説明

表示素子、表示素子積層体及び表示装置

【課題】低い電圧により駆動して表示が可能な表示素子を提供すること。
【解決手段】電圧の印加により互いの距離が変化するように設けられた一対の導電層11、31と、有色流体61が収容された光透過部41a、41bを有する容器41とを備え、一対の導電層11、31と容器41が、電圧の印加により導電層11、31間の距離が変化すると共に、光透過部41a、41bに存在する有色流体61の量が増減するように配置され、一対の導電層11、31は、絶縁材料からなる絶縁部51を介して部分的に近接し、かつ、絶縁部51における導電層11、31間の距離が50μm以下であることを特徴とする表示素子10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーに利用できる表示素子、表示素子積層体及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパーの表示方式においては、液晶、有色液体、マイクロカプセル、電子粉流体、クロミズムを示す物質、有機エレクトロルミネッセンス、液体レンズ等を用いた様々な方法の応用が検討されている。
【0003】
電子ペーパーは、その用途によって優先される要求特性が異なる。たとえば、電子新聞、電子書籍等に用いられる電子ペーパーにおいては、視認性、書き換え性、記録保持性、可搬性、薄型性が重要視され、また、カラー表示が要求される場合もある。一方、屋外で使用されるポスター、案内板、時刻表等に用いられる電子ペーパーにおいては、紫外線、温度変化、湿度などに対する耐久性、カラー表示、大型化が重要視されている。いずれの用途であっても、電子ペーパーにおいては、紙と同等の視認性を実現すること、が特に求められている。
【0004】
表示素子において、表示面の輝度を得る方法としては、光を反射させる方法(反射光による視認)又は光を透過させる方法(透過光による視認)が挙げられる。
また、従来の表示素子においては、カラー表示が要求される場合、光の3原色若しくは色の3原色に相当する3色の単色素子を一組として同一面に複数配列して1つのカラー表示素子集合体を作製し、これら3原色の組み合わせにより発色を行うカラー表示方法が一般的に用いられている。
【0005】
これまでに、電子ペーパー等として利用できる表示素子及び表示装置として具体的には、表示面部材と背面部材と側面部材とで密閉された中空部が画成されたセルと、前記中空部に収容された、互いに混ざり合わず、屈折率の異なる導電性液体および絶縁性液体と、前記導電性液体と前記絶縁性液体との界面の形状を変化させる界面変更手段とを備え、前記の界面変更手段は、前記導電性液体と電気的に接触しないように前記中空部の外側に設置された第1電極と、前記導電性液体と電気的に接触するように前記中空部に少なくとも一部分が臨むように配置された第2電極とを備えたもの、が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、携帯用機器に適した表示装置として、画素を構成する複数個の画素孔と、調光液を保持する調光液保持手段と、前記調光液保持手段から前記調光液を前記画素孔に注入し前記画素孔から排出する調光液駆動手段と、を有し、前記画素孔内の前記調光液の液量を調節することにより各画素孔における外部からの入射光の反射又は散乱を調整するもの、が提案されている(特許文献2参照)。
前記画素孔内の前記調光液の液量を調節する手段として、熱による前記調光液の体積の膨張又は収縮を利用する方法、加熱手段による前記調光液保持手段(容器)に設けられた薄膜の変形を利用する方法、前記調光液保持手段(容器)に設けられた電極間に電圧を印加することにより電極同士を相対的に移動させる方法、が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−072108号公報
【特許文献2】特開2001−042794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の一般的なカラー表示方法においては、たとえば原色と同じ1色を表示するためには、1素子のみ表示させて他の2色の素子を非表示とする必要がある。かかる場合、カラー表示素子集合体における表示面の少なくとも2/3が非表示状態となっており、グラビア印刷等による印刷物や印画紙によるプリント写真の視認性に比べて、カラー画面の輝度やコントラストが劣るという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された技術においては、2種類の液体を2層構成で使用するために相応の厚さが必要となり、薄型に適さないこと;水平以外の角度に設置した場合、液体レンズ形状が変形し、焦点がずれて表示不良が起こりやすいこと;反射光のみで視認可能であるため、暗所では使用しにくいこと;表示又は非表示にかかわらず、光が必ず液体層を通過するために光が減衰し、濃淡のコントラストが得られにくいこと;表示濃度を段階的に変化させる階調表示が困難であること等の問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載された技術においては、1画素を構成する密閉容器内に、コントラストを得るために画素孔の空間とは別に該画素孔を満たすことができる量の調光液を保持する別の空間が必要なため、画素1つが嵩高くて薄型にしにくいこと、かつ、重くなりやすいこと;小さな穴から液体を注入排出させるため、素早い表示の切り替えができないこと;水平以外の角度に設置した場合、調光液が画素孔側へこぼれ出て表示を阻害する恐れがあること;反射光のみで視認可能であるため、暗所では使用しにくいこと等の問題がある。
なお、特許文献2に記載された発明には、駆動方法として熱を使用した場合の冷却方法が開示されていないこと、変形する薄膜の具体的な形状や材質が開示されていないこと等について充分に記載されているとはいえず、その実施が困難である。
さらに、特許文献2のなかで提案されているような平行に配置された電極同士を相対的に移動させる方法においては、電極間に大きな電圧(数百V〜数kV程度)を印加する必要がある。これに対して、電極間に印加するのに必要な電圧を低く抑えることができ、低い電圧により駆動して表示が可能な表示素子が望まれている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低い電圧により駆動して表示が可能な表示素子を提供することを課題とする。
また、水平以外の角度に設置でき、かつ、薄型にもでき、反射光と透過光のいずれの表示でも視認可能であって、多方面の用途に利用できる、新規な表示素子を提供することを課題とする。
また、単色表示においては、高いコントラストあるいは色濃度の階調を表現できる表示素子積層体を提供することを課題とする。
また、カラー表示においては、3原色のいずれかを表示する際に表示面全体で表示できる、すなわち、表示面において非表示部分のない表示素子積層体を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、前記表示素子又は前記表示素子積層体を使用した表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示素子は、電圧の印加により互いの距離が変化するように設けられた一対の導電層と、有色流体が収容された光透過部を有する容器とを備え、前記一対の導電層と前記容器が、電圧の印加により前記導電層間の距離が変化すると共に、前記光透過部に存在する前記有色流体の量が増減するように配置され、前記一対の導電層は、絶縁材料からなる絶縁部を介して部分的に近接し、かつ、前記絶縁部における前記導電層間の距離が50μm以下であることを特徴とする。
本発明の表示素子においては、前記容器が、電圧の印加により前記導電層間の距離が変化すると共に変形して前記有色流体の存在する量が増減する伸縮変形部をさらに有し、かつ、その前記容器が、前記導電層間に、前記光透過部に存在する前記有色流体に光が当たるように配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明の表示素子積層体は、前記本発明の表示素子が積層されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の表示装置は、前記本発明の表示素子を配列した表示素子集合体が用いられていることを特徴とする。
また、本発明の表示装置は、前記本発明の表示素子積層体を配列した表示素子集合体が用いられていることを特徴とする。
また、本発明の表示装置においては、前記表示素子集合体を積層した積層体が用いられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示素子によれば、低い電圧により駆動して表示が可能である。また、水平以外の角度に設置でき、かつ、薄型にもでき、反射光と透過光のいずれの表示でも視認可能であって、多方面の用途に利用できる。
本発明の表示素子積層体によれば、単色表示においては、高いコントラストあるいは色濃度の階調を表現できる。また、カラー表示においては、3原色のいずれかを表示する際に表示面全体で表示できる、すなわち、表示面において非表示部分のないため、輝度やコントラストを得やすい。
本発明の表示装置によれば、反射光と透過光のいずれによっても画像表示でき、水平以外の角度にも設置でき、かつ、薄型にもできる。また、単色画像表示においては、高いコントラストあるいは色濃度の階調を表現でき、カラー画像表示においては、カラー画像の輝度やコントラストを得やすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
≪表示素子≫
図1は、表示素子の一実施形態を示す概略縦断面図である。
本実施形態の表示素子10は、電圧の印加により互いの距離が変化するように設けられた一対の導電層11、31と、有色流体61が収容された光透過部41a、41bを有する容器41とを備え、一対の導電層11、31と容器41が、電圧の印加により導電層11、31間の距離が変化すると共に、光透過部41a、41bに存在する有色流体61の量が増減するように配置されている。
導電層11は、容器41側の面に絶縁層12を有し、絶縁層12と光透過部41aとは隣接している。また、導電層31と光透過部41bとは隣接している。また、導電層11は、絶縁層12側とは反対側の面に設けられた支持部材13によって固定されている。なお、図1において、支持部材13は、支持部材全体の一部を示したものである。
一対の導電層11、31は、導電層11の端部11a側で、絶縁層12の一部からなる絶縁部51を介して部分的に貼り合わされ近接している。
【0016】
なお、表示素子10は、導電層31に関し対称となるように、導電層31の容器41側とは反対側に、容器41側と同じ構成を備えている。これにより、後述するように、黒色表示と黒色非表示との切替えを素早く、円滑に行うことができる。また、表示素子10全体の形状を平板状とすることができ、表示素子10同士又は他の部材との積層等を容易に行うことができる。
すなわち、表示素子10は、導電層31の容器41側とは反対側に、電圧の印加により導電層31との距離が変化するように設けられた導電層21と、流体62が収容された光透過部42a、42bを有する容器42とを備え、導電層21と容器42が、電圧の印加により導電層21、31間の距離が変化すると共に、光透過部42a、42bに存在する流体62の量が増減するように配置されている。
導電層21は、容器42側の面に絶縁層22を有し、絶縁層22と光透過部42aとは隣接している。導電層31と光透過部42bとは隣接している。また、導電層21は、絶縁層22側とは反対側の面に設けられた支持部材23によって固定されている。なお、図1において、支持部材23は、支持部材全体の一部を示したものである。
