説明

表示装置、輝度劣化補正方法および電子機器

【課題】表示装置が置かれる環境条件の影響を受けることなく、有効画素の輝度の劣化量を検出できるようにする。
【解決手段】表示パネル40上に劣化測定基準画素部51と基準画素部52とを隣接して設ける。劣化測定基準画素部51についてはあらかじめ定められた輝度で発光駆動し、当該劣化測定基準画素部51の輝度を検出する。一方、基準画素部52については、輝度の劣化量を検出するときに発光駆動し、当該基準画素部52の輝度を検出する。そして、劣化測定基準画素部51および基準画素部52の各輝度の検出結果を基に、有効画素の輝度の劣化分を補正する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、輝度劣化補正方法および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、電気光学素子として自発光型の素子(自発光素子)を用いた画素が行列状に配置されてなる平面型(フラットパネル型)の自発光表示装置が急速に普及している。自発光素子としては、例えば、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子が知られている。有機EL素子は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する、いわゆる電流駆動型の電気光学素子である。
【0003】
有機EL素子を電気光学素子として用いた有機EL表示装置は、次のような特長を持っている。すなわち、有機EL素子は、10V以下の印加電圧で駆動できるために消費電力が小さい。有機EL素子は、自発光素子であることから、画素ごとに液晶にて光源からの光強度を制御することによって画像を表示する液晶表示装置に比べて、画像の視認性が高い。しかも、バックライト等の照明部材を必要としないために軽量化および薄型化が容易である。さらに、有機EL素子の応答速度が数μsec程度と非常に高速であるために動画表示時の残像が発生しない。
【0004】
一方で、有機EL素子に代表される自発光素子は、一般的に、発光量と発光時間に比例して輝度効率が低下することが知られている。そのため、自発光表示装置においては、表示に寄与する有効画素と同じ表示パネル(基板)上に、表示に寄与しないダミー画素を基準画素として設け、当該基準画素の輝度の劣化量から有効画素の輝度の劣化量を予測するようにしている。そして、基準画素の輝度の劣化量を検出(測定)し、その検出結果を基に有効画素の輝度が劣化した分を補正するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−240804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の従来技術のように、基準画素の輝度の劣化量を基に有効画素の輝度劣化を補正するに当たっては、基準画素の輝度の劣化量を正しく検出(測定)する必要がある。しかしながら、一般的に、基準画素の輝度の劣化量を検出する環境の温度や明るさなどの環境条件によって検出結果が大きく左右されるために、正しい劣化量を検出することは非常に難しい。
【0007】
基準画素の輝度の劣化量を正しく検出するには、一定の入力に応じた出力レベルを定期的に観測して初期の値と比較する必要がある。ここで、劣化量を正確に検出するための阻害となる要因としては、基準画素の発光輝度を測定する輝度測定器の特性ばらつきと測定環境が挙げられる。
【0008】
表示装置において、輝度測定器を用いて基準画素の輝度の劣化量を定期的に測定するには当該輝度測定器は大きく、高価であるために不向きである。したがって、一般的には、フォトダイオード等による輝度センサが基準画素の輝度の劣化量の検出に用いられる。この輝度センサは、ダイオードと同程度の特性ばらつきを持っているため、基準画素の輝度の劣化量を正確な絶対値として検出することが難しい。また、輝度センサはフォトダイオードからなることによって温度特性が大きいために、表示装置が置かれる環境条件によって検出値が大きくことなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、表示装置が置かれる環境条件の影響を受けることなく、有効画素の輝度の劣化量を検出することが可能な表示装置、当該表示装置における輝度劣化補正方法および当該表示装置を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、表示装置の輝度劣化の補正に当たって、
あらかじめ定められた輝度で発光駆動される第1の基準画素部と、
輝度の劣化量を検出するときに発光駆動される第2の基準画素部とを用い、
前記第1、第2の基準画素部の各輝度の検出結果を基に表示に寄与する有効画素の輝度の劣化分を補正する。
【0011】
第1の基準画素部をあらかじめ定められた輝度で発光駆動し、当該第1の基準画素部の輝度を検出することで、輝度劣化が進行した第1の基準画素部の輝度の検出結果を、表示装置が置かれる環境条件に応じて得ることができる。この輝度劣化後の検出結果からは、輝度劣化が進行した有効画素の輝度の劣化量を、表示装置が置かれる環境条件に応じて予測することができる。一方、輝度の劣化量を検出するときに第2の基準画素部を発光駆動し、当該第2の基準画素部の輝度を検出することで、輝度劣化が進行していない初期状態の第2の基準画素部の輝度の検出結果を、表示装置が置かれる環境条件に応じて得ることができる。この初期の輝度状態の検出結果からは、表示装置が置かれる環境条件に応じた有効画素の初期状態の輝度を予測することができる。
【0012】
すなわち、第1の基準画素部の輝度の検出結果も、第2の基準画素部の輝度の検出結果も共に、表示装置が置かれる環境条件に応じた検出結果となる。これら第1、第2の基準画素部の各輝度の検出結果からは、表示装置が置かれる環境条件の影響を排除した、有効画素の初期状態からの輝度の劣化量を求めことができる。そして、第1、第2の基準画素部の各輝度の検出結果から求めた劣化量を基に有効画素の輝度を制御することで、有効画素の初期状態からの輝度の劣化分を補正することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1、第2の基準画素部の各輝度の検出結果が共に表示装置が置かれる環境条件に応じた検出結果であるために、当該環境条件の影響を受けることなく、有効画素の輝度の劣化量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が適用される有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【図2】本発明が適用される有機EL表示装置の画素(画素回路)の回路構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置の構成例を示す概略構成図である。
【図4】第1実施形態に係る有機EL表示装置における基準画素部と劣化測定画素部の配置関係を示す図である。
