説明

表示素子および表示装置

【課題】液体レンズを有する表示装置の視野角を広げる。
【解決手段】本発明の表示素子は、光源を有する透過型の表示装置に備えられる表示素子であって、内部に液体レンズを有し、光源からの入射光を透過させて出射するセルと、液体レンズが入射光を焦点させる位置に形成され、光を吸収する吸収体と、セルから出射する光を拡散させる拡散部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示素子および表示装置に関し、より詳しくは、液体レンズを備える表示素子
および複数の当該表示素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示素子には、液体レンズを光シャッターとして用いるものがある。この種の表示素子は、入射光を屈折させる焦点距離可変の液体レンズを備えている。このような技術は特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の技術は具体的には、互いに混ざり合わない屈折率および導電率の異なる2種類の液体を封入した表示素子のセルに電圧を印加することにより、これら2種類の液体の界面形状を変化させ、表示素子の着色部に入射光の焦点を合わせる技術である。これにより、このような表示素子を複数配置したパネルを見るユーザの視覚的負担を軽減している。
【特許文献1】特開2007−72108(2007年3月22日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、パネルの視野角が狭くなるという問題がある。この問題について図10を参照して説明する。図10は、従来の液体レンズの課題を示す図である。
【0005】
図10に示す表示素子50は、上述したとおり、セル51の内部に、互いに混ざり合わない屈折率および導電率の異なる2種類の液体52と53が注入されている。液体52と53との間には、界面54が形成されており、液体レンズとして作用する。表示素子50の内部底面の中央には、着色部55が配置されている。
【0006】
矢印56が示すように、ユーザが正面方向から表示素子50を見た場合、焦点は、着色部55上にある。一方、矢印57が示すように、ユーザが表示素子50に対して斜め方向から見た場合、焦点は着色部55の外にずれてしまう。このため、ユーザは表示素子50が本来表す色を正確に捉えることができない。
【0007】
上記のように、従来の表示素子を配置しているパネルでは、ユーザの位置関係によって、レンズの焦点位置が変わるため、ユーザはパネルの正面からしか表示画像を正確に捉えることができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は表示画像の広い視野角を得ることのできる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(表示装素子)
本発明に係る表示素子は、上記の課題を解決するために、
光源を有する透過型の表示装置に備えられる表示素子であって、
内部に液体レンズを有し、上記光源からの入射光を透過させて出射するセルと、
上記液体レンズが上記入射光を焦点させる位置に形成され、光を吸収する吸収体と、
上記セルから出射する光を拡散させる拡散部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、本表示素子を備えている表示装置は、透過型であり光源を有している。これにより、たとえば周囲が暗い場合にも、画像を表示することが可能である。
【0011】
本表示素子は、内部に液体レンズを有し、光源からの入射光を透過させて出射するセルを備えている。この液体レンズは、互いに混ざり合わず、屈折率および導電率の異なる2種類の液体の界面である。本表示素子を備えている表示装置は、これらの液体に電圧を印加して、当該界面、すなわち液体レンズの形状を変えることにより、入射光の焦点を変化させることが可能である。
【0012】
本表示素子は、さらに、液体レンズが上記入射光を焦点させる位置に形成され、光を吸収する吸収体を備えている。本表示素子は、たとえば、非表示状態にする場合、本表示素子を備えている表示装置によって液体レンズに電圧を印加する。これにより、液体レンズの形状を変えて、入射光の焦点を変化させる。上記の構成によると、焦点位置に吸収体が配置されているため、本表示素子は、入射光を確実に吸収する。これにより、光を透過させず、非表示状態にすることができる。
【0013】
一方、表示状態にする場合、本表示素子を備えている表示装置は、上記液体に電圧を印加せず、液体レンズの形状を変化させない。つまり液体レンズは平坦な形状のままである。これにより、光源からの入射光は屈折せず、セル内部を直進して外部に出射される。さらに、本表示素子は、セルから外部に出射する光を拡散させる拡散部も備えている。これにより、本表示素子の正面方向に直進する出射光を、表示素子の斜め方向にも広げることができる。したがって、本表示素子を備えている表示装置において、ユーザは、正面からだけではなく、表示装置に対して斜め方向からも画像を見ることができる。すなわち、表示装置の視野角を広げる効果を奏する。