導電層21と導電層31は、導電層21の端部21a側で、絶縁層22の一部からなる絶縁部52を介して部分的に貼り合わされ近接している。
本実施形態の表示素子10においては、絶縁層12を有する導電層11と、導電層31と、絶縁層22を有する導電層21とがZ型に組まれて一組の電極を構成している。
【0017】
<電極>
本実施形態の表示素子10において、一対の導電層11、31は、導電層31の一辺と、導電層11の端部11aとが絶縁部51を介して、部分的に貼り合わされ近接している。
また、導電層21と導電層31は、導電層31の導電層11と貼り合わされている一辺と対向する一辺と、導電層21の端部21aとが絶縁部52を介して、部分的に貼り合わされている。
【0018】
本発明において「絶縁部における導電層間の距離」とは、絶縁部で貼り合わされている導電層同士が最も近接している所の導電層間の距離をいう。
本発明においては、絶縁部における導電層間の距離が50μm以下であり、3〜30μmであることが好ましい。当該導電層間の距離が上限値以下であることにより、表示素子を駆動する際、電極間に印加するのに必要な電圧を低く抑えることができる。
本実施形態の表示素子10において、「絶縁部における導電層間の距離」は、絶縁部51で最も近接している導電層11、31間の距離を意味し、本実施形態の場合、ほぼ絶縁層12の厚さとなる。
【0019】
導電層11と導電層21は、支持部材13と支持部材23によってそれぞれ固定されている。導電層31は、電圧の印加により、導電層11側又は導電層21側へそれぞれ移動できるように設けられている。
さらに、一対の導電層11、31および導電層21、31は、それぞれ、絶縁部51、52を介して貼り合わされた状態を保ちながら、電圧の印加により互いに接近したり又は離れたり移動可能な状態で貼り合わされ近接している。
【0020】
(導電層)
導電層11、21、31の厚さは0.001〜1μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。導電層の厚さが下限値以上であると、導電率が低くなりすぎるのを防止でき、導電層全体に渡ってより均一な導電性を示すようになる。一方、上限値以下であると、導電層が変形しにくくなるのを防止でき、低い電圧により表示素子を駆動しやすくなる。
【0021】
本実施形態の表示素子10において、導電層11、21、31は光透過性の材料からなる。すなわち、導電層11、21、31は、いずれも透明である。
光透過性の材料は、電気伝導性を有するものであれば特に制限はなく、たとえば酸化インジウムすず(ITO)、酸化亜鉛、酸化すず等の一般的な材料から適宜選択することができる。
【0022】
導電層31における「端部11a−端部21a方向の長さ」は、導電層11の導電層31と貼り合わされている一辺と直行する方向の一辺の長さと、導電層11、21間の距離分の長さとを少なくとも足し合わせた長さになっている。導電層31は、絶縁部51、52間でたるむような状態で設けられている。
【0023】
(絶縁層)
絶縁層12、22の厚さは3〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。絶縁層の厚さが下限値以上であると、絶縁層を形成する膜の強度がより高まり、上限値以下であると、膜の変形に必要な力を小さく抑えることができ、低い電圧により表示素子を駆動しやすくなる。
【0024】
絶縁層12、22は絶縁材料からなる。
本実施形態の表示素子10において、絶縁層21、22の一部は、絶縁部51、52をそれぞれ形成している。
表示素子10において、絶縁部51における導電層11、31間の距離は、絶縁層12の厚さにほぼ等しい。絶縁部52における導電層21、31間の距離は、絶縁層22の厚さにほぼ等しい。
【0025】
また、絶縁層12、22を導電層11、21上に設けることにより、放電の防止、導電層の変質防止、導電層の保護等が図られる。
【0026】
本実施形態の表示素子10において、絶縁層12、22は光透過性の絶縁材料からなる。すなわち、絶縁層12、22は、いずれも透明である。
絶縁材料は、耐電圧、酸素等の電極の変質を促進するガスのバリア性、本実施形態においては可視光の光透過性があれば特に制限はなく、膜形成若しくはフィルム形成のしやすさ、入手のしやすさ等から、たとえばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン等から適宜選択することができる。
【0027】
絶縁層12、22を導電層11、21上に設けるには、溶媒キャスティング、単量体を塗工して重合を行う方法、CVD法等によって、導電層11、21上に直接、前記絶縁材料の膜を形成してもよい。また、前記絶縁材料のフィルムを予め形成し、当該フィルムを導電層11、21上に熱圧着したり、適当な接着剤を用いて貼付したりしてもよい。また、前記絶縁材料のフィルム上に、スパッタリングにより金属薄膜を形成してもよい。
【0028】
(支持部材)
本実施形態の表示素子10において、支持部材13、23は、導電層11および導電層21を固定するために用いられている。
本実施形態の表示素子10において、支持部材13、23は光透過性の材料からなる。すなわち、支持部材13、23は、いずれも透明である。
光透過性の材料は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等から適宜選択することができる。
【0029】
<容器>
本実施形態の表示素子10において、容器41は、光透過部41a、41bと、電圧の印加により導電層11、31間の距離が変化すると共に変形して有色流体61の存在する量が増減する伸縮変形部41cとを有している。伸縮変形部41cは、容器41の導電層11、31間の外側を形成している。
伸縮変形部41cは、導電層11、31が互いに接近する(導電層31が導電層11に接近する)と、有色流体61が伸縮変形部41cへ移動して、伸縮変形部41cは膨らんでその容積が大きくなる。これにより、光透過部41a、41bに存在する有色流体61の量が減少する。
一方、伸縮変形部41cは、導電層11、31が互いに離れる(導電層31が導電層11から離れる)と、膨らんだ状態から縮もうとしてその容積が小さくなる。これにより、伸縮変形部41cから光透過部41a、41bへ有色流体61が移動する。
また、容器41は、導電層11、31間に、光透過部41a、41bに存在する有色流体61に光が当たるように配置されている。かかる構造とすることにより、導電層11、31間に有色流体61を従来よりも多量に存在させることができるため、表示濃度をより高くできる。これにより、きれいなカラー表示を実現できる。また、紙と同等の視認性のレベルに、より近づけることができる。
【0030】
また、本実施形態の表示素子10において、容器42は、光透過部42a、42bと、電圧の印加により導電層21、31間の距離が変化すると共に変形して流体62の存在する量が増減する伸縮変形部42cとを有している。伸縮変形部42cは、容器42の導電層21、31間の外側を形成している。
導電層11、31が互いに接近すると、導電層21、31は互いに離れ(導電層31が導電層21から離れ)、伸縮変形部42cは縮もうとしてその容積が小さくなる。これにより、伸縮変形部42cから光透過部42a、42bへ流体62が移動する。
一方、導電層11、31が互いに離れると、導電層21、31は互いに接近し(導電層31が導電層21に接近し)、流体62が伸縮変形部42cへ移動して、伸縮変形部42cは膨らんでその容積が大きくなる。これにより、光透過部42a、42bに存在する流体62の量が減少する。
また、容器42は、導電層21、31間に、光透過部42a、42bに存在する流体62に光が当たるように配置されている。
表示素子10において、光透過部41a、41b、42a、42bは、表示素子10の高さ方向で全て揃うように配置されている。また、光透過部41a、42aは絶縁層12、22と、光透過部41b、42bは導電層31と、それぞれ接触している領域全体が透明である。
【0031】
容器41、42は、たとえば、光透過性と伸縮変形性の両方の性質を併せ持つ単一の材料を用いて形成されたものであってもよく、光透過性の材料と伸縮変形性の材料とをそれぞれ用いてこれらを融着若しくは接着剤等の接合材を介して接合する方法などにより形成されたものであってもよい。
本実施形態の表示素子10において、光透過部41a、41b、42a、42bは光透過性の材料を用いて形成され、伸縮変形部41c、42cは伸縮変形性の材料を用いて形成され、これらが熱融着により接合されている。
【0032】
容器41、42を構成する材料全般に求められる特性としては、密閉性を確保できること;容器41、42の内部に収容される有色流体61、流体62に溶解しないこと;有色流体61、流体62を漏出させないこと;有色流体61、流体62を変質させないこと;前記電極に生じる電界を遮らないこと等が挙げられる。
また、これらに加えて、光透過性の材料には可視光を透過すること、伸縮変形性の材料には変形性、伸縮性、適度な復元性を有していること、がそれぞれ求められる。
【0033】
光透過性の材料:
光透過性の材料は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂;低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の各種ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニルサルフォン(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂、AS樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂その他各種の有機高分子共重合体、又はブレンドポリマー、ジメチルシリコーン等のシリコーン系樹脂、各種ガラス等から適宜選択することができる。
【0034】
伸縮変形性の材料:
伸縮変形性の材料は、たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン類若しくは環状ポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン等の塩素化ポリオレフィン類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリフェニルサルフォン(PPS)、エチレンビニルアルコール共重合体等の樹脂類を構成する繰返し単位を提供するビニル重合性単量体を2種以上組み合わせて共重合した樹脂類;ナイロン等のポリアミド、セルロイド類、ブチルゴム等のゴム、ジメチルシリコーン等のシリコーン系樹脂、又はこれら各種高分子を構成する繰返し単位を提供するビニル重合性単量体を2種以上組み合わせて共重合した共重合体、ブレンドポリマー等から適宜選択することができる。
【0035】
光透過性と伸縮変形性の両方の性質を併せ持つ単一の材料:
当該単一の材料は、上述した他の材料に比べて、容器の製造が複雑にならず、接合部の劣化に起因する耐久性能の低下が起こりにくく、廃棄時のリサイクルがしやすい等の点から好ましい。
かかる単一の材料は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリプロピレン(PP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニルサルフォン(PPS)等の各種有機高分子材料その他各種の有機高分子共重合体、又はブレンドポリマー、ジメチルシリコーン等のシリコーン系樹脂等から適宜選択することができる。なかでも、特に透明性の高いポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が好ましい。
【0036】
