説明

表示付きカード

【課題】 可視情報を表示するためのディスプレイパネルを持ち、接触端子を介して表示用データおよび電力を得る表示付きカードでは、ディスプレイパネルと接触端子を結ぶ回路基板が、カードのコスト押し上げ要因となっている。本発明は、ICなどの回路素子や接触端子の新たな実装法により、コスト低減可能なカード構成を提供することを課題とする。
【解決手段】 ディスプレイパネル22と表示駆動用IC23を搭載するディスプレイ基板24に、接触端子部25との結合のための接合部A27aを設け、また、表示制御用IC26を搭載する接触端子部25に接合部27bを設け、接合部A27aと接合部B27bとを電気的に結合する構造とすることにより、低コストかつ製造工程数の少ない表示付きカードとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字や図形を表示するディスプレイを搭載するカードの実装技術に関し、特に、カード内の回路構成の工夫により、実装工程での工程削減、材料削減を実現しようとするカードの内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携行に便利なICカードは、近年、爆発的な普及を見ており、発行数量の増大とともに、その利用法も、物品購入や交通機関の入退管理など、拡大の一途にある。このように、カードの用途が高度化、多様化するときに、従来のICカードでは中身の見えないこと、すなわち表示機能がないことが大きな欠点として表われてきた。
また、ICカードの用途が広がるにつれ、複数のカードを携帯する煩雑さを除くために複数の機能(サービス)を1枚のカードに統合する動きも加速しているが、1枚のカードに複数のサービスを搭載するようになると、カードに表示機能を搭載する必要性はさらに高まってくる。例えば残高や有効期間などの可変情報を表示することができれば、ICカードの利便性が一層高まることは明白である。
【0003】
ICカードへの表示機能の付与に関しては、いわゆる電子ペーパーと呼ばれる技術を始めとして種々提案がなされている。駆動電力、厚さ、柔軟性などに制約の多いICカード表面での利用となるため、低電圧、低消費電力、書換回数、不揮発性、可撓性など、表示手段に要求される性能は高度なものとなっている。
このような表示付きカードの例は、表示部に強誘電性液晶を用いた特開平10−154215(特許文献1)、表示部にマイクロカプセル電気泳動方式を用いた特開2004−102384(特許文献2)などの文献で検討されている。
【特許文献1】特開平10−154215号公報
【特許文献2】特開2004−102384号公報
【0004】
また、表示機能を組み込んだカードは特開2004−102384号(特許文献3)などに開示されており、カード内部の構成は、特許文献3のように、ディスプレイパネルと接触端子の間をフレキシブル基板で結び、同基板上に制御用ICなどの機能部品を装着するのが通例である。
【特許文献3】特開2003−337321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなフレキシブル基板を用いた構成では、フレキシブル基板自体が高価な上に、同基板とディスプレイ部や接触端子部を接続する加工など多くの工程を要し、製造上のコストダウンの妨げになっていた。
【0006】
そこで本発明は、従来の表示付きカードのような高価な部品を用いることなく、かつ、加工工程を削減できるカード構造を示すことにより、より安価な表示付きカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の表示付きカードは、
可視情報を表示するためのディスプレイパネルと表示駆動用ICと表示制御用ICを内蔵し、表示用データおよび表示駆動用電力が接触端子を介して外部から供給される表示付きカードであって、
前記ディスプレイパネルと表示駆動用ICとが一体化して形成されるディスプレイ部に設けられた接合部と、前記接触端子と前記表示制御用ICとが一体化して形成される端子部に設けられた接合部とが、相互に結合することにより、前記ディスプレイ部と前記端子部が電気的に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表示付きカードによれば、ディスプレイの駆動を制御するための回路基板を別途準備することなく、特に、高価なフレキシブル基板を必要としないため、製造コストの低減に寄与できる。また、カード製造工程が簡略化されることにより、製造コストの低減とともに歩留まり向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、従来の一般的な表示付きカードの構成を示す。
ディスプレイパネル12を搭載したディスプレイ基板12は、接触端子14とディスプレイ基板を結ぶ表示回路基板13とともにカード内に封止されており、外部に露出した接触端子14を介して表示用データおよび表示駆動用電力を得る。
【0010】
表示回路基板13には表示制御用IC15や表示駆動用IC16とともに抵抗やコンデンサなどの機能部品が搭載され、表示のための信号処理が行なわれる。接触端子14から取り込まれたデータは表示制御用IC15によりディスプレイに合わせた信号に変換され、さらに表示駆動用IC16によりディスプレイの各画素が駆動される。
表示制御用ICとしては、多くの場合、CPU機能を核に周辺回路を含めワンチップ化した微小なICが用いられ、カード内の限られたスペースに収められる。
【0011】
表示駆動用IC16は、ディスプレイパネル11の二次元配列の各画素を駆動するため多数の信号端子を有し、したがって表示回路基板13とディスプレイ基板12の間を繋ぐ基板接続部17には多数の信号線が渡ることになる。基板接続部17には、圧接や微小なコネクタによる接続などが用いられるが、何れも製造コスト押し上げ要因になっている。また、表示用回路基板は、可撓性、耐久性の観点から多くの場合フレキシブル基板が用いられるが、これもコスト上昇を招いている。
