説明

表示素子及びその製造方法

【課題】有機EL素子が用いられ、構造が簡単であり、電力効率の高い表示素子を提供する。
【解決手段】所定形状を表示する表示素子であって、透明絶縁基板上に、透明陽極と、有機EL化合物層と、該所定形状と略同一形状にパターニングされた陰極バッファー層と、陰極とがこの順序で積層された有機エレクトロルミネッセンス素子からなることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示素子に関し、より詳細には、所定形状を表示する、有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」とも言う。)素子を利用した表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
EL素子を利用し、所定形状を表示する表示素子としては、従来さまざまな方式の表示素子が知られている。
たとえば特開2001−331134号公報(特許文献1)には、全面発光するEL素子の発光面側表面に、所定形状の透明部が残るように印刷が施された透明性シートを積層した電光表示用シートが開示されている。この電光表示用シートでは、EL素子から発せられた光が、透明性シートの所定形状の透明部のみから外部へ透過することによって、所定形状が表示される。しかしながら、この電光表示用シートには、EL素子が発する光の一部が透明性シートの印刷部で遮蔽されてしまうため、電力効率が低いという問題があった。
【0003】
また特開2003−77664号公報(特許文献2)には、発光表示領域内の素子近傍に、発光表示領域内の端部あるいは基準位置となる素子から所定の素子数毎に特定の標識パターンが形成されているマトリクス型有機ELディスプレイが開示されている。この有機ELディスプレイでは、特定の陽極線および陰極線に電流を流すことで、その交点に当る画素を点灯させており、点灯させる画素を制御することにより所定の形状が表示される。しかしながら、構造が複雑であり、所定形状を表示させるためには、制御装置が必要であり、表示装置のサイズが大きい、コストが大きいなどの問題があった。
【特許文献1】特開2001−331134号公報
【特許文献2】特開2003−77664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有機EL素子が用いられ、構造が簡単であり、電力効率の高い表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、本発明を完成させた。本発明は以下の[1]〜[15]に関する。
[1] 所定形状を表示する表示素子であって、
透明絶縁基板上に、透明陽極と、有機EL化合物層と、該所定形状と略同一形状にパターニングされた陰極バッファー層と、陰極とがこの順序で積層された有機エレクトロルミネッセンス素子からなる
ことを特徴とする表示素子。
【0006】
[2] 前記有機エレクトロルミネッセンス化合物層が燐光発光性化合物を含有していることを特徴とする上記[1]に記載の表示素子。
[3] 前記燐光発光性化合物がイリジウム錯体であることを特徴とする上記[2]に記載の表示素子
[4] 前記燐光発光性化合物が燐光発光性高分子化合物であることを特徴とする上記[2]または[3]に記載の表示素子。
【0007】
[5] 前記燐光発光性高分子化合物が燐光発光性非共役高分子化合物であることを特
徴とする上記[4]に記載の表示素子。
[6] 前記燐光発光性非共役高分子化合物が、以下の式(X−1)で表される化合物中の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換したイリジウム錯体化合物から導かれる構造単位を有する高分子化合物であることを特徴とする上記[5]に記載の表示素子。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(X−1)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R1とR2とで、R2とR3とで、R3とR4とで、R4とR5とで、R5とR6とで、R6とR7とで、R7とR8とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよく、Lは、下記式(X−2)〜(X−4)からなる群より選ばれる2座配位子を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式(X−2)中、R11〜R18は式(X−1)中のR1〜R8と同義である。)
【0012】
【化3】

【0013】
(式(X−3)中、R21〜R23は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R21とR22とで、R22とR23とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよい。)
【0014】
【化4】

【0015】
(式(X−4)中、R31〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R31とR32とで、R32とR33とで、R33とR34とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよい。)
[7] 前記燐光発光性非共役高分子化合物が、下記式(E−2)、(E−17)、(E−32)および(E−33)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物中の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換したイリジウム錯体化合物から導かれる構造単位を有する高分子化合物であることを特徴とする上記[5]に記載の表示素子。
【0016】
【化5】