接合材:
接合材は、上記材料に適した汎用の接着剤を使用することができる。
かかる接合材は、たとえば、メラミン系、フェノール系又はエポキシ系等の熱硬化性樹脂系接着剤;天然ゴム、合成ゴム等のエラストマー系接着剤;シリカ系接着剤;アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エチレン−酢酸ビニル系、塩化ビニル樹脂溶剤系、酢酸ビニル樹脂系、シアノアクリレート樹脂系、スチレン−ブタジエン樹脂系又はニトリルゴム系等の各種樹脂系接着剤;各種ホットメルト接着剤等から適宜選択することができる。
【0037】
容器41、42を、光透過性の材料と伸縮変形性の材料とを用いて形成する場合、たとえば、両方の材料同士を、熱融着、溶剤溶着、接合材接着、圧着等から選択される1方法又は2以上の方法の組合せにより密着固定することにより、容器41、42内部の中空部の密閉性を保つことができる。
また、容器41、42内部に収容する有色流体61、流体62の流動性を補助するために、容器41、42の内壁面全体に、表面エネルギーを低くするような撥水処理等の表面処理を施すことが好ましい。具体的には、化学気相成長(CVD)法等を利用することにより、シリコーン樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の薄膜を、容器41、42の内壁面全体に形成してもよい。
【0038】
(流体)
本発明において「有色流体」とは、黒、青、赤、黄、白などの色を呈するような可視光線の特定波長を吸収・反射する流体だけでなく、透過若しくは反射する光の諸性質(たとえば、強度、波長、偏光性など)を変化させる性質を持つ流体も包含するものとする。
本発明においては、有色流体と共に、無色透明の流体を併用してもよい。また、流体として液体を用いてもよく、気体を用いてもよく、液体と気体をそれぞれ別の容器に収容して併用してもよい。なかでも、充分な遮蔽性が得られやすく、高い表示濃度を実現しやすいことから、液体が好ましい。
本実施形態の表示素子10において、容器41には、有色流体61として黒色不透明の液体が収容され、容器42には、流体62として透明無色の液体が収容されている。
【0039】
たとえば、有色流体61として有色液体を用いる場合、有色液体は、経時的な変質や変色が起こりにくい化学的に安定な液状物質であること、気化しにくいこと、表示の応答性を良くするために粘度が低いこと;容器41、42の外形を保持する補助力のために適度な凝集力や表面張力を有する材質であること;容器41、42を介して配置される前記電極に生じる電界を妨げないこと等を満足するものが好ましい。
【0040】
液体の着色方法については、液体を構成する物質自体が有色であるものを用いてもよく、顔料又は染料などの着色剤を液媒に分散することにより着色してもよい。
液媒としては、たとえば水、グリセリン、エチレングリコール、ブタノール、1−プロパノール等の炭素数3以上のアルコール類などの親水性物質の単体若しくはその混合物;各種飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸等、前記アルコール類のエステル、前記飽和脂肪酸のエステル若しくは不飽和脂肪酸のエステル等の疎水性物質の単体若しくはその混合物が挙げられる。
顔料としては、無機顔料、有機顔料のいずれも区別無く用いることができ、たとえば、亜鉛華、二酸化チタン等の白色顔料;酸化鉄赤、キナクリドン等の赤色顔料;亜鉛黄、キノフタロン等の黄色顔料;プロシア青、フタロシアニン等の青色顔料;カーボンブラック等の黒色顔料などが挙げられる。
染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、建染染料、分散染料、反応染料、蛍光増白染料などが挙げられる。
波長変換性のある液体としては蛍光物質分散液等;偏光性のある液体としてはフタロシアニン系液晶、ビフェニル系液晶等の各種の液晶物質が好適に使用される。特に、表面張力が高い液体として、水などの極性溶媒を使用した水溶液が好適である。
有色液体としては、たとえば、各種の金属錯体溶液、染料インク又はその水溶液若しくはその油溶液等が好適なものとして挙げられる。
【0041】
図1に示す表示素子10においては、支持部材13側から表示素子10を観測すると黒色が視認される(黒色表示状態)。
【0042】
図2は、図1に示す表示素子と同じ実施形態の異なる表示状態を示す概略縦断面図である。
図2に示す表示素子10においては、図1に示す導電層31が導電層11方向へ移動し、導電層11の全面と重なるように接近している。また、導電層11、31間に存在していた有色流体61が導電層11、31間の外側に押し出されている。
さらに、導電層31の導電層11方向への移動に伴い、導電層31が導電層21から離れることにより、伸縮変形部42cに存在していた流体62が光透過部42a、42bに移動し、流体62が導電層11、21間のほぼ全体に存在している。
図2に示す表示素子10においては、支持部材13側から表示素子10を観測すると無色が視認される(黒色非表示状態)。また、支持部材23側が透けて見えている。
すなわち、本実施形態の表示素子10は、透過光表示体であり、黒色表示、無色表示の2色表示を行うことができる。
【0043】
図3(a)は、図1に示す表示素子10を支持部材13側から観測した平面図であり、図3(b)は、図1に示す表示素子10を支持部材23側から観測した平面図である。
【0044】
図3(a)において、表示素子10の領域70(表示部)は、光透過部41aに存在している有色流体61を見ることにより黒色が視認される。領域70の周囲には、伸縮変形部42cに存在している流体62を見ることにより無色かつ透けて見える部70aと、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部70bがそれぞれ存在している。
図3(b)において、表示素子10の領域80は、光透過部42a、42bに存在している流体62を通じて、光透過部41b、41aに存在している有色流体61を見ることにより黒色が視認される。領域80の周囲には、伸縮変形部42cに存在している流体62を見ることにより無色かつ透けて見える部80aと、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部80bと、伸縮変形部42cに存在している流体62を通じて、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部80c、80dがそれぞれ存在している。
【0045】
図4(a)は、図2に示す表示素子10を支持部材13側から観測した平面図であり、図4(b)は、図2に示す表示素子10を支持部材23側から観測した平面図である。
【0046】
図4(a)において、表示素子10の領域70(表示部)は、光透過部41aには有色流体61が存在せず、光透過部42a、42bに存在している流体62を見ることにより無色が視認され、かつ、支持部材23側が透けて見えている。領域70の周囲には、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部70bが存在している。
図4(b)において、表示素子10の領域80は、光透過部42a、42bに存在している流体62を見ることにより無色が視認され、かつ、支持部材13側が透けて見えている。領域80の周囲には、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部80bと、伸縮変形部42cに存在している流体62を通じて、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部80c、80dがそれぞれ存在している。
【0047】
本実施形態の表示素子10は、たとえば以下のようにして製造できる。
絶縁層12を有する導電層11と、絶縁層22を有する導電層21と、導電層31と、有色流体61を収容した容器41と、流体62を収容した容器42を準備する。
次いで、導電層31の一辺と、導電層11の端部11aとを、熱融着又は接合材の使用等により、絶縁層12の端部11a側の一部(絶縁部51)で部分的に貼り合わせる。次に、導電層31の導電層11と貼り合わされている一辺と対向する一辺と、導電層21の端部21aとを、熱融着又は接合材の使用等により、絶縁層22の端部21a側の一部(絶縁部52)で部分的に貼り合わせる。その際、絶縁部51における一対の導電層11、31間の距離を所定の距離(50μm以下)に調整する。好ましくは、絶縁部52における導電層21と導電層31との距離も所定の距離(50μm以下)に調整する。
次いで、導電層11と導電層31との間に、容器41を、絶縁層12および導電層31とそれぞれ隣接するように配置し、また、導電層21と導電層31との間に、容器42を、絶縁層22および導電層31と隣接するように配置する。以上により、表示素子10が得られる。
【0048】
本発明の表示素子(単体)の大きさ(ただし、支持部材を除く。)は、特に制限されるものではなく、面方向として全長0.1mm程度以上200mm程度以下であることが好ましい。また、高さ方向として0.03mm程度以上1mm程度以下であることが好ましい。表示素子(単体)の大きさが前記範囲内であれば、電圧の印加により、一組の電極がより良好に移動し、表示素子の駆動に優れる。
本実施形態の表示素子10の大きさは、支持部材13側から見て、容器41と容器42の外周が形成する面(図3(a)に示す平面図;略長方形)の大きさが、約3mm×約3mm、高さ方向(導電層11と支持部材13との界面と、導電層21と支持部材23との界面との間の距離)が約0.3mmである。
【0049】
[表示素子の駆動方法]
本実施形態の表示素子10は、たとえば、黒色表示状態の表示素子10(図1)から、一対の導電層11、31間に電圧を印加することにより黒色非表示状態へ切り替えることができる。次いで、黒色非表示状態の表示素子10から、一対の導電層21、31間に電圧を印加することにより黒色表示状態へ切り替えることができる。具体的には、以下のようにして表示素子10を駆動することができる。
【0050】
図1に示す表示素子10において、導電層11に電気配線の一端を接続し、電気配線の他方の一端を、単極スイッチを介して直流電源の正極に接続する。直流電源の負極はグラウンド接続する。また、導電層31に電気配線の一端を接続し、電気配線の他方の一端を直接グラウンド接続する。
図1に示す表示素子10は、単極スイッチが開いている場合の状態と同じ状態であり、一対の導電層11、31間には、電圧が印加されていない。
導電層11、31間に静電気は発生せず、導電層11、31は静止したままである。伸縮変形部41cは変形することなく、光透過部41a、41b間は、有色流体61である黒色不透明の液体で満たされている。
かかる表示素子10は、導電層11側から観測すると黒色を表示している(黒色表示状態)。
【0051】
次に、単極スイッチを閉じて、導電層11に通電すると、一対の導電層11、31間には、電圧が印加されて電界が生じる。これにより、導電層11、31間には、導電層11と導電層31とが引き合う外力(静電力)が生じる。そして、導電層31は、絶縁部51を支点として導電層11方向へ移動し、導電層11、31の面同士が接近し、互いの距離が短くなる。導電層11、31間の距離が短くなると共に、容器41は、導電層11の面と導電層31の面とに挟まれていく。これに伴って、光透過部41a、41bに存在している有色流体61が導電層11、31間の外周に押し出される。これにより、伸縮変形部41cが変形して膨らみ、伸縮変形部41cに存在する有色流体61の量が増加すると共に、光透過部41a、41bに存在する有色流体61の量が減少し、最後には、光透過部41a、41b同士が接触して、光透過部41a、41bには有色流体61が存在しなくなる。