【図5】実施例1に係る輝度センサの配置構造を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【図6】実施例2に係る輝度センサの配置構造を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【図7】実施例3に係る輝度センサの配置構造を示す側断面図である。
【図8】輝度劣化補正処理部の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】特定の輝度における発光時間に対する輝度の劣化率を示す図である。
【図10】劣化測定画素部および基準画素部の各々についての発光時間に対する検出輝度(実測値)の変化を示す図である。
【図11】発光時間に対する劣化測定画素部の輝度の劣化率を示す図である。
【図12】劣化測定画素部の明るさを3通りに設定した場合の発光時間に対する劣化測定画素部の輝度の劣化率を示す図である。
【図13】劣化測定画素部の明るさを10通りに設定した場合の発光時間に対する劣化測定画素部の輝度の劣化率を示す図である。
【図14】発光時間に対する有効画素の輝度劣化分の補正値を示す図である。
【図15】輝度劣化量の測定処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置の構成例を示す概略構成図である。
【図17】第2実施形態に係る有機EL表示装置における基準画素部と劣化測定画素部の配置関係を示す図である。
【図18】本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。
【図19】本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図20】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【図21】本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。
【図22】本発明が適用される携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.本発明が適用される表示装置(有機EL表示装置の例)
1−1.システム構成
1−2.画素回路
2.第1実施形態(基準画素と劣化測定画素を横に並べた例)
2−1.基準画素部の構成
2−2.輝度センサの構成
2−3.輝度劣化補正処理部
2−4.輝度劣化量の測定方法
2−5.第1実施形態の作用効果
3.第2実施形態(基準画素を中心に劣化測定画素を上下左右斜めに並べた例)
3−1.基準画素部の構成
3−2.輝度センサの構成
3−3.第2実施形態の作用効果
4.変形例
5.適用例(電子機器)
【0016】
<1.本発明が適用される表示装置>
[1−1.システム構成]
図1は、本発明が適用されるアクティブマトリクス型表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。ここでは、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子を画素(画素回路)の発光素子として用いたアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。
【0017】
図1に示すように、本適用例に係る有機EL表示装置10は、自発光素子である有機EL素子を含む複数の画素20が行列状に2次元配置された画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の各画素20を駆動する駆動部とを有する構成となっている。ここでは図示を省略するが、駆動部は書込み走査部、電源供給部、信号供給部等からなる。
【0018】
ここで、有機EL表示装置10がカラー表示対応の場合は、1つの画素は複数の副画素(サブピクセル)から構成され、この副画素が画素20に相当することになる。より具体的には、カラー表示用の表示装置では、1つの画素は、赤色光(R)を発光する副画素、緑色光(G)を発光する副画素、青色光(B)を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
【0019】
ただし、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、3原色の副画素にさらに1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色光(W)を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0020】
画素アレイ部30には、行列状の画素20の配列に対して、行方向(画素行の画素の配列方向)に沿って書込み走査線31と電源供給線32とが画素行ごとに配線されている。さらに、列方向(画素列の画素の配列方向)に沿って信号線33が画素列ごとに配線されている。
【0021】
画素アレイ部30は、通常、ガラス基板などの透明絶縁基板上に形成されている。これにより、有機EL表示装置10は、平面型(フラット型)のパネル構造となっている。画素20の有機EL素子を駆動する駆動回路は、アモルファスシリコンTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)または低温ポリシリコンTFTを用いて形成することができる。低温ポリシリコンTFTを用いる場合には、書込み走査部、電源供給部、信号供給部等の駆動部についても、画素アレイ部30を形成する表示パネル(基板)40上に実装することができる。
【0022】
[1−2.画素回路]
図2は、画素(画素回路)20の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【0023】
図2に示すように、画素20は、自発光素子、例えばデバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子である有機EL素子21と、当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線(いわゆる、ベタ配線)された共通電源供給線34にカソード電極が接続されている。
【0024】
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23および保持容量24によって構成されている。ここでは、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23として、Nチャネル型のトランジスタを用いている。ただし、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
【0025】
なお、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いると、アモルファスシリコン(a−Si)プロセスを用いることができる。a−Siプロセスを用いることで、TFTを作成する基板の低コスト化、ひいては本有機EL表示装置10の低コスト化を図ることが可能になる。また、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23を同じ導電型の組み合わせにすると、両トランジスタ22,23を同じプロセスで作成することができるために低コスト化に寄与できる。