【0017】
[8] 所定形状を表示する表示素子の製造方法であって、
有機エレクトロルミネッセンス化合物層の表面に、該所定形状と略同一形状の陰極バッファー層を形成する工程、および
該陰極バッファー層の表面に陰極を形成する工程
を含むことを特徴とする表示素子の製造方法。
【0018】
[9] 前記の陰極バッファー層を形成する工程において、前記所定形状と略同一形状の孔が空けられたマスクを通して、有機エレクトロルミネッセンス化合物層上に陰極バッファー層形成材料を蒸着させた後、
前記陰極を形成する工程において、前記マスクを除去して陰極を形成する
ことを特徴とする上記[8]に記載の表示素子の製造方法。
【0019】
[10] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の表示素子を備えた携帯電話表示画面。
[11] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の表示素子を備えた携帯用音楽プレーヤー表示画面。
【0020】
[12] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の表示素子を備えた車内バックミラー。
[13] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の表示素子を備えた鏡。
【0021】
[14] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の表示素子を備えた劇場用表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の表示素子は、簡単な構造で、高い電力効率で所定形状を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の表示素子をより詳細に説明する。
[有機EL素子]
本発明の表示素子は、所定形状を表示する表示素子であって、透明絶縁基板上に、透明陽極と、有機EL化合物層と、該所定形状と略同一形状にパターニングされた陰極バッファー層と、陰極とがこの順序で積層された有機エレクトロルミネッセンス素子からなることを特徴としている。
【0024】
なお本明細書においては、便宜上、有機EL素子を構成する透明絶縁基板から透明陽極に向かう方向を「上」と表現する。
〔1.素子構成〕
図1は、本発明に用いられる有機EL素子の主要部(素子主要部)の構成の一例を示す断面図であり、透明基板1上に、陽極2と、正孔輸送層31、発光層32および電子輸送層33と、パターニングされた陰極バッファー層4と、陰極5とを順次設けたものである。
【0025】
また、本発明に用いられる有機EL素子の構成は図1の例に限定されず、陽極と陰極バッファー層の間に順次、1)陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層、2)陽極バッファー層/発光層/電子輸送層、3)陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、4)陽極バッファー層/正孔輸送性化合物、発光性化合物、電子輸送性化合物を含む層、5)陽極バッファー層/正孔輸送性化合物、発光性化合物を含む層、6)陽極バッファー層/発光性化合物、電子輸送性化合物を含む層、7)陽極バッファー層/正孔電子輸送性化合物、発光性化合物を含む層、8)陽極バッファー層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層を設けた素子構成などを挙げることができる。また、図1に示した発光層は1層であるが、発光層を2層以上有していてもよい。さらに、陽極バッファー層を用いずに直接的に、正孔輸送性化合物を含む層が陽極の表面に接していてもかまわない。
【0026】
なお、本明細書中においては、特に断りのない限り、電子輸送性化合物、正孔輸送性化合物、発光性化合物の全てあるいは一種類以上からなる化合物を有機EL化合物、また層を有機EL化合物層と呼ぶこととする。
【0027】
〔2.陽極〕
陽極は、ITOに代表される導電性かつ光透過性の層により形成される。有機発光を基板を通して観察する場合には、陽極の光透過性は必須であるが、有機発光をトップエミッション、すなわち上部の電極を通して観察する用途の場合では陽極の透過性は必要なく、仕事関数が4.1eVよりも高い金属あるいは金属化合物のような適当な任意の材料を陽
極として用いることができる。例えば、金、ニッケル、マンガン、イリジウム、モリブテン、パラジウム、白金などを単独で、あるいは組み合わせて用いることが可能である。当該陽極は、金属の酸化物、窒化物、セレン化物及び硫化物からなる群より選ぶこともでき
る。また、光透過性の良好なITOの表面に、光透過性を損なわないように1〜3nmの薄い膜として、上記の金属を成膜したものを陽極として用いることもできる。これらの陽極材料表面への成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法、真空蒸着法などを用いることができる。陽極の厚さは2〜300nmが好ましい。
【0028】
〔3.陽極表面処理〕
また、陽極バッファー層、あるいは、正孔輸送性化合物を含む層の成膜時に陽極表面を前もって処理することによりオーバーコートされる層の性能(陽極基板との密着性、表面平滑性、正孔注入障壁の低減化など)を改善することができる。前もって処理する方法には高周波プラズマ処理を始めとしてスパッタリング処理、コロナ処理、UVオゾン照射処理、または酸素プラズマ処理などがある。
