号が出力用接続端子を介して他の表示ユニットに出力される。これにより、他の表示ユニットでは、その差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、観察者は双方の表示ユニットに表示された映像を両眼で観察することが可能となる。
【0019】
また、制御ユニットからの差動シリアル信号が他の表示ユニットを介して入力用接続端子に入力されたとき、その差動シリアル信号が映像表示部に供給されるので、映像表示部はその差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、他の表示ユニットを当該表示ユニットに供給したものと同じ差動信号に基づいて映像を表示する構成とすれば、観察者は双方の表示ユニットに表示された映像を両眼で観察することが可能となる。
【0020】
このように、当該表示ユニットの構成によれば、制御ユニットからの差動シリアル信号が直接入力端子に入力される場合であっても、他の表示ユニットを介して入力用接続端子に入力される場合であっても、その差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。
【0021】
また、当該表示ユニットの構成によれば、全く同じ構成の表示ユニットを2つ組み合わせて両眼での映像観察が可能なHMDを実現することが可能となる。つまり、一方の表示ユニットの出力用接続端子と他方の表示ユニットの入力用接続端子とをケーブルで接続し、制御ユニットからの差動シリアル信号を一方の表示ユニットの入力端子に入力する構成とすることで、上記と全く同様の作用により、双方の表示ユニットで映像を表示することができ、両眼での映像観察が可能なHMDを構成することができる。
【0022】
このとき、2つの表示ユニットは両方とも、上記した入力端子、入力用接続端子および出力用接続端子の3つの端子を備えているので、どちらの表示ユニットを左眼用としても右眼用としても用いることができる(どちらの表示ユニットの出力用接続端子を他の表示ユニットの入力用接続端子と接続してもよい)。このように、2つの表示ユニットを左右の眼に対応させて区別することなく用いることができるので、表示ユニットひいてはHMDの量産が容易となり、これらのコストダウンを図ることも容易となる。
【0023】
本発明の表示ユニットは、観察者の一方の眼前に配置され、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する表示ユニットであって、制御ユニットからの差動シリアル信号が入力される入力端子を備えており、上記入力端子には、制御ユニットからの差動シリアル信号を他の表示ユニットと並列に供給するための分岐ケーブルの複数の出力端のうちの1つが接続されることを特徴としている。なお、この構成の表示ユニットを、以下では第4の表示ユニットとも称する。
【0024】
上記の構成によれば、当該表示ユニットは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示するので、分岐ケーブル内の線数を減らして、放射ノイズの増大やケーブル自体のコスト増大を回避することができる。
【0025】
また、当該表示ユニットを2つ用い、分岐ケーブルの複数の出力端を各表示ユニットの入力端子とそれぞれ接続すれば、制御ユニットから分岐ケーブルを介して各表示ユニットの入力端子に差動シリアル信号を並列に入力することが可能となる。これにより、各表示ユニットは、入力された差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、観察者は双方の表示ユニットに表示される映像を両眼で観察することが可能となる。
【0026】
また、当該表示ユニットは、元々、観察者の一方の眼前に配置される単眼用であるが、上記構成によれば、単眼用の表示ユニットを2つ組み合わせて両眼用としても用いることが可能となる。このように単眼用の表示ユニットを両眼用に容易に拡張することができるので、表示ユニットの製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避することができる。
【0027】
本発明の表示ユニットは、映像の表示の調整に用いる調整データを記憶する記憶手段と、上記記憶手段に記憶された調整データが入力されて設定されたときに、その調整データに基づく信号であって表示に必要な信号を出力する出力部とをさらに備えている構成であってもよい。
【0028】
上記の構成によれば、記憶手段(例えばEEPROM)に記憶された調整データが出力部(例えばDAC)に入力されて設定されたとき、出力部は、設定された調整データに基づく信号であって表示に必要な信号を出力する。例えば、調整データが光源(LED)の光度(明るさ、強度)を調整するためのデータであれば、出力部からはその調整データに基づく信号(駆動電圧)が出力される。これにより、例えばLEDを駆動する駆動部(例えば電圧を電流に変換する定電流回路)は、その駆動電圧に応じた電流をLEDに供給することにより、光度が調整された状態でLEDを発光させることができる。
【0029】
なお、上記調整データとしては、例えばLCDのレジスタ設定のためのデータ(LCDにおけるコントラストや輝度などを調整するためのデータ)を想定することもできるが、この場合であっても、出力部からはその調整データに基づく信号が出力されるので、例えばLCDを駆動する駆動部が、出力部から供給される信号に基づいてLCDを駆動することにより、コントラストや輝度が調整された状態でLCDにて映像を表示させることができる。
【0030】
このように、記憶手段および出力部を表示ユニットが備えていることにより、個々の表示ユニットに固有の調整データを記憶手段に記憶させ、また、それを出力部に書き込むことができる。これにより、表示ユニットと制御ユニットとを組み合わせてHMDを構成する際に、用いる表示ユニットごとに調整データを設定し直さなくても済む。その結果、HMDの生産効率を向上させることができる。
【0031】
また、表示ユニットごとに固有の調整データを持つことになるので、表示ユニットのみを単体で出荷した場合でも、その出荷先での制御ユニットとの組み合わせごとに(HMDごとに)、用いる表示ユニットの調整データに基づいて良好な映像を表示できるHMDを実現することが可能となる。
【0032】
本発明の表示ユニットは、光源と、光源からの光を変調して映像を表示する表示素子と、上記出力部から出力される信号に基づいて光源を発光させる駆動部とをさらに備え、上記調整データは、光源の光度を調整するためのデータであってもよい。
【0033】
調整データが光源(例えばLED)から出射される光の光度を調整するためのデータであるとき、調整データに基づく信号(駆動電圧)が出力部から出力されると、駆動部(例えば定電流回路)はその信号に基づいて光源を発光させる。これにより、光度が調整された状態で光源を発光させることができ、表示素子にて表示される映像の明るさ(輝度)を調整することが可能となる。
【0034】
本発明のHMDは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する複数の表示ユニットと、いずれかの表示ユニットに差動シリアル信号を供給する制御ユニットとを備え、上記複数の表示ユニットは、上述した本発明の第1の表示ユニットと、上述した本発明の第2の表示ユニットとで構成されており、第1の表示ユニットの出力用接続端子と、第2の表示ユニットの入力用接続端子とがケーブルを介して接続されていることを特徴としている。
【0035】
上記の構成によれば、制御ユニットからの差動シリアル信号は、第1の表示ユニットの入力端子に入力された後、その内部で分岐される。そして、一方の差動シリアル信号は映像表示部に供給され、その映像表示部で差動シリアル信号に基づいて映像が表示される。
【0036】
一方、他方の差動シリアル信号は出力用接続端子に供給され、その出力用接続端子からケーブルを介して第2の表示ユニットの入力用接続端子に入力される。これにより、第2の表示ユニットでは、映像表示部にて、入力された差動シリアル信号に基づいて映像が表示される。したがって、2つの表示ユニットを組み合わせて両眼での映像観察が可能なHMDを実現することができる。
【0037】
本発明のHMDは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する複数の表示ユニットと、いずれかの表示ユニットに差動シリアル信号を供給する制御ユニットとを備え、上記複数の表示ユニットは、上述した本発明の第3の表示ユニットが2つで構成されており、一方の表示ユニットの入力端子は、制御ユニットとケーブルを介して接続されており、上記表示ユニットの出力用接続端子は、他方の表示ユニットの入力用接続端子とケーブルを介して接続されていることを特徴としている。