【0026】
駆動トランジスタ22は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が電源供給線32に接続されている。
【0027】
ここで、電源供給線32には電源供給部(図示せず)から、第1電源電位と当該第1電源電位よりも低い第2電源電位で切り替わる電源電位が選択的に供給される。本例に係る画素回路の場合、電源供給線32の電源電位の切替えにより、画素20の発光/非発光の制御が行なわれる。
【0028】
書込みトランジスタ23は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が信号線33に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。また、書込みトランジスタ23のゲート電極は、走査線31に接続されている。
【0029】
駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23において、一方の電極とは、ソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言い、他方の電極とは、ドレイン/ソース領域に電気的に接続された金属配線を言う。また、一方の電極と他方の電極との電位関係によって一方の電極がソース電極ともなればドレイン電極ともなり、他方の電極がドレイン電極ともなればソース電極ともなる。
【0030】
保持容量24は、一方の電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ22の他方の電極および有機EL素子21のアノード電極に接続されている。
【0031】
上記構成の画素20において、書込みトランジスタ23は、書込み走査部(図示せず)から走査線31を通してゲート電極に印加されるHighアクティブの書込み走査信号に応答して導通状態となる。これにより、書込みトランジスタ23は、信号線33を通して信号出力回路60から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigをサンプリングして画素20内に書き込む。この書き込まれた信号電圧Vsigは、駆動トランジスタ22のゲート電極に印加されるとともに保持容量24に保持される。
【0032】
駆動トランジスタ22は、電源供給線32の電源電位が第1電源電位にあるときには、一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極となって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、電源供給線32から電流の供給を受けて有機EL素子21を電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作することにより、保持容量24に保持された信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子21に供給し、当該有機EL素子21を電流駆動することによって発光させる。
【0033】
駆動トランジスタ22はさらに、電源供給線32の電源電位が第1電源電位から第2電源電位に切り替わったときは、一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極となってスイッチングトランジスタとして動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21への駆動電流の供給を停止し、有機EL素子21を非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタとしての機能をも併せ持っている。
【0034】
この駆動トランジスタ22のスイッチング動作により、有機EL素子21が非発光状態となる期間(非発光期間)を設け、有機EL素子21の発光期間と非発光期間の割合(デューティ)を制御することができる。このデューティ制御により、1フレーム期間に亘って画素が発光することに伴う残像ボケを低減できるために、特に動画の画品位をより優れたものとすることができる。
【0035】
なお、上述した画素回路の回路構成は一例に過ぎない。すなわち、有機EL素子21の駆動回路としては、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の2つのトランジスタ素子と保持容量24の1つの容量素子とからなる回路構成のものに限られるものではない。
【0036】
他の回路例としては、例えば、一方の電極が有機EL素子21のアノード電極に、他方の電極が固定電位にそれぞれ接続されることで、有機EL素子21の容量不足分を補う補助容量を必要に応じて設けた回路構成を採ることも可能である。さらには、駆動トランジスタ22に対して直列にスイッチングトランジスタを接続し、当該スイッチングトランジスタの導通/非導通によって有機EL素子21の発光/非発光の制御を行う回路構成を採ることも可能である。
【0037】
上記構成の有機EL表示装置10に代表される自発光型表示装置では、前にも述べたように、表示パネル40上に、表示に寄与しないダミー画素を基準画素として設け、当該基準画素の輝度の劣化量から画素20の輝度の劣化量を予測するようにしている。ここで、画素アレイ部30の画素20は表示に寄与する画素である(以下、有効画素20と記述する場合もある)。そして、基準画素の輝度の劣化量を検出(測定)し、その検出結果を基に有効画素20の輝度が劣化した分を補正するようにしている。本発明は、この輝度劣化補正回路、特に基準画素の部分の構成を特徴としている。以下に、その具体的な実施形態について説明する。
【0038】
<2.第1実施形態>
[2−1.基準画素部の構成]
図3は、本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置10Aの構成例を示す概略構成図である。図3において、図1と同等部分(対応する部分)には同一符号を付して示し、その詳細な説明については重複するのでここでは省略する。
【0039】
図3に示すように、表示パネル40上の画素アレイ部(有効表示領域)30の周辺部、例えば画素アレイ部30を挟んでその左右両側の空白領域(いわゆる、額縁領域)には、第1,第2の基準画素部51,52が対をなして複数組設けられている。すなわち、第1,第2の基準画素部51,52は1対1の対応関係をもって設けられている。また、対をなす第1,第2の基準画素部51,52は、例えば隣接して設けられている。
【0040】
図4に示すように、隣接して設けられる第1,第2の基準画素部51,52のうち、第1の基準画素部51は、有効画素20の輝度の劣化量を測定するためのダミー画素である。したがって、第1の基準画素部51は、あらかじめ定められた特定の色および輝度で有効画素回路と同等の駆動方式により常時発光駆動される。そして、第1の基準画素部51の輝度を検出することで、その検出結果から有効画素20の輝度の劣化量を予測することができる。以下、この第1の基準画素部51を劣化測定画素部51と記述する。複数組分の劣化測定画素部51は各々異なる輝度で発光駆動される。