【0029】
〔4.陽極バッファー層:バイトロンなどを使う場合〕
陽極バッファー層をウェットプロセスにて塗布して作製する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法などを用いて成膜することが出来る。
【0030】
上記ウェットプロセスによる成膜で用い得る化合物は、陽極表面とその上層に含まれる有機EL化合物に良好な付着性を有した化合物であれば特に制限はないが、これまで一般に用いられてきた陽極バッファーを適用することがより好ましい。例えば、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPEDOT−PSS、ポリアニリンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPANIなどの導電性ポリマーを挙げることができる。さらに、これら導電性ポリマーにトルエン、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤を添加して用いてもよい。また、界面活性剤などの第三成分を含む導電性ポリマーでもよい。前記界面活性剤としては、例えばアルキル基、アルキルアリール基、フルオロアルキル基、アルキルシロキサン基、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボキシレート、アミド、ベタイン構造、及び第4級化アンモニウム基からなる群から選択される1種の基を含む界面活性剤が用いられるが、フッ化物ベースの非イオン性界面活性剤も用い得る。
【0031】
〔5.有機EL化合物〕
本発明に用いられる有機EL素子における有機EL化合物層、すなわち発光層、正孔輸送層、及び電子輸送層に使用する化合物としては、低分子化合物及び高分子化合物のいずれをも使用することができる。
【0032】
本発明に用いられる有機EL素子の発光層を形成する有機EL化合物としては、大森裕:応用物理、第70巻、第12号、1419−1425頁(2001年)に記載されている発光性低分子化合物及び発光性高分子化合物などを例示することができる。この中でも、素子作製プロセスが簡素化されるという点で発光性高分子化合物が好ましく、発光効率が高い点で燐光発光性化合物が好ましい。従って、特に燐光発光性高分子化合物が好ましい。
【0033】
また、発光性高分子化合物は、共役発光性高分子化合物と非共役発光性高分子化合物とに分類することもできる。ここで、共役発光性高分子化合物とは、共役構造を分子内の主鎖(高分子の構造の中で最も長い結合鎖部分)の全体に渡って、もしくは実質的に全体に渡って持つ高分子化合物であり、それ以外の共役構造を持つ高分子化合物が非共役発光性高分子化合物である。
【0034】
有機EL素子を製造する工程においては、材料に対する酸素存在下での光照射、加熱(たとえば100℃以上)、あるいは超音波分散処理などにより、発光性高分子化合物の分子内
の部分的欠陥が不可逆的に発生すると考えられる。また、高分子化合物の末端は、通常それ以外の部分とは構造が異なる。さらに、高分子化合物を製造する際、溶液に溶解する際、あるいは塗布する際には、高分子化合物に外部から不純物が混入すると考えられる。
【0035】
共役発光性高分子化合物においては、共役構造が分子全体にわたるために、分子内に存在する部分的構造欠陥、末端構造、あるいは材料に含まれる不純物が、分子全体としての共役構造に影響を及ぼす。このため、有機EL化合物層として膜状に成型された共役発光性高分子化合物の特性が変化し易く、結果として有機EL素子の発光効率の低下あるいは耐久性の低下など引き起こすことがある。
【0036】
一方、非共役発光性高分子化合物においては、共役構造が繰り返し単位毎に孤立しているために、上記部分的構造欠陥などが分子全体としての特性に与える影響は軽微である。したがって、有機EL素子の高い発光効率および耐久性を高い再現性で実現する観点からは、有機EL化合物層形成材料として非共役発光性高分子を用いることが好ましい。
【0037】
上記の理由から、本発明で用いられる発光材料としては、燐光発光性非共役高分子化合物(前記燐光発光性高分子であり、かつ前記非共役発光性高分子化合物でもある発光材料)が特に好ましい。
【0038】
本発明に用いられる有機EL素子における発光層は、好ましくは、燐光を発光する燐光発光性単位とキャリアを輸送するキャリア輸送性単位とを一つの分子内に備えた、燐光発光性高分子を少なくとも含む。前記燐光発光性高分子は、重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物とを共重合することによって得られる。燐光発光性化合物はイリジウム、白金および金の中から一つ選ばれる金属元素を含む金属錯体であり、中でも、発光効率が高く省エネルギーの点で優れていること、および様々な配位子を選択して広範囲の色目を再現できることからイリジウム錯体が好ましい。
【0039】
このイリジウム錯体としては、以下の式(X−1)で表される化合物中の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物が挙げられる。
【0040】
【化6】

