説明

表示板

【課題】表面側にグラデーションを有する表示板において、グラデーション周囲の印刷段差を目立たなくして、見栄えを高めた表示板を提供する。
【解決手段】基板22と、この基板22上に設けた透過性着色層23と、この透過性着色層23上の第1の領域R1に設けられた下地層24(第1の印刷層)と、この下地層24が設けられていない第2の領域R2との境界Xおよび下地層24を覆い、第2の領域R2の少なくとも境界X際にグラデーションを形成する地色層26(第2の印刷層)とを備えた表示板9において、下地層24の境界X際を第2の領域R2側にかけて印刷密度が密から徐々に粗となる粗密領域R3とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の計器装置に用いられる表示板に関し、特にグラデーションを形成することによって立体感やデザイン性を高めるようにした表示板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示板の表面側にグラデーションを形成することによって立体感やデザイン性を高めるようにしたものとして、例えば下記特許文献1が知られている。特許文献1に記載の文字板(表示板)は、透過性の基材1の表面に目盛,数字,記号等の表示3を除いて半透過性の意匠印刷層4を施し、さらに意匠印刷層4の表面を複数の表示領域に定め、この表示領域内に明度が一方向から他方向に向かって徐々に変化するグラデーション印刷層5(例えば黒色)を設けたものである。
【特許文献1】特開平11−119662号公報
【0003】
なお、前記特許文献1に於けるグラデーションは文字板(表示板)の全領域内に設けてあるが、特定領域にのみ設けたい場合がある。図5〜図7は、この様な表示板51の一例を示すものでグラデーションを表示板51の中心付近(図5に破線で囲んだ領域内、以下グラデーション領域GAとする)に設けたものである。
【0004】
表示板51は、無色透明な基板52の表面側に車両のエンジン回転数を現す目盛,数字などの表示部53となる例えば白色の透過性表示層54を印刷形成した後、表示部53を除いて地部55となる例えば黒色の地色層56を印刷形成してある。この地色層56はグラデーション形成層でもある。すなわち、グラデーション領域GAに表示板51の中心に形成されている貫通穴57に向かって明度が徐々に明変化する様に、例えば点状の模様を地色層56と同一工程で黒色印刷したものである。58は無色透明な保護層であり、外光による表示板51面の反射を抑えるとともに、印刷面にキズなどが付きにくいように保護するものである。図7はグラデーションの部分詳細図であり、円形の黒い部分が黒色印刷した点状の模様を示し、無地部分は白色の透過性表示層54が現れているものである。
【0005】
この様に構成した表示板51は、黒色の地部55上に白色の表示部53が視認されるとともに、グラデーション領域GAは数字側から表示板51の中心側に向かって黒色から徐々に白色に変化する。また、夜間など周囲が暗い時、表示板51の裏面側に配置した例えば青色で発光する発光ダイオード(図示せず)が点灯した際は、表示部53は青色で透過照明され、グラデーション領域GAは数字側から表示板51の中心側に向かって黒色から徐々に青色に変化して透過照明されるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
なお、上記図5〜図7に記載の表示板51に於いては、表示部53とグラデーション領域GAとを除いた透過性表示層54と地色層56との間に黒色の下地層59が設けてある。この下地層59は、表示板51の裏面側に配置した発光ダイオードが点灯した際に、地部55が透けないように設けるものである。地部55となる地色層56が黒色であるために地部55は透け難いが、発光ダイオードの光が一部分を強く照射したり、地色層56にピンホールが発生した際に地部55が透ける虞があるため、光を透さない箇所は黒色であっても2層設けることがある。
【0007】
しかしながら、上記表示板51は下地層59を印刷した後、その下地層59を覆うように地色層56(グラデーション形成層)を印刷すると、図6に示す様に下地層59の有無による段差Hが発生する。この状態を表示板51の正面から見ると、図5に示す様にグラデーション領域GAの周囲に略円形の段差ラインLが連続線で現れてしまい、デザイン的に見苦しい面がある。この様にグラデーションを形成することによってデザイン性を向上させるつもりが、逆に見栄えが低下するという問題があった。なお、印刷による段差は表示部53周囲の地部55にも現れるが表示部53の際であり、色調違いの表示部53に目が行きやすく段差が目立たない。
【0008】
本発明はこの様な点に鑑みなされたもので、表面側にグラデーションを有する表示板において、グラデーション周囲の印刷段差を目立たなくして、見栄えを高めた表示板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するため、基板と、この基板上の第1の領域に設けられた第1の印刷層と、この第1の印刷層が設けられていない第2の領域との境界および前記第1の印刷層を覆い、前記第2の領域の少なくとも前記境界際にグラデーションを形成する第2の印刷層とを備えた表示板において、前記第1の印刷層の前記境界際を前記第2の領域側にかけて印刷密度が密から徐々に粗となる粗密領域としたものである。