【0041】
一方、第2の基準画素部52は、有効画素20の初期状態の輝度を測定するためのダミー画素である。したがって、第2の基準画素部52は、常時消灯状態にあり、有効画素20の輝度の劣化量を検出するときに発光駆動される。そして、後述するように、第2の基準画素部52の検出結果を基準とし、第1の基準画素部51の検出結果と第2の基準画素部52の検出結果とを比較することにより、有効画素20の初期状態からの輝度の劣化量を予測することができる。以下、この第2の基準画素部52を単に基準画素部52と記述する。
【0042】
ここで、常時消灯状態にある基準画素部52は、輝度の劣化状態を検出(測定)するときのみ劣化測定画素部51と同じ条件で発光駆動される。一方、劣化測定画素部51については、有機EL表示装置10Aが動作している期間に亘って一定の条件で常時発光駆動される。ここで、一定の発光条件としては、様々な条件が挙げられるが、以下にその一例を列挙する。
【0043】
発光条件例1)
劣化測定画素部51を基準輝度で常時発光駆動する。基準輝度としては、例えば、有機EL表示装置10Aの最大輝度または当該最大輝度の1/2の輝度が考えられる。
発光条件例2)
有機EL表示装置10Aの全体に表示されている輝度の平均レベルで劣化測定画素部51を常時発光駆動する。
【0044】
劣化測定画素部51および基準画素部52の各輝度は後述する輝度センサによって検出(測定)される。この輝度センサが十分な光量を検出するためには、劣化測定画素部51および基準画素部52にはなるべく多くの画素を配置することが望ましい。
【0045】
一例として、画素アレイ部30の画素20のサイズを基準としたとき、劣化測定画素部51および基準画素部52は、たて数ピクセル×よこ数ピクセルの画素数(ピクセル数)とすることにより、輝度センサが十分な光量を検出することができる。また、劣化測定画素部51および基準画素部52を、輝度センサが検出する光量を満足する画素数とすることで、輝度センサを劣化測定画素部51および基準画素部52に対して設置する際の機械的な寸法精度を緩和することができる。
【0046】
ただし、劣化測定画素部51および基準画素部52の各々に多くの画素を配置しすぎると画素アレイ部(有効表示領域)30外のスペースを多くとり、デザイン的な制約が多くなるというデメリットがある。そればかりでなく、発光画素自身による温度上昇の影響も無視できなくなるため、輝度センサへの光量を満足しつつ最小限の画素数で配置することが望ましい。具体的には、一例として、1.5mm角の輝度センサに対して、3倍程度の4.5mm角となるような画素数にて劣化測定画素部51および基準画素部52を構成する。
【0047】
(発光駆動の形態例)
図3の例では、劣化測定画素部51および基準画素部52の対を、画素アレイ部30の左右両側の額縁領域に複数組ずつ、例えば5組ずつ計10組配置している。この配置例において、10組の劣化測定画素部51の発光駆動に関して、例えば次の2つの駆動例が考えられる。
【0048】
形態例1)
10組の対の配置例において、一方の額縁側の5組の対の劣化測定画素部51についてそれぞれ異なる輝度、計5段階の輝度で発光駆動するようにする。他方の額縁側の5組の対の劣化測定画素部51についても、一方の額縁側の5組の劣化測定画素部51と同じ計5段階の輝度で発光駆動するようにする。
【0049】
このように、画素アレイ部30の左右両側に設けられた例えば5組ずつの対の劣化測定画素部51について左右両側で同じ輝度で発光駆動することにより、左右両側で同じ発光条件で輝度の劣化量を検出できる。したがって、片側の額縁側だけで輝度の劣化量の検出を行う場合に比べて劣化量の検出精度を上げることができる。
【0050】
形態例2)
10組の対の配置例において、一方の額縁側の5組の対の劣化測定画素部51および他方の額縁側の5組の対の劣化測定画素部51について全て異なる輝度で発光駆動するようにする。すなわち、画素アレイ部30の片側5組、計10組の対の劣化測定画素部51について全て異なる輝度、即ち計10段階の輝度で発光駆動するようにする。
【0051】
このように、画素アレイ部30の左右両側に例えば5組ずつ設けられた劣化測定画素部51について全て異なる輝度で発光駆動することにより、10段階の輝度の下で輝度の劣化量を検出できる。したがって、5段階の輝度の下で輝度の劣化量の検出を行う場合に比べて劣化量を検出する際の分解能を上げることができる。
【0052】
[2−2.輝度センサの構成]
輝度センサは、例えば劣化測定画素部51および基準画素部52の発光面側に設けられる。輝度センサには周知の光検出素子を用いることができる。一例として、アモルファスシリコン半導体を用いた可視光センサを用いることができる。輝度センサは、例えば、電流値として検出される輝度情報(光量情報)を電圧値として出力する。以下に、輝度センサの配置構造の具体的な実施例について説明する。
【0053】
(実施例1)
図5は、実施例1に係る輝度センサの配置構造を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【0054】
図5に示すように、実施例1に係る輝度センサの配置構造では、劣化測定画素部51および基準画素部52に対して輝度センサ53,54が1対1の対応関係をもって1個ずつ配置されている。輝度センサ53,54は、劣化測定画素部51および基準画素部52の各受光面と対向するように配置されている。
【0055】
この配置関係において、輝度センサ53,54の各々に対して、隣接する画素部52,51からの光や外光が入り込まないようにするために、輝度センサ53,54の周りを遮光板55で囲むようにする。遮光板55を設けなくても、輝度センサ53,54間の距離を十分に離すようにしても、輝度センサ53,54に隣接する画素部52,51からの光が入り込まないようにすることができる。
【0056】
ただし、輝度センサ53,54間の距離を十分に離すようにした場合、劣化測定画素部51および基準画素部52を隣接させる効果(その詳細について後述する)が薄れてしまうため、輝度センサ53,54間の距離を離すよりも遮光板55を設ける方が望ましい。
【0057】
このように、劣化測定画素部51および基準画素部52に対して輝度センサ53,54を1個ずつ配置することで、劣化測定画素部51および基準画素部52の各輝度(光量)を並行して検出(測定)することができる。また、劣化測定画素部51および基準画素部52の各輝度が輝度センサ53,54によって個別に検出されるため、劣化測定画素部51および基準画素部52の各サイズについては必ずしも同じに設定する必要はない。
【0058】
(実施例2)
図6は、実施例2に係る輝度センサの配置構造を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【0059】