【0041】
(式(X−1)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R1とR2とで、R2とR3とで、R3とR4とで、R4とR5とで、R5とR6とで、R6とR7とで、R7とR8とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよく、Lは、下記式(X−2)〜(X−4)からなる群より選
ばれる2座配位子を表す。)
【0042】
【化7】

【0043】
(式(X−2)中、R11〜R18は式(X−1)中のR1〜R8と同義である。)
【0044】
【化8】

【0045】
(式(X−3)中、R21〜R23は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R21とR22とで、R22とR23とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよい。)
【0046】
【化9】

【0047】
(式(X−4)中、R31〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R31とR32とで、R32とR33とで、R33とR34とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよい。)
前記重合性置換基を有する燐光発光性化合物としては、より具体的には、例えば下記式(E−1)〜(E−49)に示す金属錯体の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
【化12】

【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
なお、上記式(E−35)、(E−46)〜(E−49)において、Phはフェニル基を表す。
これらの燐光発光性化合物における重合性置換基としては、例えばビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などが挙げられ、中でもビニル基、メタクリレート基、スチリル基及びその誘導体が好ましい。これらの置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して金属錯体に結合していてもよい。
【0055】
これらの化合物の中でも、上記式(E−2)、(E−17)、(E−32)または(E−33)で表される化合物は、溶媒との親和性が高いことから溶液中で析出、凝集しないため、膜厚が均質な有機EL発光層膜が形成できるという点で好ましい。
【0056】
前記重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物は、ホール輸送性および電子輸送性の内のいずれか一方または両方の機能を有する有機化合物における一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。このような化合物の代表的な例として、下記式(E−50)〜(E−67)に示した化合物を挙げることができる。
【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
例示したこれらのキャリア輸送性化合物における重合性置換基はビニル基であるが、ビニル基をアクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などの重合性置換基で置換した化合物であってもよい。また、これらの重合性置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して結合していてもよい。
【0060】
重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、重合体の分子量は重量平均分子量で1,000〜2,000
,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。ここでの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量である。
【0061】
前記燐光発光性高分子は、一つの燐光発光性化合物と一つのキャリア輸送性化合物、一つの燐光発光性化合物と二つ以上のキャリア輸送性化合物を共重合したものであってもよく、また二つ以上の燐光発光性化合物をキャリア輸送性化合物と共重合したものであってもよい。
【0062】
燐光発光性高分子におけるモノマーの配列は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよく、燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数をm、キャリア輸送性化合物構造の繰り返し単位数をnとしたとき(m、nは1以上の整数)、全繰り返し単位数に対する燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数の割合、すなわちm/(m+n)の値は0.001〜0.5が好ましく、0.001〜0.2がより好ましい。
【0063】
燐光発光性高分子のさらに具体的な例と合成法は、例えば特開2003−342325、特開2003−119179、特開2003−113246、特開2003−206320、特開2003−147021、特開2003−171391、特開2004−346312、特開2005−97589に開示されている。
【0064】