【0038】
上記の構成によれば、制御ユニットからの差動シリアル信号が一方の表示ユニット(第3の表示ユニット)の入力端子に入力されたとき、その差動シリアル信号は内部で分岐され、一方の差動シリアル信号が映像表示部に供給される。これにより、一方の表示ユニットでは、映像表示部により、差動シリアル信号に基づいて映像が表示される。また、一方の表示ユニットにおいて、他方の差動シリアル信号は出力用接続端子に供給されるが、その出力用接続端子は他方の表示ユニット(第3の表示ユニット)の入力用接続端子とケーブルを介して接続されているので、他方の表示ユニットでは、入力用接続端子を介して入力される差動シリアル信号に基づいて映像表示部にて映像が表示される。したがって、双方の表示ユニットに表示された映像を両眼で観察することが可能なHMDを実現することができる。
【0039】
本発明のHMDは、上述した本発明の第4の表示ユニットが2つと、複数の出力端が各表示ユニットの入力端子とそれぞれ接続される分岐ケーブルと、分岐ケーブルを介して各表示ユニットに差動シリアル信号を供給する制御ユニットとを備えていることを特徴としている。
【0040】
上記の構成によれば、制御ユニットからの差動シリアル信号は、分岐ケーブルを介して各表示ユニット(第4の表示ユニット)の入力端子に並列に入力されるので、各表示ユニットでは、入力された差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、双方の表示ユニットに表示された映像を両眼で観察することが可能なHMDを実現することができる。
【0041】
本発明のHMDにおいて、上記した複数の表示ユニットは、映像の表示の調整に用いる調整データを記憶する記憶手段と、上記記憶手段に記憶された調整データが入力されて設定されたときに、その調整データに基づく信号であって表示に必要な信号を出力する出力部とをそれぞれ備えており、上記制御ユニットは、差動シリアル信号を送信するケーブルを介して、上記記憶手段および上記出力部に制御信号を送信する制御部を備えており、各表示ユニットでは、上記制御信号に基づいて、記憶手段に調整データを書き込む動作と、記憶手段に書き込んだ調整データを読み出して出力部に書き込み、設定する動作とが行われてもよい。
【0042】
上記の構成によれば、制御ユニットの制御部から、差動シリアル信号を送信するケーブルを介して、表示ユニットの記憶手段および出力部に制御信号が送信される。各表示ユニットでは、この制御信号に基づき、記憶手段に調整データを書き込む動作と、記憶手段に書き込んだ調整データを読み出して出力部に書き込み、設定する動作とが行われる。なお、上記調整データとしては、例えば、光源の光度を調整するためのデータや、LCDのレジスタ設定のためのデータ(LCDにおけるコントラストや輝度などを調整するためのデータ)を想定することができる。出力部は、設定された調整データに基づく信号であって表示に必要な信号を出力するので、各表示ユニットでは、その信号に基づいて良好な映像を表示することが可能となる。
【0043】
また、差動シリアル信号を利用する場合、差動シリアル信号の送信は制御ユニットから各表示ユニットへの一方向であるため、制御ユニット内の制御部は各表示ユニット内の記憶手段に記憶された調整データを読み出すことができない。しかし、上記のように、差動シリアル信号を送信するケーブルを介して、制御ユニットから各表示ユニットに制御信号を送信することにより、各表示ユニットの記憶手段に対する調整データの書き込みおよび読み出し動作と、読み出した調整データの出力部への書き込みおよび設定動作とをそれぞれ行うことができる。したがって、制御ユニットから各表示ユニットへの通信が片方向であっても、各表示ユニットに対して、固有の調整データに基づいて映像の表示を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の表示ユニットは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示するので、用いるケーブル内の線数を減らして、放射ノイズの増大やケーブル自体のコスト増大を回避することができる。また、単眼用の表示ユニットを2つ用いて両眼での映像観察が可能なHMDを容易に構成することができるので、表示ユニットを単眼用と両眼用とで区別して製造する必要がなくなり、表示ユニットの製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0046】
(1.HMDの構成)
図2(a)は、本実施形態に係るHMDの全体の構成を示す平面図であり、図2(b)は、HMDの正面図である。HMDは、2個の映像表示装置1(1R・1L)と、支持手段2と、映像ソース3と、制御ユニット4とを有している。映像ソース3と制御ユニット4とは、AVケーブル5aを介して接続されており、制御ユニット4と映像表示装置1Rとは、HMDケーブル5bを介して接続されており、映像表示装置1Rと映像表示装置1Lとは、HMDケーブル5cを介して接続されている。
【0047】
映像表示装置1R・1Lは、観察者に外界像をシースルーで観察させるとともに、映像を表示して観察者にそれを虚像として提供するものであり、観察者の右眼の前および左眼の前にそれぞれ配置される。映像表示装置1R・1Lにおいて、眼鏡の右眼用レンズおよび左眼用レンズに相当する部分は、後述する接眼プリズム21(図3参照)と偏向プリズム22(図3参照)との貼り合わせによって構成されている。
【0048】
支持手段2は、映像表示装置1R・1Lを観察者の右眼および左眼の前でそれぞれ支持するものであり、ブリッジ6と、フレーム7と、テンプル8と、鼻当て9と、イヤホン10とを有している。鼻当て9はブリッジ6に支持されており、イヤホン10は映像表示装置1とケーブルを介して接続されている。
【0049】
なお、フレーム7、テンプル8、鼻当て9およびイヤホン10は、左右一対設けられているが、これらを左右で区別する場合は、右フレーム7R、左フレーム7L、右テンプル8R、左テンプル8L、右鼻当て9R、左鼻当て9L、右イヤホン10R、左イヤホン10Lのように表現するものとする。
【0050】
映像表示装置1R・1Lは、ブリッジ6で連結されている。右テンプル8Rは、右フレーム7Rに回動可能に支持されており、この右フレーム7Rを介して映像表示装置1Rと連結されている。同様に、左テンプル8Lは、左フレーム7Lに回動可能に支持されており、この左フレーム7Lを介して映像表示装置1Lと連結されている。
【0051】
映像ソース3は、AVケーブル5aを介して映像信号を外部に出力することが可能な機器であり、例えばDVDプレーヤーで構成されている。制御ユニット4は、映像ソース3から供給される映像信号を差動シリアル信号に変換し、HMDケーブル5b・5cを介して映像表示装置1R・1Lに供給するユニットである。制御ユニット4は、電源をON/OFFするための電源スイッチ4a、映像の表示の調整(例えば輝度やコントラストの調整)を指示するための映像調整用入力部4b、音声のボリュームを調整するための音声調整用入力部4cなどを備えているが、その詳細な構成については後述する。
【0052】
観察者がHMDを使用するときは、右テンプル8Rおよび左テンプル8Lを観察者の右側頭部および左側頭部に接触させるとともに、鼻当て9を観察者の鼻に当て、一般の眼鏡をかけるようにHMDを観察者の頭部に装着する。この状態で、映像表示装置1R・1Lにて映像を表示すると、観察者は、映像表示装置1R・1Lの各表示映像を虚像として両眼でそれぞれ観察できるとともに、この映像表示装置1R・1Lを介して外界像をシースルーで観察することができる。
【0053】
このように、本実施形態のHMDは、映像表示装置1R・1Lと、各映像表示装置1R・1Lを観察者の眼前で支持する支持手段2とを有しているので、観察者は映像表示装置1R・1Lから提供される映像をハンズフリーで観察することができる。以下、映像表示装置1R・1Lの詳細について説明する。
【0054】
(2.映像表示装置の構成)
図3は、映像表示装置1(1R・1L)の概略の構成を示す断面図である。映像表示装置1は、光源11と、一方向拡散板12と、集光レンズ13と、表示素子14と、接眼光学系20とを有している。光源11、一方向拡散板12、集光レンズ13および表示素子14は、筐体15内に収容されており、後述する差動シリアル信号に基づいて映像を表示する表示ユニット16を構成している。なお、表示ユニット16のさらに詳細な構成については後述する。また、接眼光学系20の後述する接眼プリズム21の一部も筐体15内に位置している。