これと同時に、導電層31は、絶縁部52も支点として導電層21から離れ、導電層11に接近する。これに伴って、伸縮変形部42cが変形して縮もうとする力が生じることにより、伸縮変形部42cに存在していた流体62が光透過部42a、42bに移動する。
かかる表示素子10は、黒色表示状態から切り替わり、導電層11側から観測すると無色を表示している(黒色非表示状態)。また、導電層21側が透けて見えている。
なお、上述したように、電圧の印加により導電層11と導電層31との間に静電力が生じて引き合い、導電層11、31が接近し合うと、その後、単極スイッチを開いても、導電層11、31同士は長時間離れずに、黒色非表示状態が維持される。このように、本実施形態の表示素子10によれば、電圧を印加することなく、一定の表示状態をある程度保つことができるため、電気の省力化を図ることができる。
【0052】
次に、導電層21に電気配線の一端を接続し、電気配線の他方の一端を、単極スイッチを介して直流電源の正極に接続する。直流電源の負極はグラウンド接続する。また、導電層31に電気配線の一端を接続し、電気配線の他方の一端を直接グラウンド接続する。
次いで、単極スイッチを閉じて、導電層21に通電すると、一対の導電層21、31間に、電圧が印加されて電界が生じる。これにより、導電層21、31間には、導電層21と導電層31とが引き合う外力(静電力)が生じる。そして、導電層31は、絶縁部52を支点として導電層21方向へ移動し、導電層21、31の面同士が接近し、互いの距離が短くなる。導電層21、31間の距離が短くなると共に、容器42は、導電層21の面と導電層31の面とに挟まれていく。これに伴って、光透過部42a、42bに存在している流体62が導電層21、31間の外周に押し出される。
これと同時に、導電層31は、絶縁部51も支点として導電層11から離れ、導電層21に接近する。これに伴って、伸縮変形部41cが変形して縮もうとする力が生じることにより、伸縮変形部41cに存在していた有色流体61が光透過部41a、41b間に移動する。これにより、表示素子10は、黒色非表示状態から黒色表示状態へ切り替わる。
【0053】
その後、さらに、黒色非表示状態に切り替えるには、一対の導電層21、31間には電圧を印加せず、一対の導電層11、31間に電圧を印加すればよい。
このようにして、表示素子10は、黒色表示と黒色非表示との切替えを素早く、円滑に行うことができる。
【0054】
電気配線は、一般的な銅線等を用いることができ、表示素子を変形しないように設けられる。電気配線としては、別の配線との短絡を避ける点から、被覆線を使用することが好ましい。
電気配線の接続は、半田、導電性接着剤等を用いた一般的な方法を適宜採用することができる。
【0055】
単極スイッチは、手動で切り替えるような単純な構造のものであってもよく、たとえばプログラムで切り替えを制御できる電子スイッチ等であってもよい。電子スイッチ等を利用すれば、表示の切り替えをタイミングよく実行できるだけでなく、複数の表示素子を連動させて表示することもできる。また、本発明においては、実施形態に合わせて双極スイッチを用いることもできる。
【0056】
駆動電源としては、直流電源を用いてもよく、交流電源を用いてもよい。
直流電源を用いる場合、携帯性に優れることから、乾電池が好ましい。
また、交流電源を用いると、電圧の印加により規則的に電界の方向が入れ替わるため、有色流体61、流体62に残留電荷が溜まりにくく(帯電しにくく)、表示の応答性に優れる。
【0057】
本発明において、表示素子の導電層間に印加する電圧の大きさは、特に制限はなく、容器の寸法、材質、肉厚;有色流体の種類、収容量などにより適宜設定すればよく、概ね、5〜300[V]が好ましく、5〜200[V]がより好ましく、5〜50[V]がさらに好ましい。
当該電圧の大きさが下限値以上であると、導電層が良好に移動し、容器の光透過部に存在する流体の量を調整しやすくなる。上限値以下であると、放電を抑制でき、たとえば表示素子を表示素子積層体あるいは表示装置に利用した際、他の表示素子への電界の干渉をより小さくできる。
【0058】
上述したように、本実施形態の表示素子10は、単極スイッチを切り替えることにより、導電層11、31間の距離が変化すると共に伸縮変形部41cが変形し、これに連動して、光透過部41a、41bに存在する有色流体61の量が増減することで、黒色表示又は黒色非表示を交互に行うことができる。
【0059】
以上説明した、本実施形態の表示素子10によれば、低い電圧により駆動して表示が可能である。かかる効果が得られる理由は以下の通りである。
たとえば、導電層同士を、絶縁部を介して部分的に貼り合わせることなく、平行に配置したような一組の電極を用いた従来の表示方式においては、導電層を動かすのに、電極間に数百V〜数kV程度の電圧を印加する必要があった。これに対して、本実施形態の表示素子10によれば、30〜200[V]の電圧を印加することにより導電層31を導電層11方向へ動かすことができる。
表示素子10において、一対の導電層11、31は、絶縁材料からなる絶縁部51を介して部分的に貼り合わされ近接している。また、絶縁部51における導電層11、31間の距離が50μm以下である。
一対の導電層11、31には、電圧の印加により、導電層11、31間に引き合う外力(静電力)が生じる。そして、絶縁部51における導電層11、31間の距離が50μm以下であることにより、弱い静電力であっても、絶縁部51付近の導電層11、31は近接しているため、互いに接近するように動き出すことができる。そして、いったん動き出した導電層11、31間には、絶縁部51を支点として一気に引き合う大きな力が生じるため、かかる効果が得られると推測される。
なお、導電層21と導電層31との間についても同様の作用が生じると推測される。
【0060】
また、一対の導電層11、31は絶縁部51を介して部分的に近接していることにより、導電層11、31間に、多量の有色流体61を存在させることができる。これにより、表示濃度の高い良好な表示を実現できる。これに対して、たとえば、導電層間の距離を50μm以下として一対の導電層を互いに貼り合わせることなく平行に配置した場合、導電層間の空間が狭すぎて充分な量の有色流体を存在させることが困難であり、良好な表示濃度を実現できない。
また、本実施形態の表示素子10においては、絶縁層12を有する導電層11と、導電層31と、絶縁層22を有する導電層21とがZ型に組まれて一組の電極が構成されているため、導電層同士の接近により、導電層11、31間、導電層21、31間に存在している有色流体61、流体62が押し出されやすい。これにより、これら流体が導電層間に残りにくいため、表示の切り替えを良好に行うことができる。
また、膨らんだり縮んだり変形可能な伸縮変形部41c、42cを容器41、42が有することにより、有色流体61、流体62が移動しやすい。これにより、表示の切り替えが良好であり、特に、図2の表示状態から図1の表示状態への切り替えを良好に行うことができる。
【0061】
また、本発明の表示素子によれば、流体が収容された容器を用いているため、たとえば流体として液体が用いられていても、こぼれ出たりなどして表示を阻害することがなく、傾斜した面などの水平以外の場所にも設置できる。
また、表示素子においては、一対の導電層間に容器が配置された構造であるため、導電層間の間隔を調整することにより薄型にもできる。
また、表示素子は、全ての導電層が光透過性の材料からなる場合、透過光による表示の視認が可能である。また、表示素子を積層して用いることができる。さらに、表示素子は、導電層の材料を適宜選択することにより、反射光と透過光のいずれの表示でも視認可能であって、多方面の用途に利用できる。
【0062】
また、本発明の表示素子によれば、表示装置の表示品質が向上する。かかる効果が得られる理由は以下の通りである。表示素子は、シート状等の基材(プラスチック、セラミックス、木材、紙、金属等の材料から選択されるもの)上に設置できる。この基材上に設置された表示素子の構造は、たとえば紙にインクが付着している印刷物の形態に近い。そのため、紙と同等の視認性を実現できる等、表示品質が向上すると考えられる。
さらに、表示素子は、設置場所の傾斜を気にすることなく、透過光又は反射光の採光条件に合わせた設計とすることができるため、多方面の用途に応用できる。なかでも、表示素子は、電子ペーパー用として特に好適である。
【0063】
なお、本発明の表示素子は、図1に示す表示素子10に限定されず、たとえば図5〜11に示す表示素子であってもよい。
【0064】
図5は、図1に示す表示素子と同じ実施形態の異なる表示状態を示す概略縦断面図である。
図5に示す表示素子10においては、図1に示す導電層11、21、31が互いに接近して、導電層11、31間、導電層21、31間に存在する有色流体61、流体62が導電層11、31、導電層21、31の外周にそれぞれ押し出されている。
図5に示す表示素子10においては、支持部材13側から表示素子10を観測すると無色が視認される(黒色非表示状態)。また、支持部材23側が透けて見えている。
すなわち、本実施形態の表示素子10は、透過光表示体であり、黒色表示、無色表示の2色表示を行うことができる。
【0065】
図6(a)は、図5に示す表示素子10を支持部材13側から観測した平面図であり、図6(b)は、図5に示す表示素子10を支持部材23側から観測した平面図である。
【0066】
図6(a)において、表示素子10の領域70(表示部)は、光透過部41a、41bと光透過部42a、42bには、有色流体61と流体62がいずれも存在しないことにより無色が視認され、かつ、支持部材23側が透けて見えている。領域70の周囲には、伸縮変形部42cに存在している流体62を見ることにより無色かつ透けて見える部70aと、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部70bがそれぞれ存在している。
図6(b)において、表示素子10の領域80は、光透過部42a、42bと光透過部41a、41bには、流体62と有色流体61がいずれも存在しないことにより無色が視認され、かつ、支持部材13側が透けて見えている。領域80の周囲には、伸縮変形部42cに存在している流体62を見ることにより無色かつ透けて見える部80aと、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部80bと、伸縮変形部42cに存在している流体62を通じて、伸縮変形部41cに存在している有色流体61を見ることにより黒色に見える部80c、80dがそれぞれ存在している。
【0067】
図7は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図である。
図7に示す表示素子10においては、導電層11と、絶縁層32および絶縁層33をそれぞれの面に有する導電層31と、導電層21とがZ型に組まれて一組の電極を構成している。
一対の導電層11、31は、導電層31の一辺と、導電層11の端部11aとが絶縁層33の一部からなる絶縁部53を介して、部分的に貼り合わされ近接している。
また、導電層21と導電層31は、導電層31の導電層11と貼り合わされている一辺と対向する一辺と、導電層21の端部21aとが絶縁層32の一部からなる絶縁部54を介して、部分的に貼り合わされ近接している。
導電層11、31および導電層21、31は、それぞれ、貼り合わされた状態を保ちながら、電圧の印加により互いに接近したり又は離れたり移動可能な状態で貼り合わされ近接している。
本実施形態の表示素子10において、絶縁部53における導電層11、31間の距離は、絶縁層33の厚さにほぼ等しい。絶縁部54における導電層21、31間の距離は、絶縁層32の厚さにほぼ等しい。