本発明に用いられる有機EL素子における発光層は、好ましくは前記燐光発光性化合物を含む層であるが、発光層のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物が含まれていてもよい。これらの目的で用いられる正孔輸送性化合物としては、例えば、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体や、ポリビニルカルバゾール、前記トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物、ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどが挙げられ、また、電子輸送性化合物としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料や、上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送性化合物が使用できる。
【0065】
〔6.有機EL化合物層の形成法〕
上記の有機EL化合物層は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法などにより形成することが可能である。発光性低分子化合物の場合は主として抵抗加熱蒸着法及び電子ビーム蒸着法が用いられ、発光性高分子化合物の場合は主にスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法が用いられる。
【0066】
〔7.正孔ブロック層〕
また、正孔が発光層を通過することを抑え、発光層内で電子と効率よく再結合させる目的で、発光層の陰極側に隣接して正孔ブロック層を設けてもよい。
【0067】
この正孔ブロック層には発光性化合物より最高占有分子軌道(Highest Occupied Molecular Orbital;HOMO)準位の深い化合物を用いることができ、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、アルミニウム錯体などを例示することができる。
【0068】
さらに、励起子(エキシトン)が陰極金属で失活することを防ぐ目的で、発光層の陰極側に隣接してエキシトンブロック層を設けてもよい。この場合、有機EL素子の構成は、たとえば基板/陽極/発光層/エキシトンブロック層/陰極バッファー層/陰極となる。このエキシトンブロック層には発光性化合物より励起三重項エネルギーの大きな化合物を用いることができ、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、アルミニウム錯体などを例示することができる。
【0069】
〔8.陰極バッファー層〕
図1に示すように、本発明の表示素子は、陰極5から有機EL化合物層3への電子注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、また表示素子の表示面(透明基板1の表面)に所定形状を表示する目的で、後述する陰極5と陰極5に隣接する有機EL化合物層3との間に、陰極バッファー層4を有している。この陰極バッファー層としては、陰極より仕事関数の低い金属、金属酸化物、および金属フッ化物が挙げられ、この金属酸化物としては、Li、Na、K、Cs、Rb、Ca、BaまたはSrの酸化物が、この金属フッ化物としては、Li、Na、K、CsまたはRbのフッ化物が挙げられる。
【0070】
本発明の表示素子においては、この陰極バッファー層は、該有機EL素子の表示面(透明基板表面)に表示させる所定形状と同じ形状に形成(パターニング)されている。この所定形状は、文字であっても図形であってもよい。
【0071】
この陰極バッファー層として使用できる低仕事関数の金属としては、アルカリ金属(Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Sr、Ba、Ca、Mg)、希土類金属(Pr、Sm、Eu、Yb)等を挙げることができる。また、陰極より仕事関数の低いものであれば、合金または金属化合物も使用することができる。
【0072】
本発明に係る所定形状を表示する表示素子の製造方法においては、有機EL化合物層表面に所定形状と略同一形状の陰極バッファー層を形成する工程、および
該有機エレクトロルミネッセンス化合物層の露出した表面および該陰極バッファー層の表面に陰極を形成する工程
を含んでいる。
【0073】
なお有機EL化合物層等は常法により形成することができる。
これらの陰極バッファー層の成膜方法としては、蒸着法やスパッタ法などを用いることができる。陰極バッファー層の厚さは0.05〜50nmが好ましく、0.1〜20nmがより好ましく、0.5〜10nmがより一層好ましい。
【0074】
前記の陰極バッファー層を形成する工程においては、前記所定形状と略同一形状の孔が空けられたマスクを通して、有機エレクトロルミネッセンス化合物層上に陰極バッファー層形成材料を蒸着させてもよい。
【0075】
この陰極バッファー層を本発明の表示素子が表示する所定形状と略同一の形状にパターニングするために、前記の陰極バッファー層を形成する工程において、該所定形状と略同
一の孔が設けられたマスクを使用して(この孔を通して)、有機EL化合物層上に陰極バッファー層形成材料を蒸着させてもよい。
【0076】
マスクは、使用の際に発光層に接触させてもよいが、発光層の損傷を防止する観点からは、発光層からある程度(たとえば200μm程度)離した状態で使用することが好ましい。
【0077】
また、陰極バッファー層の蒸着は、図3に示すような2種類以上のマスクを用いて、2回以上に分けて行ってもよい。こうすることにより、図2に示すような、1枚のマスクを用いて1回で形成することのできない形状であっても形成することができる。
【0078】
さらに、陰極バッファー層は、上記の低仕事関数の物質と電子輸送性化合物の混合物として形成することもできる。なお、ここで用いられる電子輸送性化合物としては前述の電子輸送層に用いられる有機化合物を用いることができる。この場合の成膜方法としては共蒸着法を用いることができる。