【0014】
(平行光)
また、本表示素子では、さらに、
上記光源は平行光を放射することが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、本表示素子を備えている表示装置は、光源から平行光を放射する。これにより、拡散光を放射する場合に比べ、確実に光源からの光を一点に集光させることができる。焦点が一点となるため、表示素子が黒を表示するとき光漏れがなくなる。したがって、表示画像においてより高いコントラストを得ることが可能である。
【0016】
(凹レンズ)
また、本表示素子では、さらに、
上記拡散部は凹レンズであることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、本表示素子では、拡散部として凹レンズを備えている。これにより、セルが出射した光を屈折させて広げる。したがって、表示装置の視野角を広げる効果を奏する。
【0018】
(界面)
また、本表示素子では、さらに、
上記拡散部は、上記液体レンズを構成する二種類の液体の界面であることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、本表示素子は、拡散部として液体レンズを構成する二種類の液体の界面を用いている。ここで、二種類の液体とは、互いに混ざり合わず、光の屈折率および導電性の異なる液体のことである。これにより、セル外部に拡散部としてレンズを設ける必要がなくなる。さらに、界面の形状を適宜変化させることにより、光の拡散度合いを自由に調整することが可能である。
【0020】
(吸収体の大きさ)
また、本表示素子では、さらに、
上記吸収体の大きさは、上記入射光の焦点の大きさ以上であることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、本表示素子の吸収体は、上記入射光の焦点の大きさ以上である。これにより、焦点に集まった入射光を確実に吸収することができる。
【0022】
(吸収体の位置)
また、本表示素子では、さらに、
上記吸収体は、上記セルの内部の側壁に配置されていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、本表示素子の吸収体は、上記セル内部の側壁に配置されている。これにより、吸収体が上記セルの上に配置されている場合に比べ、セルから出射される光を吸収体が阻むことがない。したがって、出射光の量を増やすことが可能である。すなわち、光の透過率が上がり、表示画像において高いコントラストを実現できる。
【0024】
(複数の電極)
また、本表示素子では、さらに、
上記液体レンズに電圧を印加する電極が複数に分割されており、該電極のそれぞれに異なる電圧を印加することが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、本表示素子の液体レンズに電圧を印加する電極が複数に分割されており、本表示素子を備えている表示装置は、当該電極のそれぞれに異なる電圧を印加する。これにより、電極を通して電圧が印加された液体レンズにおいて、液体レンズを構成する二種類の液体の界面を傾けることができる。ここで、界面が傾くとは、界面が光源に対して平行ではない状態をいう。
【0026】
上記のように本表示素子は、光源からの入射光の焦点位置を傾けることができるため、たとえば、上記セル内部の側壁に焦点が位置するように界面を傾けたとき、上記セルからは光が出射されない。したがって、黒色の表示が可能となる。
【0027】
(カラーフィルタ)
また、本表示素子では、さらに、
上記セルの上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、本表示素子の上記セルの上にはカラーフィルタが配置されている。これにより、画像のカラー表示が可能となる。
【0029】
(表示装置)
本発明に係る表示装置は、上記のいずれかの表示素子を備えていることを特徴とする。
【0030】
これにより、表示装置の視野角を広げることができる。したがって、ユーザは表示装置に対して広い角度から表示画像を快適に見ることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本表示素子を備えている表示装置は、光源からの入射光を拡散部によって拡散させる。これにより、ユーザは、表示装置の正面からだけではなく、表示装置に対して斜め方向からも画像を見ることができる。すなわち、表示装置の視野角を広げる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
〔第1の実施形態〕
本発明に係る表示素子の第1の実施形態について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