【0055】
なお、以下での説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子14の表示領域の中心と、接眼光学系20によって形成される光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とする。そして、光源11から光学瞳Eまでの光路を展開したときの光軸方向をZ方向とする。また、接眼光学系20の後述するホログラム光学素子23への光軸の入射面に垂直な方向をX方向とし、ZX平面に垂直な方向をY方向とする。なお、ホログラム光学素子23への光軸の入射面とは、ホログラム光学素子23における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面、すなわち、YZ平面を指す。以下、上記入射面を単に入射面または光軸入射面と称する。
【0056】
光源11は、表示素子14を照明するものであり、例えば、光強度のピーク波長および光強度半値の波長幅で462±12nm(B光)、525±17nm(G光)、635±11nm(R光)となる3つの波長帯域の光を発するRGB一体型のLEDで構成されている。光源11の各色についてのピーク波長は、ホログラム光学素子23の後述する回折効率のピーク波長の近傍に設定されており、光利用効率の向上が図られている。
【0057】
光源11は、RGBの光を出射するLEDで構成されているので、光源11を安価に実現することができるとともに、表示素子14を照明したときに、表示素子14にてカラー映像を表示することが可能となり、そのカラー映像を観察者に提供することが可能となる。また、各LEDは、発光波長幅が狭いので、そのようなLEDを複数用いることにより、色再現性が高く、明るい映像表示が可能となる。
【0058】
一方向拡散板12は、光源11からの出射光を拡散させるものであるが、その拡散度は方向によって異なっている。より具体的には、一方向拡散板12は、X方向には入射光を約40゜拡散させ、Y方向には入射光を約0.5゜拡散させる。
【0059】
集光レンズ13は、一方向拡散板12にて拡散された光をY方向に集光するシリンダレンズで構成されており、その拡散光が効率よく光学瞳Eを形成するように配置されている。
【0060】
表示素子14は、光源11からの出射光を画像データに応じて変調して映像を表示するものであり、光が透過する領域となる各画素をマトリクス状に有する透過型の液晶表示素子で構成されている。表示素子14は、矩形の表示領域の長辺方向がX方向となり、短辺方向がY方向となるように配置されている。なお、表示素子14は、反射型であってもよい。反射型の表示素子14としては、例えば反射型の液晶表示素子や、DMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製)を用いることができる。
【0061】
接眼光学系20は、表示素子14の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系であり、接眼プリズム21(第1の透明基板)と、偏向プリズム22(第2の透明基板)と、ホログラム光学素子23とを有して構成されている。
【0062】
接眼プリズム21は、表示素子14からの映像光を、対向する2つの面で全反射させ、ホログラム光学素子23を介して観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導くものであり、偏向プリズム22とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム21は、平行平板の下端部を下端に近くなるほど薄くして楔状にし、その上端部を上端に近くなるほど厚くした形状で構成されている。また、接眼プリズム21は、その下端部に配置されるホログラム光学素子23を挟むように、偏向プリズム22と接着剤で接合されている。
【0063】
偏向プリズム22は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており、接眼プリズム21の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム21と一体となって略平行平板となるものである。この偏向プリズム22を接眼プリズム21に接合することにより、観察者が接眼光学系20を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0064】
つまり、例えば、接眼プリズム21に偏向プリズム22を接合させない場合、外光は接眼プリズム21の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、接眼プリズム21を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、接眼プリズム21に偏向プリズム22を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外光が接眼プリズム21の楔状の下端部を透過するときの屈折を偏向プリズム22でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0065】
なお、接眼プリズム21および偏向プリズム22の各面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。接眼プリズム21および偏向プリズム22の各面を曲面とすれば、接眼光学系20に矯正眼鏡レンズとしての機能を持たせることもできる。
【0066】
ホログラム光学素子23は、表示素子14から出射される映像光(3原色に対応した波長の光)を回折反射し、表示素子14にて表示される映像を拡大して観察者の瞳に虚像として導く体積位相型の反射型ホログラムである。このホログラム光学素子23は、例えば、回折効率のピーク波長および回折効率半値の波長幅で465±5nm(B光)、521±5nm(G光)、634±5nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させるように作製されている。ここで、回折効率のピーク波長とは、回折効率がピークとなるときの波長のことであり、回折効率半値の波長幅とは、回折効率が回折効率ピークの半値となるときの波長幅のことである。
【0067】
反射型のホログラム光学素子23は、高い波長選択性を有しており、上記波長域(露光波長近辺)の波長の光しか回折反射しないので、回折反射される波長以外の波長を含む外光はホログラム光学素子23を透過することになり、高い外光透過率を実現することができる。
【0068】
また、ホログラム光学素子23は、軸非対称な正の光学パワーを有している。つまり、ホログラム光学素子23は、正のパワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。これにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めて装置を容易に小型化することができるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。
【0069】
(3.映像表示装置の動作)
次に、上記構成の映像表示装置1の動作について説明する。光源11から出射された光は、一方向拡散板12にて拡散され、集光レンズ13にて集光されて表示素子14に入射する。表示素子14に入射した光は、画像データに基づいて各画素ごとに変調され、映像光として出射される。つまり、表示素子14には、カラー映像が表示される。
【0070】
表示素子14からの映像光は、接眼光学系20の接眼プリズム21の内部にその上端面から入射し、対向する2つの面で複数回全反射されて、ホログラム光学素子23に入射する。ホログラム光学素子23に入射した光は、そこで反射されて光学瞳Eに達する。光学瞳Eの位置では、観察者は、表示素子14に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。
【0071】
一方、接眼プリズム21、偏向プリズム22およびホログラム光学素子23は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者はこれらを介して外界像を観察することができる。したがって、表示素子14に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0072】