【0079】
また、溶液の塗布により陰極バッファー層の形成が可能な場合は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などの既述の成膜方法を用いることができる。この場合の陰極バッファー層の厚さは0.1〜100nmが好ましく、0.5〜50nmがより好ましく、1〜20nmがより一層好ましい。
【0080】
陽極バッファー層の材料を含む溶液を塗布することにより所定形状にパターニングされた陰極バッファー層を形成するには、この溶液を、発光層の全面に塗布するのではなく、所望の形状に塗布すればよい。
【0081】
本発明の表示素子は、このように表示したい所定形状と同じ形状にパターニングされた陰極バッファー層を備えているため、その発光層は、全領域が発光することなく、陰極バッファー層によって陰極5から有機EL化合物層3への電子注入障壁が下がり電子の注入効率が上昇した、略陽極とパターニングされた陰極バッファー層との間の領域のみが発光する。このようにして、前記有機EL素子からなる本発明の表示素子には所定の形状が表示される。
【0082】
一方、図11に示すような従来の有機EL素子では、陰極バッファー層4は有機EL化合物層3上の全面に設けられている。したがって、発光層は全領域が発光するため、陰極バッファー層4が設けられた従来の有機EL素子を備える表示装置では所定形状を表示することができない。
【0083】
したがって本発明の表示素子によれば、簡単な構造により、電力効率を低下させることなく、所定形状を表示することができる。
〔9.陰極〕
本発明に用いられる有機EL素子の陰極材料としては、仕事関数が低く、かつ化学的に安定なものが使用され、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金などの既知の陰極材料を例示することができるが、化学的安定性を考慮すると仕事関数は2.9eV以上であることが好ましい。これらの陰極材料の成膜方法としては
、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。陰極の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmがより好ましい。
【0084】
前記陰極バッファー層を、マスクを使用して形成した場合には、陰極形成工程において
は、このマスクを除去して陰極を形成する。
この陰極は、前記陰極バッファー層表面のみではなく、前記陰極バッファー層および前記陰極バッファー層が形成されず露出した前記有機EL化合物層の全体を覆うように形成される。このように陰極を形成すると、有機EL素子の非点灯時に、有機EL素子の全面が鏡として機能する。
【0085】
〔10.封止〕
陰極作製後、該有機EL素子を保護する保護層を装着していてもよい。該有機EL素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属などを用いることができ、該カバーを熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0086】
〔11.基板種類〕
本発明で用いられる有機EL素子の基板としては、発光性化合物の発光波長に対して透明な絶縁性基板、例えば、ガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリカーボネートを始めとする透明プラスチック、シリコン基板などの既知の材料が使用できる。
【0087】
[表示素子]
本発明の表示素子は、前記有機EL素子からなる。前記陽極、ならびに前記陰極または前記導電層に配線を取り付け、両電極間に電圧をかけることにより、所定形状が表示される。
【0088】
上述したように、本発明の表示素子によれば、簡単な構造により、発光層の全領域ではなく所定形状と略同一形状の領域のみが発光するので、高い電力効率で所定形状を表示することができる。
【0089】
[用途]
本発明の表示素子の用途としては、該表示素子を備えた携帯電話表示画面、携帯用音楽プレーヤー表示画面、車内バックミラー、鏡、劇場用表示装置などが挙げられる。
【0090】
この携帯電話表示画面や携帯用音楽プレーヤー表示画面は、非点灯時には鏡として機能し、点灯時には情報画面として機能する。
また、この車内バックミラーは、後方の安全確認のためのバックミラーとしての機能に加えて、この機能を損なわないように上下端あるいは左右端に情報を表示する。
【0091】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
[製造例1]
(発光性高分子化合物の製造)
ビニルスチリル基を有する以下のモノマー、重合性置換基を有するイリジウム錯体(上記式E−2で表される化合物)、正孔輸送性化合物(上記式E−46で表される化合物)、お
よび電子輸送性化合物(上記式E−59で表される化合物)を共重合させて、燐光発光性高
分子化合物を得た。脱水トルエン溶液に上記のモノマーをE−2:E−46:E−59=1:4:5
(モノマー仕込み重量比)および重合開始剤としてV-601(和光純薬工業製)で溶解させ
、凍結脱気操作を行った後に真空密閉し、70℃で100時間攪拌した。反応後、反応液を
アセトン中に滴下して沈殿を生じさせ、さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を3回
繰り返して精製した。ここで、アセトンおよびトルエンは高純度グレード(和光純薬工業製)を蒸留したものを用いた。また、再沈殿精製操作後の溶剤は高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、3回目の再沈殿精製後の溶剤中に400nm以上の吸収を有する物質が検出できないことを確認した。このようにして、燐光発光性高分子化合物中の不純物を取り除いた。その後、上記燐光発光性高分子化合物を、室温で2日間真空乾燥した。高速液体ク