図6に示すように、実施例2に係る輝度センサの配置構造では、劣化測定画素部51および基準画素部52に対してその受光面側の中間位置に輝度センサ56が、劣化測定画素部51および基準画素部52の双方に跨った状態で1個配置されている。
【0060】
実施例1に係る輝度センサの配置構造では、劣化測定画素部51および基準画素部52に対して輝度センサ53,54が1個ずつ配置されている。この場合、輝度センサ53,54について、その特性が劣化測定画素部51および基準画素部52の各々について同等の特性であることをあらかじめ確認しておく必要がある。
【0061】
つまり、輝度劣化の検出を行うための測定を行う前に輝度センサ53,54の各々について校正を行っておく必要があるということになる。この校正作業については、作業工程が増え、コストアップになるばかりか、精度を増すために比較用の画素部の数を増やすとすると、輝度センサの数も同じだけ増えるとともに、その校正結果を保存しておくメモリも必要となり、さらにその量も増大することとなる。
【0062】
これに対して、劣化測定画素部51および基準画素部52の輝度検出に単一の輝度センサ56を共用する実施例2に係る輝度センサの配置構造によれば、上記の校正作業を行う必要がなくなる。また、輝度センサの数量も、劣化測定画素部51および基準画素部52に対して1個ずつ配置場合に比べて半分で済む。また、校正結果を保存しておくメモリも不要になる。
【0063】
(実施例3)
図7は、実施例3に係る輝度センサの配置構造を示す側断面図である。
【0064】
図7に示すように、実施例3に係る輝度センサの配置構造では、実施例2に係る輝度センサの配置構造と同様に、劣化測定画素部51および基準画素部52の輝度検出に単一の輝度センサ56を共用する構造を採る。加えて、実施例3に係る輝度センサの配置構造では、劣化測定画素部51および基準画素部52と輝度センサ56との間に拡散板57を配置した構造を採っている。
【0065】
このように、劣化測定画素部51および基準画素部52と輝度センサ56との間に拡散板57を配置することで、当該拡散板57の散乱・拡散作用によって劣化測定画素部51および基準画素部52から発せられる光を輝度センサ56の全体に入射させることができる。
【0066】
[2−3.輝度劣化補正処理部]
続いて、劣化測定画素部51および基準画素部52の輝度検出データを基に、画素アレイ部30の全画素(有効画素)20の輝度の劣化分を補正する輝度劣化補正処理部60の構成および処理について説明する。
【0067】
図8は、輝度劣化補正処理部60の構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、本例に係る輝度劣化補正処理部60は、劣化量算出部61、補正値算出部62、画像データ積算部63および補正部64によって構成されている。
【0068】
劣化量算出部61は、複数の劣化測定画素部51をそれぞれ異なる輝度で発光させた場合の検出センサ53/55の検出結果(以下、「劣化データ」と記述する)を取得することで、基準となる輝度における発光時間に対する輝度の劣化率(劣化量)を算出する。図9に、特定の輝度における発光時間に対する輝度の劣化率を示す。
【0069】
図10は、劣化測定画素部51および基準画素部52の各々についての発光時間に対する検出輝度(実測値)の変化を示す図である。図10において、検出輝度が発光時間に比例して低下しないのは、即ち検出輝度が上下に変動するのは、有機EL表示装置10が置かれる環境条件、具体的には環境の温度や明るさの影響を受けるからである。
【0070】
そして、劣化量算出部61において、(劣化測定画素部51についての劣化データ/基準画素部52についての劣化データ)なる演算を行うことで、発光時間に対する劣化測定画素部51の劣化率(劣化量)を求めることができる。図11は、発光時間に対する劣化測定画素部51の輝度の劣化率を示す図である。図12に、劣化測定画素部51の明るさ(輝度)を3通りに設定した場合の発光時間に対する劣化測定画素部51の輝度の劣化率を示す。また、図13に、劣化測定画素部51の明るさを10通りに設定した場合の発光時間に対する劣化測定画素部51の輝度の劣化率を示す。
【0071】
補正値算出部62は、劣化量算出部61で算出された劣化量(劣化率)と画像データ積算部63から与えられる情報とを基に、全ての有効画素20について輝度劣化分の補正値を算出する。図14に、発光時間に対する有効画素20の輝度劣化分の補正値を示す。画像データ積算部63は、補正部64で輝度の劣化分が補正された画像データを積算して各有効画素20が基準でどのくらいの時間に相当する発光時間で発光したかを算出する。
【0072】
補正部64は、補正値算出部62で算出された輝度劣化分の補正値を基に、入力される映像データに対して画素単位で補正処理を行う。輝度劣化分の補正が為された映像データは、画像データ積算部63に供給されるとともに、パネル駆動タイミング発生部70に供給される。パネル駆動タイミング発生部70は、先述した画素アレイ部30の各画素20を駆動する駆動部に相当し、書込み走査部、電源供給部、信号供給部等によって構成される。
【0073】
以上、輝度劣化補正処理部60の構成の一例について説明したが、輝度劣化補正処理部60としてはこの構成のものに限られるものではない。すなわち、劣化測定画素部51についての劣化データおよび基準画素部52についての劣化データに基づいて、有効画素20の輝度の劣化分を補正できるものであればその構成は問わない。
【0074】
[2−4.輝度劣化量の測定方法]
次に、輝度劣化量の測定方法について、図15のフローチャートを用いて説明する。ここでは、実施例1に係る輝度センサの配置構造、即ち劣化測定画素部51および基準画素部52に対して輝度センサ53,54が1個ずつ配置されている配置構造の場合を例に挙げて説明するものとする。
【0075】
まず始めに、劣化測定画素部51および基準画素部52の初期状態を観測する(ステップS11)。初期状態は、劣化測定画素部51とそれに隣接する基準画素部52について同じ光量で発光させてそれぞれの輝度センサ53,54で光量(輝度)を測定する。このときの光量は輝度センサ53,54が測定し比較における精度を得るに十分な光量であることが望ましい。
【0076】
ここで、初期状態の輝度の測定により、劣化測定画素部51の初期輝度とそれに隣接する基準画素部52の初期輝度を得ることができる。ただし、測定値には測定誤差や輝度センサ53,54の特性バラツキが含まれているために必ずしも初期の測定値が一致するとは限らず、むしろ異なる値を示すことが多い。
【0077】
そこで、初期状態の観測によって得られた値の比を初期状態(経過時間=0)比100%とする。
初期状態比100%(経過0時間)=センサ測定値(劣化測定画素輝度)
/センサ測定値(基準画素輝度) …(1)
【0078】
次に、有効画素20の劣化状態を測定するまでの間についての条件について述べる。基準画素部52については、常時消灯させておき劣化状態を測定するときのみ劣化測定画素部51と同じ条件で発光させる。
【0079】
劣化測定画素部51については、有機EL表示装置10が動作している間一定の条件で常時発光させておく。ここで、一定の条件としては様々な条件が挙げられるが、以下にその一例を列挙する。