【0033】
(表示素子1の構成)
まず、本実施形態に係る表示素子1の構成について、図1を参照して説明する。
【0034】
図1は、表示素子1の断面図であり、黒色を表示するときの光の屈折を示す図である。図1に示すように、表示素子1は、セル2および凹レンズ5を備えている。凹レンズ5は、セル2の上部に配置される。
【0035】
複数の表示素子1を配置する表示装置には、光源6が設けられており、すべての表示素子1は、光源6の上に配置される。
【0036】
以下、凹レンズが配置されている側をセル2の上部、また、光源6が配置されている側をセル2の下部と記載する。表示素子1は、1画素を構成する素子であり、セル2の上部は画素の表示側である。
【0037】
セル2の側面は4つの層から構成される。外側から順に、外壁7、電極8、絶縁体9、および撥水膜10の4つの層が形成されている。セル2の側部に位置する電極8は、アルミニウム(Al)等の金属で形成したものであり、セル2の上部に位置する電極8は、ITO(Indium Tin Oxide)等で形成したものである。絶縁体9は、シリコン窒化膜(SiN)および酸化アルミニウム(Al)等で形成される。
【0038】
セル2の上部には、セル内部の物質を密閉するように、表示面部材3が配置されている。表示面部材3は、透明であれば特に材料の限定はない。材料の例としては、ガラス、アクリル樹脂等の透明樹脂などがあげられる。
【0039】
表示面部材3の中央には、光の吸収体4が形成されている。吸収体4は、たとえば、カーボンを分散したレジストである。
【0040】
ここで、表示素子1の構成をさらに明確にするために、図3を参照して説明する。図3は、表示素子1の上面図である。図3に示すように、吸収体4は表示面部材3の中央に配置されている。吸収体4の大きさについては後述する。また、上述したように4層の物質が表示素子1の外側から順に並んで形成されている。
【0041】
セル2の内部には、互いに混ざり合わず、光の屈折率および導電率の異なる2種類の液体11および12が注入されている。液体11および12の注入方法は、基本的にはエレクトロウェッティングの液体の注入と同じプロセスをとることが考えられる。たとえば、ディスペンサやインクジェットで液滴を注入するといった方法でもよい。
【0042】
液体11と液体12との間には界面13が形成されている。界面13は、液体レンズとして作用する。液体レンズの作用については後述する。
【0043】
液体11は、導電性であり低屈折率の液体である。たとえば、塩化カリウム(KCl)等の塩を添加した水である。一方、液体12は、絶縁性であり高屈折率の液体である。たとえば、シリコンオイルや、ドデカンなどである。
【0044】
セル2の側面に配置されている電極8には、電圧印加部14が繋がれている。これにより、液体11および液体12への電圧の印加が可能である。
【0045】
セル2の上部に配置されている電極8は、液体11と電気的に接触するように、少なくとも一部が液体11の中に突き出るように配置されている。
【0046】
本実施形態のセル2は、表示面部材3と平行な断面が円形状である。つまりセル2は、円筒状であるが、形状はこれに限らない。セル2の形状は、たとえば多角形でもよい。
【0047】
(黒色の表示)
図1を参照して、表示素子1において黒色を表示するときの各部材の処理について説明する。
【0048】
まず、光源6が表示面部材3に平行に向かう平行光15を放射する。本実施形態では、このように平行な光を放射する光源を用いる。これにより、拡散光を放射する場合に比べ、後に説明するレンズによって、より確実に光源からの光を一点に集光させることができる。焦点が一点となるため、表示素子が黒を表示するとき光漏れがなくなり、表示画像においてより高いコントラストを得ることが可能である。
【0049】
次に、電圧印加部14によって電圧を印加する。そして電極8を通して、液体11および液体12に電圧を印加する。これにより、界面13は光源6の方向に引き付けられるように移動する。このため、界面13は、図1に示すようにに、凸形状となる。つまり、界面13は、凸形状の液体レンズとなる。
【0050】
界面13が凸形状の液体レンズになることにより、光源6から入射された平行光15は、界面13において屈折する。このとき、屈折光16は、表示面部材3の中央を焦点とし、そこに向かって屈折する。そして、表示面部材3の中央に設けられている吸収体4は、焦点に集まった屈折光16を吸収する。吸収体4は、このように、屈折光16の焦点の位置に配置されている。
【0051】
ここで、吸収体4の大きさは、焦点の大きさ以上である。これにより、屈折光16のすべてを確実に吸収することができる。すべての光が吸収体4によって吸収されるため、このとき表示素子1が表示する色は黒となる。
【0052】
(白色の表示)