ロマトグラフィー(検出波長254nm)により、得られた燐光発光性高分子化合物の純度が99.9%を超えることを確認した。
【0093】
この燐光発光性高分子化合物を窒素雰囲気中でトルエンに溶解し、溶液(A)を得た。
【実施例1】
【0094】
表面にITO(酸化インジウム錫)電極(陽極)が形成された100mm角のガラス基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸を、回転数3500rpm、塗布時間40秒の条件で、スピンコート法により塗布した。その後、真空乾燥器で減圧下、60℃で2時間乾燥し、陽極バッファー層を形成した。得られた陽極バッファー層の膜厚は、約50nmであった。
【0095】
続いて、この陽極バッファー層上に、溶液(A)を、回転数3000rpm、回転時間
30秒の条件で、スピンコート法により塗布した後、真空乾燥機で減圧下、暗中100℃で、一時間乾燥した。得られた有機EL化合物層3(発光層32)の厚さは80nmであった。
【0096】
次に、基板の有機EL化合物層3側の面に、図4に示すような、抜き加工により“きけん”という文字の形状の孔部7が設けられた板厚0.5mmのステンレス板6(材質:sus430)を配置し、これらをステンレス板6を蒸着源側に向けて真空蒸着装置内に載置し、抵抗加熱方式によりカルシウムを約10nmの厚さに蒸着し、有機EL化合物層3上に、図5に示すような、“きけん”という文字にパターン化した陰極バッファー層4を形成した。
【0097】
次に、上記のステンレス板6を取り除き、陰極バッファー層4が形成された有機EL化合物層3の上にアルミニウムを約100nmの厚さに蒸着し、陰極5を形成し、有機EL素子を作成した。
【0098】
このようにして形成した有機EL素子に、常法に従い熱硬化型エポキシ接着剤を用いてガラス製封止キャップを取り付け、次いで、電気配線、電源を取り付け、避難誘導灯を製造した。
【0099】
この避難誘導灯は、電圧を印加しない状態では陰極のアルミニウムにより鏡面状である。これに電圧15Vを印加すると、図6に示すように“きけん”という所定形状(文字)8
が発光により表示された。
【実施例2】
【0100】
陰極バッファー層4の形成工程を以下のように変更した以外は実施例1と同様の方法により“開演”という文字が表示される劇場用表示装置を作製した。
陰極バッファー層4の形成の際には、まず図7に示すような、抜き加工により孔部7が
設けられた板厚0.5mmのステンレス板6を用い、パターン化したカルシウム層を形成し、続いて、図8に示すような、抜き加工により孔部7が設けられた板厚0.5mmのステンレス板6を用い、図9に示すような、”開演“という文字の形状にパターン化されたカルシウム層、すなわち陰極バッファー層4を有機EL化合物層3上に形成した。
【0101】
この劇場用表示装置は電圧を印加しない状態では”開演“の文字は認知できなかった。一方、電圧を印加することで、図10に示すように”開演“という所定形状(文字)8が認知できた。
【0102】
この表示装置はこのパネルは、例えば、劇場内に設置し、観客への開演を知られる目的で使用できる。パネルは開演直前に一時的に点灯させる。非点灯時には、観客にはこの文字は認識できないため、観客の不要な注意を引かず、さらには劇場の内観をそこねることがないという長所がある。
【実施例3】
【0103】
陰極バッファー層4の形成の際のマスク形状を変更した以外は実施例2と同様の方法により、“火災発生“という所定形状(文字)が表示される警告表示装置を作製した。
この表示装置は非点灯状態では”火災発生“の文字は認識できず、陰極のアルミニウムが金属様に全反射することで、外見上は鏡面状であった。この表示装置は、この鏡面状であることから、例えば、化粧室内に既設の鏡に代替して設置することができる。電圧を印加しない状態では鏡として、通常の鏡と同等に機能する。一方、火災発生の非常時には、パネルに電圧を印加することで、鏡面に”火災発生“という文字が表示されることで、”火災発生“を知らせる非常警告装置として機能する。
【0104】
この表示装置は通常は鏡として機能することから、外観上好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、本発明で用いられる有機EL素子の一実施形態の模式断面図を示す。
【図2】図2は、パターニングされた陰極バッファー層の形状の一例を示す。
【図3】図3は、図2に示す陰極バッファー層のパターン形成に用いられる2種類のマスクを示す。
【図4】図4は、実施例1で用いられたマスクを示す。
【図5】図5は、実施例1で形成された陰極バッファー層の形状を示す。
【図6】図6は、実施例1で製造された避難誘導灯の点灯時(発光時)における正面模式図である。
【図7】図7は、実施例2で陰極バッファー層の形成に用いられたマスクを示す。
【図8】図8は、実施例2で陰極バッファー層の形成に用いられたマスクを示す。
【図9】図9は、実施例2で形成された陰極バッファー層の形状を示す。
【図10】図10は、実施例2で製造された劇場用表示装置の点灯時(発光時)における正面模式図である。
【図11】図11は、陰極バッファー層を有する従来の有機EL素子の一実施形態の模式断面図を示す。
【符号の説明】
【0106】
1・・・透明基板
2・・・陽極
3・・・有機EL化合物層
31・・・正孔輸送層
32・・・発光層
33・・・電子輸送層
4・・・陰極バッファー層
5・・・陰極
6・・・マスク
7・・・マスクの孔部
8・・・表示された所定形状