このように、映像表示装置1では、表示素子14から出射される映像光を接眼プリズム21内での全反射によって導光し、ホログラム光学素子23を介して観察者の瞳に導くので、通常の眼鏡レンズと同様に、接眼プリズム21および偏向プリズム22の厚さを3mm程度にすることができ、映像表示装置1を小型化、軽量化することができる。また、表示素子14からの映像光を内部で全反射させる接眼プリズム21を用いることにより、高い外光の透過率を確保して、明るい外界像を観察者に提供することができる。
【0073】
また、体積位相型の反射型のホログラム光学素子23は、回折効率半値の波長幅が狭く、回折効率が高いので、このようなホログラム光学素子23を用いることにより、色純度が高く、明るい映像を提供することができるとともに、外光の透過率が高くなるので、観察者は明るい外界像を観察することができる。また、光源11と光学瞳Eとの共役関係が変更されないので、映像光の波長が変化せず、色再現性の高い映像を提供することができる。
【0074】
また、上記の説明からもわかるように、ホログラム光学素子23は、表示素子14からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナとして機能している。これにより、観察者は、ホログラム光学素子23を介して、表示素子14から提供される映像と外界像とを同時に観察することができる。
【0075】
(4.制御ユニットおよび表示ユニットの詳細な構成について)
次に、上記した制御ユニット4および表示ユニット16の詳細な構成について説明する。図4は、制御ユニット4の主要部および表示ユニット16の主要部の構成を示すブロック図である。
【0076】
なお、以下での説明の便宜上、観察者の両眼に対応して配置される2つの表示ユニット16を特に区別したい場合には、一方を表示ユニット16A(第1の表示ユニット)とし、他方を表示ユニット16B(第2の表示ユニット)とする。つまり、表示ユニット16A・16Bのうちの一方が観察者の右眼の前に配置され、他方が左眼の前に配置されることになる。また、図4中の太線の矢印は、パラレルで信号が流れていることを示している。
【0077】
制御ユニット4は、上述した電源スイッチ4a、映像調整用入力部4b、音声調整用入力部4cのほかに、電池31、電源回路32、NTSCデコーダ33、LVDSトランスミッタ34、マイクロプロセッサ35、アンプ・音量調整部36および接続端子37・38・39を有している。
【0078】
電池31は、制御ユニット4の各部および表示ユニット16の各部を駆動するために、所定の電圧(例えば3.7V、GND)を電源回路32に出力するものである。電源回路32は、電源スイッチ4aがONされたときに、電池31の出力電圧から、制御ユニット4の各部および表示ユニット16の各部の駆動に好適な電圧(例えば5V、2.5V、GND)を生成する。電源回路32にて生成された電圧は、接続端子37を介して表示ユニット16Aに出力される。
【0079】
NTSCデコーダ33は、映像ソース3(図2(a)参照)から供給されるアナログの映像信号(VIDEO信号)をデジタル信号(例えば8ビット)に変換するとともに、クロックおよび同期信号(水平同期信号、垂直同期信号)を生成する。これらの各信号は、NTSCデコーダ33からパラレルでLVDSトランスミッタ34に出力される。
【0080】
LVDSトランスミッタ34は、NTSCデコーダ33からパラレルで入力される信号をシリアルの信号に変換する。このパラレル/シリアル変換により、LVDSトランスミッタ34から1または0の信号が差動シリアル信号として接続端子38を介して表示ユニット16Aに出力される。
【0081】
マイクロプロセッサ35は、表示ユニット16の後述する表示素子駆動回路48および光源電流調整回路49の動作を制御するための制御信号(シリアル信号)をLVDSトランスミッタ34に出力する制御部である。なお、この制御信号には、シリアルクロックSCLK、シリアルデータSDAT、シリアルイネーブルSCEが含まれている。また、シリアルイネーブルSCEには、表示素子駆動回路48を選択するためのシリアルイネーブルSCE1と、光源電流調整回路49を選択するためのシリアルイネーブルSCE2とが含まれている。
【0082】
また、マイクロプロセッサ35は、映像調整用入力部4bによる入力に基づいた信号をLVDSトランスミッタ34に出力し、その調整内容をLVDSトランスミッタ34からの出力信号に反映させるとともに、音声調整用入力部4cによる入力に基づいた信号をアンプ・音量調整部36に送る。
【0083】
アンプ・音量調整部36は、マイクロプロセッサ35からの入力信号に基づいて左右の音声信号(AUDIO/R、AUDIO/L)を増幅し、音声のボリュームを調整する。アンプ・音量調整部36にて調整された音声信号は、接続端子39を介して表示ユニット16Aに出力される。
【0084】
次に、表示ユニット16A・16Bの詳細な構成について、図1および図4に基づいて説明する。図1は、図4で示したHMDの構成を簡略化したブロック図である。表示ユニット16Aは、入力端子41と、映像表示部42と、出力用接続端子43とを有している。入力端子41と、映像表示部42の入力端子(後述するLVDSレシーバー47の入力端子)と、出力用接続端子43とは、表示ユニット16Aの内部で導通している。
【0085】
入力端子41は、制御ユニット4の接続端子38とHMDケーブル5bを介して接続可能な接続端子であり、この入力端子41に制御ユニット4からの差動シリアル信号が入力される。なお、HMDケーブル5bは、複数の信号線を有するものとする。映像表示部42は、差動シリアル信号に基づいて映像を表示するものであるが、その詳細な構成については後述する。
【0086】
出力用接続端子43は、表示ユニット16Bの後述する入力用接続端子51とHMDケーブル5cを介して接続可能な接続端子である。なお、HMDケーブル5cは、複数の信号線を有するものとする。本実施形態では、制御ユニット4からの差動シリアル信号が入力端子41に入力されたときに、その差動シリアル信号が表示ユニット16Aの内部で分岐され、その一方が映像表示部42に供給され、他方が出力用接続端子43に供給される。これにより、出力用接続端子43からHMDケーブル5cを介して他方の差動シリアル信号を他の表示ユニット16Bに出力することが可能となっている。
【0087】
また、表示ユニット16Aは、接続端子44・45・46をさらに有している。接続端子44は、制御ユニット4の接続端子37とHMDケーブル5bを介して接続可能な接続端子である。電源回路32から接続端子37を介して供給される電圧は、HMDケーブル5bおよび接続端子44を介して表示ユニット16Aの各部に供給されるとともに、図示しない接続端子およびHMDケーブル5cを介して表示ユニット16Bにも供給され、これによって表示ユニット16A・16Bの各部が駆動される。
【0088】
接続端子45は、制御ユニット4の接続端子39とHMDケーブル5bを介して接続可能な接続端子である。また、接続端子46は、イヤホン10の端子と接続可能な接続端子である。これらの接続端子45・46は、表示ユニット16Aの内部で導通している。したがって、イヤホン10の端子が接続端子46に接続されたときには、制御ユニット4の接続端子39から出力される音声信号が、HMDケーブル5b、接続端子45・46を順に介してイヤホン10に入力される。
【0089】
次に、上記した映像表示部42の詳細な構成について説明する。映像表示部42は、上述した光源11、表示素子14のほかに、LVDSレシーバー47、表示素子駆動回路48および光源電流調整回路49を有して構成されている。
【0090】
LVDSレシーバー47は、入力される差動シリアル信号をパラレルの信号に変換するものである。LVDSレシーバー47からパラレルで出力される信号のうち、映像信号、クロック、同期信号は、表示素子駆動回路48に入力される。また、LVDSレシーバー47からの出力信号に含まれる制御信号(SCLK、SDAT、SCE)は、表示素子駆動回路48および光源電流調整回路49の両者に入力される。ただし、シリアルイネーブルSCE1は表示素子駆動回路48のみに、シリアルイネーブルSCE2は光源電流調整回路49のみに入力される。
【0091】