【0010】
また、基板と、この基板上に設けた透過性着色層と、この透過性着色層上の第1の領域に設けられた第1の印刷層と、この第1の印刷層が設けられていない第2の領域との境界および前記第1の印刷層を覆い、前記第2の領域の少なくとも前記境界際にグラデーションを形成する第2の印刷層とを備えた表示板において、前記第1の印刷層の前記境界際を前記第2の領域側にかけて印刷密度が密から徐々に粗となる粗密領域としたものである。
【0011】
また、前記粗密領域が網状の模様からなるものである。
【0012】
また、前記第1の印刷層および前記第2の印刷層を黒色としたものである。
【発明の効果】
【0013】
表面側にグラデーションを有する表示板において、グラデーション周囲の印刷段差を目立たなくして、見栄えを高めた表示板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の表示板を適用した車両の計器装置を実施形態として説明する。図1は回転計1と速度計2を備えた計器装置の正面図であり、図2は回転計1の部分断面図(図1に於けるA−A断面)である。図3は回転計1に用いられる表示板の部分断面図であり、図4は表示板の粗密領域を示す部分詳細図である。なお、図1に於いて、速度計2の意匠は記載を省略し、速度計2に関する説明も省略する。
【0015】
計器装置は、硬質な回路基板3と、この回路基板3の裏面側に回路基板3と導通状態で装着され、回路基板3を貫通して前方に延びる回動軸4を有する計器本体5と、回動軸4の先端側に固着された指示部6を有する指針7と、この指針7の後方に配置され指示部6の動作に対応する車両のエンジン回転数を現す目盛,数字などの表示部8および指針7の周囲にグラデーションが形成されたグラデーション領域GA(図1に破線で囲んだ領域内)を有する表示板9と、表示板9と回路基板3との間に配置され表示板9が保持される保持部材10を備えている。
【0016】
また、回路基板3の裏面側を覆う合成樹脂製のカバー11と、表示板9の周縁前方側に配置され表示板9の可視領域を定める開口部12を有する例えば黒色の見返し部材13と、表示板9や見返し部材13などの前方側に配置された無色透明な透視板14と、回路基板3上に実装され指針7の指示部6を照明する光源としての指針用発光ダイオード15と、表示板9の表示部8やグラデーション領域GAを照明する光源としての表示板用発光ダイオード16を備えている。
【0017】
指針7は、無色透明な合成樹脂からなる指示部6の他に、指針軸17と、遮光性の合成樹脂からなる指針キャップ18を備えている。指示部6の裏面には白色の箔(図示せず)がホットスタンプされており、昼間など周囲が明るい時は指示部6が白色で視認される。また、夜間など周囲が暗い時に例えば白色で発光する指針用発光ダイオード15が点灯した際も、指示部6に導かれた光が白色の箔に反射して指示部6が白色で視認されるようになっている。
【0018】
保持部材10は、遮光性のある白色の合成樹脂からなり、外周壁19と、表示板9が載置される載置部20と、指針用発光ダイオード15を囲む筒部21などを有している。
【0019】
表示板9は、無色透明な基板22の表面側に例えば青色の透過性表示層23が印刷してある。この透過性表示層23は表示部8の色調となるとともに、グラデーションの色調となるものでもある。そして、表示部8およびグラデーション領域GAを除いた透過性表示層23上には例えば黒色の下地層24(第1の印刷層とする)が印刷によって設けてある。この下地層24は厳密に言えば、表示部8(例えば目盛)を若干太くした領域を除いて設けてある。同様に、グラデーション領域GAも若干広くした領域を除いて下地層24が設けてある。
【0020】
また、表示部8およびグラデーション領域GAを除いて下地層24を覆うように地部25となる例えば黒色の地色層26が印刷形成してある。この地色層26を設けることによって、正規寸法の表示部8およびグラデーション領域GAとなるようにしてある。なお、下地層24は前述した様にピンホールの発生などによって地部25が透けないようにするために設けるものであり、下地層24が設けられた領域を第1の領域R1とする。
【0021】
また、地色層26はグラデーションを形成するための層(第2の印刷層とする)でもある。グラデーションは、グラデーション領域GA内に於いて数字側から表示板9の中心側に向かって明度が徐々に明変化する様に、黒色のインクを例えば点状に印刷した(黒色の印刷部分が徐々に少なくなる)ものである。この黒色印刷は、表示部8周囲の地部25となる地色層26と同一工程で印刷すれば良い。本実施形態に於けるグラデーションは従来例(図7に記載)と同じため、その記載は省略する。なお、本実施形態に於いてはグラデーション領域GAの全領域にグラデーションを形成する第2の印刷層である地色層26を設けたが、グラデーションは少なくとも境界X際に設けてあれば良く、点状の印刷が無い部分(領域)があっても良い。境界Xとは、第1の印刷層である下地層24と、この下地層24が設けられていない領域との境を指し、下地層24が設けられていない領域であってグラデーション領域GAでもある領域を第2の領域R2とする。
【0022】