容器41は、光透過部41a、41bと伸縮変形部41cとを有し、導電層11、31間に配置されている。光透過部41aは導電層11と隣接し、光透過部41bは絶縁層33と隣接し、伸縮変形部41cは導電層11、31間の外側に位置している。
容器42は、光透過部42a、42bと伸縮変形部42cとを有し、導電層21、31間に配置されている。光透過部42aは導電層21と隣接し、光透過部42bは絶縁層32と隣接し、伸縮変形部42cは導電層21、31間の外側に位置している。
光透過部41a、41b、42a、42bは、表示素子10の高さ方向で全て揃うように配置されている。
図7に示す表示素子10においては、導電層11、21、31と絶縁層32、33がいずれも透明であり、導電層11側から観測すると黒色が視認される(黒色表示状態)。
【0068】
図8は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図である。
図8に示す表示素子10においては、導電層11と、導電層31と、導電層21とがZ型に組まれて一組の電極を構成している。
一対の導電層11、31は、導電層31の一辺と、導電層11の端部11aとが接着剤からなる絶縁部55を介して、部分的に貼り合わされ近接している。
また、導電層21と導電層31は、導電層31の導電層11と貼り合わされている一辺と対向する一辺と、導電層21の端部21aとが接着剤からなる絶縁部56を介して、部分的に貼り合わされ近接している。
導電層11、31および導電層21、31は、それぞれ、貼り合わされた状態を保ちながら、電圧の印加により互いに接近したり又は離れたり移動可能な状態で貼り合わされ近接している。
本実施形態の表示素子10において、絶縁部55における導電層11、31間の距離は、導電層11の端部11aと、導電層31の端部31bとが最も近接している所の導電層11、31間の距離をいう。絶縁部56における導電層21、31間の距離は、導電層21の端部21aと、導電層31の端部31aとが最も近接している所の導電層21、31間の距離をいう。
容器41は、光透過部41a、41bと伸縮変形部41cとを有し、導電層11、31間に配置されている。光透過部41aは導電層11と隣接し、光透過部41bは導電層31と隣接し、伸縮変形部41cは導電層11、31間の外側に位置している。
容器42は、光透過部42a、42bと伸縮変形部42cとを有し、導電層21、31間に配置されている。光透過部42aは導電層21と隣接し、光透過部42bは導電層31と隣接し、伸縮変形部42cは導電層21、31間の外側に位置している。
光透過部41a、41b、42a、42bは、表示素子10の高さ方向で全て揃うように配置されている。
導電層11、31、導電層21、31を貼り合わせている接着剤は、絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、導電層11、21、31の材料に合わせて適宜選択して用いればよい。たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブタジエン樹脂等が挙げられる。
図8に示す表示素子10においては、導電層11、21、31がいずれも透明であり、導電層11側から観測すると黒色が視認される(黒色表示状態)。
【0069】
図9は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図である。
図9に示す表示素子10においては、絶縁層22を有する導電層21と、絶縁層32を有する導電層31との間に、有色流体63が収容された容器43が配置されている。
一対の導電層21、31は、絶縁層22の端部22aと、絶縁層32の端部32aとが融着した絶縁部57を介して、部分的に貼り合わされ近接している。
絶縁部57で貼り合わされている導電層21、31は、貼り合わされた状態を保ちながら、電圧の印加により互いに接近したり又は離れたり移動可能な状態で貼り合わされ近接している。
本実施形態の表示素子10において、絶縁部57における導電層21、31間の距離は、導電層21の端部21aと、導電層31の端部31aとが最も近接している所の導電層21、31間の距離をいう。
容器43は、光透過部43a、43bと伸縮変形部43cとを有している。光透過部43aは絶縁層22と隣接し、光透過部43bは絶縁層32と隣接し、伸縮変形部43cは導電層21、31間の外側に位置している。
光透過部43a、43bは、表示素子10の高さ方向で全て揃うように配置されている。
図9に示す表示素子10においては、導電層21、31と絶縁層22、32がいずれも透明であり、導電層31側から観測すると黒色が視認される(黒色表示状態)。本実施形態の表示素子10は、黒色表示、無色表示の2色表示を行うことができる。
【0070】
また、本発明の表示素子としては、図9に示す表示素子10において絶縁層22、32のいずれか一方を欠く実施形態の表示素子も挙げられる。かかる実施形態の表示素子は、図1に示す表示素子10における導電層31の容器41側の構成と同様の構成を備えたものである。
【0071】
また、本発明の表示素子においては、導電層が、容器の一部を構成していてもよい。
かかる表示素子として具体的には、図1に示す表示素子10において、絶縁層12を有する導電層11と導電層31の外周(ただし、導電層11と導電層31との貼り合わせ部を除く。)に、伸縮変形部41cと同様の伸縮変形部が設けられた容器、すなわち、絶縁層12を有する導電層11と、導電層31と、伸縮変形部41cと同様の伸縮変形部とに囲まれた空間を持つ容器に、有色流体61が収容された表示素子が挙げられる。
かかる表示素子は、導電層31の容器41側とは反対側に、絶縁層22を有する導電層21と、導電層31と、伸縮変形部42cと同様の伸縮変形部とに囲まれた空間を持つ容器を備えていてもよい。
【0072】
図10(a)は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図であり、図10(b)は、図10(a)に示す表示素子10を光透過部48側から観測した平面図である。
【0073】
図10(a)に示す表示素子10は、絶縁層12を有する導電層11と、導電層31と、絶縁層22を有する導電層21とがZ型に組まれた一組の電極と、有色流体64が収容された光透過部48を有する容器44とを備えている。
当該一組の電極は、容器44内に配置され、図1に示す表示素子10における一組の電極と同様の構成を有している。導電層11と絶縁層12には多孔質体が用いられており、有色流体64が導電層11と絶縁層12をそれぞれ透過できるようになっている。
容器44は、光透過部48と基材47とで囲まれた空間(以下「空間(a)」という。)と、有色流体64が収容され、当該一組の電極が配置された空間(以下「空間(b)」という。)とを有し、空間(a)と空間(b)は、高さ方向で隣接している。
表示素子10においては、電圧の印加により導電層11、31間、導電層21、31間の距離が変化すると共に、空間(a)に存在する有色流体64の量が増減するように、当該一組の電極が容器44内に配置されている。
【0074】
空間(a)は、光透過部48を底面とした逆円錐形状の空間であり、光透過部48と対向する基材47の中央(逆円錐形の頂点に対応)に開口部49を有している。空間(a)と空間(b)は、開口部49で連通している。
基材47の光透過部48側の表面(逆円錐形の側面に対応)には、光透過部48を透過してきた光の反射又は散乱を制御する保護膜46が設けられている。
空間(b)において、導電層11は、その外周を、容器44から突起する突起面44aによって囲まれるようにして支持されている。また、導電層21は、その外周を、突起面44aの根元部に外周が固定された樹脂膜45によって、囲まれるようにして支持されている。導電層21は、容器44の内側底面に接している。
【0075】
光透過部48は光透過性の材料からなり、上述した光透過性の材料から適宜、選択して用いればよい。
保護膜46は、たとえばフッ素樹脂を用いたものが挙げられる。
樹脂膜45は、樹脂材料を、たとえば有色流体64又は導電層21の材料に合わせて適宜、選択して用いればよい。
【0076】
図10(b)において、表示素子10の領域71は、開口部49に見えている有色流体64の存在により黒色が視認される。領域71の周囲には、反射光により白色に見える部81が存在している。
【0077】
図11(a)は、図10に示す表示素子と同じ実施形態の異なる表示状態を示す概略縦断面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す表示素子10を光透過部48側から観測した平面図である。
【0078】
図11(a)に示す表示素子10においては、一組の電極間に電圧が印加されることにより、図10(a)に示す導電層31、21が重なるようにして導電層11方向へ移動するのに伴って、樹脂膜45と導電層21とから形成される面全体が空間(a)方向へ移動し、空間(b)の容積が減少している。これによって、空間(b)に収容されていた有色流体64が、開口部49を通り抜けて、空間(a)に流れ込んでいる。
【0079】
図11(b)において、表示素子10の領域71は、空間(a)に流れ込んだ有色流体64の存在により、図10(b)に比べて広い領域で黒色が視認される。領域71の周囲には、反射光により白色に見える部81が存在している。
【0080】
なお、図11(a)に示す表示素子10において、電圧の印加が解除されると、導電層11、31間、導電層21、31間に生じていた引き合う外力(静電力)が働かなくなり、樹脂膜45と導電層21とから形成される面全体がそれ自身の質量や樹脂膜の弾性によって、容器44の内側底面方向へ移動して、図10(a)に示す表示素子10の表示状態に戻る。
【0081】
このように、図10、11に示す実施形態の表示素子10は、空間(a)に存在する有色流体64の量を増減させて、保護膜46の有色流体64により覆われる面積を制御することにより表示を行うことができる。かかる実施形態の表示素子10によれば、細かく異なる像の表示が可能であり、また、像を連続的に表示できる。
【0082】
また、本発明の表示素子を反射光表示体として利用する場合、たとえば図1に示す表示素子10における導電層21は、必ずしも光透過性の材料からなるものである必要はなく、その材料を適宜選択することができる。
光透過性の材料からなる必要のない導電層の材料は、電気伝導性を有するものであれば特に制限はなく、たとえば銅、アルミニウム、ニッケル、クロム等の金属単体;ステンレス等の合金、カーボン等から適宜選択することができる。
なかでも、特に表示素子における光の反射効果や遮蔽効果がより高いことから、光反射性の高いアルミニウム、ニッケル、クロム等;光吸収性の高いカーボンが好ましい。
また、これらに加えて、酸化インジウムすず(ITO)、酸化亜鉛、酸化すず等の光透過性の材料を適宜用いてもよい。
【0083】
また、本発明の表示素子を反射光表示体として利用する場合、たとえば図1に示す表示素子10における容器42の光透過部42aは、必ずしも光透過性である必要はなく、光不透過性の材料から形成されていてもよい。
光不透過性の材料としては、上述した光透過性の材料、伸縮変形性の材料についての説明において例示した化合物に加えて、たとえば金属、セラミックス等から適宜選択することができる。
また、光透過性の材料と顔料とを混合した材料;光透過性の材料を用いてなる基材表面を有色塗料により塗装したもの、金属蒸着したもの、有色の別の物質を表面に貼り合わせたもの等も選択することができる。
さらに、容器42として光透過性の材料と、光不透過性の材料と、伸縮変形性の材料とを融着若しくは接着剤等の接合材を介して接合する方法等により形成したものを用いてもよい。当該接着剤は、上述した<容器>のなかで説明した接合材について例示したものと同じものが挙げられる。