図2を参照して、表示素子1において白色を表示するときの各部材の処理について説明する。図2は、図1に示す表示素子1の断面図であり、白色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【0053】
本実施形態では、表示素子1において白色を表示するとき、電圧印加部14によって電圧を印加しない。このため、図2に示すように、界面13は移動せず、平坦なままである。つまり、界面13は平坦な液体レンズとなる。これにより、光源6から放射された平行光15は、界面13において屈折せずに、そのままセル2内部を直進する。
【0054】
そして、表示面部材3を透過した平行光15は、凹レンズ5の表面において屈折する。屈折光16は、平行光15と比べ、斜めに広げられ拡散している。光はセル2の外部に出射されているため、このとき表示素子1が表示する色は白となる。
【0055】
上記のような表示素子1を複数配置して構成される表示装置では、表示装置の正面方向に直進する出射光を、表示装置の斜め方向にも広げることができる。したがって、ユーザは、表示装置の正面からだけではなく、表示装置に対して斜め方向からも画像を見ることができる。
【0056】
なお本実施形態では、光線を拡散するために凹レンズ5を用いたが、光線を拡散するものは、これに限らない。たとえば、拡散シートを用いることも可能である。
【0057】
(表示素子1の配置)
なお、表示素子1を複数配置する例について図4を参照して説明する。図4は、表示素子1をデルタ配置した例である。デルタ配置とは、任意の隣接する3つの画素の中心により形成される三角形の内角が直角にはならないようにした配置である。
【0058】
図4における表示素子1は、この内角がそれぞれ60度となるように、つまり、形成される三角形が正三角形になるようにデルタ配置されている。この配置は、画素を最密に配置することができるため最も好ましい。また、図4では、円筒状の表示素子1を配置しているが、たとえば、六角形の形状の表示素子をデルタ配置してもよい。
【0059】
(カラー表示)
本実施形態では、黒と白との表示状態についてそれぞれ説明したが、色の表示はこの2つに限らない。たとえば、表示面部材3の上に、赤、青、緑などのカラーフィルタを配置すれば、カラー表示も可能となる。
〔第2の実施形態〕
本発明に係る表示素子の第2の実施形態について、図5および図6を参照して以下に説明する。第1の実施形態に係る部材と共通する部材には同じ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0060】
(表示素子20の構成)
まず、本実施形態に係る表示素子20の構成について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る表示素子の断面図であり、黒色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【0061】
図5に示すように、表示素子20は、セル2の上面外部に、凹レンズが配置されていない点のみ第1の実施形態に係る表示素子1の構成と異なる。
【0062】
(黒色の表示)
図5に示すように、表示素子20において黒色を表示するときの各部材の処理は、第1の実施形態における表示素子1の各部材の処理と同様である。このため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
(白色の表示)
図6を参照して、表示素子20において白色を表示するときの各部材の処理について説明する。図6は、図5に示す表示素子20の断面図であり、白色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【0064】
本実施形態では、表示素子20において白色を表示するとき、電圧印加部14によって電圧を印加する。そして電極8を通して、液体11および液体12に電圧を印加する。これにより、界面13は表示面部材3の方向に引き付けられるように移動する。このため、界面13は、図6に示すように、凹形状となる。つまり、界面13は、凹形状の液体レンズとなる。
【0065】
界面13が凹形状の液体レンズになることにより、光源6から入射された平行光15は、界面13において屈折する。このとき、平行光15は斜めに広げられて液体11を透過し表示面部材3に到達する。
【0066】
液体11と表示面部材3とのそれぞれにおける光の透過率が異なるため、表示面部材3において、光はさらに斜めに屈折し外部に拡散する。光はセル2の外部に出射されているため、このとき表示素子1が表示する色は白となる。
【0067】
このように白色を表示するとき、液体レンズ、すなわち界面13が凹レンズとなるように電圧を印加することにより、第1の実施形態に係る表示素子1の構成のように、セル2上部に凹レンズを設けなくとも、平行光15を屈折させて、セル2から出射される光を広げることができる。さらに、電圧印加部14によって印加する電圧量を調整し、界面13の形状を適宜変化させることにより、光の拡散度合いを自由に調整することが可能である。
【0068】