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状を表示する表示素子であって、
透明絶縁基板上に、透明陽極と、有機エレクトロルミネッセンス化合物層と、該所定形状と略同一形状にパターニングされた陰極バッファー層と、陰極とがこの順序で積層された有機エレクトロルミネッセンス素子からなる
ことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記有機エレクトロルミネッセンス化合物層が燐光発光性化合物を含有していることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記燐光発光性化合物がイリジウム錯体であることを特徴とする請求項2に記載の表示素子
【請求項4】
前記燐光発光性化合物が燐光発光性高分子化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の表示素子。
【請求項5】
前記燐光発光性高分子化合物が燐光発光性非共役高分子化合物であることを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
【請求項6】
前記燐光発光性非共役高分子化合物が、以下の式(X−1)で表される化合物中の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換したイリジウム錯体化合物から導かれる構造単位を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項5に記載の表示素子。
【化1】

(式(X−1)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R1とR2とで、R2とR3とで、R3とR4とで、R4とR5とで、R5とR6とで、R6とR7とで、R7とR8とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよく、Lは、下記式(X−2)〜(X−4)からなる群より選ばれる2座配位子を表す。)
【化2】

(式(X−2)中、R11〜R18は式(X−1)中のR1〜R8と同義である。)
【化3】

(式(X−3)中、R21〜R23は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R21とR22とで、R22とR23とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよい。)
【化4】

(式(X−4)中、R31〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、およびシリル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、R31とR32とで、R32とR33とで、R33とR34とで、互いに結合して縮合環を形成していてもよい。)
【請求項7】
前記燐光発光性非共役高分子化合物が、下記式(E−2)、(E−17)、(E−32)および(E−33)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物中の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換したイリジウム錯体化合物から導かれる構造単位を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項5に記載の表示素子。
【化5】

【請求項8】
所定形状を表示する表示素子の製造方法であって、
有機エレクトロルミネッセンス化合物層の表面に、該所定形状と略同一形状の陰極バッファー層を形成する工程、および
該陰極バッファー層の表面に陰極を形成する工程
を含むことを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記の陰極バッファー層を形成する工程において、前記所定形状と略同一形状の孔が空
けられたマスクを通して、有機エレクトロルミネッセンス化合物層上に陰極バッファー層形成材料を蒸着させた後、
前記陰極を形成する工程において、前記マスクを除去して陰極を形成する
ことを特徴とする請求項8に記載の表示素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の表示素子を備えた携帯電話表示画面。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の表示素子を備えた携帯用音楽プレーヤー表示画面。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれかに記載の表示素子を備えた車内バックミラー。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載の表示素子を備えた鏡。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかに記載の表示素子を備えた劇場用表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−305734(P2007−305734A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131532(P2006−131532)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】