表示素子駆動回路48は、LVDSレシーバー47からパラレルで出力される信号に基づいて表示素子14を駆動する。光源電流調整回路49は、LVDSレシーバー47から供給される制御信号に基づいて、光源11を構成するRGBの各LEDに流す電流を調整し、RGBの光度(輝度、光強度)を調整する。
【0092】
このように表示素子駆動回路48によって表示素子14が駆動され、光源電流調整回路49によって光源11におけるRGBの光度が調整されることにより、映像表示部42では、光源11からの光で表示素子14を照明したときに、ホワイトバランスの良好な映像を表示することができる。
【0093】
一方、表示ユニット16Bは、入力用接続端子51と、映像表示部42とを有している。
【0094】
入力用接続端子51は、他の表示ユニット16Aの出力用接続端子43とHMDケーブル5cを介して接続可能な接続端子である。したがって、入力用接続端子51には、制御ユニット4から他の表示ユニット16Aを介して差動シリアル信号を入力することが可能である。
【0095】
表示ユニット16Bの映像表示部42は、入力用接続端子51に入力された差動シリアル信号に基づいて映像を表示するものであるが、その詳細な構成は、表示ユニット16Aの映像表示部42と全く同様である。
【0096】
上記の構成によれば、制御ユニット4からの差動シリアル信号は、HMDケーブル5bおよび入力端子41を介して表示ユニット16Aに入力され、その内部で分岐される。そして、一方の差動シリアル信号は、表示ユニット16Aの映像表示部42に供給され、その映像表示部42にて映像が表示される。
【0097】
また、他方の差動シリアル信号は、表示ユニット16Aの出力用接続端子43に供給され、その出力用接続端子43からHMDケーブル5cを介して表示ユニット16Bの入力用接続端子51に入力される。表示ユニット16Bの入力用接続端子51に入力された差動シリアル信号は、表示ユニット16Bの映像表示部42に供給され、その映像表示部42にて映像が表示される。
【0098】
以上のように、表示ユニット16Aは、制御ユニット4からの差動シリアル信号に基づいて映像を表示する。この表示ユニット16Aは、他の表示ユニット16BとHMDケーブル5cを介して接続可能な接続端子であって、他の表示ユニット16Bへの差動シリアル信号の出力が可能な出力用接続端子43を有しているので、表示ユニット16Aから出力用接続端子43を介して他の表示ユニット16Bに差動シリアル信号を出力したとき、他の表示ユニット16Bはその差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、観察者は双方の表示ユニット16A・16Bに表示される映像を両眼で観察することが可能となる。
【0099】
また、表示ユニット16Bは、他の表示ユニット16AとHMDケーブル5cを介して接続可能な接続端子であって、他の表示ユニット16Aからの差動シリアル信号の入力が可能な入力用接続端子51を有しているので、他の表示ユニット16Aからの差動シリアル信号が入力用接続端子51を介して表示ユニット16Bに入力されたときには、表示ユニット16Bは、その差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、本実施形態のように他の表示ユニット16Aが同じ差動シリアル信号に基づいて映像を表示する場合には、観察者は双方の表示ユニット16A・16Bに表示される映像を両眼で観察することが可能となる。
【0100】
このように、表示ユニット16A・16Bが上述した接続端子(出力用接続端子43または入力用接続端子51)を有しているので、表示ユニット16A・16Bが単眼用として製造された場合でも、他の表示ユニット16B・16Aとの組み合わせによって両眼用に容易に拡張することができ(両眼用の表示ユニット16として用いることができ)、表示ユニット16の製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避することができる。
【0101】
また、表示ユニット16A・16Bは、上記のように差動シリアル信号に基づいて映像を表示するので、用いるHMDケーブル5b・5c内の信号線の本数を確実に減らすことができる。例えば、本実施形態では、差動シリアル信号の送信用以外にも、電源電圧の供給用、音声信号の送信用の信号線が必要となるが、これらを併せても信号線は8本以内で収まり、HMDケーブル5b・5cとして汎用のイーサネット(登録商標)用ケーブル(LANケーブル)を使用することができる。その結果、放射ノイズの増大やケーブル自体のコスト増大を回避することができる。
【0102】
また、表示ユニット16Aは、制御ユニット4からの差動シリアル信号が入力される入力端子41と、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部42とを有しており、入力端子41に入力された差動シリアル信号は、表示ユニット16Aの内部で分岐され、一方の差動シリアル信号は、表示ユニット16Aの映像表示部42に供給され、他方の差動シリアル信号は、出力用接続端子43に供給される。これにより、上述したように、制御ユニット4からの差動シリアル信号に基づいて、双方の表示ユニット16A・16Bで映像を表示することが確実に可能となり、両眼での映像観察が可能なHMDを確実に構成することが可能となる。
【0103】
また、表示ユニット16Bは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部42を有しており、この映像表示部42は、制御ユニット4から他の表示ユニット16Aを介して入力用接続端子51に入力される差動シリアル信号に基づいて映像を表示するので、本実施形態のように他の表示ユニット16Aが同じ差動信号に基づいて映像を表示するときには、両眼での映像観察が可能なHMDを確実に構成することができる。
【0104】
また、本実施形態のHMDは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する複数の表示ユニット16A・16Bと、表示ユニット16Aに差動シリアル信号を供給する制御ユニット4とを有しており、表示ユニット16Aの出力用接続端子43と、表示ユニット16Bの入力用接続端子51とがHMDケーブル5cを介して接続されている構成である。これにより、表示ユニット16Aでは、制御ユニット4から入力端子41を介して入力される差動シリアル信号に基づいて映像が表示され、表示ユニット16Bでは、表示ユニット16Aの出力用接続端子43からHMDケーブル5cおよび入力用接続端子51を介して入力される差動シリアル信号に基づいて映像が表示される。したがって、双方の表示ユニット16A・16Bに表示された映像を両眼で観察することが可能なHMDを実現することができる。
【0105】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0106】
図5は、本実施形態のHMDの構成を簡略化して示すブロック図である。このHMDは、全く同じ構成の2つの表示ユニット16(第3の表示ユニット)をHMDケーブル5cで接続し、一方の表示ユニット16と制御ユニット4とをHMDケーブル5bで接続したものである。以下、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0107】
各表示ユニット16は、入力端子41と、出力用接続端子43と、入力用接続端子51と、映像表示部42とをそれぞれ有している。つまり、本実施形態では、各表示ユニット16が有する接続端子が、出力用接続端子43および入力用接続端子51の2つで構成されている。そして、各表示ユニット16において、入力端子41、出力用接続端子43および入力用接続端子51と、映像表示部42の入力端子とが全て導通している。
【0108】
上記構成の2つの表示ユニット16のうちの一方を表示ユニット16Aとし、他方を表示ユニット16Bとすると、本実施形態では、表示ユニット16Aの入力端子41がHMDケーブル5bを介して制御ユニット4と接続され、表示ユニット16Aの出力用接続端子43が表示ユニット16Bの入力用接続端子51とHMDケーブル5cを介して接続されているものとする。
【0109】
このようにHMDを構成した場合には、制御ユニット4からの差動シリアル信号は、HMDケーブル5bを介して表示ユニット16Aの入力端子41に入力される。そして、その差動シリアル信号は、表示ユニット16Aの内部で分岐され、一方の差動シリアル信号がその表示ユニット16Aの映像表示部42に供給される。これにより、表示ユニット16Aでは、その映像表示部42により映像が表示される。
【0110】