これにより、上記のような表示素子20を複数配置して構成される表示装置では、表示装置の正面方向に直進する出射光を、表示装置の斜め方向にも広げることができる。したがって、ユーザは、表示装置の正面からだけではなく、表示装置に対して斜め方向からも画像を見ることができる。
〔第3の実施形態〕
本発明に係る表示素子の第3の実施形態について、図7および図8を参照して以下に説明する。第1および第2の実施形態に係る部材と共通する部材には同じ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0069】
(表示素子30の構成)
まず、本実施形態に係る表示素子30の構成について、図7を参照して説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係る表示素子の断面図であり、黒色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【0070】
図7に示すように、表示素子30は、第1の実施形態に係る表示素子1と比べ、以下の点で構成が異なる。
【0071】
まず、セル2の上面外部に、凹レンズが配置されていない。
【0072】
次に、吸収体4は、表示面部材3の中央ではなく、撥水膜10のセル上部側に設けられる。
【0073】
さらに、電極8は2つに分割されており、それぞれに別の電圧印加部14が繋がれている。
【0074】
ここで、表示素子30の構成をさらに明確にするために、図8を参照して説明する。図8は、表示素子30の上面図である。図8に示すように、吸収体4は表示面部材3の中央に配置されていない。また、上述したように、本実施形態では、電極8が2つに分割されているため、電極8の層には、空間40が確認できる。その他の部材については、第1の実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0075】
(黒色の表示)
図7を参照して、表示素子30において黒色を表示するときの各部材の処理について説明する。
【0076】
まず、光源6が表示面部材3に平行に向かう平行光15を放射する。
【0077】
次に、2つの電圧印加部14によって、それぞれ異なる電圧を印加する。そして2つに分割された電極8を通して、液体11および液体12に電圧を印加する。これにより界面13は光源6に対して平行とならずに傾く。このように2つの電極によってそれぞれ異なる電圧を液体11および液体12に同時に印加することにより、界面13を傾けることができる。
【0078】
界面13が傾いているため、光源6から入射された平行光15は、界面13において屈折する。このとき、屈折光16は、セル上部に近い撥水膜10の上の1点を焦点とし、そこに向かって屈折する。そして吸収体4は、集まった屈折光16を吸収する。吸収体4は、このように、屈折光16の焦点の位置に配置されている。
【0079】
ここで、吸収体4の大きさは、焦点の大きさ以上である。これにより、屈折光16のすべてを確実に吸収することができる。すべての光が吸収体4によって吸収されるため、このとき表示素子1が表示する色は黒となる。
【0080】
(白色の表示)
図9を参照して、表示素子30において白色を表示するときの各部材の処理について説明する。図9は、図7に示す表示素子30の断面図であり、白色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【0081】
本実施形態では、表示素子30において白色を表示するとき、2つの電圧印加部14のどちらかによって電圧を印加する。そして2つの電極8のどちらかを通して、液体11および液体12に電圧を印加する。これにより、界面13は表示面部材3の方向に引き付けられるように移動する。このため、界面13は、図9に示すように、凹形状となる。つまり、界面13は、凹形状の液体レンズとなる。
【0082】
界面13が凹形状の液体レンズになることにより、光源6から入射された平行光15は、界面13において屈折する。このとき、平行光15は斜めに広げられて液体11を透過し表示面部材3に到達する。
【0083】
液体11と表示面部材3とのそれぞれにおける光の透過率が異なるため、表示面部材3において、光はさらに斜めに屈折し外部に拡散する。光はセル2の外部に出射されているため、このとき表示素子1が表示する色は白となる。
【0084】
このように白色を表示するとき、液体レンズ、すなわち界面13が凹レンズとなるように電圧を印加することにより、第1の実施形態に係る表示素子1の構成のように、セル2上部に凹レンズを設けなくとも、平行光15を屈折させて、セル2から出射される光を広げることができる。
【0085】