【0080】
表示例1)
基準輝度で発光させる。例えば、有機EL表示装置10の最大輝度。または、有機EL表示装置10の最大輝度の1/2。
表示例2)
有機EL表示装置10全体に表示されている平均レベルで発光させる。
【0081】
初期状態比100%の算出後、一定時間経過したか否かを判断し(ステップS13)、一定時間経過した後初期状態を測定したときと同じ要領で劣化測定画素部51の輝度とそれに隣接する基準画素部52の輝度を輝度センサ53,54によって測定する(ステップS14)。
【0082】
ここで、劣化測定画素部51と基準画素部52の各輝度の測定間隔について、理想的にはなるべく短い間隔で測定することが望ましい。その際、あらかじめ素子の劣化特性が推測できる場合においては、劣化が1%に満たない間隔で測定を行い、補正をかけることにより、有機EL表示装置10の表示品位を損なうことが無い。ただし、これは理想的な測定間隔であり、表示内容や使用目的、表示装置の性格により適切に設定するようにすると良い。
【0083】
次に、それぞれの輝度センサ53,54で測定した値より、次式(2)に基づいて経過時間h後の比を計算する。
劣化率(経過時間h)=センサ測定値(劣化測定画素輝度)
/センサ測定値(基準画素輝度) …(2)
【0084】
式(2)に基づく計算により、経過時間h後の被測定素子、即ち劣化測定画素部51の劣化率が得られる。
【0085】
このとき、初期状態から時間hが経過した時点では、初期状態を測定したときと環境が大きく異なっていることが考えられる。例えば、初期状態では有機EL表示装置10の製造工場において温度や湿度が一定の状態に管理された条件で測定された基準となる値であったとしても、時間hが経過した後は同じ環境条件にあるとは言えない。
【0086】
すなわち、時間hが経過した後は有機EL表示装置10が使用される環境下において輝度の測定が行われるため温度や湿度がいかなる条件の下で使用されるかは想定できない
よって、温度や湿度による輝度センサ53,54の特性変動や有機EL表示装置10自身の温度特性が直接測定値に現れてしまうことになる。
【0087】
しかし、劣化測定画素部51とそれに隣接する基準画素部52について、輝度センサ53,54の各検出結果を比較する際の精度を得るに十分な光量で発光させ、それらの検出結果を比較することにより、環境変化の影響をキャンセルした劣化度合いを得ることができる。しかも、このとき得られた劣化被測定素子の劣化度合いは比で表され一目瞭然である。
【0088】
以上では、実施例1に係る輝度センサの配置構造の場合の輝度劣化量の測定方法について述べたが、実施例2,3に係る輝度センサの配置構造の場合にも基本的に同様である。そして、実施例2,3に係る輝度センサの配置構造、即ち劣化測定画素部51および基準画素部52に対して単一の輝度センサ55を共用する配置構造の場合には、輝度センサの特性ばらつきや環境による測定誤差については排除することが可能となる。
【0089】
[2−5.第1実施形態の作用効果]
以上説明したように、劣化測定基準画素部51と基準画素部52とを用い、これら画素部51,52の各輝度の検出結果を基に、有効画素20の輝度の劣化分を補正する処理を行うことで、次のような作用効果をすることができる。
【0090】
すなわち、劣化測定基準画素部51をあらかじめ定められた輝度で発光駆動し、当該劣化測定基準画素部51の輝度を検出することで、輝度劣化が進行した劣化測定基準画素部51の輝度の検出結果を、有機EL表示装置10Aが置かれる環境条件に応じて得ることができる。この輝度劣化後の検出結果からは、輝度劣化が進行した有効画素20の輝度の劣化量を、有機EL表示装置10Aが置かれる環境条件に応じて予測することができる。
【0091】
一方、輝度の劣化量を検出するときに基準画素部52を発光駆動し、当該基準画素部52の輝度を検出することで、輝度劣化が進行していない初期状態の基準画素部52の輝度の検出結果を、有機EL表示装置10Aが置かれる環境条件に応じて得ることができる。この初期の輝度状態の検出結果からは、有機EL表示装置10Aが置かれる環境条件に応じた有効画素20の初期状態の輝度を予測することができる。
【0092】
すなわち、劣化測定基準画素部51の輝度の検出結果も、基準画素部52の輝度の検出結果も共に、有機EL表示装置10Aが置かれる環境条件に応じた検出結果となる。劣化測定基準画素部51および基準画素部52の各輝度の検出結果からは、有機EL表示装置10Aが置かれる環境条件の影響を排除した、有効画素20の初期状態からの輝度の劣化量を求めことができる。
【0093】
そして、劣化測定基準画素部51および基準画素部52の各輝度の検出結果から求めた劣化量を基に有効画素20の輝度を制御することで、有効画素20の初期状態からの輝度の劣化分を補正することができる。すなわち、劣化測定基準画素部51および基準画素部52の各輝度の検出結果が共に有機EL表示装置10Aが置かれる環境条件に応じた検出結果であるために、当該環境条件の影響を受けることなく、有効画素20の輝度の劣化量を検出することができる。
【0094】
<3.第2実施形態>
[3−1.基準画素部の構成]
図16は、本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置10Bの構成例を示す概略構成図である。図16において、図3と同等部分(対応する部分)には同一符号を付して示し、その詳細な説明については重複するのでここでは省略する。
【0095】
図16に示すように、表示パネル40上の画素アレイ部30の周辺部、例えば画素アレイ部30を挟んでその左右両側の額縁領域には、1つの基準画素部(第2の基準画素部)52と複数の劣化測定画素部(第2の基準画素部)81とが組をなして設けられている。本例では、1つの基準画素部52と複数の劣化測定画素部81との組が、左右両側の額縁領域に複数組、本例では6組設けられている。
【0096】
具体的には、図17に示すように、1つの基準画素部52と複数の劣化測定画素部81との組は、基準画素部52を中心とし、当該基準画素部52の周囲に例えば8個の劣化測定画素部51−1〜51−8が設けられた構成となっている。すなわち、8個の劣化測定画素部51−1〜51−8は、基準画素部52に対してその上下左右斜めの位置関係で隣接して設けられている。
【0097】
8個の劣化測定画素部51−1〜51−8は、画素アレイ部30の各有効画素20の輝度の劣化量を測定するためのダミー画素である。そして、劣化測定画素部51−1〜51−8は、あらかじめ定められた特定の輝度で常時発光駆動される。そして、8個の劣化測定画素部51−1〜51−8の輝度を検出することで、その検出結果から有効画素20の輝度ごとの劣化量を予測することができる。
【0098】
一方、基準画素部52は、有効画素20の初期状態の輝度を測定するためのダミー画素である。この基準画素部52は、常時消灯状態にあり、有効画素20の輝度の劣化量を検出するときに発光駆動される。そして、第1実施形態の場合と同様に、基準画素部52の検出結果を基準とし、劣化測定画素部51−1〜51−8の検出結果と基準画素部52の検出結果とを比較することにより、有効画素20の初期状態からの輝度の劣化量を予測することができる。