他方の差動シリアル信号は、出力用接続端子43に供給された後、HMDケーブル5cを介して表示ユニット16Bの入力用接続端子51に入力される。したがって、表示ユニット16Bでは、上記差動シリアル信号が入力用接続端子51から映像表示部42に供給され、その映像表示部42により映像が表示される。したがって、観察者は双方の表示ユニット16A・16Bに表示された映像を両眼で観察することが可能となる。
【0111】
また、図6は、本実施形態のHMDの他の構成を簡略化して示すブロック図である。本実施形態の表示ユニット16の構成によれば、図6に示すように、表示ユニット16Bの入力端子41を、HMDケーブル5bを介して制御ユニット4と接続し、表示ユニット16Bの出力用接続端子43を、表示ユニット16Aの入力用接続端子51とHMDケーブル5cを介して接続してHMDを構成することも可能である。
【0112】
つまり、この構成では、制御ユニット4からの差動シリアル信号は、HMDケーブル5bを介して表示ユニット16Bの入力端子41に入力される。そして、その差動シリアル信号は、表示ユニット16Bの内部で分岐され、一方の差動シリアル信号がその表示ユニット16Bの映像表示部42に供給される。これにより、表示ユニット16Bでは、その映像表示部42により映像が表示される。
【0113】
表示ユニット16Bにおける他方の差動シリアル信号は、出力用接続端子43に供給された後、HMDケーブル5cを介して表示ユニット16Aの入力用接続端子51に入力される。したがって、表示ユニット16Aでは、上記差動シリアル信号が入力用接続端子51から映像表示部42に供給され、その映像表示部42により映像が表示される。したがって、観察者は双方の表示ユニット16B・16Aに表示された映像を両眼で観察することが可能となる。
【0114】
以上のように、本実施形態の表示ユニット16A(16B)は、制御ユニット4からの差動シリアル信号が表示ユニット16A(16B)の入力端子41に入力されたときには、上記差動シリアル信号が表示ユニット16A(16B)の内部で分岐されて、一方の差動シリアル信号が表示ユニット16A(16B)の映像表示部42に供給され、他方の差動シリアル信号が表示ユニット16A(16B)の出力用接続端子43に供給される一方、制御ユニット4から他の表示ユニット16B(16A)を介して差動シリアル信号が表示ユニット16A(16B)の入力用接続端子51に入力されたときには、上記差動シリアル信号が表示ユニット16A(16B)の映像表示部42に供給される構成である。これにより、制御ユニット4からの差動シリアル信号が表示ユニット16A(16B)の入力端子41に直接入力される場合であっても、他の表示ユニット16B(16A)を介して入力用接続端子51に入力される場合であっても、双方の表示ユニット16A・16Bで映像を表示することが可能となり、両眼での映像観察が可能なHMDを実現することができる。
【0115】
したがって、表示ユニット16A(16B)が単眼用であっても、他の表示ユニット16(16B・16A)との組み合わせによって両眼用に容易に拡張することができると言えるので、表示ユニット16の製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避することができる。特に、全く同じ構成の表示ユニット16を2つ組み合わせて両眼での映像観察が可能なHMDを実現することができるので、上記の効果は絶大である。
【0116】
また、2つの表示ユニット16は両方とも、入力端子41、入力用接続端子51および出力用接続端子43の3つの端子を備えているので、どちらの表示ユニット16を左眼用としても右眼用としても用いることができる。よって、表示ユニット16ひいてはHMDの量産が容易となり、これらのコストダウンを図ることも容易となる。
【0117】
以上のように、本実施形態では、全く同じ構成の表示ユニット16を2つ組み合わせて両眼での映像観察が可能なHMDを実現できることから、本実施形態のHMDは、以下のように表現できると言える。すなわち、本実施形態のHMDは、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する複数の表示ユニット16と、いずれかの表示ユニット16に差動シリアル信号を供給する制御ユニット4とを備え、複数の表示ユニット16は、本実施形態の表示ユニット16が2つで構成されており、一方の表示ユニット16(例えば表示ユニット16A)の入力端子41は、制御ユニット4とHMDケーブル5bを介して接続されており、上記表示ユニット16の出力用接続端子51は、他方の表示ユニット16(例えば表示ユニット16B)の入力用接続端子51とHMDケーブル5cを介して接続されている構成である。
【0118】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1または2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0119】
図7は、本実施形態のHMDの構成を簡略化して示すブロック図である。このHMDは、全く同じ構成の2つの表示ユニット16(第4の表示ユニット)と制御ユニット4とを分岐ケーブル5dで接続したものである。分岐ケーブル5dは、制御ユニット4からの差動シリアル信号を複数の表示ユニット16に並列に供給するためのHMDケーブルである。以下、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0120】
本実施形態の表示ユニット16は、入力端子41と、映像表示部42とを有している。入力端子41は、制御ユニット4と分岐ケーブル5dを介して接続される接続端子であり、分岐ケーブル5dの複数の出力端のうちの1つが接続される。制御ユニット4と表示ユニット16とが分岐ケーブル5dを介して接続されたときには、制御ユニット4からの差動シリアル信号が入力端子41に入力される。映像表示部42は、入力端子41に入力された差動シリアル信号に基づいて映像を表示する。
【0121】
このように、入力端子41と映像表示部42とを有する表示ユニット16を2つ用い(以下、表示ユニット16A・16Bとも称する)、制御ユニット4からの差動シリアル信号を分岐ケーブル5dを介して各表示ユニット16A・16Bに並列に供給することにより、各表示ユニット16A・16Bでは供給された差動シリアル信号に基づいて映像を表示することが可能となる。したがって、両眼での映像観察が可能なHMDを構成することができ、観察者は双方の表示ユニット16A・16Bに表示される映像を両眼で観察することが可能となる。
【0122】
また、表示ユニット16は、元々、観察者の一方の眼前に配置される単眼用であるが、本実施形態の構成によれば、その表示ユニット16を2つ組み合わせて両眼用としても用いることが可能となる。このように単眼用の表示ユニット16を両眼用に容易に拡張することができるので、表示ユニット16の製造効率の低下、ひいてはHMDの量産性の低下を回避することができる。
【0123】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。本実施形態では、実施の形態1〜3に適用可能な光源電流調整回路49の詳細な構成について説明する。
【0124】
図8(a)(b)は、光源電流調整回路49の詳細な構成を示すブロック図であり、特に、図8(a)は、後述するEEPROM61を制御ユニット4側に設けた場合を示し、図8(b)は、そのEEPROM61を表示ユニット16側に設けた場合を示している。本実施形態の光源電流調整回路49は、上記のEEPROM61と、DAC(D/Aコンバータ)62と、定電流回路63とを有している。
【0125】
EEPROM61は、映像の表示の調整に用いる調整データを記憶する記憶手段であり、本実施形態では、光源11の光度(出射光の明るさ、光強度)を調整するためのデータを上記調整データとして記憶している。
【0126】
DAC62は、EEPROM61に記憶された調整データが当該DAC62に入力されて設定されたときに、その調整データに基づく信号であって表示に必要な信号(例えばRGBごとの電圧Vr・Vg・Vb)を出力する出力部である。
【0127】
定電流回路63は、DAC62から出力される信号に基づいて光源11を発光させる駆動部である。より具体的には、定電流回路63は、DAC62から出力されるRGBの電圧Vr・Vg・Vbを電流Ir・Ig・Ibに変換し、これらを光源11に供給することにより、光源11を発光させる。
【0128】