なお、表示用電力も接触端子14を介して供給されるが、ディスプレイに電子ペーパーのようなメモリ性の表示技術を用いる場合は、電力供給は表示の書き換え時のみでよく、以降は電力供給を停止しても表示は維持される。
【0012】
図2は、本発明の表示付きカードを示したものであり、(イ)は全体構成図、(ロ)はディスプレイ部、(ハ)は接触端子部の表面と裏面を俯瞰した状態を示す。
図2(イ)の表示付きカードにおいて、ディスプレイ部21はディスプレイパネル22を除いて樹脂で封止されており、隠蔽された部分は外面には現れない。接触端子部25にはカード表面に露出する複数の電極が装着され、各電極はデータ用や電力用というように用途により振り分けられる。
【0013】
図2(ロ)のディスプレイ部21では、表示駆動用IC23がディスプレイ基板24に装着され、同ICは、ディスプレイ基板24に配された回路によりディスプレイパネル22および接合部A27aと電気的に接続される。その他、抵抗やコンデンサなどの素子も、必要があれば、表示駆動用ICと同様にディスプレイ基板上に装着される。
ディスプレイ基板24に設けられた接合部A27aは、接触端子部25と電気的に結合するためのもので、後述の接合部B27bと対をなす複数の電極を持つ。
【0014】
図2(ハ)の接触端子部25は、本発明に特徴的な構造を持つものであり、接触端子部25では、電極面の反対面に表示制御用IC26が装着されている。さらに、同ICは、ディスプレイ基板24に配された回路を介して接触端子部25の電極28および接合部B27bと電気的に接続されている。接合部B27bは、カード側の接合部A27aと電気的に結合するための電極であり、接合部A27aと接合部B27bの対向する各電極が結合することにより、表示制御用IC26からの信号と表示駆動用の電力がディスプレイ部に伝達される。
【0015】
図3に、本発明の表示付きカードの加工工程を示す。
(a)は、図2(ロ)のディスプレイ基板24がカード基材30により封止された状態を表わす。カード基材に用いる素材としては塩化ビニール樹脂やPET−Gと称するポリエステル樹脂が多用されている。封止方法としては、シート状の樹脂により内蔵物(図3のカードではディスプレイ部21)を上下から挟み、接着剤または熱圧着により封止するなどの方法が多く用いられる。
ディスプレイ部21は、ディスプレイパネル22を除く表示駆動用IC23、接合部A27aは隠蔽された状態にあり、接合部A27aの部分は、この後、接触端子部25を装着するためのザグリ加工が施される。
(b)は、ザグリ加工後のカードを示し、ザグリ加工によりカード側の接合部A27aが露出している様子を表わす。
(c)は、ザグリ加工部に接触端子部25を装着した姿であり、同端子部の裏側では、接合部A27aと接合部B27bとが電気的に結合されている。なお、接合部A27aと接合部B27bの結合は、接触端子部25をカードに実装する際になされ、ACF(異方性導電シート)やACP(導電ペースト)を用いることにより、安定した結合効果を得ることができる。
【0016】
図4は、図3に記載しているディスプレイパネル22の実施態様の一例を示している。ディスプレイパネル22は、電気泳動層43を透明電極42,44で挟んで積層されており、さらに、樹脂フィルム等の可撓性のある第1基板41、第2基板45を積層している。電気泳動層43は帯電粒子47、48のマイクロカプセルと帯電粒子を分散する分散媒46から構成されている。図4の第2基板45は図3のディスプレイ基板29に相当し、図4では第2基板45上に表示駆動用IC23と接合部A27aが装着されている。また、第2基板45には回路49が形成され、表示駆動用IC23、接合部A27a、ディスプレイパネル22などが相互に電気的に接続されている。
【0017】
以上、本発明の表示付きカードは、簡単な構造で、かつ製造も容易であるため、低廉な価格での供給が可能となり、高機能カードの一層の普及に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の表示付きカード
【図2】本発明の表示付きカード
【図3】表示付きカードの加工工程
【図4】ディスプレイパネルの拡大図
【符号の説明】
【0019】
1 従来の表示付きカード
11 ディスプレイパネル
12 ディスプレイ基板
13 表示回路基板
14 接触端子
15 表示制御用IC
16 表示駆動用IC
17 基板接続部
21 ディスプレイ部
22 ディスプレイパネル
23 表示駆動用IC
24 ディスプレイ基板
25 接触端子部
26 表示制御用IC
27a 接合部A
27b 接合部B
28 電極
29 ザグリ加工部
30 カード基材
41 第1基板
42 透明基板
43 電気泳動層
44 透明電極
45 第2基板
46 分散媒



【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視情報を表示するためのディスプレイパネルと表示駆動用ICと表示制御用ICを内蔵し、表示用データおよび表示駆動用電力が接触端子を介して外部から供給される表示付きカードであって、
前記ディスプレイパネルと表示駆動用ICとが一体化して形成されるディスプレイ部に設けられた接合部と
前記接触端子と前記表示制御用ICとが一体化して形成される端子部に設けられた接合部と、
が相互に結合することにより、前記ディスプレイ部と前記端子部が電気的に接続される構成とする表示機能付きカード。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−108387(P2010−108387A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281972(P2008−281972)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】