容器42を、光透過性の材料と光不透過性の材料と伸縮変形性の材料とを用いて形成する場合、たとえば、これらの材料同士を、熱融着、溶剤溶着、接合材接着、圧着等から選択される1方法又は2以上の方法の組合せにより密着固定することにより、容器42内部の中空部の密閉性を保つことができる。
【0084】
また、本発明の表示素子は、図1に示す表示素子10において、伸縮変形部41cを介して対向するように圧縮機構を備えたもの又は一対の導電層(以下これらをまとめて「圧縮機構等」という。)をさらに設けたものであってもよい。
当該圧縮機構を備えたものとしては、たとえば、バネ押圧により互いの距離が変化するように対向して組まれた一対の板状基材などが挙げられる。
かかる表示素子においては、導電層11、21、31間に電圧が印加されていない状態(たとえば、図1の状態)で、圧縮機構等により伸縮変形部41cの容積を減少させて、導電層11、31間に存在する有色流体61の量を増加させることにより、高い表示濃度の表示を行うことができる。すなわち、3通り以上の色表示が可能となる。
なお、圧縮機構等は、伸縮変形部42c側にも設けられていてもよい。
【0085】
また、本発明の表示素子の形状は、特に制限はなく、上述した実施形態の表示素子10の形状に限らず、多角形、円形等、適宜選択することができる。
【0086】
≪表示素子積層体≫
本発明の表示素子積層体は、上記本発明の表示素子が積層されているものである。
本発明の表示素子積層体においては、同じ実施形態の複数の表示素子を用いてもよく、異なる実施形態の複数の表示素子を組み合わせて用いてもよい。
また、表示素子の積層数は、特に制限はなく、表示すべき色の階調、色の種類等によって適宜設計することができる。
【0087】
図12(a)は、表示素子積層体の一実施形態を側面から見た模式図であり、図12(b)は、図12(a)に示す表示素子積層体の斜視図である。
本実施形態の表示素子積層体1においては、表示素子10a、10b、10cの3層がそれらの四隅に配置された柱状の積層支持部材2によってそれぞれ固定されている。
表示素子10a、10b、10cは、いずれも、図1に示す表示素子10と同じ構造を備えたものである。
本実施形態において、表示素子10a、10b、10cは、それぞれの光透過部の位置が高さ方向で全て揃うように配置されている。
【0088】
本実施形態の表示素子積層体1を、表示素子10a側から観測する表示素子積層体として用いる場合、表示素子10cの表示素子10aから最も離れた導電層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。他の導電層はいずれも透明である。
本実施形態の表示素子積層体1を、表示素子10c側から観測する表示素子積層体として用いる場合、表示素子10aの表示素子10cから最も離れた導電層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。他の導電層はいずれも透明である。
また、表示素子10aの表示素子10cから最も離れた導電層と、表示素子10cの表示素子10aから最も離れた導電層の両方が透明であると、表示素子10a側および表示素子10c側の両方から視認することができる、すなわち、表示素子積層体の両面で表示を行うことができる。
なお、本実施形態の表示素子積層体1を透過光表示体として利用する場合、表示素子10a、10b、10cにおける導電層はいずれも透明である。
【0089】
本実施形態の表示素子積層体1において、表示素子10a、10b、10cの各容器に収容される有色流体は、いずれも同じであってもよく、異なっていてもよい。
色の重ね合わせ効果が良好に得られることから、各容器に収容される有色流体は、ある程度の光透過性を有する液体であることが好ましい。なお、この場合、視認する側から見て最深層に当たる表示素子(表示素子10a又は10c)は、光透過性の低い(遮光性の高い)液体を用いてもよい。
表示素子10a、10b、10cで用いる有色流体を同じ色又は同系色とした場合、色濃度の階調を表現することができる。
表示素子10a、10b、10cで用いる有色流体を、色の3原色とした場合、カラー表示を行うことができる。
たとえば、薄い単色の流体を用いた表示素子10a、10b、10cを積層することにより、多段階の階調表示が可能である。
色の3原色の流体を用いた表示素子10a、10b、10cを積層することにより、光反射方式のカラー表示が可能である。
光の3原色の流体を用いた表示素子10a、10b、10cを積層することにより、光透過方式のカラー表示が可能である。
【0090】
また、本発明の表示素子積層体においては、表示素子の積層数は3枚に限らず自由に設計できることから、さらに表示素子の積層数を増やすことにより、表現できる階調の段階および色合いを増やすことができる。
本発明において、表示素子間の距離は、表示素子の変形が抑制され、又は表示素子ごとに生じる電界同士が影響しにくいことから、概ね1mm程度の間隔とすることが好ましい。
【0091】
(積層支持部材)
本発明において、積層支持部材は、複数の表示素子の間隔を一定に保ち、表示素子積層体の構造を保持するための部材である。積層支持部材は、表示素子が変形しない、又は表示を妨げない任意の場所に適宜設置される。
積層支持部材は、表示素子積層体1個に対して積層支持部材3個以上を設置することが好ましく、より好ましくは積層支持部材4個を設置できれば、表示素子同士の間隔をより良好に保ちながら、複数の表示素子を安定に固定することができる。
積層支持部材は、隣接する他の表示素子積層体と共用できるものが好ましい。
本実施形態の表示素子積層体1においては、積層支持部材2は3つの凸部を有しており、その3つの凸部が表示素子10a、10b、10cの端部をそれぞれ点接触で固定している。また、積層支持部材2は、1つの表示素子積層体1の四隅にそれぞれ配置され、隣接する表示素子積層体1の固定にも用いられている。
【0092】
積層支持部材2は、表示素子積層体1の構造を保持することができる材料からなるものであれば特に制限はなく、その材料としては、たとえばプラスチック、セラミックス、木材、紙、金属などから適宜選択することができる。ただし、金属を選択する場合、表示素子の電極間に生じる電界に影響したり、ショートしたりするのを防止する点から、金属材の表面を絶縁材料で被覆しておくことが好ましい。
【0093】
積層支持部材2への表示素子10a、10b、10cの固定は、熱融着、溶剤溶着、接合材又は粘着剤による接着、圧着等により行えばよい。
前記接合材又は粘着剤としては、選択した材料に適合した汎用の接着剤を使用すればよく、メラミン系、フェノール系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂系接着剤;天然ゴム、合成ゴム等のエラストマー系接着剤;シリカ系接着剤;アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エチレン−酢酸ビニル系、塩化ビニル樹脂溶剤系、酢酸ビニル樹脂系、シアノアクリレート樹脂系、スチレン−ブタジエン樹脂系、ニトリルゴム系等の各種樹脂系接着剤;各種ホットメルト接着剤等から適宜選択することができる。
【0094】
以上説明した、本発明の表示素子積層体によれば、単色又は複数色の有色流体を収容した表示素子を2層以上積層することにより、複数通りの色表示が可能となり、表示素子の単層では表現できなかった色の重ね合わせによる階調効果や混色効果を得ることができる。具体的には、単色表示においては、高いコントラストあるいは色濃度の階調を表現できる。また、カラー表示においては、3原色のいずれかを表示する際に表示面全体で表示できる、すなわち、表示面において非表示部分がないため、輝度やコントラストを得やすい、という効果が得られる。
【0095】
本実施形態の表示素子積層体1のように、2通りの色表示が可能な表示素子で構成される表示素子積層体の場合、この表示素子をn層積層することにより、最大2(2のn乗)通りの色表示、もしくは(n+1)通りの階調表示を行うことができる。本実施形態の表示素子積層体1(3層)であれば、最大8通りの色表示、もしくは4通りの階調表示を行うことができる。
また、上述のように圧縮機構等を設けることにより3通りの色表示が可能な表示素子で構成される表示素子積層体の場合、この表示素子をn層積層することにより、最大3(3のn乗)通りの色表示、もしくは[1×(n+1)]+[2×n]+[3×(n−1)]+・・・+[(n−1)×3]+[n×2]+[(n+1)×1]通りの階調表示を行うことができる。
たとえば、3通りの色表示が可能な表示素子を3層積層した表示素子積層体であれば、最大27通りの色表示、もしくは10通りの階調表示を行うことができる。また、3層積層した表示素子積層体で、CMY(シアン、マゼンタ、イエロー)の各色mレベルの階調が表現できる場合、m(mの3乗)色のカラー表示を行うことができる。
【0096】
本実施形態の表示素子積層体1においては、たとえば有色流体の色が薄い場合、「最も濃い階調」、「やや濃い階調」、「薄い階調」、「色非表示状態」の少なくとも4種類の色の階調表示を行うことができ、各層の有色流体の色が異なる場合には、混色による色相の違いも表現できる。
【0097】
図13(a)〜(h)は、それぞれ、図12に示す表示素子積層体1と同じ実施形態の異なる表示状態を側面から見た模式図である。
図13(a)〜(h)において、表示素子積層体1を構成する表示素子10a、10b、10cにおける導電層はいずれも透明である。
以下、図中に示す矢印方向から視認した場合の表示状態について説明する。
【0098】
図13(a)に示す表示素子積層体1は、表示素子が3層いずれも色非表示状態であるため、全体としても色非表示状態である。
図13(b)に示す表示素子積層体1は、表示素子が3層いずれも色表示状態であるため、表示素子10aに収容されている有色流体の色が薄い場合、表示素子3層の混色による「最も濃い階調」の色表示状態である。
図13(c)に示す表示素子積層体1は、表示素子10bのみが色非表示状態であるため、表示素子10aに収容されている有色流体の色が薄い場合、表示素子10aと表示素子10cの2層の混色による「やや濃い階調」の色表示状態である。
図13(d)に示す表示素子積層体1は、表示素子10cのみが色非表示状態であるため、表示素子10aに収容されている有色流体の色が薄い場合、表示素子10aと表示素子10bの2層の混色による「やや濃い階調」の色表示状態である。
図13(e)に示す表示素子積層体1は、表示素子10bと表示素子10cが色非表示状態であるため、表示素子10aのみの色表示状態である。表示素子10aに収容されている有色流体の色が薄い場合、最下層まで透過して見えるため、混色のない「薄い階調」の色表示状態である。
図13(f)に示す表示素子積層体1は、表示素子10aのみが色非表示状態であるため、表示素子10bに収容されている有色流体の色が薄い場合、表示素子10bと表示素子10cの2層の混色による「やや濃い階調」の色表示状態である。
図13(g)に示す表示素子積層体1は、表示素子10aと表示素子10cが色非表示状態であるため、表示素子10bのみの色表示状態である。表示素子10bに収容されている有色流体の色が薄い場合、最下層まで透過して見えるため、混色のない「薄い階調」の色表示状態である。
図13(h)に示す表示素子積層体1は、表示素子10aと表示素子10bが色非表示状態であるため、表示素子10cのみの色表示状態である。表示素子10cに収容されている有色流体の色が薄い場合、混色のない「薄い階調」の色表示状態である。
【0099】
また、本発明の表示素子積層体においては、表示素子積層体を構成する複数の表示素子の表示状態を、それぞれ独立に表示状態、非表示状態に切り替えることもできる。