ところで、図8(a)のように、EEPROM61が表示ユニット16の外部、すなわち制御ユニット4側にあると、表示ユニット16と制御ユニット4とを組み合わせてHMDを構成するときに、その組み合わせごとに、用いる表示ユニット16に応じて調整データを再設定する必要が生じる。しかも、図8(a)の構成でDAC62に調整データを書き込む場合には、例えばマイクロプロセッサ35(図4参照)がEEPROM61に記憶された調整データを読み出し、その調整データをDAC62に書き込み、設定する必要が生じる。しかし、上述した各実施の形態のように、制御ユニット4と表示ユニット16との通信を差動シリアル信号を用いたLVDS方式で行う場合には、通信方向が制御ユニット4から表示ユニット16への片方向であるため、マイクロプロセッサ35が表示ユニット16にあるEEPROM61の調整データを読み出すことができない。そこで、本実施形態では、図8(b)のようにEEPROM61を表示ユニット16側に搭載し(光源電流調整回路49を表示ユニット16内で完結するように構成し)、上記の不都合を回避している。以下、図8(b)のように表示ユニット16を構成した場合の実際のシーケンスについて説明する。
【0129】
図9(a)は、表示ユニット16側のEEPROM61に調整データを書き込むシーケンスを示す説明図であり、図9(b)は、EEPROM61から上記調整データを読み出してDAC62に書き込むシーケンスを示す説明図である。なお、図8(a)(b)および図9(a)(b)において、SCLKはシリアルクロックを、SDATはシリアルデータを、CS_EEはEEPROM61のチップセレクトを、PEはEEPROMプログラムイネーブルを、SDAT(DAC)はDAC62に入力するシリアルデータを、CS_DAはDACのチップセレクトをそれぞれ示す。これらは全て制御ユニット4のマイクロプロセッサ35から送信される制御信号を構成している。
【0130】
また、EEPROM61の各端子SK、DI、CS、PEは、それぞれ、SCLK、SDAT、CS_EE、PEの入力端子を示し、端子DOは、シリアルデータの出力端子を示す。また、DAC62の端子SK、DI、CSは、それぞれSCLK、SDAT(DAC)、CS_DAの入力端子を示し、端子DI’はEEPROM61から出力されるシリアルデータの入力端子を示す(すなわちDI’=DO)。なお、EEは、EEPROMと同じであることを示す。
【0131】
まず、EEPROM61に調整データを書き込む場合には、マイクロプロセッサ35がPE、CS_EEをイネーブルに設定し、EEPROM61に書き込むデータをSDAT(DI)で送信する。この場合において、EEPROM61からは出力SDAT(DO)として何も出力されない。一方、マイクロプロセッサ35は、CS_DAをディスネーブルに設定したままである。このとき、EEPROM61に書き込むデータには、例えばDACアドレス(設定チャンネル)、デバイス固有の設定データ、調整データとしてのDACデータが含まれている。なお、図8(a)のように制御ユニット4側にEEPROM61を搭載した場合には、DACデータのみをEEPROM61に書き込むだけであるが、DACアドレス(設定チャンネル)、デバイス固有の設定データについても書き込んでおく必要がある。
【0132】
次に、DAC62に調整データを設定する場合には、マイクロプロセッサ35がPEをディスネーブル、CS_EEをイネーブルに設定し、EEPROM61のアドレスをSDAT(DI)で送信する。すると、EEPROM61は、読み出しデータをSDAT(DO)として送信する。この読み出しデータには、上述したDACアドレス(設定チャンネル)、デバイス固有の設定データ、DACデータが含まれており、EEPROM61の読み出しデータがそのままDAC62への書き込みデータと同じ形式になるように工夫されている。このタイミングで、マイクロプロセッサ35がCS_DAをイネーブルに設定することにより、EEPROM61の端子DOとDAC62の端子DI’とが接続されているため、EEPROM61から読み出したデータSDAT(DO)がDAC62に書き込まれ、DAC62に対する調整データの書き込みおよび設定が正常に行われる。
【0133】
以上のように、表示ユニット16側にEEPROM61を搭載することにより、個々の表示ユニット16に固有の調整データをEEPROM61に記憶させ、また、それをDAC62に書き込むことができる。つまり、EEPROM61に保存された光源11のカラー調整データをDAC62に書き込み、設定することが可能となる。これにより、表示ユニット16と制御ユニット4とを組み合わせてHMDを構成する際に、用いる表示ユニット16ごとに調整データを設定し直さなくても済む。その結果、HMDの生産効率を向上させることができる。
【0134】
また、表示ユニット16ごとに固有の調整データを持つことになるので、表示ユニット16のみを単体で出荷した場合でも、その出荷先での制御ユニット4との組み合わせごとに、用いる表示ユニット16の調整データに基づいて良好な映像を表示できるHMDを実現することが可能となる。
【0135】
また、表示ユニット16内にEEPROM61を設ける構成とすることにより、個々の表示ユニット16で調整が完結するので、工程管理がしやすくなるとともに生産に要するコストを低減することができる。また、例えば実施の形態2の表示ユニット16(左右区別無し)にEEPROM61を設ける構成とすれば、特に単眼用のHMDと両眼用のHMDとが混在する場合でも、任意の表示ユニット16・16を組み合わせて両眼用のHMDにできるため、管理がしやすく、生産に要するコストを低減することができる。
【0136】
また、本実施形態では、EEPROM61に記憶させる調整データは、光源11の光度を調整するためのデータであるので、EEPROM61から調整データを読み出してDAC62に書き込み、DAC62が調整データに基づく信号(駆動電圧)を定電流回路63に出力し、定電流回路63がその信号に基づいて光源11に駆動電流を流したときに、出射光の光度が調整された状態で光源11を発光させることができ、表示素子14にて表示される映像の明るさ(輝度)を調整することが可能となる。
【0137】
また、本実施形態の光源電流調整回路49の構成(表示ユニット16側にEEPROM61を搭載した構成)を実施の形態1〜3のHMDに適用したときには、このHMDは以下の構成であると言うことができる。つまり、HMDは、EEPROM61およびDAC62を搭載した2つの表示ユニット16が、差動シリアル信号を送信するHMDケーブル5b(または分岐ケーブル5d)を介して制御ユニット4と接続されており、制御ユニット4はEEPROM61およびDAC62に制御信号を送信するマイクロプロセッサ35を備えており、各表示ユニット16では、上記制御信号に基づいて、EEPROM61に調整データを書き込む動作と、EEPROM61に書き込んだ調整データを読み出してDAC62に書き込み、設定する動作とが行われる構成である。
【0138】
差動シリアル信号を利用してHMDを構成した場合、差動シリアル信号の送信は制御ユニット4から各表示ユニット16への一方向であるため、マイクロプロセッサ35は各表示ユニット16内のEEPROM61に記憶された調整データを読み出すことができないのは上述した通りである。しかし、本実施形態では、差動シリアル信号を送信するHMDケーブル5bまたは分岐ケーブル5dを介して、制御ユニット4から各表示ユニット16に制御信号を送信することにより、各表示ユニット16のEEPROM61に対する調整データの書き込みおよび読み出し動作と、読み出した調整データのDAC62への書き込みおよび設定動作とをそれぞれ行うことができる。したがって、制御ユニット4から各表示ユニット16への通信が片方向であっても、各表示ユニット16に対して、固有の調整データに基づいて映像の表示を調整することが可能となる。
【0139】
なお、本実施形態では、映像の表示の調整に用いる調整データとして、光源11の光度を調整するためのデータを例に挙げ、これをEEPROM61に記憶させた場合について説明したが、この調整データとしては、例えば、表示素子14のレジスタ設定のためのデータ(表示素子14におけるコントラストや輝度などを調整するためのデータ)を考えることもできる。この場合であっても、出力部(例えば表示素子駆動回路48内のDAC)からはその調整データに基づく信号が出力されるので、例えば表示素子14を駆動する駆動部が、上記出力部から供給される信号に基づいて表示素子14を駆動することにより、コントラストや輝度が調整された状態で表示素子14にて映像を表示させることができる。
【0140】