これにより、上記のような表示素子30を複数配置して構成される表示装置では、表示装置の正面方向に直進する出射光を、表示装置の斜め方向にも広げることができる。したがって、ユーザは、表示装置の正面からだけではなく、表示装置に対して斜め方向からも画像を見ることができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、吸収体4が表示面部材3の上に配置されていないため、セル2から出射される光を吸収体4が阻むことがない。したがって、第1の実施形態のときと比べ、セル2から出射する光量が増す。これにより光の透過率が上がり、表示画像において高いコントラストを実現できる。
【0087】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。当業者は、請求項に示した範囲内において、本発明をいろいろと変更できる。すなわち、請求項に示した範囲内において、適宜変更された技術的手段を組み合わせれば、新たな実施形態が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の表示素子は、これを複数配置した透過型の表示装置として実現できる。たとえば、電子ペーパーとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示素子の断面図であり、黒色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【図2】図1に示した表示素子の断面図であり、白色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る表示素子の上面図である。
【図4】本発明に係る表示素子をデルタ配置した例である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る表示素子の断面図であり、黒色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【図6】図5に示した表示素子の断面図であり、白色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る表示素子の断面図であり、黒色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る表示素子の上面図である。
【図9】図7に示した表示素子の断面図であり、白色を表示するときの光の屈折を示す図である。
【図10】従来の液体レンズの課題を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1、20、30 表示素子
2 セル
3 表示面部材
4 吸収体
5 凹レンズ
6 光源
7 外壁
8 電極
9 絶縁体
10 撥水膜
11、12、52、53 液体
13 界面
14 電圧印加部
15 平行光
16 屈折光
50 従来の表示素子
51 従来のセル
54 従来の界面
55 着色部
56、57 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有する透過型の表示装置に備えられる表示素子であって、
内部に液体レンズを有し、上記光源からの入射光を透過させて出射するセルと、
上記液体レンズが上記入射光を焦点させる位置に形成され、光を吸収する吸収体と、
上記セルから出射する光を拡散させる拡散部とを備えていることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
上記光源は平行光を放射することを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
上記拡散部は凹レンズであることを特徴とする請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
上記拡散部は上記液体レンズを構成する二種類の液体の界面であることを特徴とする請求項2に記載の表示素子。
【請求項5】
上記吸収体の大きさは、上記入射光の焦点の大きさ以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の表示素子。
【請求項6】
上記吸収体は、上記セルの内部の側壁に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の表示素子。
【請求項7】
上記液体レンズに電圧を印加する電極が複数に分割されており、該電極のそれぞれに異なる電圧を印加することを特徴とする請求項5または6に記載の表示素子。
【請求項8】
上記セルの上にカラーフィルタが配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の表示素子を備えていることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−39365(P2010−39365A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204396(P2008−204396)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】