【0099】
劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52の各輝度は、第1実施形態の場合と同様に、輝度センサによって検出(測定)される。この輝度センサが十分な光量を検出するためには、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52にはなるべく多くの画素を配置することが望ましい。
【0100】
一例として、画素アレイ部30の画素20のサイズを基準としたとき、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52は、たて数ピクセル×よこ数ピクセルの画素数(ピクセル数)とすることにより、輝度センサが十分な光量を検出することができる。また、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52を、輝度センサが検出する光量を満足する画素数とすることで、輝度センサを劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52に対して設置する際の機械的な寸法精度を緩和することができる。
【0101】
ただし、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52の各々に多くの画素を配置しすぎると額縁領域のスペースを多くとり、デザイン的な制約が多くなるというデメリットがある。そればかりでなく、発光画素自身による温度上昇の影響も無視できなくなるため、輝度センサへの光量を満足しつつ最小限の画素数で配置することが望ましい。具体的には、一例として、1.5mm角の輝度センサに対して、3倍程度の4.5mm角となるような画素数にて劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52を構成する。
【0102】
ここで、常時消灯状態にある基準画素部52は、輝度の劣化状態を検出(測定)するときのみ劣化測定画素部51と同じ条件で発光駆動される。一方、劣化測定画素部51−1〜51−8については、これら8個の劣化測定画素部51−1〜51−8の発光条件として複数設定することが可能となる。
【0103】
具体的には、第1実施形態の場合の発光条件例1(有機EL表示装置10Bの最大輝度または当該最大輝度の1/2の輝度)での発光と、発光条件例2(有機EL表示装置10Bの全体に表示されている輝度の平均レベル)での発光の双方を同時に実施可能となる。また他の発光条件例として次のような条件が考えられる。すなわち、8個の劣化測定画素部51−1〜51−8のうちの1個を、有機EL表示装置10Bの全体に表示されている輝度の平均レベルで発光駆動し、残りの7個についてはそれぞれ異なる基準輝度にて7段階の輝度で発光駆動する。
【0104】
[3−2.輝度センサの構成]
輝度センサについては、第1実施形態の場合と同様に、アモルファスシリコン半導体を用いた可視光センサを用いることができる。また、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52との関係においては、第1実施形態の実施例1また実施例3に係る輝度センサの配置構造を採ることができる。
【0105】
(実施例1の場合)
第1実施形態の実施例1に係る配置構造の場合と同様に、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52に対して輝度センサを1対1の対応関係をもって1個ずつ配置する(図5参照)。このとき、輝度センサは、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52の各受光面と対向するように配置される。
【0106】
このように、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52に対して輝度センサを1個ずつ配置することで、各画素部51−1〜51−8,52の輝度(光量)を並行して検出(測定)することができる。また、各画素部51−1〜51−8,52の輝度が輝度センサによって個別に検出されるため、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52の各サイズについては必ずしも同じに設定する必要はない。
【0107】
(実施例3の場合)
第1実施形態の実施例3に係る配置構造の場合と同様に、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52に対して単一の輝度センサを共用する一方、当該輝度センサと劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52との間に拡散板を配置する(図7参照)。
【0108】
このように、劣化測定画素部51−1〜51−8および基準画素部52と単一の輝度センサとの間に拡散板を配置することで、当該拡散板の散乱・拡散作用によって各画素部51−1〜51−8,52から発せられる光を単一の輝度センサに導くことができる。したがって、基準画素部52を中心としてその周囲に隣接して劣化測定画素部51を複数配置できるとともに、単一の輝度センサを複数の劣化測定画素部51に対して共用できる利点がある。
【0109】
上記構成の第2実施形態に係る有機EL表示装置10Bにおいて、輝度センサの検出結果(劣化データ)に基づく輝度劣化の補正や輝度劣化量の測定については、基本的には、第1実施形態に有機EL表示装置10Aの場合と同じである。したがって、ここでは、その詳細な説明については重複するので省略する。
【0110】
[3−3.第2実施形態の作用効果]
本実施形態に係る有機EL表示装置10Bの場合にも、基本的に、第1実施形態に係る有機EL表示装置10Aの場合と同様に作用効果、即ち有機EL表示装置10Bが置かれる環境条件の影響を受けることなく、有効画素20の輝度の劣化量を検出することができる。加えて、本実施形態に係る有機EL表示装置10Bの場合には、劣化測定画素部51−1〜51−8の発光条件を複数設定することができるために、より細やかな補正のための劣化状況を把握することができる。
【0111】
<4.変形例>
上記実施形態では、画素20の電気光学素子(発光素子)として、有機EL素子を用いた有機EL表示装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの適用例に限られるものではない。すなわち、本発明は、無機EL素子、LED素子、半導体レーザー素子などの自発光素子を画素20の電気光学素子として用いる自発光型の表示装置全般に対して適用可能である。
【0112】
<5.適用例>
以上説明した本発明による表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。一例として、図18〜図22に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなどの表示装置に適用することが可能である。