なお、上述した各実施の形態の構成を適宜組み合わせて表示ユニット4やHMDを構成することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の表示ユニットは、単眼用(単眼での映像観察用)のHMDのみならず、両眼用(両眼での映像観察用)のHMDにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の実施の一形態に係るHMDの構成を簡略化して示すブロック図である。
【図2】(a)は、上記HMDの全体の構成を示す平面図であり、図2(b)は、HMDの正面図である。
【図3】上記HMDに適用される映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記HMDを構成する制御ユニットの主要部および表示ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るHMDの構成を簡略化して示すブロック図である。
【図6】上記HMDの他の構成を簡略化して示すブロック図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態に係るHMDの構成を簡略化して示すブロック図である。
【図8】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施の形態に係るHMDの光源電流調整回路の詳細な構成を示すブロック図であり、(a)は、EEPROMを制御ユニット側に設けた光源電流調整回路のブロック図であり、(b)は、上記EEPROMを表示ユニット側に設けた光源電流調整回路のブロック図である。
【図9】(a)は、表示ユニット側のEEPROMに調整データを書き込むシーケンスを示す説明図であり、(b)は、EEPROMから上記調整データを読み出してDACに書き込むシーケンスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0143】
4 制御ユニット
5b HMDケーブル
5c HMDケーブル
5d 分岐ケーブル
11 光源
14 表示素子
16 表示ユニット
16A 表示ユニット
16B 表示ユニット
35 マイクロプロセッサ(制御部)
41 入力端子
42 映像表示部
43 出力用接続端子
51 入力用接続端子
61 EEPROM(記憶手段)
62 DAC(出力部)
63 定電流回路(駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の一方の眼前に配置され、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する表示ユニットであって、
観察者の他方の眼前に配置される他の表示ユニットとケーブルを介して接続可能な接続端子を備え、
上記接続端子は、他の表示ユニットへの差動シリアル信号の出力が可能な出力用接続端子と、他の表示ユニットからの差動シリアル信号の入力が可能な入力用接続端子とのうちの少なくとも一方で構成されていることを特徴とする表示ユニット。
【請求項2】
制御ユニットからの差動シリアル信号が入力される入力端子と、
差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部とをさらに備え、
上記接続端子は、上記出力用接続端子で構成されており、
制御ユニットから上記入力端子に入力された差動シリアル信号は、当該表示ユニット内部で分岐され、
一方の差動シリアル信号は、上記映像表示部に供給され、
他方の差動シリアル信号は、上記出力用接続端子に供給されることを特徴とする請求項1に記載の表示ユニット。
【請求項3】
差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部をさらに備え、
上記接続端子は、上記入力用接続端子で構成されており、
上記映像表示部は、制御ユニットから他の表示ユニットを介して上記入力用接続端子に入力される差動シリアル信号に基づいて映像を表示することを特徴とする請求項1に記載の表示ユニット。
【請求項4】
制御ユニットからの差動シリアル信号の入力が可能な入力端子と、
差動シリアル信号に基づいて映像を表示する映像表示部をさらに備え、
上記接続端子は、上記出力用接続端子および上記入力用接続端子の2つで構成されており、
制御ユニットからの差動シリアル信号が上記入力端子に入力されたときには、上記差動シリアル信号は当該表示ユニット内部で分岐され、一方の差動シリアル信号が上記映像表示部に供給され、他方の差動シリアル信号が上記出力用接続端子に供給され、
制御ユニットからの差動シリアル信号が他の表示ユニットを介して上記入力用接続端子に入力されたときには、上記差動シリアル信号が上記映像表示部に供給されることを特徴とする請求項1に記載の表示ユニット。
【請求項5】
観察者の一方の眼前に配置され、差動シリアル信号に基づいて映像を表示する表示ユニットであって、
制御ユニットからの差動シリアル信号が入力される入力端子を備えており、
上記入力端子には、制御ユニットからの差動シリアル信号を他の表示ユニットと並列に供給するための分岐ケーブルの複数の出力端のうちの1つが接続されることを特徴とする表示ユニット。
【請求項6】
映像の表示の調整に用いる調整データを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された調整データが入力されて設定されたときに、その調整データに基づく信号であって表示に必要な信号を出力する出力部とをさらに備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の表示ユニット。
【請求項7】
光源と、
光源からの光を変調して映像を表示する表示素子と、
上記出力部から出力される信号に基づいて光源を発光させる駆動部とをさらに備え、
上記調整データは、光源の光度を調整するためのデータであることを特徴とする請求項6に記載の表示ユニット。
【請求項8】
差動シリアル信号に基づいて映像を表示する複数の表示ユニットと、
いずれかの表示ユニットに差動シリアル信号を供給する制御ユニットとを備え、
上記複数の表示ユニットは、請求項2に記載の表示ユニットと、請求項3に記載の表示ユニットとで構成されており、
請求項2に記載の表示ユニットの出力用接続端子と、請求項3に記載の表示ユニットの入力用接続端子とがケーブルを介して接続されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
差動シリアル信号に基づいて映像を表示する複数の表示ユニットと、
いずれかの表示ユニットに差動シリアル信号を供給する制御ユニットとを備え、
上記複数の表示ユニットは、請求項4に記載の表示ユニットが2つで構成されており、
一方の表示ユニットの入力端子は、制御ユニットとケーブルを介して接続されており、
上記表示ユニットの出力用接続端子は、他方の表示ユニットの入力用接続端子とケーブルを介して接続されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
請求項5に記載の表示ユニットが2つと、
複数の出力端が各表示ユニットの入力端子とそれぞれ接続される分岐ケーブルと、
分岐ケーブルを介して各表示ユニットに差動シリアル信号を供給する制御ユニットとを備えていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
上記複数の表示ユニットは、
映像の表示の調整に用いる調整データを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された調整データが入力されて設定されたときに、その調整データに基づく信号であって表示に必要な信号を出力する出力部とをそれぞれ備えており、
上記制御ユニットは、差動シリアル信号を送信するケーブルを介して、上記記憶手段および上記出力部に制御信号を送信する制御部を備えており、
各表示ユニットでは、上記制御信号に基づいて、記憶手段に調整データを書き込む動作と、記憶手段に書き込んだ調整データを読み出して出力部に書き込み、設定する動作とが行われることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−228124(P2008−228124A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66001(P2007−66001)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】