また、本発明の表示素子積層体において、電気配線は、積層支持部材に埋め込まれていてもよく、積層支持部材表面にプリントされていてもよい。
【0100】
なお、本発明の表示素子積層体は、たとえば、図12に示す表示素子積層体1において、積層支持部材2の表示素子10c側の底面を基材に固定したものであってもよい。
表示素子積層体は、積層支持部材による固定だけでもその構造を保持することができるが、積層支持部材を、さらに基材に固定することで、表示素子積層体の構造をより安定に保持することができる。基材には、表示素子積層体の構造を保持する効果に加えて、基材全体の透明度、基材表面の色調又は光反射率を調整することにより、表示素子積層体の表示状態を適宜調節する表示補助効果がある。
基材の材料は、基材表面の平面性と、表示素子積層体を支持できるものであればその材質に制限はなく、たとえばプラスチック、セラミックス、木材、紙、金属などから適宜選択することができる。ただし、金属を選択する場合、表示素子の電極間に生じる電界に影響したり、ショートしたりするのを防止する点から、金属材料の表面を絶縁材料で被覆しておくことが好ましい。基材への表示素子積層体の固定は、上述した積層支持部材2への表示素子10a、10b、10cの固定の方法と同様である。
基材としては、電子ペーパーへの利用に好適であることから、シート形状のものが好ましい。
【0101】
≪表示装置≫
本発明の表示装置は、上記本発明の表示素子又は表示素子積層体を配列した表示素子集合体が用いられているものである。
また、本発明の表示装置は、前記表示素子集合体を積層した積層体が用いられているものである。
本発明の表示装置においては、同じ実施形態の複数の表示素子を用いてもよく、異なる実施形態の複数の表示素子を組み合わせて用いてもよい。表示素子積層体を用いる場合、その積層数も特に制限はなく、表示すべき色の階調、色の種類、表示すべき色の配置等によって適宜設計することができる。
また、表示素子集合体間の層間距離は、これらを構成する各表示素子の変形が抑制され、又は表示素子ごとに生じる電界同士が影響しにくい若しくは電気配線を妨げない範囲で狭い間隔をとればよく、概ね1mm程度の間隔とすることが好ましい。
【0102】
図14(a)は、表示装置の一実施形態を側面から見た模式図であり、図14(b)は、図14(a)に示す表示装置の斜視図である。
本実施形態の表示装置5には、基材3上に、複数の表示素子10が格子状に配列した表示素子集合体が用いられている。複数の表示素子10は、基材3にそれぞれ固定されている。
【0103】
図15(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図15(b)は、図15(a)に示す表示装置の斜視図である。
本実施形態の表示装置5には、基材3上に、複数の表示素子積層体1が格子状に配列した表示素子集合体が用いられている。
隣接する表示素子積層体1、1は、積層支持部材2を共用し、それぞれ積層支持部材2に固定されている。また、積層支持部材2は、基材3に固定されている。
本実施形態において、表示素子積層体1を構成する表示素子は、それぞれの光透過部の位置が高さ方向で全て揃うように配置されている。
【0104】
図14又は図15に示す表示装置5においては、基材3の両面に、複数の表示素子10又は複数の表示素子積層体1が格子状に配列した表示素子集合体が用いられているものであってもよい。
かかる場合、基材3の両面に設けられた表示素子集合体は、それぞれ独立に駆動するものであってもよく、連動して駆動するものであってもよい。具体的には、基材3が透明であれば、光透過によって、基材3の両面に設けられた表示素子集合体の積層による階調表示もしくは混色表示が可能である。基材3が不透明であれば、光反射によって、基材3の両面に設けられた表示素子集合体単独による両面独立表示が可能である。
【0105】
(基材)
基材3には、表示素子10又は表示素子積層体1(以下これらをまとめて「表示体」という。)を配列して表示装置5とする際、表示体同士の間隔や位置がずれないように固定する台座の役割と、表示体が表示する色調や光量を整える表示補助の役割がある。また、基材3は、各表示素子10を駆動するための電気配線を具備していてもよい。
基材3の材料は、上述した基材についての説明において例示したものと同様のものを用いることができる。基材3は、単一の材料から構成されている必要はなく、複数の材料から構成されていてもよい。
また、基材3は、平面であってもよく、曲面であってもよく、階段状又は球面などであってもよい。さらに、貫通孔などの加工が施されていてもよい。
なお、本発明の表示装置において、基材は必ずしも必要ではなく、省略することができる。
【0106】
たとえば、基材3に固定した表示体を、反射光で、基材3側とは反対側から視認(片面表示)する場合、基材3としては、基材3表面(表示体側の面)に、背景色で塗装又は鏡面加工等を施して反射性能を付与したものが好ましい。
また、基材3に固定した表示体を透過光で前記片面表示する場合、基材3としては、透明フィルム、ガラス、又は基材3の表示体側の面にバックライト等の自発光する構成要素を組み込んだもの等が好ましい。
また、基材3に固定した表示体を両側から視認(両面表示)する場合、基材3としては、透明フィルム、ガラス等が好ましい。
【0107】
図16(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図16(b)は、図16(a)に示す表示装置の斜視図である。
図16(c)は、表示素子集合体と遮光板とを層間支持部材を介して接合することを模式的に示した斜視図である。
本実施形態の表示装置5は、基材3と遮光板4とが層間支持部材2aを介して対向するように配置され、基材3と遮光板4は、層間支持部材2aにそれぞれ固定されている。
また、基材3上には、複数の表示素子10が層間支持部材2aにより格子状に区切られて、5列×5列で配列している。
遮光板4は、遮光部4cが表示素子10の伸縮変形部上に位置するように設けられている。
【0108】
図17(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図17(b)は、図17(a)に示す表示装置の斜視図である。
図17(c)は、表示素子集合体と遮光板とを層間支持部材を介して接合することを模式的に示した斜視図である。
本実施形態の表示装置5は、基材3と遮光板4とが対向するように配置され、基材3と遮光板4は、層間支持部材2bにそれぞれ固定されている。
また、基材3上には、複数の表示素子積層体1が格子状に、5列×5列で配列している。
隣接する表示素子積層体1、1は、積層支持部材2、層間支持部材2bを共用し、積層支持部材2、層間支持部材2bに固定されている。積層支持部材2は、基材3に固定されている。
本実施形態において、表示素子積層体1を構成する表示素子は、それぞれの光透過部の位置が高さ方向で全て揃うように配置されている。
遮光板4は、遮光部4cが表示素子10の伸縮変形部上に位置するように設けられている。
【0109】
図16又は図17に示す表示装置5においては、基材3の両面に、表示素子集合体と遮光板とが層間支持部材を介して設けられていてもよい。かかる場合、基材3の両面に固定された表示体による表示が可能となる。
【0110】
図18(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図18(b)は、図18(a)に示す表示装置の斜視図である。
図18(c)は、表示素子集合体と遮光板と層間支持部材とを接合することを模式的に示した斜視図である。
本実施形態の表示装置5は、一対の遮光板4a、4b間に、図14(a)、(b)に示す表示素子集合体の3層が層間支持部材2aを介して積層した積層体が配置されている。
また、表示装置5は、外側に位置する一方の表示素子集合体の基材3aと遮光板4aとが層間支持部材2aを介して対向しており、外側に位置する他方の表示素子集合体の基材3cが遮光板4bと直接貼り合わされている。
本実施形態において、各層の表示素子集合体を構成する表示素子は、それぞれの光透過部の位置が高さ方向で全て揃うように配置されている。
遮光板4は、遮光部4cが表示素子10の伸縮変形部上に位置するように設けられている。
【0111】
また、本発明の表示装置においては、図18に示す表示装置5において、単層の表示素子を配列した表示素子集合体の代わりに、図15に示す表示素子積層体を配列した表示素子集合体を用いたものであってもよい。
【0112】
(遮光板)
遮光板4は、表示装置5の視認する側に設置される光フィルターであり、表示部(表示素子の光透過部)へ光を透過する領域と、非表示部(表示素子の伸縮変形部)へ光を透過しない領域(遮光部4c)とを備えており、表示体が表示する色調や光量を整える表示補助の役割を有する。
また、遮光板4に、表示体同士の間隔や位置がずれないように固定する台座の役割を持たせることにより、基材3cを省略することもできる。
さらに、遮光板4は、各表示素子10を駆動するための電気配線を具備していてもよい。
遮光板4は、たとえば、光透過性の材料からなる領域と、一様な色調の覆い等で隠された領域とを有するものが挙げられる。一様な色調の覆いとして具体的には、適当な色(たとえば黒色、白色など)で印刷された透明フィルム;網の表面が適当な色(たとえば黒色、白色など)で着色された非表示部を覆うように加工された網状板などが挙げられる。
遮光板4の色は、特に制限はなく、表示が見やすくなることから、表示装置5の表示面の地色と同じとすることが好ましい。
図18に示す表示装置5において、遮光板4bは、表示素子集合体の基材3c面に、直接各種の印刷、吹き付け、蒸着、溶射等により設置できる。
【0113】
(層間支持部材)
層間支持部材2a、2bは、遮光板4を表示素子集合体に固定するものであり、表示素子が変形しない、又は表示を妨げない任意の場所に適宜設置される。
層間支持部材2a、2bは、たとえば、選択した材料に適合した汎用の接着剤、上述した積層支持部材2を構成する材料と同じもの等が挙げられる。汎用の接着剤としては、メラミン系、フェノール系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂系接着剤;天然ゴム、合成ゴム等のエラストマー系接着剤;シリカ系接着剤;アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エチレン−酢酸ビニル系、塩化ビニル樹脂溶剤系、酢酸ビニル樹脂系、シアノアクリレート樹脂系、スチレン−ブタジエン樹脂系、ニトリルゴム系等の各種樹脂系接着剤;各種ホットメルト接着剤等から適宜選択することができる。
【0114】
なお、表示素子の非表示部(表示素子の伸縮変形部)の表面を直接塗装などして遮蔽することにより遮光板4の代わりとする等、本発明の表示装置においては、遮光板4と層間支持部材2a、2bを、必要に応じて省略することができる。
【0115】
以上説明した、本発明の表示装置によれば、反射光と透過光のいずれによっても画像表示でき、水平以外の角度にも設置でき、かつ、薄型にもできる。また、単色画像表示においては、高いコントラストあるいは色濃度の階調を表現できる。さらに、カラー画像表示においては、3原色のいずれかを表示する際に表示面全体で表示できる、すなわち、表示面において非表示部分がないため、カラー画像の輝度やコントラストを得やすい、という効果が得られる。
また、本発明の表示装置によれば、従来よりも表示品質が向上する。
さらに、本発明の表示装置によれば、複数の表示素子又は表示素子積層体をそれぞれ独立に又は連動させて表示、非表示の状態に切り替えることができ、これにより、多様な文字、図形、画像を表現することができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0117】
<表示装置の製造>
(実施例1)