また、下地層24の境界X際(境界Xに隣接する領域)は第2の領域R2側にかけて印刷密度が密から徐々に粗となる粗密領域R3としてある。詳細は図4に示す様に、丸形と菱形の組み合わせによって表示部8側から第2の領域R2側(グラデーション領域GA側)にかけて黒色の印刷部分が徐々に少なくなって粗となるものであり、印刷後の粗密領域R3は略網状の模様風となっている。
【0023】
また、表示板9の表面には無色透明な保護層27が設けてあり、中心には指針7の指針軸17が挿通される貫通穴28が形成されている。
【0024】
この様に構成した表示板9は、黒色の地部25上に青色の表示部8が視認されるとともに、グラデーション領域GAは数字(表示部8)側から表示板9の中心側に向かって黒色から徐々に青色に変化するグラデーションとして視認される。この際、境界X際の下地層24(第1の印刷層)がグラデーション領域GA側にかけて印刷部分が徐々に少なくなって粗となる粗密領域R3としてあるために、下地層24の印刷ラインが連続した直線とならないとともに、境界X際程下地層24が少ない。従って、下地層24を覆って地色層26(第2の印刷層)を設けた際、下地層24の有無によって地色層26の表面に図3に示す様に部分的に段差hが生じるが、表示板9を正面から見た際、段差hラインが連続した直線とならず、グラデーション領域GAに近づくにつれて段差hも徐々に少なくなって印刷段差が目立たなく見栄えの良い表示板を得ることができる。
【0025】
また、夜間など周囲が暗い時、表示板9の裏面側に配置した例えば白色で発光する発光ダイオード(図示せず)が点灯した際は、表示部8は青色で透過照明され、グラデーション領域GAは数字側から表示板9の中心側に向かって黒色から徐々に青色に変化するグラデーション透過照明となる。なお、粗密領域R3に於いて下地層24が設けられていない部分は地色層26のみとなる。仮に、この地色層26に部分的な透けが発生したとしても、グラデーション領域GAの周囲際であるためグラデーションの一部と見なされ、特に違和感は無い。
【0026】
また、下地層24および地色層26を遮光性の最も高い黒色としたことにより、透過部(表示部8やグラデーション領域GAなど)以外の箇所の光の透けを容易に抑えることができ、見栄えの良い表示板を得ることができる。
【0027】
なお、前記実施形態に於いては表示部8を設けた表示板9としたが、表示部が無いグラデーションのみの表示板であっても良い。また、下地層24および地色層26は必ずしも黒色である必要はなく、重ねることによって遮光されるなら色調は任意であり、それぞれ異なった色でも良い。
【0028】
また、透過性表示層23を無色透明な基板22の表面側に設けたが裏面側であっても良く、あるいは基板を着色透過材として透過性表示層を省いても良い。また、粗密領域R3が略網状の模様となるようにしたが、印刷密度が密から徐々に粗となる様になっていれば印刷形状などは丸形や菱形に限らず任意であるが、形状を問わず略網状の模様である方が地色層26を設けた際、地色層26表面の段差hラインが連続した直線で現れず印刷による段差が目立ちにくい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の表示板を適用した計器装置の正面図。
【図2】同計器装置の部分断面図(図1に於けるA−A断面)。
【図3】同計器装置に用いられる表示板の部分断面図。
【図4】同計器装置に用いられる表示板の粗密領域を示す部分詳細図。
【図5】従来の表示板を示す正面図。
【図6】同表示板の部分断面図。
【図7】同表示板のグラデーションを示す部分詳細図。
【符号の説明】
【0030】
8 表示部
9 表示板
GA グラデーション領域
22 基板
23 透過性表示層
24 下地層(第1の印刷層)
26 地色層(第2の印刷層)
R1 第1の領域
R2 第2の領域
X 境界
R3 粗密領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上の第1の領域に設けられた第1の印刷層と、この第1の印刷層が設けられていない第2の領域との境界および前記第1の印刷層を覆い、前記第2の領域の少なくとも前記境界際にグラデーションを形成する第2の印刷層とを備えた表示板において、前記第1の印刷層の前記境界際を前記第2の領域側にかけて印刷密度が密から徐々に粗となる粗密領域としたことを特徴とする表示板。
【請求項2】
基板と、この基板上に設けた透過性着色層と、この透過性着色層上の第1の領域に設けられた第1の印刷層と、この第1の印刷層が設けられていない第2の領域との境界および前記第1の印刷層を覆い、前記第2の領域の少なくとも前記境界際にグラデーションを形成する第2の印刷層とを備えた表示板において、前記第1の印刷層の前記境界際を前記第2の領域側にかけて印刷密度が密から徐々に粗となる粗密領域としたことを特徴とする表示板。
【請求項3】
前記粗密領域が網状の模様からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示板。
【請求項4】
前記第1の印刷層および前記第2の印刷層を黒色としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−79324(P2007−79324A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269337(P2005−269337)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】