【0113】
このように、あらゆる分野の電子機器の表示装置として本発明による表示装置を用いることにより、各種の電子機器において高品位な画像表示を行うことができる。すなわち、先述した実施形態の説明から明らかなように、本発明による表示装置は、自発光素子の輝度の劣化量を確実に検出し、その検出結果に基づいて自発光素子の輝度の劣化分を補正することができるために高品質な表示画像を得ることができる。
【0114】
本発明による表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部30に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。この透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜等、更には、上記した遮光膜が設けられてもよい。なお、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
【0115】
以下に、本発明が適用される電子機器の具体例について説明する。
【0116】
図18は、本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。本適用例に係るテレビジョンセットは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
【0117】
図19は、本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
【0118】
図20は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
【0119】
図21は、本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
【0120】
図22は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含んでいる。そして、ディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明による表示装置を用いることにより本適用例に係る携帯電話機が作製される。
【符号の説明】
【0121】
10,10A,10B…有機EL表示装置、20…画素、21…有機EL素子、22…駆動トランジスタ、23…書込みトランジスタ、24…保持容量、30…画素アレイ部、40…表示パネル、51…劣化測定画素部(第1の基準画素部)、52…基準画素部(第2の基準画素部)、53,54,56…輝度センサ、55…遮光板、57…拡散板、60…輝度劣化補正処理部、61…劣化量算出部、62…補正値算出部、63…画像データ積算部、64…補正部、70…パネル駆動タイミング発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ定められた輝度で発光駆動される第1の基準画素部と、
輝度の劣化量を検出するときに発光駆動される第2の基準画素部と、
前記第1、第2の基準画素部の各輝度の検出結果を基に表示に寄与する有効画素の輝度の劣化分を補正する補正部と
を備える表示装置。
【請求項2】
前記第1、第2の基準画素部は、前記有効画素が配置されてなる画素アレイ部の周辺部に隣接して設けられている
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の基準画素部は、異なる輝度で発光駆動される複数の基準画素部からなる
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の基準画素部は、前記第1の基準画素部の複数の基準画素部に対して1対1の対応関係をもって設けられる複数の基準画素部からなる
請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1、第2の基準画素部は、前記画素アレイ部を挟んで当該画素アレイ部の両側に設けられている
請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1の基準画素部は、前記画素アレイ部を挟んで両側に設けられるとき、一方側の複数の基準画素部と他方側の複数の基準画素部とが同じ輝度で発光駆動される
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1の基準画素部は、前記画素アレイ部を挟んで両側に設けられるとき、一方側の複数の基準画素部と他方側の複数の基準画素部とが全て異なる輝度で発光駆動される
請求項5記載の表示装置。
【請求項8】
前記第2の基準画素部は、単一の基準画素部からなり、
前記第1の基準画素部の複数の基準画素部は前記第2の基準画素部を囲んで設けられている
請求項3記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1、第2の基準画素部の組は、前記画素アレイ部を挟んで当該画素アレイ部の両側に設けられている
請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1の基準画素部の輝度の劣化を検出する第1の輝度センサと、
前記第2の基準画素部の輝度の劣化を検出する第2の輝度センサとを有する
請求項2記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1、第2の輝度センサの周りが遮光板で囲まれている
請求項10記載の表示装置。
【請求項12】
前記第1、第2の輝度センサは、前記第1、第2の基準画素部の中間位置に共通に設けられた単一の輝度センサからなる
請求項10記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1、第2の輝度センサと前記単一の輝度センサとの間に拡散板が設けられている
請求項12記載の表示装置。
【請求項14】
表示装置の輝度劣化の補正に当たって、
あらかじめ定められた輝度で発光駆動される第1の基準画素部と、
輝度の劣化量を検出するときに発光駆動される第2の基準画素部とを用い、
前記第1、第2の基準画素部の各輝度の検出結果を基に表示に寄与する有効画素の輝度の劣化分を補正する
輝度劣化補正方法。
【請求項15】
あらかじめ定められた輝度で発光駆動される第1の基準画素部と、
輝度の劣化量を検出するときに発光駆動される第2の基準画素部と、
前記第1、第2の基準画素部の各輝度の検出結果を基に表示に寄与する有効画素の輝度の劣化分を補正する補正部と
を備える表示装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−39311(P2011−39311A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187004(P2009−187004)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】