図1に示す表示素子と同様の形態の表示素子を作製し、図14に示すような、表示素子を配列してなる表示素子集合体を用いた表示装置を製造した。
表示装置の製造には、以下に示す、絶縁層を有する導電層、導電層(絶縁層なし)、容器、流体、基材、支持部材をそれぞれ用いた。
【0118】
絶縁層を有する導電層:
ITOスパッタリングにて、市販の透明な低密度ポリエチレンフィルム(商品名:ノバテック(R)LF443、日本ポリエチレン株式会社製;厚さ30μm)上に、ITO薄膜(厚さ0.01μm)を形成することにより、絶縁層を有する透明な導電層(縦5mm×横5mm×厚さ約30μm)を得た。
【0119】
導電層(絶縁層なし):
上記絶縁層を有する透明な導電層から、絶縁層を剥離して得た。
【0120】
実施例1に用いた容器:
光透過部がポリエチレンテレフタレートからなり、伸縮変形部がポリエチレンテレフタレートからなり、光透過部と伸縮変形部とが熱融着により接合されたもの。容量3μL。
図1に示す表示素子の表示状態で、表示素子を視認側から観測して、2つの容器の外周が形成する面(図3(a)に示す平面図;略長方形)の大きさが、縦3mm×横3mm、高さ方向が1mmの容器を用いた。
【0121】
参考例1に用いた容器:
光透過部がポリエチレンテレフタレートからなり、伸縮変形部がポリエチレンテレフタレートからなり、光透過部と伸縮変形部とが熱融着により接合されたもの。容量5μL。
図1に示す表示素子の表示状態で、表示素子を視認側から観測して、2つの容器の外周が形成する面(図3(a)に示す平面図;略長方形)の大きさが、縦10mm×横10mm、高さ方向が1.0mmの容器を用いた。
【0122】
流体:
有色流体として青色液体(商品名:ボトルインク青INK30L、パイロット社製)を用いた。
無色透明な液体としてアソパーH(商品名、エクソンモービル社製)を用いた。
【0123】
基材:アクリル樹脂を用いた。
支持部材:アクリル樹脂を用いた。
【0124】
以下、図1に示す表示素子、図14に示す表示装置における符号を用いて説明する。
【0125】
実施例1の表示装置は、下記のようにして製造した。
まず、絶縁層12を有する導電層11と、絶縁層22を有する導電層21と、導電層31と、有色流体61を約3μL収容した容器41と、無色透明な液体(流体62)を約3μL収容した容器42を準備した。
次いで、導電層31の一辺と、導電層11の端部11aとを、熱融着により、絶縁層12の端部11a側の一部(絶縁部51)で部分的に貼り合わせた。次に、導電層31の導電層11と貼り合わされている一辺と対向する一辺と、導電層21の端部21aとを、熱融着により、絶縁層22の端部21a側の一部(絶縁部52)で部分的に貼り合わせた。その際、絶縁部51における一対の導電層11、31間の距離を30μmとした。また、絶縁部52における一対の導電層21、31間の距離を30μmとした。
次いで、導電層11と導電層31との間に、容器41を、光透過部41aと絶縁層12とが隣接し、光透過部41bと導電層31とが隣接するように配置した。また、導電層21と導電層31との間に、容器42を、光透過部42aと絶縁層22とが隣接し、光透過部42bと導電層31とが隣接するように配置して表示素子10を作製した。導電層間への容器の配置には、エポキシ樹脂系の接着剤を用いた。なお、導電層11と導電層21との間の距離を0.5mmとした。
【0126】
次いで、基材3上に、無色透明な液体が収容された容器42、有色流体61が収容された容器41の順に重なるように、基材3と表示素子10との間に空隙が入らないように両者をエポキシ樹脂系の接着剤を用いて固定した。
以上により、表示素子10が5列×5列で配列してなる表示素子集合体を用いた表示装置1を製造した。
【0127】
(参考例1)
参考例1の表示装置は、下記のようにして製造した。
すなわち、絶縁層12を有する導電層11と、絶縁層22を有する導電層21とを、導電層11と導電層21との間の距離を0.5mmとして、絶縁層11、12が対向するように支持部材13、23を用いて平行に配置した。
次いで、導電層11、21間に、有色流体61を約5μL収容した容器を、絶縁層11、12にそれぞれ接するように配置して表示素子を作製した。導電層間への容器の配置には、エポキシ樹脂系の接着剤を用いた。
次いで、基材3上に、基材3と当該表示素子との間に空隙が入らないように両者をエポキシ樹脂系の接着剤を用いて固定した。
以上により、表示素子が5列×5列で配列してなる表示素子集合体を用いた表示装置を製造した。
【0128】
<評価>
実施例1の表示素子における一対の導電層11、31又は参考例1の表示素子における一対の導電層11、21に、電気配線をそれぞれ接続した。駆動電源には、直流電源を用いた。
各例の表示装置は、初期状態としていずれも、導電層11と導電層21との間の距離を0.5mmに保ち、青色表示状態とした。
次いで、単極スイッチを閉じて、表示素子における一対の導電層11、31又は導電層11、21間に電圧(+100V)をそれぞれ印加した。その際、導電層が移動して青色非表示状態となるのに要した電圧の大きさを測定した。その結果は、以下の通りであった。
実施例1の表示素子:40[V]
参考例1の表示素子:400[V]
したがって、本評価の結果から、本発明の表示素子によれば、低い電圧により駆動して表示が可能であることが確認できた。
また、実施例1の表示装置においては、すべての表示素子において色表示と色非表示との切り替えが可能であり、視認性も良好であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】図1は、表示素子の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示す表示素子と同じ実施形態の異なる表示状態を示す概略縦断面図である。
【図3】図3(a)は、図1に示す表示素子10を支持部材13側から観測した平面図であり、図3(b)は、図1に示す表示素子10を支持部材23側から観測した平面図である。
【図4】図4(a)は、図2に示す表示素子10を支持部材13側から観測した平面図であり、図4(b)は、図2に示す表示素子10を支持部材23側から観測した平面図である。
【図5】図5は、図1に示す表示素子と同じ実施形態の異なる表示状態を示す概略縦断面図である。
【図6】図6(a)は、図5に示す表示素子10を支持部材13側から観測した平面図であり、図6(b)は、図5に示す表示素子10を支持部材23側から観測した平面図である。
【図7】図7は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図である。
【図8】図8は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図である。
【図9】図9は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図である。
【図10】図10(a)は、表示素子の他の実施形態を示す概略縦断面図であり、図10(b)は、図10(a)に示す表示素子10を光透過部48側から観測した平面図である。
【図11】図11(a)は、図10に示す表示素子と同じ実施形態の異なる表示状態を示す概略縦断面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す表示素子10を光透過部48側から観測した平面図である。
【図12】図12(a)は、表示素子積層体の一実施形態を側面から見た模式図であり、図12(b)は、図12(a)に示す表示素子積層体の斜視図である。
【図13】図13(a)〜(h)は、それぞれ、図12に示す表示素子積層体1と同じ実施形態の異なる表示状態を側面から見た模式図である。
【図14】図14(a)は、表示装置の一実施形態を側面から見た模式図であり、図14(b)は、図14(a)に示す表示装置の斜視図である。
【図15】図15(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図15(b)は、図15(a)に示す表示装置の斜視図である。
【図16】図16(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図16(b)は、図16(a)に示す表示装置の斜視図であり、図16(c)は、表示素子集合体と遮光板とを層間支持部材を介して接合することを模式的に示した斜視図である。
【図17】図17(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図17(b)は、図17(a)に示す表示装置の斜視図であり、図17(c)は、表示素子集合体と遮光板とを層間支持部材を介して接合することを模式的に示した斜視図である。
【図18】図18(a)は、表示装置の他の実施形態を側面から見た模式図であり、図18(b)は、図18(a)に示す表示装置の斜視図であり、図18(c)は、表示素子集合体と遮光板と層間支持部材とを接合することを模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0130】
1 表示素子積層体 2 積層支持部材 3 基材 4 遮蔽板 5 表示装置 10 表示素子 11 導電層 12 絶縁層 13 支持部材 21 導電層 22 絶縁層 23 支持部材 31 導電層 41 容器 41a 光透過部 41b 光透過部 41c 伸縮変形部 42 容器 42a 光透過部 42b 光透過部 42c 伸縮変形部 51 絶縁部 52 絶縁部 53 絶縁部 54 絶縁部 55 絶縁部 56 絶縁部 57 絶縁部 61 有色流体 62 流体 63 有色流体 70 領域 80 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により互いの距離が変化するように設けられた一対の導電層と、
有色流体が収容された光透過部を有する容器とを備え、
前記一対の導電層と前記容器が、電圧の印加により前記導電層間の距離が変化すると共に、前記光透過部に存在する前記有色流体の量が増減するように配置され、
前記一対の導電層は、絶縁材料からなる絶縁部を介して部分的に近接し、かつ、前記絶縁部における前記導電層間の距離が50μm以下であることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記容器が、電圧の印加により前記導電層間の距離が変化すると共に変形して前記有色流体の存在する量が増減する伸縮変形部をさらに有し、かつ、
その前記容器が、前記導電層間に、前記光透過部に存在する前記有色流体に光が当たるように配置されている請求項1記載の表示素子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の表示素子が積層されていることを特徴とする表示素子積層体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の表示素子を配列した表示素子集合体が用いられていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項3記載の表示素子積層体を配列した表示素子集合体が用いられていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記表示素子集合体を積層した積層体が用いられている請求項4又は請求項5記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−139886(P2010−139886A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317560(P2008−317560)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】